(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】安全識別のための、整列された散乱体アレイによる光学的デバイス、およびそれを生成する方法
(51)【国際特許分類】
B42D 25/328 20140101AFI20230307BHJP
G03H 1/02 20060101ALI20230307BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20230307BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20230307BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20230307BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20230307BHJP
B42D 25/36 20140101ALI20230307BHJP
B81B 7/02 20060101ALI20230307BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20230307BHJP
G11B 7/0065 20060101ALI20230307BHJP
B42D 25/41 20140101ALI20230307BHJP
【FI】
B42D25/328 100
G03H1/02
G02B5/18
G02B5/02 D
B82Y20/00
B82Y40/00
B42D25/36
B81B7/02
B81C1/00
G11B7/0065
B42D25/41
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021070225
(22)【出願日】2021-04-19
【審査請求日】2021-06-14
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517200382
【氏名又は名称】カウナス ユニバーシティ オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タムレビシアス、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ジュオデナス、ミンダウガス
(72)【発明者】
【氏名】タムレビシエネ、アスタ
(72)【発明者】
【氏名】クリナビシアス、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】タムレビシアス、シギタス
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-176450(JP,A)
【文献】国際公開第2017/213242(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/137694(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/067777(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/328
G03H 1/02
G02B 5/18
G02B 5/02
B82Y 20/00
B82Y 40/00
B42D 25/36
B81B 7/02
B81C 1/00
G11B 7/0065
B42D 25/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に付加され、光学的散乱体の2次元パターンを形づくるように距離をおいて、隣接する散乱体から分離された複数の光学的散乱体と、を少なくとも備え、
前記光学的散乱体の2次元パターンは、
a)
前記散乱体の間で具体的に設計された、レイリー異常及び局地化された表面プラズモン共鳴(LSPR)を含むフォトニック相互作用であって、前記散乱体によって反射される、および/または、透過される、および/または、散乱される、および/または、吸収される光の光学的スペクトルの変更をもたらす相互作用、
b)具体的に設計された色ベースのパターンであって、いくつかの散乱体が、隣接する散乱体と比較して測定的に異なる色の光を散乱する、色ベースのパターンと、a)との、任意の割合での組み合わせ、
のうちの少なくとも1つを含む、
視覚的、分光的、および/または微視的に検証可能なセキュリティフィーチャを生成する、偽造防止手段のための光学的安全識別デバイス。
【請求項2】
前記光学的散乱体の2次元パターンが、
a)隣接する散乱体の間の変動する距離、
b)規則的に配置された複数の散乱体ユニットを有する複数の配列であって、1つより多い光学的散乱体が各散乱体ユニットに配置される、複数の配列、
のうち少なくとも1つを有する、請求項1に記載の光学的安全識別デバイス。
【請求項3】
前記光学的散乱体の2次元パターンが、電磁放射による照明のときにレイリー異常の状態を提供し、それによって、前記電磁放射のスペクトルにおいて前記光学的散乱体の前記レイリー異常と局地化された表面プラズモン共鳴(LSPR)との組み合わせによる表面格子共振(SLR)のスペクトル形状をもたらすように配置されている、請求項1または2に記載の光学的安全識別デバイス。
【請求項4】
基板と、
前記基板上に付加され、光学的散乱体の2次元パターンを形づくるように距離をおいて、隣接する散乱体から分離された複数の光学的散乱体と、を少なくとも備え、
前記光学的散乱体の2次元パターンは、
a)具体的に設計された色ベースのパターンであって、いくつかの散乱体が、隣接する散乱体と比較して測定的に異なる色の光を散乱する、色ベースのパターン、
b)前記散乱体の間で具体的に設計された、レイリー異常及び局地化された表面プラズモン共鳴(LSPR)を含むフォトニック相互作用であって、前記散乱体によって反射される、および/または、透過される、および/または、散乱される、および/または、吸収される光の光学的スペクトルの変更をもたらす相互作用、
c)これらの、任意の割合での組み合わせ、
のうちの少なくとも1つを含み、
前記光学的散乱体の2次元パターンが、遠視野において単色照明によって再構成され得る画像のホログラムを構成する、
視覚的、分光的、および/または微視的に検証可能なセキュリティフィーチャを生成する、偽造防止手段のための光学的安全識別デバイス。
【請求項5】
基板と、
前記基板上に付加され、光学的散乱体の2次元パターンを形づくるように距離をおいて、隣接する散乱体から分離された複数の光学的散乱体と、を少なくとも備え、
前記光学的散乱体の2次元パターンは、
a)具体的に設計された色ベースのパターンであって、いくつかの散乱体が、隣接する散乱体と比較して測定的に異なる色の光を散乱する、色ベースのパターン、
b)前記散乱体の間で具体的に設計された、レイリー異常及び局地化された表面プラズモン共鳴(LSPR)を含むフォトニック相互作用であって、前記散乱体によって反射される、および/または、透過される、および/または、散乱される、および/または、吸収される光の光学的スペクトルの変更をもたらす相互作用、
c)これらの、任意の割合での組み合わせ、
のうちの少なくとも1つを含み、
前記光学的散乱体の2次元パターンがホロピクセルエリアのアレイを構成し、前記ホロピクセルエリアのアレイが視覚的ホログラフィック画像を生成するように、それぞれのホロピクセルエリアは、線状に配置された複数の光学的散乱体のグループを含む、
視覚的、分光的、および/または微視的に検証可能なセキュリティフィーチャを生成する、偽造防止手段のための光学的安全識別デバイス。
【請求項6】
基板の上部に固定され、下部に前記散乱体を囲う、透明な階層物質をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の光学的安全識別デバイス。
【請求項7】
障害物のアレイを基板に提供する段階であって、前記基板は標準ナノファブリケーション過程の任意の手段によって製作される、段階と、
単分散散乱体を含むコロイド液を合成する段階と、
障害物のアレイを有する前記基板上にコロイド液を堆積する段階であって、前記散乱体の自己集合が、前記基板上で発生する、段階と、
任意に、前記基板の上部に、1または複数の透明な保護層を堆積する段階と、
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学的安全識別デバイスを生成する方法。
【請求項8】
視覚的、分光的、および/または微視的に検証可能なセキュリティフィーチャを生成する、偽造防止手段のための光学的安全識別デバイスをカスタマイズする方法であって、
前記光学的安全識別デバイスは、
基板と、
前記基板上に付加され、光学的散乱体の2次元パターンを形づくるように距離をおいて、隣接する散乱体から分離された複数の光学的散乱体と、を少なくとも備え、
前記光学的散乱体の2次元パターンは、
a)具体的に設計された色ベースのパターンであって、いくつかの散乱体が、隣接する散乱体と比較して測定的に異なる色の光を散乱する、色ベースのパターン、
b)前記散乱体の間で具体的に設計された、レイリー異常及び局地化された表面プラズモン共鳴(LSPR)を含むフォトニック相互作用であって、前記散乱体によって反射される、および/または、透過される、および/または、散乱される、および/または、吸収される光の光学的スペクトルの変更をもたらす相互作用、
c)これらの、任意の割合での組み合わせ、
のうちの少なくとも1つを含み、
前記方法は、
散乱体のアレイを有する基板を提供する段階と、
単色光放射の1または複数のレーザビームを提供する段階と、
前記基板の表面上に少なくとも1つのレーザビームを焦点決めする光機械的手段を提供する段階と、
前記基板を並進させる、または/および、前記基板の定義された配置に、前記焦点決めされたレーザスポットを位置決めする段階と、
レーザパターニングプロセスを制御する手段を提供する段階と、
エネルギーを選択的に散乱体に転移させて散乱体の局所温度を増加させて、それによって、前記散乱体によって散乱される電磁放射の中央の波長が変わるように前記散乱体の個々の選択的除去、整形、破砕、合体、またはこれらの任意の組み合わせ、のうちの任意の1つを生じさせるように、前記焦点決めされたレーザスポットにエネルギー密度を提供する段階と、
前記基板の異なる位置で複数のスポットに対して、カスタムパターンを定義するように、前記焦点決めされたレーザスポットにエネルギー密度を提供する段階を複数回繰り返す段階と、
を含む、
光学的安全識別デバイスをカスタマイズする方法。
【請求項9】
光学系を導いて焦点決めすることによって、空間的および時間的に前記表面上の単一スポットに重なって集中し、横方向に周期的に変わる強度を有する干渉パターンを形成する、2つ以上のレーザビームの形で、前記単色光放射が提供される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
周期性を有する強度を有する前記干渉パターンが、以下の、
複数の干渉する前記レーザビームを変化させて、前記干渉パターンの空間構成を制御する段階、
各レーザビームの位相および/または偏光を変化させて、前記干渉パターンの前記空間構成を制御する段階、
干渉するレーザビームの間の角度を変化させて、前記干渉パターンのピッチを制御する段階、
前記干渉パターンの向きを変化させる段階、
のうちのいずれかを使用することによって制御される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記散乱体またはそれらのグループが、パターン、色ベースのパターン、またはこれらの任意の割合での組み合わせを形成するように、
散乱体の前記アレイが散乱体またはこれらのグループを失うように、散乱体を除去する段階、
散乱体によって散乱される電磁放射の中央波長を変化させるように、散乱体又はこれらのグループを再形成する段階、
破砕された散乱体及び/又はそれらのグループによって散乱される電磁放射の中央波長を変化させるように、より小さい散乱体へと散乱体を破砕する段階、
合体された散乱体により散乱される電磁放射の中央波長を変化させるように、より大きい散乱体へと散乱体のグループを合体させる段階、
のうちの1つまたはいくつかの段階によって選択的に影響される、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
複数の干渉レーザビームによるレーザ照射が、散乱体の前記アレイの異なるエリアにその周期的干渉縞によって回折格子の形状の修正を生成するために適用され、前記異なるエリアがドットマトリックスホログラムを形づくる、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
干渉レーザビームによるレーザ照射が、散乱体の前記アレイを空間的に変化させるように使用されて、以下の、
マイクロテクスト、ナノテクスト、またはこれらの任意の組み合わせ、
具体的に設計された2次元のパターン、
画像のホログラム、
ホロピクセルエリアのアレイであって、前記ホロピクセルエリアのアレイが可視ホログラム画像を生成するように線状に配列された散乱体のグループを含む、ホロピクセルエリアのアレイ、
のいずれかを有するエリアを含む具体的に設計された散乱体のパターンを形づくる、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
散乱された電磁放射の光学的スペクトルのシグナチャを検証する段階、
暗視野照明下で光学顕微鏡によって見られる画像またはテクストを検証する段階、
白色光照明下で肉眼によってホログラムを検証する段階、
単色可視光を使用して、ホログラムが照らされたときにスクリーン上で検証する段階、
デバイスに強いられたカスタマイズに応じて、上の段階の任意の組み合わせによって検証する段階、
のうち任意の段階を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の光学的安全識別デバイスを、検証する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズモン、フォトニック、光学的デバイス、偽造防止、および安全識別の分野に関する。具体的には、識別可能なセキュリティフィーチャを生成するための、光学的にアクティブな散乱体アレイの空間的制御および修正の方法、および、対応して生成可能なフォトニックな安全識別デバイスを開示する。
【背景技術】
【0002】
安全識別デバイスは、例えば、米国特許US8840146B2およびPCT出願WO2003009225A2に開示される、例えば、容易に識別可能な視覚的セキュリティフィーチャを再生する表面レリーフのパターンを有するラベルである。ラベルは通常、生成するために複雑な装置を要求するので、この表面パターニング技術は、製品を識別し、オリジナルの製品をその偽造品から区別することを可能にする。保護のレベルは、異なる安全識別技術の統合に依存する。ホログラフィックリソグラフィの使用に由来するドットマトリックスホログラムは、EP0467601B1/US5291317に開示されるように、反射性の表面にエンボス加工可能な周期的な表面レリーフ微細構造として使用され、偽造防止のために使用される。デジタルコンピュータ生成ホログラム(CGH)はしばしば、隠された画像が、CGHを含む指定された領域から回折するレーザ光によって明らかにされるドットマトリックスホログラムと共に使用される(WO2002084411A1/US2005/0248821A1)。間隔およびフォントが変化するマイクロまたはナノテクストは、カスタムデジタル印刷技術では再生不可能なので、安全なドキュメントのために使用される(US9176473B1に開示)。セキュリティフィーチャは、蛍光またはリン光などの光学的シグナチャを有するナノ粒子(WO2009137203A2およびCA2468604に記載)、表面を強化されたラマン分光法(US20070165209A1およびUS20120062886A1に記載)、または表面プラズモン共鳴により散乱された光(LSPR)(US8759116B2に記載)を使用することによって強化され得る。US8759116B2にまた記載されるように、高品質ナノ粒子パターンは、暗視野照明光学顕微鏡法において、一様散乱された色として観察され得、スペクトルフィーチャは分光計によって記録され得る。加えて、回折ベースの粒子間結合が、一意的な新しいフィーチャを提供し得る。いわゆる表面格子共振(SLR)が、周期的構造の回折特性、すなわちレイリー異常(RA)の共振波長を(US9081150B2に開示)、ミー散乱共振とマージすることによって生成され得る(US8711356B2)。しかしながら、偽造防止におけるこの現象の使用は、今までのところ開示されていない。さらに、リソグラフィに対して、コロイド法を使用して生成された粒子アレイにおける一意的だがマイルドなランダム性は、セキュリティのレベルをさらに向上するが、これもまた今までのところ開示されていない。
【0003】
米国特許出願US2010/0050901A1において、様々な複合構造(ナノ/マイクロ粒子)が、異なる光学的、磁気的、および分光学的な識別コードを提供するタグに組み込まれる。タグのサイズおよび形状は、薬剤、自動車、および航空機の部品から装飾用品までにわたる多くのタイプの製品に合わせることができる。光学的、電気的、および磁気的特性を有する、いくつかの異なるナノ/マイクロ構造を統合することによって、タグの複製を試行する偽造者への有意義な障壁が導入される。後者は、セキュリティレベルの複雑さに応じて、異なるタイプの製品に容易に組み込まれ、様々なタイプの手持ちの読み取り器/検出器によって検出される。タグは、環境的な物質または状態を検出し得る。タグの動作原理は、ナノ粒子のランダムアレイに基づき、したがって、それはSLR光学効果を特徴づけない。さらに、カスタマイズオプションは開示されていない。
【0004】
米国特許出願US2007/0165209A1は、通貨および他のドキュメントおよびシステムにセキュリティタグおよび/またはデータを適用するための方法を提供する。タグの認証には、光学的シグナチャとして検出され、金属ナノ粒子の存在によって強化されるラマン散乱を励起するように、ラマン活性分子およびレーザの使用が要求される。本明細書に開示される発明は、ラマン散乱効果に依存しない。
【0005】
米国特許US7252699B2は、連続する、導電金属パターンが、放射線への露出によって、ナノ粒子を含む金属フィルムから形成され得ることを開示する。金属パターンは、1、2、または3次元であり得、高解像度を有し、ミクロンからナノメートルまでのオーダーのフィーチャのサイズがもたらされる。リガンドによって被覆されたナノ粒子を含み、染料、金属塩、および、マトリックスまたは選択的犠牲ドナーの一方をさらに含む組成物も、また開示される。方法は、複雑なパターンを定義することが可能であるが、これらは連続しており、したがって、SLR条件を満足するいかなる配列も有さず、したがって、SLR共振が欠如する。
【0006】
Carstensen et al.[1]は、空間光モジュレータによる超高速レーザプリンティングに基づく、プラズモンメタ表面の設計および製造のための技術を提示する。原理の証拠として、これらはこの技術を使用して、高解像度プラズモン色装飾ならびに、プラズモンメタレンズのレーザプリントを行った。高スループットホログラフィック共振レーザプリンティング手法は、カスタマイズされたメタ表面の、オンデマンドでの大量生成を可能にする。カスタマイズのために使用される、配置されたナノ粒子アレイのテンプレートは、リソグラフィを使用して作られる。この方法は、コロイド法によって生成される小さな欠陥によってタグの一意性を提供することが可能ではない。別々の粒子の品質、およびそれらの選択された配列は、表されるSLRピークを提供しない。さらに、この方法は、散乱体の修正のみを開示し、それらの完全な除去を開示しない。
【0007】
米国特許出願第US2011/0027499A1は、本発明に最も関連する文献であり、US2011/0027499A1は、ターゲット基板を有するプリント板を接触するステップであって、プリント板がターゲット基板に接触しているステップと、エネルギーが選択的に粒子に転移するように、レーザ光の強いフラッシュでプリント板上のナノ粒子を照射するか、またはマイクロ波放射にナノ粒子をさらすステップと、ターゲット基板の粒子の相互作用の増加を生じさせ、強い接合を生成し、プリント板から粒子を除去する粒子の局所温度を増加させるステップと、ターゲット基板からプリント板を剥離するステップと、を含む、ナノ粒子プリンティングの方法を開示する。この方法は、ナノ粒子が転移することのみを開示し、それの使用、すなわち、カスタマイズされたパターンに従って除去された粒子を伴うプリント板の使用も、転写された粒子パターンの使用も開示していない。さらに、ナノ粒子およびそれらの光学的結合(SLR)のいかなる修正も開示していない。
【0008】
上で説明されたものの主要な難点は、表面格子共振(SLR)現象が無いこと、散乱体修正オプションの欠如、および、SLR条件を維持しながらデバイスのセキュリティを向上し得るマイルドなランダム性の欠如である。光学的散乱体が表面にランダムに分散されるか、または散乱特性がSLR条件を満たさないか、のいずれかである。これらが所望の光学的シグナチャを保証するように配置されるときでさえ、製造方法は、高価で要求が厳しいクリーンルームリソグラフィプロセスを要求する。さらに、これらのプロセスは、多結晶フィルムから作られるので、理想的でない散乱体をもたらす。銀の前駆体を含む界面のレーザ照射は、カスタムパターンを可能にするが、散乱体の十分な整列を保証しない。加えて、理想的に配置された散乱体アレイのカスタマイズは、コロイド法によって生成される明白なフィーチャを提供することが可能ではない。これらのフィーチャは、それぞれのタグを一意的にし、偽造をより一層複雑にし、すなわち、トラッピングサイト内の位置的不確実性、失われる散乱体、二重散乱体堆積、三重体、四重体などを生じさせる。先行技術文献に開示された従来のドットマトリックスホログラムおよびコンピュータ生成ホログラム(CGH)は、光の波長より大きい構造にのみ基づく。その一方で、サブ波長散乱体アレイの使用は、それらの配列が表面レリーフの代わりにセキュリティフィーチャに関する情報を搬送し、良く確立されたセキュリティフィーチャに妥協することのない新しいレベルのセキュリティを導入するであろう。さらに開示された安全識別デバイスによって実装される上記の利点は、これらを偽造不可能にし、したがって、これらを先行技術より進歩させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、フォトニックな安全識別および偽造防止デバイス、タグに関し、それはカスタムな空間的制御および光学的にアクティブな散乱体アレイの修正を活用する。前記アレイは、それらの再現不可能性が同時に容易に検証可能であるので、先行技術より進歩したセキュリティフィーチャを生成するように配置される。新しさは、カスタムタグのベース、またはテンプレートとして散乱体アレイを使用することにおいて考慮され、および、より容易な検証、追加のセキュリティフィーチャ、および視覚的アピール、散乱体のパターンにおけるランダム性が小さいことによる再現不可能性、および各タグを一意的にすることを提供するように、前記散乱体の光学的特性の選択的除去および/または修正を介して実行されるカスタマイズにおいて考慮される。
【0010】
(i)基板の生成、(ii)プラズモンナノ粒子コロイドの合成、(iii)前記基板上の散乱体の自己集合を使用して、光学的にアクティブな2次元セキュリティタグテンプレートを製作する方法、(iv)超短レーザパルスを使用して、光学的特性の選択的除去または修正によってカスタムセキュリティフィーチャを製作する方法、を備える、本発明の実施形態を生成する方法が開示される。選択される修正パターンおよびそのサイズに応じて、セキュリティフィーチャは、明視野光学顕微鏡法を使用して、暗視野光学顕微鏡法を使用して、肉眼によって、UV対NIR分光測光法を使用して、または、単色光照明を使用するスクリーン上で、検証可能である。
【0011】
技術的課題。進歩した偽造技術は、偽造防止方法が1ステップ先にあることを要求する。平らな表面上に強いられたホログラフィック、CGH、マイクロおよびナノテクストが、広く使用され、それらの生成装置は容易に利用可能である。カスタマイズされた規則的散乱体アレイに基づく偽造防止セキュリティタグは、偽造に対する高いレベルの保護を保証するが、それは高解像度リソグラフィを要求する方法である。定義された配置に散乱体をパターニングすることは、長い一連の露光またはマスクのセットのいずれかを要求する。電子ビームリソグラフィ、深紫外線リソグラフィなどを、真空堆積方法と組み合わせることで、物質を高精度でパターニングすることが可能であるが、これらはクリーンルーム設備を要求する。リソグラフィ手法にはまた、成長、金属堆積、および他のプロセスが後に続く。さらに、Shikai Denga et al.[2]によれば、もたらされる金属散乱体は、通常多結晶であり、光学的品質を向上させるように、高温下での熱による後処理が要求される。
【0012】
解決方法。本明細書に提案される解決方法は、カスタムタグのベースとして光学的散乱体アレイベースのテンプレートを使用することに依存し、アレイはマイルドなランダム性で整列され、カスタマイズは、前記光学的散乱体の選択的除去または修正によって実行される。光学的散乱体は、湿式化学的方法を使用して効率的に合成され得る。利点は、従来の実験室において大規模に実行され得ることである。Andrea Tao et al.[3]およびNeus G. Bastus et al.[4]によれば、生成された物質の結晶の品質はしばしば良好であり、単分散性が維持される。次に、良好に定義された散乱体のアレイが、テンプレートベースの自己集合、すなわち、予め定められた条件下でパターニングされた基板上でコロイドを乾燥することなどによる、コロイド堆積方法によって形成され得る。米国特許US7520951B1に言及されるように、サイズが合致した障害物と共にゆっくり移動する堆積テンプレート上でのコロイド散乱体液の堆積は、位置決めの高い正確性および、ほぼエラーがない堆積を保証する。自然に発生する堆積欠陥のみが、デバイスのセキュリティに追加され、すべてのタグが一意的で再生不可能なものとされる。追加のセキュリティフィーチャとして、本明細書に開示の安全識別デバイスは、回折性粒子間結合による表面格子共振を生成し得る。SLRを特徴づけるカスタマイズされたサンプルを作ること、およびその信頼性を検証することは容易であるが、そのような要素の直接のコピー、すなわち、偽造物を製造することは、技術的に複雑なタスクであり、したがって、それは産業的に応用可能な偽造防止セキュリティタグとして使用され得る。
【0013】
一意的な散乱体アレイを生成して、その後、レーザアシストされた後処理を使用して、後に追加のセキュリティフィーチャおよび視覚的アピールを追加してこれらをカスタマイズする方法が提案される。そして、この複雑にカスタマイズされたフォトニックデバイスは、安全識別および偽造防止手段として使用され得る。デバイスはカスタマイズされた空間制御、および光学的にアクティブな散乱体アレイの修正を活用し、容易に識別可能なセキュリティフィーチャを生成する。
【0014】
(i)パターニングされた基板(堆積テンプレート)の製作、
(ii)プラズモンAg粒子コロイド液の合成、
(iii)前記基板上の前記散乱体の自己集合を使用して、光学的にアクティブな2次元セキュリティタグテンプレートを生成する方法、
(iv)超短レーザパルスを使用して光学的特性の選択的除去または修正によって前記セキュリティタグテンプレートからカスタマイズされた偽造防止タグを生成する方法、を備える、
それの実施形態を生成する方法が開示される。
【0015】
選択された修正パターンおよびそのサイズに応じて、カスタマイズ効果は、暗視野光学顕微鏡法を使用して、肉眼によって、または、単色光照明を使用したスクリーン上で見える。
【0016】
効果。セキュリティタグは、偽造しにくいという内在する光学効果、すなわち、暗視野照明下で観察可能な鮮明な色、および、透過スペクトルにおける特徴的な狭いディップ(dip)を含む。レーザ照射は、マイクロおよびナノサイズのフィーチャが、散乱体の選択的除去または修正によって強いられる、散乱体アレイのカスタマイズを可能にする。この方法は、新しくカスタマイズされた偽造防止タグそれぞれのために、クリーンルームベースのリソグラフィ技術を繰り返し使用することを回避する。ジェネリックな光学的散乱体アレイは、カスタマイズのために、および、カスタマイズされたセキュリティタグとしての使用のために、出発点としての、すなわち、セキュリティタグテンプレートとしての役割を果たす。湿式で化学合成されたナノ粒子は、高い単分散性であり、単結晶である。このことは、いかなる熱の前処理または後処理の必要性もなく、要求された光学的特性を保証する。回折が限定されたスポットサイズを使用する、レーザ照射ベースのカスタマイズは、セキュリティタグ用途によって要求される十分に高いパターニング解像度を可能にし、または、干渉パターン照射が使用される場合のサブ波長解像度さえも可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図は、実施可能形態の参考として提供され、発明の範囲を限定する意図はない。本明細書に示される図およびグラフのいずれも、発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、単に実施可能形態の例として解釈されるべきである。
【
図1】本発明による、カスタマイズされた規則的散乱体アレイを示す。
【
図2】一意的な欠陥を有する長方形パターンに配置された規則的な散乱体アレイを示す。
【0018】
【
図3】セキュリティタグのための、パターニングされた基板(堆積テンプレートとしてもまた知られる)を生成するプロセスを示す。
【0019】
【
図4】ガラスカバースライドによって制限されたコロイド液の液滴が、サイズが合致した障害物と共に温度制御された基板上をゆっくり移動する、セキュリティタグテンプレートを生成するための堆積方法を示す。水平な矢印は、並進の方向を示す。
【
図5】散乱体アレイの暗視野光学顕微鏡写真を示す。 スケールバー20μm。
【
図6】散乱体アレイのスキャンされた電子顕微鏡マイクログラフを示す。 スケールバー5μm。
【0020】
【
図7】特徴づけられた広いLSPRディップ、RAの位置、および狭いSLRディップを含む、散乱体アレイの可視の透過スペクトルを示す。
【0021】
【
図8】単色画像によって、カスタマイズされた散乱体アレイの暗視野光学顕微鏡写真を示す。 スケールバー20μm。
【0022】
【
図9】色ベースのカスタマイズによる、散乱体アレイの暗視野光学顕微鏡写真を示し、異なるグレースケール値は異なる色を表す。
【0023】
【
図10】文字「P」の画像から生成されたコンピュータ生成ホログラムと、コンピュータ生成ホログラムによってレーザカスタマイズされた散乱体アレイの暗視野光学顕微鏡写真(スケールバー20μm)と、グリーンレーザポインタからの照明を使用してスクリーン上でカスタマイズされた散乱体アレイからの、レーザで強いられたCGHの復元像(スケールバー100mm)とを示す。
【0024】
【
図11】2つのレーザビームの干渉縞による照射後の、カスタマイズされた散乱体アレイの暗視野光学顕微鏡写真を示す。ドットマトリックスホログラムを形成する複数のホロピクセル(スケールバー20μm)と、文字「A」の周囲の背景が観察者に向けた回折光である異なる照明条件下での、同一のドットマトリックスホログラム回折のカムコーダ画像と、文字「A」が観察者に向けた回折光であるときのドットマトリックスホログラム回折のカムコーダ画像(スケールバー2mm)とが、見られる。
【
図12】保護透明カバーを有する、カスタマイズされた散乱体パターンを示す。
【0025】
【
図13】散乱体アレイのカスタマイズのために使用される、ほぼ回折に限定して焦点づけされたレーザビーム照射を示す。 矢印は、試料またはビームのいずれかをスキャンするためのオプションを示す。
【0026】
【
図14】ホログラフィックリソグラフィを利用して、散乱体を含むテンプレート上でサブ波長の規則的なパターンをパターニングするスキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
セキュリティタグは、少なくとも2つの不可欠な特徴、基板(201)と、前記基板に付加される光学的散乱体(202)とを含む。先行技術より進歩した、追加されたレベルのセキュリティを有する識別および偽造防止保護のタスクが、前記光学的散乱体の一意的な配列によって、および、互いに関するそれらの特性の完全な除去または修正の可能性によって、実現する。このデバイスによる効果的な生成は、偽造が不可能であり、デバイスに含まれるフィーチャに応じて、視覚的に、顕微鏡法によって、分光法によって、またはこれらの任意の組み合わせによってのいずれかで、検証可能である。
【0028】
本発明の実施可能形態の1つにおいて、基板はパターンにおいて作成された技術的な表面フィーチャ、例えば、テンプレートでアシストされた粒子堆積方法には不可欠な識別ピット(203)を含むことがある。すべてのタグの初期の一意性は、次に、自己集合技術を使用することによって実現され得、光学的散乱体は、基板上で物理的パターンに厳密に従うように、しかし、いくらかのランダム性が、いくつかの散乱体が予め定められた位置に落ちずにそれらが空のままにされること(204)によって維持されるようにされる。加えて、穴は粒子の横方向寸法より大きいことがあり、それは、すべてのピット(202、601)にわずかな位置のランダム性を導入する。さらに、トラップが十分に大きい(または、散乱体が十分に小さい)場合、いくつかのピットは1つより多い散乱体(205、601)をランダムに取得することがある。
【0029】
一実施形態では、表面フィーチャを有する基板が、標準ナノファブリケーション過程、例えば、電子ビームリソグラフィ、ドライエッチング、およびソフトリソグラフィによって提供されることがある。標準的な技術は、シリコンウェハ(302)のクリーニング、電子層/感光性/ナノインプリントレジスト層(301)のスピンコーティング、製造者の指示による前処理、および、光学的散乱体が最終的に後に続く、パターンの露光(303)および現像(304)を含む。この場合、基板はレジスト層(304)であり、表面フィーチャは、もたらされる現像された構造である。
【0030】
異なる実施形態において、パターンは異なる物質、例えばシリコンに、様々な異なるドライエッチングレシピを使用した、ウェハの追加のエッチング段階(305)によって転移され得る。ネガティブトーンレジストおよびeビームリソグラフィを使用してシリコンに効率的に穴を生成するために、硬質のマスクを生成するための、薄い金属層、例えばAlによる追加の離昇段階が、要求される。ドット露光がポジティブトーンレジストに使用される場合、ポリママスク自身がエッチングマスクとして使用され得る。本明細書で論じられる実施形態において、不動態ガス(C4F8)による、イオンで補助されたSF6プラズマエッチング、または-120℃の極低温エッチングおよびSF6/O2プラズマが使用される。この場合、基板はパターニングされたシリコンウェハ(306)である。
【0031】
別の実施形態において、基板は、上で記載された段階によって製作されたシリコン(または他の物質)マスタモールドを複製することによって、ソフトリソグラフィを使用して作られるポリマ基板を含み得る。製作されたマスタースタンプ(306)は、接着防止コーティングとしてFDTSの自己集合した単層で好ましくは被覆されるべきである。シリコンマスターの反転レリーフのレプリカ(307)が、ソフトリソグラフィによってポリジメチルシロキサンにおいて作られる。プレポリマと硬化剤との10:1の混合物は、製造者(Sylgard)の指示ごとに混合され、真空チャンバにおいて脱ガスされる。混合物が、シリコンモールドに注がれて、カバースリップが上部に配置されることが、混合物が平坦に広がることを助け、その後にレプリカのための硬い基板を提供する。スタックは、製造者の指示に記載の温度および期間で硬化される。パターニングされたレプリカモールド(308)は、次に、カバースリップと共に剥離することによって分離され、基板としての役割を果たす。
【0032】
本発明の実施形態における光学的散乱体のタスクは、波長にいくらかの依存性を有する光を散乱させること、すなわち、色を生成することである。散乱の特性は、散乱体のサイズおよび形状、ならびに散乱(202)物質および周囲(201)物質の誘電機能に依存し、金属および誘電体物質の両方が使用され得る。一実施形態では、前記散乱体は、Agで作られたプラズモンナノ粒子であるであろう。可視または/およびNIR(近赤外線)波長範囲のLSPRを有する銀ナノ粒子は、高い単分散性を目標とする湿式化学的方法を使用して合成され得る。単分散球状銀ナノ粒子が、Neus G.Bastus et al.[4]によるような、種成長手法を使用して合成され得る。前駆体の濃度および割合を変化させると、少ない直径の偏差で、20-270nmのナノ粒子を合成することを可能にする。代替的に、異なる形状の粒子が、Andrea Tao et al.[3]によるような、ポリオール合成経路を使用して合成され得る。
【0033】
本発明の実施形態において、光学的散乱体は、毛管力に支援された粒子アセンブリ(
図4)などの自己集合タイプの方法によって、いくつかの、または全ての記載された基板フィーチャに光学的散乱体を付加することによって、定義されたパターンに従うようにされ得る。コロイド液の液滴(402)が、安定したガラススライド(401)とパターニングされた基板(404)との間で制限される。基板は予め定められた温度に保たれ(406)、示された方向(405)に向けて予め定められた速さで移動される。ナノ粒子(403)のオーダーは定義されたパターンに合致するが、一意的なランダム性が、堆積欠陥(601)(例えば、満たされないピット(204)、ピットにつき複数の粒子(205))、および、位置的/方向的なランダム性(すなわち、粒子が穴より小さい場合)によって維持される。穴の深さは、光学的散乱体のサイズに関連し、単一の粒子が入ったピットが絶対多数を維持するように、同一の桁であるべきである。典型的な堆積状態は、0.1-10μm/sの並進速度、および大気中の露点より10℃上である。典型的には、最も高い安定した濃度が使用され得る。この例に記載の製作された実施形態は、任意のアセンブリ収率を有し、したがって、偽造防止機構として既に使用され得る一意的なナノ粒子パターン(501、601)を特徴とする。なぜなら、2つの堆積が同一であることはなく、指定された検証領域は顕微鏡法によって検証され得るからである。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態において、工業的処理によって既に配置または生成された散乱体の基板シートは、ユーザがレーザ処理によってカスタマイズを行い、安全識別および偽造防止タグを生成するように利用可能となり得る。
【0035】
本発明の1つより多くの実施形態において、正方形格子、長方形格子、三角形格子、または任意の他の2次元格子などの、ユニットセルおよびいくらかの周期性によって定義され得る規則的なパターン(501、601)を形づくるように、隣接する光学的散乱体から分離された光学的散乱体を含む。これは、ホログラフィックリソグラフィなどのパラレルなリソグラフィ手段によって、前記表面フィーチャを有する基板(201)を生成する道を開く。
【0036】
加えて、パターンにおける規則性の導入は、レイリー異常(RA)と呼ばれる条件を可能にする。それは、光が周期的なフィーチャの平面内で回折する条件であり、この条件を満たす光のエネルギーが、以下によって計算される。
【0037】
方程式(1)
【数1】
ここで、EはRAのエネルギーであり、
【数2】
は換算プランク定数であり、
cは真空中の光の速さであり、
nはナノ粒子が埋め込まれる媒質の屈折率であり、
k
//は波数ベクトルの平面方向への射影(垂直の入射では0に等しい)であり、
Gはグレーティングベクトルである。 光学的散乱体の散乱スペクトルは、このRAエネルギーと重なり、表面格子共振(SLR)と呼ばれる現象を生成し、それは狭い消滅ピークを特徴とし、したがって、表面格子共振を有するセキュリティタグは、UV対NIR分光測光法によって検証可能な追加のセキュリティフィーチャを有するであろう。1より多い実施形態において、500nmを中央として、FWHMが100nmであり、600nmでRAが重なる、プラズモンナノ粒子の局地化された表面プラズモン共鳴(LSPR)が、SLR(701)を生成し得る。この種類のセキュリティフィーチャを設計するためには、設計者は、基板パターンを設計する(および、結果としてのRAエネルギーを定義する)前に散乱シグナチャを知っている必要があるか、またはその逆かのいずれかである。光学的散乱特性は、パターンを生成する前に、すなわち、モデリングおよび/またはFEMなどの解析的な解決方法、および、光学的散乱体に関するミー解決方法の使用によって、または、合成後に実験的に、標準UV対NIR分光測光法技術を使用して、解析的に取得され得る。
【0038】
パターンのタイプに拘わらず、光学的散乱体はさらに、選択的におよび意図的に散乱シグナチャを変更することによって、または、これらのいくつかを除去することによって、修正されることができ、追加の、カスタムの、一意的な、および検証可能なフィーチャを生成する。修正はバイナリであり、すなわち、散乱体が、定義された位置で基板に付加されるか、または付加されないかのいずれかであり、または、修正は連続であり、すなわち、散乱体は隣接する散乱体と比較して異なる散乱シグナチャを有し得る。
【0039】
本発明の1つより多くの実施形態において、光学的散乱体は、全体としてバイナリ(801)または連続して変わる色パターン(902)が、より大きくて視覚的に識別可能な、または微視的に識別可能な画像および/またはテクスト(102、103)を構成するように、カスタムな方法で配置され得る。ナノ粒子が選択的に除去されているので、木のバイナリイメージの例は、光学顕微鏡によって観察可能である(801)。ナノ粒子が選択的に再形成されているので、色ベースの修正の例は、光学顕微鏡によって観察可能である(902)。カスタマイズは、異なるサイズおよび/またはフォント文字、線形および/またはマトリックスバーコード、数学的に定義された曲線、および他の画像的な情報を含み得る。
【0040】
加えて、バイナリパターン(1003)は、画像(1002)のコンピュータ生成ホログラム(104、1001)を構成し得る。本発明のこの実施形態において、偽造防止タグの有効性は、タグに単色光を照射し、100以上のサイクルを使用した反復フーリエ変換アルゴリズムによってエンコードされた遠視野画像(1004)を観察することによって検証され得る。
【0041】
さらに、バイナリパターンは、周期的な線に配置され、定義された領域に制限された光学的散乱体、ホロピクセル(105、1101)を構成する。それらの線の異なる方向および周期性によって、そのような領域の大きなアレイは、ドットマトリックスホログラム(1102)を生成し得る。白色光による照明で、エンコードされた画像によるホログラフィックレインボー効果(1103)が観察される。
【0042】
最終的に、本発明の実施形態は、光学的散乱体のパターン(1202)によって生成される色を維持している間にデバイスのロバストネスを増加させる、透明ポリマPDMSなどの透明な物質(1201)の追加の層を有することがある。1つの例において、記載されたPDMSプレポリマミックスが、初期状態の、またはカスタマイズされた光学的散乱体(1202)を有する基板(1203)上に直接注がれ、硬化するように放置される。本明細書に開示されたデバイスのタイプまたは複雑さに拘わらず、このプロセスは、製作の最後の段階であるべきである。
【0043】
バイナリ(102、104、105、801、1003、1101)または色ベース(103、902)のパターンを生成する方法の実施形態は、基板(1303)上の散乱体アレイ(1302)に焦点決め(1301)された、安定してほぼ回折限定のレーザビームの焦点に対する、モータ動作する3軸ステージによる、高い数値的開口目標および正確な並進によるフェムト秒のレーザ照射によって実行され得る。代替的に、レーザビームは、例えば、検流計スキャナ、および/またはレーザヘッド並進を用いて、基板上の散乱体アレイをスキャンしてもよい。レーザ修正閾値は、光学的散乱体の消失断面積ピークに近い波長を選択することによって減少し、したがって、相互作用の可能性が向上する。超短パルスが使用されるとき、多光子吸収もまた可能である。
【0044】
フリースタンディング光学的散乱体と光との相互作用は、エネルギー密度と、近くにある光学的散乱体の数とに応じて、いくらかの効果を誘発する。第1に、散乱体は再び溶けて、初期の形を失い、回転楕円体に移行し得る。第2に、散乱体は、より大きい構造を形づくるように組み合わさり得、またはより小さい構造へと砕け得る。これらの2つの効果は、色ベースのパターニング(902)に寄与する。最終的に、これらは完全に基板から除去され得る。バイナリパターン(801)を形成するとき、後者は役に立つ。我々の実施形態において、15mJ/cm2の範囲の流束量が、270fsのパルス長のYb:KGWレーザの第2高調波(515nm)による照射によって提供される。サイズに関連する光散乱特性の局所的変化は、暗視野光学顕微鏡法を使用して見ることができる。単一焦点レーザビーム(1301)を有するバイナリまたは色ベースのパターンによるカスタマイズは、焦点づけられたレーザビームのスポットサイズによって限定される。スポットサイズが光学的散乱体の粒子間距離より大きい場合、1つより多い散乱体が影響を受け得る。
【0045】
コンピュータ生成ホログラム(1001)が、反復フーリエ変換アルゴリズムを使用して計算され得、バイナリパターン(1003)として散乱体アレイ上に強いられ得る。パターンは顕微鏡を使用して見えるが、それは数学的2Dフーリエ変換によってか、レーザで照射される場合にのみ、理解可能である。エンコードされた画像は次に、肉眼でスクリーン上(1004)で見える。
【0046】
2またはそれ以上の干渉コヒーレントレーザビーム(1402)が、回折に限定されたスポットサイズ(1301)の代わりに、周期的干渉縞(1401)を形づくるように使用され得る。2つのビームが使用される場合、グレーティングのピッチは方程式(2)
【数3】
によって計算され得、ここで、Λはグレーティングのピッチであり、λは干渉光の波長であり、θは2つの干渉ビームの間の角度である。2より多いレーザビームが干渉していて、ビームの位相差および/または偏光がそれぞれ、追加の光路およびウェーブプレートを導入することによって制御された方式で変動する場合、より複雑な2次元干渉パターンが利用可能である。基板(1404)上の散乱体アレイ(1403)を照射することが、周期的に繰り返される高強度領域(干渉縞、1401)と共に、散乱の選択的除去をもたらす。通常、長方形または長円形の領域が、ビーム強度分散に応じて影響を受ける(1101)。 XY平面における干渉縞(1401)の周期性および角度を調整することにより、厳密に間隔がとられたホロピクセルのアレイを構築し、ドットマトリックスホログラムを形づくることができる(105、1102)。カスタマイズされた光学的散乱体アレイによって形成されたドットマトリックスホログラムは、肉眼によって見られ得るように設計された方式(1103)で、光を回折する。
非特許文献
NON-PATENT LITERATURE
【0047】
1 Marcus S. Carstensen, Xiaolong Zhu, Oseze Esther Iyore, N. Asger Mortensen, Uriel Levy, Anders Kristensen // Holographic Resonant Laser Printing of Metasurfaces Using Plasmonic Template // ACS Photonics 2018, 5, 1665-1670 https://doi.org/10.1021/acsphotonics.7b01358
【0048】
2 Shikai Denga, Ran Li, Jeong-Eun Park, Jun Guan, Priscilla Choo, Jingtian Hu, Paul J. M. Smeets, Teri W. Odom // Ultranarrow plasmon resonances from annealed nanoparticle lattices. PNAS vol. 117 no. 38 23380-23384 https://doi.org/10.1073/pnas.2008818117.
【0049】
3 Andrea Tao, Prasert Sinsermsuksakul, and Peidong Yang, Polyhedral Silver Nanocrystals with Distinct Scattering Signatures. Angew. Chem. Int . Ed. 2006, 45, 4597-4601 https://doi.org/10.1002/anie.200601277.
【0050】
4 Neus G. Bastus, Florind Merkoci, Jordi Piella, and Victor Puntes // Synthesis of Highly Monodisperse Citrate-Stabilized Silver Nanoparticles of up to 200 nm: Kinetic Control and Catalytic Properties // Chem. Mater. 2014, 26, 2836-2846. https://doi.org/10.1021/cm500316k