(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】電流経路を遮断するためのスイッチング装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/16 20060101AFI20230306BHJP
H01H 33/59 20060101ALI20230306BHJP
H03K 17/567 20060101ALI20230306BHJP
H03K 17/08 20060101ALI20230306BHJP
H03K 17/0814 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
H03K17/16 M
H01H33/59 E
H03K17/567
H03K17/08 Z
H03K17/0814
(21)【出願番号】P 2021513207
(86)(22)【出願日】2019-09-17
(86)【国際出願番号】 EP2019074758
(87)【国際公開番号】W WO2020058212
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】102018215827.4
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ルップ,ユルゲン
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/055243(WO,A1)
【文献】米国特許第04232235(US,A)
【文献】特開平06-038511(JP,A)
【文献】特開平09-275674(JP,A)
【文献】国際公開第2018/158233(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00-17/70
H01H 33/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源側および負荷側インダクタンス(3,5)を含む直流電圧系統の電流経路(6)を遮断するためのスイッチング装置(1)であって、前記スイッチング装置(1)が直列に接続された少なくとも2つのスイッチングモジュール(10)を含み、前記スイッチングモジュール(10)のそれぞれが少なくとも1つの制御可能な半導体スイッチング素子(13)を含み、前記半導体スイッチング素子(13)に、抵抗(14)とコンデンサ(15)とからなる直列回路が並列に接続されている、スイッチング装置(1)において、
前記抵抗(14)が、互いに直列に接続された2つの抵抗(141,142)の直列回路からなり、前記直列回路の第1の端部が、前記制御可能な半導体スイッチング素子(13)の第1の負荷接続部と接続され、前記直列回路の第2の端部が、前記コンデンサ(15)と接続されており、
前記スイッチングモジュール(10)のそれぞれが、さらに別の制御可能な半導体スイッチング素子(16)を含み、前記別の制御可能な半導体スイッチング素子(16)が、前記直列回路の両抵抗の第1の結節点(143)と、前記コンデンサ(15)を前記制御可能な半導体スイッチング素子(13)の第2の負荷接続部に接続する第2の結節点(144)との間に接続されて
おり、
前記別の制御可能な半導体スイッチング素子(16)が、サイリスタであり、
前記サイリスタが、消弧回路によって消弧可能であり、
前記消弧回路が、前記第1の結節点と、前記制御可能な半導体スイッチング素子(13)の前記第1の負荷接続部との間に接続された別のコンデンサ(17)を含むことを特徴とするスイッチング装置。
【請求項2】
前記別の制御可能な半導体スイッチング素子(16)が、制御信号によってオン状態およびオフ状態に切換可能であることを特徴とする請求項1記載のスイッチング装置。
【請求項3】
前記別の制御可能な半導体スイッチング素子(16)が、絶縁ゲート電極を有するバイポーラトランジスタ(IGBT)であることを特徴とする請求項1又は2記載のスイッチング装置。
【請求項4】
前記サイリスタが、ゲートターンオフ型(GTO、IGCT)であることを特徴とする請求項
1から3のいずれか1項に記載のスイッチング装置。
【請求項5】
前記制御可能な半導体スイッチング素子(13)が、前記消弧回路の一要素であることを特徴とする請求項
1から4のいずれか1項に記載のスイッチング装置。
【請求項6】
前記コンデンサ(15)の所望の放電時間が、前記直列回路の抵抗(141、142)の抵抗値の比によって設定されていることを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載のスイッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源側および負荷側インダクタンスを含む直流電圧系統の電流経路を遮断するためのスイッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源側および負荷側インダクタンスを含む直流電圧系統の電流経路を遮断するために設けられるスイッチング装置は、直流電圧系統からのエネルギーの回生又は低減に対処できなければならない。
【0003】
機械的スイッチ、又は機械的および電子的なスイッチング素子を有するハイブリッドスイッチが使用される場合、電流がゼロを通過するときに電流経路が遮断されることが保証されない限りは、アーク発生の危険性がある。従って、このような機械的なスイッチング素子は、費用のかかる保護回路によって、例えば複数の半導体スイッチング素子およびバリスタを過電圧リミッタとして設けることによって、保護されなければならない。そのためには、例えば、主電流分岐中にある高速のスイッチングをする機械的スイッチが、導通状態において小さな電圧降下を有する半導体スイッチング素子と相互に接続されるとよい。負荷経路の遮断時におけるこの半導体スイッチング素子の役割は、オフ時に、この装置に対して並列に接続された主スイッチへ電流を案内することができるように、電圧降下を発生させることにある。この主スイッチは、複数の半導体スイッチング素子の直列回路からなり、これらの半導体スイッチング素子には、過電圧保護のためにそれぞれバリスタが並列に接続されている。ここで電流が殆どその並列経路を介して流れるならば、高速の機械的スイッチは、アークを生成することなくオフさせることができる。このスイッチング装置の欠点は、多数の半導体スイッチング素子およびバリスタが必要であることによる複雑さにあり、しかも、これらのバリスタは非常に高価で重い。
【0004】
制御可能な半導体スイッチング素子、例えばIGBTのみを有するスイッチング装置も知られている。 この変形例では、双方向動作のために、例えば、2つの半導体スイッチング素子を負荷経路内において逆直列に接続することができる。しかし、このスイッチング装置は、他の手段なしでは、大きなインダクタンスを有さない直流電圧系統においてしか使用することができない。加えて、バリスタ等のような電圧制限要素が必要とされるが、これらはコスト上の理由から好んでは使用されない。
【0005】
特許文献1から、上記の問題を解決するスイッチング装置が知られている。このスイッチング装置は、直列に接続された少なくとも2つのスイッチングモジュールを有する。各スイッチングモジュールは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の形態の少なくとも1つの制御可能な半導体スイッチング素子を含み、該半導体スイッチング素子には抵抗とコンデンサとからなる直列回路が並列に接続されている。このようなスイッチング装置は、電流経路内の電流を急激に減少させるのではなく、ランプ状に減少させる「ソフトな」スイッチオフ過程を可能にする。少なくとも2つのスイッチングモジュールのうちの少なくとも1つによって、電流経路内に逆電圧が形成される。これは、スイッチングモジュールの各半導体スイッチ素子をクロック同期領域で動作させることによって可能になる。このようにして、スイッチオフ時の高い損失電力は、各スイッチングモジュールの半導体スイッチング素子においてではなく、主に、各スイッチングモジュールの抵抗において消費される。それによって、スイッチング装置は、高価で、重く、大きいスペースを占めるバリスタのような電圧制限部品を省略することができる。各スイッチングモジュール内の半導体スイッチング素子は、ブレーキチョッパの役割を果たす。
【0006】
このスイッチング装置の欠点は、負荷電流だけでなく、コンデンサの放電電流も、制御可能な半導体スイッチング素子を介して流れることにある。その放電電流は、オフ過程中に短時間だけ流れる。しかし、IGBTは、僅かな程度しか過電流に耐えることができない。従って、IGBTは、最悪の場合に対して、すなわち、負荷電流と放電電流とを合わせた最大可能な電流に対して設計されなければならず、これは、大容量のデバイスの使用を必要とする。それによって、スイッチング装置は望ましくなく高価なものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2018/158233号(PCT/EP2018/054775)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、構造的および/又は機能的にさらに改善され、構成要素の過大な容量設計を必要としない、電源側および負荷側インダクタンスを含む直流電圧系統の電流経路を遮断するためのスイッチング装置を提供することにある。特に、このスイッチング装置は、より低いコストで提供することができなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1記載の特徴事項によるスイッチング装置によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0010】
直列に接続された少なくとも2つのスイッチングモジュールを有する、電源側および負荷側インダクタンスを含む直流電圧系統の電流経路を遮断するためのスイッチング装置が提案される。各スイッチングモジュールは、少なくとも1つの制御可能な半導体スイッチング素子を含み、該半導体スイッチング素子に、抵抗とコンデンサとからなる直列回路が並列に接続されている。このスイッチング装置は、前記抵抗を互いに直列に接続された2つの抵抗の直列回路から形成することによって、特許文献1から知られているスイッチング装置を改良する。この直列回路の第1の端部が、前記制御可能なスイッチング装置の第1の負荷接続部に接続されている。この直列回路の第2の端部が、前記コンデンサに接続されている。さらに、各スイッチングモジュールが、別の制御可能な半導体スイッチング素子を含む。この別の制御可能な半導体スイッチング素子が、前記直列回路の両抵抗の第1の結節点と、前記コンデンサを前記制御可能な半導体スイッチング素子の第2の負荷接続部に接続する第2の結節点との間に接続されている。
【0011】
このように構成されたスイッチング装置において、負荷電流は、公知のスイッチング装置におけるように、制御可能な半導体スイッチング素子を介して流れる。これに対して、スイッチングモジュールのコンデンサを放電させるための放電電流は、別の制御可能な半導体スイッチング素子によって引き受けられる。その結果、負荷電流を流す制御可能な半導体スイッチング素子は、負荷電流のレベルに合わせて容量選定をすることができる。公知のスイッチング装置のような過剰な容量選定は不要である。このようにして提供されるスイッチング装置は、追加の構成要素にもかかわらず、より低いコストを有する。
【0012】
別の制御可能な半導体スイッチング素子としては、好適な実施形態によれば、制御信号によってオンおよびオフの切り換えができる制御可能な半導体スイッチング素子が使用される。例えば、別の制御可能な半導体スイッチング素子は、絶縁ゲート電極を有するバイポーラトランジスタ(IGBT)であってよい。別の制御可能な半導体スイッチング素子をIGBTとして実施する場合、制御の自由度がより大きくなる。スイッチングモジュールのコンデンサの放電電流を引き受ける機能に加えて、別の制御可能な半導体スイッチング素子を介する持続的な電流の流れも実現することができる。2つの抵抗の直列回路における両抵抗のうち、別の制御可能な半導体スイッチング素子に前置接続された抵抗は、例えば、系統振動を減衰させるために、又は容量性負荷のための充電抵抗として、使用することができる。
【0013】
別の実施形態では、別の制御可能な半導体スイッチング素子がサイリスタである。別の制御可能な半導体スイッチング素子としてサイリスタを使用することは、サイリスタが短時間では非常に高いレベルの過負荷をかけることができ、従って比較的小型のものを使用することができるという利点を有する。それによって、スイッチング装置を低コストで実現することができる。
【0014】
一実施形態によれば、サイリスタは、例えばGTO (ゲートターンオフ)サイリスタ又はIGCT (集積化ゲート転流型サイリスタ)のような自己消弧可能なタイプのものである。自己消弧可能なタイプのサイリスタを使用することによって、別の制御可能な半導体スイッチング素子の電流経路を通る電流の流れを的確に停止させることができる。
【0015】
特に高いコストおよび/又は低い可用性のために、ターンオフ可能なタイプのサイリスタを使用すべきでない場合には、代わりにサイリスタが消弧回路によって消弧されるとよい。特に、スイッチング装置の負荷電流を引き受ける制御可能な半導体スイッチング素子はその消弧回路の一要素である。これにより、追加要素の数を少なく保つことができる。
【0016】
前記消弧回路が別のコンデンサを含み、別のコンデンサが制御可能な半導体スイッチング素子の第1の負荷接続部と、前記第1の結節点との間に接続されていると好適である。従って、2つの抵抗の直列回路における両抵抗のうちの一方の抵抗、即ち、別の制御可能な半導体スイッチング素子に直列に接続されている抵抗には、別のコンデンサが並列に接続され、この別のコンデンサは、制御可能な半導体スイッチング素子がオンされたときにサイリスタの両端間に短い負電圧サージを生成し、その結果、サイリスタの電流がゼロになる。このようにして、少ない費用でサイリスタの消弧を達成することができる。
【0017】
他の好適な実施形態によれば、コンデンサの所望の放電時間が、2つの抵抗の直列回路の両抵抗の抵抗値比によって設定される。コンデンサが充電されるときは、2つの抵抗の直列回路における2つの抵抗の抵抗値の合計からもたらされる抵抗値が作用する。これに対して、コンデンサが放電されるときは、別の制御可能な半導体スイッチング素子に対する並列分岐に含まれる抵抗の抵抗値のみが作用する。
【0018】
別の好適な実施形態によれば、別のコンデンサは、スイッチングモジュールのコンデンサの静電容量値よりも小さい静電容量値を有する。
【0019】
上述のスイッチング装置は、特に、1000 Vを超える電圧を有する直流電圧系統において使用するために提供される。直流電圧系統内の電圧に応じて、スイッチング装置のスイッチングモジュールの適切な個数が選択されなければならない。同じ半導体スイッチング素子を前提とした場合に、直流電圧系統において制御されるべき電圧が高いほど、スイッチングモジュールの個数がより多く選択される。中電圧範囲の直流電圧系統では、負荷電流をスイッチングするための制御可能な半導体スイッチング素子として、特にIGBT又はMOSFETを使用することができる。さらに高い電圧では、特に、消弧装置を有するサイリスタ、又はIGCTが使用される。別の実施形態では、ここに記載されるタイプのスイッチング装置が、短絡に対して保護された回路遮断器として使用される。
【0020】
以下において、図面における実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、公知のスイッチング装置のための唯一の単方向スイッチングモジュールの構成を示す電気的等価回路図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す3つのスイッチングモジュールの直列接続の電気的等価回路図である。
【
図3】
図3は、電源側および負荷側インダクタンスを有する直流電圧系統における本発明によるスイッチング装置の電気的等価回路図である。
【
図4】
図4は、本発明による改良されたスイッチングモジュールの第1の実施例を示す回路図である。
【
図5】
図5は、本発明による改良されたスイッチングモジュールの第2の実施例を示す回路図である。
【
図6】
図6は、別の制御可能な半導体スイッチング素子の電圧および電流の経過を示すダイアグラムである。
【
図7】
図7は、双方向動作を可能にする本発明によるスイッチングモジュールの第3の実施例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
なお、以下の説明において、同一の要素には同一の符号を付してある。
【0023】
図1は、特許文献1から知られている、電源側インダクタンスおよび負荷側インダクタンスを含む電流経路6を遮断するためのスイッチング装置1のスイッチングモジュール10の概略構成を示す。スイッチングモジュール10は、制御可能な半導体スイッチング素子13を有する。制御可能な半導体スイッチング素子13は、IGBT、MOSFET、IGCT、又は消弧装置を有するサイリスタとすることができる。制御可能な半導体スイッチング素子13の負荷接続部は、第1のスイッチングモジュール端子部11と第2のスイッチングモジュール端子部12との間に接続されている。第1のスイッチングモジュール端子部11と第2のスイッチングモジュール端子部12との間には、抵抗14とコンデンサ15とからなる直列回路も配置されている。言い換えれば、抵抗14とコンデンサ15とからなるRC要素が、制御可能なスイッチング素子13の負荷接続部に並列に接続されている。IGBTと逆直列に存在するダイオードは、図を見易くするために示されていない。スイッチング素子13が逆直列に接続された2つのIGBTから構成される場合、モジュールは双方向動作用にアップグレードすることができる。
【0024】
スイッチング装置1のこのような単独のスイッチングモジュールの基本的な動作モードは、次の通りである。スイッチング装置1が電流を流すべき場合には、制御可能な半導体スイッチング素子13が導通状態(オン状態)に切り換えられる。スイッチング装置1によって電流経路6が遮断されなければならなくなるとすぐに、制御可能な半導体スイッチング素子13が、図示されていない制御装置によって、阻止状態(オフ状態)に切り換えられる。その結果、電流経路6に流れる電流Iは、抵抗14とコンデンサ15とからなるRC要素を介してのみ、なおも流れ続けることができる。コンデンサ15は、それに流れる電流Iの結果として、該コンデンサを介して降下する電圧が予め与えられた上限閾値に達するまで充電される。このためには、適切な測定装置(図示せず)が、スイッチングモジュール10内に設けられているとよい。予め与えられた上限閾値が到達されるとすぐに、制御可能な半導体スイッチング素子13が再びオン状態に切り換えられる。その結果、コンデンサ15は、抵抗14と制御可能な半導体スイッチング素子13とを介して放電することができる。コンデンサ15を介して降下する電圧が予め与えられた下限閾値に達するとすぐに、制御可能な半導体スイッチング素子13が、それの制御装置によって再びオン状態に切り換えられる。従って、制御可能な半導体スイッチング素子13は、導くべき(負荷)電流Iのためだけでなく、コンデンサ13の放電の結果として生じる放電電流のためにも設計されていなければならない。
【0025】
電流経路6の遮断が直流電圧系統において発生した短絡に起因して行われた場合、再投入(制御可能な半導体スイッチング素子13をオン状態に切り換えること)によって、短絡電流が再びスイッチングモジュール10を通して流れ得る。しかし、制御可能な半導体スイッチング素子13の投入時間は非常に短く、しかも
図1に示されていない電源側および負荷側インダクタンス3もしくは5(
図3参照)が急激すぎる電流上昇を防止することから、電流経路6に流れる電流Iは平均的に減少させられる。
【0026】
図1に示すように、スイッチング装置1が唯一のスイッチングモジュール1しか有していない場合には、制御可能な半導体スイッチング素子13の最大電圧よりも低い電圧に抑制することしかできない。急速な遮断過程の結果としてより大きな電圧が発生し、電流経路に存在するインダクタンスに起因して過電圧が発生した際に、制御可能な半導体スイッチング素子13は破壊される可能性がある。スイッチング装置1に唯一のスイッチングモジュール10を設けることは、基本的には可能であるが、しかし直流電圧系統が高いインピーダンスを有する場合にしか有効でない。
【0027】
従って、直流電圧系統の電流経路を遮断するための提案されたスイッチング装置1の助けを借りて、より高い電圧を実現できるようにするために、
図2によれば、
図1に示されているようなスイッチングモジュールの複数個が直列に接続されている。
【0028】
図2は、n個のスイッチングモジュール10-1,10-2,…,10-n(一般に:10-i,i=1~n)の直列接続の電気等価回路図を示す。各スイッチングモジュール10-iは、
図1に示したように構成されている。スイッチングモジュール10-iの直列接続は、第1のスイッチングモジュール10-1の第2のスイッチングモジュール端子部12-1が後続のスイッチングモジュール10-2の第1のスイッチングモジュール端子部11-2に接続され、以下同様に接続されるように行われている。第1のスイッチングモジュール10-1の第1のスイッチングモジュール端子部11-1は、
図3に示すように、電源側インダクタンス3を介して直流電圧源2に接続されている。直流電圧源2は、例えば太陽光発電システム、蓄電システム、バッテリ充電装置、風力エネルギーシステム、整流器等のエネルギー発生ユニットであってよい。最後のスイッチングモジュール10-nの第2のスイッチングモジュール端子部12-nは、
図3に示すように、負荷側インダクタンス6を介して負荷4に接続されている。負荷4は、例えば直流電圧系統の駆動装置であってよい。
【0029】
図3は、それぞれ
図1に示すように構成されて互いに直列に接続された2つのスイッチングモジュール10-1および10-2からなるスイッチング装置1の電気等価回路図を示す。スイッチング素子1は、既述の電源側インダクタンス3を介して直流電圧源2に接続されている。スイッチング素子1の出力側は、負荷側インダクタンス5を介して負荷4に接続されている。電源側インダクタンス3および負荷側インダクタンス5は、必ずしも直流電圧系統の物理的な構成要素である必要はない。電源側インダクタンス3および負荷側インダクタンス5は、配線インダクタンスであってもよい。
【0030】
図3に示すスイッチング素子の動作モードは、次のとおりである。負荷4に直流電圧源2から電流が供給されるべき場合には、スイッチングモジュール10-1,10-2(一般に:10-i,i=1~2)の制御可能な半導体スイッチング素子13-1,13-2(一般に:13-i,i=1~2)がオン状態にされている。電流経路6が、例えば負荷側短絡に起因して、遮断されなければならなくなるとすぐに、まず2つの制御可能半導体スイッチング素子13-iがオフ状態に切り換えられ、その結果、電流Iは、2つのスイッチングモジュール10-iの両RC要素を介してのみ流れることができる。コンデンサ15-1、15-2(一般に:15-i,i=1~2)は、それぞれの予め与えられた上限閾値が到達されるまで充電される。予め与えられた上限閾値は、両コンデンサ15-iに対して同じ値又は異なる値に選定することができる。まず、スイッチングモジュール10-1又は10-2の制御可能な半導体スイッチング素子13-1又は13-2の一方が、再びオン状態に切り換えられると、対応する方のコンデンサ15-1又は15-2が、直列抵抗14-1もしくは14-2を介して放電する。予め与えられた下限閾値が到達されるとすぐに、対応する制御可能な半導体スイッチング素子が再びオフ状態に切り換えられる。同時に、又はその直後に時間遅延を伴って、他方の制御可能な半導体スイッチング素子13-2又は13-1が、それの予め与えられた上限閾値に到達したときに、オン状態に切り換えられる。このようにして、2つの制御可能な半導体スイッチング素子13-1,13-2が交互にオン状態に切り換えられ、それによって次のことが保証される。即ち、2つの制御可能な半導体スイッチング素子13-iにわたって全体として合計電圧U
gesがもたらされ、この電圧によって電流の流れが低減され、従って、インダクタンス3,5の蓄積エネルギーが低減される。
【0031】
唯一のスイッチングモジュールを使用する場合と違って、複数のスイッチングモジュールを使用する場合には、直流電圧系統内に常に逆電圧(即ち、直流電圧源2の電圧方向とは逆方向の電圧)が存在する。直列に接続されたスイッチングモジュールの個数nが非常に大きい場合には、1つのスイッチングモジュールの短時間の短絡はほとんど影響せず、それによって電流は徐々に減少する。
【0032】
全ての制御可能な半導体スイッチング素子13-iにおいて予め与えられた上限スイッチング閾値が到達されなくなるとすぐに、スイッチングモジュール10-iの全ての制御可能な半導体スイッチング素子13-iは、持続的にオフ状態にされたままである。直流電圧系統内の電圧は、自然共振により減衰する。
【0033】
上述の方法は、直列接続されたスイッチングモジュールの個数nがどれだけ大きいかに関係なく、適切なやり方で実施される。与えられた時点で、制御可能な半導体スイッチング素子13-iのどれがオフ状態に切り換えられ、他の制御可能な半導体スイッチング素子13-iのどれがオン状態に切り換えられるかは、図示されていない前述の制御ユニットの的確な制御の下で行うことができる。同様に、割り当てられた制御可能な半導体スイッチング素子のスイッチオンおよびスイッチオフの時間的動作は、それぞれの上限スイッチング閾値の適切な異なる選択によって、影響を受け得る。
【0034】
別の代替例では、それぞれのコンデンサ15-iに印加される電圧は、適切な測定手段(図示せず)によって監視することができる。この場合に、最も高い電圧が印加されるコンデンサに割り当てられた制御可能な半導体スイッチング素子は、予め与えられた下限閾値が到達されるまで、オン状態にされる。異なる時点において常に異なるスイッチングモジュールもしくはそれらのコンデンサが最も高い電圧を有するので、スイッチングモジュール10-iの制御可能な半導体スイッチング素子13-iは、多かれ少なかれランダムにオンおよびオフに切り換えられる。
【0035】
図4および
図5は、コンデンサ15の放電の結果として生じる放電電流に関係なく、制御可能な半導体スイッチング素子13の容量を決定することができる、改良されたスイッチング装置1の2つの実施例の電気等価回路図を示す。言い換えれば、本発明による改良されたスイッチング装置1において、制御可能な半導体スイッチング素子13は、とりわけ負荷電流Iを案内することに責務を負い、該負荷電流に応じて容量決定をすることができる。コンデンサ15の放電の結果として生じる放電電流は、他の制御可能な半導体スイッチング素子16によって引き受けられる。これは、
図4の実施例に示されているようにIGBTであってもよいし、
図5の実施例に示されているようにサイリスタであってもよい。
【0036】
図1から知られるスイッチング装置1の改良では、抵抗14が、互いに直列に接続された2つの抵抗141,142の直列回路から形成されている。前記直列回路の第1の端部は、制御可能な半導体スイッチング素子13の第1の負荷接続部に接続され、従って、第1のスイッチングモジュール端子部11に接続されている。前記直列回路の第2の端部は、コンデンサ15に接続されている。
図4によるIGBTは、前記直列回路の両抵抗141,142の第1の結節点143と、第2のスイッチングモジュール端子部12である第2の結節点144との間に接続されている。第2の結節点144、つまり第2のスイッチングモジュール端子部12は、コンデンサ15を制御可能な半導体スイッチング素子13の第2の負荷接続部に接続する。
【0037】
IGBT 16と制御可能なスイッチング素子13とは、ほぼ同じ時点で切り換えることができる。そして、コンデンサ15の放電は、抵抗141およびIGBT 16を介して行われる。これに対して、そのコンデンサの充電は、半導体スイッチング素子13,16がオフ状態に切り換えられた際に、両抵抗141,142を介して行われる。抵抗値141の選択によって、コンデンサ15の放電時間を調整することができる。
【0038】
図4に示す解決策によれば、IGBTはさらなる構成要素なしに正確に制御することができるので、制御における自由度がもたらされる。コンデンサ15のための純粋な放電機能に加えて、抵抗142およびIGBT 16を通る持続的な電流の流れも実現することができる。従って、抵抗142は、例えば、系統振動を減衰させるために、又は容量性負荷のための充電抵抗として、使用することができる。
【0039】
図5に示す実施例では、別の制御可能な半導体スイッチング素子として、IGBTよりも低コストで提供することができるサイリスタ16が示されている。さらに、サイリスタは、短時間的には非常に高い負荷をかけることができ、従ってサイリスタの方が小形化できるという点で、IGBTよりも有利である。
【0040】
サイリスタのよく知られた欠点は、直流電流が独りでに消えないので、コンデンサ15が放電された後に、制御可能な半導体スイッチング素子13がオフ状態にされたときでも、負荷電流Iが流れ続けることである。この問題を解決するために、サイリスタ13として、GTOやIGCTなどのターンオフ制御可能なサイリスタを用いることができる。しかしながら、これらは、コストが高く、可用性が良くないという欠点を有する。それに代えて、いわゆる消弧回路を、サイリスタ16を介して配置することもできる。
図5に示す変形例は、スイッチング装置の既存の構成要素を利用し、他のコンデンサ17と組み合わせて、このような消弧回路を提供する。その消弧回路は、サイリスタの短絡を生じさせるために用いられている。他のコンデンサ17は、抵抗142に並列に接続されている。これは、コンデンサ17が第1のスイッチングモジュール端子部11と第1の結節点143との間に接続されていることを意味する。他のコンデンサ17の容量値は、コンデンサ15の容量値よりも小さい。制御可能な半導体スイッチング素子13がオンにされたときにサイリスタ16の両端間に短い負電圧サージを発生する他のコンデンサ17の助けにより、電流がゼロになり、それによりサイリスタを通る電流の流れを停止することができる。
【0041】
図6は、他の制御可能な半導体スイッチング素子の電圧および電流の経過を示すダイアグラムである。コンデンサ15が放電する際に、他の制御可能な半導体スイッチング素子を介する電流の流れが瞬間的に増加し、同時に電圧が最大値からゼロに低下することが明らかに分かる。コンデンサ放電後に、コンデンサ15は、該コンデンサが再び他の制御可能な半導体スイッチング素子によって放電されるまでは、徐々に再び充電される。
【0042】
上述の両変形例は、
図1に示されたスイッチング装置の代わりに、
図2および
図3による装置において使用することができる。
【0043】
双方向動作のためのスイッチは、
図4に示して説明したようなモジュールを2つ逆直列に接続することによって実現することができる。これが
図7に示されている。
【符号の説明】
【0044】
1 スイッチング装置
2 直流電圧源
3 電源側インダクタンス
4 負荷
5 負荷側インダクタンス
6 遮断されるべき線路
10 スイッチングモジュール
10-1, …,10-n スイッチングモジュール
11 第1のスイッチングモジュール端子部
11-1, …,11-n 第1のスイッチングモジュール端子部
12 第2のスイッチングモジュール端子部
12-1, …,12-n 第1のスイッチングモジュール端子部
13 半導体スイッチング素子
13-1, …,13-n 半導体スイッチング素子
14 抵抗
14-1, …,14-n 抵抗
15 コンデンサ
15-1, …,15-n コンデンサ
16 別の制御可能な半導体スイッチング素子
17 別のコンデンサ
141 抵抗
142 抵抗
143 第1の結節点
144 第2の結節点
U 電圧
I 電流
t 時間