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特許7238158高い特異性でマルトトリオースを生産するマルトトリオース生成アミラーゼの突然変異体
<図1a>
  • 特許-高い特異性でマルトトリオースを生産するマルトトリオース生成アミラーゼの突然変異体 図1a
  • 特許-高い特異性でマルトトリオースを生産するマルトトリオース生成アミラーゼの突然変異体 図1b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】高い特異性でマルトトリオースを生産するマルトトリオース生成アミラーゼの突然変異体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/56 20060101AFI20230306BHJP
   C12N 9/26 20060101ALI20230306BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230306BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230306BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230306BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230306BHJP
   C12P 19/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
C12N15/56
C12N9/26 A ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/19
C12N1/21
C12N1/15
C12P19/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021557729
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 CN2020103021
(87)【国際公開番号】W WO2021243821
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】202010507573.9
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】呉敬
(72)【発明者】
【氏名】王蕾
(72)【発明者】
【氏名】胡凡
(72)【発明者】
【氏名】陳晟
(72)【発明者】
【氏名】宿玲恰
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/076697(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/023411(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/222990(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/200656(WO,A1)
【文献】Definition: Thermobifida fusca strain NTU22 alpha-amylase (amy13) gene, complete cds.,Database DDBJ/EMBL/GenBank [online],Accession No. DQ473479,2009年,[retrieved on 2022-10-17],https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/DQ473479
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C12P 1/00-41/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号4で示されるアミノ酸配列において、マルトトリオース生成アミラーゼを親とし、親の47番目のロイシンリジンに突然変異されていることを特徴とする、マルトトリオース生成アミラーゼの突然変異体。
【請求項2】
配列番号4で示されるアミノ酸配列において、マルトトリオース生成アミラーゼを親とし、親の101番目、103番目、153番目のいずれか一つの位置にあるアミノ酸が突然変異されており、
下記(a)-(c)のいずれか一つであることを特徴とする、マルトトリオース生成アミラーゼの突然変異体:
(a)配列番号4で示されるアミノ酸配列において、101番目のグリシンがセリン、トレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、またはグルタミンに突然変異されている;
(b)配列番号4で示されるアミノ酸配列において、103番目のグリシンがヒスチジンに突然変異されている;
(c)配列番号4で示されるアミノ酸配列において、153番目のグリシンがセリン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミンまたはヒスチジンに突然変異されている。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の突然変異体をコードする遺伝子。
【請求項4】
請求項に記載の遺伝子を有している組換え発現ベクター。
【請求項5】
前記発現ベクターは、pETシリーズ、Duetシリーズ、pGEXシリーズ、pHY300シリーズ、pHY300PLKシリーズ、pPIC3Kシリーズ、又はpPIC9Kシリーズのいずれか一つのシリーズであることを特徴とする、請求項に記載の組換え発現ベクター。
【請求項6】
請求項に記載の遺伝子を有している微生物細胞。
【請求項7】
デキストリンを基質とし、請求項1又は2に記載の突然変異体を触媒として、マルトトリオースを生産することを特徴とする、マルトトリオースの生産特異性を向上させる方法。
【請求項8】
前記デキストリンは米、トウモロコシ、小麦、水稲、ジャガイモ、サツマイモ、葛根及び/またはキャッサバを原料としていることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の突然変異体、または請求項もしくはに記載の組換え発現ベクターの、マルトトリオースを調製するための使用。
【請求項10】
請求項またはに記載の方法の、マルトトリオースを調製するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い特異性でマルトトリオースを生産するマルトトリオース生成アミラーゼの突然変異体に関し、遺伝子工学および酵素工学の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
マルトトリオース(Maltotriose、α-D-Glc-(1→4)-α-D-Glc-(1→4)-D-Glc、G3と略称する。)は、α-(1→4)グリコシド結合を介して3つのグルコース単位が結合してなる機能性オリゴ糖に属する。その分子式はC18H32O16であり、相対分子量は504.438であり、密度は1.8±0.1g・cm-3であり、融点は132-135℃であり、常温で白色固体粉末である。G3は、様々な優れた物理・化学的特性および生理学的特性を有し、また、虫歯を防ぐ特徴、低い甘味度、低い粘度、低いカロリー、結晶抵抗性、および低い浸透圧の特徴を有する消化可能な栄養甘味料であり、冷凍食品の冷凍温度を変化させるとともに、熱処理食品の中でメイラード反応によって引き起こされる褐変量を制御するために使用することができる。G3は、高い保湿能力を提供して、過度的な乾燥および低い水分活動度を防止し、微生物の汚染を制御しやすく、強い安定性を持っており、デンプンの老化(starch retrogradation)に対する強い阻害剤である。G3は、食品、飲料、化学工業、医薬等の産業において幅広く利用されている。市場上のG3製品はほとんど日本から来たものである。日本食品化工株式会社の「フジオリゴ#360」、日本コーンスターチ(株)の「新型マルトオリゴ糖」、日本三菱ケミカルフーズ株式会社の「直鎖オリゴ糖origo」、群栄化学工業株式会社の「ピュアトース」は、いずれも主成分がG3である。
【0003】
マルトトリオース生成アミラーゼ(EC 3.2.1.116、maltotriose forming α-amylase、AmyAと略称される)は、遺伝子tfaによりコードされ、マルトトリオース生成能を有するα-アミラーゼである。AmyAは、デンプンやデキストリンを基質として、糖鎖中のα-(1→4)グリコシド結合をエンドカッティングまたはエキソカッティングにより加水分解し、マルトトリオースと少量の副生物を生成する。この酵素を発見することは、G3の調製のための新規な知見を提供する。
【0004】
現在、G3の製造プロセスは化学法と酵素法の2つに分けられている。化学法はプルラン(pullulan)を出発原料とし、アセチル化、脱アセチル化の二つのステップによりG3を調製することができる。この二つのステップの反応では、濃硫酸、石油エーテル、メタノール及びナトリウムメトキシド等のハイリスクな試薬が必要であり、ステップが短く、操作が簡単であるが、基質のコストが高く、環境に対する害が大きい。酵素法は、環境に優しく、省エネで、かつ効率的・安全的な代替法としては、生産コストを著しく低減し、製品品質を向上させ、消費者の需要を満たすことができ、マルトトリオース産業の持続可能な発展を推進する原動力である。酵素法による調製は使用される酵素の違いによって、2種類に分けられている。第一種の酵素法はプルランをプルラナーゼにより加水分解し、医薬グレードのG3(純度99%以上)を連続的かつ自動化で調製できるが、この方法には基質のコストが高いという問題がある。デンプンは、プルランと比較して、豊富で天然の再生可能な資源であり、米、トウモロコシ、小麦、水稲、ジャガイモ及びキャッサバなどの多くの重要な食用作物の種子、根、または塊茎の主な貯蔵炭水化物であり、より経済的である。マルトデキストリンは、デンプンを糊化させた後にα-アミラーゼを添加して液化させた生成物である。α-アミラーゼの作用により、マルトデキストリンは重合度が低く、溶解度が大きく、他の酵素が働くことに有利である。第二種の方法はAmyAを主な酵素とし、デンプンやマルトデキストリンなどの安価な原料を基質としてG3を生成する方法である。一般的に、脱分枝のために反応系にプルラナーゼを添加する必要がある。しかし、現在、AmyAには、副生物であるグルコースやマルトースが多く、分離精製の難しさやコストが増加する問題がある。従って、分子修飾等の手段によりG3特異性の高いAmyAを取得することで、G3の生産量を向上させ、生産プロセスを簡略化し、生産コストを低減することができる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上記従来の問題点を解決するために、マルトトリオース生成アミラーゼの突然変異体を提供する。本発明で使用される、サーモビフィダ・フスカ(Thermobifida fusca) NTU22由来のマルトトリオース生成アミラーゼTfAmyAは、酵素変換反応の初期段階でG1-G3の生成物を生成して一種のエンドヌクレアーゼに属しているので、TfAmyAがG3を生産する際の、基質に対する収率を低下させるとともに、分離精製の難しさも増加させる。したがって、該酵素のG3生産能と特異性をさらに高めることは、G3の生産コストの低減と生産の大規模化に有利である。
【0006】
本発明は、高い特異性でマルトトリオースを生産するマルトトリオース生成アミラーゼの突然変異体であって、親TfAmyAに対してカルボキシル基末端がトランケートされたか、又はトランケートされた突然変異体であるアミノ酸の47番目、101番目、103番目、153番目のいずれか一つの位置にあるアミノ酸を突然変異させてなる突然変異体を提供する。
【0007】
本発明の一実施態様において、前記親TfAmyAのアミノ酸配列は、配列番号1で示されるものである。
【0008】
本発明の一実施態様は、以下の(a)-(e)のいずれかに示す突然変異体である:
(a)親の451-572番目のアミノ酸がトランケートされ、アミノ酸配列が配列番号4で示された突然変異体;
(b)配列番号4で示されるアミノ酸配列において、47番目のロイシンをリジンまたはアルギニンに突然変異させて得られ、それぞれL47K、L47Rと命名された突然変異体;
(c)配列番号4で示されるアミノ酸配列において、101番目のグリシンをセリン、トレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、またはグルタミンに突然変異させて得られ、それぞれG101S、G101T、G101D、G101N、G101E、G101Qと命名された突然変異体;
(d)配列番号4で示されるアミノ酸配列において、103番目のグリシンをヒスチジンに突然変異させて得られ、G103Hと命名された突然変異体;
(e)配列番号4で示されるアミノ酸配列において、153番目のグリシンをセリン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、またはヒスチジンに突然変異させて得られた突然変異体をそれぞれG153S、G153D、G153N、G153E、G153Q、G153Hと命名された突然変異体。
【0009】
本発明は、前記突然変異体をコードする遺伝子を提供する。
【0010】
本発明は、前記遺伝子を有している、pETシリーズ、Duetシリーズ、pGEXシリーズ、pHY300シリーズ、pHY300PLKシリーズ、pPIC3Kシリーズ又はpPIC9Kシリーズのいずれか一つである組換え発現ベクターを提供する。
【0011】
本発明は、前記突然変異体を発現するか、又は前記遺伝子を有する微生物細胞を提供する。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記微生物細胞は、原核細胞または真核細胞である。
【0013】
本発明は、マルトトリオースの生産特異性を向上させる方法であって、デキストリンを基質とし、前記突然変異体を触媒として、マルトトリオースを生産する方法を提供する。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記デキストリンは米、トウモロコシ、小麦、水稲、ジャガイモ、サツマイモ、葛根及び/またはキャッサバを原料としている。
【0015】
本発明はさらに、前記突然変異体、前記遺伝子、前記組換え発現ベクター、前記微生物細胞、又はマルトトリオースの生産特異性を高める方法を用いて、マルトトリオースを調製するための使用を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、TfAmyAに対してトランケーション突然変異と部位特異的突然変異を行ったことにより、様々な突然変異体が得られて、マルトトリオース生成アミラーゼの活性が増加し、生成物中のマルトトリオースの割合が向上し、マルトトリオースの後続の精製プロセスの簡略化、及び生産の大規模化を実現するために有利であり、しかもマルトトリオースの生産コストを著しく低減でき、広い工業的応用の見込みがある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1はトランケートされる前及びトランケートされた後のSDS-PAGEの図であり、図aは野生型であり、図bはトランケートされた後の突然変異体である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示に係る発明について、具体的な実施形態をもとに説明する。本開示に係る発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
実施例に記載する培地配合は、以下の通りである。
LB培地(g/L):ペプトン 10、酵母エキス 5、NaCl 10。
TB培地(g/L):ペプトン 10、酵母粉末 24、グリセロール 5、K2HPO4・3H2O 16.43、KH2PO4 2.31。
【0020】
実施例に記載のプルラナーゼは、デンプンの脱分枝効果を有する、脱分枝酵素の一種である。
【0021】
実施例中のG3含有量の測定方法:
酵素変換した試料を沸騰している水浴に10分間、置いて、12000r・min-1で10分間、遠心分離し、さらに最終濃度50%(体積比)のアセトニトリルで共沈殿させ、2時間放置した後、12000r・min-1で10分間、遠心分離し、上清を取り、シリンジで0.22μM濾過膜を通した。移動相を、アセトニトリル:水(74:26)の割合にて調製し、Agilent 1200 HPLCクロマトグラフィーおよびHYPERSIL APS2 アミノカラムを用いて、カラム温度を40℃、流速を0.8mL・min-1に設定して、試料を測定した。吸収ピーク面積とマルトトリオース標準品のピーク面積からマルトトリオースの生成量を算出した。
【0022】
実施例1:トランケート体酵素の調製
1)トランケート体ベクターと野生型ベクターの構築
1.Thermobifida fusca NTU22由来のマルトトリオース生成アミラーゼのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列(ヌクレオチド配列は配列番号2で示される)に基づき、トランケートされた後の遺伝子断片Tftfa-ΔML(ヌクレオチド配列は配列番号3で示される)と、ベクターpET20b(+)(発現ベクター上に、遺伝子発現を開始させるシグナルペプチドを有する)とを、シームレスクローニング酵素Exnase II(Vazyme Biotech Co.,Ltd)により連結し、組換えプラスミドpET20b(+)-Tftfa-ΔMLが構築された。
2.ヌクレオチド配列が配列番号2で示される遺伝子断片を上記同様の方法でベクターpET20b(+)と連結し、組換えプラスミドpET20b(+)-Tftfaが構築された。
【0023】
2)トランケート体酵素と野生型酵素の発現及び精製
1.組換えプラスミドpET20b(+)-Tftfa-ΔMLを宿主大腸菌BL21(DE3)のコンピテントセルに転換し、37℃で12時間~14時間培養してシングルコロニーを増殖させてから、シングルコロニーを抽出し、配列決定の検証を行った;正しいと検証された陽性転換体をLB液体培地(アンピシリン100μg/mLを含む)に接種し、37℃、200rpmで8-10時間培養し、シード発酵ブロスを5%接種量でTB液体培地(アンピシリン100μg/mL及びグリシン7.5g/Lを含む)に接種した;大腸菌を37℃のシェーカーでOD600=0.6-0.8まで培養し、最終濃度0.134mMのIPTGを添加して細胞外発現を誘導し、さらに25℃のシェーカーで発酵培養を48時間続けた後、発酵ブロスを4℃で、10000gで15分間、遠心分離し、菌体を除去し、上清を採集し、精製して、精製されたトランケート体酵素を得た。
2.組換えプラスミドpET20b(+)-Tftfaを、ステップ1.と同様の方法で宿主大腸菌BL21(DE3)のコンピテントセルに転換し、かつ培養、誘導して、精製された野生型酵素を得た。
【0024】
実施例2:突然変異体酵素の調製
1)部位特異的突然変異
プラスミドpET20b(+)-Tftfa-ΔMLを鋳型として、合成した突然変異プライマーを用いてPCRを行い、突然変異体を構築する。
【0025】
【0026】
PCR系:2×Phanta Max Master Mix 25μL、鋳型 1μL、上流プライマー 2μL、下流プライマー 2μL、ddH2O 20μL。PCRパラメーターは以下の通りである。すなわち、94℃で4分間の予備変性;PCRサイクルに入った:98℃で10秒間の変性、55℃で30秒間のアニール、72℃での伸長(時間の長さは増幅断片の長さから計算して、1000bp・min-1)、25-30回サイクルした;最後に72℃で10分間の保温、4℃での保温。PCR産物をDpn I(Fermentas社)で消化し、大腸菌JM109のコンピテントセルに転換し、転換されたコンピテントセルをLB固体培地(アンピシリン100μg/mLを含む)で一晩培養した後、シングルコロニーを抽出してLB液体培地(アンピシリン100μg/mLを含む)で培養し、その後、プラスミドを抽出し、配列決定を行った。
【0027】
2)突然変異体酵素の発現及び精製
正しく突然変異したと配列決定されたプラスミドを宿主大腸菌BL21(DE3)のコンピテントセルに転換し、転換された宿主大腸菌BL21(DE3)のシングルコロニーを抽出してLB液体培地(アンピシリン100μg/mLを含む)において37℃、200rpmで8~10時間培養し、シード発酵ブロスを5%接種量でTB液体培地(アンピシリン100μg/mL及びグリシン7.5g/Lを含む)に接種した;大腸菌を37℃のシェーカーでOD600=0.6-0.8まで培養し、最終濃度0.134mMのIPTGを添加して細胞外発現を誘導し、さらに25℃のシェーカーで発酵培養を48時間続けた後、発酵ブロスを4℃で、10000gで15分間、遠心分離し、菌体を除去し、上清を採集し、かつ精製して、精製された突然変異体酵素を得た。
【0028】
実施例3:マルトトリオース生成アミラーゼの酵素活性測定
酵素活性測定はDNS法を用い、系は次の通りである。
基質調製:1質量%濃度で可溶性澱粉を相応なバッファに懸濁させて、加熱撹拌し、糊化させた。
反応系: ブランク組:基質 1mL(2g/100mL可溶性澱粉)+バッファ 1mL。
対照組:基質 1mL+バッファ 0.9mL+適当な倍率に希釈した酵素液 0.1mL。
【0029】
基質及びバッファ成分を事前に栓付き試験管に投入し、恒温水槽に入れて10分間インキュベートした。酵素を適当な倍率に希釈し、対照ペアへ添加して、反応を行った。10分間を正確にカウントした。10分間後、3mLのDNSを添加し、すべての栓付き試験管を、沸騰水を持っている鍋に同時に置いて、7分間を正確にカウントし、素早く取り出して氷浴槽に入れて冷却した。低温に下げた後、10mLのH2Oを加えてよく混合した。酵素活性は、540nm分光光度計を用いて相応的にブランクを除いた吸光値Abs540を測定し、検量線に代入して算出したものである。
【0030】
検量線:上記の系により、異なるグルコース濃度でAbs540と還元糖濃度との関係を測定して、その線形回帰式を検量線とする。
【0031】
酵素活性は、1分間当たり1μmolの還元糖を放出するのに必要な酵素量を酵素活性単位(U)と定義する。
【0032】
25℃のシェーカーで発酵培養を48時間続けた後、上清を採集し、野生型酵素及び突然変異体酵素のシェーカーでの酵素活性を測定した。その結果を表1に示す。トランケート体TfAmyA-ΔMLの酵素活性は大きく変化せず、L47、G103の突然変異の酵素活性が向上した以外に、G101番目およびG153番目の突然変異は、多くの酵素活性が減少しているか、わずかに減少している。
【0033】
【0034】
実施例4:HPLC法によるマルトトリオース生成量の分析
DE値5-7の5質量%濃度のマルトデキストリン溶液(pH5.5)を調製し、それぞれ一定量のマルトトリオース生成アミラーゼの野生酵素及び突然変異酵素を加え、それらのエンザイム量は60U・g-1基質であり、プルラナーゼをエンザイム量32U・g-1基質で反応系に添加し、回転数150rpm、温度55℃の水浴のシェーカーに置いて、11時間反応させた。試料を採取し、沸騰した水浴で10分間煮て、酵素を失活させ、遠心分離により上清を取り、生成物溶液が得られた。生成物溶液500μLをアセトニトリルと1:1にて混合し、室温で2時間放置して、高分子量のデキストリン又は限界デキストリンを沈殿させ、次いで12000rpmで20分間遠心分離し、上清をシリンジで0.22μM濾過膜を通して、HPLC分析が可能な試料を得た。移動相を、アセトニトリル:水(74:26)の割合で調製し、Agilent1200 HPLCクロマトグラフィーおよびHYPERSIL APS2 アミノカラムを用いて、カラム温度40℃および流速0.8mL・min-1に設定して、試料を測定した。吸収ピーク面積とG3標準品のピーク面積とからG3の生成量を算出した。
【0035】
野生型酵素及び突然変異体酵素の酵素変換分析結果を表2に示す。トランケート体TfAmyA-ΔMLは、G3の収率を向上させ、G3の比率もわずかに向上した。G103の突然変異G103VおよびG103P以外に、その他のL47、G101、G103およびG153の突然変異は、酵素変換産物のG3の比率を顕著に向上させた。単一突然変異体はG3の特異性を高め、生成物中の他の糖を減少させ、主生成物G3を増加させた。ここで、比率とは、生成物中のG3の質量濃度と生成物全体の質量濃度との比をいう。収率とは、生成物のG3の質量濃度と基質の質量濃度との比を指す。
【0036】
【0037】
本発明の好ましい実施例が前述のように開示されているが、これに限定されることはない。本発明の主旨と範囲から逸脱しない限り、当業者による様々な設計変更及び改変は本発明の権利範囲に含まれる。したがって、本発明の権利範囲は、当該特許請求の範囲で定義した内容主旨に基づくものである。
図1a
図1b
【配列表】
0007238158000001.app