(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】機械式時計の動作を一時的に停止させる装置
(51)【国際特許分類】
G04B 17/28 20060101AFI20230306BHJP
G04B 17/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
G04B17/28
G04B17/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021177239
(22)【出願日】2021-10-29
【審査請求日】2021-10-29
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ツァウク
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・リエド
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03588200(EP,A1)
【文献】特開2006-030190(JP,A)
【文献】特開2017-049235(JP,A)
【文献】特開2017-049236(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02871536(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 17/00,17/28
G04B 27/00-27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式時計(1)の動作を一時的に停止させる装置であって、前記装置は、前記機械式時計のムーブメントの地板(50)に円状に組み立てられ配置された少なくとも3つのレバー(4)と、前記装置の停止レバー(17)に作用するよう前記レバーを一緒に休止モードから作動モードに切り替えるための前記レバー(4)の少なくとも1つの作動部材(2)とを備え、前記停止レバーは、前記機械式時計のムーブメントの共振子(14)を一時的に停止させるように構成され、前記停止レバー(17)の作動は、前記停止レバー(17)の姿勢にかかわらず前記レバー(4)のうちの少なくとも1つによって実行され得る、装置において、トゥールビヨンキャリッジ(15)がどのような姿勢であっても前記レバーが前記作動モードで前記停止レバー(17)を作動させるための円形周縁を画定するように、前記レバー(4)は前記地板(50)に構成されることを特徴と
し、
前記装置は、機械式トゥールビヨン時計の動作を一時的に停止させるように適し、前記トゥールビヨンキャリッジ(15)は、がんぎ車(11)および前記停止レバー(17)に接続している機械式共振子(14)を内包している、装置であって、前記作動部材(2)は、前記トゥールビヨンキャリッジの軸と同心の制御リング(2)であることを特徴とし、
前記停止レバー(17)は、前記トゥールビヨンキャリッジ(15)の回転軸(18)周りに回転するように取り付けられることと、前記停止レバー(17)は、前記キャリッジ(15)に固定されたばね(19)によって休止位置に保持されることと、前記停止レバー(17)は、前記レバー(4)のうちの少なくとも1つによって作動可能で前記共振子を一時的に停止させ、前記共振子はヒゲゼンマイ(14)であり、前記停止レバー(17)は、テンプの軸のカム、テンプと一体の軸またはテンプのリムを含む部品に当接していることと、を特徴とする、装置(100)。
【請求項2】
少なくとも3つのレバー(4)は、地板(50)に円形に配置され、各レバーの対応する孔(6)を貫通するロッドの軸周りに回転するように取り付けられることを特徴とする、請求項
1に記載の装置(100)。
【請求項3】
各レバー(4)は、第1の部分に長円形開口(5)を有することと、前記作動部材は、制御ロッドまたはピン(3)を固定して受け入れるように設けられた開口をレバー(4)と同じ数だけ有する制御リング(2)であり、前記制御ロッドまたはピン(3)の各々は、各レバー(4)の対応する長円形開口(5)に挿入され、前記長円形開口は、休止モードを規定する第1の位置(p1)から作動モードを規定する第2の位置(p2)への方向に対して外側方向に向かう傾斜を有することと、前記制御リング(2)は、制御コネクティングロッド(7)の作動によって回転して第1の位置の休止モードから第2の位置の作動モードに切り替わり、各レバー(4)は、各制御ロッドまたはピン(3)の作用によって作動位置になるように各長円形開口(5)の前記第1の位置から前記第2の位置に外側に枢動し、第2制御ロッド(16)によって内側から前記停止レバー(17)を作動させることとを特徴とする、請求項
2に記載の装置(100)。
【請求項4】
各レバー(4)は、第1の部分に長円形開口(5)を有することと、前記作動部材は、制御ロッドまたはピン(3)を固定して受け入れるように設けられた開口をレバー(4)と同じ数だけ有する制御リング(2)であり、前記制御ロッドまたはピン(3)の各々は、各レバー(4)の対応する長円形開口(5)に挿入され、前記長円形開口は、休止モードを規定する第1の位置(p1)から作動モードを規定する第2の位置(p2)への方向に対して内側方向に向かう傾斜を有することと、前記制御リング(2)は、制御コネクティングロッド(7)の作動によって回転して第1の位置の休止モードから第2の位置の作動モードに切り替わり、各レバー(4)は、各制御ロッドまたはピン(3)の作用によって作動位置になるように各長円形開口(5)の前記第1の位置から前記第2の位置に内側に枢動し、第2制御ロッド(16)によって外側から前記停止レバー(17)を作動させることとを特徴とする、請求項
2に記載の装置(100)。
【請求項5】
前記作動部材は、前記レバー(4)と同数の長円形開口(5)を有する制御リング(2)であることと、各レバー(4)は、第1の部分に制御ロッドまたはピン(3)を有し、前記制御ロッドまたはピン(3)の各々は、前記制御リング(2)の対応する長円形開口(5)に挿入され、前記長円形開口は、休止モードを規定する第1の位置(p1)から作動モードを規定する第2の位置(p2)への方向に対して内側方向に向かう第1傾斜または外側方向に向かう第2傾斜を有することと、前記制御リング(2)は、制御コネクティングロッド(7)の作動によって回転して第1の位置の休止モードから第2の位置の作動モードに切り替わり、各レバー(4)は、制御ロッドまたはピン(3)の作用によって作動位置になるように各長円形開口(5)の前記第1の位置から前記第2の位置に、前記傾斜が前記第1傾斜である場合に外側に枢動するか、前記傾斜が前記第2傾斜である場合に内側に枢動して、前記第1傾斜で内側から、または前記第2傾斜で外側から、第2制御ロッド(16)によって前記停止レバー(17)を作動させることとを特徴とする、請求項
2に記載の装置(100)。
【請求項6】
前記制御リング(2)は、前記レバー(4)と前記レバーを前記地板(50)に固定するねじ(10)との間で自由回転するように維持され、前記制御リング(2)は、前記制御リング(2)が制御コネクティングロッド(7)に強制されて回転している間に前記ねじの前記ロッドと接触して摺動でき、制御コネクティングロッドは、前記制御リングの前記制御ロッドもしくはピン(3)のうちの1つ、または前記レバー(4)のうちの1つに接続し、前記
機械式時計(
1)の時刻設定部材と接続していることを特徴とする、請求項
3~
5のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項7】
少なくとも3つレバー(4)は、すべて地板(50)に円形に配置された可撓性薄片レバーであり、前記共振子を形成しているヒゲゼンマイ(14)の軸と同軸のベースリング(4’)に直接接続され、前記レバーはすべて、前記ベースリングと共に単一の構成要素を形成することと、作動部材としての制御リング(2)は、制御ロッドまたはピン(3)を固定して受け入れるように設けられた開口をレバー(4)と同じ数だけ有し、各レバーの部分に作用して前記制御リングの回転に応じて休止位置から作動位置にレバーを切り替え、前記レバーは外向きに押されて第2制御ロッド(16)によって前記停止レバー(17)を作動させることとを特徴とする、請求項
1に記載の装置(100)。
【請求項8】
可撓性薄片の形状である各レバーは、各レバーの内面に斜面を有し、前記レバー(4)の前記休止位置から前記作動位置に切り替わるときに、前記制御リング(2)の対応する前記制御ロッドまたはピン(3)が前記斜面に当接して通過して前記レバー(4)を外向きに押すことを特徴とする、請求項
7に記載の装置(100)。
【請求項9】
可撓性薄片の形状である各レバーは、各レバーの外面に斜面を有し、前記レバー(4)の前記作動位置から前記休止位置に切り替わるときに、前記制御リング(2)の対応する前記制御ロッドまたはピン(3)が前記斜面に当接して通過して前記レバー(4)を内向きに押すことを特徴とする、請求項
7に記載の装置(100)。
【請求項10】
前記レバーはばね型の可撓性薄片からなるため、前記レバー(4)の前記作動位置から前記休止位置に、前記レバーは自動で前記休止位置に戻ることを特徴とする、請求項
7に記載の装置(100)。
【請求項11】
前記レバーはばね型の可撓性薄片からなるため、前記レバー(4)の前記休止位置から前記作動位置に、前記レバーは自動で前記作動位置に戻ることを特徴とする、請求項
10に記載の装置(100)。
【請求項12】
前記レバーの第2の部分にある各レバー(4)の自由端の厚みは、各レバー(4)の全体の厚みよりも薄いことと、休止位置では、前記自由端は、次のレバーの第1の部分の凹部に収容され、前記凹部の深さは、各自由端の厚み以上であることとを特徴とする、請求項
3~
6のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項13】
前記停止レバー(17)は、前記第2制御ロッド(16)の第1の端部とは反対側の第2の端部に、前記共振子を形成しているヒゲゼンマイを前記ヒゲゼンマイの軸上でブロックすることで、または前記ヒゲゼンマ
イの軸上で停止カム(20)と接触させることで前記
機械式時計(1)の動作を一時的に停止させる停止要素を有することを特徴とする、請求項
3~
12のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか一項に記載の時計の動作を前記時計の時刻設定時に一時的に停止させる装置(100)を備えている機械式トゥールビヨン時計(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式時計、特に機械式トゥールビヨン時計の動作を、好ましくは時計の時刻を設定する際に一時的に停止させる装置に関する。機械式トゥールビヨン時計の場合、トゥールビヨンキャリッジは、がんぎ車に接続している機械式振動子を内包している。
【0002】
本発明はまた、時計の動作を一時的に停止させる装置を備えている機械式トゥールビヨン時計にも関する。
【背景技術】
【0003】
時計製造で留意すべきこととして、「回転キャリッジ」とも呼ばれるトゥールビヨンは、地球の重力に起因する共振子の等時性の乱れを相殺して機械式時計の精度を向上させることを目的として脱進機構に追加された時計の複雑機構である。特にカルーセルと比較してトゥールビヨンが際立っている基本的な基準は、トゥールビヨンキャリッジが噛み合う固定された輪列があることである。一般に、トゥールビヨンキャリッジは、2つの固定点の間に回転式に取り付けられる。
【0004】
トゥールビヨンの主機能は、時計の共振子を重力に対して一定の速度で回転させて、この重力が共振子の等時性に及ぼす影響を平均化することである。脱進機は、脱進機の維持を確保して時計の歯車の回転速度(カウント)を調節するために、共振子に連結されている。脱進機は、一振動周期あたり1回か2回共振子と相互作用する。相互作用中に共振子が動く角度は、揚力角と呼ばれる。共振子の残りの行程は、追加角度または追加アークと呼ばれる。
【0005】
追加角度の過程では、共振子は、脱進機と接触していることあれば(摩擦静止脱進機)接触していないこともある(自由脱進機)。揚力角の過程では、脱進機は2つの主な段階を実行するが、それは停止解除(またはカウント)とインパルス(または維持)である。
【0006】
機械式時計の時刻を再設定する場合、機械式時計の動作を一時的に停止させる停止レバー装置を用いることが時計職人に知られている。この装置により、特に、使用者が竜頭を引っ張って時刻設定を行う際に時計の動作を停止させることが可能になる。一般に、レバー停止機構は、時刻設定機構によって制御され、共振子に作用して静止位置で共振子をブロックする。これによりカウントが中断され、仕上げと表示の輪列の動きを停止させる。さらに具体的には、それはヒゲゼンマイのリムに載っている板ばねであり、これが共振子を構成する。この板ばねは、テンプをランダムな位置で停止させるため、テンプを静止位置で停止させることが可能であり、この場合、テンプを機構によって解放した後に再始動させることは保証されない。
【0007】
この点に関しては、特許文献1を引用してよい。同文献には、少なくとも分針と秒針を有する計時器の分針を調整する構成であって、通常位置から調整位置に軸沿いに移動できる調整ロッドを有する構成が記載されている。調整位置では、調整ユニットにより、計時器の時刻の再設定を実行するために、ばね駆動の動作を引き起こしたり停止させたりでき、例えば停止レバーシステムによってヒゲゼンマイ(共振子)を停止させたりできる。ただし、このような構成は、それ自体が回転しているトゥールビヨン内に共振子が収容されているトゥールビヨン時計で実現することは困難であることに注意されたい。
【0008】
特許文献2には、機械式時計のトゥールビヨンに取り付けられたヒゲゼンマイ(共振子)を停止させる装置が記載されている。この装置は、2つの停止レバーを備え、各レバーは、レバー枢動軸に枢動するように取り付けられ、テンプおよびトゥールビヨンが自由に回転できる休止位置から、少なくとも1つのレバーがテンプと接触してレバーを停止させる停止位置に切り替えることが可能である。また、各々の停止レバーにはプレストレス手段が設けられ、それによって停止レバーによってテンプにかかる力は別々に作用できる。各停止レバーが別々に直接作用することで、時計の時刻を再設定する過程でトゥールビヨンキャリッジの姿勢にかかわらずヒゲゼンマイを効果的に停止させる際に問題が生じるおそれがあり、それによってトゥールビヨンキャリッジが完全に一回転するおそれがある。
【0009】
特許文献3には、テンプ停止機構を有するトゥールビヨン時計のムーブメントが記載されている。このトゥールビヨンは、キャリッジの下方キャリッジ部と上方キャリッジ部との間にヒゲゼンマイを有する。停止機構は、キャリッジと一体化して回転して停止位置でテンプと接触する停止要素と、停止要素を作動させる装置とを備えている。停止要素は、摩擦を伴ってテンプと噛み合ってテンプを停止させるために、キャリッジと同軸のディスク形状であってよい。そのため、そのようなディスクによる停止接触により、ヒゲゼンマイの長期摩耗が起こるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第6196713(B1)号明細書
【文献】欧州特許第2703912(B1)号明細書
【文献】欧州特許第2787400(B1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明に関しては、時計の時刻を設定する過程で、機械式時計、特に機械式トゥールビヨン時計の動作の一時停止を行うことが求められている。
【0012】
本発明は、最新のトゥールビヨン構造の文字盤にある開口を通して見えているトゥールビヨンおよびヒゲゼンマイを瞬間的に停止させて再始動させることを保証するものである。また、本発明により、ヒゲゼンマイの巻き上げ角度を最小にすることを保証でき、それによってヒゲゼンマイの解放後にテンプを的確に動作させることが確実になる。
【0013】
したがって、本発明の目的は、機械式時計、特に機械式トゥールビヨン時計の動作を一時的に停止させる装置を提供することによって先行技術の欠点を克服し、前述の先行技術の装置の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのために、本発明は、機械式時計、特に機械式トゥールビヨン時計の動作を一時的に停止させる装置であって、独立請求項1に記載の特徴を含む装置に関する。
【0015】
機械式時計、特に機械式トゥールビヨン時計の動作を一時的に停止させる装置の特定の実施形態は、従属請求項2~15にも記載されている。
【0016】
停止装置の利点は、停止装置が、機械式ムーブメントの地板に円状に配置された複数のレバーを備え、複数のレバーが、ヒゲゼンマイまたはトゥールビヨンキャリッジの回転軸と同心である部材が同時に作用することで休止位置から作動位置へ一緒に移動するように意図されているという点にある。第1の実施形態の作動位置では、作動位置で回転するレバーは、キャリッジの支持体に回転式に取り付けられた停止レバーの制御ロッドを外向きに押し、それによって停止レバーの一方の端部がテンプの中心カムと接触して、時計の時刻を再設定するために機械式ムーブメントを停止させる。枢動可能で地板に円状に取り付けられたレバーの構成により、機械式トゥールビヨンのムーブメントを有する時計の場合に、トゥールビヨンキャリッジの姿勢にかかわらずテンプを停止させる停止レバーを作動させるために、レバーの作動位置で制御エッジを有することが可能になる。
【0017】
有利には、地板上の作動位置で回転するレバーは、ヒゲゼンマイの振動を不動にすることによって、また、主にレバーのうちの1つの停止レバーの制御ロッドと接触する摩擦によってトゥールビヨンキャリッジを不動することによって、ムーブメントを一時的に停止させることができる。
【0018】
第2の実施形態によれば、円状に配置されたレバーは、ヒゲゼンマイおよびムーブメントの仕上げ歯車をすべて一時的に停止させて時計の時刻を再設定する際に、停止レバーの制御ロッドを内向きに押すように回転して機械式ムーブメントをブロックする。この非限定的な事例では、円状に配置した6つのレバーを想定できる。
【0019】
第1の実施形態と同じ動作である第3の実施形態によれば、可撓性薄片要素からなる全レバーが共に単一の構成要素を形成する。制御リングは、可撓性薄片要素を作動位置に押し込めて時計の動作の一時的な停止を制御するために、制御コネクティングロッドによって回転できる。この場合、長円形開口は各レバーに設けられない。なぜならレバーは、全レバーが制御リングの非作動位置で自動的に休止位置に戻れるように板ばねの可撓性に作用するからである。この機構の設計は、作動位置に相当する板ばねの自由位置と、非作動位置または休止位置に相当する抑制位置とを逆にできる。
【0020】
有利には、提案した装置の機械面の解決策は、トゥールビヨンの美観を損ねるものではなく、共振子を停止できるようにすることでトゥールビヨンの慣性を損なうものではない。停止レバーは、共振子が停止する一方で、地板に円状に配置されたレバーがトゥールビヨンキャリッジのブレーキとして機能できることも確実にできる。トゥールビヨンキャリッジのより良いブレーキを実現するために、表面を粗くするか、レバーの周部に小さな歯を設けることを想定できる。
【0021】
有利には、少なくとも3つのレバーまたは4つのレバーを、レバーに接続しているリングを介して一緒に回転するように地板に円状に配置することを想定できる。レバーは、レバーの作動リングを回転させるためのガイドとして機能するように、各レバーが軸状の回転ロッドによって地板に回転式に取り付けられる。リングは、時計の時刻を再設定するための部材に接続された制御コネクティングロッドを介して休止位置から作動位置に回転する。
【0022】
また、本発明は、時計の機械式ムーブメントの動作を一時的に停止させる装置を含む機械式トゥールビヨンムーブメントの時計であって、独立請求項16の特徴を含む時計にも関する。
【0023】
機械式時計、特に機械式トゥールビヨン時計の動作を一時的に停止させる装置の目的、利点および特徴は、特に図面に関する以下の説明からさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による機械式時計の動作を一時的に停止させる装置を有する機械式トゥールビヨンムーブメントの時計の部分的な3次元上面図である。
【
図2】本発明による時計の機械式ムーブメントの動作を一時的に停止させる装置の主要構成要素を明らかにするために示したテンプを含む時計を簡易化した3次元上面図である。
【
図3A】本発明による機械式時計の動作を一時的に停止させる装置の第1の実施形態の概略図である。
【
図3B】本発明による機械式時計の動作を一時的に停止させる装置の第1の実施形態の概略図である。
【
図4A】本発明による機械式時計の動作を一時的に停止させる装置の第2の実施形態の概略図である。
【
図4B】本発明による機械式時計の動作を一時的に停止させる装置の第2の実施形態の概略図である。
【
図5A】本発明による機械式時計の動作を一時的に停止させる装置の第3の実施形態の概略図であり、レバーが集まって単一の可撓性薄片構成要素を形成している図である。
【
図5B】本発明による機械式時計の動作を一時的に停止させる装置の第3の実施形態の概略図であり、レバーが集まって単一の可撓性薄片構成要素を形成している図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の説明では、機械式ムーブメントの動作を一時的に停止させる装置を含む機械式ムーブメントの時計の様々な部材または要素は、この技術分野で公知のものであり、これについては簡潔に説明しているだけである。
【0026】
まず初めに留意すべきは、以下に主に記載しているのは、機械式ムーブメントの動作の一時的な停止を行う装置であって、通常位置から時刻設定位置に切り替える際に一瞬停止させ、機械式トゥールビヨン時計の時刻設定位置から通常位置に切り替える際、特に前記時計の時刻を再設定する際に、テンプの振幅を最小にして再始動させることを確実にする装置であるということである。また、この停止装置は、好ましくは停止レバーを有する停止装置である。ただし、機械式ムーブメントの動作を一時的に停止させるそのような装置を、トゥールビヨンのない従来の時計に対して使用することを検討できる。
【0027】
機械式トゥールビヨン時計の場合、キャリッジは共振子を内包しており、共振子は、好ましくはヒゲゼンマイと脱進機構であり、特に以下に簡潔に説明するがんぎ車を備えている。以下に記載するどの実施形態の場合でも、機械式時計の動作を一時的に停止させる装置は、まず、特に時計の時刻を再設定する際にヒゲゼンマイをブロックする停止レバーを備えている。停止レバーは、トゥールビヨンキャリッジと共に回転し、レバーを時計ムーブメントの地板に円状に取り付けて配置することによって、時計の動作を一時的に停止させるように作動できる。レバーは、休止位置か作動位置に留まることができ、トゥールビヨンキャリッジおよび停止レバーがどのような姿勢であっても、停止レバーを直接作動させるように作用して時計の動作を一時的に停止させる。
【0028】
図1は、機械式時計の動作を一時的に停止させる装置100を有する機械式トゥールビヨンムーブメントの時計1の部分的な3次元上面図を示している。機械式時計の動作を一時的に停止させるのは、図示していない竜頭の軸を従来の方法で作動させて前記時計の時刻を再設定する際に行われる。
【0029】
部分的に示した時計1は、図示していない仕上げ輪列を有する機械式時計ムーブメントを備えている。時計1はまた、この場合はヒゲゼンマイである共振子14を内包しているトゥールビヨンキャリッジ15と、スイスレバーおよび歯車形状のがんぎ車11を有する脱進機構とを備えている。がんぎ車11は、ヒゲゼンマイ14が半分振動するごとに同じ回転方向に回転できるように構成されている。がんぎ車11は、固定された秒歯車15’と噛み合う。
【0030】
トゥールビヨンキャリッジ15は、1分あたり1回転の速度で回転し、その機能に必要な様々な受け、例えばキャリッジ15という名称で総称されているトゥールビヨンの下方軸受け51からなる。トゥールビヨンキャリッジ15は、トゥールビヨンのバー30と機械式ムーブメントの地板50との間に回転状態で維持される。同じく時計の動作を一時的に停止させる装置100の一部もトゥールビヨンキャリッジ15と共に回転する。装置100のこの部分は、キャリッジ51の軸18周りに回転するように取り付けられた停止レバー17、停止レバーのばね19、およびテンプ軸14に取り付けられたテンプ停止カム20である。この停止レバー17は、第1の端部に回転制御ロッド16を有し、このロッドは、トゥールビヨンキャリッジ15の下に突出していて、地板50に円状に配置された一連のレバー4によって制御され、これについては
図2を参照して以下に説明する。停止レバー17は、
図1では見えていない第2の端部に、例えばヒゲゼンマイ14の軸で停止カム20と接触した状態でヒゲゼンマイを軸でブロックすることによって時計1の動作を一時的に停止させる停止要素を備えている。停止レバー17は、ばね19によって休止位置に保持され、ばねは、一方が制御ロッド16と回転軸18との間で停止レバー17に固定され、もう一方がキャリッジ15に固定される。ばね19の形状は、円の一部であってよい。
【0031】
停止レバー17の停止要素によって、テンプと一体の軸に当接させるかテンプのリムに当接させても同じくテンプ14を停止させることが可能であることは明白である。
【0032】
トゥールビヨンキャリッジ15は、一方の端部に、リング部分の形状である文字盤40に対面して秒を表示する表示要素を備えていてよく、文字盤は、地板50に取り付けられ、トゥールビヨンキャリッジ15と同軸で周部に配置される。文字盤40は、秒を表す指標を有し、トゥールビヨンキャリッジ15の表示要素(例えば菱形)により、トゥールビヨンキャリッジ15の回転で秒を表示することが可能になる。
【0033】
図2は、時計の動作を一時的に停止させる装置100の必須要素を示しているが、時計の時刻を再設定する際に停止装置によって停止することを意図したテンプ14を除く。前述したように、装置100は停止レバー装置17である。この停止レバー17は、例えばヒゲゼンマイ14の軸で停止カム20と接触した状態でヒゲゼンマイを軸でブロックすることによって時計の動作を一時的に停止させることができる。停止レバー17は、ばね19によって休止位置に保持され、ばねは、一方が制御ロッド16と回転軸18との間で停止レバー17に固定され、もう一方がキャリッジの支持体に固定される。ばね19の形状は、円の一部であってよい。
【0034】
テンプ停止カム20の形状は、少なくとも1点21で、停止レバーの作用を受けて、テンプの停止位置が休止点の外に来るようにし、機構の作動が終わるとテンプを再始動させるように構成される。有利には、カムは、不均衡をゼロにしてヒゲゼンマイ共振子の等時性を妨害しないようにする2つの点21および22を有する。
【0035】
第1の実施形態では、停止装置100は、本質的に少なくとも3つのレバー、あるいは4つ以上のレバー4を有し、レバーは、
図2には図示していない地板の孔6に固定された軸周りに回転するように取り付けられる。好ましくは、
図2に示したように、各レバー4は、一方の端部に回転軸を通す孔6を有し、回転軸は、各レバーを地板に取り付けるために、直接ねじ10とすることができる。レバーはすべて、作動位置で、また休止位置でも、円を形成する。
【0036】
装置100は、レバー4の作動部材2も備えている。この作動部材2は、制御リングの形状であってよく、制御リングの周の一部は、回転ガイドを形成するねじ10と接触した状態で回転できるように、ねじ10のロッドと接触した状態で配置される。これらのレバー4の作動は、時計の時刻を再設定する際に起こる。制御リング2は、リングの周に隆起部を有し、隆起部の数は、円形に配置されたレバー4と同数である。各隆起部は、制御ロッドまたはピン3を通す貫通開口を有し、ロッドまたはピンは、各隆起部の開口を通って静止状態に保持される。
図2に示した事例では、地板に回転式に取り付けられたレバーが4つある。各レバー4は、地板の回転孔6から、第1の制御部分とそれに続く円形薄片の形状である第2の部分とで構成される。各レバー4の第1の部分には、制御ロッド3を通すために長円形のガイド開口5が設けられる。それぞれの制御ロッドまたはピン3がそれぞれの対応する長円形開口5にある第1の位置では、各レバー4は休止位置にあり、それぞれの制御ロッド3がそれぞれの長円形開口5にある第2の位置では、装置の停止レバー17を作動させるための作動位置がある。
【0037】
全レバー4を同時に休止位置から作動位置に切り替えるのは、制御コネクティングロッド7を用いて達成され、コネクティングロッドは、少なくとも時計の時刻を再設定するための部材に接続されている。コネクティングロッドは、リングの隆起部の開口を通って1つのレバーの長円形開口5の中にロッド8を介して接続される。当然ながら、このロッド8は、直接、制御ロッドまたはピン3とすることができる。ただし、コネクティングロッドはレバーの下からロッド8を介して制御リング2に接続され、一方制御リング2は、レバー4を上から覆う。そのため、制御コネクティングロッド7により、第1の位置と第2の傾斜位置との間にガイドを有する各長円形開口にある各制御ロッド3およびロッド8を移動させて、休止モードから作動モードへ、またその逆に切り換えることによって、全レバー4を休止位置T1から作動位置T2へ、またその逆に切り換えることが可能になる。
【0038】
図3Aおよび
図3Bは、レバー4を休止位置から作動位置に切り替えることを説明するために、レバー4が装置100の時計の機械式ムーブメントの地板に円状に取り付けられている構成の第1の実施形態を独占的に表している。構成要素の主要部分をすでに
図2を参照して説明したため、完全な説明、特に、簡略化のために
図3Aおよび
図3Bに示していないレバー4によって制御される停止レバーに関することは、繰り返さない。
【0039】
レバー4の各長円形開口5は、開口5の第1の位置p1と第2の位置p2との間に傾斜5’を有する。これによって、制御リング2のそれぞれの制御ロッド3は、制御コネクティングロッド7の作用により各レバー4を休止位置T1から作動位置T2に押し込むことが可能になる。この作動位置では、レバー4の外側は、停止レバーの制御ロッドを押し込んでヒゲゼンマイを一時的に停止させるために使用される円形エッジを形成する。レバー4の作動位置の円形エッジの形状により、停止レバーによるヒゲゼンマイの一時停止および時計の動作全般の制御は、トゥールビヨンキャリッジの姿勢に左右されず、これは有利である。
【0040】
レバー4が作動状態にあるとき、つまり第1の実施形態で枢動後に外向きに押されたときに円形エッジを有するために、レバー4の第2の部分でレバーの各自由端の厚みは、レバー4の全体の厚みよりも薄いことに注意されたい。各レバー4のこの自由端は、それに続くレバー4の第1の部分の凹部に一部が配置され、凹部の深さは、薄くなっている自由端の厚み以上である。そのため、休止モードでもレバー4が外向きに押されている作動モードでもどちらでも、レバーが円状に配置されていることは、ヒゲゼンマイ、停止レバーまたはトゥールビヨンキャリッジがどのような姿勢であっても時計の動作を停止させるために、作動位置ではレバーの外側が常に途切れのない円形エッジを画定して停止レバーを作動させることを意味する。
【0041】
図3Aは、レバー4の休止位置T1を示し、各レバーが対応するそれぞれのロッド周りを、例えば孔6を通るねじ周りを回転するように取り付けられている。制御コネクティングロッド7は、コネクティングロッド7の第1の端部の開口9を通して時計の時刻設定機構に接続されている。コネクティングロッドの第2の端部は、1つのレバー4の長円形開口5を通るロッド8を介して固定され、制御リング2の開口を通って固定される。
【0042】
制御ロッドまたはピン3は、各レバー4で長円形開口5の第1の位置p1にあることに注意されたい。この位置では、レバー4はすべて停止レバーの制御ロッドから離れている。前述したように、各レバー4の自由端は、休止位置にあるそれに続く別のレバーの第1の部分の凹部内に来るように、好ましくは厚みがレバー4の全体の厚みよりも薄い。この凹部の深さは、レバー4の自由端の厚み以上で、厚みが各レバー4の主要部分の厚み未満であってよい。
【0043】
休止モードから
図3Bに示した作動モードに切り替えるために、制御ロッドまたはピン3を有する制御リング2は、各レバー4の各長円形開口5の位置p1から、長円形開口5の傾斜5’の先にある位置p2に切り替える必要がある。各長円形開口5の傾斜5’は、休止モードを規定する第1の位置p1から作動モードを規定する第2の位置p2までの中心に向かって小さくなる。休止位置から作動位置T2への切り替えは、制御コネクティングロッド7を押して制御リング2を回転させ、それによって
図3Aの矢印で示したように円の中心から離れている様々なレバー4を移動させて制御ロッドによって停止レバーを制御することによって行われる。コネクティングロッドは、作動位置T2では破線で示されている。休止位置とこの
図3Bの作動位置のどちらでも、レバー4はすべて同時に作動し、停止レバーを作動させるためのこれらのレバー4の周部は、途切れのない円形エッジを形成する。これにより、レバー4の作動位置でのトゥールビヨンキャリッジの姿勢または停止レバーの姿勢にかかわらず、時計の動作を一時的に停止させる停止レバーの制御を容易に達成できるため、この構成の利点がもたらされる。
【0044】
時計の動作を一時的に停止させる装置の第2の実施形態を
図4Aおよび
図4Bに示している。
図4Aは、装置の休止位置を示し、
図4Bは、制御コネクティングロッド7による作用を介する装置の作動位置を示している。
【0045】
この第2の実施形態が第1の実施形態と主に異なる点は、レバー4が外側に向かって休止位置にあり、停止レバー17の制御ロッド16から離れているという点である。
図4Aおよび
図4Bに示したように、各レバー4は、ロッドの軸周りに回転するように地板に取り付けられ、ロッドは、各レバー4の一方の端部で孔6を貫通するねじであってよい。各孔6を貫通するねじも、全レバー4を地板に固定させるものである。
【0046】
この第2の実施形態では、6つのレバー4が提供されている。この6つのレバー4はそれぞれ、第1のレバー部分に長円形開口5を有し、長円形開口は、制御リング2の各制御ロッドまたはピン3を受け入れるために傾斜を有する。各長円形開口5の傾斜5’は、休止モードを規定する第1の位置p1から作動モードを規定する第2の位置p2までの中心に向かって大きくなる。制御リング2は、ヒゲゼンマイまたはトゥールビヨンキャリッジの軸と同軸で地板に取り付けられる。長円形開口5の位置p1の休止モードから長円形開口5の位置p2の作動モードに切り替えるために、制御リング2は、特に時計回りの方向に回転する。各制御ロッド3は、各レバー4が制御コネクティングロッド7による作用を介して円の中心に向かって内側に回転するように、長円形開口5の傾斜に従う。
【0047】
図4Bの作動段階では、レバー4は、円の内側に向かって動いて停止レバー17の制御ロッド16と接触し、停止レバーを回転軸18周りに回転させて制御ロッド16の反対側の端部にある停止部分がヒゲゼンマイの軸のカム20と接触し、時計の時刻を再設定するためにレバーを一時的に停止させるようにする。
【0048】
第1の実施形態の場合でも第2の実施形態の場合でも、レバー4と同数の長円形開口5を制御リング2に設けることを想定してもよいことに注意されたい。制御ロッドまたはピン3は、それぞれを長円形開口5と同数である対応するレバー4に配置できる。各制御ロッドまたはピン3は、制御リング2の長円形開口5のうちの1つに挿入される。制御リング2の長円形開口5は、休止モードの第1の位置p1から作動モードの第2の位置p2までの中心に向かって小さくなる傾斜または大きくなる傾斜を有する。
【0049】
制御リング2は、第1の位置p1の休止モードから第2の位置p2の作動モードに切り替えるよう制御コネクティングロッド7が作動することによって回転し、その際各レバー4は、傾斜が小さくなっている場合に外側に枢動するか、傾斜が大きくなっている場合に内側に枢動する。各レバー4は、制御リング2の長円形開口5にある各制御ロッドまたはピン3を作動させて第1の位置p1から第2の位置p2にすることによって作動位置にある。各レバー4は、傾斜が小さくなっている場合に外側に枢動するか、傾斜が大きくなっている場合に内側に枢動して、各制御ロッドまたはピン3を作動させて各長円形開口5の第1の位置p1から第2の位置p2にすることによって作動位置に来る。このように、これによって、各長円形開口5の傾斜が小さくなる場合は内側から、あるいは傾斜が大きくなる場合は外側から、制御ロッド16によって停止レバー17を作動させることが可能になる。
【0050】
図5Aおよび
図5Bは、時計の動作を停止させる装置の第3の実施形態を示している。この
図5Aおよび
図5Bには、図示していない制御コネクティングロッドを介した
図5Aの休止モードから
図5Bの作動モードへの切り替えを規定するためにレバー4を地板に構成したことのみが表現されている。通常レバー4は少なくとも3つある。作動段階では、レバー4は、これらの
図5Aおよび
図5Bには示していない停止レバーの制御ロッドと接触するように外向きに押される。
【0051】
ただし、板ばねの自由位置が作動位置に対応し、抑止位置が非作動位置または休止位置に対応するというこれとは逆の機構を設計することを検討することも可能である。
【0052】
第1の実施形態のように、例えば4つのレバー4が示されている。ただし、ヒゲゼンマイまたはトゥールビヨンキャリッジの軸と同軸に円状に配置された少なくとも3つのレバー4を使用することを構想できる。この第3の実施形態を第1の実施形態および第2の実施形態と比較した相違点は、各レバー4が、ばねの形状である可撓性薄片からなる点である。したがって、これらのレバー4の所定の回転軸はない。なぜなら、レバーはすべて第1の端部でベースリング4’に固定され、ベースリングは、ベースリング4’の開口6’を貫通する図示していないねじを用いて地板に固定できるからである。設けられた2つの開口6’は、ベースリング上で互いに180°に配置される。
【0053】
変形例では、レバー4の構成であって、各レバーが可撓性薄片の形状で、各レバーの外面に斜面を有する構成を設計することも可能である。制御リング2の対応する制御ロッドまたはピン3は、レバー4の作動位置から休止位置に切り替えるときに、外面および前記斜面の上を通ってレバー4を内向きに押す。
【0054】
レバー4およびベースリング4’は、好ましくは単一の構成要素を形成する。また、レバーは、ばね形状の可撓性薄片からなるため、各レバーに長円形開口はない。制御リング2は、単一のレバー構成要素4に配置され、地板に回転式に取り付けられ、各制御ロッドまたはピン3のそれぞれが各レバー4の内面または外面と接触している。各レバー4の斜面5’は、制御リング2が時計回りの方向に回転している間に
図5Aの休止モードから
図5Bの作動モードに切り替えられるように、各レバーの内面または外面の側に設けられる。制御リング2の制御ロッドまたはピン3は、斜面が外または内に向かって通る際にレバー4を押して、作動モードの制御ロッドによって停止レバーを作動させる。
【0055】
レバー4は、ばねなどの可撓性薄片からなるため、作動モードから休止モードへの切り替えは、各レバーの薄片が板ばねであるために自動的に行われる。前述のように、レバー4の各自由端の厚みは、レバー4を含む単一の構成要素の全体の厚みよりも薄い。各レバー4のこの自由端は、それに続くレバー4の凹部に一部が配置され、凹部の深さは、薄くなっている自由端の厚み以上である。
【0056】
第1の実施形態のように、この第3の実施形態は、休止モードでも作動モードでも、レバーは周部に円形エッジを形成する。そのため、作動モードでは、ヒゲゼンマイ、停止レバーまたはトゥールビヨンキャリッジがどのような姿勢でも時計の動作を停止させるために、レバー4により停止レバーを容易に作動させることができる。また、これにより、レバー4の作動位置でのトゥールビヨンキャリッジの姿勢または停止レバーの姿勢にかかわらず、時計の動作を一時的に停止させる停止レバーを作動させるための制御を容易に実行できるため、この構成の利点がもたらされる。
【0057】
以上に記載した説明から、特許請求の範囲に明記した本発明の範囲を逸脱しないかぎり、機械式時計の動作、および特に機械式トゥールビヨン時計の動作を一時的に停止させる装置の複数の変形実施形態を当業者が設計することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 時計
2 作動部材、制御リング
3 制御ロッドまたはピン
4 レバー
5 長円形開口
5’ 傾斜
6 孔
6’ 開口
7 制御コネクティングロッド
8 ロッド
10 ねじ
11 がんぎ車
14 共振子
15 キャリッジ
15’ 秒歯車
16 制御ロッド
17 停止レバー
18 回転軸
19 ばね
20 カム
21、22 点
30 バー
40 文字盤
50 地板
51 下方軸受け
100 装置
p1 第1の位置
p2 第2の位置
T1 休止位置
T2 作動位置