(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】搬送装置、搬送システム及び搬送装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B65G 54/02 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
B65G54/02
(21)【出願番号】P 2021550930
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2019039361
(87)【国際公開番号】W WO2021065003
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】加藤 進一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑典
【審査官】山▲崎▼ 歩美
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-186842(JP,A)
【文献】特開平06-197411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 54/02
G05D 1/02
H02J 7/00
B60L 13/00
B60M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に沿って移動する搬送装置であって、
前記搬送路に設けられ第1周波数で電力を非接触状態で供給する第1給電部から供給された電力を非接触状態で受電する第1受電部と、
前記搬送路に設けられ前記第1周波数と異なる第2周波数で電力を非接触状態で供給する第2給電部から供給された電力を非接触状態で受電する第2受電部と、
供給された電力により前記搬送装置を移動させる駆動部と、
前記第1受電部が電力を受電すると第1動作を実行し、前記第2受電部が電力を受電すると前記第1動作と異なる第2動作を実行する制御部と、
所定の作業を実行する作業装置と、を備え
、
前記制御部は、前記第1動作として前記作業装置に第1作業を実行させると共に前記第2動作として前記作業装置に前記第1作業と異なる第2作業を実行させる、搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1動作として第1目標位置へ移動するよう前記駆動部を制御すると共に前記第2動作として前記第1目標位置と異なる第2目標位置へ移動するよう前記駆動部を制御するか、前記第1動作として第1速度で移動するよう前記駆動部を制御すると共に前記第2動作として前記第1速度と異なる第2速度で移動するよう前記駆動部を制御するか、前記第1動作として第1加減速度で加減速するよう前記駆動部を制御すると共に前記第2動作として前記第1加減速度と異なる第2加減速度で加減速するよう前記駆動部を制御するか、のうち1以上を実行する、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記駆動部は、磁力で前記搬送装置を移動させる、請求項1
又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
第1周波数で電力を非接触状態で供給する第1給電部と前記第1周波数と異なる第2周波数で電力を非接触状態で供給する第2給電部とが配設された搬送路と、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の搬送装置と、
を備えた搬送システム。
【請求項5】
搬送路に設けられ第1周波数で電力を非接触状態で供給する第1給電部から供給された電力を非接触状態で受電する第1受電部と、前記搬送路に設けられ前記第1周波数と異なる第2周波数で電力を非接触状態で供給する第2給電部から供給された電力を非接触状態で受電する第2受電部と、供給された電力によ
り搬送装置を移動させる駆動部と
、所定の作業を実行する作業装置と、を備え、前記搬送路に沿って移動する搬送装置の制御方法であって、
(a)前記第1受電部が電力を受電すると
前記作業装置に第1動作
として第1作業を実行
させるステップと、
(b)前記第2受電部が電力を受電すると
前記作業装置に前記第1動作と異なる第2動作
として前記第1作業と異なる第2作業を実行
させるステップと、
を含む搬送装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、搬送装置、搬送システム及び搬送装置の制御方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送システムとしては、例えば、共振周波数が互いに異なる2個の受電側共振回路にそれぞれ配設された2個の受電コイルを有する移動体と、共振周波数の2種の給電側共振回路を複数個ずつ有すると共に、2種の給電側共振回路にそれぞれ配設され、移動路に沿って間隔を空けて交互に並設された2種の給電コイルを複数個ずつ有する非接触給電装置と、を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この搬送システムでは、移動路に沿って移動する移動体に対して非接触給電装置から磁界共鳴方式によって非接触で給電することにより、移動体が移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、移動体は、例えば、その移動速度や加減速、目標位置などを切り替えたい場合があり、移動体を制御する信号を何らかの方法で送信する必要があった。しかしながら、上述した特許文献1の装置では、複数の給電部を用いた際に、共振回路を考慮して相互干渉を抑制することにより給電効率の低下を抑制することができるものの、移動体の制御に関しては、特に考慮されていなかった。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、種々の給電部に対応すると共に、種々の動作を切り替えて実行することができる搬送装置、搬送システム及び搬送装置の制御方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する搬送装置、搬送システム及び搬送装置の制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本明細書で開示する搬送装置は、
搬送路に沿って移動する搬送装置であって、
前記搬送路に設けられ第1周波数で電力を非接触状態で供給する第1給電部から供給された電力を非接触状態で受電する第1受電部と、
前記搬送路に設けられ前記第1周波数と異なる第2周波数で電力を非接触状態で供給する第2給電部から供給された電力を非接触状態で受電する第2受電部と、
供給された電力により前記搬送装置を移動させる駆動部と、
前記第1受電部が電力を受電すると第1動作を実行し、前記第2受電部が電力を受電すると前記第1動作と異なる第2動作を実行する制御部と、
を備えたものである。
【0008】
この搬送装置では、複数種の受電部を有しており、各受電部のうちいずれかで受電すると、その受電した受電部に応じた動作を実行する。即ち、この搬送装置では、特別な無線装置などがなくても、動作を切り替え可能である。また、複数種の給電部を有するため、搬送路ごとに異種の給電部が配設されていても、これに対応することができる。このように、この搬送装置は、種々の給電部に対応すると共に、種々の動作を切り替えて実行することができる。ここで、搬送装置は、第3給電部から供給された電力を非接触状態で受電する第3受電部を備え第3動作を実行してもよいし、更に第4給電部から供給された電力を非接触状態で受電する第4受電部を備え第4動作を実行するなど、更に多種の受電部を備え更に多種の動作を切り替えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】搬送路ユニット20及び搬送装置30の説明図。
【
図3】搬送路ユニット20及び搬送装置30の説明図。
【
図4】搬送路ユニット20の分岐部の一例の説明図。
【
図5】搬送路ユニット20を移動する搬送装置30の説明図。
【
図6】電力供給処理ルーチンの一例を表すフローチャート。
【
図7】動作実行ルーチンの一例を表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、搬送システム10の一例を示す概略説明図である。
図2は、搬送路ユニット20及び搬送装置30の説明図である。
図3は、搬送路ユニット20及び搬送装置30の説明図であり、
図3Aが搬送路ユニット20上にある搬送装置30の説明図、
図3Bが搬送路ユニット20の説明図、
図3Cが搬送装置30の説明図である。
図4は、搬送路ユニット20の分岐部の一例の説明図である。
図5は、搬送路ユニット20を移動する搬送装置30の説明図である。なお、
図2では、手前側の側壁12や給電部、後ろ側の走行レール26を省略した。
図2~4では、便宜的に、搬送装置30のスライド方向をX方向、X方向に垂直で搬送路ユニット20を載置する面に平行な方向をY方向、X方向及びY方向に垂直な方向をZ方向とする。
図3では、X方向に直交する平面で搬送路ユニット20を切断した断面を示した。
【0011】
搬送システム10は、例えば、直線状、曲線状及び分岐を有する搬送路により構成された搬送路ユニット20を搬送装置30が移動するよう構成されている。搬送システム10は、リニアモータの駆動によって搬送路ユニット20に対して搬送装置30をスライドさせることにより、物品やロボット40を移動させるシステムである。搬送システム10は、搬送装置30を1台備えてもよいし、複数台備えてもよい。搬送システム10は、作業ロボット13と、搬送路ユニット20と、搬送装置30と管理装置50とを備えている。搬送装置30には、作業ロボット13の作業対象である物品が載置されるか、他の作業を実行するロボット40が配設され、作業を実行する位置まで搬送装置30が移動する。ロボット40は、所定の作業を実行する作業装置として構成されており、搬送装置30の作業台38上に配設される。作業ロボット13は、搬送装置30上の作業対象に対して所定の作業を実行する。所定の作業としては、例えば、部品の組み立て、接着剤や導電材などの粘性流体の塗布、塗装、切削や変形などの加工などが挙げられる。管理装置50は、搬送システム10の全体を管理する装置であり、搬送装置30への給電などを制御する。
【0012】
搬送路ユニット20は、搬送装置30が移動するレーンとして構成されている。この搬送路ユニット20は、底部14と、側壁11,12、第1給電部21、第2給電部22、第1永久磁石24、第2永久磁石25、走行レール26、レール部27、制御装置29などを備える。側壁11,12は、搬送装置30が移動する搬送路を形成する部材であり、底部14の両端部に立設されている。この側壁11,12とは、互いに平行に設けられており、これらの間に搬送装置30が移動する搬送路15が形成される。
【0013】
第1給電部21は、所定の第1周波数で電力を非接触状態で搬送装置30へ供給するものである。第1給電部21は、底部14の上に配設されており、コイル保持部と、給電コイルとを備えている。第1給電部21は、搬送装置30の移動方向に沿って、側壁11もしくは側壁12に沿って設けられている。コイル保持部は、搬送装置30の移動方向に形成された板状体であり、例えば、フェライトや電磁鋼板などの磁性材料で形成されている。給電コイルは、コイル保持部の中央部に所定の巻き数で巻回されている。第2給電部22は、第1周波数と異なる第2周波数で電力を非接触状態で搬送装置30へ供給するものである。第2給電部22は、底部14の上で第1給電部21の隣に配設されており、コイル保持部と、給電コイルとを備えている。この第2給電部22は、給電コイルの巻き数が異なる以外は第1給電部21と同様の構成を有するものとし、その説明を省略する。
【0014】
第1永久磁石24は、リニアモータの固定子として構成されている。側壁11の内壁面には、搬送装置30の通過方向に沿って所定のピッチで多数の第1永久磁石24が配列されている。第1永久磁石24の各々は、配列方向に沿ってN極、S極が交互に現れるように、隣り合うものが交互に異なる極性となるよう配設されている。第2永久磁石25は、リニアモータの固定子として構成されている。側壁12の内壁面には、搬送装置30の通過方向に沿って所定のピッチで多数の第2永久磁石25が配列されている。第2永久磁石25の各々は、配列方向に沿ってN極、S極が交互に現れるように、隣り合うものが交互に異なる極性となるよう配設されている。また、搬送路ユニット20の分岐部において、側壁11の内壁面には、搬送装置30の移動方向を変更する第1誘導磁石17が配設されており、側壁12の内壁面には、第2誘導磁石18が配設されている(
図2、4参照)。
【0015】
走行レール26は、底部14の中央上部に配設されたガイド部材である。この走行レール26に走行ローラ36が接触回転することにより、搬送装置30が走行レール26に沿って移動する。走行レール26は、
図4に示すように、搬送路15の分岐部において、その一部に走行ローラ36の移動方向を変更可能な切り欠きが設けられている。レール部27は、搬送装置30の搬送路15からの逸脱を防止する部材であり、側壁11,12の上部に設けられたガイドである。レール部27は、例えば、搬送装置30側の先端がV字に形成されたVレールであり、後述する搬送装置30の溝ローラ37の溝に挿入される。レール部27の上面には、スケール16が配設されており、搬送装置30のリニアヘッド43がこのスケール16を読み取ることにより、搬送装置30の位置を把握可能となっている。
【0016】
制御装置29は、搬送路ユニット20の給電を制御するコントローラとして構成されている。制御装置29は、管理装置50と通信可能に構成されており、管理装置50との間で搬送装置30の移動や制御に必要なデータ等の送受信を行う。この制御装置29は、第1給電部21及び第2給電部22と電気的に接続され、第1給電部21に第1周波数の電力を供給し、第2給電部22に第2周波数の電力を供給する。制御装置29は、第1給電部21及び第2給電部22のいずれかから搬送装置30の第1受電部31及び第2受電部32へ非接触による電力供給を行う。なお、非接触給電の方式は、コイルを用いた電磁結合方式や電磁誘導方式に限定されず、例えば、平板状の電極を用いた静電結合方式でもよい。
【0017】
搬送装置30は、搬送路ユニット20により形成された搬送路15に沿って移動する装置である。搬送装置30は、作業台38を搬送路ユニット20の上方に配置した状態で、略U字状をなす搬送路ユニット20の溝内に挿入されている。搬送路ユニット20に挿入された搬送装置30は、搬送路ユニット20の側壁11,12との間に一定の隙間が設けられている。この搬送装置30は、第1受電部31と、第2受電部32と、駆動部33と、走行ローラ36と、溝ローラ37と、作業台38と、制御部39と、リニアヘッド43とを備える。
【0018】
第1受電部31は、搬送路15に設けられた第1給電部21から供給された第1周波数の電力を非接触状態で受電する。第1受電部31は、搬送装置30の下面側であって、搬送装置30が搬送路ユニット20に配置されたときに、第1給電部21と対向する位置に配設されている(
図3A参照)。この第1受電部31は、コイル保持部と、受電コイルとを備えている。コイル保持部は、搬送装置30の移動方向に沿って形成された板状体であり、例えば、フェライトや電磁鋼板などの磁性材料で形成されている。受電コイルは、コイル保持部の中央部に所定の巻き数で巻回されている。この第1受電部31は、搬送装置30の下面側で、移動方向の軸線上において1つ設けられるものとしてもよいし、先端及び後端などに複数設けられるものとしてもよい。第2受電部32は、搬送路15に設けられた第2給電部22から供給された第2周波数の電力を非接触状態で受電する。第2受電部32は、搬送装置30の下面側であって、搬送装置30が搬送路ユニット20に配置されたときに、第2給電部22と対向する位置に配設されている(
図3A参照)。この第2受電部32は、受電コイルの巻き数が異なる以外は第1受電部31と同様の構成を有するものとし、その説明を省略する。この搬送システム10では、複数の受電部を確保することによって、搬送路ユニット20の経路を変更した場合などにおいて、給電部との対向関係を確保し、柔軟に対処することができる。
【0019】
駆動部33は、搬送路ユニット20から非接触状態で供給された電力により搬送装置30を移動させるものである。駆動部33は、磁力で搬送装置を移動させるリニアモータを構成するものであり、第1電磁石34と、第2電磁石35と、第1誘導コイル41と、第2誘導コイル42とを備える。搬送システム10は、搬送路ユニット20に固定子として第1永久磁石24、第2永久磁石25を配置し、搬送装置30に可動子として第1電磁石34と第2電磁石35とを配置した、所謂、ムービングコイル型のリニアモータを構成している。第1電磁石34は、リニアモータの可動子を構成するものであり、ヨークやコイルを備えており、搬送装置30の側面に設けられている。第1電磁石34は、搬送装置30が搬送路ユニット20に配置されたときに、第1永久磁石24と対向する位置に設けられている。この第1電磁石34は、X方向、即ち搬送装置30の移動方向に複数、配列して設けられている。第1電磁石34は、制御部39から交流電流が通電されると、磁界を発生させ(N極及びS極が誘起され)、搬送路ユニット20の第1永久磁石24との間に磁気吸引力や磁気反発力などの推進力を発生させる。第2電磁石35は、リニアモータの可動子を構成するものであり、搬送装置30の側面に設けられている。第2電磁石35は、搬送装置30が搬送路ユニット20に配置されたときに、第2永久磁石25と対向する位置に設けられている。この第2電磁石35は、第1電磁石34と同様の構成を有するものとし、その説明を省略する。
【0020】
また、この搬送装置30には、誘導コイル41,42が搬送装置30の側面側に配設されており、搬送路ユニット20に設けられた誘導磁石17,18との間に磁気力を発生させることによって、搬送路ユニット20の分岐部において搬送装置30の移動方向を変更する。
【0021】
走行ローラ36は、
図2に示すように、搬送装置30の下面の中央部に、Z方向に沿った回転軸を中心に回転可能に軸支されている。走行ローラ36は、対向して配置された2つを1組として、X方向において複数組設けられている。走行ローラ36の各々は、走行レール26の側面に内側から接触して回転する。また、走行ローラ36には、Y方向に沿った回転軸を中心に回転可能に軸支されたローラ36aも備えており、このローラは、走行レール26の中央上面に接触して回転する。
【0022】
溝ローラ37は、外周の中央に溝が形成されたローラであり、Z軸に沿った方向を回転軸として搬送装置30の側面に軸支されている。搬送装置30は、この溝ローラ37を搬送装置30の移動方向に沿って複数(片側3個ずつ)備えている。複数の溝ローラ37の各々は、側壁11,12の上部に設けられたレール部27に対して回転可能に取り付けられている。搬送装置30は、走行ローラ36を走行レール26に接触させ、溝ローラ37をレール部27に係合させることによって、移動方向とは異なる方向、例えば、Y方向やZ方向への移動を規制された状態で搬送路15上を移動する。
【0023】
作業台38は、搬送装置30が搬送する搬送対象を載置する板状の部材であり、搬送装置30の上部に配設されている。搬送対象としては、例えば、部品などの作業ロボット13による作業対象の物品や、搬送装置30の移動先で作業を実行するロボット40などが挙げられる。
【0024】
リニアヘッド43は、スケール16を読み取る部材であり、作業台38の側端部の下面側に配設されている。リニアヘッド43は、スケール16に基づいて取得した搬送装置30の位置に関する信号を制御部39へ出力する。なお、搬送装置30の位置を検出する方法は、スケールに限らず、例えば、ロータリーエンコーダを用いてもよい。
【0025】
制御部39は、搬送装置30の移動やロボット40を制御するコントローラとして構成されている。この制御部39は、第1受電部31や第2受電部32の受電コイルと接続され、給電コイルから受電コイルへ給電された交流電力に応じた電力を供給する。また、制御部39は、第1受電部31や第2受電部32から供給された電力から第1電磁石34や第2電磁石35に通電する駆動電流を生成する。制御部39は、第1電磁石34や第2電磁石35に通電する交流電流を制御することで、第1電磁石34及び第2電磁石35によって形成する磁界、即ち、搬送装置30を移動させる方向や速度、加速度などを制御する。制御部39は、第1受電部31が電力を受電すると所定の第1動作を実行し、第2受電部32が電力を受電すると第1動作と異なる第2動作を実行するよう設定されている。
【0026】
次に、こうして構成された本実施形態の搬送システム10の動作、まず、搬送路ユニット20での電力供給処理について説明する。
図6は、搬送路ユニット20の制御装置29により実行される電力供給処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、搬送システム10の起動後、制御装置29により実行される。このルーチンを開始すると、制御装置29は、今回作業するジョブ情報を管理装置50から取得し(S100)、ジョブ情報に基づき、現在給電を実行するべき給電部が第1給電部21か第2給電部22かを判定する(S110)。ジョブ情報には搬送装置30の位置に応じて給電部が指定されているものとし、制御装置29は、この情報に基づいてこの判定を実行するものとしてもよい。例えば、ジョブ情報として、通常は第1給電部21から給電を行い、特定の位置において第2給電部22からの給電に切り替え、その領域を過ぎると第1給電部21から給電するよう設定されているような例が挙げられる。S110での判定結果が第1給電部21であるときには、制御装置29は、第1給電部21から第1周波数で電力を供給する(S120)。一方、S110の判定結果が第2給電部22であるときには、第2給電部22から第2周波数で電力を供給する(S130)。S120又はS130のあと、制御装置29は、S110以降の処理を繰り返し実行する。
【0027】
次に、搬送装置30が給電を受けて動作する処理について説明する。
図7は、搬送装置30の制御部39により実行される動作実行ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、搬送システム10の起動後、制御部39により実行される。このルーチンを開始すると、制御部39は、電力供給を受けたのが第1受電部31であるか、第2受電部32であるかを判定する(S200)。電力供給を受けたのが第1受電部31からの第1周波数の電力であるときには、制御部39は、所定の第1動作を実行する(S210)。一方、電力供給を受けたのが第2受電部32からの第2周波数の電力であるときには、制御部39は、第1動作と異なる所定の第2動作を実行する(S220)。S210又はS220のあと、制御装置29は、S200以降の処理を繰り返し実行する。
【0028】
ここで、制御部39は、第1動作として第1目標位置へ移動するよう駆動部33を制御すると共に第2動作として第1目標位置と異なる第2目標位置へ移動するよう駆動部33を制御するものとしてもよい。また、制御部39は、第1動作として第1速度で移動するよう駆動部33を制御すると共に第2動作として第1速度と異なる第2速度で移動するよう駆動部33を制御するものとしてもよい。あるいは、制御部39は、第1動作として第1加減速度で加減速するよう駆動部33を制御すると共に第2動作として第1加減速度と異なる第2加減速度で加減速するよう駆動部33を制御するものとしてもよい。更に、制御部39は、第1動作として作業装置としてのロボット40に第1作業を実行させると共に第2動作としてロボット40に第1作業と異なる第2作業を実行させるものとしてもよい。
【0029】
搬送装置30の制御において、第1動作が第1目標位置Aへの移動であり、第2動作が第2目標位置Bである場合を具体例として説明する(
図5参照)。ここでは、搬送装置30は、第1給電部21からの給電で第1目標位置Aへ移動し、第2給電部22からの給電で分岐先の第2目標位置Bへ移動するよう搬送装置30の動作が設定されている。第1給電部21からの給電が継続する場合、制御部39は、
図5の点線で示すように搬送装置30を直進させ、第1目標位置Aへ移動させる。一方、特定の領域において給電が第1給電部21から第2給電部22に切り替わったときには、制御部39は、
図5の実線で示すように、第2誘導コイル42に電力を供給し、搬送装置30の進行方向を変更し、第2目標位置Bへ移動させる。制御部39には、搬送路ユニット20の第1給電部21から第1周波数の電力か、第2給電部22から第2周波数の電力か、のいずれかが供給される。制御部39は、この電力供給の切り替えを搬送装置30に関する動作の切り替え信号に利用することにより、無線通信などを省略した簡素な制御を実行することができるのである。
【0030】
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の第1受電部31が本開示の第1受電部に相当し、第2受電部32が第2受電部に相当し、駆動部33が駆動部に相当し、搬送路15が搬送路に相当し、制御部39が制御部に相当する。また、ロボット40が作業装置に相当し、第1給電部21が第1給電部に相当し、第2給電部22が第2給電部に相当する。なお、本実施形態では、搬送装置30の動作を説明することにより本開示の搬送装置の制御方法の一例も明らかにしている。
【0031】
以上説明した本実施形態の搬送装置30は、複数種の受電部を有しており、各受電部のうちいずれかで受電すると、その受電した受電部に応じた動作を実行する。即ち、この搬送装置30では、特別な無線装置などがなくても、動作を切り替え可能である。また、複数種の給電部を有するため、搬送路ごとに異種の給電部が配設されていても、これに対応することができる。このように、この搬送装置30は、種々の給電部に対応すると共に、種々の動作を切り替えて実行することができる。また、制御部39は、第1動作として第1目標位置Aへ移動するよう駆動部33を制御すると共に第2動作として第1目標位置Aと異なる第2目標位置Bへ移動するよう駆動部33を制御するか、第1動作として第1速度で移動するよう駆動部33を制御すると共に第2動作として第1速度と異なる第2速度で移動するよう駆動部を制御するか、第1動作として第1加減速度で加減速するよう駆動部33を制御すると共に第2動作として第1加減速度と異なる第2加減速度で加減速するよう駆動部33を制御するか、のうち1以上を実行する。この搬送装置30は、目標位置や、移動速度、加減速などの動作を切り替えて実行することができる。また、搬送装置30は、所定の作業を実行する作業装置としてのロボット40を備え、制御部39は、第1動作としてロボット40に第1作業を実行させると共に第2動作としてロボット40に第1作業と異なる第2作業を実行させる。この搬送装置33は、非接触状態で供給された電力を用い、ロボット40に様々な作業を切り替えて実行させることができる。また、駆動部33は、磁力で搬送装置30を移動させる。この搬送装置33では、磁力によって非接触的に搬送装置30を移動することができる。
【0032】
また、搬送システム10は、供給された電力の周波数に応じて動作を切り替えることができるため、無線通信など、別の情報伝達を用いることなく、搬送装置30での種々の動作を切り替えることができる。また、搬送システム10では、複数の給電部、およびこれに対応する受電部を備えるため、搬送装置30の進行方向が変更されるなどして、搬送路ユニット20が変更された場合であっても、給電コイルと受電コイルとが外れることをより抑制することができる。このため、磁場を維持しようとして生じうる電圧の上昇などをより抑制することができる。
【0033】
なお、本明細書で開示する搬送装置は、上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0034】
例えば、上述した実施形態では、制御部39は、受電した電力の周波数に基づいて、搬送装置30の移動目標位置や、移動速度、加減速、ロボット40の作業などの動作を切り替えて実行するものとしたが、動作を切り替えるものであれば、特にこれに限定されない。
【0035】
上述した実施形態では、搬送路ユニット20は、第1給電部21及び第2給電部22の2つの給電部を備え、搬送装置30は、第1受電部31及び第2受電部32の2つの受電部を備えるものとしたが、特にこれに限定されず、第3給電部や第3受電部、第4給電部や第4受電部など、3以上の給電部及び受電部を備えるものとしてもよい。この搬送システム10では、3以上の動作を切り替えて実行することができる。
【0036】
上述した実施形態では、第1給電部21と第1受電部31、第2給電部22と第2受電部32と、など、給電部と受電部とが1対1であるものとしたが、特にこれに限定されず、1つの給電部で2以上の周波数の電力を給電可能に構成してもよいし、1つの受電部で2以上の周波数の電力を受電可能に構成してもよい。この搬送システム10においても、種々の給電部に対応することができ、供給された電力の周波数に基づいて種々の動作を切り替えることができる。
【0037】
上述した実施形態では、搬送路ユニット20は、分岐部を有するものとして説明したが、特に分岐がないものとしてもよい。この場合、搬送装置30では、供給された周波数に応じた分岐で生じる目標位置の設定はないが、供給された周波数に応じて搬送装置30の種々の動作を切り替えることはできる。
【0038】
ここで、本開示の搬送装置、搬送システム及び搬送装置の制御方法は、以下のように構成してもよい。例えば、本開示の搬送装置において、前記制御部は、前記第1動作として第1目標位置へ移動するよう前記駆動部を制御すると共に前記第2動作として前記第1目標位置と異なる第2目標位置へ移動するよう前記駆動部を制御するか、前記第1動作として第1速度で移動するよう前記駆動部を制御すると共に前記第2動作として前記第1速度と異なる第2速度で移動するよう前記駆動部を制御するか、前記第1動作として第1加減速度で加減速するよう前記駆動部を制御すると共に前記第2動作として前記第1加減速度と異なる第2加減速度で加減速するよう前記駆動部を制御するか、のうち1以上を実行するものとしてもよい。この搬送装置は、目標位置や、移動速度、加減速などの動作を切り替えて実行することができる。
【0039】
本開示の搬送装置は、所定の作業を実行する作業装置、を備え、前記制御部は、前記第1動作として前記作業装置に第1作業を実行させると共に前記第2動作として前記作業装置に第1作業と異なる第2作業を実行させるものとしてもよい。この搬送装置は、非接触状態で供給された電力を用い、作業装置に様々な作業を切り替えて実行させることができる。ここで、作業装置が実行する作業としては、例えば、物品の移動作業や、物品の加工作業などが挙げられる。
【0040】
本開示の搬送装置において、前記駆動部は、磁力で前記搬送装置を移動させるものとしてもよい。この搬送装置では磁力によって非接触的に搬送装置を移動することができる。
【0041】
本開示の搬送システムは、第1周波数で電力を非接触状態で供給する第1給電部と前記第1周波数と異なる第2周波数で電力を非接触状態で供給する第2給電部とが配設された搬送路と、上述したいずれかに記載の搬送装置と、を備えたものである。この搬送システムは、上述した搬送装置のいずれかを備えるため、採用した搬送装置に応じた効果を得ることができる。
【0042】
本開示の搬送装置の制御方法は、
搬送路に設けられ第1周波数で電力を非接触状態で供給する第1給電部から供給された電力を非接触状態で受電する第1受電部と、前記搬送路に設けられ前記第1周波数と異なる第2周波数で電力を非接触状態で供給する第2給電部から供給された電力を非接触状態で受電する第2受電部と、供給された電力により前記搬送装置を移動させる駆動部とを備え、前記搬送路に沿って移動する搬送装置の制御方法であって、
(a)前記第1受電部が電力を受電すると第1動作を実行するステップと、
(b)前記第2受電部が電力を受電すると前記第1動作と異なる第2動作を実行するステップと、
を含むものである。
【0043】
この制御方法では、上述した搬送装置と同様に、複数種の給電部を有することにより、搬送路ごとに異種の給電部が配設されていてもこれに対応することができ、特別な無線装置などがなくても動作を切り替え可能である。このように、この搬送装置の制御方法は、種々の給電部に対応すると共に、種々の動作を切り替えて実行することができる。なお、この搬送装置の制御方法において、上述した搬送装置の種々の態様を採用してもよいし、また、上述した搬送装置の各機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示の搬送装置、搬送システム及び搬送装置の制御方法は、物品や作業装置を搬送して作業を実行する装置の技術分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 搬送システム、11,12 側壁、13 作業ロボット、14 底部、15 搬送路、16 スケール、17 第1誘導磁石、18 第2誘導磁石、20 搬送路ユニット、21 第1給電部、22 第2給電部、24 第1永久磁石、25 第2永久磁石、26 走行レール、27 レール部、29 制御装置、30 搬送装置、31 第1受電部、32 第2受電部、33 駆動部、34 第1電磁石、35 第2電磁石、36 走行ローラ、36a ローラ、37 溝ローラ、38 作業台、39 制御部、40 ロボット、41 第1誘導コイル、42 第2誘導コイル、43 リニアヘッド、50 管理装置、A 第1目標位置、B 第2目標位置。