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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20230307BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
B60C15/06 C
B60C15/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018238747
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020100226
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】島 聡史
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-025425(JP,A)
【文献】特開2006-168637(JP,A)
【文献】特開2003-312213(JP,A)
【文献】特開2006-143034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビード部に埋設されたビードコアと、前記ビードコアのタイヤ半径方向外側に設けられたビードフィラーと、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部に至り前記ビードコアで折り返されたカーカスプライと、トレッド部の外表面を形成するトレッドゴムと、サイドウォール部の外表面を形成するサイドウォールゴムと、ビード部の外表面を形成するリムストリップゴムと、を備える空気入りタイヤであって、
前記トレッドゴムのタイヤ軸方向端のタイヤ半径方向位置とタイヤ最大幅位置との間をタイヤ半径方向に二等分する位置と、前記トレッドゴムのタイヤ軸方向端のタイヤ半径方向位置との間を、バットレス部として、
前記カーカスプライの折返し部の上端は、前記ビードフィラーの上端よりもタイヤ半径方向外側であって前記バットレス部よりもタイヤ半径方向内側に配置され、
前記リムストリップゴムは、前記カーカスプライと前記サイドウォールゴムとの間でタイヤ半径方向外側に延在し、前記リムストリップゴムの上端が、前記バットレス部の下端よりもタイヤ半径方向外側に配置され
前記リムストリップゴムの硬度が前記サイドウォールゴムの硬度よりも高く、
前記バットレス部での前記リムストリップゴムの最大厚みが、前記タイヤ最大幅位置での前記リムストリップゴムの厚みよりも大きく、
前記リムストリップゴムは、前記タイヤ最大幅位置と前記バットレス部の下端との間においてタイヤ半径方向外側に向かって厚みが漸増する漸増部を有する、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記カーカスプライの折返し部の上端が、前記タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向外側に配置された、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記リムストリップゴムの上端部が前記トレッドゴムと重なりを持って終端している、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気入りタイヤは、サイドウォール部におけるタイヤ半径方向外側の領域、いわゆるバットレス部において局部的な撓みを生じやすく、操縦安定性が低下する要因となる。そこで、ビード部で折り返されるカーカスプライの折返し端を、サイドウォール部を経て、トレッド部に埋設されたベルト層に達するまで延在させることで、操縦安定性を向上させることが知られている。また、空気入りタイヤの剛性を高めるために、ビード部に配される高硬度のリムストリップを、サイドウォール部まで延在させることが知られている。このような構造を持つ空気入りタイヤが、例えば特許文献1~3に開示されている。
【0003】
しかしながら、カーカスプライの折返し端をベルト層まで延在させると、タイヤのユニフォミティ性能の1つであるRFV(ラジアルフォースバリエーション)が損なわれるという問題がある。これは次の理由による。カーカスプライは、コード配列体をゴム被覆してなるシートをタイヤ周方向に巻き付けて端部同士を接合することにより形成されており、その接合部をタイヤ周方向の1箇所に有する。そのため、トレッド部には、カーカスプライの本体部の接合部が周上の1箇所にもともと存在しているが、折返し端をベルト層まで延在させると、折返し部の接合部がトレッド部において本体部の接合部に重ね合わせられることになる。このことから、RFVは更に悪化する傾向となる。
【0004】
一方、特許文献4には、リムストリップゴムをバットレス部まで延在させるとともに、カーカスプライの折返し端をリムストリップゴムの上端に近接させて設けることが開示されている。しかしながら、カーカスプライの折返し端とリムストリップゴムの上端を近接させて設けると、歪みが集中して耐久性が損なわれるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-103931号公報
【文献】特開2018-103956号公報
【文献】特開2018-108751号公報
【文献】特開2018-108749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、操縦安定性とユニフォミティ性能を両立することができ、また耐久性を改善することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤは、ビード部に埋設されたビードコアと、前記ビードコアのタイヤ半径方向外側に設けられたビードフィラーと、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部に至り前記ビードコアで折り返されたカーカスプライと、トレッド部の外表面を形成するトレッドゴムと、サイドウォール部の外表面を形成するサイドウォールゴムと、ビード部の外表面を形成するリムストリップゴムと、を備える。ここで、前記トレッドゴムのタイヤ軸方向端のタイヤ半径方向位置とタイヤ最大幅位置との間をタイヤ半径方向に二等分する位置と、前記トレッドゴムのタイヤ軸方向端のタイヤ半径方向位置との間を、バットレス部とする。前記カーカスプライの折返し部の上端は、前記ビードフィラーの上端よりもタイヤ半径方向外側であって前記バットレス部よりもタイヤ半径方向内側に配置されている。前記リムストリップゴムは、前記カーカスプライと前記サイドウォールゴムとの間でタイヤ半径方向外側に延在し、前記リムストリップゴムの上端が、前記バットレス部の下端よりもタイヤ半径方向外側に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
上記実施形態に係る空気入りタイヤであると、操縦安定性とユニフォミティ性能を両立することができ、また耐久性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る空気入りタイヤの半断面図
図2図1の要部拡大断面図
図3】第2実施形態に係る空気入りタイヤの要部断面図
図4】第3実施形態に係る空気入りタイヤの要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
[第1実施形態]
図1に示す第1実施形態の空気入りタイヤ10は、乗用車用空気入りタイヤであって、接地面を構成するトレッド部12と、リムに固定される左右一対のビード部16と、トレッド部12とビード部16との間に介在する左右一対のサイドウォール部14とを備えてなる。なお、図1は、タイヤ回転軸を含む子午線断面でタイヤ10を切断した右側半断面図であり、この例ではタイヤ10は左右対称である。
【0012】
図中、符号CLは、タイヤ軸方向中心に相当するタイヤ赤道面を示す。本明細書において、タイヤ軸方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、図1において符号WDで示す。タイヤ軸方向WD内側とはタイヤ赤道面CLに近づく方向であり、タイヤ軸方向WD外側とはタイヤ赤道面CLから離れる方向である。タイヤ半径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいい、図1において符号RDで示す。タイヤ半径方向RD内側とはタイヤ回転軸に近づく方向であり、タイヤ半径方向RD外側とはタイヤ回転軸から離れる方向である。タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
【0013】
ビード部16には、ビードワイヤで構成された環状のビードコア18が埋設されている。また、ビードコア18の外周、即ちタイヤ半径方向RD外側にはビードフィラー20が設けられている。ビードフィラー20は、先端側ほど幅狭の断面略三角形状をなす硬質ゴム製部材である。この例では、ビードフィラー20の上端20Aは、後述するタイヤ最大幅位置P2よりもタイヤ半径方向RD内側に位置している。ビードフィラー20の上端20Aは、ビードフィラー20におけるタイヤ半径方向RDの外側端を指す。
【0014】
タイヤ10には、一対のビード部16間にトロイダル状に架け渡された少なくとも1枚(この例では1枚)のカーカスプライ22が設けられている。カーカスプライ22は、トレッド部12からサイドウォール部14を経てビード部16に至り、ビードコア18で折り返されて係止されている。詳細には、カーカスプライ22は、その両端部がビードコア18の周りをタイヤ軸方向WD内側から外側に向かって折り返されている。そのため、カーカスプライ22は、一対のビードコア18間に跨るトロイド状の本体部22Aと、本体部22Aの両端からビードコア18の周りに折り返された折返し部22Bを備える。本体部22Aと折返し部22Bとの間に、ビードコア18とビードフィラー20が配されている。
【0015】
カーカスプライ22は、補強材としてのカーカスコードを所定の打ち込み本数で平行配列しトッピングゴムで被覆してなり、カーカスコードがタイヤ周方向に対して実質上直角(例えば80°~90°)に、即ちラジアル方向に配されている。カーカスコードとしては、例えば、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維等の有機繊維コード、又はスチールコードなどが挙げられる。
【0016】
トレッド部12には、カーカスプライ22の外周(即ち、タイヤ半径方向RD外側)にベルト層24が埋設されている。ベルト層24は、カーカスプライ22のクラウン部外周に重ねて設けられており、通常は少なくとも2枚のベルトプライで構成される。この例では、ベルト層24は、最大幅ベルトとしての第1ベルト24Aと、その外周に重ねて配された第2ベルト24Bとの2枚で構成されている。第1及び第2ベルト24A,24Bは、スチールコード等のベルトコードをタイヤ周方向に対して一定角度(例えば10°~35°)で傾斜させかつタイヤ軸方向WDに所定間隔で配設してなる。2枚のベルト24A,24B間でベルトコードが互いに交差するよう配設されている。
【0017】
ベルト層24のタイヤ半径方向RD外側にはベルト補強層26が設けられている。ベルト補強層26は、タイヤ周方向に対して実質的に平行に延びるコードを有するキャッププライにより構成されている。
【0018】
ベルト層24の外周、より詳細にはベルト補強層26の外周には、トレッド部12の外表面を形成するトレッドゴム28が積層されている。トレッドゴム28は、タイヤの接地面をなすゴム部材であり、トレッドゴム28の表面には不図示のトレッドパターンが形成されている。トレッドゴム28は、ベルト層24及びベルト補強層26の全幅を覆うように設けられている。
【0019】
サイドウォール部14におけるカーカスプライ22のタイヤ外面側には、サイドウォール部14の外表面を形成するサイドウォールゴム30が設けられている。サイドウォールゴム30は、この例では、そのタイヤ半径方向RDの外側端部30Aが、トレッドゴム28のタイヤ軸方向WDの端部28A上に被せられている。
【0020】
ビード部16にはリムストリップゴム32が設けられている。リムストリップゴム32は、ビード部16の外表面を形成するゴム部材であり、タイヤ10が装着される不図示のリムと接触する。リムストリップゴム32は、サイドウォールゴム30よりも高硬度のゴムからなる。例えば、サイドウォールゴム30の硬度が50~60であるのに対し、リムストリップゴム32の硬度は62~77でもよい。なお、リムストリップゴム32は、一般に、ビードフィラー20よりも硬度が低く、トレッドゴム28よりも硬度が高い。
【0021】
ここで、ゴムの硬度は、JIS K6253-1-2012 3.2デュロメータ硬さ(durometer hardness)であり、一般ゴム(中硬さ)用のタイプAデュロメータを用いて、23℃の雰囲気下で測定される。
【0022】
図2に示すように、リムストリップゴム32は、ビード部16においてカーカスプライ22の本体部22Aと折返し部22Bとをタイヤ半径方向RD内側から覆うように設けられている。そのため、リムストリップゴム32は、カーカスプライ22の折返し部22Bのタイヤ軸方向WD外側に配置された外側ゴム部34と、カーカスプライ22の本体部22Aのタイヤ軸方向WD内側に配置された内側ゴム部36と、外側ゴム部34と内側ゴム部36の下端部同士を繋ぐ底ゴム部38とを備えてなる。
【0023】
底ゴム部38は、ビード部16の底面を形成する部分であり、不図示のリムのビードシートと接触する。
【0024】
外側ゴム部34は、ビード部16のタイヤ外面側の表面を形成する部分であり、底ゴム部38のタイヤ軸方向WD外側端から、カーカスプライ22の折返し部22Bに沿ってタイヤ半径方向RD外側に延在している。外側ゴム部34は、サイドウォールゴム30と接しており、両者の界面は、サイドウォール部14とビード部16の境界位置でタイヤ外面に露出している。
【0025】
内側ゴム部36は、底ゴム部38のタイヤ軸方向WD内側端から、カーカスプライ22の本体部22Aに沿ってタイヤ半径方向RD外側に延在している。この例では、内側ゴム部36の上端(即ち、タイヤ半径方向Rの外側端)は、ビード部16内で終端している。タイヤ内面(内腔面)には、空気非透過性のブチル系ゴムからなるインナーライナーゴム層40が設けられており、内側ゴム部36は、カーカスプライ22の本体部22Aとインナーライナーゴム層40との間に挟まれたゴム層である。
【0026】
なお、符号42は、インナーライナーゴム層40とカーカスプライ22の本体部22Aとの間に設けられたクッションゴム層を示す。
【0027】
本実施形態に係る空気入りタイヤ10においては、トレッドゴム28のタイヤ軸方向端28AEのタイヤ半径方向位置P1とタイヤ最大幅位置P2との間をタイヤ半径方向RDに二等分する位置P3と、トレッドゴム28のタイヤ軸方向端28AEのタイヤ半径方向位置P1との間を、バットレス部44とする。すなわち、バットレス部44は、タイヤ半径方向RDにおいて位置P1と位置P3の間の領域(位置P1及び位置P3も含む)である。
【0028】
ここで、位置P1は、トレッドゴム28のタイヤ軸方向端28AEのタイヤ半径方向RDにおける位置であり、バットレス部44の上端に相当する。トレッドゴム28のタイヤ軸方向WDの端部28Aは、タイヤ軸方向WDの外側ほどタイヤ半径方向RDの内側に位置するように湾曲しているため、その末端であるタイヤ軸方向端28AEはトレッドゴム28のタイヤ半径方向RDの内側端でもある。
【0029】
タイヤ最大幅位置P2は、サイドウォール部14における空気入りタイヤ10の外表面のプロファイルラインが、タイヤ赤道面CLからタイヤ軸方向WDに最も離れる位置であり、そのタイヤ半径方向RDにおける位置である。該プロファイルラインは、リムプロテクターなどの突起を除いたサイドウォール部本体の外表面の輪郭であり、通常、複数の円弧を滑らかに接続することで規定されるタイヤ子午線断面形状を有する。
【0030】
位置P3は、タイヤ半径方向RDにおいて位置P1とタイヤ最大幅位置P2から等距離にある位置であり、バットレス部44の下端に相当する。
【0031】
図2に示すように、カーカスプライ22の折返し部22Bの上端22BE(以下、折返し端22BEという。)は、ビードフィラー20の上端20Aよりもタイヤ半径方向RD外側に配置されている。ここで、折返し部22Bの上端22BEは、折返し部22Bにおけるタイヤ半径方向RDの外側端を指す。また、折返し端22BEは、バットレス部44よりもタイヤ半径方向RD内側に配置されており、すなわち、上記位置P3よりもタイヤ半径方向RD内側に位置している。
【0032】
より詳細には、この例では、カーカスプライ22の折返し端22BEは、タイヤ最大幅位置P2よりもタイヤ半径方向RD外側に配置されている。そのため、折返し端22BEは、上記位置P2と位置P3の間の領域46内に位置している。
【0033】
リムストリップゴム32は、カーカスプライ22とサイドウォールゴム30との間でタイヤ半径方向RD外側に延在している。詳細には、上記外側ゴム部34が、カーカスプライ22の折返し部22Bに沿ってビード部16からタイヤ半径方向RD外側に延在し、上記折返し端22BEを越えて、更にカーカスプライ22の本体部22Aに沿ってバットレス部44に延在している。
【0034】
リムストリップゴム32(詳細には外側ゴム部34)の上端32AEは、バットレス部44の下端である上記位置P3よりもタイヤ半径方向RD外側に配置されている。リムストリップゴム32の上端32AEは、リムストリップゴム32におけるタイヤ半径方向RDの外側端を指す。また、バットレス部44の下端は、バットレス部44におけるタイヤ半径方向RDの内側端を指す。
【0035】
この例では、リムストリップゴム32の上端32AEは、バットレス部44の上端である上記位置P1よりもタイヤ半径方向RD外側に位置している。そのため、リムストリップゴム32の上端部32Aは、トレッドゴム28と重なりを持って終端しており、すなわち、トレッドゴム28の端部28Aとオーバーラップしている。詳細には、リムストリップゴム32の上端部32Aは、トレッドゴム28の側方に配置され、トレッドゴム28の側面28B上にオーバーラップしている。リムストリップゴム32の上端部32Aはタイヤ外表面には露出しておらず、当該上端部32Aの上にサイドウォールゴム30のタイヤ半径方向RDの外側端部30Aが被せられている。リムストリップゴム32の上端部32Aは、リムストリップゴム32におけるタイヤ半径方向RDの外側端部を指し、その末端が上端32AEである。
【0036】
サイドウォール部14におけるリムストリップ32の厚み(即ち、外側ゴム部34の厚み)は、次のように設定されている。バットレス部44でのリムストリップゴム32の最大厚みT1は、バットレス部44よりもタイヤ半径方向RD内側でのリムストリップゴム32の厚みよりも大きく設定されており、従ってタイヤ最大幅位置P2でのリムストリップゴム32の厚みT2よりも大きく設定されている。ここで、リムストリップゴム32の厚みは、カーカスプライ22に対して垂直な方向に沿って測定される。
【0037】
詳細には、カーカスプライ22とサイドウォールゴム30との間をタイヤ半径方向RD外側に延在するリムストリップゴム32は、サイドウォール部14の下部側からタイヤ最大幅位置P2までは実質的に一定の厚みT2で形成されている。そして、タイヤ最大幅位置P2を越えてから厚みが漸増する部分を有し、バットレス部44では上記厚みT2よりも大きい厚みT1に形成されている。このように、リムストリップゴム32は、タイヤ最大幅位置P2とバットレス部44の下端である上記位置P3との間において、タイヤ半径方向RD外側に向かって厚みが漸増する漸増部32Bを有する。
【0038】
以上よりなる本実施形態に係る空気入りタイヤ10であると、カーカスプライ22の折返し端22BEをバットレス部44よりもタイヤ半径方向RD内側に配置しており、ベルト層24まで延在させていないので、折返し部22Bの接合部がトレッド部に存在することによるRFVの悪化を抑えることができる。
【0039】
また、リムストリップゴム32を、カーカスプライ22の折返し端22BEを越えてタイヤ半径方向RD外側のバットレス部44に延在させたことにより、局部的な撓みを生じるバットレス部44における撓みを抑えて操縦安定性を向上することができる。
【0040】
また、カーカスプライ22の折返し端22BEとリムストリップゴム32の上端32AEとを離して配置したことにより、歪みの集中を抑えて耐久性を向上することができる。
【0041】
そのため、本実施形態に係る空気入りタイヤ10であると、操縦安定性とユニフォミティ性能を両立することができ、また耐久性を改善することができる。
【0042】
本実施形態であると、また、カーカスプライ22の折返し端22BEをタイヤ最大幅位置P2よりもタイヤ半径方向RD外側に配置したので、タイヤ最大幅位置P2での剛性を高めて、操縦安定性をより向上することができる。
【0043】
また、リムストリップゴム32の上端部32Aをトレッドゴム28と重なりを持って終端させたことにより、バットレス部44の全体がリムストリップゴム32により補強され、更に剛性を高めることができ、操縦安定性の向上効果に優れる。
【0044】
また、バットレス部44でのリムストリップゴム32の厚みT1を、タイヤ最大幅位置P2でのリムストリップゴム32の厚みT2よりも大きく形成したことにより、局部的な撓みが生じるバットレス部44において、更に効果的に撓みを抑えることができ、操縦安定性の向上効果に優れる。
【0045】
また、タイヤ最大幅位置P2とバットレス部44の下端P3との間の領域46に、リムストリップゴム32の厚みが漸増する漸増部32Bを設けたことにより、歪みの集中を抑えて耐久性を向上することができる。特に、この例では、タイヤ最大幅位置P2とバットレス部44の下端P3との間の領域46にカーカスプライ22の折返し端22BEも存在する。そのため、当該領域46でのリムストリップゴム32の急激な厚みの変化を排除することにより、耐久性の向上効果を更に高めることができる。
【0046】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態に係る空気入りタイヤ10Aの要部断面図である。第2実施形態は、リムストリップゴム32の上端32AEの位置が第1実施形態と異なる。第2実施形態では、リムストリップゴム32の上端部32Aは、トレッドゴム28と重なりを持っておらず、バットレス部44内で終端している。
【0047】
詳細には、リムストリップゴム32の上端32AEは、バットレス部44の上端である上記位置P1よりもタイヤ半径方向RD内側に配置されており、当該位置P1に達する前に終端している。リムストリップゴム32の上端32AEのタイヤ半径方向RDにおける位置は、上記位置P3からの高さで、バットレス部44の高さ(タイヤ半径方向RDにおける距離)の50%以上の高さであることが好ましく、より好ましくは70%以上の高さである。
【0048】
第2実施形態では、リムストリップゴム32の上端32AEを第1実施形態よりも低く設定したので、第1実施形態よりも操縦安定性の点では不利であるが、剛性が低くなることから乗り心地性の点では有利である。第2実施形態について、その他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0049】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態に係る空気入りタイヤ10Bの要部断面図である。第3実施形態では、カーカスプライ22の折返し端22BEの位置が第2実施形態と異なる。第3実施形態では、カーカスプライ22の折返し端22BEが、タイヤ最大幅位置P2よりもタイヤ半径方向RD内側に位置しており、タイヤ最大幅位置P2とビードフィラー20の上端20Aとの間に位置している。
【0050】
第3実施形態では、カーカスプライ22の折返し端22BEを第2実施形態よりも低く設定したので、第2実施形態よりも操縦安定性の点では不利であるが、剛性が低くなることから乗り心地性の点では有利である。第3実施形態について、その他の構成及び作用効果は第2実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0051】
なお、本明細書において、空気入りタイヤの各部の寸法やタイヤ最大幅位置等は、空気入りタイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷状態で測定される値である。正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"MeasuringRim"である。正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば"INFLATION PRESSURE"である。但し、タイヤが乗用車用の場合は通常180kPaとするが、タイヤに、Extra Load、又は、Reinforcedと記載されたタイヤの場合は220kPaとする。
【0052】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
10…空気入りタイヤ、12…トレッド部、14…サイドウォール部、16…ビード部、18…ビードコア、20…ビードフィラー、20A…ビードフィラーの上端、22…カーカスプライ、22A…本体部、22B…折返し部、22BE…折返し部の上端、28…トレッドゴム、28AE…トレッドゴムのタイヤ軸方向端、32…リムストリップゴム、32A…リムストリップゴムの上端部、32AE…リムストリップゴムの上端、32B…漸増部、44…バットレス部、P1…トレッドゴムのタイヤ軸方向端のタイヤ半径方向位置、P2…タイヤ最大幅位置、P3…位置P1と位置P2との間を二等分する位置、WD…タイヤ軸方向、RD…タイヤ半径方向
図1
図2
図3
図4