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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】ワイヤ送給装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/12 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
B23K9/12 301A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019072633
(22)【出願日】2019-04-05
(65)【公開番号】P2020168656
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】脇田 淳一
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-011673(JP,U)
【文献】特開2013-119116(JP,A)
【文献】実開昭58-004278(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第109551085(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0309061(US,A1)
【文献】実開昭58-147679(JP,U)
【文献】実開昭56-040881(JP,U)
【文献】特開平06-078191(JP,A)
【文献】カタログ「CO2/MAG/MIG溶接機 MDM-200」,日本,マイト工業株式会社,2017年11月,http://www.might-jp.com/file/product/welder/MDM-200_pamphlet.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00、9/007 - 9/013、9/04、9/14 - 10/02
H05K 5/00 - 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤリールに巻かれた溶接ワイヤを所定の送給方向に送り出すワイヤ送給機構と、上記ワイヤ送給機構を収容するボックス状のケースと、を備えたワイヤ送給装置であって、
上記ケースは、各々が金属材料からなる、底壁と、当該底壁において上記送給方向の前方側であって当該送給方向に直角である、上記底壁の幅方向の一端側および他端側から起立する第1および第2の前方支柱と、上記底壁において上記送給方向の後方側であって上記底壁の上記幅方向の一端側および他端側から起立する第1および第2の後方支柱と、上記第1および第2の前方支柱ならびに上記第1および第2の後方支柱に支持され、かつ上記底壁に対向する天井壁と、を含み、
上記ケースの上記送給方向における前方端部を囲い、樹脂材料からなる矩形環状の前方パネルと、
上記ケースの上記送給方向における後方端部を囲い、樹脂材料からなる矩形環状の後方パネルと、を更に備え、
上記ケースは、上記底壁、上記天井壁、上記第1の前方支柱および上記第1の後方支柱により囲まれた第1開口を覆う第1の側壁と、上記底壁、上記天井壁、上記第2の前方支柱および上記第2の後方支柱により囲まれた第2開口を覆う第2の側壁と、を含み、
上記天井壁の周縁部には、平面視矩形状のシール部材用溝が形成されており、
上記シール部材用溝には、環状の天井シール部材が装着されており、
上記第1および第2の側壁の上部、上記前方パネルの上部、および上記後方パネルの上部は、上記天井シール部材に圧接する、ワイヤ送給装置。
【請求項2】
上記天井壁から上記第1および第2の前方支柱を経て上記底壁に至る範囲にそれぞれ配置された第1および第2の前方シール部材と、
上記天井壁から上記第1および第2の後方支柱を経て上記底壁に至る範囲にそれぞれ配置された第1および第2の後方シール部材と、を有し、
上記第1の側壁は、上記第1の前方シール部材および上記第1の後方シール部材の全体に圧接し、
上記第2の側壁は、上記第2の前方シール部材および上記第2の後方シール部材の全体に圧接する、請求項に記載のワイヤ送給装置。
【請求項3】
上記第1および第2の側壁の少なくとも一方は、開閉可能とされている、請求項1または2に記載のワイヤ送給装置。
【請求項4】
上記ケースは、両端が上記第1および第2の前方支柱に連結され、かつ上記天井壁が固定される前方梁部と、両端が上記第1および第2の後方支柱に連結され、かつ上記天井壁が固定される後方梁部と、を含む、請求項1ないし3のいずれかに記載のワイヤ送給装置。
【請求項5】
上記ケースは、上記送給方向に見て上記底壁、上記天井壁ならびに上記第1および第2の前方支柱により囲まれた領域に配置された前方壁を含み、
上記前方壁には、溶接トーチを接続するためのトーチ接続部と、当該トーチ接続部よりも上記送給方向の前方側に突出するガード部と、が設けられている、請求項1ないし4のいずれかに記載のワイヤ送給装置。
【請求項6】
ワイヤリールに巻かれた溶接ワイヤを所定の送給方向に送り出すワイヤ送給機構と、上記ワイヤ送給機構を収容するボックス状のケースと、を備えたワイヤ送給装置であって、
上記ケースは、各々が金属材料からなる、底壁と、当該底壁において上記送給方向の前方側であって当該送給方向に直角である、上記底壁の幅方向の一端側および他端側から起立する第1および第2の前方支柱と、上記底壁において上記送給方向の後方側であって上記底壁の上記幅方向の一端側および他端側から起立する第1および第2の後方支柱と、上記第1および第2の前方支柱ならびに上記第1および第2の後方支柱に支持され、かつ上記底壁に対向する天井壁と、を含み、
上記ケースの上記送給方向における前方端部を囲い、樹脂材料からなる矩形環状の前方パネルと、
上記ケースの上記送給方向における後方端部を囲い、樹脂材料からなる矩形環状の後方パネルと、を更に備え、
上記ケースの内面において、上記ワイヤリールと対向する部位、および上記ワイヤリールに巻かれた溶接ワイヤと対向する部位には、絶縁シートが配置されている、ワイヤ送給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ送給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
消耗電極式ガスシールドアーク溶接において、溶接ロボットや走行台車を用いた自動溶接や、作業者が操作する半自動溶接の手法が採用されている。これら自動溶接等の溶接作業時においては、ワイヤ送給装置により溶接トーチに向けて溶接ワイヤが送り出され、また、溶接トーチには電力およびシールドガスが供給される。
【0003】
たとえば半自動溶接において使用されるワイヤ送給装置は、溶接作業を行う現場によっては、作業領域が比較的広い場合がある。大型構造物の内部で作業する場合、作業領域が比較的広い。このような溶接作業現場では、作業場床面は窪みやケーブル類が多く、ワイヤ送給装置に車輪を付けて運搬することは適さない。このため、溶接箇所に応じて、溶接トーチとワイヤ送給装置を作業者が手で持ち運ぶ必要がある。作業者が持ち運ぶのに適した可搬式のワイヤ送給装置が、たとえば特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に記載されたワイヤ送給装置は、ボックス状のケースと、当該ケースに収容されたワイヤ送給機構と、を備える。ケースは、たとえば鋼板(スチール製)によって構成されており、直方体形状とされている。ワイヤ送給機構は、ワイヤリールに巻かれた溶接ワイヤを、ケースの長手水平方向に沿う送給方向に送り出す。ケースの天井壁には、手で持ち運ぶための把手が設けられている。上記のようにワイヤ送給装置を持ち運ぶ必要がある溶接作業現場では、ワイヤ送給装置は、たとえば溶接トーチのケーブルを介して引きずり回され、比較的乱雑に使用される場合がある。上記従来のスチール製のボックス状ケースは、このような使用環境では衝撃により変形を来しやすい。上記従来のワイヤ送給装置は、溶接作業現場の環境によっては耐久性の面で改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-7264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、耐久性の向上を図るのに適したワイヤ送給装置を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0008】
本発明によって提供されるワイヤ送給装置は、ワイヤリールに巻かれた溶接ワイヤを所定の送給方向に送り出すワイヤ送給機構と、上記ワイヤ送給機構を収容するボックス状のケースと、を備えたワイヤ送給装置であって、上記ケースは、各々が金属材料からなり、底壁と、当該底壁において上記送給方向の前方側であって当該送給方向に直角である、上記底壁の幅方向の一端側および他端側から起立する第1および第2の前方支柱と、上記底壁において上記送給方向の後方側であって上記底壁の上記幅方向の一端側および他端側から起立する第1および第2の後方支柱と、上記第1および第2の前方支柱ならびに上記第1および第2の後方支柱に支持され、かつ上記底壁に対向する天井壁と、を含み、上記ケースの上記送給方向における前方端部を囲い、樹脂材料からなる矩形環状の前方パネルと、上記ケースの上記送給方向における後方端部を囲い、樹脂材料からなる矩形環状の後方パネルと、を更に備える。
【0009】
好ましい実施の形態においては、上記前方パネルは、上記底壁および上記天井壁それぞれの上記送給方向における前方端ならびに上記第1および第2の前方支柱を囲い、上記後方パネルは、上記底壁および上記天井壁それぞれの上記送給方向における後方端ならびに上記第1および第2の後方支柱を囲う。
【0010】
好ましい実施の形態においては、 上記ケースは、上記底壁、上記天井壁、上記第1の前方支柱および上記第1の後方支柱により囲まれた第1開口を覆う第1の側壁と、上記底壁、上記天井壁、上記第2の前方支柱および上記第2の後方支柱により囲まれた第2開口を覆う第2の側壁と、を含み、上記天井壁の周縁部には、平面視矩形状のシール部材用溝が形成されており、上記シール部材用溝には、環状の天井シール部材が装着されており、上記第1および第2の側壁の上部、上記前方パネルの上部、および上記後方パネルの上部は、上記天井シール部材に圧接する。
【0011】
好ましい実施の形態においては、上記天井壁から上記第1および第2の前方支柱を経て上記底壁に至る範囲にそれぞれ配置された第1および第2の前方シール部材と、上記天井壁から上記第1および第2の後方支柱を経て上記底壁に至る範囲にそれぞれ配置された第1および第2の後方シール部材と、を有し、上記第1の側壁は、上記第1の前方シール部材および上記第1の後方シール部材の全体に圧接し、上記第2の側壁は、上記第2の前方シール部材および上記第2の後方シール部材の全体に圧接する。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記第1および第2の側壁の少なくとも一方は、開閉可能とされている。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記ケースは、両端が上記第1および第2の前方支柱に連結され、かつ上記天井壁が固定される前方梁部と、両端が上記第1および第2の後方支柱に連結され、かつ上記天井壁が固定される後方梁部と、を含む。
【0014】
好ましい実施の形態においては、上記ケースは、上記送給方向に見て上記底壁、上記天井壁ならびに上記第1および第2の前方支柱により囲まれた領域に配置された前方壁を含み、上記前方壁には、溶接トーチを接続するためのトーチ接続部と、当該トーチ接続部よりも上記送給方向の前方側に突出するガード部と、が設けられている。
【0015】
好ましい実施の形態においては、上記ケースの内面において、上記ワイヤリールと対向する部位、および上記ワイヤリールに巻かれた溶接ワイヤと対向する部位には、絶縁シートが配置されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るワイヤ送給装置は、金属製のケースによる骨格構造の両端に、強度部材としての樹脂パネル(前方パネルおよび後方パネル)を組み込んだ筐体構造とされている。このような構成によれば、たとえばケースについては比較的薄板の鋼板等を使用することで軽量化を図りつつ、筐体全体の強度を高めることができる。また、ケースの送給方向における両端は、樹脂製で矩形環状の前方パネルおよび後方パネルによって囲われている。これにより、ワイヤ送給装置の使用時には、前方パネルおよび後方パネルが作業場床面に接触する。このような構成によれば、作業場床面上において樹脂製の前方パネルおよび後方パネルを滑らせることで、ワイヤ送給装置を引きずって容易に移動させることができる。したがって、作業領域が広い溶接作業現場での使用にも適しており、ワイヤ送給装置の耐久性の向上を図ることができる。
【0017】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るワイヤ送給装置の一例を示す斜視図である。
図2図1に示すワイヤ送給装置を背面側から見た斜視図である。
図3図1に示すワイヤ送給装置の平面図である。
図4図1に示すワイヤ送給装置を送給方向後方側の斜め下方から見た図である。
図5図1に示すワイヤ送給装置から第1および第2の側壁、前方壁、後方壁、前方パネルおよび後方パネルを取り外した状態を示す斜視図である。
図6図5からさらに内部構造を省略した斜視図である。
図7図6に示す構成を送給方向前方側から見た図である。
図8図6に示す構成を背面側から見た斜視図である。
図9図6に示す構成を送給方向後方側から見た図である。
図10】内部構造を省略した図3のX-Xに沿う要部拡大断面図である。
図11】内部構造を省略した図3のXI-XIに沿う要部拡大断面図である。
図12】内部構造を省略した図3のXII-XIIに沿う要部拡大断面図である。
図13】内部構造を省略した図3のXIII-XIIIに沿う要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0020】
図1図9は、本発明に係るワイヤ送給装置の一例を示している。本実施形態のワイヤ送給装置A1は、溶接ワイヤを図示しない溶接トーチに送り出すものである。ワイヤ送給装置A1は、ケース1、前方パネル3、後方パネル4およびワイヤ送給機構6を備えている。
【0021】
ケース1は、概略直方体のボックス状とされている。ケース1の長手水平方向が、溶接ワイヤの送給方向Xに平行である。図1図9において、溶接ワイヤのX送給方向の前方(以下、適宜「送給方向前方X1」という)と後方(以下、適宜「送給方向後方X2」という)とを、適宜区別して表す。なお、図示したワイヤ送給装置A1の説明において、通常使用する姿勢を基準として上下方向を規定する。
【0022】
図1図4に示すように、ケース1は、底壁11、天井壁12、第1の側壁13、第2の側壁14、前方壁15および後方壁17を備える。図5図9に示すように、ケース1はまた、第1の前方支柱21、第2の前方支柱22、第1の後方支柱23、第2の後方支柱24、前方梁部25および後方梁部26を備える。ケース1を構成するこれらの要素は、金属材料からなり、たとえば鋼板製である。
【0023】
底壁11は、ケース1において最も下位に位置する部分である。底壁11は、送給方向Xを長手方向とする長矩形状である。底壁11の周縁は、折れ曲がって垂れ下がる延出部111とされている。
【0024】
第1の前方支柱21および第2の前方支柱22は、底壁11の送給方向前方X1端部に配置されている。第1の前方支柱21および第2の前方支柱22は、底壁11の幅方向Y(送給方向Xに対して直角である水平方向)において離間している。第1の前方支柱21は、底壁11の幅方向Yの一方(以下、適宜「幅方向一方Y1」という)の端部から起立して上方に延びる。第2の前方支柱22は、底壁11の幅方向Yの他方(以下、適宜「幅方向他方Y2」という)の端部から起立して上方に延びる。第1の前方支柱21および第2の前方支柱22それぞれの下端は、ボルト締結などの適宜手段により底壁11に固定されている。
【0025】
第1の後方支柱23および第2の後方支柱24は、底壁11の送給方向後方X2端部に配置されている。第1の後方支柱23および第2の後方支柱24は、底壁11の幅方向Yにおいて離間している。第1の後方支柱23は、底壁11の幅方向一方Y1の端部から起立して上方に延びる。第2の後方支柱24は、底壁11の幅方向他方Y2の端部から起立して上方に延びる。第1の後方支柱23および第2の後方支柱24それぞれの下端は、ボルト締結などの適宜手段により底壁11に固定されている。
【0026】
天井壁12は、第1の前方支柱21、第2の前方支柱22、第1の後方支柱23、および第2の後方支柱24に支持されており、底壁11に対向している。本実施形態では、図7図11に示すように、第1の前方支柱21および第2の前方支柱22の上端部には、前方梁部25の両端が連結されている。また、図9図13に示すように、第1の後方支柱23および第2の後方支柱24の上端部には、後方梁部26の両端が連結されている。そして、天井壁12は、前方梁部25および後方梁部26に固定される。
【0027】
天井壁12の上面中央には、把手121が設けられている。天井壁12の周縁部には、シール部材用溝124が形成されている。シール部材用溝124は、平面視矩形状をなす。シール部材用溝124は、天井壁12の周縁各所を適宜折り曲げて形成されており、横断面コの字状である。天井壁12の周縁付近には、一対ずつのヒンジ部122,123が取り付けられている。一対のヒンジ部122は、幅方向一方Y1の端部に位置し、送給方向Xに離間して配置されている。一対のヒンジ部123は、幅方向他方Y2の端部に位置し、送給方向Xに離間して配置されている。
【0028】
第1の側壁13は、底壁11の幅方向一方Y1の端部に配置されている。第1の側壁13は、底壁11、天井壁12、第1の前方支柱21および第1の後方支柱23により囲まれた第1開口101を覆う。第1の側壁13の上部131は、一対のヒンジ部122に連結されている。第1の側壁13は、上部131において送給方向Xに沿う軸線周りに回動可能とされており、開閉可能である。第1の側壁13の下端付近には、係止部132が設けられている。係止部132は、外部からの操作によって、閉じた第1の側壁13について開き動作を阻止する状態から許容する状態へ切り替え可能である。
【0029】
第2の側壁14は、底壁11の幅方向他方Y2の端部に配置されている。第2の側壁14は、底壁11、天井壁12、第2の前方支柱22および第2の後方支柱24により囲まれた第2開口102を覆う。第2の側壁14の上部141は、一対のヒンジ部123に連結されている。第2の側壁14は、上部141において送給方向Xに沿う軸線周りに回動可能とされており、開閉可能である。第2の側壁14の下端付近には、係止部142が設けられている。係止部142は、外部からの操作によって、閉じた第2の側壁14について開き動作を阻止する状態から許容する状態へ切り替え可能である。
【0030】
図1に示すように、前方壁15は、底壁11の送給方向前方X1側に配置されている。前方壁15は、送給方向Xに見て底壁11、天井壁12、第1の前方支柱21および第2の前方支柱22により囲まれた領域に配置されている。前方壁15には、トーチ接続部161およびガード部162が設けられている。
【0031】
トーチ接続部161は、図示しない溶接トーチを接続するための部位である。トーチ接続部161は前方壁15より送給方向前方X1に突出するコネクタを含んで構成され、当該コネクタに上記溶接トーチのケーブルの端部が接続される。ガード部162は、前方壁15から送給方向前方X1に突出する。図3に示すように、ガード部162は、トーチ接続部161よりも送給方向前方X1側に突出する。本実施形態において、ガード部162は、底壁11の幅方向Yに離間して対をなして設けられている。トーチ接続部161は、底壁11の幅方向Yにおいて一対のガード部162の間に位置する。各ガード部162は、コの字状の棒材によって構成されており、当該線材の両端が前方壁15に取付けられることで環状をなす。
【0032】
図2に示すように、後方壁17は、底壁11の送給方向後方X2側に配置されている。後方壁17は、送給方向Xに見て底壁11、天井壁12、第1の後方支柱23および第2の後方支柱24により囲まれた領域に配置されている。後方壁17の適所には、貫通穴171が形成されている。この貫通穴171を介してケース1内にケーブル束C1が引き込まれている。ケーブル束C1は、たとえば電力ケーブル、ガスホース、制御ケーブル(いずれも図示せず)を内挿したケーブル集合体である。
【0033】
本実施形態において、図6図9に示すように、ケース1には、天井シール部材50、第1の前方シール部材51、第2の前方シール部材52、第1の後方シール部材53および第2の後方シール部材54が取り付けられている。図10図13に示すように、天井シール部材50は、天井壁12のシール部材用溝124に装着されている。天井シール部材50は、環状をなしており、横断面矩形状である。
【0034】
図6図7図11に示すように、第1の前方シール部材51は、天井壁12から第1の前方支柱21を経て底壁11に至る範囲に配置されている。図7図8図11に示すように、第2の前方シール部材52は、天井壁12から第2の前方支柱22を経て底壁11に至る範囲に配置されている。また、図6図8図9図13に示すように、第1の後方シール部材53および第2の後方シール部材54は、天井壁12から第1の後方支柱23および第2の後方支柱24を経て底壁11に至る範囲にそれぞれ配置されている。
【0035】
図11図13に示すように、第1の側壁13が閉じた状態において、第1の側壁13の上部131は、天井シール部材50の一部に圧接する。また、第1の側壁13が閉じた状態で、第1の側壁13は、第1の前方シール部材51および第1の後方シール部材53の全体に圧接する。
【0036】
第2の側壁14が閉じた状態において、第2の側壁14の上部141は、天井シール部材50の一部に圧接する。また、第2の側壁14が閉じた状態で、第2の側壁14は、第2の前方シール部材52および第2の後方シール部材54の全体に圧接する。
【0037】
前方パネル3は、ケース1の送給方向前方X1側に取り付けられている。前方パネル3は、樹脂材料からなる。前方パネル3は、矩形環状とされており、ケース1の送給方向前方X1端部を囲っている。前方パネル3は、前方底部31と、前方第1側部32と、前方第1側部32と、上部34と、を含む。
【0038】
前方底部31は、底壁11の送給方向前方X1端部を囲っており、底壁11よりも下方に突出している。図4図10に示すように、前方底部31は、底部基部311および複数のリブ312を有する。
【0039】
底部基部311は、底壁11から下方に離間し、幅方向Yに延びている。底部基部311は、複数の底部突出部313を有する。複数の底部突出部313は、幅方向Yにおいて間隔を隔てて配置されている。底部突出部313は、他の部位よりも下方に突出している。
【0040】
複数のリブ312は、底部基部311から上方に延出しており、底壁11に当接し得る。複数のリブ312は、幅方向Yに間隔を隔てて配置されている。各リブ312は、送給方向Xと上下方向とがなす平面に沿う板状である。ここで、「リブ312が底壁11に当接し得る」とは、リブ312が底壁11に当接する状態と、リブ312と底壁11との間に僅かな隙間を有する状態と、を含む。リブ312と底壁11との間に隙間を有する状態において、底部基部311側からの押圧荷重による弾性変形によって、リブ312が底壁11に当接し得る。底壁11に当接し得ることについては、後述の後方パネル4におけるリブ412も同様である。
【0041】
図1図3図10に示すように、前方第1側部32は、第1の前方支柱21を囲っている。前方第1側部32は、複数の第1側部突出部321を有する。複数の第1側部突出部321は、上下方向において間隔を隔てて配置されている。各第1側部突出部321は、他の部位よりも幅方向一方Y1側に突出している。また、各第1側部突出部321は、第1の側壁13よりも幅方向一方Y1側に突出している。
【0042】
図2図3図10に示すように、前方第2側部33は、第2の前方支柱22を囲っている。前方第2側部33は、複数の第2側部突出部331を有する。複数の第2側部突出部331は、上下方向において間隔を隔てて配置されている。各第2側部突出部331は、他の部位よりも幅方向他方Y2側に突出している。また、各第2側部突出部331は、第2の側壁14よりも幅方向他方Y2側に突出している。
【0043】
上部34は、天井壁12の送給方向前方X1端部を囲っており、天井壁12よりも上方に突出している。上部34は、天井シール部材50の一部を覆っている。具体的には、上部34は、天井シール部材50のうち、送給方向前方X1側において第1の側壁13および第2の側壁14により覆われていない部分に圧接している。
【0044】
後方パネル4は、ケース1の送給方向後方X2側に取り付けられている。後方パネル4は、樹脂材料からなる。後方パネル4は、矩形環状とされており、ケース1の送給方向後方X2端部を囲っている。後方パネル4は、後方底部41と、後方第1側部42と、後方第2側部43と、上部44と、を含む。
【0045】
後方底部41は、底壁11の送給方向後方X2端部を囲っており、底壁11よりも下方に突出している。図4図12に示すように、後方底部41は、底部基部411および複数のリブ412を有する。
【0046】
底部基部411は、底壁11から下方に離間し、幅方向Yに延びている。底部基部411は、複数の底部突出部413を有する。複数の底部突出部413は、幅方向Yにおいて間隔を隔てて配置されている。底部突出部413は、他の部位よりも下方に突出している。
【0047】
複数のリブ412は、底部基部411から上方に延出しており、底壁11に当接し得る。複数のリブ412は、幅方向Yに間隔を隔てて配置されている。各リブ412は、送給方向Xと上下方向とがなす平面に沿う板状である。
【0048】
図1図3図12に示すように、後方第1側部42は、第1の後方支柱23を囲っている。後方第1側部42は、複数の第1側部突出部421を有する。複数の第1側部突出部421は、上下方向において間隔を隔てて配置されている。各第1側部突出部421は、他の部位よりも幅方向一方Y1側に突出している。各第1側部突出部421は、第1の側壁13よりも幅方向一方Y1側に突出している。
【0049】
図2図3図12に示すように、後方第2側部43は、第2の後方支柱24を囲っている。後方第2側部43は、複数の第2側部突出部431を有する。複数の第2側部突出部431は、上下方向において間隔を隔てて配置されている。各第2側部突出部431は、他の部位よりも幅方向他方Y2側に突出している。各第2側部突出部431は、第2の側壁14よりも幅方向他方Y2側に突出している。
【0050】
上部44は、天井壁12の送給方向後方X2端部を囲っており、天井壁12よりも上方に突出している。上部44は、天井シール部材50の一部を覆っている。具体的には、上部44は、天井シール部材50のうち、送給方向後方X2側において第1の側壁13および第2の側壁14により覆われていない部分に圧接している。
【0051】
後方パネル4は、上記前方パネル3と同一の構成とされている。前方パネル3における前方底部31、前方第1側部32、前方第1側部32、および上部34は、後方パネル4における後方底部41、後方第2側部43、後方第1側部42、および上部44にそれぞれ対応する。
【0052】
上記構成の前方パネル3および後方パネル4をケース1に取り付ける際、送給方向Xに沿ってケース1に近接させて、当該ケース1の送給方向前方X1端部および送給方向後方X2端部に取り付ける。前方パネル3(後方パネル4)のケース1への固定は、たとえば前方パネル3(後方パネル4)の適所に形成された送給方向Xに沿う取付孔301(取付孔401)を利用してボルト締結等により行う(図10図12参照)。また、前方パネル3および後方パネル4は、適所に空隙が形成されているが、樹脂成形の際に金型を送給方向Xに開くことが可能な形状とされている。これにより、前方パネル3および後方パネル4は、アンダーカットが不要な形状であり、樹脂成形が容易である。
【0053】
図5に示したワイヤ送給機構6は、ワイヤリール70に巻かれた溶接ワイヤW1を、ケース1の長手水平方向に沿う送給方向Xに送り出す。図示は省略するが、ワイヤ送給機構6は、たとえば溶接ワイヤW1を挟む送給ローラおよび加圧ローラと、送給ローラを回転駆動させる送給モータとを備えて構成される。
【0054】
ワイヤリール70は、図6に示したリール軸71に支持される。リール軸71は、リール軸取付け部材72に固定されている。リール軸取付け部材72は、たとえば鋼板製である。リール軸取付け部材72は、リール軸71の取付部位が垂直面に沿う姿勢であり、上下両端が折り曲げられて天井壁12および底壁11に固定されている。
【0055】
本実施形態では、ワイヤリール70の径方向外方には、ワイヤリールカバー73が配置されている。ワイヤリールカバー73は、ワイヤリール70の下方の一部を除き、ワイヤリール70の外周の大半を覆う。ワイヤリールカバー73は、樹脂などの絶縁材料からなる。
【0056】
図1図5図6に示すように、本実施形態において、ケース1の内面には、絶縁シート81,82が配置されている。絶縁シート81は、底壁11の内面に配置され、ワイヤリール70の下方に位置する。絶縁シート81は、ワイヤリール70に巻かれた溶接ワイヤW1と対向している。絶縁シート82は、第1の側壁13の内面に配置される。第1の側壁13が閉じた状態において、絶縁シート82はワイヤリール70の側面と対向している。なお、図1図6においては、絶縁シート81あるいは絶縁シート82にハッチングを付している。
【0057】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0058】
ワイヤ送給装置A1は、たとえば大型構造物の内部における溶接作業に使用される。大型構造物の内部での溶接作業は、作業領域が比較的広い。作業領域が広い溶接作業現場では、ワイヤ送給装置A1を持ち運ぶ頻度が多い。また、ワイヤ送給装置A1は、たとえば溶接トーチのケーブルを介して引きずり回され、比較的乱雑に使用される場合がある。
【0059】
本実施形態において、ワイヤ送給機構6を収容するケース1は、底壁11、第1の前方支柱21、第2の前方支柱22、第1の後方支柱23、第2の後方支柱24、および天井壁12を備え、ボックス状とされている。ケース1を構成するこれら各要素は、金属材料からなる。このケース1の送給方向前方X1端部および送給方向後方X2端部は、樹脂材料からなる矩形環状の前方パネル3および後方パネル4によって囲われている。
【0060】
このように、本実施形態のワイヤ送給装置A1は、金属製のケース1による骨格構造の両端に、強度部材としての樹脂パネル(前方パネル3および後方パネル4)を組み込んだ筐体構造とされている。このような構成によれば、たとえばケース1については比較的薄板の鋼板等を使用することで軽量化を図りつつ、ケース1、前方パネル3および後方パネル4による筐体全体の強度を高めることができる。
【0061】
また、ケース1の送給方向Xにおける両端は、樹脂製で矩形環状の前方パネル3および後方パネル4によって囲われている。これにより、ワイヤ送給装置A1の使用時には、前方パネル3および後方パネル4が作業場床面に接触する。このような構成によれば、作業場床面上において樹脂製の前方パネル3および後方パネル4を滑らせることで、ワイヤ送給装置A1を引きずって容易に移動させることができる。したがって、作業領域が広い溶接作業現場での使用にも適しており、ワイヤ送給装置A1の耐久性の向上を図ることができる。
【0062】
作業場床面と接触する前方パネル3または後方パネル4が破損した場合においても、当該破損した前方パネル3あるいは後方パネル4を交換すればよい。したがって、金属材料からなるケース1の耐久性を高めることができる。
【0063】
天井壁12の周縁部には、平面視矩形状のシール部材用溝124が形成されている。このシール部材用溝124には、環状の天井シール部材50が装着されている。天井シール部材50には、第1の側壁13の上部131、第2の側壁14の上部141、前方パネル3の上部34、および後方パネル4の上部44が圧接する。このような構成によれば、天井壁12の外周縁が第1の側壁13、第2の側壁14、前方パネル3および後方パネル4の協働によって適切にシールされており、ワイヤ送給装置A1上部からの水分の侵入を防止することができる。
【0064】
本実施形態において、ワイヤ送給装置A1は、第1の前方シール部材51、第2の前方シール部材52、第1の後方シール部材53、および第2の後方シール部材54を具備する。第1の前方シール部材51は、天井壁12から第1の前方支柱21を経て底壁11に至る範囲に配置されている。第2の前方シール部材52は、天井壁12から第2の前方支柱22を経て底壁11に至る範囲に配置されている。第1の後方シール部材53および第2の後方シール部材54は、天井壁12から第1の後方支柱23および第2の後方支柱24を経て底壁11に至る範囲にそれぞれ配置されている。また、第1の側壁13は、第1の前方シール部材51および第1の後方シール部材53の全体に圧接し、第2の側壁14は、第2の前方シール部材52および第2の後方シール部材54の全体に圧接する。このような構成によれば、第1の側壁13の周縁および第2の側壁14の周縁からの水分の侵入を防止することができる。
【0065】
第1の側壁13および第2の側壁14は、開閉可能とされている。このような構成によれば、適宜、第1の側壁13あるいは第2の側壁14を開くことでワイヤ送給装置A1のメンテンナンスを容易に行うことができる。また、閉じた状態の第1の側壁13が第1の前方シール部材51および第1の後方シール部材53に圧接し、閉じた状態の第2の側壁14第2の前方シール部材52および第2の後方シール部材54に圧接する。これにより、開閉可能とされた第1の側壁13および第2の側壁14の周縁の防水性が維持される。
【0066】
ケース1は、前方梁部25および後方梁部26を含む。前方梁部25の両端は、第1の前方支柱21および第2の前方支柱22に連結されている。後方梁部26の両端は、第1の後方支柱23および第2の後方支柱24に連結される。天井壁12は、前方梁部25および前方梁部25に連結される。このような構成によれば、ケース1の強度を効率よく高めることができる。
【0067】
ケース1は、前方壁15を含む。この前方壁15には、溶接トーチを接続するためのトーチ接続部161と、ガード部162と、が設けられている。ガード部162は、トーチ接続部161よりも送給方向前方X1側に突出している。ガード部162を具備する構成によれば、トーチ接続部161が損傷するのを防止することができる。本実施形態において、ガード部162は、底壁11の幅方向Yに離間して対をなして設けられ、トーチ接続部161は、底壁11の幅方向Yにおいて一対のガード部162の間に位置する。このような構成によれば、トーチ接続部161をより適切に保護することができる。また、溶接作業時においては、一対のガード部162を掴むことによって、ワイヤ送給装置A1を引きずって移動させるのに便利である。
【0068】
本実施形態において、ケース1の内面には、絶縁シート81および絶縁シート82が配置されている。絶縁シート82はワイヤリール70と対向する部位に配置され、絶縁シート81は、ワイヤリール70に巻かれた溶接ワイヤW1と対向する部位に配置される。このような構成によれば、ケース1内の溶接ワイヤW1が金属製のケース1に直接接触することを防止することができる。したがって、金属製のケース1と当該ケース1内部の溶接ワイヤW1との絶縁性を高めることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に包摂される。
【符号の説明】
【0070】
A1:ワイヤ送給装置、W1:溶接ワイヤ、X:送給方向、Y:幅方向、1:ケース、101:第1開口、102:第2開口、11:底壁、12:天井壁、124:シール部材用溝、13:第1の側壁、131:(第1の側壁の)上部、14:第2の側壁、141:(第2の側壁の)上部、15:前方壁、161:トーチ接続部、162:ガード部、21:第1の前方支柱、22:第2の前方支柱、23:第1の後方支柱、24:第2の後方支柱、25:前方梁部、26:後方梁部、3:前方パネル、34:(前方パネルの)上部、4:後方パネル、44:(後方パネルの)上部、50:天井シール部材、51:第1の前方シール部材、52:第2の前方シール部材、53:第1の後方シール部材、54:第2の後方シール部材、6:ワイヤ送給機構、70:ワイヤリール、81,82:絶縁シート
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9
図10
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図13