(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】制御装置、通信中継装置、通信システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 28/086 20230101AFI20230307BHJP
H04L 47/74 20220101ALI20230307BHJP
H04W 48/06 20090101ALI20230307BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20230307BHJP
【FI】
H04W28/086
H04L47/74
H04W48/06
H04W84/12
(21)【出願番号】P 2018055088
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2021-01-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕和
【審査官】齋藤 浩兵
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-128835(JP,A)
【文献】特表2017-535147(JP,A)
【文献】特開2005-027192(JP,A)
【文献】特開2008-042451(JP,A)
【文献】特開2004-221684(JP,A)
【文献】特開2010-074336(JP,A)
【文献】特開2013-143624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
H04L 47/70
H04L 65/1066
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末に対する無線通信を行う第1モジュールへの第1接続数および通信端末に対する無線通信を行う第2モジュールへの第2接続数に基づいて、前記第1モジュールに接続要求をした前記通信端末が当該第1モジュールへ接続することの許否を制御する制御部
を備え、
前記第1モジュールおよび前記第2モジュールは、一つのアクセスポイントに含まれ、
前記制御部は、前記第1モジュールに接続した前記通信端末から、再び当該第1モジュールに対して接続要求をした場合に、前記第1モジュールに前記通信端末が登録されているとき、前記第1接続数および前記第2接続数にかかわらず、当該第1モジュールへの接続を許可する、制御装置。
【請求項2】
通信端末に対する無線通信を行う第1モジュールへの第1接続数および通信端末に対する無線通信を行う第2モジュールへの第2接続数に基づいて、前記第1モジュールに接続要求をした前記通信端末が当該第1モジュールへ接続することの許否を制御する制御部
を備え、
前記第1モジュールおよび前記第2モジュールは、一つのアクセスポイントに含まれ、
前記制御部は、前記第1モジュールに接続した前記通信端末から、最後に接続してから所定時間が経過する前に当該第1モジュールに対して接続要求をした場合に、前記第1モジュールに前記通信端末が登録されているとき、前記第1接続数および前記第2接続数にかかわらず、当該第1モジュールへの接続を許可する制御装置。
【請求項3】
前記第1モジュールに接続するための第1識別情報と、前記第2モジュールに接続するための第2識別情報とは同一である、請求項1
または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1識別情報および前記第2識別情報は、いずれもSSIDを含む、請求項
3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第1モジュールの無線通信と前記第2モジュールの無線通信とは、互いに同一の周波数帯域を利用する、請求項1から請求項
4のいずれかに記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1接続数が前記第2接続数に対して所定数以上に多くなった場合に、前記通信端末が前記第1モジュールへ接続することを拒否する、請求項1から請求項
5のいずれかに記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1接続数、前記第2接続数、前記第1モジュールの通信状況および前記第2モジュールの通信状況に基づいて、前記第1モジュールに接続要求をした前記通信端末が当該第1モジュールへ接続することの許否を制御する、請求項1から請求項
6のいずれかに記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2モジュールによる通信ができない期間には、前記第1接続数および前記第2接続数にかかわらず、前記第1モジュールへの接続を許可する、請求項1から請求項
7のいずれかに記載の制御装置。
【請求項9】
請求項1から請求項
8のいずれかに記載の制御装置と、
前記第1モジュールおよび前記第2モジュールの少なくとも一方と、
を備える通信中継装置。
【請求項10】
請求項1から請求項
8のいずれかに記載の制御装置と、
前記第1モジュールと、
前記第2モジュールと、
を備える通信システム。
【請求項11】
通信端末に対する無線通信を行う第1モジュールへの第1接続数および通信端末に対する無線通信を行う第2モジュールへの第2接続数に基づいて、前記第1モジュールに接続要求をした前記通信端末が当該第1モジュールへ接続することの許否を制御し、
前記第1モジュールおよび前記第2モジュールは、一つのアクセスポイントに含まれ、
前記許否を制御することは、前記第1モジュールに接続した前記通信端末から、再び当該第1モジュールに対して接続要求をした場合に、前記第1モジュールに前記通信端末が登録されているとき、前記第1接続数および前記第2接続数にかかわらず、当該第1モジュールへの接続を許可することを含む、制御方法。
【請求項12】
通信端末に対する無線通信を行う第1モジュールへの第1接続数および通信端末に対する無線通信を行う第2モジュールへの第2接続数に基づいて、前記第1モジュールに接続要求をした前記通信端末が当該第1モジュールへ接続することの許否を制御し、
前記許否を制御することは、前記第1モジュールに接続した前記通信端末から、最後に接続してから所定時間が経過する前に当該第1モジュールに対して接続要求をした場合に、前記第1モジュールに前記通信端末が登録されているとき、前記第1接続数および前記第2接続数にかかわらず、当該第1モジュールへの接続を許可することを含む、制御方法。
【請求項13】
前記第1モジュールに接続するための第1識別情報と、前記第2モジュールに接続するための第2識別情報とは同一である、請求項
11または12に記載の制御方法。
【請求項14】
前記第1識別情報および前記第2識別情報は、いずれもSSIDを含む、請求項13に記載の制御方法。
【請求項15】
前記第1モジュールの無線通信と前記第2モジュールの無線通信とは、互いに同一の周波数帯域を利用する、請求項
11から請求項14のいずれかに記載の制御方法。
【請求項16】
前記許否を制御することは、前記第1接続数が前記第2接続数に対して所定数以上に多くなった場合に、前記通信端末が前記第1モジュールへ接続することを拒否することを含む、請求項
11から請求項15のいずれかに記載の制御方法。
【請求項17】
前記許否を制御することは、前記第1接続数、前記第2接続数、前記第1モジュールの通信状況および前記第2モジュールの通信状況に基づいて、前記第1モジュールに接続要求をした前記通信端末が当該第1モジュールへ接続することの許否を制御することを含む、請求項
11から請求項
16のいずれかに記載の制御方法。
【請求項18】
前記許否を制御することは、前記第2モジュールによる通信ができない期間には、前記第1接続数および前記第2接続数にかかわらず、当該第1モジュールへの接続を許可することを含む、請求項
11から請求項
17のいずれかに記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の無線通信モジュールを有するアクセスポイントにおいて、同一の接続制限設定(セキュリティ設定)をすることによって、例えばローミング技術が実現される。クライアントである通信端末は、いずれの通信モジュールに対しても接続することができるが、1つの通信モジュールに対して多くの通信端末が接続される一方、他の通信モジュールではほとんど通信端末が接続されないということもある。このような通信端末の接続数の不均衡は、アクセスポイント全体としての無線性能の劣化を引き起こす。そこで、通信端末を分散して接続するための技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、複雑な処理により負荷分散を行ったり、通信端末の認証処理後に実施したりすることから、処理全体として時間がかかり、ユーザの利便性を低下させていた。
【0005】
本発明の目的の一つは、複数の無線通信モジュールに接続される通信端末を効率的に分散させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、通信端末に対する無線通信を行う第1モジュールへの第1接続数および通信端末に対する無線通信を行う第2モジュールへの第2接続数に基づいて、前記第1モジュールに接続要求をした前記通信端末が当該第1モジュールへ接続することの許否を制御する制御部を備える制御装置が提供される。
【0007】
また、本発明の一実施形態によれば、通信端末に対する無線通信を行う第1モジュールへの第1接続数および通信端末に対する無線通信を行う第2モジュールへの第2接続数に基づいて、前記第1モジュールに接続要求をした前記通信端末が当該第1モジュールへ接続することの許否を制御する、制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の無線通信モジュールに接続される通信端末を効率的に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態における通信システムの構成を説明する図である。
【
図2】本発明の第1実施形態におけるモジュール管理テーブルを説明する図である。
【
図3】本発明の第1実施形態における接続端末管理テーブルを説明する図である。
【
図4】本発明の第1実施形態における通信制御処理を説明するフローチャートである。
【
図5】本発明の第1実施形態における通信制御処理を説明するフローチャートである。
【
図6】本発明の第3実施形態における通信システムの構成を説明する図である。
【
図7】本発明の第4実施形態における通信システムの構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態における通信システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、B等を付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0011】
<第1実施形態>
[1.概要]
本発明の第1実施形態における通信システムは、無線通信を中継するアクセスポイントによって実現されている。このアクセスポイントは、複数の無線通信モジュールを備える通信中継装置であって、以下に説明する方法によって、それぞれの通信モジュールに接続される通信端末を分散させることができる。第1実施形態におけるアクセスポイントについて説明する。なお、通信システムは、アクセスポイントに代えてルータによって実現されてもよい。
【0012】
[2.アクセスポイントの構成]
図1は、本発明の第1実施形態における通信システムの構成を説明する図である。アクセスポイント1は、通信端末3-1、・・・、3-n(以下、それぞれを特に区別しない場合には、通信端末3という)に対して無線LANの環境を提供する装置であり、ルータ9を介してWAN(インターネット等)に通信端末3を接続するための中継をする装置である。
【0013】
アクセスポイント1は、通信モジュールMa10(以下、単に「Ma」と記載する場合がある)、通信モジュールMb20(以下、単に「Mb」等と記載する場合がある)、制御部50、記憶部70、操作部80、および通信モジュールMz90を備える。これらの構成は、バスによって互いに接続されている。この例における通信システムは、通信モジュールMa10、通信モジュールMb20および制御部50を含み、1つの筐体に収容されることによってアクセスポイント1の一部を構成している。
【0014】
通信モジュールMa10は、5GHz帯のチャンネルのうち、制御部50によって設定されたチャンネルを用いて、通信端末3との無線通信Csaを実行する。通信モジュールMb20は、5GHz帯のチャンネルのうち、制御部50によって設定されたチャンネルを用いて、通信端末3との無線通信Csbを実行する。通信モジュールMb20に設定されるチャンネルは、通信モジュールMa10に設定されるチャンネルとは異なるチャンネルである。なお、通信モジュールMa10、Mb20は、この例では、5GHzの帯域を用いて無線通信を行うが、別の周波数帯域を用いた無線通信であってもよい。このとき、通信モジュールMa10が用いる周波数帯域と、通信モジュールMb20が用いる周波数帯域が同じであることが望ましいが、必ずしも同じである場合に限られない。
【0015】
通信モジュールMa10と通信モジュールMb20とは、上述のとおり、設定されるチャンネルが異なるが、SSID(Service Set IDentifier)など通信モジュールMa10、Mb20に接続するための識別情報、その他の設定(例えば、送受信レートセット、セキュリティ設定)については同じであることが望ましい。このようにすると、通信端末3と通信する通信モジュールが変わったとしても、通信端末3は、利用するチャンネルの設定を変更すれば、そのまま通信をすることができる。これは、通信端末3にとって、アクセスポイント間でのローミングと同様な動作である。なお、一部の設定については、通信モジュールMa10と通信モジュールMb20とで異なっていてもよい。
【0016】
通信モジュールMz90は、この例では、ルータ9と通信し、ルータ9を介して他の装置と通信するための通信部としての機能を有する。この通信は、例えば、無線によるものであってもよいし、有線によるものであってもよい。
【0017】
記憶部70は、制御部50によって実行される制御プログラムおよび各種のテーブル等の情報を記憶する。記憶部70に記憶されるテーブルは、例えば、後述する
図2および
図3に示すような管理テーブルを含み、制御部50によって更新される。操作部80は、電源ボタン、設定ボタン等の操作子を含み、操作子に対するユーザの操作を受け付け、その操作に応じた信号を制御部50に出力する。
【0018】
図2は、本発明の第1実施形態におけるモジュール管理テーブルを説明する図である。モジュール管理テーブルは、通信モジュールMa10、Mb20に関連する情報が登録されたテーブルである。具体的には、モジュール管理テーブルは、通信モジュールに対して、通信モジュールに設定されたチャンネル(Ch(Ma)、Ch(Mb))と、その通信モジュールに接続された通信端末3の数(Ca、Cb)とを関連付ける。
【0019】
図3は、本発明の第1実施形態における接続端末管理テーブルを説明する図である。接続端末管理テーブルは、通信端末3が通信モジュールMa10、Mb20に接続した履歴が登録される。具体的には、接続端末管理テーブルは、通信端末(3a、3b、・・・)に対して、通信端末が接続した通信モジュール(Ma、Mb、・・・)と最後にアクセスした時刻情報(Ta、Tb、・・・)とを関連付ける。この例では、通信端末を識別する情報としてMAC(Media Access Control address)アドレスが用いられる。接続端末管理テーブルにおいて通信モジュールMa10に関連付けられた通信端末3の数が、上述した接続数Caに対応する。同様に、接続端末管理テーブルにおいて通信モジュールMb20に関連付けられた通信端末3の数が、上述した接続数Cbに対応する。
【0020】
最終アクセスから所定時間(例えば5分)が経過した通信端末3は、接続端末管理テーブルから登録が抹消されるように、制御部50によって処理される。これによって、この通信端末3の接続履歴が削除されることになる。また、一方の通信モジュールに関連付けられた通信端末3と同じ端末が、別の通信モジュールに関連付けられるときには、先に関連付けられていた通信モジュールに関する接続履歴が削除されてもよい。例えば、通信モジュールMa10に関連付けられた通信端末3が、通信状況の変化により、通信モジュールMb20と接続した場合、通信端末3は通信モジュールMb20と関連付けられた接続履歴が新たに登録され、通信モジュールMa10と関連付けられた接続履歴は削除されてもよい。この結果、接続数Caも連動して減少する。
【0021】
図1に戻って説明を続ける。制御部50は、CPUなどの演算処理回路およびメモリを含む。制御部50は、記憶部70に記憶された制御プログラムをCPUによって実行して、各種機能をアクセスポイント1において実現させる。実現される機能には、通信制御機能が含まれる。この通信制御機能によれば、後述する処理(以下、通信制御処理という)を実行することができる。
【0022】
制御プログラムは、コンピュータにより実行可能であればよく、磁気記録媒体、光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶した状態で提供されてもよい。この場合には、アクセスポイント1は、記録媒体を読み取る装置を備えていればよい。また、制御プログラムは、通信モジュールを介してダウンロードされてもよい。続いて、通信制御処理(通信制御方法)について説明する。
【0023】
[3.通信制御処理]
通信制御処理は、アクセスポイント1において電源がオンにされることによって開始される。この例での通信制御処理によれば、制御部50は、通信モジュールMa10、Mb20に対して、ホワイトリスト形式のMACアドレスフィルタを設定することによって、通信モジュールに対する通信端末3からの接続要求に対して接続の許否を制御するものである。
【0024】
図4は、本発明の第1実施形態における通信制御処理を説明するフローチャートである。通信制御処理が開始されると、接続数Caと接続数Cbとの差が所定値k以上であるか判定する(ステップS10)。なお、kは、1以上の整数であればよく、この例では1である。すなわち、この例では、ステップS10での判定は、接続数Caと接続数Cbとが同じであるか否かの判定と同等である。
【0025】
制御部50は、接続数Caと接続数Cbとの差が所定値k未満であると判定している間(ステップS10;No)は、通信モジュールMa10、Mb20のいずれに対しても、フィルタの設定を無しにする(ステップS20)。この状況においては、通信モジュールMa10、Mb20は、いずれもフィルタが設定されていないため、全ての通信端末3からの接続要求に対して接続を許可する。
【0026】
一方、制御部50は、接続数Caと接続数Cbとの差が所定値k以上である判定し(ステップS10;Yes)、かつ接続数Caが接続数Cbより大きいと判定している期間(ステップS12;Yes)は、通信モジュールMa10にのみフィルタを設定する(ステップS22)。言い換えると、この期間は、接続数Caが接続数Cbに対して所定値k以上大きい状態である。ここでは、制御部50は、接続端末管理テーブルに基づいて、通信モジュールMa10に対して接続履歴が登録されている通信端末3を含むホワイトリストを生成して、通信モジュールMa10にフィルタを設定する。これによって通信モジュールMa10は、ホワイトリストに登録されている通信端末3以外からの接続要求に対しては接続を拒否する。一方、通信モジュールMb20は、フィルタが設定されないため、全ての通信端末3からの接続要求に対して接続を許可する。
【0027】
また、制御部50は、接続数Caと接続数Cbとの差が所定値k以上である判定し(ステップS10;Yes)、かつ接続数Caが接続数Cbより大きいと判定しない期間(ステップS12;Yes)は、通信モジュールMb20にのみフィルタを設定する(ステップS24)。言い換えると、この期間は、接続数Cbが接続数Caに対して所定値k以上大きい状態である。ここでは、制御部50は、接続端末管理テーブルに基づいて、通信モジュールMb20に対して接続履歴が登録されている通信端末3を含むホワイトリストを生成して、通信モジュールMb20にフィルタを設定する。これによって通信モジュールMb20は、ホワイトリストに登録されている通信端末3以外からの接続要求に対しては接続を拒否する。一方、通信モジュールMa10は、フィルタが設定されないため、全ての通信端末3からの接続要求に対して接続を許可する。
【0028】
このような通信制御処理によって通信モジュールMa10、Mb20に対してフィルタを設定していくことにより、一方の通信モジュールよりも端末接続数が所定数k以上に多い通信モジュールに対しては、通信端末3からの要求に対する接続を拒否するように制御部50が制御する。これにより、通信端末3は、通信モジュールに対する接続を拒否されると、接続が許可されるまで、いずれかの通信モジュールに対して接続要求を繰り返す。この結果、アクセスポイント1では、通信モジュールMa10、Mb20の一方にのみ所定値kよりも偏って通信端末3が接続されてしまうことがない。
【0029】
なお、上述した所定数kの設定により、接続数の偏りの程度を設定することができる。この例のようにk=1として設定されれば、接続数の差が1まで許容される。この場合には、通信モジュールMa10、Mb20での接続数が同数である場合にのみ、通信端末3が双方に接続可能な状態である。一方、k=3として設定されれば、接続数の差が3まで許容される。この場合には、通信モジュールMa10、Mb20での接続数の差が2までであれば、通信端末3が双方に接続可能な状態である。このように、適度な偏りを許容することによって、通信端末3が通信モジュールに接続することを拒否される状態を低減することもできる。
【0030】
また、接続端末管理テーブルに通信端末3が登録されたままであれば、何らかの通信状況により無線通信が切断されたとしても、同じ通信モジュールには、接続数にかかわらず再接続することができる。これは、通信モジュールにフィルタが設定されていたとしても、その通信端末3がホワイトリストに含まれるからである。
【0031】
<第2実施形態>
第1実施形態では、ホワイトリスト形式のMACアドレスフィルタを用いた通信制御処理を用いていたが、第2実施形態では、通信端末3から接続要求を受信する毎に、接続の許否が制御される通信制御処理を用いる。
【0032】
図5は、本発明の第2実施形態における通信制御処理を説明するフローチャートである。通信制御処理が開始されると、制御部50は、通信モジュールMa10、Mb20に対する接続要求を通信端末3から受信するのを待機する(ステップS50;No)。以下の説明では、この状態を要求待機状態という。制御部50は、通信モジュールMa10に対する接続要求を通信端末3から受信すると(ステップS50;Maで受信)、接続端末管理テーブルを参照して、この通信端末3が通信モジュールMa10に接続した履歴が登録されているかを判定する(ステップS60)。
【0033】
制御部50は、通信端末3が通信モジュールMa10に接続した履歴が登録されていると判定した場合(ステップS60;Yes)、通信端末3が通信モジュールMa10に接続することを許可し(ステップS80)、要求待機状態(ステップS50;No)に戻す。制御部50は、通信端末3が通信モジュールMa10に接続した履歴が登録されていないと判定した場合(ステップS60;No)、接続数Caから接続数Cbを減算した値が所定値k以上であるか判定する(ステップS65)。なお、kは、1以上の整数であればよく、この例では1である。
【0034】
制御部50は、接続数Caから接続数Cbを減算した値が所定数k以上であると判定すると(ステップS65;Yes)、通信端末3が通信モジュールMa10へ接続することを拒否し(ステップS90)、要求待機状態(ステップS50;No)に戻す。
【0035】
一方、制御部50は、接続数Caから接続数Cbを減算した値が所定数k未満であると判定すると(ステップS65;No)、制御部50は、通信端末3が通信モジュールMa10に接続することを許可し(ステップS80)、要求待機状態(ステップS50;No)に戻す。
【0036】
ステップS50において、制御部50は、通信モジュールMb20に対する接続要求を通信端末3から受信すると(ステップS50;Mbで受信)、接続端末管理テーブルを参照して、この通信端末3が通信モジュールMb20に接続した履歴が登録されているかを判定する(ステップS70)。
【0037】
制御部50は、通信端末3が通信モジュールMb20に接続した履歴が登録されていると判定した場合(ステップS70;Yes)、通信端末3が通信モジュールMb20に接続することを許可し(ステップS80)、要求待機状態(ステップS50;No)に戻す。制御部50は、通信端末3が通信モジュールMb20に接続した履歴が登録されていないと判定した場合(ステップS70;No)、接続数Cbから接続数Caを減算した値が所定値k以上であるか判定する(ステップS75)。なお、kは、1以上の整数であればよく、この例では1である。また、ステップS65において用いられるkの設定値と、ステップS75において用いられるkの設定値とが異なってもよい。
【0038】
制御部50は、接続数Caから接続数Cbを減算した値が所定数k以上であると判定すると(ステップS75;Yes)、通信端末3が通信モジュールMb20へ接続することを拒否し(ステップS90)、要求待機状態(ステップS50;No)に戻す。
【0039】
一方、制御部50は、接続数Cbから接続数Caを減算した値が所定数k未満であると判定すると(ステップS65;No)、制御部50は、通信端末3が通信モジュールMa10に接続することを許可し(ステップS80)、要求待機状態(ステップS50;No)に戻す。このような処理によっても、第1実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0040】
<第3実施形態>
通信モジュールMa10と通信モジュールMb20とは、第1実施形態では同一の筐体(アクセスポイント1)に収容されていたが、第3実施形態では異なる筐体(アクセスポイント1A、1B)に収容されている。
【0041】
図6は、本発明の第3実施形態における通信システムの構成を説明する図である。
図6に示すように、アクセスポイント1Aは、第1実施形態におけるアクセスポイント1から通信モジュールMb20を除外した構成を有している。一方、別の筐体のアクセスポイント1Bが、通信モジュールMb20を有している。アクセスポイント1Aとアクセスポイント1Bとは、この例ではルータ9を介して接続されている。そのため、アクセスポイント1Aの制御部50は、ルータ9を介して、通信モジュールMb20を制御するための制御信号をアクセスポイント1Bに送信する。これにより、アクセスポイント1Bにおいて、この制御信号を受信すると、その制御信号に従って通信モジュールMb20が制御される。また、アクセスポイント1Bにおける情報(例えば、通信端末3が接続されたことを示す情報を含む)を示す信号が、ルータ9を介してアクセスポイント1Aの制御部50に受信される。そのため、実質的に、第1実施形態におけるアクセスポイント1で実行される通信制御処理と同様の処理が、第3実施形態におけるアクセスポイント1A、1Bが協働することで実現することができる。なお、アクセスポイント1Aの機能は、ルータによって実現されてもよい。
【0042】
<第4実施形態>
第3実施形態では、通信モジュールMb20が別の筐体であるアクセスポイント1Bに収容されている点で第1実施形態の構成とは異なっていた。第4実施形態では、さらに、通信モジュールMa10についても、制御部50とは別の筐体において実現されている例について説明する。
【0043】
図7は、本発明の第4実施形態における通信システムの構成を説明する図である。
図7に示すように、通信モジュールMa10はアクセスポイント1C-1に収容され、通信モジュールMb20はアクセスポイント1C-2に収容されている。一方、第1実施形態において通信制御処理を実行する制御部50は、ルータ9C(制御装置)に収容されている。この場合には、ルータ9Cの制御部が、通信モジュールMa10を制御するための制御信号をアクセスポイント1C-1に送信する。これにより、アクセスポイント1C-1において、この制御信号を受信すると、その制御信号に従って通信モジュールMa10が制御される。また、通信モジュールMb20を制御するための制御信号をアクセスポイント1C-2に送信する。これにより、アクセスポイント1C-2において、この制御信号を受信すると、その制御信号に従って通信モジュールMb20が制御される。そのため、実質的に、第1実施形態におけるアクセスポイント1で実行される通信制御処理と同様の処理が、第4実施形態におけるアクセスポイント1C-1、1C-2およびルータ9Cが協働することで実現することができる。なお、制御部50の機能は、ルータ9Cを介して接続される他の装置(制御装置)において有するようにしてもよい。いずれにしても、通信モジュールMa10、Mb20を制御する制御部50を含む制御装置と、通信モジュールMa10、Mb20と、により通信システムが構成されればよい。例えば、上述のように、制御装置は、アクセスポイントまたはルータに含まれる制御部50であってもよいし、これらを制御する装置であってもよい。
【0044】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の一実施形態は、以下のように様々な形態に変形することもできる。また、上述した実施形態および以下に説明する変形例は、それぞれ互いに組み合わせて適用することもできる。
【0045】
(1)上述した実施形態では、通信モジュールMa10、Mb20に対する通信端末3の接続数に基づいて、通信端末3からの要求に対する接続の許否が制御されていたが、さらに別の情報(例えば、通信状況)を含めて接続の許否が制御されてもよい。例えば、通信モジュールMa10、Mb20における通信量(所定の時間当たりの平均通信量)と上記の接続数とに基づいて接続の許否が制御されてもよい。この場合、接続数に通信量を乗算する等によって重み付けをして、上述した実施形態と同様な処理によって接続の許否が制御されればよい。
【0046】
また、通信に用いられるデータの種類と上記の接続数とに基づいて接続の許否が制御されてもよい。データの種類として、ストリーミング動画データ等のリアルタイム性が求められるデータが含まれている場合には、接続数が実質的に大きくなるように重み付けをして、上述した実施形態と同様な処理によって接続の許否が制御されればよい。
【0047】
(2)通信モジュールに対して1台の通信端末が接続すると、接続数が1だけ増加するようになっていたが、特定の通信端末が接続されると、接続数が1より大きい値(例えば2)で増加するようになっていてもよい。特定の通信端末3は、MACアドレス等、ユーザID等で識別されればよい。
【0048】
(3)上述した各実施形態では、通信制御処理は、通信端末3を、2つの通信モジュールMa10、Mb20のいずれかに接続するようにしていたが、3つ以上の通信モジュールのいずれかに接続するようにしてもよい。この場合には、制御部50は、3つ以上の通信モジュールに対応する接続数の関係に基づいて、通信端末3の要求に対する接続の許否を制御するようにすればよい。
【0049】
(4)通信端末3が接続できる通信モジュールが3つ以上存在する場合、いわゆるバンドステアリングと呼ばれる機能を用いて、特定の通信モジュールへ接続対象を変更できるようにしてもよい。例えば、通信モジュールMa10、Mb20が5GHzの帯域で通信し、もう一つが2.4GHzの帯域で通信する場合、制御部50は、バンドステアリングにより2.4GHzで接続している通信端末3を通信モジュールMa10、Mb20のいずれかに接続するように制御してもよい。この接続先として、接続数が少ない方の通信モジュールを指定してもよい。
【0050】
(5)通信モジュールMa10、Mb20において、5GHz帯の特定のチャンネルを用いる場合には、DFS(Dynamic Frequency Selection)機能を実装する必要がある。この場合、特定のレーダー信号の検出により一時的に使用できなくなる期間が生じる。このような状況がいずれかの通信モジュールにおいて発生した場合には、その期間については、残りの通信モジュールに通信端末3の接続対象が切り替わるように制御してもよい。例えば、この期間においては、制御部50は、接続数Ca,Cbに係わらず通信モジュールに対する接続を許可するように制御すればよい。
【0051】
(6)通信モジュールMa10、Mb20のいずれか一方に対して、通信端末3が接続要求を送信しやすい状況である場合を想定し、一部の通信モジュールに対してのみ接続の許否が制御されるようにしてもよい。
【0052】
以上説明したように、本発明の一実施形態によれば、第1モジュールと、第2モジュールとを制御する制御部を備える制御装置が提供される。さらに以下のように構成することもできる。
【0053】
第1モジュールに接続するための第1識別情報と、第2モジュールに接続するための第2識別情報とは同一であってもよい。
【0054】
第1識別情報および第2識別情報は、いずれもSSIDを含んでもよい。
【0055】
第1モジュールの無線通信と第2モジュールの無線通信とは、互いに同一の周波数帯域を利用してもよい。
【0056】
制御部は、第1接続数が第2接続数に対して所定数以上に多くなった場合に、通信端末が第1モジュールへ接続することを拒否してもよい。
【0057】
制御部は、第1モジュールに接続した通信端末から、再び当該第1モジュールに対して接続要求をした場合に、第1接続数および第2接続数にかかわらず、当該第1モジュールへの接続を許可してもよい。
【0058】
制御部は、第1モジュールに接続した通信端末から、最後に接続してから所定時間が経過する前に当該第1モジュールに対して接続要求をした場合に、第1接続数および第2接続数にかかわらず、当該第1モジュールへの接続を許可してもよい。
【0059】
制御部は、第1接続数、第2接続数、第1モジュールの通信状況および第2モジュールの通信状況に基づいて、第1モジュールに接続要求をした通信端末が当該第1モジュールへ接続することの許否を制御してもよい。
【0060】
制御部は、第2モジュールによる通信ができない期間には、第1接続数および前記第2接続数にかかわらず、当該第1モジュールへの接続を許可してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…アクセスポイント、3…通信端末、9…ルータ、10…通信モジュールMa、20…通信モジュールMb、50…制御部、70…記憶部、80…操作部、90…通信モジュールMz