(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料及びその製造方法、並びにその用途
(51)【国際特許分類】
C04B 35/457 20060101AFI20230306BHJP
H01G 4/12 20060101ALI20230306BHJP
H01B 3/12 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
C04B35/457
H01G4/12 090
H01B3/12
(21)【出願番号】P 2021527989
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 CN2020082581
(87)【国際公開番号】W WO2021189513
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】202010233747.7
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519433698
【氏名又は名称】広東風華高新科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG FENGHUA ADVANCED TECHNOLOGY HOLDING CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Fenghua Electronic Industrial City No.18 Fenghua Road Zhaoqing,Guangdong 526000(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】付振暁
(72)【発明者】
【氏名】劉建梅
(72)【発明者】
【氏名】任海東
(72)【発明者】
【氏名】劉芸
(72)【発明者】
【氏名】フランクコム、テリー ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】曹秀華
(72)【発明者】
【氏名】沓世我
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101402522(CN,A)
【文献】桑原慎平ほか,SnサイトをNbまたはTaで部分置換したBaSnO3の熱伝導率,日本熱電学会誌,日本,2019年,第15巻,第3号,155-160頁,ISSN:1349-4279
【文献】LIU, Qinzhuang et al.,Transparent and conductive Ta doped BaSnO3 films epitaxially grown on MgO substrate,Journal of Alloys and Compounds,Vol.684,スイス,Elsevier,2016年,PP.125-131,ISSN:0925-8388, DOI:10.1016/j.jallcom.2016.05.157
【文献】JULIEN, J.P. et al.,Electronic structure of the BaA1-xBxO3(A,B=Pb,Bi,Sn,Sb): Implications for superconductivity,Physica C: Superconductivity,1994年,Vol.220, Issues 3-4,PP.359-366,ISSN:0921-4534, DOI:10.1016/0921-4534(94)90924-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/457
H01G 4/12
H01B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料であって、
前記ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の一般式が、BaA
xB
xSn
1-2xO
3であり、前記Aが、In、Y、Bi及びLaの少なくとも一種であり、前記BがNbとTaの少なくとも一種であり、かつ、0<x≦0.025であることを特徴とする、ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料。
【請求項2】
請求項1に記載のドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の製造方法であって、
一般式におけるモル比に従ってバリウム源、四価のスズ源、A
3+含有反応物及びB
5+含有反応物をはかりとる工程(1)と、
上記反応物をボールミル処理で均一に混合して、乾燥後、均一な混合物を得る工程(2)と、
工程(2)で得られる混合粉体をアルミナ坩堝に置いて、焼成処理を行い、焼成後の粉体を得る工程(3)と、
焼成後の粉体に焼成助剤であるB
2O
3を加えて、2回目のボールミル処理を行い、乾燥後、予備粉体を得る工程(4)と、
工程(4)で得られる予備粉体をプレスしてシート状に成形し、その後、焼結処理を行い、前記ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料を得る工程(5)と、
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の製造方法であって、以下の(a)~(d)のいずれか一項を特徴とする、製造方法。
(a)前記バリウム源が、BaCO
3、Ba(NO
3)
2、Ba(NO
3)
2の水和物、BaSO
4、BaSO
4の水和物、Ba(OH)
2、Ba(OH)
2の水和物、Ba(C
2H
3O
2)
2、Ba(C
2H
3O
2)
2の水和物、Ba
3(PO
4)
2及びBa
3(PO
4)
2の水和物の少なくとも一種である。
(b)前記スズ源が、SnO
2である
(c)前記A
3+含有反応物が、A
2O
3、A
2(C
2O
4)
3、A
2(C
2O
4)
3の水和物、A(NO
3)
3、A(NO
3)
3の水和物、A
2(SO
4)
3、A
2(SO
4)
3の水和物、A
2(CO
3)
3 、A
2(CO
3)
3の水和物、A(C
2H
3O
2)
3及びA(C
2H
3O
2)
3の水和物の少なくとも一種である。
(d)前記B
5+含有反応物が、B
2O
5である。
【請求項4】
請求項2に記載のドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の製造方法であって、工程(3)において、前記焼成処理は、昇温速度4~6℃/minで、温度範囲1000℃~1200℃まで昇温し、3時間保温し、終了後、室温まで放冷することであることを特徴とする、製造方法。
【請求項5】
請求項2に記載のドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の製造方法であって、工程(4)において、前記焼成助剤であるB
2O
3の添加量は、重量百分比で、前記焼成後の粉体の0.5%~5%であることを特徴とする、製造方法。
【請求項6】
請求項2に記載のドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の製造方法であって、工程(5)の後に、
工程(5)で得られるドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料に対して表面研磨処理を行い、その後、焼入れを行う工程(6)をさらに含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の製造方法であって、前記焼入れは、昇温速度1.5~15℃/minで、1000℃~1500℃まで昇温し、1~24時間保温し、雰囲気を空気とし、終了後、室温まで放冷することであることを特徴とする、製造方法。
【請求項8】
請求項2に記載のドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の製造方法であって、工程(5)において、前記焼結処理は、昇温速度4~6℃/minで、1300℃~1500℃まで昇温し、6~24時間保温し、終了後、室温まで放冷することであることを特徴とする、製造方法。
【請求項9】
請求項2に記載のドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の製造方法であって、工程(2)及び工程(4)において、前記ボールミル処理は、イットリア安定化ジルコニアボールを媒介とし、分散媒介であるエチルアルコール及び/又はアセトンにおいて、12時間以上ボールミル処理を行うことを特徴とする、製造方法。
【請求項10】
低周波数セラミックコンデンサ又はマイクロ波通信誘電セラミックにおける請求項1に記載のドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電セラミック材料に関し、具体的に、ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料及びその製造方法、並びにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波(300MHz~300GHz)の分野において、情報技術及び無線通信の急速な発展のため、小型化で、信頼性が高く、温度安定性に優れ、品質が高いマイクロ波デバイスが強く求められている。マイクロ波帯域の回路における媒介材料として、高い誘電率、低い誘電損失と優れた温度安定性を同時に有するマイクロ波誘電セラミックが求められている。
所要のマイクロ波誘電セラミックは、そのサイズが材料の誘電率の平方根と反比例するため、デバイスの小型化を達成するために、誘電材料に高い誘電率が求められる。多くの研究によると、BaTiO3のような強誘電体材料は、高い誘電率を有するが、その誘電率が温度によって大きく変化するため、マイクロ波デバイスに適用することができない。従来から使用されているマイクロ波誘電セラミックとして、タングステンブロンズ構造のBaO-Ln2O3-TiO2(BLT)系、CaTiO3改質物系、Ba(Zn1/3Ta2/3)O3ペロブスカイト系等が挙げられるが、それらの誘電率が100以下であり、本発明の誘電率の値よりも遥かに低いものである。
Shail Upadhyayらは、『Journal of Materials Science: Materials in Electronics』で発表した「Dielectric relaxation and conduction in the system Ba1-xLaxSn1-xCrxO3」と、『Journal of Physics: Applied Physics』で発表した「Synthesis、structure and electrical behaviour of lanthanum-doped barium stannate」という論文において、10Hz~5MHz周波数範囲内におけるBa1-xLaxSn1-xCrxO3及びBa1-xLaxSnO3の誘電性能をそれぞれ検討した。これら2種類の材料は、誘電率が103以上となるものの、周波数依存性及び温度依存性が極めて高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、従来技術にある欠点を克服し、ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料及びその製造方法並びにその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明に採用された技術案は、ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料であって、前記ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の一般式が、BaAxBxSn1-2xO3であり、前記Aが、In、Y、Bi及びLaの少なくとも一種であり、前記BがNbとTaの少なくとも一種であり、かつ、0<x≦0.025である材料である。
本発明に係るドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料は、高誘電率、低損失及び優れた温度安定性を有し、低周波数セラミックコンデンサ媒介に応用することができるだけでなく、特にマイクロ波セラミックとして優れた性能を示し、マイクロ波通信分野において高い応用価値を有する。
本発明のもう一つの目的は、前記ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の製造方法を提供することにある。この製造方法は、
一般式におけるモル比に従ってバリウム源、四価のスズ源、A3+含有反応物及びB5+含有反応物をはかりとる工程(1)と、
上記反応物をボールミル処理で均一に混合して、乾燥後、均一な混合物を得る工程(2)と、
工程(2)で得られる混合粉体をアルミナ坩堝に置いて、焼成処理を行い、焼成後の粉体を得る工程(3)と、
焼成後の粉体に焼成助剤であるB2O3を加えて、2回目のボールミル処理を行い、乾燥後、予備粉体を得る工程(4)と、
工程(4)で得られる予備粉体をプレスしてシート状に成形し、その後、焼結処理を行い、前記ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料を得る工程(5)と、
を含む。
好ましくは、前記バリウム源が、BaCO3、Ba(NO3)2、Ba(NO3)2の水和物、BaSO4、BaSO4の水和物、Ba(OH)2、Ba(OH)2の水和物、Ba(C2H3O2)2、Ba(C2H3O2)2の水和物、Ba3(PO4)2及びBa3(PO4)2の水和物の少なくとも一種である。
好ましくは、前記スズ源が、SnO2である。
好ましくは、前記A3+含有反応物が、A2O3、A2(C2O4)3、A2(C2O4)3の水和物、A(NO3)3、A(NO3)3の水和物、A2(SO4)3、A2(SO4)3の水和物、A2(CO3)3 、A2(CO3)3の水和物、A(C2H3O2)3及びA(C2H3O2)3の水和物の少なくとも一種である。
好ましくは、前記B5+含有反応物が、B2O5である。
好ましくは、工程(3)において、前記焼成処理は、昇温速度4~6℃/minで、温度範囲1000℃~1200℃まで昇温し、3時間保温し、終了後、室温まで放冷することである。
好ましくは、工程(4)において、前記焼成助剤であるB2O3の添加量は、重量百分比で、前記焼成後の粉体の0.5%~5%である。
好ましくは、工程(5)の後に、工程(5)で得られるドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料に対して表面研磨処理を行い、その後、焼入れを行う工程(6)をさらに含む。焼入れ処理により、空間電荷をなくすことができ、引いて性能を最適化することができ、ドープ量が0<x≦0.025の範囲内にある場合、得られた材料の誘電性能が周波数依存性を有するかを判断し、その誘電性能が周波数依存性を有する場合、焼入れ処理により解決することができる。しかし、x>0.025となると、焼入れ処理を行っても、製造された材料の性能をさらに向上させることができない。
好ましくは、前記焼入れは、昇温速度1.5~15℃/minで、1000℃~1500℃まで昇温し、1~24時間保温し、雰囲気を空気とし、終了後、室温まで放冷することである。
好ましくは、前記表面研磨処理は、まず、240メッシュのサンドペーパーで粗研磨を行い、その後、1200メッシュのサンドペーパーで仕上げ研磨を行うことである。
好ましくは、工程(5)において、プレスしてシート状に成形する際の圧力が、≧1MPaである。
好ましくは、工程(5)において、前記焼結処理は、昇温速度4~6℃/minで、1300℃~1500℃まで昇温し、6~24時間保温し、終了後、室温まで放冷することである。
好ましくは、工程(2)及び工程(4)において、前記ボールミル処理は、イットリア安定化ジルコニアボールを媒介とし、分散媒介であるエチルアルコール及び/又はアセトンにおいて、12時間以上ボールミル処理を行う。
好ましくは、工程(3)における焼成処理及び工程(5)における焼結処理の雰囲気が、空気又は窒素ガスであることを特徴とする。
本発明のもう一つの目的は、低周波数セラミックコンデンサ又はマイクロ波通信誘電セラミックにおける前記ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の使用を提供することにある。
【発明の効果】
【0005】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。本発明は、ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料を提供し、本発明に係るドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料は、共ドープされた+3価と+5価の金属イオンによりペロブスカイト型スズ酸バリウムの構造が化学的修飾され、その誘電性能が最適化されるとともに、高い誘電率、低損失及び優れた温度安定性を有し、マイクロ波誘電材料の応用要求を満たすことができる。本発明は、さらに、前記ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の製造方法を提供し、前記製造方法は、プロセスが簡単で、大量生産することができる。本発明は、さらに、低周波数セラミックコンデンサ又はマイクロ波通信誘電セラミックにおける前記ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施例1(BaLa
0.0005Nb
0.0005Sn
0.999O
3)、実施例2(BaLa
0.001Nb
0.001Sn
0.998O
3)、実施例3(BaLa
0.025Nb
0.025Sn
0.95O
3)、実施例4(BaLa
0.001Ta
0.001Sn
0.998O
3)で製造された(A
3++B
5+)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料、及び比較例1(BaSnO
3)で製造された未ドープペロブスカイト型スズ酸バリウム材料のXRDパターンである。
【
図2】実施例1(BaLa
0.0005Nb
0.0005Sn
0.999O
3)、実施例2(BaLa
0.001Nb
0.001Sn
0.998O
3)、実施例3(BaLa
0.025Nb
0.025Sn
0.95O
3)で製造された(La+Nb)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の後方散乱電子(BSE)写真と対応する二次電子(SE)写真である。
【
図3】実施例1(BaLa
0.0005Nb
0.0005Sn
0.999O
3)で製造された(La+Nb)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の室温での誘電率及び誘電損失と周波数の関係を示す図である。
【
図4】実施例1(BaLa
0.0005Nb
0.0005Sn
0.999O
3)で製造された(La+Nb)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の所定の4つの周波数(100Hz、1KHz、10KHz、100KHz)での誘電率及び誘電損失と温度の関係を示す図である。
【
図5】実施例2(BaLa
0.001Nb
0.001Sn
0.998O
3)で製造された(La+Nb)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の室温での誘電率及び誘電損失と周波数の関係を示す図である。
【
図6】実施例2(BaLa
0.001Nb
0.001Sn
0.998O
3)で製造された(La+Nb)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の所定の4つの周波数(100Hz、1KHz、10KHz、100KHz)での誘電率及び誘電損失と温度の関係を示す図である。
【
図7】実施例3(BaLa
0.025Nb
0.025Sn
0.95O
3)で製造された(La+Nb)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の室温での誘電率及び誘電損失と周波数の関係を示す図である。
【
図8】実施例4(BaLa
0.001Ta
0.001Sn
0.998O
3)で製造された(La+Ta)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の室温での誘電率及び誘電損失と周波数の関係を示す図である。
【
図9】比較例1(BaSnO
3)で製造された未ドープペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の室温での誘電率及び誘電損失と周波数の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の目的、技術案及び利点をよりよく説明するために、以下、具体的な実施例を参照しながら、本発明についてさらに説明する。
実施例1
実施例1におけるドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の一般式は、BaAxBxSn1-2xO3となり、ここで、A=La、B=Nb、xが原子比であり、かつx=0.0005である。製造過程は、以下のとおりである。
【0008】
(1)一般式におけるモル比に従って、BaCO3 19.7340g、SnO2 15.0559g、La2O3 0.0082g、Nb2O5 0.0066gの反応物粉体をはかりとった。
【0009】
(2)上記反応物粉体をボールミルタンクに置き、分散剤としてエチルアルコールを使用し、ボールミル媒介としてイットリア安定化ジルコニアボールを使用し、12時間ボールミル処理を行い、均一に混合して、乾燥後、均一な混合物を得た。
【0010】
(3)工程(2)で得られた混合粉体をアルミナ坩堝に置き、焼成処理を行った。具体的には、処理を、昇温速度:5℃/min、温度範囲:1000℃、保温時間:3時間、雰囲気:空気という条件にて行い、終了後、室温まで放冷した。
【0011】
(4)焼成後、粉体重量比2.5%の焼成助剤であるB2O3を加えて、工程(2)のボールミル処理の条件と同じ条件にて2回目のボールミル処理を行い、乾燥後、予備粉体を得た。
【0012】
(5)工程(4)で得られた予備粉体を金型に置き、1MPa圧力で生地シートを得て、その後、生地シートに対して焼結処理を行った。具体的には、焼結処理を、昇温速度:5℃/min、温度範囲:1350℃、保温時間:12時間、雰囲気:空気という条件にて行い、終了後、室温まで放冷して、緻密なドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料を得た。
実施例2
実施例2におけるドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の一般式は、BaAxBxSn1-2xO3となり、ここで、A=La、B=Nb、xが原子比であり、かつx=0.001である。製造過程は、以下のとおりである。
【0013】
(1)一般式におけるモル比に従って、BaCO3 19.7340g、SnO215.0409g、La2O3 0.0163g、Nb2O5 0.0133gの反応物粉体をはかりとった。
【0014】
(2)上記反応物粉体をボールミルタンクに置き、分散剤としてエチルアルコールを使用し、ボールミル媒介としてイットリア安定化ジルコニアボールを使用し、12時間ボールミル処理を行い、均一に混合して、乾燥後、均一な混合物を得た。
【0015】
(3)工程(2)で得られた混合粉体をアルミナ坩堝に置き、焼成処理を行った。具体的には、処理を、昇温速度:5℃/min、温度範囲:1000℃、保温時間:3時間、雰囲気:空気という条件にて行い、終了後、室温まで放冷した。
【0016】
(4)焼成後、粉体重量比2.5%の焼成助剤であるB2O3を加えて、工程(2)のボールミル処理の条件と同じ条件にて2回目のボールミル処理を行い、乾燥後、予備粉体を得た。
【0017】
(5)工程(4)で得られた予備粉体を金型に置き、1MPa圧力で生地シートを得て、その後、生地シートに対して焼結処理を行った。具体的には、焼結処理を、昇温速度:5℃/min、温度範囲:1350℃、保温時間:12時間、雰囲気:空気という条件にて行い、終了後、室温まで放冷して、緻密なドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料を得た。
実施例3
実施例3におけるドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の一般式は、BaAxBxSn1-2xO3となり、ここで、A=La、B=Nb、xが原子比であり、かつx=0.025である。製造過程は、以下のとおりである。
【0018】
(1)一般式におけるモル比に従って、BaCO3 19.7340g、SnO214.3145g、La2O3 0.4073g、Nb2O5 0.3323gの反応物粉体をはかりとった。
【0019】
(2)上記反応物粉体をボールミルタンクに置き、分散剤としてエチルアルコールを使用し、ボールミル媒介としてイットリア安定化ジルコニアボールを使用し、12時間ボールミル処理を行い、均一に混合して、乾燥後、均一な混合物を得た。
【0020】
(3)工程(2)で得られた混合粉体をアルミナ坩堝に置き、焼成処理を行った。具体的には、処理を、昇温速度:5℃/min、温度範囲:1000℃、保温時間:3時間、雰囲気:空気という条件にて行い、終了後、室温まで放冷した。
【0021】
(4)焼成後、粉体重量比0.5%の焼成助剤であるB2O3を加えて、工程(2)のボールミル処理の条件と同じ条件にて2回目のボールミル処理を行い、乾燥後、予備粉体を得た。
【0022】
(5)工程(4)で得られた予備粉体を金型に置き、1MPa圧力で生地シートを得て、その後、生地シートに対して焼結処理を行った。具体的には、焼結処理を、昇温速度:5℃/min、温度範囲:1500℃、保温時間:6時間、雰囲気:空気という条件にて行い、終了後、室温まで放冷して、緻密なドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウムセラミックシートを得た。
【0023】
(6)工程(5)で得られたセラミックシートに、表面研磨処理を行い、その後焼入れ処理を行い、前記ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料を得た。上記表面研磨処理プロセスは、まず、240メッシュのサンドペーパーで粗研磨を行い、その後1200メッシュのサンドペーパーで仕上げ研磨を行った。上記焼入れ処理は、昇温速度5℃/minで、1300℃まで昇温し、保温時間:1時間、雰囲気:空気という条件にて処理を行い、終了後、室温まで放冷した。
実施例4
実施例4におけるドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の一般式は、BaAxBxSn1-2xO3となり、ここで、A=La、B=Ta、xが原子比であり、かつx=0.001である。製造過程は、以下のとおりである。
【0024】
(1)一般式におけるモル比に従って、BaCO3 19.7340g、SnO215.0409g、La2O3 0.0163g、Ta2O5 0.0221gの反応物粉体をはかりとった。
【0025】
(2)上記反応物粉体をボールミルタンクに置き、分散剤としてエチルアルコールを使用し、ボールミル媒介としてイットリア安定化ジルコニアボールを使用し、12時間ボールミル処理を行い、均一に混合して、乾燥後、均一な混合物を得た。
【0026】
(3)工程(2)で得られた混合粉体をアルミナ坩堝に置き、焼成処理を行った。具体的には、処理を、昇温速度:5℃/min、温度範囲:1000℃、保温時間:3時間、雰囲気:空気という条件にて行い、終了後、室温まで放冷した。
【0027】
(4)焼成後、粉体重量比2.5%の焼成助剤であるB2O3を加えて、工程(2)のボールミル処理の条件と同じ条件にて2回目のボールミル処理を行い、乾燥後、予備粉体を得た。
【0028】
(5)工程(4)で得られた予備粉体を金型に置き、1MPa圧力で生地シートを得て、その後、生地シートに対して焼結処理を行った。具体的には、焼結処理を、昇温速度:5℃/min、温度範囲:1500℃、保温時間:24時間、雰囲気:空気という条件にて行い、終了後、室温まで放冷して、緻密なドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料を得た。
比較例1
本比較例における材料は、BaSnO3であり、製造過程は、以下のとおりである。
【0029】
(1)一般式BaSnO3のモル比に従って、BaCO3 19.7340g、SnO2 15.071gの反応物粉体をはかりとった。
【0030】
(2)上記反応物粉体をボールミルタンクに置き、分散剤としてエチルアルコールを使用し、ボールミル媒介としてイットリア安定化ジルコニアボールを使用し、12時間ボールミル処理を行い、均一に混合して、乾燥後、均一な混合物を得た。
【0031】
(3)工程(2)で得られた混合粉体をアルミナ坩堝に置き、焼成処理を行った。具体的には、処理を、昇温速度:5℃/min、温度範囲:1200℃、保温時間:3時間、雰囲気:空気という条件にて行い、終了後、室温まで放冷した。
【0032】
(4)焼成後、粉体重量比5%の焼成助剤であるB2O3を加えて、工程(2)のボールミル処理の条件と同じ条件にて2回目のボールミル処理を行い、乾燥後、予備粉体を得た。
【0033】
(5)工程(4)で得られた予備粉体を金型に置き、1MPa圧力で生地シートを得て、その後、生地シートに対して焼結処理を行った。具体的には、焼結処理を、昇温速度:5℃/min、温度範囲:1450℃、保温時間:12時間、雰囲気:空気という条件にて行い、終了後、室温まで放冷して、緻密なペロブスカイト型スズ酸バリウム材料を得た。
【0034】
図1は、実施例1(BaLa
0.0005Nb
0.0005Sn
0.999O
3)、実施例2(BaLa
0.001Nb
0.001Sn
0.998O
3)、実施例3(BaLa
0.025Nb
0.025Sn
0.95O
3)、実施例4(BaLa
0.001Ta
0.001Sn
0.998O
3)で製造された(A
3++B
5+)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料、及び比較例1(BaSnO
3)で製造された未ドープペロブスカイト型スズ酸バリウム材料のXRDパターンである。
図1から分かるように、実施例1~4で製造された(A
3++B
5+)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料と比較例1(BaSnO
3)は、同じ立方ペロブスカイト型構造を有し、かつ実施例1~4と比較例1で合成された材料は、いずれも単一相の特徴を有する。
【0035】
図2は、実施例1(BaLa
0.0005Nb
0.0005Sn
0.999O
3)、実施例2(BaLa
0.001Nb
0.001Sn
0.998O
3)、実施例3(BaLa
0.025Nb
0.025Sn
0.95O
3)で製造された(La+Nb)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の後方散乱電子(BSE)写真と対応する二次電子(SE)写真である。
図2は、さらに、実施例1~3で製造された(La+Nb)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料が単一相であり、その他の不純物を含有しないことを証明した。
【0036】
図3は、実施例1(BaLa
0.0005Nb
0.0005Sn
0.999O
3)で製造された(La+Nb)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の室温での誘電率及び誘電損失と周波数の関係を示す図である。
図3から分かるように、実施例1(BaLa
0.001Nb
0.001Sn
0.998O
3)で製造された(La+Nb)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料は、20Hz~1GHzの周波数範囲内の誘電率が1.6×10
3~3×10
3であり、かつ0.2MHz~25MHzの周波数範囲内の誘電損失が1%未満である。
【0037】
図4は、実施例1(BaLa
0.0005Nb
0.0005Sn
0.999O
3)で製造された(La+Nb)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の所定の4つの周波数(100Hz、1KHz、10KHz、100KHz)での誘電率及び誘電損失と温度の関係を示す図である。
図4から分かるように、実施例1(BaLa
0.001Nb
0.001Sn
0.998O
3)で製造された(La+Nb)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料は、10K~450Kの温度範囲内の誘電率の温度安定性がよく、1.2×10
3~3×10
3であり、かつ300K以下の誘電損失が5%未満である。
【0038】
図5は、実施例2(BaLa
0.001Nb
0.001Sn
0.998O
3)で製造された(La+Nb)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の室温での誘電率及び誘電損失と周波数の関係を示す図である。
図5から分かるように、実施例2(BaLa
0.001Nb
0.001Sn
0.998O
3)で製造された(La+Nb)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料は、20Hz~1GHzの周波数範囲内の誘電率が3.5×10
3~5×10
3であり、かつ周波数が1MHzを超える場合の誘電損失が4‰未満であり、周波数が300MHzを超える場合の誘電損失が0.5‰未満であった。
【0039】
図6は、実施例2(BaLa
0.001Nb
0.001Sn
0.998O
3)で製造された(La+Nb)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の所定の4つの周波数(100Hz、1KHz、10KHz、100KHz)での誘電率及び誘電損失と温度の関係を示す図である。
図6から分かるように、実施例2(BaLa
0.001Nb
0.001Sn
0.998O
3)で製造された(La+Nb)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料は、10K~450Kの温度範囲内の誘電率の温度安定性がよく、3.6×10
3~4.8×10
3であり、かつその誘電損失が極めて小さい温度依存性を示した。
【0040】
図7は、実施例3(BaLa
0.025Nb
0.025Sn
0.95O
3)で製造された(La+Nb)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の室温での誘電率及び誘電損失と周波数の関係を示す図である。
図7から分かるように、実施例3(BaLa
0.025Nb
0.025Sn
0.95O
3)で製造された(La+Nb)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料は、20Hz~2MHzの周波数範囲内の誘電率が1.8×10
4~8×10
3であり、同時に周波数が20Hzから1.2×10
4Hzまで増加する場合、誘電損失が3から8%まで低下し、周波数がさらに増加する場合、誘電損失が徐々に30%まで増加した。
【0041】
図8は、実施例4(BaLa
0.001Ta
0.001Sn
0.998O
3)で製造された(La+Ta)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の室温での誘電率及び誘電損失と周波数の関係を示す図である。
図8から分かるように、実施例4(BaLa
0.001Ta
0.001Sn
0.998O
3)で製造された(La+Ta)共ドープされたペロブスカイト型スズ酸バリウム材料は、20Hz~2MHzの周波数範囲内の誘電率が4×10
3~5.6×10
3であり、かつ周波数の増加と伴い、その誘電損失が徐々に20%から2.7‰まで低下した。
【0042】
図9は、比較例1(BaSnO
3)で製造された未ドープペロブスカイト型スズ酸バリウム材料の室温での誘電率及び誘電損失と周波数の関係を示す図である。
図9から分かるように、比較例1(BaSnO
3)で製造された未ドープペロブスカイト型スズ酸バリウム材料は、20Hz~1GHzの周波数範囲内の誘電率が15であり、周波数の増加と伴い、その誘電損失が徐々に20%から約0.05%まで低下した。
【0043】
なお、以上の実施例は、本発明の技術案を説明するためのものであり、本発明の保護範囲を制限するものではなく、好適な実施例を参照しながら本発明について詳細に説明したものの、当業者であれば、本発明の技術案の趣旨及び範囲を逸脱しない限り、本発明の技術案に対して修正又は均等的な差し替えを行うことができると理解することができる。