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  • 特許-樹脂組成物及びその用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】樹脂組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/12 20060101AFI20230306BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20230306BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20230306BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230306BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20230306BHJP
   C09J 171/12 20060101ALI20230306BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230306BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
C08L71/12
C08K5/3492
C08J5/24 CEZ
B32B15/08 U
B32B15/08 J
B32B5/28 A
C09J171/12
C09J11/06
H05K1/03 610H
H05K1/03 630H
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021509571
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2020013568
(87)【国際公開番号】W WO2020196718
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2019063110
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000180302
【氏名又は名称】四国化成ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 章仁
(72)【発明者】
【氏名】柏原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】青木 和徳
(72)【発明者】
【氏名】熊野 岳
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-196958(JP,A)
【文献】特開2009-299041(JP,A)
【文献】特開2008-050467(JP,A)
【文献】特開2013-159624(JP,A)
【文献】特開2003-160726(JP,A)
【文献】特開2016-139798(JP,A)
【文献】特開2017-079293(JP,A)
【文献】特表2017-511404(JP,A)
【文献】特開2015-151413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08J 5/24
B32B 15/08
B32B 5/28
B32B 27/28
C09J 171/12
C09J 11/06
H05K 1/03
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、RはC6~C20アルキル基を示す。)
で表される化合物及び式(1):
【化2】
(式中、R は同一又は異なって、水素原子、C1~C6のアルキル基又はC2~C6のアルケニル基を示し、nは繰り返し単位の数を示す。)
で表される構造を有し、かつ分子の両末端に炭素-炭素二重結合を有する基を有するポリフェニレンエーテル樹脂を含む樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂が、式(II):
【化3】
(式中、Xは、同一又は異なって、式(3):
【化4】
[式中、R、R及びRはそれぞれ、同一又は異なって、水素原子又はC1~C3アルキル基を示し、Zは、同一又は異なって、C1~C3アルキレン基、-C(=O)-又は-Ph-CH-を示す。]で表される基である。
Yは、-O-又は式(4):
【化5】
[式中、Rは、同一又は異なって、水素原子、C1~C6アルキル基、C2~C6アルケニル基、又はアリール基を示し、Wは、フェニル基で置換されていてもよいC1~C6アルキレン基、シクロアルキレン基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC2~C6アルケンジイル基、-C(=O)-、-S(O)-(mは、0、1又は2を示す。)、又は-(アルキレン)-(フェニレン)-(アルキレン)-を示す。]で表される基である。
は、同一又は異なって前記に同じ。
nは、同一又は異なって前記に同じ。)
で表される化合物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂が、式(IIa):
【化6】
(式中、記号は前記に同じ。)
で表される化合物である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂の重量平均分子量(Mw)が1000~120000である、請求項1~のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の樹脂組成物及び基材を含むプリプレグ。
【請求項6】
請求項に記載のプリプレグが複数積層されてなる積層板。
【請求項7】
請求項に記載のプリプレグ又は請求項に記載の積層板の表面に金属箔を有する金属張積層板。
【請求項8】
請求項1~のいずれかに記載の樹脂組成物を含む接着剤。
【請求項9】
請求項に記載のプリプレグ、請求項に記載の積層板、請求項に記載の金属張積層板又は請求項に記載の接着剤の硬化物。
【請求項10】
請求項に記載の硬化物を含むプリント配線板。
【請求項11】
請求項10に記載のプリント配線板の表面に回路を有するプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノアルキルジアリルイソシアヌレート及びポリフェニレンエーテル樹脂を含む樹脂組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化及び高性能化が進み、多層プリント配線板においては、ビルドアップ層が複層化され、配線の微細化及び高密度化が求められ、特に高周波用途における電気信号の伝送損失を低減するために誘電正接の低い絶縁材料が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、所定のポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂及びトリアリルイソシアヌレートを含む樹脂組成物、プリプレグ、積層板、プリント配線板等が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、鎖状芳香族ポリエステル化合物とポリアリル化合物とを含む組成物が記載されている。特許文献3には、ポリオレフィン化合物とジ-又はトリ-アリルイソシアヌレート化合物とを含む組成物が記載されている。特許文献4には、ポリメチルペンテン化合物とジ-又はトリ-アリルイソシアヌレート化合物とを含む組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-160726号公報
【文献】米国特許第4256558号明細書
【文献】特開2016-139798号公報
【文献】特開2017-79293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、プリント配線板等の絶縁材料の用途に適した誘電正接の低い材料を提供することを課題とする。本発明はまた、当該材料の製造に用いられる樹脂組成物を提供すること、当該材料を用いた用途(例えば、プリント配線板等の絶縁材料)を提供することをも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討をした結果、ポリフェニレンエーテル(以下「PPE」と記載することもある。)樹脂及び所定のモノアルキルジアリルイソシアヌレートを含む樹脂組成物を硬化して得られる樹脂(硬化物)が優れた誘電特性(低い比誘電率及び低い誘電正接)を有することを見いだした。また、当該硬化物は、優れた耐吸水性を有するとともに、金属に対して優れた密着性をも有することを見いだした。さらに、当該硬化物がプリント配線板等の絶縁材料として有用であることを見いだした。かかる知見に基づいてさらに検討を加えることにより、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の樹脂組成物及びその用途を提供する。
項1.式(I):
【化1】
(式中、RはC6~C20アルキル基を示す。)
で表される化合物(以下、「モノ(C6~C20アルキル)ジアリルイソシアヌレート」と表記する場合がある。)及びポリフェニレンエーテル樹脂を含む樹脂組成物。
項2.前記ポリフェニレンエーテル樹脂が、式(1):
【化2】
(式中、Rは同一又は異なって、水素原子、C1~C6のアルキル基又はC2~C6のアルケニル基を示し、nは繰り返し単位の数を示す。)
で表される構造を有する化合物である、項1に記載の樹脂組成物。
項3.前記ポリフェニレンエーテル樹脂が、式(II):
【化3】
(式中、Xは、同一又は異なって、水素原子、又は式(3):
【化4】
[式中、R、R及びRはそれぞれ、同一又は異なって、水素原子又はC1~C3アルキル基を示し、Zは、同一又は異なって、C1~C3アルキレン基、-C(=O)-又は-Ph-CH-を示す。]で表される基である。
Yは、-O-又は式(4):
【化5】
[式中、Rは、同一又は異なって、水素原子、C1~C6アルキル基、C2~C6アルケニル基、又はアリール基を示し、Wは、フェニル基で置換されていてもよいC1~C6アルキレン基、シクロアルキレン基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC2~C6アルケンジイル基、-C(=O)-、-S(O)-(mは、0、1又は2を示す。)、又は-(アルキレン)-(フェニレン)-(アルキレン)-を示す。]で表される基である。
は、同一又は異なって前記に同じ。
nは、同一又は異なって前記に同じ。)
で表される化合物である、項1又は2に記載の樹脂組成物。
項4.前記ポリフェニレンエーテル樹脂が、式(IIa):
【化6】
(式中、記号は前記に同じ。)
で表される化合物である、項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
項5.前記ポリフェニレンエーテル樹脂の重量平均分子量(Mw)が1000~120000である、項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
項6.項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物及び基材を含むプリプレグ。
項7.項6に記載のプリプレグが複数積層されてなる積層板。
項8.項6に記載のプリプレグ又は項7に記載の積層板の表面に金属箔を有する金属張積層板。
項9.項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物を含む接着剤。
項10.項6に記載のプリプレグ、項7に記載の積層板、項8に記載の金属張積層板又は項9に記載の接着剤の硬化物。
項11.項10に記載の硬化物を含むプリント配線板。
項12.項11に記載のプリント配線板の表面に回路(導体パターン)を有するプリント配線板。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル樹脂及びモノ(C6~C20アルキル)ジアリルイソシアヌレートを含むことを特徴としている。当該樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は、従来のポリフェニレンエーテル樹脂及びトリアリルイソシアヌレートを含む樹脂組成物の硬化物(例えば、特許文献1を参照)に比べて、より低い比誘電率及びより低い誘電正接を有している。また、当該樹脂組成物の硬化物は、優れた耐吸水性を有するとともに、金属等の材料に対して優れた密着性を有している。そのため、当該硬化物はプリント配線板等の絶縁材料に適している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1~9及び比較例1~6で得られた硬化物の誘電特性(誘電正接)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の典型的な実施態様について具体的に説明する。
【0012】
1.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、架橋剤としてモノ(C6~C20アルキル)ジアリルイソシアヌレート、及び樹脂としてポリフェニレンエーテル樹脂を含むことを特徴とする。
【0013】
架橋剤であるモノ(C6~C20アルキル)ジアリルイソシアヌレートは、式(I):
【化7】
(式中、RはC6~C20アルキル基を示す。)
で表される化合物である。
【0014】
で示されるC6~C20アルキル基としては、C6~C18アルキル基が好ましく、C8~C15アルキル基がより好ましい。C6~C20アルキル基は、鎖状又は分岐状のいずれでもよく、好ましくは鎖状である。具体的には、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基及びイコシル基が挙げられ、いずれも鎖状のものが好ましい。そのうち、n-ヘキシル基、n-ドデシル基、n-オクタデシル基等がより好ましい。
【0015】
ポリフェニレンエーテル樹脂としては、例えば、式(1):
【化8】
(式中、Rは同一又は異なって、水素原子、C1~C6のアルキル基又はC2~C6のアルケニル基を示し、nは繰り返し単位の数を示し、通常、1以上の整数を示す。)
で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0016】
で示されるC1~C6のアルキル基としては、鎖状又は分岐状のC1~C6のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられ、そのうちメチル基が好ましい。
で示されるC2~C6のアルケニル基としては、鎖状又は分岐状のC2~C6のアルケニル基が挙げられ、具体的には、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基等が挙げられる。
は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基が好ましい。
nは1~400が好ましい。
【0017】
式(1)で表される構造を有する化合物の一態様として、例えば、式(2):
【化9】
(式中、nは前記に同じ。)
で表される構造を有する化合物、式(2’):
【化10】
(式中、nは前記に同じ。)
で表される構造を有する化合物等が挙げられる。
【0018】
式(1)で表される構造を有する化合物は、分子内に式(1)で表される構造を2個以上有していることが好ましい。さらに当該化合物は、架橋性基(例えば、(メタ)アクリル基、アリル基、ビニルベンジル基等の炭素-炭素二重結合を有する基)を有していることが好ましい。当該架橋性基は、当該化合物の分子の末端に存在していることが好ましい。
【0019】
式(1)で表される構造を有する化合物の好ましい態様として、例えば、式(II):
【化11】
(式中、Xは、同一又は異なって、水素原子、又は式(3):
【化12】
[式中、R、R及びRはそれぞれ、同一又は異なって、水素原子又はC1~C3アルキル基を示し、Zは、同一又は異なって、C1~C3アルキレン基、-C(=O)-又は-Ph-CH-を示す。]で表される基である。
Yは、-O-又は式(4):
【化13】
[式中、Rは、同一又は異なって、水素原子、C1~C6アルキル基、C2~C6アルケニル基、又はアリール基を示し、Wは、フェニル基で置換されていてもよいC1~C6アルキレン基、シクロアルキレン基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC2~C6アルケンジイル基、-C(=O)-、-S(O)-(mは、0、1又は2を示す。)、又は-(アルキレン)-(フェニレン)-(アルキレン)-を示す。]で表される基である。
は、同一又は異なって前記に同じ。
nは、同一又は異なって前記に同じ。)
で表される化合物が挙げられる。
【0020】
、R及びRで示されるC1~C3アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。R及びRは水素原子が好ましく、Rは水素原子又はメチル基が好ましい。
【0021】
Zで示されるC1~C3アルキレン基としては、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、エチルメチレン基、ジメチルメチレン基が挙げられる。
Zは、-C(=O)-又は-Ph-CH-が好ましい。
【0022】
で示されるC1~C6アルキル基としては、鎖状又は分岐状のC1~C6アルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
で示されるC2~C6アルケニル基としては、鎖状又は分岐状のC2~C6のアルケニル基が挙げられ、具体的には、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基等が挙げられる。
で示されるアリール基としては、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる。
は、水素原子が好ましい。
【0023】
Wで示されるフェニル基で置換されていてもよいC1~C6アルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、フェニルメチレン基、フェニルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基等が挙げられる。
Wで示されるシクロアルキレン基としては、例えば、シクロヘキサン-1,1-ジイル基等が挙げられる。
Wで示されるハロゲン原子で置換されていてもよいC2~C6アルケンジイル基としては、例えば、エチレン-1,1-ジイル、2,2-ジクロロエチレン-1,1-ジイル等が挙げられる。
Wで示される-(アルキレン)-(フェニレン)-(アルキレン)-としては、例えば、-(C1~C3アルキレン)-(フェニレン)-(C1~C3アルキレン)-等が挙げられる。C1~C3アルキレンとしては、前記Zで示されるC1~C3アルキレン基の中から任意に選択することができる。好ましくはジメチルメチレン基である。フェニレン基としては、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基が挙げられ、好ましくは1,4-フェニレン基である。
Wは、C1~C6アルキレン基が好ましく、C1~C3アルキレン基(特にジメチルメチレン基)がより好ましい。
【0024】
Yは、式(4)で表される基(式中、Rが水素原子を示し、WがC1~C3アルキレン基を示す。)が好ましい。
【0025】
式(II)で表される化合物のうち好ましいものとして、例えば、式(IIa):
【化14】
(式中、記号は前記に同じ。)
で表される化合物が挙げられる。
【0026】
上記のポリフェニレンエーテル樹脂は、公知の方法、例えば、米国特許第4059568号明細書、The Journal of Organic Chemistry, 34, 297-303 (1969)等の記載に従い又は準じて製造することができる。
【0027】
ポリフェニレンエーテル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、通常、1000~120000であり、1500~50000が好ましく、2000~20000がより好ましい。分子量は、スチレン換算による、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定することができる。
【0028】
樹脂組成物中における、モノ(C6~C20アルキル)ジアリルイソシアヌレートの含有量は、ポリフェニレンエーテル樹脂100質量部に対して、通常、10~200質量部であり、20~150質量部が好ましく、30~70質量部がより好ましい。或いは、他の形態として、モノ(C6~C20アルキル)ジアリルイソシアヌレートの含有量は、ポリフェニレンエーテル樹脂100質量部に対して、通常、20~200質量部であり、30~180質量部が好ましく、40~160質量部がより好ましく、50~150質量部が特に好ましい。
【0029】
樹脂組成物には、樹脂組成物の効果を発揮できる範囲において、必要に応じてさらに他の架橋剤(モノ(C6~C20アルキル)ジアリルイソシアヌレートを除く)を含んでいてもよい。他の架橋剤の含有量は、架橋剤の全質量に対して、通常、80質量%以下であり、40質量%以下が好ましい。
【0030】
他の架橋剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、トリアリルトリメリテート、多官能スチレン化合物等が挙げられる。
【0031】
多官能スチレン化合物としては、例えば、
ビスビニルフェニルメタン、
1,2-ビス(m-ビニルフェニル)エタン、
1,2-ビス(p-ビニルフェニル)エタン、
1-(p-ビニルフェニル)-2-(m-ビニルフェニル)エタン、
1,3-ビス(m-ビニルフェニルエチル)ベンゼン、
1,3-ビス(p-ビニルフェニルエチル)ベンゼン、
1-(p-ビニルフェニルエチル)-3-(m-ビニルフェニルエチル)ベンゼン、
1,4-ビス(m-ビニルフェニルエチル)ベンゼン、
1,4-ビス(p-ビニルフェニルエチル)ベンゼン、
1,6―(ビスビニルフェニル)ヘキサン及び側鎖にビニル基を有するジビニルベンゼン重合体(オリゴマー)等が挙げられる。
【0032】
樹脂組成物には、樹脂組成物の効果を発揮できる範囲において、必要に応じてさらに他の樹脂(ポリフェニレンエーテル樹脂を除く)を含んでいてもよい。他の樹脂の含有量は、樹脂の全質量に対して、通常、50質量%以下であり、20質量%以下が好ましい。
【0033】
他の樹脂としては、例えば、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0034】
ビスマレイミド樹脂としては、分子内に2つのマレイミド基を有する化合物であり、硬化前のビスマレイミド化合物を意味する。ビスマレイミド樹脂としては、例えば、脂肪族系ビスマレイミド化合物、芳香族系ビスマレイミド化合物等が挙げられる。
【0035】
脂肪族系ビスマレイミド化合物としては、例えば、
N,N′-(2,2,4-トリメチルヘキサメチレン)ビスマレイミド、
N,N′-デカメチレンビスマレイミド、
N,N′-オクタメチレンビスマレイミド、
N,N′-ヘプタメチレンビスマレイミド、
N,N′-ヘキサメチレンビスマレイミド、
N,N′-ペンタメチレンビスマレイミド、
N,N′-テトラメチレンビスマレイミド、
N,N′-トリメチレンビスマレイミド、
N,N′-エチレンビスマレイミド、
N,N′-(オキシジメチレン)ビスマレイミド、
1,13-ビスマレイミド-4,7,10-トリオキサトリデカン、
1,11-ビスマレイミド-3,6,9-トリオキサウンデカン等が挙げられる。
【0036】
芳香族系ビスマレイミド化合物としては、例えば、
N,N′-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビスマレイミド、
N,N′-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド、
N,N′-(1,4-フェニレン)ビスマレイミド、
N,N′-(1,2-フェニレン)ビスマレイミド、
N,N′-(1,5-ナフチレン)ビスマレイミド、
N,N′-(4-クロロ-1,3-フェニレン)ビスマレイミドや、
N,N′-(メチレンジ-p-フェニレン)ビスマレイミド、
N,N′-(4,4′-ビフェニレン)ビスマレイミド、
N,N′-(スルホニルジ-p-フェニレン)ビスマレイミド、
N,N′-(オキシジ-p-フェニレン)ビスマレイミド、
N,N′-(3,3′-ジメチル-4,4′-ビフェニレン)ビスマレイミド、
N,N′-(ベンジリデンジ-p-フェニレン)ビスマレイミド、
N,N′-[メチレンビス(3-クロロ-4-フェニレン)]ビスマレイミド、
N,N′-[メチレンビス(3-メチル-4-フェニレン)]ビスマレイミド、
N,N′-[メチレンビス(3-メトキシ-4-フェニレン)]ビスマレイミド、
N,N′-(チオジ-p-フェニレン)ビスマレイミド、
N,N′-3,3′-ベンゾフェノンビスマレイミド、
N,N′-[メチレンビス(3-メチル-5-エチル-4-フェニレン)]ビスマレイミド、
N,N′-[テトラメチレンビス(オキシ-p-フェニレン)]ビスマレイミドや、
2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、
ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)]スルホン、
1,4-フェニレンビス(4-マレイミドフェノキシ)、
ビス[3-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、
ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、
1,3-フェニレンビス(4-マレイミドフェノキシ)、
ビス[4-(4-マレイミドフェニルチオ)フェニル]エーテル等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
ビスマレイミド-トリアジン樹脂としては、マレイミド化合物とシアン酸エステル化合物を主成分とし、プレポリマー化させたものであれば特に限定されない。例えば、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパンと、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミジフェニル)メタンとを加熱溶融し、重合反応させたもの、ノボラック型シアン酸エステル樹脂と、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミジフェニル)メタンとを加熱溶融し、重合反応させた後、メチルエチルケトンに溶解させたものが挙げられる。
【0038】
エポキシ樹脂としては、分子内にエポキシ基(グリシジル基、エポキシシクロヘキシル基等)を有する化合物であり、硬化前のエポキシ化合物を意味する。エポキシ樹脂としては、例えば、
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、カテコール、レゾルシノール等の多価フェノール又はグリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテル類(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂);
p-ヒドロキシ安息香酸、β-ヒドロキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル類;
フタル酸、テレフタル酸等のポリカルボン酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエステル類;
1,3,4,6-テトラグリシジルグリコールウリル等の分子内に2つ以上のエポキシ基を有するグリシジルグリコールウリル化合物;
3′,4′-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の環状脂環式エポキシ樹脂;
トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントイン型エポキシ樹脂等の含窒素環状エポキシ樹脂;
エポキシ化フェノールノボラック樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);
エポキシ化クレゾールノボラック樹脂;
エポキシ化ポリオレフィン;
環式脂肪族エポキシ樹脂;
ウレタン変性エポキシ樹脂;
炭素-炭素二重結合及びグリシジル基を有する有機化合物と、SiH基を有するケイ素化合物とのヒドロシリル化付加反応によるエポキシ変性オルガノポリシロキサン化合物(例えば、特開2004-99751号公報、特開2006-282988号公報等に開示されたエポキシ変性オルガノポリシロキサン化合物)等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
ベンゾシクロブテン樹脂は、2個以上のベンゾシクロブテン基が直接、又は有機基を介して結合しているものであれば特に制限はない。
【0040】
樹脂組成物には、必要に応じてさらに他の成分、例えば、相溶化剤、ラジカル開始剤、難燃剤、無機充填剤、応力緩和剤、有機溶媒等を含んでいてもよい。
【0041】
相溶化剤としては、例えば、スチレン・ブタジエンブロックコポリマー、スチレン・イソプレンブロックコポリマー、1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエン、マレイン変性ポリブタジエン、アクリル変性ポリブタジエン、エポキシ変性ポリブタジエン等が挙げられる。これらからなる群から選ばれる1種以上を選択できる。相溶化剤の含有量は、ポリフェニレンエーテル樹脂100質量部に対して、通常、5~100質量部であり、20~50質量部が好ましい。
【0042】
ラジカル開始剤としては、ポリフェニレンエーテル樹脂をモノ(C6~C20アルキル)ジアリルイソシアヌレートで架橋するためにラジカルを発生することができる化合物であれば、特に限定されない。例えば、過酸化物(特に有機過酸化物)が挙げられる。具体的には、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキサイド)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキサイド)ヘキシン-3、α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。これらからなる群から選ばれる1種以上を選択できる。ラジカル開始剤の含有量は、ポリフェニレンエーテル樹脂100質量部に対して、通常、0.1~50質量部であり、1~10質量部が好ましい。
【0043】
難燃剤としては、特に限定されず、例えば、リン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、赤燐、芳香族リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、ホスフィンオキサイド、ホスファゼン、メラミンシアノレート、エチレンビスペンタブロモベンゼン、エチレンビステトラブロモフタルイミド等が挙げられる。これらからなる群から選ばれる1種以上を選択できる。難燃剤の含有量は、ポリフェニレンエーテル樹脂100質量部に対して、通常、0~100質量部であり、1~50質量部が好ましい。
【0044】
無機充填剤としては、特に限定されず、例えば、シリカ、窒化ホウ素、ワラストナイト、タルク、カオリン、クレー、マイカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物、窒化物、珪化物、硼化物等が挙げられる。これらからなる群から選ばれる1種以上を選択できる。特に樹脂組成物の低誘電率化のためには、無機充填材としてシリカ、窒化ホウ素等の低誘電率フィラーを使用することが好ましい。シリカとしては、例えば、粉砕シリカ、溶融シリカなどが挙げられる。無機充填材の平均粒子径は5μm以下であることが好ましい。例えば、5μm以下の平均粒径を有するシリカ粒子等の無機充填剤を用いることによって、樹脂組成物を金属張積層板等に用いる場合に、金属箔との密着性が向上する。無機充填剤の含有量は、ポリフェニレンエーテル樹脂100質量部に対して、通常0~200質量部であり、5~100質量部が好ましい。
【0045】
応力緩和剤としては、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂粒子等が挙げられる。応力緩和剤の平均粒子径は10μm以下であることが好ましい。このような平均粒径を有する応力緩和剤を用いることによって、樹脂組成物を金属張積層板等に用いる場合に、金属箔との密着性が向上する。応力緩和剤の含有量は、ポリフェニレンエーテル樹脂100質量部に対して、通常、0~100質量部であり、0~50質量部が好ましい。
【0046】
有機溶媒としては、樹脂を溶解又は分散できるものであれば特に限定されず、例えば、メチルエチルケトン等のケトン溶媒;ジブチルエーテル等のエーテル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素溶媒等が挙げられる。これらからなる群から選ばれる1種以上を選択できる。有機溶媒を含む樹脂組成物は、後述するように、樹脂ワニスとして基材に含浸させてプリプレグを製造するために用いることができる。有機溶媒の含有量は、樹脂ワニスを基材に塗布又は含浸させる作業に応じて調整すればよく、ポリフェニレンエーテル樹脂100質量部に対して、通常、30~1000質量部であり、40~500質量部が好ましい。
【0047】
樹脂組成物には、その目的に応じて、さらにシラン系カップリング剤等の他の添加剤を含有させてもよい。
【0048】
2.プリプレグ、接着剤及びそれらの硬化物、並びにそれらの用途
本発明のプリプレグは、樹脂組成物と基材とを含むことを特徴とする。基材としては、例えば、繊維(ガラス繊維等の無機繊維、ポリイミド繊維等の有機繊維等)の織布又は不織布、紙等が挙げられる。ガラス繊維の材質は、通常のEガラスの他、Dガラス、Sガラス、NEガラス、クォーツガラス等が挙げられる。必要に応じて、基材にシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤を塗布して使用することができる。
【0049】
プリプレグ中の基材の占める割合は、プリプレグ全体中、通常、20~80質量%であり、25~70質量%が好ましい。
【0050】
プリプレグは、例えば、樹脂組成物(必要に応じて上述の有機溶媒に均一に溶解又は分散させた樹脂ワニス)を基材に塗布又は含浸した後、加熱乾燥して製造することができる。或いは、樹脂組成物を溶融させて、基材に塗布又は含浸させてもよい。
【0051】
塗布方法及び含浸方法は特に限定されず、例えば、樹脂組成物の溶解液又は分散液をスプレー、刷毛、バーコーターなどを用いて塗布する方法、樹脂組成物の溶解液又は分散液に基材を浸漬する方法(ディッピング)などが挙げられる。塗布又は含浸は、必要に応じて複数回繰り返すことも可能である。或いは、樹脂濃度の異なる複数の溶解液又は分散液を用いて、塗布又は含浸を繰り返すことも可能である。
【0052】
プリプレグは、樹脂組成物を基材に含浸した後、加熱乾燥して硬化(特に半硬化)したものであることが好ましい。
【0053】
プリプレグ中の樹脂組成(成分)及びその含有量は、例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)、核磁気共鳴分析(H-NMR及び13C-NMR)、フーリエ変換型赤外吸収スペクトル分析(FT-IR)、熱分解ガスクロマトグラフィーよる熱分解物の定量分析にて分析することができる。
【0054】
本発明は、プリプレグを積層してなる積層板を提供する。得られたプリプレグは、例えば、加熱成形に供されて積層板に加工される。積層板は、例えば、プリプレグを複数枚重ね合わせ、加熱加圧成形して製造することができる。さらに、得られた積層板と別のプリプレグとを組み合わせて、より厚い積層板を製造することもできる。
積層板の成形及び硬化反応は、通常、熱プレス機を用いて同時に行うことができる。或いは、最初に積層成形して半硬化の積層板を得た後、熱処理機で処理して完全に硬化させてもよい。加熱加圧成形は、50~300℃(特に、80~250℃)、0.1~50MPa(特に、0.5~10MPa)の加圧下、1分~10時間程度(特に、30分~5時間程度)で実施できる。
【0055】
本発明は金属張積層板を提供する。金属張積層板は、プリプレグ又はその積層板の表面に金属箔を備えている。金属張積層板は、例えば、プリプレグ又はその積層板と金属箔とを重ね合わせ加熱加圧成形して製造できる。
【0056】
金属箔としては特に限定されず、例えば、電解銅箔、圧延銅箔等の銅箔;アルミニウム箔;これらの金属箔を重ね合わせた複合箔等が挙げられる。これらの金属箔の中でも、銅箔が好ましい。金属箔の厚みは特に限定されず、通常、5~105μm程度である。金属張積層板は、プリプレグと金属箔とをそれぞれ所望の枚数重ね合わせ、加熱加圧成形しても得ることができる。
【0057】
本発明の接着剤は、樹脂組成物を成分として含むことを特徴とする。この接着剤は、金属、無機材料及び樹脂材料から選択される2つの材料間の接着剤として用いることができる。特に、金属と、金属、無機材料及び樹脂材料から選択される材料との接着剤として好ましい。
【0058】
前記の金属としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、錫、鉄、銀、金及びこれらの合金等が挙げられる。これらの金属の中でも、銅が好ましい。また、金属の形態としては、これらの金属からなる板、箔、めっき膜等が挙げられる。
【0059】
前記の無機材料としては、例えば、シリコン、セラミック、フィラーとして使用されるカーボン、無機塩、ガラス等が挙げられる。具体的には、シリコン、炭化ケイ素、シリカ、ガラス、珪藻土、珪酸カルシウム、タルク、硝子ビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、アルミノケイ酸塩、マイカ等のケイ素化合物;アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン等の酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム等の水酸化物;炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム、石膏等の硫酸塩;チタン酸バリウム等のチタン酸塩;窒化アルミ、窒化ケイ素等の窒化物;鱗片状黒鉛(天然黒鉛)、膨張黒鉛、膨張化黒鉛(合成黒鉛)等のグラファイト類;活性炭類;炭素繊維類;カーボンブラック等が挙げられる。
これらの無機材料の中でも、シリコン、セラミック(アルミナ、炭化ケイ素、窒化アルミ、窒化ケイ素、チタン酸バリウム等)、ガラスおよび無機塩が好ましい。
【0060】
前記の樹脂材料としては、ナイロン、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、オレフィン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、フッ素含有樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、液晶樹脂等が挙げられ、これらを混合したり、互いに変性したりして、組み合わせたものであってもよい。
これらの樹脂材料の中でも、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、オレフィン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、フッ素含有樹脂、ポリエーテル樹脂、液晶樹脂、シリコーン樹脂及びポリイミド樹脂が好ましい。
【0061】
接着剤を用いて材料を接着する方法としては、公知の方法により行うことができる。具体的には、(1)金属、無機材料及び樹脂材料から選択される材料の表面に接着剤を塗布し、塗布した接着剤の一部又は全体に他の材料を圧着して接着(硬化)する方法や、(2)半硬化した接着剤をシート状に形成したものを金属、無機材料及び樹脂材料から選択される材料の表面に張り付け、接着剤の他方の面の一部又は全体に他の材料を圧着して接着(硬化)する方法が挙げられる。
【0062】
接着剤の硬化方法としては、公知の方法により行うことができる。例えば、熱プレス機を用いて加熱及び加圧する方法や、最初に塗布した接着剤を乾燥した後、熱処理する方法などが挙げられる。加熱及び加圧の条件としては、50~300℃(特に、80~250℃)、0.1~50MPa(特に、0.5~10MPa)の加圧下、1分~10時間程度(特に、30分~5時間程度)であることが好ましい。
【0063】
本発明の接着剤を用いることにより、前記のように2つの材料、特に材質の異なる2つの材料を接着させることができるので、各種電気又は電子部品、半導体ウェハ、プリント配線板、フレキシブル金属張積層板等の電子デバイスに好適に利用することができる。
【0064】
本発明はプリント配線板を提供する。プリント配線板は、複数の絶縁層と該絶縁層間に配置された導体層とを有しており、絶縁層が上記樹脂組成物から得られる硬化物と基材とで形成されている。
【0065】
プリント配線板は、例えば、金属張積層板に回路(導体パターン)及びスルーホールが形成された内層板とプリプレグとを重ね合わせ、プリプレグの表面に金属箔を積層させた後、加熱及び加圧成形して得られる。さらに、表面の導電性金属箔に回路(導体パターン)及びスルーホールを形成して、多層プリント配線板としてもよい。
【0066】
本発明の樹脂組成物によれば、比誘電率及び誘電正接の低い硬化物を得ることができる。また、耐吸水性に優れ、金属等の材料に対する密着性に優れた硬化物を得ることができる。このような樹脂組成物を用いることによって、耐吸水性に優れ、且つ、比誘電率及び誘電正接の低いプリプレグ、金属張積層板及び接着剤、並びに優れた高周波特性を有するプリント配線板を得ることができる。
【0067】
なお、本明細書において、用語「含む」又は「有する」には、「から本質的になる」及び「からなる」の概念を含むものとする。
【実施例
【0068】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。ここで用いられる「部」は特に断りの無い限り「質量部」を表す。
【0069】
原料化合物及び試薬
実施例及び比較例で用いた原料化合物及び試薬を以下に記載する。
<架橋剤(イソシアヌレート)>
(1)表1に示すイソシアヌレートのうち、TAIC及びMeDAICは下記を用いた。・TAIC:イソシアヌル酸トリアリル(東京化成工業(株)製)
・MeDAIC:モノメチルジアリルイソシアヌレート(四国化成工業(株)製)
(2)表1に示すイソシアヌレートのうち、C6DAIC、C12DAIC及びC18DAICは、ジアリルイソシアヌレート及び相当するアルキルクロリド(R-Cl)から、既報(例えば、国際公開第2015/149222号、特開2015-151413号公報等)に従い合成した。
【化15】
【0070】
【表1】
【0071】
<PPE樹脂>
SA9000-111:メタクリル変性ポリフェニレンエーテル(分子量:2300)(SABIC製)
<相溶化剤>
タフプレンA:スチレン・ブタジエンブロックコポリマー(スチレン/ブタジエン重量比=40/60)(旭化成(株)製)
<ラジカル開始剤>
パーブチルP:α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日本油脂(株)製)
<有機溶媒>
トルエン(富士フイルム和光純薬(株)製)
【0072】
実施例1~9及び比較例1~6
(1)硬化物の製造
表2に記載された配合組成の樹脂組成物をそれぞれ調製した後、2mm厚のコの字型シリコンゴムを2枚のガラス板で挟み込むことで作製した型中にその樹脂組成物を流し込み、続いて70℃に加温した送風オーブン中に入れて恒量になるまでトルエンを留去した。その後、120℃で0.5h、150℃で0.5h、及び190℃で1hの条件で熱処理を行うことにより硬化物を製造した。
【0073】
(2)誘電特性の評価
上記(1)で製造された硬化物について、ネットワークアナライザ―(Agilent Technologies製 E8361A)を用い、空洞共振法により、測定周波数(10GHz)で誘電特性の測定を行った。その結果を表2及び図1に示す。
【表2】
【0074】
実施例10及び比較例7
(1)硬化物の製造
表3に記載された配合組成の樹脂組成物をそれぞれ調製した後、2mm厚のコの字型シリコンゴムを2枚のガラス板で挟み込むことで作製した型中にその樹脂組成物を流し込み、続いて70℃に加温した送風オーブン中に入れて恒量になるまでトルエンを留去した。その後、120℃で0.5h、150℃で0.5h、及び190℃で1hの条件で熱処理を行うことにより硬化物を製造した。
【0075】
(2)耐吸水性の評価
上記(1)で製造された硬化物について、50×50mmに切断し、25℃のイオン交換水に24時間浸漬させ、浸漬前後の質量変化より吸水率(%)を算出した。その結果を表3に示す。
吸水率(%)=(浸漬前の質量-浸漬後質量)/浸漬前の質量×100
【表3】
【0076】
実施例11及び比較例8
(1)試験片の製造
表4に記載された配合組成の樹脂組成物をそれぞれ調製した後、10×10cmの電解銅箔(厚み:18μm)のマット面に乾燥後の厚みが25μmになるように塗布し、25℃で30min、80℃で50min、及び120℃で40minの条件で、乾燥処理を行った。その後、マット面にガラスエポキシ基材(FR-4グレード)を重ね、200℃、3MPaの加熱及び加圧条件で1hプレスすることにより試験片を製造した。
【0077】
(2)密着性の評価
上記(1)で製造された試験片について、「JIS C6481」に準拠して、常態ピール強度を測定した。その結果を表4に示す。
【表4】
【0078】
表2~4の記載より、C6以上のアルキル鎖を持つモノアルキルジアリルイソシアヌレートをPPE樹脂の架橋剤として用いることにより、低誘電特性(低誘電正接)、且つ優れた耐吸水性を有する硬化物が得られることが分かった。
図1