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特許7238045パワーリザーブ検出器を有する機械式測時器ムーブメント
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】パワーリザーブ検出器を有する機械式測時器ムーブメント
(51)【国際特許分類】
   G04B 9/00 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
G04B9/00
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021128718
(22)【出願日】2021-08-05
(65)【公開番号】P2022073941
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】20204874.0
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ・バッハマン
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・サグリーニ
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・クリンガー
(72)【発明者】
【氏名】バティスト・ウィスブロー
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-059920(JP,A)
【文献】特開2012-078205(JP,A)
【文献】特開2012-083139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計のためのパワーリザーブ検出する手段(10)を備える機械式測時器ムーブメント(1)であって、前記ムーブメントは、少なくとも1つの香箱システム(2)を備え、前記少なくとも1つの香箱システム(2)は、前記香箱システム(2)の中心軸(16)の出口に接続した少なくとも1つの第1の駆動車(7、7’)構成と、前記軸(16)で前記香箱システム(2)の箱に接続した第2の駆動車(6、6’、6’’)構成とを有し、
前記パワーリザーブ検出する手段(10)は、制御要素(3)であって、前記香箱システム(2)の前記中心軸(16)に平行な回転軸(23)回りに回転する、又は直線方向移動するように意され、差動装置出口で相補形部材(8)によって駆動される制御要素(3)と、接触要素(5)を備えるレバー(4)とを備え、前記レバー(4)の遮断部品(15)を歯車列の要素と接触させるように前記レバー(4)を移動させ、前記遮断部品(15)が最終歯車列に直接又は間接的に接続するか、前記遮断部品(15)が前記ムーブメントの発振器に直接又は間接的に接続するかに関わらず、前記パワーリザーブの表示がゼロにある際に前記機械式測時器ムーブメントを直接停止する、機械式測時器ムーブメント(1)において、
前記制御要素(3)は、制御部分として開口(13)を備え、前記開口(13)は、前記香箱システムの完全な動力の充填を規定する第1の端部(21)と、前記香箱システム(2)の完全な動力の放出を規定し、前記パワーリザーブがゼロにあることを表示する第2の端部(22)とを有し、前記レバー(4)は、レバー軸(14)回りに回転可能に取り付け、前記レバー軸(14)は、前記回転軸(23)に平行であるか又は前記香箱システム(2)の前記中心軸(16)に平行であり、前記レバー(4)は、前記制御要素(3)の前記開口(13)内に配設した接触要素(5)を備え、前記接触要素(5)は、前記パワーリザーブがゼロにある際に前記開口(13)の前記第2の端部(22)に接触することを特徴とする、機械式測時器ムーブメント(1)。
【請求項2】
前記制御要素(3)は、制御車(3)であり、前記開口(13)は、角度が決定された円弧形状開口であり、前記制御車(3)の軸(23)を中心とすることを特徴とする、請求項1に記載の機械式測時器ムーブメント(1)。
【請求項3】
前記開口(13)の前記第1の端部(21)及び前記開口(13)の前記第2の端部(22)は、円形部分の形状を有することを特徴とする、請求項2に記載の機械式測時器ムーブメント(1)。
【請求項4】
前記円形部分は、前記端部において、半径が前記開口(13)の幅の半分に対応する半円を画定することを特徴とする、請求項3に記載の機械式測時器ムーブメント(1)。
【請求項5】
前記レバー(4)の前記接触要素(5)は、前記開口(13)を通じて配設するピン又は棒又は羽根であることを特徴とする、請求項2に記載の機械式測時器ムーブメント(1)。
【請求項6】
前記遮断部品(15)は、前記パワーリザーブがゼロにある際に前記香箱システム(2)の箱の縁部(12)に接触し、前記ムーブメントの遮断を意図することを特徴とする、請求項1に記載の機械式測時器ムーブメント(1)。
【請求項7】
前記遮断部品(15)は、前記レバー(4)の回転軸(14)の反対側の端部に歯を備え、前記歯は、前記パワーリザーブがゼロにある際に前記香箱システム(2)の箱の外周歯付き車(24)の歯内に収容され、前記ムーブメントを遮断することを特徴とする、請求項1に記載の機械式測時器ムーブメント(1)。
【請求項8】
前記遮断部品(15)は、前記レバー(4)の棒又は突起(14)を備え、前記棒又は突起(14)は、前記パワーリザーブがゼロにある際に機械式発振器(30)のリム(31)に接触し、前記ムーブメントを遮断することを特徴とする、請求項1に記載の機械式測時器ムーブメント(1)。
【請求項9】
前記ムーブメントは、前記香箱システム(2)の動力放出出口に接続した前記第1の駆動車(7、7’)構成と、前記香箱システム(2)の動力充填出口に接続した前記第2の駆動車(6、6’、6’’)構成とを備え、前記第1の駆動車構成(7、7’)の第1の駆動車(7)は、前記香箱システム(2)の前記箱に固定する一方で、前記第2の駆動車構成(6、6’、6’’)の第1の駆動車(6)は、前記香箱システム(2)の前記中心軸(16)に直接接続し、前記差動装置出口は、制御車(3)である前記制御要素(3)を回転させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の機械式測時器ムーブメント(1)。
【請求項10】
前記差動装置出口における前記相補形部材(8)は、歯付きの前記制御車(3)と嵌合する相補形歯付き車(8)であることを特徴とする、請求項9に記載の機械式測時器ムーブメント(1)。
【請求項11】
前記レバー(4)は、回転式又は直線式に移動可能であり、前記制御要素(3)は、カム形状の制御部分(13)を有する車であり、前記パワーリザーブがゼロにあることを規定する遮断部材を前記カム上に有し、触子又はくさびの形状の前記接触要素(5)は、前記パワーリザーブがゼロにある際に前記遮断部材に直接接触し、前記レバー(4)の前記遮断部品(15)によって前記ムーブメントを遮断することを特徴とする、請求項1に記載の機械式測時器ムーブメント(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーリザーブ検出手段を備える機械式測時器ムーブメントに関する。
【背景技術】
【0002】
機械式時計の機械式測時器ムーブメントのパワーリザーブは、時計を装着している人が、測時器ムーブメントが停止する前の動作時間を表示することを可能にする。パワーリザーブは、時計ごとに、主に時計の製作公差、摩耗、潤滑、粗さに応じて著しく変動する可能性があることが観察されている。
【0003】
従来の機械式測時器ムーブメントにおいて、パワーリザーブ表示器がゼロを既に示している後でさえ測時器ムーブメントが依然として作動していることがみられる。パワーリザーブ表示がゼロである場合でも時計が依然として作動しているのは、欠点である。したがって、時計が停止した瞬間は、針がゼロを指した瞬間と同期しない。
【0004】
機械式測時器ムーブメントは、一般に、香箱システムを備え、香箱システムは、動力充填出口で少なくとも1つの車を駆動し、動力放出出口で1つの車を駆動し、動力充填出口及び動力放出出口のそれぞれは、差動装置の動力充填車及び動力放出車に接続される。差動装置の中間車に接続される車のセットは、パワーリザーブ表示を制御するが、パワーリザーブがゼロにある際のムーブメント遮断動作のためのムーブメント要素は、設けられていない。
【0005】
特許文献1は、機械式時計のためのパワーリザーブ表示器デバイスを記載している。表示器デバイスは、表示器部材を有する少なくとも1つの星車を備え、星車は、香箱に動力を充填する間又は香箱から動力を放出する間に回転する。表示器部材は、時計のパワーリザーブを表示するために使用される。しかし、パワーリザーブがゼロに近づいた際にムーブメントの遮断を保証することは計画されていない。
【0006】
特許文献2は、パワーリザーブ表示機構を備える計時器を記載している。この計時器は、互いに面し、共通のシャフトによって接続される2つの香箱を備え、シャフトは、パワーリザーブ表示機構を制御する。しかし、パワーリザーブがゼロに近づいた際にムーブメントの遮断を保証することは計画されていない。
【0007】
特許文献3は、香箱等の機械的エネルギー供給源と、時計ケース内の制御デバイスに関連する制御部材とを備える計時器を記載している。制御デバイスは、パワーリザーブ車を含み、パワーリザーブ車は、枠上で枢動するように取り付けられ、差動装置によって香箱に接続され、パワーリザーブ車の角度位置が香箱の動力充填レベルによって異なるようにする。制御カムは、パワーリザーブ車と同じ軸上に枢動取り付けされる。制御カムは、円弧内に延在する開口を有し、パワーリザーブ車と一体化したペグを開口内に収容する。渦巻ばねは、パワーリザーブ車とカムとの間に取り付けられる。制御デバイスに関連して、停止デバイスを作製することも備えられ、停止デバイスは、停止レバーを備え、パワーリザーブがゼロに近づいた際にムーブメントを遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許第0568499(B1)号明細書
【文献】スイス国特許発明第698752(B1)号明細書
【文献】スイス国特許出願第710320(A2)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の主な目的は、機械式測時器ムーブメントを提案することによって、従来技術の欠点を克服することであり、この機械式測時器ムーブメントは、パワーリザーブ検出手段を備え、パワーリザーブがゼロに近づく又はゼロに等しい場合、小型システムを達成する最小構成要素を使用してムーブメントの動作を直接遮断することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的で、本発明は、パワーリザーブ検出手段を備える機械式測時器ムーブメントに関し、パワーリザーブ検出手段は、独立請求項1の特徴を備える。
【0011】
機械式測時器ムーブメントの特定の実施形態は、従属請求項2から12で規定する。
【0012】
パワーリザーブ検出手段を有する機械式測時器ムーブメントの利点は、パワーリザーブの表示精度の増大を達成することにある。このことは、ゼロにおけるパワーリザーブ表示が時計の機械式ムーブメントの実際の停止に対応するように、パワーリザーブ検出手段を作製することを意味する。
【0013】
有利には、車又は板とし得る制御要素は、好ましくは、回転駆動又は直線方向で駆動される差動装置出口で駆動車構成の車に直接接続される。制御要素の位置に応じて、パワーリザーブ表示がゼロにあると、測時器ムーブメントは、香箱システムを介して、又は更には極端なケースでは、ひげぜんまいを有する機械式発振器を介して直接遮断される。
【0014】
有利には、パワーリザーブ検出手段は、好ましくは、制御車と、レバーとを備え、レバーは、レバー軸回りに回転可能に取り付けられ、制御車と協働し、一方で、香箱が完全に動力を充填されていること、及びもう一方で、香箱が事実上完全に動力が放出され、パワーリザーブの表示がゼロにあることを決定する。制御車は、角度が決定された円弧形状開口を備え、円弧形状開口は、車の軸を中心とし、制御レバーは、棒又はピン又は羽根等の制御車の開口に挿入される接触要素を備える。車の軸は、香箱システムの中心軸に平行に配設される。
【0015】
有利には、制御車の開口は、香箱の100%パワーリザーブを決定する第1の端部と、香箱システムの0%パワーリザーブを決定する第2の端部とを備える。第1の端部及び第2の端部は、円形部分を有する。好ましくは、円形部分は、端部において、半径が開口の幅の半分に対応する半円部を画定する。棒若しくはピン又は相補形棒若しくは相補形ピンが第1の端部に接触する際、パワーリザーブは100%にある、即ち、香箱システムは、完全に動力が充填されており、棒若しくはピン又は相補形棒若しくは相補形ピンは、レバーの棒又はピンと第1の端部との間で香箱システムの中心軸とすることができる。レバーの棒又はピン又は羽根が第2の端部に接触する際、パワーリザーブはゼロにある。この場合、レバーは、回転軸回りに枢動し、レバーの遮断部品がムーブメントのあらゆる要素を遮断可能にし、ムーブメントを完全に、瞬間的に停止させる。
【0016】
第1の実施形態では、レバーは、レバーの一端に遮断部品を備え、遮断部品は、香箱システムの箱の外周縁部に摩擦接触し、測時器ムーブメントを遮断する。遮断部品は、車の開口に挿入される棒又はピンである接触要素の端部と反対側の端部にある。レバーの回転軸は、遮断部品の付近にあり、遮断位置において、レバーの回転により遮断部品が香箱システムの外周縁部に押し付けられるように配設される。
【0017】
第2の実施形態では、レバーは、歯の形状の遮断部品を備え、レバーの一端で、香箱システムの外周上で歯付き車の2つの歯の間に挿入される。前述のように、遮断部品は、車の開口に挿入される棒又はピンの端部と反対側の端部にある。レバーの回転軸は、棒の付近にあり、レバーのピンは、遮断位置において、レバーの回転により歯を香箱システムの外周縁部に入れるように配設される。
【0018】
第3の実施形態では、レバーは、レバーの遠位端に遮断部品を備え、遮断部品は、機械式発振器としてのてんぷのリムに接触する。レバーの回転軸は、遮断部品の反対側の端部にある一方で、車の開口に挿入される棒又はピンは、中間位置にあるが、レバーの回転軸付近にある。
【0019】
有利には、パワーリザーブ検出手段は、第1の端部及び第2の端部を有する直線開口を備える板形状の制御要素と、制御レバーとを備えることができ、制御レバーは、レバーの一端で棒又はピンが回転可能に取り付けられ、直線開口に挿入される。制御要素は、香箱出口において、歯付き車により案内部分の間を直線移動することができ、歯付き車は、制御要素の一方の側で歯付き直線部分と嵌合する。レバーの棒又はピンが、特に直線開口の第2の端部に接触すると、てんぷのリムと直接接触するレバーの遮断部品によって測時器ムーブメントが遮断され、パワーリザーブの表示はゼロにある。
【0020】
パワーリザーブ検出手段を備える機械式測時器ムーブメントの目的、利点及び特徴は、図面に関する非限定的な以下の説明においてより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1a】本発明によるパワーリザーブ検出手段を備える機械式測時器ムーブメントの第1の簡略化した実施形態の3次元上面図である。
図1b】本発明によるパワーリザーブ検出手段を備える機械式測時器ムーブメントの第1の簡略化した実施形態の3次元上面図である。
図1c図1bに示す位置の上面図である。
図2a】本発明によるパワーリザーブ検出手段を備える機械式測時器ムーブメントの第2の簡略化した実施形態の3次元上面図である。
図2b】本発明によるパワーリザーブ検出手段を備える機械式測時器ムーブメントの第2の簡略化した実施形態の3次元上面図である。
図2c図2bに示す位置の上面図である。
図3a】本発明によるパワーリザーブ検出手段を備える機械式測時器ムーブメントの第3の簡略化した実施形態の3次元上面図である。
図3b】本発明によるパワーリザーブ検出手段を備える機械式測時器ムーブメントの第3の簡略化した実施形態の3次元上面図である。
図3c図3bに示す位置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の説明において、当業者に周知のパワーリザーブ検出手段を備える機械式測時器ムーブメントの全ての構成要素は、簡略的にのみ説明する。
【0023】
図1a、図1b及び図1cは、第1の実施形態のパワーリザーブ検出手段10を有する機械式測時器ムーブメント1のいくつかの構成要素の3次元上面図、並びに図1bに示すパワーリザーブ検出手段の位置における上平面図を示す。時計のための機械式測時器ムーブメント1は、図1aでは通常動作位置にあり、図1b及び図1cではムーブメント遮断位置にあり、パワーリザーブがゼロである。
【0024】
機械式測時器ムーブメント1は、少なくとも香箱システム2を備え、香箱システム2は、例えば、ムーブメント(図示せず)の時計板又は別の支持板の一面上に配設される。この香箱システム2は、単一の香箱又は2つの香箱又は3つ以上の周知の香箱を伴い、動力充填出口と、動力放出出口と、時間基準歯車列を駆動する差動装置とを有することができる。図1a、図1b及び図1cに示すケースにおいて、歯付き車24が香箱システム2の箱の周辺にある差動香箱システム2を使用し、少なくとも1つの大型中間最終歯車列及び/又は香箱システム2の軸又はシャフト16から開始する駆動歯車列を駆動することができる。
【0025】
概して、香箱システム2の中心軸又はシャフト16に接続される少なくとも1つの駆動車の作製が規定される。好ましくは、図1a、図1b及び図1cに示すように、駆動車7、7’の少なくとも1つの第1の構成、基準車7があり、基準車7は、箱と共に回転するように香箱システム2の箱上に固定されるか、又は香箱システム2の中心軸又はシャフト16に接続される。通常、香箱システム2の箱は、香箱システム2の中心軸又はシャフト16と同じ方向で回転する。
【0026】
好ましくは、第1の実施形態によれば、第1の駆動車7、7’構成、及び第2の駆動車6、6’、6’’構成も提供され、差動香箱システム2として使用される。第1の駆動車7、7’構成は、差動装置の動力放出入口に接続される一方で、第2の駆動車6、6’、6’’構成は、差動装置の動力充填入口に接続される。この第1の実施形態では、第1の駆動車7、7’構成は、香箱システム2の箱上に固定される第1の基準車7を備える一方で、第2の駆動車6、6’、6’’構成は、香箱システム2の軸又は中心シャフト16に直接接続される第1の基準車6を備える。
【0027】
機械式測時器ムーブメント1のパワーリザーブを検出する手段10は、制御要素3を備え、制御要素3は、この第1の実施形態に示すような制御車であるか、又は直線方向で移動可能な制御板であってもよい。制御車3は、香箱システム2の箱の反対側に配設され、香箱システム2の中心軸16に平行な回転軸23回りに回転するように構成することができる。この場合、相補形車8の形状の相補形部材8は、特に差動装置出口において、香箱システム2の動力を充填する方向又は動力を放出する方向で制御車3を駆動する。
【0028】
本実施形態では、制御車3は、制御部分として開口13を備え、前記開口13は、香箱システム2の動力が完全に充填されていることを規定する第1の端部21と、香箱システム2の動力が完全に放出され、パワーリザーブがゼロにあることを示すことを規定する第2の端部22とを有する。開口13は、円弧形状であり、角度が決定され、制御車3の軸23を中心とする一方で、香箱システム2の中心軸又はシャフト16に平行である。開口13の第1の端部21及び開口13の第2の端部22は、円形部分の形状を有する。これらの円形部分は、両端において、半径が開口13の幅の半分に対応する半円を画定する。
【0029】
機械式測時器ムーブメント1のパワーリザーブを検出する手段10は、レバー4も備え、レバー4は、好ましくは、制御車3の回転軸23に平行な及び/又は香箱システム2の中心軸16に平行なレバー軸14回りに回転するように取り付けることができる。レバー4は、制御車3である制御要素3の開口13内に配設される接触要素5を備え、接触要素5は、この第1の実施形態では、パワーリザーブがゼロを示す間、開口13の第2の端部22に接触する。レバー4は、第2の端部22によって押され、レバー軸14回りに回転し、レバー4の遮断部品15が香箱システム2の箱に接触する、好ましくは、香箱システム2の箱の縁部12と接触するようにする。レバーの回転軸14は、遮断部品15付近に配設され、遮断部品15は、くさび又は突起とすることができ、レバー4の表面下に固定されるか、又はレバー4全般と一体に直接作製される。くさび又は突起は、通常、外周上にリブを一切備えず、ムーブメントを摩擦によって遮断するために香箱システム2の縁部12に寄りかかるにすぎない。
【0030】
図示しない一実施形態では、レバー4は、回転又は直線式に移動可能とし得る。レバー4は、接触要素5を備えることができ、接触要素5は、制御要素3の制御部分13の反対側に配設されるか、又は制御要素3の制御部分13内に配設される。制御要素3は、カム形状の制御部分を有する車とすることができ、パワーリザーブがゼロにあることを規定する遮断部材をカム上に有する。触子又はくさびの形状の接触要素5は、パワーリザーブがゼロにあると遮断部材に直接接触し、レバー4の遮断部品15によってムーブメントを遮断する。
【0031】
第1の駆動車構成は、車形状の相補形部材8の軸上に同軸に取り付けられる第2の車7’と、第2の車7’を回転させる第1の車7も備え、前記第1の車7は、香箱システム2の中心軸16で香箱システム2の箱上に固定される。好ましくは、第1の車7は、香箱システム2の中心軸又はシャフト16によって横断される。2つの車7、7’及び相補形車8は、歯付き車であり、少なくとも第1の車7が、嵌合によって前記第2の車7’を駆動するのを可能にする。第2の車7’と相補形車8との間の接触及び第3の車6’’と相補形車8との間の接触は、ボールを通過する。前記ボールを挟む接触によって、第2の車7’と第3の車6’’との間に差動効果がある。相補形歯付き車8は、外周に歯部を備える制御車3と嵌合する。
【0032】
香箱システム2に動力を充填する第2の駆動車6、6’、6’’構成は、香箱システム2の中心軸又はシャフト16に直接接続する第1の車6を備える。この第1の歯付き車6は、第2の歯付き車6’と嵌合し、第2の歯付き車6’は、第1の車6と同じ平面内に配設され、回転軸18回りに回転する。この第2の歯付き車6’は、第3の車6’’と嵌合するようにも設けられ、第3の車6’’は、相補形車8と第1の駆動車構成の第2の車7’との間に同軸に配設される。
【0033】
第2の構成の第3の車6’’及び第1の構成の第2の車7’の回転に応じて、相補形車8はどちらかの方向で回転する。
【0034】
上記した車構成は、エネルギー貯蔵槽として香箱システム2の動力充填及び動力放出を関連付け、パワーリザーブの表示を可能にすることを留意されたい。第2の駆動車6、6’、6’’構成は、香箱システム2の動力の充填(巻き)を良好な伝達比で伝達する一方で、第1の駆動車7、7’構成は、香箱システム2の動力の放出(動作中の通常の解放)を良好な伝達比で伝達する。差動装置は、これら2つの情報を平均化し、表示器に伝達するように設計されている。
【0035】
香箱システム2の完全な動力充填に対応する開口13の第1の端部21は、レバー4の接触要素5に接触するか、又はこの場合、香箱システム2の中心軸16に接続される一部分に接触することにも留意されたい。
【0036】
図2a、図2bは、本発明によるパワーリザーブ検出手段を備える機械式測時器ムーブメントの第2の簡略化した実施形態の2つの3次元上面図を示し、図2cは、図2bに示す位置の上面図を示す。
【0037】
この第2の実施形態は、図1a、図1b及び図1cを参照しながら説明したものと同様の構成要素を備える。こうした条件下、これらの構成要素の完全な説明は繰り返さない。説明は、異なる構成要素にのみ言及する。
【0038】
この第2の実施形態では、本質的な差は、レバー4の遮断部品15にあり、遮断部品15は、歯であり、パワーリザーブがムーブメントを遮断するゼロにあるため、香箱システム2の箱の外周歯付き車24の歯と接触することができる。
【0039】
図3a、図3b及び図3cに示す第3の実施形態は、他の2つの実施形態とは異なる。というのは、第3の実施形態は、パワーリザーブがゼロである際、香箱システムの箱で遮断が生じるのではなく、機械式発振器のリム30で遮断が生じるためである。しかし、ムーブメントの遮断は、上記で説明した実施形態と同じように、遮断部品15がリム30と接触することによって生じる。したがって、これらの要素の完全な説明は繰り返さない。
【0040】
上記で説明した様々な構成要素は、パワーリザーブがゼロである際にムーブメントの直接的な遮断を保証する一方で、他の形状であってよい。
【0041】
たった今行った説明から、当業者は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなくパワーリザーブ検出手段を有する機械式測時器ムーブメントのいくつかの様々な実施形態を設計することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 機械式測時器ムーブメント
2 香箱システム
3 制御手段
4 レバー
5 接触要素
6 第2の駆動車装置
7 第1の駆動車装置
8 相補形部材
10 パワーリザーブ検出手段
13 開口
14 レバー軸
15 遮断部品
16 中心軸
21 第1の端部
22 第2の端部
23 回転軸
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c