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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-03
(45)【発行日】2023-03-13
(54)【発明の名称】造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/194 20170101AFI20230306BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20230306BHJP
   B29C 64/218 20170101ALI20230306BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20230306BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20230306BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230306BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20230306BHJP
【FI】
B29C64/194
B29C64/112
B29C64/218
B29C64/264
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y50/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022508648
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2020011684
(87)【国際公開番号】W WO2021186539
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】橋本 良崇
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-016553(JP,A)
【文献】国際公開第2019/058515(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/006412(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00ー64/40
B33Y 10/00ー99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化樹脂層の上に樹脂材料を吐出する吐出工程と、
前記吐出工程により吐出した前記樹脂材料の一部を、前記硬化樹脂層からローラに転写して平坦化する平坦化工程と、
前記平坦化工程により平坦化した前記樹脂材料に対して、所定の光量の光を当てて硬化し、前記硬化樹脂層の上に新たな硬化樹脂層を形成する第1硬化工程と、
を含み、
前記吐出工程、前記平坦化工程、前記第1硬化工程を繰り返し実行し、前記硬化樹脂層を積層し、
前記樹脂材料の前記硬化樹脂層に対する第1接触角が、前記樹脂材料の前記ローラに対する第2接触角に比べて大きくなる前記光量を用い、
前記硬化樹脂層に対して撥液性を有する材料が含まれている前記樹脂材料を用いる場合、前記第1接触角が前記第2接触角に比べて大きくなる基準光量以上に、前記光量を設定する、造形方法。
【請求項2】
硬化樹脂層の上に樹脂材料を吐出する吐出工程と、
前記吐出工程により吐出した前記樹脂材料の一部を、前記硬化樹脂層からローラに転写して平坦化する平坦化工程と、
前記平坦化工程により平坦化した前記樹脂材料に対して、所定の光量の光を当てて硬化し、前記硬化樹脂層の上に新たな硬化樹脂層を形成する第1硬化工程と、
を含み、
前記吐出工程、前記平坦化工程、前記第1硬化工程を繰り返し実行し、前記硬化樹脂層を積層し、
前記樹脂材料の前記硬化樹脂層に対する第1接触角が、前記樹脂材料の前記ローラに対する第2接触角に比べて大きくなる前記光量を用い、
前記硬化樹脂層に対して撥液性を有する材料が含まれていない前記樹脂材料を用いる場合、前記第1接触角が前記第2接触角に比べて大きくなる基準光量以下に、前記光量を設定する、造形方法。
【請求項3】
前記第1硬化工程は、
前記樹脂材料を完全に硬化させずに、半硬化状態の前記硬化樹脂層を形成する、請求項1又は請求項2に記載の造形方法。
【請求項4】
前記吐出工程、前記平坦化工程、前記第1硬化工程を繰り返し実行し、積層した前記硬化樹脂層の上に前記樹脂材料を吐出する第2吐出工程と、
前記第2吐出工程により吐出した前記樹脂材料を、前記ローラにより平坦化せずに、且つ前記第1硬化工程の前記光量よりも小さい光量の光を当てて硬化し、前記硬化樹脂層の上に平滑面を形成する第2硬化工程と、
を含む請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の造形方法。
【請求項5】
前記平滑面の上に金属粒子を含む流体を吐出する第3吐出工程と、
前記第3吐出工程により吐出した前記金属粒子を含む流体を硬化し、前記平滑面の上に金属製の導体を形成する第3硬化工程と、
を含む請求項4に記載の造形方法。
【請求項6】
前記第1硬化工程で照射する光の強度、前記第1硬化工程で前記樹脂材料を走査する光の走査速度、前記第1硬化工程で前記樹脂材料を走査する光の走査回数のうち、少なくとも1つを変更して前記光量を設定する、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3次元積層造形法を用いて、樹脂材料により造形物を造形する造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂材料を用いて造形物を造形するための技術が開発されている。例えば、下記特許文献1には、紫外線硬化樹脂を用いて造形物を造形する造形装置に係る技術が記載されている。特許文献1の造形装置は、吐出ユニットから吐出した紫外線硬化樹脂を平坦化するローラを備えている。ローラは、吐出した紫外線硬化樹脂の層と接触した状態で回転することにより、層の表面の紫外線硬化樹脂を掻き取り、表面を平坦化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-16553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したローラを用いた平坦化工程では、紫外線硬化樹脂の層からローラの表面に所定量の紫外線硬化樹脂を転写させ、紫外線硬化樹脂を掻き取ることで平坦化を実行する。このローラへの紫外線硬化樹脂の転写量が少ない場合、紫外線硬化樹脂の層の表面に凹凸が残り、表面を十分に平坦化できない虞がある。このため、ローラへの紫外線硬化樹脂の転写量を増やす平坦化の技術が望まれている。
【0005】
本開示は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、吐出した樹脂材料を、ローラを用いてより平坦化できる造形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の造形方法は、硬化樹脂層の上に樹脂材料を吐出する吐出工程と、前記吐出工程により吐出した前記樹脂材料の一部を、前記硬化樹脂層からローラに転写して平坦化する平坦化工程と、前記平坦化工程により平坦化した前記樹脂材料に対して、所定の光量の光を当てて硬化し、前記硬化樹脂層の上に新たな硬化樹脂層を形成する硬化工程と、を含み、前記吐出工程、前記平坦化工程、前記硬化工程を繰り返し実行し、前記硬化樹脂層を積層し、前記樹脂材料の前記硬化樹脂層に対する第1接触角が、前記樹脂材料の前記ローラに対する第2接触角に比べて大きくなる前記光量を用いい、
前記硬化樹脂層に対して撥液性を有する材料が含まれている前記樹脂材料を用いる場合、前記第1接触角が前記第2接触角に比べて大きくなる基準光量以上に、前記光量を設定する
また、上記課題を解決するために、本開示の造形方法は、硬化樹脂層の上に樹脂材料を吐出する吐出工程と、前記吐出工程により吐出した前記樹脂材料の一部を、前記硬化樹脂層からローラに転写して平坦化する平坦化工程と、前記平坦化工程により平坦化した前記樹脂材料に対して、所定の光量の光を当てて硬化し、前記硬化樹脂層の上に新たな硬化樹脂層を形成する第1硬化工程と、を含み、前記吐出工程、前記平坦化工程、前記第1硬化工程を繰り返し実行し、前記硬化樹脂層を積層し、前記樹脂材料の前記硬化樹脂層に対する第1接触角が、前記樹脂材料の前記ローラに対する第2接触角に比べて大きくなる前記光量を用い、前記硬化樹脂層に対して撥液性を有する材料が含まれていない前記樹脂材料を用いる場合、前記第1接触角が前記第2接触角に比べて大きくなる基準光量以下に、前記光量を設定する。
【発明の効果】
【0007】
これによれば、樹脂材料の吐出、平坦化、硬化を繰り返し実行する際に、樹脂材料の硬化樹脂層に対する第1接触角が、樹脂材料のローラに対する第2接触角に比べて大きくなる光量を用いる。これにより、硬化樹脂層の第1接触角を、ローラの第2接触角に比べて相対的に大きくすることで、樹脂材料が硬化樹脂層からはじかれ易くなり、ローラへ転写し易くなる。従って、硬化工程の光量を調整することで、平坦化工程でのローラへの転写量を増大させ、ローラを用いて樹脂材料をより平坦化できる。硬化樹脂層の表面の凹凸を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実装基板製造装置を示す図である。
図2】制御装置を示すブロック図である。
図3】制御装置を示すブロック図である。
図4】インクジェットヘッドから紫外線硬化樹脂を吐出する状態を示す図である。
図5】ローラによって平坦化する状態を示す図である。
図6】照射装置によって紫外線を照射する状態を示す図である。
図7】造形物を製造する工程を示す図である。
図8】ローラによって平坦化する状態を示す図である。
図9】紫外線硬化樹脂に対する積算光量と、第1接触角の関係を示すグラフ。
図10】液滴の外径、着滴した紫外線硬化樹脂の外径を説明するための図である。
図11】紫外線硬化樹脂に対する積算光量と、半硬化した後に硬化樹脂層の表面に形成される凹凸の大きさの関係を示すグラフ。
図12図7に示す製造工程の後の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実装基板製造装置の構成)
以下、本開示の好適な実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に実装基板製造装置10を示す。実装基板製造装置10は、搬送装置20と、第1造形ユニット22と、第2造形ユニット24と、装着ユニット26と、第3造形ユニット29と、制御装置27(図2図3参照)を備える。それら搬送装置20、第1造形ユニット22、第2造形ユニット24、装着ユニット26、第3造形ユニット29は、実装基板製造装置10のベース28の上に配置されている。ベース28は、平面視において概して長方形状をなしている。以下の説明では、ベース28の長手方向をX軸方向、ベース28の短手方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向と称して説明する。
【0010】
搬送装置20は、X軸スライド機構30と、Y軸スライド機構32とを備えている。そのX軸スライド機構30は、X軸スライドレール34と、X軸スライダ36とを有している。X軸スライドレール34は、X軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。X軸スライダ36は、X軸スライドレール34によって、X軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、X軸スライド機構30は、電磁モータ38(図2参照)を有しており、電磁モータ38の駆動により、X軸スライダ36をX軸方向の任意の位置に移動させる。また、Y軸スライド機構32は、Y軸スライドレール50と、ステージ52とを有している。Y軸スライドレール50は、Y軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。Y軸スライドレール50の一端部は、X軸スライダ36に連結されている。そのため、Y軸スライドレール50は、X軸方向に移動可能とされている。ステージ52は、Y軸スライドレール50によって、Y軸方向にスライド可能に保持されている。Y軸スライド機構32は、電磁モータ56(図2参照)を有しており、電磁モータ56の駆動により、ステージ52をY軸方向の任意の位置に移動させる。これにより、ステージ52は、X軸スライド機構30及びY軸スライド機構32の駆動により、ベース28上の任意の位置に移動する。
【0011】
ステージ52は、基台60と、保持装置62と、昇降装置64とを有している。基台60は、平板状に形成され、上面に基材70が載置される。保持装置62は、X軸方向における基台60の両側部に設けられている。保持装置62は、基台60に載置された基材70のX軸方向の両縁部を挟むことで、基台60に対して基材70を固定的に保持する。また、昇降装置64は、基台60の下方に配設されており、基台60をZ軸方向で昇降させる。
【0012】
第1造形ユニット22は、ステージ52の基台60に載置された基材70の上に配線を造形するユニットであり、第1印刷部72と、焼成部74とを有している。第1印刷部72は、インクジェットヘッド76(図2参照)を有しており、基台60に載置された基材70の上に、導電性インクを線状に吐出する。導電性インクは、本開示の金属粒子を含む流体の一例である。導電性インクは、例えば、主成分としてナノメートルサイズの金属(銀など)の微粒子を溶媒中に分散させたものを含み、熱により焼成されることで硬化する。導電性インクは、例えば、数百ナノメートル以下のサイズの金属ナノ粒子を含んでいる。金属ナノ粒子の表面は、例えば、分散剤によりコーティングされており、溶媒中での凝集が抑制されている。
【0013】
尚、インクジェットヘッド76は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式によって複数のノズルから導電性インクを吐出する。また、導電性インク(金属ナノ粒子を含む流体)を吐出する装置としては、複数のノズルを備えるインクジェットヘッドに限らず、例えば、1つのノズルを備えたディスペンサーでも良い。また、導電性インクに含まれる金属ナノ粒子の種類は、銀に限らず、銅、金等でも良い。また、導電性インクに含まれる金属ナノ粒子の種類数は、1種類に限らず、複数種類でも良い。
【0014】
焼成部74は、照射装置78(図2参照)を有している。照射装置78は、例えば、基材70の上に吐出された導電性インクを加熱する赤外線ヒータを備えている。導電性インクは、赤外線ヒータから熱を付与されることで焼成され、配線を形成する。ここでいう導電性インクの焼成とは、例えば、エネルギーを付与することによって、溶媒の気化や金属ナノ粒子の保護膜、つまり、分散剤の分解等が行われ、金属ナノ粒子が接触又は融着することで、導電率が高くなる現象である。そして、導電性インクを焼成することで、配線を形成することができる。尚、導電性インクを加熱する装置は、赤外線ヒータに限らない。例えば、実装基板製造装置10は、導電性インクを加熱する装置として、赤外線ランプ、レーザ光を導電性インクに照射するレーザ照射装置、あるいは導電性インクを吐出された基材70を炉内に入れて加熱する電気炉を備えても良い。
【0015】
また、第2造形ユニット24は、基台60に載置された基材70の上に樹脂層を造形するユニットであり、第2印刷部84と、硬化部86とを有している。第2印刷部84は、インクジェットヘッド88(図2参照)を有しており、基台60に載置された基材70の上に紫外線硬化樹脂144を吐出する(図4参照)。紫外線硬化樹脂144は、紫外線の照射により硬化する樹脂である。尚、インクジェットヘッド88が紫外線硬化樹脂144を吐出する方式は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式でもよく、樹脂を加熱して気泡を発生させ複数のノズルから吐出するサーマル方式でも良い。
【0016】
硬化部86は、平坦化装置90(図2参照)と、照射装置92(図2参照)とを有している。平坦化装置90は、インクジェットヘッド88によって基材70の上に吐出された紫外線硬化樹脂144の上面を平坦化するものである。例えば、図5に示すように、平坦化装置90は、ローラ143と、回収部145とを有している。平坦化装置90は、紫外線硬化樹脂144の表面を均しながら余剰分の樹脂を、ローラ143によって掻き取ることで、紫外線硬化樹脂144の厚みを均一にさせる。ローラ143は、例えば、円柱形状をなし、平坦化装置90の制御に基づいて、流動可能な状態の紫外線硬化樹脂144の表面を回転しながら移動し、表面を平坦化する。回収部145は、例えば、ローラ143の表面に向かって突出するブレードを有しており、ブレードで掻き取った紫外線硬化樹脂144を貯めて排出する。回収部145は、例えば、回収した紫外線硬化樹脂144を廃液タンクに排出する。尚、回収部145は、回収した紫外線硬化樹脂144を、再度、供給タンクに戻しても良い。平坦化装置90は、紫外線硬化樹脂144の表面を均しながら余剰分の紫外線硬化樹脂144を掻き取り、紫外線硬化樹脂144の表面を平坦化する。
【0017】
また、照射装置92は、光源として、例えば、水銀ランプやLEDを備える。図6に示すように、照射装置92は、基材70の上に吐出された紫外線硬化樹脂144(図5参照)に紫外線を照射する。これにより、基材70の上に吐出された紫外線硬化樹脂144が硬化し、薄膜状の硬化樹脂層149を形成することができる。
【0018】
また、装着ユニット26は、基台60に載置された基材70の上に、電子部品を配置するユニットであり、供給部100と、装着部102とを有している。供給部100は、テーピング化された電子部品を1つずつ送り出すテープフィーダ110(図2参照)を複数有しており、各供給位置において、電子部品を供給する。電子部品は、例えば、温度センサ等のセンサ素子である。尚、電子部品の供給は、テープフィーダ110による供給に限らず、トレイによる供給でも良い。
【0019】
装着部102は、装着ヘッド112(図2参照)と、移動装置114(図2参照)とを有している。装着ヘッド112は、電子部品を吸着保持するための吸着ノズルを有している。吸着ノズルは、正負圧供給装置(図示省略)から負圧が供給されることで、エアの吸引により電子部品を吸着保持する。そして、正負圧供給装置から僅かな正圧が供給されることで、電子部品を離脱する。また、移動装置114は、テープフィーダ110の供給位置と、基台60に載置された基材70との間で、装着ヘッド112を移動させる。これにより、装着部102は、吸着ノズルにより電子部品を保持し、吸着ノズルによって保持した電子部品を、基材70の上に配置する。
【0020】
また、第3造形ユニット29は、基台60に載置された基材70の上に、導電性ペーストを塗布するユニットである。導電性ペーストは、例えば、マイクロサイズの金属粒子(マイクロフィラなど)を、樹脂製の接着剤に含めた粘性流体である。マイクロサイズの金属マイクロ粒子は、例えば、フレーク状態の金属(銀など)である。金属マイクロ粒子は、銀に限らず、金、銅などや複数種類の金属でも良い。接着剤は、例えば、エポキシ系の樹脂を主成分として含んでいる。導電性ペーストは、加熱により硬化し、例えば、配線に接続される接続端子の形成に使用される。接続端子とは、例えば、電子部品の部品端子に接続するバンプ、外部機器などに接続する外部電極などである。
【0021】
また、第3造形ユニット29は、導電性ペーストを塗布する装置としてディスペンサー130を有する。尚、導電性ペーストを塗布する装置は、ディスペンサーに限らず、スクリーン印刷装置やグラビア印刷装置でも良い。また、本開示における「塗布」とは、流体をノズルなどから吐出する動作や、スクリーン印刷やグラビア印刷によって対象物の上に流体を付着させる動作、ピン等で流体を塗る動作などを含む概念である。ディスペンサー130は、基材70や樹脂層の上に導電性ペーストを吐出する。吐出された導電性ペーストは、例えば、第1造形ユニット22の焼成部74によって加熱され硬化することで接続端子(外部電極など)を形成する。
【0022】
ここで、導電性ペーストは、例えば、数十マイクロメートル以下のサイズの金属マイクロ粒子を含んでいる。導電性ペーストは、加熱されることで接着剤(樹脂など)が硬化し、フレーク状の金属同士が接触した状態で硬化する。上記したように導電性インクは、例えば、加熱によって金属ナノ粒子同士が融着することで一体化した金属となり、金属ナノ粒子同士が接触しているだけの状態に比べて導電率が高くなる。一方、導電性ペーストは、接着剤の硬化によってマイクロサイズの金属マイクロ粒子を互いに接触させて硬化する。このため、導電性インクを硬化して形成した配線の抵抗(電気抵抗率)は、例えば、数~数十マイクロΩ・cmと極めて小さく、導電性ペーストを硬化した配線の抵抗(数十~数千マイクロΩ・cm)に比べて小さい。従って、導電性インクは、低抵抗の回路配線など、低い抵抗値を要求される造形物の造形に適している。
【0023】
一方で、導電性ペーストは、硬化時に接着剤を硬化させることで、他の部材との接着性を高めることができ、導電性インクに比べて他の部材との密着性に優れている。ここでいう他の部材とは、導電性ペーストを吐出等して付着させる部材であり、例えば、樹脂層、配線、電子部品の部品端子などである。従って、導電性ペーストは、電子部品を樹脂層に固定する接続端子など、機械的強度(引っ張り強度など)が要求される造形物の造形に適している。本実施形態の実装基板製造装置10では、このような導電性インクと導電性ペーストを使い分けて、特性を活かすことで、電気的性質及び機械的性質を向上した実装基板を製造できる。
【0024】
次に、実装基板製造装置10の制御装置27の構成について説明する。図2及び図3に示すように、制御装置27は、コントローラ120、複数の駆動回路122、記憶装置124を備えている。複数の駆動回路122は、上記電磁モータ38,56、保持装置62、昇降装置64、インクジェットヘッド76、照射装置78、インクジェットヘッド88、平坦化装置90、照射装置92、テープフィーダ110、装着ヘッド112、移動装置114に接続されている(図2参照)。さらに、駆動回路122は、第3造形ユニット29に接続されている(図3参照)。
【0025】
コントローラ120は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路122に接続されている。記憶装置124は、RAM、ROM、ハードディスク等を備えており、実装基板製造装置10の制御を行う制御プログラム126が記憶されている。コントローラ120は、制御プログラム126をCPUで実行することで、搬送装置20、第1造形ユニット22、第2造形ユニット24、装着ユニット26、第3造形ユニット29等の動作を制御可能となっている。以下の説明では、コントローラ120が、制御プログラム126を実行して各装置を制御することを、単に「装置が」と記載する場合がある。例えば、「コントローラ120がステージ52を移動させる」とは、「コントローラ120が、制御プログラム126を実行し、駆動回路122を介して搬送装置20の動作を制御して、搬送装置20の動作によってステージ52を移動させる」ことを意味している。
【0026】
(実装基板製造装置の動作)
本実施形態の実装基板製造装置10は、上記した構成によって、複数の硬化樹脂層149を積層した造形物157(図7参照)を製造する。例えば、記憶装置124の制御プログラム126には、完成時の造形物157をスライスした各層の三次元のデータが設定されている。コントローラ120は、制御プログラム126のデータに基づいて第1造形ユニット22等を制御し、紫外線硬化樹脂144等を吐出、硬化等させて、造形物157を形成する。
【0027】
まず、コントローラ120は、ステージ52の基台60に基材70がセットされると、ステージ52を移動させつつ、基材70の上に造形物157の造形を行なう。図4に示すように、基材70の上面には、例えば、熱によって剥離可能な剥離フィルム151が貼り付けられており、その剥離フィルム151の上に造形物157が形成される。剥離フィルム151は、加熱されることで、造形物157とともに基材70から剥離される。尚、基材70と造形物157を分離する方法は、剥離フィルム151を用いる方法に限らない。例えば、基材70と造形物157の間に、熱によって溶ける部材(サポート材など)を配置し、溶かして分離しても良い。また、剥離フィルム151などの分離する部材を用いずに、基材70の上に直接、造形物157を造形しても良い。
【0028】
コントローラ120は、基材70をセットされると、図6に示すように、剥離フィルム151の上に硬化樹脂層149を形成する。コントローラ120は、複数の硬化樹脂層149を積層させることで、任意の形状の造形物157を造形する。例えば、コントローラ120は、制御プログラム126の三次元データなどに基づいて、紫外線硬化樹脂144を吐出、硬化等させて硬化樹脂層149を形成する。
【0029】
図7は、造形物157を製造する工程を示している。まず、図7のステップ(以下、単に「S」と記載する)11に示すように、第2印刷部84のインクジェットヘッド88は、紫外線硬化樹脂144の液滴を剥離フィルム151の上に吐出する。吐出された紫外線硬化樹脂144は、剥離フィルム151の上に付着し薄膜状に広がる。
【0030】
次に、S13に示すように、コントローラ120は、薄膜状の紫外線硬化樹脂144に接する状態で平坦化装置90のローラ143を回転させ、平坦化を行う。ローラ143は、流動可能な状態の紫外線硬化樹脂144を回転しながら掻き上げる。掻き上げられた紫外線硬化樹脂144は、ローラ143の表面に付着し、回収部145のブレード(図示略)で掻き取られて回収部145に回収される。
【0031】
次に、S15に示すように、照射装置92は、剥離フィルム151上の紫外線硬化樹脂144に対して紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂144を半硬化して半硬化状態の硬化樹脂層149を形成する。コントローラ120は、S11、S13、S15の処理を繰り返し実行し、半硬化状態の硬化樹脂層149を積層する。尚、コントローラ120は、S11の吐出工程とS15の半硬化工程の間に、S13の平坦化工程を毎回実行しなくとも良い。
【0032】
また、上記した半硬化状態とは、例えば、物性のレベルでは完全に安定はしていないが、半硬化させた硬化樹脂層149の上に紫外線硬化樹脂144を吐出した場合、吐出した紫外線硬化樹脂144が硬化樹脂層149に混じり合わず、紫外線硬化樹脂144を半硬化状態の硬化樹脂層149の上に積むことができる程度まで硬化した状態である。換言すれば、半硬化した硬化樹脂層149の上にさらに硬化樹脂層149を積層することができる程度まで紫外線硬化樹脂144を硬化した状態である。コントローラ120は、照射装置92から紫外線硬化樹脂144に照射する紫外線の強度(光の強度)、紫外線硬化樹脂144に対して紫外線を走査させる走査速度、走査させる回数等を制御し、紫外線の光量を変更して、紫外線硬化樹脂144を半硬化状態にする。これにより、半硬化状態の硬化樹脂層149をZ軸方向に積層することができる。
【0033】
ここで、S13の平坦化工程において、硬化樹脂層149の表面に吐出された紫外線硬化樹脂144がローラ143に転写する転写量が少ないと、半硬化した後の硬化樹脂層149の表面に形成される凹凸を十分に抑えることができない。ここでいう凹凸を抑えるとは、例えば、形成される凹凸の数をより少なくする、凹凸の高低差を小さくするなどを意味している。
【0034】
図8は、S13のローラ143による平坦化工程の状態を模式的に示している。本実施形態のコントローラ120は、S11で硬化樹脂層149の上に吐出した紫外線硬化樹脂144の硬化樹脂層149に対する第1接触角θ1が、紫外線硬化樹脂144のローラ143に対する第2接触角θ2に比べて大きくなる光量をS15で用いて、照射装置92から紫外線を照射する。
【0035】
詳述すると、本願出願人は、紫外線硬化樹脂144に照射する紫外線の光量と、第1接触角θ1の関係について調査を行なった。図9は、紫外線硬化樹脂144に対する積算光量と、第1接触角θ1の関係を示している。図9の横軸は、例えば、S15の半硬化工程において、平坦化した薄膜状の紫外線硬化樹脂144に照射した紫外線の積算光量を示しており、右に行くほど積算光量が大きくなることを示している。積算光量は、単位面積当たりに紫外線を照射した時間と光の強度を積算したものであり、例えば、単位平方センチメートル当たりのジュール(J/cm)である。積算光量は、例えば、紫外線に含まれる光の波長のうち、紫外線硬化樹脂144の硬化に作用する特定の波長帯(数百nm)の積算光量を示している。また、縦軸は、第1接触角θ1を示しており、上に行くほど角度が大きく、即ち、塗れ性が下がり濡れにくく(はじき易く)なっていることを示している。
【0036】
第1接触角θ1は、例えば、下記の数1、数2に示す式により算出することができる。
【数1】


【数2】
【0037】
上記式において、rは、図10に示すように、インクジェットヘッド88から吐出した紫外線硬化樹脂144の液滴の外径である。また、Rは、硬化樹脂層149に着滴した後の紫外線硬化樹脂144の外径である。尚、第1接触角θ1の算出方法は、上記した数式を用いた方法に限らない。例えば、実際に着滴した紫外線硬化樹脂144を撮像した画像を解析して第1接触角θ1を算出しても良い。
【0038】
また、図9に実線で示すグラフ153は、紫外線硬化樹脂144として、撥液機能を有した表面調整剤が入った紫外線硬化樹脂144を用いた場合を示している。グラフ153に示すように、撥液性を有する材料が含まれている紫外線硬化樹脂144を用いた場合、第1接触角θ1は、S15の半硬化工程において照射する紫外線の積算光量が増大するに従って角度が大きくなり、一定の角度に飽和した状態となる。第1接触角θ1が大きくなると、硬化樹脂層149の上に吐出された紫外線硬化樹脂144は、硬化樹脂層149からはじかれ易くなる。従って、次に、S13の平坦化工程を実行する際に、硬化樹脂層149からローラ143へ転写する紫外線硬化樹脂144の転写量を増大させることができる。
【0039】
図11は、紫外線硬化樹脂144に対する積算光量と、半硬化した後に硬化樹脂層149の表面に形成される凹凸の大きさの関係を示している。図11の横軸は、図9と同様に、S15の半硬化工程において、平坦化した薄膜状の紫外線硬化樹脂144に照射した紫外線の積算光量を示しており、右に行くほど積算光量が大きくなることを示している。また、縦軸は、硬化樹脂層149の表面に形成された凹凸の最大値(最も突出した位置)から最小値(最も凹んだ位置)の高低差を示しており、上に行くほど凹凸の高低差が大きくなる、即ち、凹凸が大きくなっていることを示している。凹凸の大きさの想定方法は、特に限定されないが、例えば、レーザ顕微鏡にて半硬化した後の硬化樹脂層149の表面を観察することで測定することができる。
【0040】
図9及び図11の測定では、例えば、ローラ143の形状、材質、紫外線硬化樹脂144の材質、吐出する紫外線硬化樹脂144の液滴の量などを一定とした。即ち、第1接触角θ1の大きさや凹凸の形成に影響を及ぼす要因のうち、紫外線の光量以外の要因を一定の条件に固定した。図9及び図11に示すように、例えば、積算光量を、第1基準光量X1以上にすることで、第1接触角θ1を一定の角度以上にでき、硬化樹脂層149の表面に形成される凹凸の大きさを一定の大きさ以下に抑制することができる。これは、硬化樹脂層149の上で紫外線硬化樹脂144がはじかれ易くなり、相対的に第2接触角θ2が小さくなり、硬化樹脂層149からローラ143へ紫外線硬化樹脂144が転写され易くなったと考えられる。即ち、紫外線硬化樹脂144の転写量が増大したと考えられる。尚、本願出願人は、第1基準光量X1で紫外線を照射した場合、第2接触角θ2が、第1接触角θ1に比べて数度~十数以上小さくなることを確認した。そして、凹凸の差が、十数μm程度まで小さくなることを確認できた。
【0041】
従って、本実施形態の造形方法では、撥液性を有する材料が含まれている紫外線硬化樹脂144を用いる場合、第1接触角θ1が第2接触角θ2に比べて大きくなるように、積算光量を所定の第1基準光量X1以上にすることが好ましい。撥液性を有する材料が含まれている紫外線硬化樹脂144では、S15の半硬化工程の光量を増大させると、硬化樹脂層149に対する紫外線硬化樹脂144の接触角、即ち、第1接触角θ1が大きくなる傾向がある(図9のグラフ153参照)。このため、撥液性を有する材料が含まれている紫外線硬化樹脂144を用いる場合は、S15の半硬化工程の積算光量を所定の第1基準光量X1以上にすることで、紫外線硬化樹脂144を硬化樹脂層149からよりはじき易くすることができ、転写量をより増大させることができる。
【0042】
S15で照射する紫外線の積算光量を変更する方法は、限定されないが、例えば、光の強度、走査速度、走査回数の少なくとも1つを変更して積算光量を変更しても良い。光の強度とは、S15で照射装置92から照射する紫外線の強度である。また、走査速度とは、S15において、照射装置92や基材70を移動させ紫外線の照射位置を移動させて、紫外線硬化樹脂144に対して紫外線を走査させる場合、その紫外線を走査させる速度である。また、走査回数は、1回のS15の工程において、紫外線硬化樹脂144に対して紫外線を走査させる回数である。
【0043】
これによれば、光の強度、走査速度、走査回数を変更することで、紫外線硬化樹脂144に対する積算光量を調整し、平坦化を行なうことができる。特に、光の強度のみを変更することで、走査速度や走査回数を変更する場合に比べて、S15の半硬化工程の実行時間をより均一にすることができる。これは、走査速度や走査回数を変更した場合、照射装置92から紫外線を紫外線硬化樹脂144に照射する作業時間が変動するためである。換言すれば、光の強度のみを変更することで、半硬化工程を含む製造工程のタクトタイムの変動を抑制することができる。
【0044】
一方、図9に破線で示すグラフ155は、紫外線硬化樹脂144として、撥液機能を有した表面調整剤が入っていない紫外線硬化樹脂144を用いた場合を示している。グラフ155に示すように、撥液性を有する材料が含まれていない紫外線硬化樹脂144を用いた場合、第1接触角θ1は、グラフ153(撥液性の材料有り)とは逆に、半硬化工程において照射する紫外線の積算光量を増大させるに従って小さくなる傾向がある。
【0045】
従って、撥液性を有する材料が含まれていない紫外線硬化樹脂144では、硬化が進むほど、硬化樹脂層149に対する紫外線硬化樹脂144の第1接触角θ1が小さくなる傾向がある。撥液性を有する材料が含まれていない紫外線硬化樹脂144を用いる場合には、例えば、第2基準光量X2以下の積算光量で紫外線を照射することが好ましい。これにより、半硬化工程の積算光量を所定の第2基準光量X2以下にすることで、第1接触角θ1が小さくなることを抑制し、転写量を増大させることができる。
【0046】
また、図7のS15の半硬化工程は、紫外線硬化樹脂144を完全に硬化させずに、半硬化状態の硬化樹脂層149を形成している。これによれば、例えば、半硬化させた硬化樹脂層149の上に紫外線硬化樹脂144を吐出した場合、吐出した紫外線硬化樹脂144が硬化樹脂層149に混じり合わず、紫外線硬化樹脂144を半硬化状態の硬化樹脂層149の上に積むことができる程度まで、硬化樹脂層149を半硬化する。その結果、その半硬化状態の硬化樹脂層149を積層することができる。一方、紫外線硬化樹脂144を、物性が安定するまで完全に硬化すると、S15で示す工程の1回の実行時間(紫外線の照射時間など)が長くなり、結果として造形物157の製造時間に遅延が発生する。これに対し、当該造形方法では、積層できる程度まで半硬化することで、S15の工程の実行時間を短縮できる。そして、積層した硬化樹脂層149を最終的にまとめて完全に硬化することで、平坦化を図りつつ、造形物157の製造時間を短縮できる。
【0047】
また、図7に示すように、コントローラ120は、S11、S13、S15の工程を繰り返し実行し、半硬化状態の硬化樹脂層149を積層した後、積層した硬化樹脂層149を完全に硬化させる本硬化工程を実行する(S17)。コントローラ120は、S15に比べて積算光量を大きくして硬化樹脂層149の硬化を実行する。例えば、コントローラ120は、S17の紫外線の強度を、S15の紫外線の強度よりも大きくする。これにより、物性のレベルで完全に安定し、紫外線硬化樹脂144の液滴が混ざらない程度まで硬化した造形物157を造形することができる。上記したようにS13の転写量を増大させ、表面の凹凸が小さい硬化樹脂層149を積層でき、硬化樹脂層149を精度良く積層できる。また、最終的な造形物157の表面の凹凸を、例えば、十数μm程度まで小さくすることができる。尚、S17の本硬化工程を実行する直前のS15の半硬化工程を省略しても良い。即ち、最後のS15を、S17に含めて実行しても良い。
【0048】
また、上記した造形物157の構造、製造手順等は、一例である。以下の説明では、造形物157の別例として、ローラ143により平坦化した面に配線等を形成する場合について説明する。図12は、図7の後の製造工程の一例を示している。図12に示すように、コントローラ120は、例えば、S13の平坦化工程を実行した後、S15の半硬化工程やS17の本硬化工程を実行する。
【0049】
ここで、図12のS15(又はS17)に示すように、半硬化した硬化樹脂層149の上面149Aには、液滴の曲面形状に起因した凹凸部149Bが形成される虞がある。この凹凸部149Bの高さの差は、例えば、数十(もしくは20)μmに満たない大きさとなる可能性があり、ローラ143による液の転写だけでは限界がある。このため、紫外線の積算光量を調整して平坦化した硬化樹脂層149を積層しても、最終的な造形物157(図7参照)の表面の細かな凹凸まで平坦化することが困難となる場合がある。
【0050】
そこで、S19に示すように、コントローラ120は、S15の半硬化又はS17の本硬化した硬化樹脂層149の上面149Aに、インクジェットヘッド88から紫外線硬化樹脂144を吐出する。硬化樹脂層149の上面149Aに吐出された紫外線硬化樹脂144は、上面149Aにおいて薄膜状に広がった薄膜層を形成する。この薄膜層は、例えば、S19の吐出工程において、インクジェットヘッド88で紫外線硬化樹脂144を吐出可能な最小の吐出量を設定し、上面149Aを1回だけ走査したことで形成される。例えば、薄膜層は、インクジェットヘッド88で形成可能な最も薄い厚さであることが好ましい。薄膜状に広がった紫外線硬化樹脂144は、上面149Aに付着した後に凹凸部149Bに入り込む。
【0051】
次に、S21に示すように、コントローラ120は、照射装置92によって、紫外線硬化樹脂144を吐出した上面149Aに向かって紫外線を照射し、吐出した紫外線硬化樹脂144を半硬化させる。S21における半硬化状態は、上記したS15の半硬化状態に比べてより流動性の高い半硬化状態である。例えば、S19の半硬化状態とは、吐出した際の液滴の状態から粘性を高めて流動的になっているジェル状のような状態である。コントローラ120は、例えば、紫外線硬化樹脂144に照射する紫外線の強度、走査回数、走査速度、走査時間などを、S15に比べて減らすことで、紫外線硬化樹脂144をS15の状態よりも流動性を高めた半硬化状態にする。
【0052】
紫外線硬化樹脂144は、紫外線を照射されることで、粘性を変化させつつ、凹凸部149Bに入り込む。コントローラ120は、S19の工程とS21の工程を繰り返し実行する。これにより、紫外線硬化樹脂144は、凹凸部149Bを塞ぐようにして広がって半硬化する。上面149Aには、S11、S13、S15、S17で形成した造形物157の表面に比べてより一層平坦化された平滑面149Cが形成される。本願出願人は、この平滑面149Cを形成することで、硬化樹脂層149の上面149Aの凹凸の高さが数μmまで改善されることを確認した。このような平滑面149Cを形成することで、より厚みの均一な配線を硬化樹脂層149の上に形成することができる。
【0053】
例えば、コントローラ120は、S23に示すように、S21よりも積算光量を大きくして、平滑面149Cを有する硬化樹脂層149を本硬化する。次に、S25に示すように、S23で硬化した平滑面149Cの上に、配線161を形成する。コントローラ120は、例えば、第1造形ユニット22のインクジェットヘッド76(図2参照)から平滑面149Cに導電性インクを吐出し、照射装置78によって硬化させることで、所望の配線パターンの配線161を形成する。
【0054】
従って、コントローラ120は、S11、S13、S15を繰り返し実行し、積層した硬化樹脂層149の上に紫外線硬化樹脂144を吐出するS19の工程を実行する。次に、コントローラ120は、S19で吐出した紫外線硬化樹脂144を、ローラ143により平坦化せずに、且つS15の半硬化工程の光量よりも小さい光量の光を当てて硬化し、硬化樹脂層149の上に平滑面149Cを形成するS21の工程を実行する。
【0055】
上記したように、ローラ143で平坦化した上面149Aには、ローラ143では解消できない微細な凹凸部149Bが形成される場合がある。そこで、硬化樹脂層149の上に紫外線硬化樹脂144を吐出し、吐出した紫外線硬化樹脂144を、平坦化せずに硬化する。また、S15の光量よりも小さい光量で光を当てて半硬化する。これにより、硬化樹脂層149の上に吐出された紫外線硬化樹脂144は、レベリング効果により硬化樹脂層149の上面149Aに形成された微細な凹凸部149Bに入り込んで広がって平滑化し(凹凸部149Bを埋め)、例えば表面凹凸が±1μm以下の平滑面149Cを形成する。硬化樹脂層149の表面の凹凸をより抑えることができる。このため、上記したS15の光量よりも小さい光量とは、例えば、S15のような半硬化した硬化樹脂層149を積層できる程度まで半硬化させる光量ではなく、硬化樹脂層149の上に吐出した硬化樹脂層149の液滴が、硬化樹脂層149の凹凸部149Bに入り込んで(混ざり合って)レベリング効果を発揮できる程度の光量である。
【0056】
また、コントローラ120は、平滑面149Cの上に導電性インクを吐出する工程と、吐出した導電性インクを硬化し、平滑面149Cの上に配線161を形成する工程(S25)を実行する。硬化樹脂層149の上に凹凸が発生すると、その硬化樹脂層149の上に配線161を3次元積層造形法で形成した場合、配線161の厚みが不均一となる、あるいは配線161の断線が発生する虞がある。即ち、接続不良が発生する。これに対し、硬化樹脂層149の上に形成した平滑面149Cに、導電性インクを吐出して硬化することで、より均一な厚みの(電気的特性の高い)配線161を硬化樹脂層の上に形成できる。
【0057】
さらに、コントローラ120は、S25に示すように、配線161の上にバンプ163を形成して電子部品165を実装しても良い。具体的には、コントローラ120は、配線161を形成した後、第3造形ユニット29を制御してディスペンサー130によって配線161の上に導電性ペーストを吐出する。コントローラ120は、配線161の部品端子167と接続する位置(バンプ163の位置)に合せて導電性ペーストを吐出する。
【0058】
次に、コントローラ120は、装着ユニット26の下方へステージ52を移動させ、装着部102により電子部品165の装着を行なう。装着部102の装着ヘッド112(図2参照)は、吸着ノズルによって電子部品165を吸着して保持し、電子部品165の部品端子167が導電性ペーストの位置となるように配置する。そして、コントローラ120は、第1造形ユニット22の焼成部74によって導電性ペーストを加熱して硬化することでバンプ163を形成する。これにより、電子部品165の部品端子167は、バンプ163を介して配線161に電気的に接続される。このようにして、本実施形態の実装基板製造装置10は、硬化樹脂層149の上面149Aの平坦化や平滑化を実行し、平滑化した平滑面149Cに電子部品165を実装した実装基板を製造することができる。
【0059】
因みに、上記実施例において、紫外線硬化樹脂144は、樹脂材料の一例である。S11の工程は、吐出工程の一例である。S13の工程は、平坦化工程の一例である。S15の工程は、硬化工程の一例である。S19の工程は、第2吐出工程の一例である。S21の工程は、第2硬化工程の一例である。S25の工程は、第3吐出工程、第3硬化工程の一例である。
【0060】
以上、上記した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
本実施形態の造形方法では、硬化樹脂層149の上に紫外線硬化樹脂144を吐出するS11の工程と、S11で吐出した紫外線硬化樹脂144の一部を、硬化樹脂層149からローラ143に転写して平坦化するS13の工程と、を含む。また、造形方法は、S13で平坦化した紫外線硬化樹脂144に対して、所定の積算光量の紫外線を当てて硬化し、硬化樹脂層149の上に新たな硬化樹脂層149を形成するS15の工程と、を含み、S11、S13、S15を繰り返し実行し、硬化樹脂層149を積層する。そして、コントローラ120は、紫外線硬化樹脂144の硬化樹脂層149に対する第1接触角θ1が、紫外線硬化樹脂144のローラ143に対する第2接触角θ2に比べて大きくなる積算光量をS15で用いる。
【0061】
これによれば、硬化樹脂層149の第1接触角θ1を、ローラ143の第2接触角θ2に比べて相対的に大きくすることで、紫外線硬化樹脂144が硬化樹脂層149からはじかれ易くなり、ローラ143へ転写し易くなる。従って、S15の積算光量を調整することで、S13でのローラ143への転写量を増大させ、ローラ143を用いて紫外線硬化樹脂144をより平坦化できる。硬化樹脂層149の上面149Aの凹凸を抑えることができる。尚、凹凸を抑えるとは、例えば、凹凸の数をより少なくする、凹凸の高低差を小さくするなどを意味している。
【0062】
尚、本開示は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
例えば、上記実施例では、本開示の樹脂材料として、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化樹脂を採用したがこれに限らない。例えば、樹脂材料は、熱により硬化する熱硬化樹脂等の種々の硬化性樹脂を採用することが可能である。この場合、熱硬化性樹脂を、赤外線ヒータ等で加熱する場合、加熱する熱源から照射する光(赤外線など)の光量を、紫外線と同様に調整することで、平坦化を図ることができる。
また、本開示における光量は、単位面積当たりの積算光量に限らず、S15の工程で紫外線硬化樹脂144に対して単位時間当たりに照射する光の量でも良い。
また、コントローラ120は、図12の製造工程を実行しなくとも良い。従って、コントローラ120は、硬化樹脂層149の上に、配線161等を形成せず、電子部品165を実装しなくとも良い。
また、本開示における3次元積層造形の方法としては、インクジェット方式や光造形法(SL:Stereo Lithography)に限らず、例えば、熱溶解積層法(FDM:Fused Deposition Molding)などの他の方法を採用できる。
【符号の説明】
【0063】
143 ローラ、144 紫外線硬化樹脂(樹脂材料)、149 硬化樹脂層、149C 平滑面、161 配線(導体)、X1 第1基準光量(基準光量)、X2 第2基準光量(基準光量)、θ1 第1接触角、θ2 第2接触角。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12