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特許7238122レーザ金属粉末堆積を使用した補修プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】レーザ金属粉末堆積を使用した補修プロセス
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/342 20140101AFI20230306BHJP
   B23P 6/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B23K26/342
B23P6/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021526739
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2018081351
(87)【国際公開番号】W WO2020098939
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】521208859
【氏名又は名称】ウェスティングハウス エレクトリック ベルギー
【氏名又は名称原語表記】Westinghouse Electric Belgium
【住所又は居所原語表記】Rue de l’Industrie, 43, 1400 Nivelles, Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シンディー ムイレ
(72)【発明者】
【氏名】イブス デレニック
(72)【発明者】
【氏名】ジゼル ウォルマグ
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト ヒメネス
(72)【発明者】
【氏名】セドリック ジョルジュ
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-075893(JP,A)
【文献】特開2015-033717(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0304933(US,A1)
【文献】特開平11-333574(JP,A)
【文献】特開平07-108390(JP,A)
【文献】特開2001-287062(JP,A)
【文献】特開2004-216457(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0351281(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
B23P 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力利用関連の鋳造ステンレス鋼構成部材を補修する方法であって、
a)前記原子力利用関連の鋳造ステンレス鋼構成部材における少なくとも1つの欠陥の存在を特定するステップと、
b)特定された前記少なくとも1つの欠陥を含む前記原子力利用関連の鋳造ステンレス鋼構成部材内の領域を掘削して、空隙を形成するステップであって、前記空隙は、基部と、前記基部から延びる壁と、によって画定され、前記壁は、前記空隙の寸法の段階的変化があるように勾配されており、下記ステップc)の前に、前記空隙を浄化するステップをさらに含む、前記ステップと、
c)所定のパターンで、前記空隙内にレーザ金属粉末を堆積するステップと、
d)レーザを使用して、前記空隙内において堆積された前記粉末を溶融および融合するステップと、
)充填された前記空隙の表面に機械仕上げ加工を行って、前記鋳造ステンレス鋼構成部材の表面に適合させるステップと、
f)前記補修が、前記原子力利用関連の鋳造ステンレス鋼構成部材についての公差の維持を保証する要求仕様であって、寸法上および幾何学形状上の制御の前記要求仕様を満たしていることを保証するために、非破壊試験によって前記充填された空隙を点検するステップと、
を備える、方法。
【請求項2】
ステップc)およびステップd)を1回よりも多く繰り返すことをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップc)およびステップd)の各繰り返しにより、前記空隙内に金属層が構築される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)は、非破壊試験を使用して、前記欠陥を含む前記領域の前記掘削を制御することを備える、請求項1からのいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記原子力利用関連の鋳造ステンレス鋼構成部材は、原子力利用関連の原子炉冷却剤ポンプを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップc)は、中性ガス環境において実行される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ金属粉末堆積を使用した補修プロセスに関し、より詳細には、排他的にではないが、原子力利用関連の鋳造ステンレス鋼鋳造構成部材を補修することに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザクラッディングおよびレーザ金属堆積(レーザメタルデポジション)といったレーザベースの技術は、部品の補修およびコスト集約的な構成部材の表面改質のための、確立された技術となっている。レーザ源、ならびに、レーザプロセスの技術および戦略の継続的な改良により、レーザ堆積プロセスについての適用範囲は絶えず拡大している。
【0003】
US-B-7169242は、配向微細構造を有している物品から、鋳造欠陥を除去するための方法を開示している。この方法は、特定された鋳造欠陥を、この鋳造欠陥自体と少なくとも同じ深さまで、熱源によって局所的に溶融することと、溶融した材料を、周囲にあり、かつ、鋳造欠陥を実質的に有さない、物品の配向微細構造を基準として、エピタキシャルに固化することと、を含む。この方法においては、材料自体が、再度固化されるときに、鋳造欠陥の充填に使用される。
【0004】
US-A-2016/0243650は、非融接性ベース合金で製造された構成部材を再加工して、鋳造欠陥を除去する方法を開示している。この方法は、構成部材において、鋳造欠陥の所在に空隙を形成することと、空隙を、各々が複数のレーザ粉末堆積スポットを含む複数の層で少なくとも部分的に充填することと、を含む。複数のレーザ粉末堆積スポットの各々は、フィラー合金で形成されている。
【0005】
原子力利用関連の鋳造ステンレス鋼構成部材は、非破壊試験の技法を使用して定期的に検査されており、日常的な検査中に、内部および/または表面の欠陥が往々にして検出される。目下、構成部材の複雑な幾何学的形状と、それに纏わる、原子力利用関連の鋳造ステンレス鋼構成部材に纏わる厳格な製造公差と、により、従来の溶接プロセスを使用して、このような内部および/または表面の欠陥を補修することは不可能である。その結果、内部および/または表面の欠陥により、構成部材を補修するのではなく、構成部材全体を交換することが、唯一の選択肢となってしまう。解体または廃棄されるこの構成部材は、その後、二次放射性廃棄物の源となる。
【0006】
したがって、原子力利用関連の鋳造ステンレス鋼構成部材における内部および/または表面の欠陥を、大部分のケースにおいて交換がもはや必要ではなくなるように、補修することができる必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、原子力利用関連の環境における構成部材を、解体するのではなく補修することにより、二次放射性廃棄物を減少させることである。
【0008】
本開示の別の目的は、原子力利用関連の環境での使用に好適な鋳造ステンレス鋼構成部材を補修する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様によると、鋳造ステンレス鋼構成部材を補修する方法が提供され、方法は、a)前記鋳造ステンレス鋼構成部材における少なくとも1つの欠陥の存在を特定するステップと、b)特定された前記少なくとも1つの欠陥を含む前記鋳造ステンレス鋼構成部材内の領域を掘削して、空隙を形成するステップと、c)所定のパターンで、前記空隙内にレーザ金属粉末を堆積するステップと、d)レーザを使用して、前記空隙内において堆積された前記粉末を溶融および融合するステップと、e)前記充填された空隙の表面に仕上げ加工を行って、前記鋳造ステンレス鋼構成部材の表面に適合させるステップと、を備える。
【0010】
レーザ金属粉末堆積プロセスを使用して、掘削された空隙を充填することにより、構成部材におけるひずみおよび応力が綿密に制御され、このことは、補修された構成部材における変形および歪みを結果的に最小化する。
【0011】
一実施形態では、ステップc)の前に、前記空隙を浄化するステップをさらに備える。
【0012】
これにより、空隙内における、結合が緩いいかなる材料も充填の前に除去されて、それにより、レーザ金属粉末堆積プロセス中にさらなる欠陥が生成されないこと、が保証される。
【0013】
一実施形態では、ステップc)およびステップd)は1回よりも多く繰り返される。
【0014】
ステップc)およびステップd)の各繰り返しにより、空隙内に層が構築される。これにより、掘削された空隙が完全に充填されることが保証される。
【0015】
一実施形態では、ステップb)は、非破壊試験を使用して、前記欠陥を含む前記領域の前記掘削を制御することを備えてもよい。
【0016】
このようにして非破壊試験を使用することにより、正確な制御がもたらされて、欠陥が掘削部内に含まれることと、その領域から必要以上の材料が掘削されないことと、が保証される。
【0017】
一実施形態では、ステップe)は、機械仕上げ加工ステップを備える。
【0018】
機械仕上げ加工により、掘削の領域内の構成部材の表面を、掘削前における、そのほぼ当初の状態に戻すことが容易に可能となる。
【0019】
一実施形態では、前記補修が前記鋳造ステンレス鋼構成部材の残部となじんでいることを点検するステップをさらに備えてもよい。
【0020】
このことは、整合性および寸法公差が重要である原子力利用関連の環境において、重要なことである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本開示をより良好に理解するために、次に、例として添付の図面を参照する。
【0022】
図1】原子力利用関連の鋳造ステンレス鋼構成部材のための補修プロセスのフローチャートを例示する図である。
図2】欠陥を除去するために掘削された、構成部材の一部分の模式図である。
図3】補修されるべき構成部材における掘削部を例示する側断面図である。
図4図3の掘削部の上面図である。
図5図3と同様であるが、掘削部内におけるレーザ金属粉末堆積パスを例示する図である。
図6図4と同様であるが、掘削部内におけるレーザ金属粉末堆積パスを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
特定の実施形態を基準として、かつ、或る特定の図面を参照して、本開示について説明するが、この開示は、それに限定されない。説明される図面は、単に模式的なものであり、非限定的である。図面においては、要素のうちのいくつかのサイズが、例示の目的のために、誇張されていることと、縮尺通りに描かれていないことと、があり得る。
【0024】
原子力利用関連の鋳造ステンレス鋼構成部材の整合性を点検するために、非破壊試験(non-destructive tesing:NDT)の技法が使用される。NDT技法は、多種多様な物品または構成部材を、整合性、組成、またはコンディションについて、物品または構成部材自体の状態を変化させずに調査するために、電磁放射、音、および他の信号の変換を利用する。液体浸透探傷試験も使用され得る。目視検査は、拡大鏡、カメラ、または他の光学設備の使用により高度化されるものであり、NDTの最も一般的な形である。しかしながら、目視検査は、試験されている物品または構成部材の表面または外部領域に限定される。透過性放射線、例えば、X線、中性子、およびガンマ線、を使用した放射線透過試験は、物品または構成部材の内部構造の体積試験をもたらし得る。超音波システムを使用した超音波探傷試験も使用され得る。例えば、超音波トランスデューサが、物品または構成部材の体積試験のために音波を発出し、試験されている物品または構成部材から反射された音波が、振幅の変化などについて評価される。鉄を含む材料で製作された物品または構成部材は、この物品または構成部材に対して鉄粒子の塗布および磁場の印加を行うことによって試験されることも可能であり、内部欠陥による、何らかの、磁場における漏れが特定される。このような技法は広く知られているため、さらなる説明は以下に提示しない。
【0025】
本明細書で使用されるような「レーザ金属粉末」という表現は、金属粉末を統合的に溶融および融合するために高パワー密度レーザが使用される三次元プリンティングまたはラピッドプロトタイピングに使用される、金属粉末を指す。このようなプロセスは、垂直軸に沿って割出加工された基板プレート上に金属粉末の薄い層が均一に配置される「選択的レーザ溶融」(またはより広義には、「選択的レーザ焼結」)として知られている。各層が一旦配置されると、金属粉末を選択的に溶融することにより、部品の幾何学的形状の各二次元スライスが融合され、その後、以降の層についても繰り返される。
【0026】
「選択的レーザ溶融」用に使用することが可能な、典型的なステンレス鋼合金が、17-4ステンレス鋼(UNS17400としても公知)、つまり、15%から17.5%のクロムと3%から5%のニッケルとを含有する、(磁性の)マルテンサイト系析出硬化ステンレス鋼の1つのグレード(場合によっては15-5ステンレス鋼として公知)である。この合金内には、3%から5%の銅も存在し得る。このようなステンレス鋼合金は、熱処理を受けて高レベルの強度および硬度に至ることが可能であり、最も一般的なステンレス鋼(オーステナイト系であり、18%から20%のクロムと8%から10.5%のニッケルとを有する18-8ステンレス鋼としても公知である、UNS S30400)に比べ、より高い耐食性および機械加工性を特徴としている。
【0027】
しかしながら、構成部材を製作する材料に依存して、タイプ316L(UNS S31603)オーステナイト系ステンレス鋼といった他のステンレス鋼合金が使用されてもよい。タイプ316Lは、耐食性を向上し、かつ、高温での強度の向上をもたらす、2%から3%の間のモリブデンを含有している。
【0028】
本明細書で使用されるような「レーザ金属粉末堆積」という表現は、基板上にレーザ金属粉末の少なくとも1つの層を堆積することと、それに続き、レーザ金属粉末の層を溶融および融合することと、を指す。典型的には、以下により詳しく説明するように、複数の層が堆積されて、掘削された空隙を充填する。
【0029】
本明細書で使用されるような「欠陥」という用語は、鋳造ステンレス鋼構成部材において存在し得る、内部欠陥および表面欠陥の両方を指す。
【0030】
図1は、鋳造ステンレス鋼構成部材、特に、原子力利用関連の環境において使用される鋳造ステンレス鋼構成部材、例えば、原子炉冷却剤ポンプ、における内部欠陥を検出および補修するためのプロセスのフローチャート100を例示する。最初のステップであるステップ110は、構成部材にNDTを行い、あらゆる内部欠陥を特定することを含む。このような内部欠陥は、当初の製造および/または以降の補修の結果として生じ得る。また、このような内部欠陥は、最後に行ったNDT検査以後に、構成部材内で進行している恐れがあり、以降のNDT検査中に所在が特定される。構成部材のタイプに依存して、上記のNDT技法のうちのいくつかが使用され得る。
【0031】
内部欠陥が特定されると、ステップ120として、欠陥を含む領域が掘削されて、空隙が形成される。このような掘削は、容認不可能な欠陥を除去するための機械加工または研削によって実施され得る。典型的には、掘削部のセット、例えば、幾何学的形状のセットが使用され、当該セットは、構成部材の表面から欠陥に到達することを可能にする。掘削は、掘削プロセスにおいて欠陥の全ての除去を保証するように、NDT調査によって制御される。
【0032】
図2から図6を参照して以下に説明するように、1つの実施形態において、幾何学的形状のセットは、一連の、角を丸めた長方形または長円、即ち、円を直径に沿って二分割し、様々なサイズの分割円の2つの半体間に矩形を含むように引き伸ばしたもの、を含み得る。このような一連の、角を丸めた長方形または長円は、その基底が最小寸法を有し、かつ、その頂面が最大寸法を有し、基底から頂面にかけて寸法の段階的変化を伴って、勾配が均されたまたは勾配が付いた壁を形成している、スタジアム構造を形成し得る。典型的なスタジアム構造は、円形または楕円形(または上記のような長円)であり得る。
【0033】
掘削された領域または空隙は、ステップ130として浄化されて、掘削された領域または空隙に侵入していた恐れのあるあらゆる異物の除去が保証された後、ステップ140として、掘削された領域または空隙内にレーザ金属粉末堆積の複数の層を堆積する。レーザ金属粉末堆積のステップは、上記のようなタイプ316Lステンレス鋼金属粉末を、掘削された領域または空隙内に、特有の経路またはパターンで堆積し、その後、堆積された粉末は、中性ガス環境においてレーザにより加熱および溶融されて、掘削された領域または空隙が充填される。掘削された領域または空隙が、フィラー材料で、即ち、溶融された粉末で、複数の層の構築により充分に補填されることを保証するために、通常は、いくつかのパスが必要とされる。レーザ金属堆積中に、目視モニタリングが使用されて、空隙が適正に充填されていることが保証される。
【0034】
当然ながら、使用されるレーザ金属粉末は、当初の鋳造構成部材を製作した材料に適合するように選択される。
【0035】
掘削された領域または空隙がレーザ金属粉末の複数の層の堆積によって一旦充填されると、ステップ150として、構成部材の表面には仕上げ加工が行われ、それにより、当該表面は、構成部材の残部となじむ。仕上げ加工のステップは、機械仕上げ加工、例えば、研磨または研削を含み、必要とされる表面要求仕様をもたらす。
【0036】
仕上げ加工の後、ステップ160として、当初の欠陥が検出された領域が、NDTを使用して再び点検される。これにより、特定の構成部材について厳しい公差の維持を保証する寸法上および幾何学的形状上の制御によって、補修が要求仕様を満たしていることが保証される。
【0037】
この方法を、その後、物品または構成部材における他の特定された欠陥について繰り返すことが可能である。
【0038】
図2は、欠陥を除去するために掘削領域または掘削空隙210が製作された、物品または構成部材200の一部分の平面図を例示する。このケースにおいて、構成部材の表面における掘削領域または掘削空隙210は、上記のような長円であると考えることができる。しかしながら、掘削領域または掘削空隙に、他の好適なプロファイルを使用することができる。
【0039】
図3は、掘削領域または掘削空隙210をより詳しく示す、物品または構成部材200の一部分の側断面図を例示する。このケースにおいて、掘削領域または掘削空隙210は、勾配を有する壁または傾斜角を付けた部分240により、表面部分230まで延在している基底部分220を有している。
【0040】
図4において、構成部材200および掘削領域または掘削空隙は、平面図で示されている。示されるように、基底部分220は、同じく長円であるものの、表面部分230を形成している長円の寸法よりも小さな寸法を有している長円を含んでおり、表面部分230内の中央に位置しており、勾配を有する壁または傾斜角を付けた部分240により、表面部分230に接続されている。この例では、基底部分220が表面部分230内の中央に位置しているように示されているが、中央の所在に存在していることは必須ではなく、基底部分と表面部分との間で何らかのオフセットが存在していてよい。
【0041】
図5は、図3と同様であるが、多数のレーザ金属粉末堆積パス300、300、300、…、300も例示しており、ここでNは、この具体的な例において、基底部分220および勾配を有する壁または傾斜角を付けた部分240上における、表面部分230までにおいて、4として示されている。当然ながら、Nはいかなる好適な値であってもよく、掘削領域または掘削空隙210を充填するのに必要とされるパスの、複数の層が存在する。各パスは、空隙210の基底部分220の形状、即ち、空隙210を統合的に充填する、一連の、角を丸めた長方形または長円のうちの1つ、に類似した経路を辿る。
【0042】
図6は、図4と同様であるが、掘削された領域または空隙210内における、多数のレーザ金属粉末堆積パス300、300、300、…、300を例示する。Nはここでもまた、4であるものとして示されているが、掘削領域または掘削空隙210を充填するのに必要な、いかなる好適な値であってもよい。
【0043】
レーザ金属粉末堆積のステップまたはパスを実施する際に、必要とされる最小レーザ速度は、少なくとも1000mm/min(または約16.5mm/s)である。長さが20mm、幅が10mm、および深さが5mmである空隙を充填するのにかかる時間は、1分から4分の間であり、充填と、補修されている構成部材を基準としたレーザの位置決めと、レーザのプログラミングと、レーザ金属粉末堆積が実施される中性ガス環境の確立と、などの準備に別途時間が必要とされる。
【0044】
レーザは、補修されている構成部材の表面に対して垂直に、即ち、当該表面に対して直角をなして使用され得るが、レーザ金属粉末の射出方向と組み合わせて他の角度も可能であり得る。
【0045】
本開示の方法の使用が可能な場面の一例は、原子力利用関連の原子炉冷却剤ポンプ(reactor coolant pump:RCP)の改装におけるものである。改装のプロセスは、除染、分解、および検査と、それに続く構成部材の補修、または必要ならば交換と、その後の再組立てと、を含む。検査結果に依存して、いくつかの構成部材は、典型的には溶接プロセスを使用した補修が必要とされる欠陥を有していることが判明し得る。
【0046】
しかしながら、原子力利用関連の環境において、溶接プロセスを使用した構成部材の補修による主なリスクは、補修されている構成部材の変形である。原子力利用関連の環境において使用される構成部材についての公差が厳しいものであるため、溶接は、溶接部位における局所的加熱により、局所化された変形を有する、歪んだ構成部材を結果的に生じ得る。このような、局所化された変形は、相容れない変形を結果的に生じ得る。このような相容れない変形の結果、構成部材は、さらに改変されない限り、もはや有用ではあり得ず、往々にして解体されることになってしまう。加えて、溶接プロセスには大量の材料が必要とされる傾向があるため、補修された構成部材の容認可能な表面の状況と寸法サイズとを復元するためには、溶接後の機械加工が欠かせない。
【0047】
RCPの構成部材を補修するためのレーザ金属粉末堆積は、従来の、溶接による補修よりも有利であるが、その理由は、品質の維持を保証するように、堆積パラメータを綿密にモニタリングまたは制御することが可能であるためである。存在する熱影響部(heat affected zone:HAZ)が限られているため、レーザ金属粉末堆積中において構成部材に加えられるひずみおよび応力は、従来の溶接プロセス中に加えられるひずみおよび応力よりも明らかに少ない。また、ひずみまたは応力を限定することにより、補修されている構成部材は、従来の溶接プロセスにおけるほど変形しない。さらに、レーザ金属粉末堆積の後に必要とされる、機械加工による後処理の量は、溶接後に必要とされる量よりも少ない。構成部材を解体するのではなく、レーザ金属粉末堆積を使用して補修することにより、汚染廃棄物が減少する。
【0048】
原子力利用関連の鋳造ステンレス鋼構成部材を補修することができるため、構成部材の利用可能性が向上するが、その理由は、構成部材の交換がもはや必要ではなくなり、それにより、交換構成部材を製造するための長いリードタイムが回避されるためである。
【0049】
構成部材が解体されるのではなく補修されるため、二次放射性廃棄物が著しく減少する。さらに、予備部品の管理が改良される。
【0050】
本開示の方法を使用して補修され得る、原子力利用関連の環境で使用される他の構成部材には、ディフューザ、弁、およびシャフトが含まれるが、これらに限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6