(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】鉗子
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20230306BHJP
A61B 17/30 20060101ALI20230306BHJP
B25B 9/02 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
A61F9/007 100
A61B17/30
B25B9/02
(21)【出願番号】P 2021512859
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 US2019050314
(87)【国際公開番号】W WO2020055800
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-05
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516011671
【氏名又は名称】オキュソフト インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】OCuSOFT,Inc.
【住所又は居所原語表記】30444 SW Freeway Rosenberg TEXAS 77471 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ナンダ、シーマ
(72)【発明者】
【氏名】スミス、トロイ
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0106609(US,A1)
【文献】実開平04-013104(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0049466(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0200923(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0238355(US,A1)
【文献】特表2005-519694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61B 17/30
B25B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羊膜インサートを把持するための眼科用鉗子であって、
第1のアームであって、前記第1のアームの遠位端に隣接する第1の把持先端部を含み、前記第1の把持先端部の内面に沿って配置された切り欠き部をさらに含み、前記切り欠き部は、その内面が羊膜インサートの内側コンフォーマーリングの外縁部に適合するように構成された幅および深さを有する丸みを帯びた凹部であり、前記第1の把持先端部の内面は、第1組の溝付きの横断滑り止め要素を有し、かつ前記切り欠き部は前記第1の把持先端部の遠位端に隣接して位置するとともに前記第1組の溝付きの横断滑り止め要素の遠位側に配置されている、第1のアームと、
第2のアームであって、前記第2のアームの遠位端に隣接する第2の把持先端部を含み、前記第2の把持先端部の内面は、第2組の溝付きの横断滑り止め要素
を有し、前記第2組の溝付きの横断滑り止め要素のうちの複数の溝付きの横断滑り止め要素は前記第1の把持先端部の前記切り欠き部と対向して配置されるとともに前記羊膜インサートの前記内側コンフォーマーリングの内縁部と相互作用するように構成されている第2のアームと、
前記第1のアームおよび前記第2のアームを近位端
で連結する結合セクションと、
を含み、
前記第1のアームおよび前記第2のアームの第1および第2の把持部分に内向きの圧力を加えると、前記第1のアームの前記遠位端および前記第2のアームの前記遠位端が一緒に移動して、前記切り欠き部と、前記切り欠き部に対向して配置されている前記第2組の溝付きの横断滑り止め要素のうちの前記複数の溝付きの横断滑り止め要素との間で前記内側コンフォーマーリングが可逆的にロックされて前記内側コンフォーマーリングが移動することが回避され、前記第1および第2の把持部分への圧力が解放されると、前記第1のアームおよび前記第2のアームが最初の開位置に戻り、前記内側コンフォーマーリングを解放することができる、鉗子。
【請求項2】
前記第2のアームは、前記第1のアームと同じ長さを有する、請求項1に記載の鉗子。
【請求項3】
前記切り欠き部は、前記第1の把持先端部の幅を横切る、請求項1に記載の鉗子。
【請求項4】
前記第1のアームおよび前記第2のアームは、配向面を定義するそれぞれのアームの長手軸を形成するべく前記近位端から延びている、請求項1に記載の鉗子。
【請求項5】
前記第1のアームおよび第2のアームの遠位端は、前記鉗子の
前記配向面から
離れるように下方に湾曲している、請求項
4に記載の鉗子。
【請求項6】
前記切り欠き部の内面は、1つ以上
の滑り止め要素を含む、請求項1に記載の鉗子。
【請求項7】
前記第1の把持先端部および前記第2の把持先端部は、実質的に丸みを帯びた端部を有する、請求項1に記載の鉗子。
【請求項8】
前記第1および第2の把持部分の外面は、複数の溝付きの横断滑り止め要素を備える、請求項1に記載の鉗子。
【請求項9】
前記第1
の把持先端部および前記第2の把持先端部のための保護カバーをさらに備える、請求項1に記載の鉗子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、羊膜を把持するための外科用器具、より具体的には、眼科医が使用するための鉗子に関する。
【背景技術】
【0002】
眼は涙を分泌して、潤いを保っている。涙は、眼の表面の健康を維持し、鮮明な視力を得るために必要である。涙には、潤滑作用があり、眼の感染症のリスクを減らし、眼内の異物を洗い流し、眼の表面を滑らかで透明に保つ働きがある。眼に入った過剰な涙は、眼瞼の内側の隅にある小さな排出管に流れ込み、そこから副鼻腔の奥へと流れていく。しかしながら、眼が十分な量の涙を作れなかったり、何らかの原因で涙液層の1つまたは複数の層が影響を受けたりすると、ドライアイになってしまうことがある。
【0003】
色素眼症候群またはドライアイ障害(DED)は眼の表面の一般的な疾患である。DEDは人口のかなりの割合に影響を及ぼしている。その症状には、眼の不快感および視覚の揺らぎがある。眼の炎症はDEDの共通の要因である。これは、結果として角膜上皮とその下の構造にさらなる損傷を与えることになる。ステロイドやシクロスポリンなどの様々な治療法が炎症を抑えるために用いられている。しかしながら、結果にはばらつきがあり、難治性の場合もある。このような場合、DEDは生活の質に負の影響を与えるだけでなく、医療経済的な負担も増加させることになる。
【0004】
DEDの病態解明が進み、さまざまな治療法が導入されてきた。最近では、凍結保存された羊膜が眼表面の病変を伴うDEDの治療に用いられている。羊膜(AM)は、胎盤(羊膜)の最も内側を覆っている膜である。AMは中等度および重度のDED患者の角膜表面の健康の回復を促進する。DED治療におけるAMの治療効果は、複数の作用機序に起因する可能性がある。例えば、AMは、涙を保持することによって眼球の潤いを保ち、周囲の環境から眼の表面を保護する治療用包帯としての役割を果たす。加えて、DEDの発症と慢性化には、自然免疫反応と適応免疫反応の両方によって引き起こされる炎症が重要であることが知られているため、AMは眼の表面の炎症をコントロールする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、AMは、指または従来の鉗子を用いて眼に挿入され、結膜下腔に運ばれ、そこで均等に配置される。しかしながら、AMは通常、綿棒または歯のない滑らかな従来の鉗子を用いて眼から取り除かれている。AMを従来の鉗子で把持すると、鉗子の遠位端が眼の外表面を覆っている眼球結膜を傷つける可能性がある。このため、眼表面を覆うAMを確実かつ簡便に挿入除去することができる鉗子が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、眼の表面上への挿入時に羊膜を穿刺しないように構成された丸い把持先端部を有する鉗子に関する。ドライアイおよびその他の角膜疾患により眼の炎症を治療する期間がある場合、眼球表面から羊膜を除去する際に結膜を傷つけないように鉗子を使用する。鉗子の一方の側には、先端部の内側表面に切り欠きのある領域がある。切り欠きのある表面は、より良好に取り除くために、眼科医が羊膜のリップを確実かつ安全に把持することができるように構成されている。もう一方の側には、AMを所定の位置にロックして滑りを防ぐための溝がある。
【0007】
本発明の一実施形態は、鉗子を含み、同鉗子は、近位端と;遠位端と;第1のアームと;第1のアームと同じ長さを有する第2のアームと、第1のアームおよび第2のアームは近位端で連結され、かつ鈍く丸い遠位端を有することと;第1のアームの近位端と遠位端との間に配置された第1の把持部および第2のアームの近位端と遠位端との間に配置された第2の把持部と;第1のアームの遠位端に隣接する第1の把持先端部および第2のアームの遠位端に隣接する第2の把持先端部と;第1の把持先端部の内側部分は、羊膜(インサート)の縁部を把持するための切り欠き部を含むことと、を備える。
【0008】
本発明の別の実施形態は眼科用鉗子を含み、同眼科用鉗子は、第1のアームと;第1のアームと同じ長さおよび幅を有する第2のアームと;第1のアームおよび第2のアームは近位端で連結され、かつ近位端から遠位端へと向かうにつれて細くなっている(narrow)ことと;第1のアームおよび第2のアームの両方の鈍く丸い遠位端と;第1のアームの遠位端に隣接する第1の把持先端部および第2のアームの遠位端に隣接する第2の把持先端部と、第1の把持先端部および第2の把持先端部の遠位端は、鉗子の水平軸から下方に湾曲していることと;第1の把持先端部の内側部分は、羊膜(インサート)の縁部を把持するような大きさの切り欠き部を有することと、を備える。
【0009】
本発明のさらに別の実施形態は、眼の表面から凍結保存された羊膜インサートを除去するための方法であって、(a)眼の眼球表面上に羊膜インサートを配置した状態の眼に麻酔薬を一滴入れて瞬目反射を減少させることと、(b)鉗子であって、近位端で連結された同じ長さおよび幅を有する第1のアームおよび第2のアームと、第1のアームの遠位端に隣接する第1の把持先端部と、第2のアームの遠位端に隣接する第2の把持先端部と、第1の把持先端部および第2の把持先端部の遠位端は鉗子の水平軸から下方に湾曲することと、第1の把持先端部および第2の把持先端部の鈍い丸い遠位端と、羊膜インサートの縁部を把持するように寸法決めされた切り欠き部を有する第1の把持先端部の内側部分と、を備える鉗子を提供することと、(c)下眼瞼を下方に引っ張り、羊膜インサートの一部を露出させることと、(d)第1の把持先端部の切り欠き部内にAMの内側リング(inner ring)を保持することと、(e)第1のアームおよび第2のアームを手で締め付けて、第1の把持先端部および第2の把持先端部を互いに近づけ、これにより、AMを切り欠き部および対向する把持先端部上の溝付きの反横断要素(anti-transversal elements)内の位置にロックして滑りを回避することと、(e)角膜を傷つけることなく内側リングによって羊膜インサートを穏やかに除去することと、を含む方法を含む。
【0010】
開示された概念および特定の実施形態が、本発明と同じ目的を実行するために構造を修正または再設計するための基礎として容易に利用され得ることは当業者には明らかであろう。そのような同等の構造は、添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の精神および範囲から逸脱しないことを当業者であれば理解できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の鉗子の例示的な実施形態の上面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、内面に切り欠き部を有する鉗子の把持先端部を示す側面図である。
【
図3】本発明の別の実施形態による、内面に切り欠き部を有する鉗子の把持先端部を示す側面図である。
【
図4】鈍い丸い先端部を有する湾曲した把持先端部を備えた本発明の鉗子のさらに別の実施形態の側面図である。
【
図5】
図4に示される鉗子の第1の把持先端部の内面の一実施形態の側面図である。
【
図6】
図4に示される鉗子の第2の把持先端部の内面の一実施形態の側面図である。
【
図8】
図7の羊膜インサートを把持した状態の
図4に示されている鉗子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明およびその利点をより完全に理解するために、添付の図面と併せて以下の説明を参照する。
開示された実施形態は、本発明の単なる例示であり、様々な形態で具体化され得ることが理解されるべきである。したがって、本明細書に開示される特定の構造的および機能的詳細は、限定的であると解釈されるべきではなく、任意の適切に詳細な構造で本発明を様々に使用することを当業者に教えるための代表的な基礎として単に解釈されるべきである。
【0013】
同様の参照文字は、図面全体で同様または類似の部分を示すことが指摘されている。図または図面は、縮尺どおりであることが意図されていない。例えば、純粋に図面をより明確にするために、構成要素のサイズおよび間隔は、組み立てられた実施形態のいずれかに実際に存在するので、寸法が定められていない。
【0014】
本発明は、一般に、羊膜を把持するための外科用器具、より具体的には、眼科医が使用するための鉗子に関する。本明細書で使用される場合、羊膜またはAMという用語は、限定されるものではないが、羊膜、羊膜インサート、生体組織およびインプラントを含む。羊膜は、PROKERA(登録商標)のような凍結保存された羊膜であってもよい。
【0015】
図1を参照して、近位端102および遠位端104を有する鉗子100の例示的な実施形態を以下に記載する。鉗子100は、近位端102で連結された一対のアーム106、108を備える。アーム106、108は、同じ長さおよび幅である。アームのそれぞれは、遠位端104の近くに把持先端部110、112を含む。アーム106、108のそれぞれの中間部分114、116の外面/上面(exterior/upper surface)は、複数の溝付きの横断滑り止め要素(grooved transversal anti-slip elements)を備えている。本明細書で使用される場合、「溝付きの横断反要素(grooved transversal anti-elements)」という用語は、滑り止め要素のいずれかの側に位置する溝を意味する。中間部分114、116は、近位端と遠位端との間に配置されている。滑り止め要素には、隆起(ridges)、ひだ(corrugations)、または鋸歯状突起(serrations)を含めることができる。滑り止め要素は、鉗子100の滑らか(smooth)で滑りにくい把持を助ける。アーム106、108は、結合セクション117で結合されている。しかしながら、別の実施形態(図示せず)では、中間部分は滑らかであってもよい。中間部分114、116を把持および締め付けて、アーム106、108を互いに近づけることができる。任意選択で、アーム106、108は、同アームが中間部分114、116から遠位端104へと向かうにつれて細くなっていてもよい。
【0016】
把持先端部110、112は、実質的に丸みを帯びた端部を有する。丸みを帯びた端部は鈍くなっており(blunted)、外科手術中に角膜を損傷しないようにすることができる。把持先端部110の底面/内面は、切り欠き部118を含む。切り欠き部118は、遠位端104の近位に位置する。本明細書で使用される場合、「切り欠き部(notch)」という用語は、鉗子の内面上のノッチ、凹部、溝または切り欠き部分を含むがこれらに限定されない。対向する把持先端部112の内面は、切り欠き部を欠いている、すなわち、いかなる切り欠き部も含んでいない。
【0017】
切り欠き部118の拡大図が
図2に示されている。切り欠き部118は、医師が羊膜の縁部を容易かつ確実に把持することを可能にし、効率的で損傷のない操作を可能にする。切り欠き部118は、典型的には、鉗子で除去または操作されることが望まれる羊膜の縁部に合うように選択された同切り欠き部の高さおよび幅を備え、かつ丸みを帯びている。切り欠き部118は、把持先端部の全幅を横切り、丸いまたは半円形の形状である。
【0018】
図3は、把持先端部の内面の構成を除いて、
図1に示したものと同様の鉗子を示している。
図3に示す鉗子の実施形態は、把持先端部113の内面125を有し、この把持先端部113の内面125は、隆起、ひだ、または鋸歯状突起を含む複数の溝付きの横断滑り止め要素を備えている。把持先端部115の内面127は、遠位端124の近位に切り欠き部130を備えていることを除いて同様である。
【0019】
鉗子の別の実施形態が
図4~6に示されている。鉗子200は、近位端202および遠位端204を有する。鉗子200は、近位端202で連結された一対のアーム206、208を含む。アーム206、208は、同じ長さおよび幅である。各アームは、遠位端204に、鈍い丸い先端部を有する。
【0020】
アーム206、208は、一般に、鉗子100について説明したものと同様の把持部を有し、近位端202の近くでアームを結合することによって一体の部材として形成される。アーム206、208のそれぞれの中間部分の外面/上面は、複数の溝付きの横断滑り止め要素を備えている。中間部分は、近位端と遠位端との間に位置する。滑り止め要素には、隆起、ひだ、または鋸歯状突起を含めることができる。滑り止め要素は、鉗子200の滑らかで滑りにくい把持を助ける。しかしながら、別の実施形態(図示せず)において、把持部分を滑らかにすることができる。アーム206、208は、近位端に隣接する結合セクションで結合されている。アームは、中間部分から遠位端に向かうにつれて細くなっていてもよい。
【0021】
鉗子200は、
図4に示されるように、アームの遠位部分の構成を除いて、
図1の鉗子100と同様である。図示されるように、アームの遠位端220は、鉗子の水平軸から下方に湾曲している。それらの遠位先端部220におけるアームの湾曲角度215は、典型的には10°~60°である。第1の把持先端部および第2の把持先端部210、212は、把持先端部110、112と同様に、外科処置中の損傷のリスクを低減するために、実質的に丸い端部を有する。
【0022】
把持先端部210、212の内部/内側表面222、226は、一般に、隆起、ひだ、または鋸歯状突起を含む複数の溝付きの横断滑り止め要素を備える。第1の把持先端部210の内部/内側表面222は、遠位端204の近位に切り欠き領域/切り欠き部218を含む。切り欠き部218は、切り欠き部118および130に類似している。切り欠き領域218は、特定の処置中に保持または操作される特定の羊膜の縁部に適合するように設計される。第2の把持先端部212は、複数の溝付きの横断滑り止め要素を有する。羊膜は、切り欠き領域218と第2の把持先端部212上の溝付きの横断滑り止め要素との間の所定の位置に確実にロックされ得る。切り欠き領域218は、深さおよび幅を変更してもよい。切り欠き部218の一実施形態は、アーム210の幅全体を横断し、形状が円形または半円状である。切り欠き部118、130、218の寸法は、羊膜を確実に保持するその能力を最適化するように選択される。切り欠き部218の内面は滑らかであってもよい。しかしながら、切り欠き部の内面は、1つ以上の滑り止め要素を含むこともできる。
【0023】
本発明の鉗子は、好ましくは、ステンレス鋼、白金または他の外科グレードの材料または合金のような、弾力性のある耐食性材料で構成される。鉗子は、いずれかの手の指の間に便利に保持されるように構成される。鉗子の長さは140mm~165mmである。切り欠き部は、0.1mm~5mmの内径を有することができる。一実施形態において、切り欠き部の内径は0.8mm~1.8mmである。
【0024】
一実施形態において、鉗子の丸い先端部は、保護カバー(図示せず)内に封入されていてもよい。カバーは、通気口または開口部を含むことができる。
本発明の別の実施形態は、本明細書に開示する本発明の鉗子を含むキットに関する。キットはまた、1つ以上の保護用先端部カバーおよび鉗子を使用するための説明書を含むことができる。
【0025】
一実施形態によれば、鉗子200は、損傷した眼の表面の治療に使用することができる。治療は、PROKERA(登録商標)などの凍結保存された羊膜インサート700の使用を伴っていてもよい。
図7に示すように、羊膜インサート700は、コンフォーマーリング(conformer rings)(内側リング720および外側リング730のセット)内に配置された羊膜片710を含む。内側リング720は、外縁部725を含む。縁部725は、第1の把持先端部の切り欠き部内に保持され、第2の把持先端部の溝付きの横断滑り止め要素によって鉗子内の位置にロックされ得る。リングは、柔軟なエラストマー材料で作製することができる。
【0026】
従来、羊膜インサート700は、指先を使用して眼に配置されるものであった。しかしながら、例示的な実施形態では、鉗子200を使用して、羊膜インサート700を眼の表面に配置することができる。有利なことに、鉗子200はまた、医師が羊膜インサートを穿刺/損傷することなくしっかりと把持することを可能にする。方法は、局所麻酔薬を点眼して眼を麻痺させ、患者にとってより快適な処置にすることを含む。羊膜インサート700をそのカバーから取り出して、生理食塩水ですすぐ。眼科医は、鉗子200を用いて、把持先端部210、212で内側リング720を把持する。次に、眼科医は患者の上眼瞼を持ち上げて、患者に下方を見るように求める。羊膜の一部を上結膜円蓋上に配置する。これに続いて、鉗子200の鈍く、かつ丸い端部を使用して、羊膜700の上部を上眼瞼の下に押し込む。最後に、羊膜の下部を下眼瞼の下に押し込む。
【0027】
羊膜710は、典型的には、数日以内に、全体が、または部分的に溶解される。羊膜は目の治癒を促進する。コンフォーマーリングおよび残存する羊膜は眼表面から除去され得る。従来、羊膜インサート700は、指または鉗子を用いて除去される。従来の鉗子は、羊膜インサートを外側リングまたは下縁から持ち上げることによって治療用インサートを除去するように設計された鈍い鉗子である。外側リングの内面が角膜に接触するため、従来の鉗子または器具を使用する現在の除去方法に一般的に付随する問題は、鉗子の遠位端が誤って患者の角膜を傷つけてしまい、眼の外側表面を覆っている眼球結膜に損傷または他の損傷を引き起こすことであった。
【0028】
本発明の鉗子は、角膜にそのような損傷を引き起こすことを回避する。一実施形態によれば、
図8に示すように、鉗子200を使用して羊膜インサート700を除去することができる。
【0029】
方法は、患者にとって除去手順をより快適にするために眼に麻酔薬の一滴を滴下することを含む。例えば、眼科医が鉗子200を用いて眼に近づいたとき、麻酔薬は患者の瞬目反射を低減させることができる。眼科医は下眼瞼を下方に引き、羊膜インサート700の一部を露出させることができる。把持先端部212は、内側リング720の内縁上に配置され、把持先端部210は、内側リング720の縁部725に向かって移動される。鉗子200は、切り欠き部(218)が縁部725によって内側リングを保持できるように、互いに向かって締め付けることができる。内側リングは、鉗子内の位置で、第1の把持先端部上の切り欠き部と第2の把持先端部の溝付きの横断滑り止め要素との間にロックされる。次いで、羊膜インサート700は、
図9に示すように、その上縁(又は内側リング)から穏やかに除去され得る。これは、羊膜インサート700をその下縁(または外側リング)から除去することを含む従来の方法とは相反する。有利なことに、羊膜インサートは、角膜に触れることなく除去することができる。内側リング720の縁部725が外側リング730の上面より上方に持ち上げられるので、鉗子は内側リングを把持して角膜に触れることなく羊膜インサート700を除去することができる。
【0030】
本明細書では、第1、第2、内側、外側などの用語が様々な表面などを説明するために使用されているが、これらの表面はこれらの用語によって限定されるべきではないことが理解される。これらの用語は、ある表面を別の表面から区別するためにのみ使用される。
【0031】
開示された概念および特定の実施形態が、本発明と同じ目的を実行するために構造を修正または再設計するための基礎として容易に利用され得ることは当業者には明らかであろう。そのような同等の構造は、添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の精神および範囲から逸脱しないことを当業者は理解すべきである。