(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】てんかんの治療におけるカンナビジオールの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/05 20060101AFI20230306BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20230306BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20230306BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20230306BHJP
A61K 31/53 20060101ALI20230306BHJP
A61K 31/4015 20060101ALI20230306BHJP
A61K 31/5513 20060101ALI20230306BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230306BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20230306BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
A61K31/05
A61K36/185
A61K31/352
A61K31/19
A61K31/53
A61K31/4015
A61K31/5513
A61K45/00
A61P25/08
A61P43/00 121
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021120246
(22)【出願日】2021-07-21
(62)【分割の表示】P 2020014572の分割
【原出願日】2015-06-17
【審査請求日】2021-08-20
(32)【優先日】2014-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517437896
【氏名又は名称】ジーダブリュー リサーチ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ガイ,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ライト,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ミード,アリス
(72)【発明者】
【氏名】チータム,エマ
(72)【発明者】
【氏名】デヴィンスキー,オリン
(72)【発明者】
【氏名】シラー,ドミニク
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】Epilepsy Behav.,2013年,Vol.29,pp.574-577
【文献】Epilepsia,2014年05月,Vol.55 No.6,pp.783-786
【文献】Pharmacology,1980年,Vol.21,pp.175-185
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 36/00-36/9068
A61K 45/00-45/08
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンナビジオール(CBD)を含有する、てんかんの欠神発作を治療するための医薬組成物であって、前記てんかんが、結節性硬化症複合体と診断された対象におけるものであり、前記発作が欠神発作であり、前記CBDの用量が5~25mg/kg/日である、医薬組成物。
【請求項2】
1種または複数の併用抗てんかん薬(AED)と組み合わせて使用される、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記CBDが少なくとも98%(w/w)のCBDを含むカンナビスの高純度抽出物として存在する、請求項1
または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記抽出物が0.15%未満のテトラヒドロカンナビノール(THC)を含む、請求項
3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記抽出物が最大1%のカンナビジバリン(CBDV)をさらに含む、請求項
3または
4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記CBDが合成化合物として存在する、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記1種または複数のAEDが、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、デスメチルクロバザム、ジアゼパム、エトスクシミド、フェルバメート、ガバペンチン、ケトジェニックダイエット、ラコサミド、ラモトリギン、レベチラセタム、ロラゼパム、ミダゾラム、N-デスメチルクロバザム、ノルジアゼパム、フェニトイン、スチリペントール、トピラマート、トラゾドン、バルプロ酸、ビガバトリン、およびゾニサミドからなる群から選択される、請求項
2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記1種または複数のAEDが、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギン、エトスクシミド、クロバザム、およびクロナゼパムからなる群から選択される、請求項
7に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠神発作の治療におけるカンナビジオール(CBD)の使用に関する。一実
施形態において、欠神発作を患う患者は、子供および若年成人である。CBDは、その他
の発作型と比べて、レノックス-ガストー症候群、結節性硬化症複合体、ドラベ症候群、
ドゥース症候群、CDKL5、Dup15q、ジェボンズ症候群、ミオクロニー欠神てん
かん、神経セロイドリポフスチン症(NCL)および脳異常を含めた病因を患っている患
者における欠神発作の低減に、とりわけ有効とみられる。
【0002】
意義深いことには、CBDは、欠神発作のサブタイプ、すなわちミオクロニー欠神発作
を治療するのに非常に有効であることが証明された。ミオクロニー欠神発作を患う患者の
病因として、ドゥース症候群、ジェボンズ症候群、およびミオクロニー欠神てんかん症候
群が挙げられる。
【0003】
これらの患者において、CBDを用いた治療によって、欠神発作またはミオクロニー欠
神発作の発生がそれぞれ64%および75%と、患者の大多数において50%を超えて低
減した。これは、治療されるすべての対象において、総発作が50%を超えて低減したと
いう利益を受けている患者の割合が有意により低いこと(46%)を考えると、驚くべき
ことであった。
【0004】
好ましくは、使用されるCBDは、CBDが全抽出物の98%(w/w)を超えて存在
し、抽出物のその他の構成要素が特徴づけられるような、カンナビスの高純度抽出物の形
態である。詳細には、カンナビノイドであるテトラヒドロカンナビノール(THC)は、
0.15%(w/w)以下のレベルまで実質的に除去されており、CBDのプロピル類似
体であるカンナビジバリン(CBDV)は、最大1%の量で存在する。別法として、CB
Dは、合成により作製されたCBDであってもよい。
【0005】
使用において、CBDは、1種または複数のその他の抗てんかん薬(AED)と併用す
ることができる。別のAEDと組み合わせて使用する場合、CBDは、1種または複数の
AEDと別々に、連続して、または同時に投与するために配合することができる、または
その組合せは、単回投与形態で提供することができる。CBDが、別々に、連続して、ま
たは同時に投与するために配合される場合、CBDは、指示されたとおりに1種または複
数の構成要素を投与するためのキットとして、または指示書と一緒に、提供することがで
きる。CBDは、単独投薬、すなわち単剤療法として使用することもできる。
【背景技術】
【0006】
てんかんは、世界の人口のおよそ1%に発生し(Thurmanら、2011年)、そ
の70%は、入手可能な既存の抗てんかん薬(AED)を用いてその症状を適切に制御す
ることができる。しかし、この患者群の30%(Eadieら、2012年)は、入手可
能なAEDでは発作の消失を得ることができず、したがって、難治または「治療抵抗性て
んかん」(TRE)を患っていると称される。
【0007】
難治または治療抵抗性てんかんは、2009年に国際抗てんかん連盟(ILAE)によ
って、「持続的な発作の消失を達成するための、(単剤療法または併用療法のいずれとし
ても)忍容性が高く適切に選択され使用された2つのAEDスケジュールの適正な試行の
失敗」(Kwanら、2009年)として、定義された。
【0008】
人生の最初の数年の間にてんかんを発症する個人は、治療が困難なことが多く、したが
って、しばしば治療抵抗性と称される。頻繁な発作を小児期に経験する子供には、認識、
行動および運動遅滞を生じさせ得る神経障害が残ることが多い。
【0009】
小児期てんかんは、子供および若年成人における罹患率が10万人当たりおよそ700
人の、比較的一般的な神経疾患である。これは、人口当たりのてんかんに罹患した成人の
数の2倍である。
【0010】
子供または若年成人が発作を呈する場合、通常、その原因を調べるための調査が行われ
る。小児期てんかんは、多くの異なる症候群および遺伝子変異によって引き起こされ得る
ので、したがってこれらの子供の診断には、ある程度の時間がかかることがある。
【0011】
てんかんの主な症状は、繰り返される発作である。患者が患っているてんかんの型また
はてんかん症候群を確定するために、患者が体験している発作の型の調査が行われる。臨
床観察および脳波検査(EEG)テストが実施され、発作の型(複数でああってもよい)
は、以下および
図1に記載のILAE分類に従って分類される。
【0012】
ILAEによって提案された発作型の国際分類は、1981年に採択され、改訂案が2
010年にILAEによって発行されたが、未だ1981年の分類と置き換えられていな
い。
図1は、改訂された専門用語に対する2010年の提案から編集したものであり、部
分発作の専門用語を焦点発作に置き換えるために提案された変更を含める。加えて、用語
「単純部分発作」は、用語「意識/反応性が低下しない焦点発作」と置き換えられ、用語
「複雑部分発作」は、「意識/認識が低下する焦点発作」と置き換えられている。
【0013】
図1から、両側分散ネットワーク内で生じそのネットワークを迅速に巻き込む全般発作
は、強直間代(大発作)発作、欠神(小発作)発作、間代発作、強直発作、脱力発作およ
びミオクロニー発作の6つのサブタイプに分けることができることがわかる。
【0014】
その発作が、ネットワーク内に起始し、1つの脳半球のみに限定される焦点(部分)発
作も、サブカテゴリーに分けられる。ここで、発作は、前兆、運動、自律神経および意識
/反応性を含めた、発作の1つまたは複数の特性に従って特徴づけられる。発作が局在発
作として始まり、迅速に進展して両側ネットワーク内に分散する場合、この発作は、両側
痙攣発作として知られており、これは、二次性全般発作(焦点発作から進展しており、も
はや局在ではなくなった全般発作)と置き換えるために提案された専門用語である。
【0015】
欠神発作は、定型欠神発作、非定型欠神発作、またはミオクロニー欠神および眼瞼ミオ
クロニーなどの特殊な特性を有する欠神発作として発生し得る。
【0016】
定型欠神発作は、意識の変化の突然の開始および回復を伴う全般発作である。意識の変
化は、患者が患っている特定の症候群によって重症度が変化し得る。眼瞼、頭部、眉、顎
、口腔周囲またはその他の顔の部分の間代性運動が発生し得るが、一方、手足のミオクロ
ーヌスは、極めてまれに発生する。加えて、欠神てんかん重積状態も発生し得る。
【0017】
非定型欠神発作における意識の喪失の突然の開始および回復は、定型欠神発作における
発生より少ない。これらは、頭部、胴体または手足の筋緊張の喪失、および微細ミオクロ
ニー攣縮などのその他の特性と関連している。意識の喪失は、通常最小限である。
【0018】
ミオクロニー欠神発作は、肩および腕の両側律動性ミオクロニー攣縮を呈する。発作中
に進行性の腕挙上をもたらす強直外転がある。発作は、10から60秒間続き、意識の完
全な喪失が起こる恐れがある。
【0019】
眼瞼ミオクロニーは、両眼球の同時の上方偏位および頭部の伸展を伴う、眼瞼の短時間
の反復性ミオクロニー攣縮に付随して起こる欠神発作である。発作は、典型的には短時間
であり、多発する発作は、日常的に発生し得る。意識は、大抵保持される。
【0020】
欠神発作は、レノックス-ガストー症候群、ミオクロニー欠神てんかん、結節性硬化症
複合体、ドラベ症候群、ドゥース症候群、CDKL5、Dup15q、ジェボンズ症候群
、ミオクロニー欠神てんかん、神経セロイドリポフスチン症(NCL)および脳異常を含
めたてんかん症候群において発生し得る。
【0021】
てんかん症候群は、多くの異なる型の発作を呈することが多く、患者が患っている発作
の型を同定することは、基準AEDの多くが治療することを目的としているまたは既定の
発作型/サブタイプに対してのみ効果的であるので、重要である。
【0022】
欠神発作に対する一次治療は、通常、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギンまたはエト
スクシミドなどの広域スペクトルAEDを含む。これらの薬物の組合せが、欠神発作を治
療するために必要となることがある。
【0023】
その作用機構によって規定される一般的なAEDを、以下の表で説明する。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
これらの表から、欠神発作に対する一次治療として使用される3種のAED、すなわち
バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギンまたはエトスクシミドは、それぞれ、GABA/ナ
トリウムチャネル、ナトリウムチャネルおよびカルシウムチャネル薬であることがわかる
。
【0028】
これらの表から、他のAEDが欠神発作で使用するために承認されており、これらのA
EDとして、クロナゼパムおよびクロバザムが挙げられ、これらのどちらも、GABA機
構によって作用することもわかる。
【0029】
過去40年にわたって、発作を治療するために、非向精神性カンナビノイドであるカン
ナビジオール(CBD)の使用に関する多数の動物実験が行われてきた。例えば、Con
sroeら(1982年)は、CBDが、痙攣誘発薬の投与または電流を流した後のマウ
スにおける発作を予防できることを突き止めた。
【0030】
てんかんに罹患した成人におけるCBDを用いた研究も、過去40年で行われた。Cu
nhaらは、全般てんかんに罹患した8人の成人患者へのCBDの投与によって、その患
者のうち4人に発作の有意な低減をもたらしたことを報告した(Cunhaら、1980
年)。
【0031】
4人の成人患者に200mg/日の純粋なCBDを提供した1978年の研究では、4
人の患者のうち2人から発作が消失したが、一方、残りの2人の発作の頻度に変化はなか
った(Mechoulam and Carlini、1978年)。
【0032】
上述の研究とは対照的に、非盲検試験によると、200mg/日の純粋なCBDは、施
設に収容されている12人の成人患者の発作を制御するのには効果がなかったことが報告
されている(Ames and Cridland、1986年)。
【0033】
過去40年の調査において、てんかんの治療用に認可された薬物は30を超えるが、そ
のいずれもカンナビノイドではない。実際、おそらくはこれらの化合物の指定の性質によ
って、および/または既知の精神活性物質であるTHCが痙攣誘発薬とみなされてきた(
Consroeら、1977年)という事実によって、カンナビノイドに対する先入観が
存在するように思われる。
【0034】
近年出版された論文は、カンナビジオールを多く含むカンナビスがてんかんの治療に有
効であり得ることを示唆していた。Porter and Jacobson(2013
年)は、治療抵抗性てんかんに罹患した子供におけるCBDを補強したカンナビスの使用
を調査していたFacebookのグループを介して実施した、親を対象とした調査を報
告している。調査対象の19人の親のうち16人が、彼らの子供のてんかんの改善を報告
したことがわかった。この論文のための調査対象の子供はすべて、存在するCBDの量お
よびTHCを含めたその他の成分は多くの場合不明であったが、CBDを高濃度で含有す
るとされているカンナビスを摂取していた。実際に、CBDのレベルは、0.5~28.
6mg/kg/日(テストしたこれらの抽出物中で)の範囲であったが、THCのレベル
は、0.8mg/kg/日の高さであったことが報告された。
【0035】
痙攣誘発薬として記載されている(Consroeら、1977年)THCを含むカン
ナビス抽出物を、潜在的に精神活性用量の0.8mg/kg/日でTREに罹患した子供
に提供することは、懸念事項であり、したがって、CBDが実際に有効であるかどうかを
見極める必要性がある。
【0036】
2013年11月、GW Pharmaceuticals社は、CBDがオーファン
ドラッグ指定を受けたので、CBDを用いてドラベ症候群を治療する意向があることを明
言するためのプレスリリースを行った。
【0037】
今まで、難治てんかんに罹患した子供および若年成人におけるCBDの対照臨床試験は
行われていない。
【発明の概要】
【0038】
本発明の第1の態様によれば、欠神発作によって特徴づけられるてんかんの治療で使用
するためのカンナビジオール(CBD)が提供される。
【0039】
一実施形態において、てんかんは、小児期てんかんである。
【0040】
一実施形態において、欠神発作は、ミオクロニー欠神発作である。
【0041】
驚くべきことに、CBDが、治療抵抗性のてんかんに罹患した対象にとりわけ効果的で
あることが示された。
【0042】
さらなる実施形態において、CBDは、1種または複数の併用抗てんかん薬(AED)
と組み合わせて使用される。
【0043】
好ましくは、治療されるべき欠神発作は、レノックス-ガストー症候群、ミオクロニー
欠神てんかん、結節性硬化症複合体、ドラベ症候群、ドゥース症候群、ジェボンズ症候群
、CDKL5、Dup15q、神経セロイドリポフスチン症(NCL)および脳異常と診
断された患者におけるものである。
【0044】
最も好ましくは、治療抵抗性てんかんは、レノックス-ガストー症候群、ドラベ症候群
およびミオクロニー欠神てんかんの1つである。
【0045】
さらなる実施形態において、CBDは、少なくとも98%(w/w)のCBDを含むカ
ンナビスの高純度抽出物として存在する。好ましくは、抽出物は、0.15%未満のTH
Cを含む。より好ましくは、抽出物は、最大1%のCBDVをさらに含む。
【0046】
代替の実施形態において、CBDは、合成化合物として存在する。
【0047】
本発明のさらなる実施形態において、1種または複数のAEDは、クロバザム、クロナ
ゼパム、クロラゼプ酸、デスメチルクロバザム、ジアゼパム、エトスクシミド、フェルバ
メート、ガバペンチン、ケトジェニックダイエット、ラコサミド、ラモトリギン、レベチ
ラセタム、ロラゼパム、ミダゾラム、N-デスメチルクロバザム、ノルジアゼパム、フェ
ニトイン、スチリペントール、トピラマート、トラゾドン、迷走神経刺激、バルプロ酸、
ビガバトリン、およびゾニサミドからなる群から選択される。
【0048】
好ましくは、1種または複数のAEDは、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギン、エト
スクシミド、クロバザムおよびクロナゼパムからなる群から選択される。
【0049】
好ましくは、CBDと組み合わせて使用される異なる抗てんかん薬の数が、低減される
。別法として、CBDと組み合わせて使用される抗てんかん薬の用量が、低減される。
【0050】
目眩、霧視、吐き気、呼吸系の機能低下、疲労、頭痛および中枢神経系に対するその他
の運動性の副作用を含めた、通常使用されるAEDに関連した多くの副作用がある。これ
らの副作用は、とりわけ、高用量または多数のAEDの組合せが使用された場合によく見
られる。このように、発作の回数を低減しながら、同時に安全な副作用プロフィールを示
すことができる代替の薬物療法が、必要とされている。
【0051】
好ましくは、CBDの用量は、5mg/kg/日より多い。したがって、15kgの患
者に対して、一日当たり75mgを超える用量のCBDが提供される。例えば10/mg
/kg/日超、15mg/kg/日超、20mg/kg/日超および25mg/kg/日
超などの5mg/kg/日を超える用量も、効果的であると想定される。
【0052】
好ましくは、てんかんは、小児期てんかんである。
【0053】
本発明の第二の態様によれば、カンナビジオール(CBD)を対象に投与することを含
む、てんかんを治療する方法であって、てんかんが欠神発作によって特徴づけられる方法
が、提供される。
【0054】
好ましくは、対象はヒトであり、典型的には、欠神発作によって特徴づけられるてんか
んを患っている患者である。
【0055】
本発明の第三の態様によれば、カンナビジオール(CBD)、溶媒、共溶媒、甘味料、
および香味料を含む、欠神発作によって特徴づけられるてんかんの治療で使用するための
組成物が、提供される。
【0056】
好ましくは、溶媒はセサミオイルであり、共溶媒はエタノールであり、甘味料はスクラ
ロースであり、香味料はストロベリーフレーバーであり、CBDは、25/mg/mlか
ら100mg/mlの間、すなわち50mg/mlから75mg/mlの間の濃度で存在
する。
【0057】
より好ましくは、組成物は、25~100mg/mlの間の濃度のカンナビジオール(
CBD)、79mg/mlの濃度のエタノール、0.5mg/mlの濃度のスクラロース
、0.2mg/mlの濃度のストロベリー香味料、および1.0mlにするのに適量のセ
サミオイルを含む。
【0058】
組成物は、経口液体溶液として投与されることが予想される。固体、半固体、ゲル、ス
プレー、エアロゾル、インへラー、ベポライザー、かん腸剤および坐薬を含めた、投与の
その他の手法は、代替の投与形態である。このような薬物は、口腔、頬部、舌下、呼吸器
官、鼻腔および遠位直腸経路を介して、投与することができる。
【0059】
[定義]
本発明を説明するのに使用される用語のいくつかの定義を、以下に詳述する。
【0060】
本出願に記載のカンナビノイドを、その一般的な省略形と共に以下に列挙する。
【0061】
【0062】
上記の表は、網羅的ではなく、参照のために本出願において同定されるカンナビノイド
を単に詳述している。今まで、60を超える異なるカンナビノイドが同定されており、こ
れらのカンナビノイドは、異なる群(フィトカンナビノイド;エンドカンナビノイドおよ
び合成カンナビノイド(新規なカンナビノイドまたは合成により作製されたフィトカンナ
ビノイドもしくはエンドカンナビノイドとすることができる))に分けることができる。
【0063】
「フィトカンナビノイド」は、天然由来のカンナビノイドであり、カンナビス植物中に
見ることができる。フィトカンナビノイドは、植物から単離し、高純度の抽出物を作製す
ることができる、または合成により複製することができる。
【0064】
「高純度カンナビノイド抽出物」は、カンナビス植物から抽出され、その高純度カンナ
ビノイドが純度98%(w/w)以上になるように、その他のカンナビノイドおよびカン
ナビノイドと共抽出される非カンナビノイドの構成要素が実質的に除去される程度まで精
製されているカンナビノイドとして、定義される。
【0065】
「合成カンナビノイド」は、カンナビノイドまたはカンナビノイド様構造を有する化合
物であり、植物によってよりもむしろ化学的手段を使用して製造される。
【0066】
フィトカンナビノイドは、中性(脱炭酸形態)、またはカンナビノイドを抽出するのに
使用される方法によってカルボン酸形態として得ることができる。例えば、カルボン酸形
態を加熱することによって、カルボン酸形態の大部分のカルボキシル基が除去され、中性
形態になることが知られている。
【0067】
「治療抵抗性てんかん」(TRE)または「難治てんかん」は、1種または複数のAE
Dの試行によって適切に制御されないてんかんとして、2009年のILAEガイダンス
によって定義されている。
【0068】
「小児期てんかん」は、小児期にてんかんの原因を生じさせ得る多くの異なる症候群お
よび遺伝子変異を指す。これらのいくつかの例として、ドラベ症候群、ミオクロニー欠神
てんかん、レノックス-ガストー症候群、原因不明の全般てんかん、CDKL5変異、ア
イカルディ症候群、両側性多小脳回、Dup15q、SNAP25、および熱性感染症関
連てんかん症候群(FIRES)、良性ローランドてんかん、若年ミオクロニーてんかん
、乳児スパズム(ウエスト症候群)、ならびにランドー-クレフナー症候群がある。上述
の列挙は、多くの異なる小児期てんかんが存在するので、非網羅的である。
【0069】
「欠神発作」は、しばしばミオクロニー攣縮に付随して起こる、意識の喪失を生じさせ
るてんかん発作の全般型として定義される。
【0070】
「ミオクロニー欠神発作」は、腕および肩の両側ミオクロニー攣縮を呈する欠神発作の
サブタイプとして定義される。
【0071】
「混合発作」は、同じ患者に全般発作と焦点発作の両方が存在するものとして定義され
る。
【0072】
用語「50%レスポンダー」および「発作の50%低減」はいずれも、臨床研究で使用
される用語である。本出願において、これらの用語は、CBDが投与される前のベースラ
イン期中に体験した回数と比較して、CBDを用いた治療中に発作の回数の50%以上の
低減を体験した対象の割合を定義している。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【発明を実施するための形態】
【0074】
<高純度CBD抽出物の調製>
以下は、下記の実施例に記載の拡大アクセス試験に使用された、既知で一定の組成を有
する高純度(98%w/w超)のカンナビジオール抽出物の作製を記載している。
【0075】
要約すれば、試験で使用した原薬は、CBDを得るための溶媒結晶化によってさらに精
製されている、カンナビス・サティバ・L.(Cannabis sativa L.)
の高CBD含有化学種の液体二酸化炭素抽出物である。結晶化のプロセスは、具体的には
、その他のカンナビノイドおよび植物構成要素を除去して、98%を超えるCBDが得ら
れる。
【0076】
カンナビス・サティバ・L.植物を栽培し、収穫し、加工して、植物抽出物(中間体)
を作製し、次いで結晶化によって精製して、CBD(原薬)を得る。
【0077】
植物出発物質は、植物原料(BRM)と称され、植物抽出物は中間体であり、医薬品有
効成分(API)は、原薬のCBDである。
【0078】
植物出発物質および植物抽出物のどちらも、仕様によって制御される。原薬の仕様を、
以下の表5に記載する。
【0079】
【0080】
達成されるCBD原薬の純度は、98%を超える。抽出物中に発生し得るその他のカン
ナビノイドは、CBDA、CBDV、CBD-C4およびTHCである。
【0081】
カンナビス・サティバ・L.植物の異なる化学種は、特定の化学成分であるカンナビノ
イドの生産量を最大限にするために作製されている。植物の1つのタイプは、主にCBD
を生成する。(-)-トランス単量体のみが自然に発生する。さらに、CBDの立体化学
は精製中に影響を受けない。
【0082】
<中間体の作製>
植物抽出物である中間体を作製するステップの概略を、以下に示す。
1.栽培
2.脱炭酸
3.抽出番号1-液体CO2を使用
4.抽出番号2-エタノールを使用した「脱ろう」
5.濾過
6.蒸発
【0083】
高CBDの化学型を栽培し、収穫し、乾燥させて、所望の状態になるまで乾燥室で保管
した。1mmのスクリーンを備えたアペックスミルを用いて、植物原料(BRM)を細か
く刻んだ。粉砕したBRMを、抽出前に最大3カ月間フリーザーに保管した。
【0084】
CBDAのCBDへの脱炭酸を、大容量のHeraeusトレーオーブンを使用して実
行した。Heraeusの脱炭酸バッチサイズは、およそ15kgである。トレーをオー
ブン中に配置し、105℃に加熱し、BRMが105℃に到達するのに96.25分かか
った。15分間105℃で保持した。次いで、オーブンを150℃に設定した。;BRM
が150℃に到達するのに75.7分かかり、BRMを、150℃で130分間保持した
。オーブン内での総時間は、冷却の45分、脱気の15分を含めて、380分であった。
【0085】
60bar/10℃で、液体CO2を使用して抽出番号1を実施し、植物原薬(BDS
)を作製した。
【0086】
粗CBDのBDSを、標準条件下(マイナス20℃でおよそ50時間、エタノール2v
ol)で、抽出番号2で脱ろうした。沈殿したろうを、濾過によって除去し、ロータリー
エバポレーター(最大60℃の水浴)を使用して溶媒を蒸発させ、BDSを得て、次いで
これを結晶化に使用して、テスト材料を作製した。
【0087】
<原薬の作製>
中間体である植物抽出物から原薬を作製するための製造ステップは、以下のとおりであ
る。
1.直鎖または分枝のC5~C12アルカンを使用した結晶化
2.濾過
3.直鎖または分枝C5~C12アルカンからの任意選択の再結晶化
4.真空乾燥
【0088】
上記の手段を使用して作製された中間体植物抽出物(12kg)を、30リットルのス
テンレス鋼容器中の直鎖または分枝C5~C12アルカン(9000ml、0.75vo
l)に分散した。
【0089】
混合物を、すべての塊が破壊されるまで手動で撹拌し、次いで、密閉した容器を、およ
そ48時間、フリーザーに配置した。
【0090】
結晶を、真空濾過によって単離し、一定分量の冷却した直鎖または分枝C5~C12ア
ルカン(計12000ml)で洗浄し、60℃の温度の10mbを超える真空下で乾燥さ
せた後、原薬を分析用に提出した。
【0091】
乾燥させた生成物を、FDA食品グレード認可済みのシリコーンシールおよびクランプ
を備えた医薬品グレードのステンレス鋼容器中で、マイナス20℃のフリーザーに保管し
た。
【0092】
<製剤の作製>
製剤を、経口溶液として提示する。提示の経口溶液は、賦形剤のセサミオイル、エタノ
ール、甘味料および香味料と共に、25mg/mlまたは100mg/mlのCBDを含
有する。広い用量範囲にわたって用量の漸増が可能な、2つの製品強度が利用可能である
。
【0093】
25mg/mlの溶液は、低用量として適切であり、100mg/mlの溶液は、高用
量として適切である。
【0094】
製剤配合物は、以下の表6に記載したとおりである。
【0095】
【0096】
原薬であるCBDは、水に不溶である。セサミオイルは、原薬を可溶化するための賦形
剤として選択された。
【0097】
甘味料およびフルーツ香味料は、セサミオイル溶液の食味を改善するために必要である
。
【0098】
エタノールは、甘味料および香味料を可溶化するために必要であった。
【0099】
組成物は、実質的に当量とすることができ、このことは、機能成分は、表6に特定した
定性的組成から最大10%の量で変更することができることを意味する。
【0100】
以下の実施例1は、カンナビジオール(CBD)を含む高純度カンナビス抽出物の使用
を記載している。カンナビジオールは、選択された化学型中に最も豊富な非向精神性カン
ナビノイドである。動物での先の研究によって、CBDが多数の種およびモデルに対する
抗痙攣効果を有することが、実証されている。
【0101】
実施例1は、TREに罹患した子供における拡大アクセス治療プログラムで作成された
データを記載している。
【実施例1】
【0102】
<難治てんかんに罹患した子供および若年成人における欠神発作を低減するカンナビジオ
ールの有効性>
[材料および方法]
小児期発現の重篤な治療抵抗性てんかん(TRE)に罹患した子供および若年成人13
7人のうち、42人が、欠神発作によって特徴づけられるてんかんを患っていた。これら
の対象を、カンナビス植物から得たカンナビジオール(CBD)の高純度抽出物を用いて
テストした。すべての対象は、しばしばその他の全般発作および/または焦点発作の他に
、欠神型発作を呈した。この研究の参加者は、CBDに対する拡大アクセスコンパッショ
ネート使用プログラムの一部であった。
【0103】
これらの患者が患っているてんかん症候群は、レノックス-ガストー症候群、ミオクロ
ニー欠神てんかん、結節性硬化症複合体、ドラベ症候群、ドゥース症候群、ジェボンズ症
候群、CDKL5、Dup15q、神経セロイドリポフスチン症(NCL)および脳異常
であった。
【0104】
これらの患者が体験した発作型として、強直、間代、強直間代、ミオクロニー、脱力、
欠神、ミオクロニー欠神、機能障害を伴わない焦点発作、機能障害を伴う焦点発作および
両側痙攣発作に進展する焦点発作が挙げられた。
【0105】
すべての患者は、4週間のベースライン期に入り、その際、親/介護者は、すべての可
算の発作型に注意し、予測される発作の日誌をつけた。
【0106】
次いで、患者は、ベースラインの抗てんかん薬(AED)レジメンに加えて、既知で一
定の組成の、5mg/kg/日の用量のセサミオイル中の高純度CBD抽出物(98%超
(w/w)のCBD)を受け取った。
【0107】
不忍容が発生するまで、または最大用量が25mg/kg/日に達するまで、1日用量
を、増加量2~5mg/kgずつ、徐々に増加させた。
【0108】
2~4週間の定期的な間隔で、患者を診察した。血液、肝臓、および腎臓の機能ならび
に併用AEDレベルに対する臨床検査を、ベースラインで、および4週間毎のCBD療法
後に実施した。
【0109】
この研究の患者はすべて、少なくとも1種の併用AEDを摂取していた。これらのAE
Dとして、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、デスメチルクロバザム、ジアゼパ
ム、エトスクシミド、フェルバメート、ガバペンチン、ケトジェニックダイエット、ラコ
サミド、ラモトリギン、レベチラセタム、ロラゼパム、ミダゾラム、N-デスメチルクロ
バザム、ノルジアゼパム、フェニトイン、スチリペントール、トピラマート、トラゾドン
、迷走神経刺激、バルプロ酸、ビガバトリン、およびゾニサミドが挙げられた。
【0110】
[結果]
CBDを用いた治療を受けた42人の子供および若年成人の患者のうち、28人の患者
が少なくとも12週間の治療の間治療を受け、そのすべてが欠神型発作を患っていた。
【0111】
12週間の治療に基づいた50%レスポンダーの概略を、以下の表7にまとめる。
【0112】
【0113】
表7は、3カ月の療法後、注目すべきことに、64%の患者の欠神発作が50%を超え
て低減したことを示し、このデータから、CBDが、この型の発作を低減するのに非常に
効果的であることが推測される。
【0114】
[結論]
これらのデータは、CBDが、既存のAEDに対する反応が良好でない患者に対して高
い割合で、欠神型発作の回数を有意に低減させることを示している。
【0115】
治療抵抗性の患者のこの群において、これほどの多数が効果を得ることができたことは
、驚くべきことであった。患者のほぼ3分の2(64%)が、患っている欠神発作の回数
が少なくとも50%低減したという利益を受けた事実は、注目すべきことであった。
【実施例2】
【0116】
<難治てんかんに罹患した子供および若年成人におけるミオクロニー欠神発作を低減する
カンナビジオールの有効性>
[材料および方法]
小児期発現の重篤な治療抵抗性てんかん(TRE)に罹患した137人の子供および若
年成人のうち、10人がミオクロニー欠神発作によって特徴づけられるてんかんを患って
いた。これらの対象を、カンナビス植物から得たカンナビジオール(CBD)の高純度抽
出物を用いてテストした。すべての対象は、しばしばその他の全般発作および/または焦
点発作の他に、ミオクロニー欠神型発作を呈した。この研究の参加者は、CBDに対する
拡大アクセスコンパッショネート使用プログラムの一部であった。
【0117】
これらの患者が患っていたてんかん症候群は、ミオクロニー欠神てんかん、ドゥース症
候群、および不確定な原因のてんかんであった。
【0118】
すべての患者は、4週間のベースライン期に入り、その際、親/介護者は、すべての可
算の発作型に注意し、予測される発作の日誌をつけた。
【0119】
次いで、患者は、ベースラインの抗てんかん薬(AED)レジメンに加えて、既知で一
定の組成の、5mg/kg/日の用量のセサミオイル中の高純度CBD抽出物(98%超
(w/w)のCBD)を受け取った。
【0120】
不耐性が発生するまで、または最大用量が25mg/kg/日に達するまで、1日用量
を、増加量2~5mg/kgずつ、徐々に増加させた。
【0121】
2~4週間の定期的な間隔で、患者を診察した。血液、肝臓、腎臓の機能および併用A
EDレベルに対する臨床検査を、ベースラインで、および4週間のCBD療法の後毎に実
施した。
【0122】
この研究における患者はすべて、少なくとも1種の併用AEDを摂取していた。これら
のAEDとして、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、エトスクシミ
ド、ケトジェニックダイエット、ラコサミド、ラモトリギン、レベチラセタム、ロラゼパ
ム、ミダゾラム、およびバルプロ酸が挙げられた。
【0123】
[結果]
CBDを用いた治療を受けた10人の子供および若年成人の患者うち、8人の患者が少
なくとも治療の12週間の治療を受け、そのすべてが、ミオクロニー欠神型発作を患って
いた。
【0124】
12週間の治療に基づいた50%レスポンダーの概略を、以下の表8にまとめる。
【0125】
【0126】
表8は、3カ月の療法後、注目すべきことに、75%の患者の欠神発作が50%を超え
て低減したことを示し、このデータから、CBDが、この型の発作を低減するのに非常に
効果的であることが推測される。
【0127】
[結論]
これらのデータは、CBDが、既存のAEDに対する反応が良好でない患者に対して高
い割合で、ミオクロニー欠神発作の回数を有意に低減させることを示している。
【0128】
治療抵抗性の患者のこの群において、これほどの多数が効果を得ることができたことは
、驚くべきことであった。患者のほぼ4分の3(75%)が、患者が患っているミオクロ
ニー欠神発作の回数が少なくとも50%低減したという利益を受けたという事実は、注目
すべきことであった。
【0129】