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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/392 20210101AFI20230307BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20230307BHJP
   H01M 50/35 20210101ALI20230307BHJP
   H01M 50/367 20210101ALI20230307BHJP
【FI】
H01M50/392
H01M50/15 101
H01M50/35 101
H01M50/367
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018140980
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020017459
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】小島 優
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-189290(JP,A)
【文献】特開2008-034292(JP,A)
【文献】特開2010-205587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/00 - 50/198
H01M 50/30 - 50/392
H01M 10/00 - 10/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有し、当該開口に連通し且つ電解液及び電極群を収容した複数のセル室が所定方向に沿って区画された電槽と、
排気口を有し、上記開口を封止する蓋部材とを備え、
当該蓋部材は、
上記電槽の上部に固定される中蓋と、
当該中蓋の上部に固定される上蓋と、
当該上蓋と中蓋との間に形成され、上記セル室の各々と連通する複数の個別通路及び当該各個別通路と連通し上記排気口に接続する共通通路を有する排気通路と、
当該排気通路の排気口側の端部に配置された第1フィルタと、
上記共通通路の途中で且つ上記蓋部材の上記所定方向の中央部に配置された第2フィルタとを備え
複数の上記個別通路と上記共通通路との接続位置は、上記排気通路において上記第2フィルタの配置位置よりも上記セル室側に位置する鉛蓄電池。
【請求項2】
上記所定方向の末端に位置するセル室から上記第2フィルタまでの上記個別通路及び共通通路の長さは、その余のセル室から上記第2フィルタまでの上記個別通路及び共通通路の長さよりも長く設定されている請求項1に記載の鉛蓄電池。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両などに用いられる鉛蓄電池では、電槽の内圧の上昇を抑制するために、電槽の内部で発生したガスが排気通路を通じて外部に排気される。例えば、特許文献1に記載された鉛蓄電池では、電槽を封口する蓋部材が中蓋及び上蓋を備えた二重蓋構造を有し、中蓋と上蓋との間に排気通路が設けられている。排気通路の終端に、多孔質フィルタが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-189290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排気通路を備える鉛蓄電池では、電解液から蒸発した水分や電解液のミストが排気通路を通って外部に放出されるので、電解液が減少する。電解液が減少すると、電槽へ精製水を補充する必要がある。この作業の頻度を低減するため、電解液の減少が抑制されることが好ましい。
【0005】
そこで、本発明は、電解液の減少を抑制できる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る鉛蓄電池は、開口を有し、当該開口に連通し且つ電解液及び電極群を収容した複数のセル室が所定方向に沿って区画された電槽と、排気口を有し、上記開口を封止する蓋部材とを備える。当該蓋部材は、上記電槽の上部に固定される中蓋と、当該中蓋の上部に固定される上蓋と、当該上蓋と中蓋との間に形成され、上記セル室の各々と連通する複数の個別通路及び当該各個別通路と連通し上記排気口に接続する共通通路を有する排気通路と、当該排気通路の排気口側の端部に配置された第1フィルタと、上記共通通路の途中で且つ上記蓋部材の上記所定方向の中央部に配置された第2フィルタとを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係る鉛蓄電池によれば、電解液の減少が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】鉛蓄電池の斜視図
図2】電槽の平面図
図3】鉛蓄電池の垂直断面図(図1中のA-A断面図)
図4】中蓋の平面図
図5】中蓋の底面図
図6】上蓋の平面図
図7】上蓋の底面図
図8図4(中蓋の平面図)の一部を拡大した図
図9図7(上蓋の底面図)の一部を拡大した図
図10】中間フィルタ部4の構造を示す平面図(蓋部材の平面図)
図11】中間フィルタ部4の構造を示す垂直断面図(図10中のB-B断面図)
図12】中間フィルタ部4の構造を示す平面図(蓋部材の平面図)
図13】中間フィルタ部4の構造を示す垂直断面図(図12中のC-C断面図)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[概要説明]
【0010】
初めに、本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池の概要が説明される。この鉛蓄電池は、電槽及び蓋部材を備える。上記電槽は、開口を有し、当該開口に連通し且つ電解液及び電極群を収容した複数のセル室が所定方向に沿って区画されている。上記蓋部材は、排気口を有し、上記開口を封止する。当該蓋部材は、上記電槽の上部に固定される中蓋と、当該中蓋の上部に固定される上蓋とを有する。この蓋部材は、上記上蓋と中蓋との間に形成され、上記セル室の各々と連通する複数の個別通路及び当該各個別通路と連通し上記排気口に接続する共通通路を有する排気通路を有し、当該排気通路の排気口側の端部に配置された第1フィルタと、上記共通通路の途中で且つ上記蓋部材の上記所定方向の中央部に配置された第2フィルタとを備える。
【0011】
本発明者は、電解液の減少を抑制するために、排気通路の通気抵抗を増大させることを検討した。通気抵抗が増大すると、排気通路を通って外部に排出される気体の量が減少し、これに伴って外部に放出される水蒸気や電解液ミストが減少する。通気抵抗を増大させる手段として、外部スパークの侵入防止を目的として排気通路に配置される多孔質フィルタの目を細かくすることが考えられる。しかし、フィルタの目を細かくすると、塵芥等によるフィルタの目詰まりが発生し易くなる。
【0012】
そこで、本発明者は、排気通路に2つの同じフィルタを直列に配置して、フィルタによる通気抵抗を2倍にすることを思いつき、電解液の減少量を測定する実験を行った。結果は予期したとおり、フィルタが2つの場合の減液量は、フィルタが1つの場合の減液量よりも少なくなった。この実験で本発明者は、予期せぬ奇妙な現象を発見した。というのは、2つのフィルタを離間して配置した場合の減液量が、2つのフィルタを接触させて配置した場合の減液量よりも、更に少なくなったのである。
【0013】
2つのフィルタを離間して配置した場合に減液量が更に少なくなる理由は定かではないが、次のように推測される。前述の電解液の減少量を測定する実験は、車両等における実際の使用環境を模擬して、高温環境下にて鉛蓄電池に上下方向の振動を加えて行われる。2つのフィルタを接触させて配置した場合、それらフィルタの電槽側の空間(以下、「電槽側空間」と称す。)は、水蒸気と電解液ミストに満たされて、湿度が高い状態となる。フィルタの排気口側の空間(以下、「排気口側空間」と称す。)は、鉛蓄電池の外部と連通しており、湿度が低い状態となる。
【0014】
振動によって電槽内の液面が揺動すると、電槽から気体が押し出される、もしくは、外部から電槽へと気体が吸い込まれる。電槽から気体が押し出される場合、これに伴って、押し出された空気に含まれる水蒸気及びミストは、鉛蓄電池の外部に放出される。次いで、振動によって外部から電槽へと気体が吸い込まれる場合、吸い込まれる気体は、鉛蓄電池の外部の湿度が低い気体であるから、電槽側空間及び電槽内の湿度は低下し、電槽内の電解液の気化が進行する。これらの気体の移動を繰り返すことで、電槽内の水蒸気及びミストが鉛蓄電池の外部に放出されてゆく。
【0015】
一方、2つのフィルタを離間して配置した場合、電槽側フィルタと排気口側フィルタとの間に空間(以下、「中間空間」と称す。)が存在することになる。まず、電槽側フィルタの電槽側の空間(電槽側空間)は、前述の場合と同様、水蒸気と電解液ミストに満たされて、湿度が高い状態となる。排気口側フィルタの排気口側の空間(排気口側空間)は、鉛蓄電池の外部と連通しており、前述の場合と同様、湿度が低い状態となる。そして中間空間は、電槽側空間と排気口側空間との中間の湿度になると考えられる。つまり、フィルタが1つであった場合における電槽側空間と排気口側空間との間の湿度の差より、フィルタが2つであった場合における電槽側空間と中間空間との間、および中間空間と排気口側空間との間のそれぞれの湿度の差は小さくなると考えられる。
【0016】
振動によって電槽内の液面が揺動すると、電槽と電槽側空間との間、電槽側空間と中間空間との間、中間空間と排気口側空間との間でそれぞれ気体のやり取りが行われる。その際、電槽側空間と中間空間との間における気体の出入りは、湿度の差が小さいためにフィルタが1つであった場合における電槽側空間と排気口側空間との間における気体の出入りと比べて抑制されると考えられる。同様に、中間空間と排気口側空間との間における気体の出入りは、湿度の差が小さいためにフィルタが1つであった場合における電槽側空間と排気口側空間との間における気体の出入りと比べて抑制されると考えられる。
【0017】
また、2つのフィルタが十分な離間距離をとらずに配置された場合は、上述の予期せぬ減液量抑制の効果は十分に得られないと推察される。なぜなら、2つのフィルタの間の中間空間が十分な体積を有していない場合、振動によって気体の移動が起こった際に、電槽側空間の湿度の高い気体が中間空間でとどまらずに、そのまま排気口側空間へと放出されることが考えられるからである。このことから、電解液の減少を抑制するためには、2つのフィルタを十分な距離をもって離間する必要があると考えられる。そこで、1つのフィルタを排気通路の排気口側の端部に配置し、もう1つのフィルタを蓋部材の所定方向の中央部に配置すれば、中間空間として十分な体積を有することができるため、電解液の減少を抑制することができる。
【0018】
ところで、鉛蓄電池が使用されると、前述のように一般に電解液が減少するが、その減少の程度は、各セル間で異なるという現象が生じる。たとえば、鉛蓄電池の通常の使用状態(典型的には自動車のエンジンルーム内に設置された状態)では、エンジンルーム内の熱が鉛蓄電池の温度を上昇させるが、このときに電槽の外側に配置されているセルがより強く熱の影響を受けて高温となる。そのため、電解液の蒸発が進み、その減少量が増えると考えられる。本発明では、第2フィルタが共通通路の中央部に配置されているので、各セルから第2フィルタまでの距離は、電槽の内側よりも外側に配置されているセルの方が長くなる。この距離の差が生じることにより、外側に配置されているセルの方が個別通路内において、一度蒸発した電解液が再度液化し、各セルに還流しやすくなることが考えられる。すなわち、各セル間での電解液の減少量の差が緩和される。
【0019】
さらに、第2フィルタは共通通路に配置されているため、各セル間がフィルタを介さずに連通している。この場合、各セルに対応する上記電槽側空間内の水蒸気及び電解液ミストの挙動が、各セル間で湿度・圧力等の不均衡を緩和するように働くと考えられる。すなわち、各セル間での電解液の減少量の差がさらに緩和される。
【0020】
本鉛蓄電池の実施形態として、上記所定方向の末端に位置するセル室から上記第2フィルタまでの上記個別通路の長さは、その余のセル室から上記第2フィルタまでの上記排気通路の長さよりも長く設定されているのが好ましい。
【0021】
[詳細説明]
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池について、適宜図面が参照されつつ詳細に説明される。
【0023】
1.全体の構成
【0024】
図1及び図3が示すように、鉛蓄電池1は、流動可能な電解液を備える液式蓄電池である。図2にも示されるように、鉛蓄電池1は、電槽17と、極板群30及び電解液14(図3参照)と、端子部38及び39と、蓋部材45とを備える。なお、図1及び図3は、鉛蓄電池1の通常の使用状態における姿勢を示している。この状態で鉛蓄電池1が設置される設置面は水平方向に沿っており、本明細書では、この設置面に対して直交する方向が上下方向11と定義される。電槽17の横幅方向、すなわち、図1おいて端子部38と端子部39を結ぶ仮想線の方向が左右方向13(特許請求の範囲に記載された「所定方向」に相当)と定義され、電槽17の奥行方向が前後方向12と定義される。前後方向12のうち端子部38、39が配置された側が後方と定義される。
【0025】
電槽17は、合成樹脂からなる箱形の部材であり、4枚の外壁27及び底壁28を備えている。4枚の外壁27のうち2枚の外壁27は前後方向12に対向し、その余の外壁27は左右方向13に対向する。電槽17の上面は開放されており、開口18が形成されている。この開口18に連続して、収容室19が形成されている。図2が示すように、収容室19内に左右方向13に沿って等間隔に、5枚の隔壁29が配置されている。各隔壁29及び外壁27により、6つのセル室21~26が右方から左方へ順に形成されている。各セル室21~26に、希硫酸からなる電解液14と、極板群30とが収容されている。すなわち、電極群30及び電解液14を収容した6つのセル室21~26が収容室19内に左右方向13に沿って並んで区画されている。本実施形態では、各セル室21~26の内面形状は矩形を呈し、各セル室21~26の前後方向12(長手方向)の寸法が、左右方向13(短手方向)の寸法よりも大きい。各セル室21~26の前後方向12の寸法は、左右方向13の寸法の2.5倍以上であるのが好ましく、6.3倍以下であるのが好ましい。図2が例示するように、セル室21~26の前後方向12の寸法が、左右方向13の寸法の4.1倍であるとさらに好ましい。
【0026】
極板群30は、図3が示すように、正極板31と、負極板32と、セパレータ33とから構成されている。セパレータ33は、正極板31と負極板32との間に配置され、正極板31と負極板32とを仕切る。正極板31及び負極板32は、格子体に活物質が充填されて構成されている。正極板31の活物質の主成分は二酸化鉛であり、負極板32の活物質の主成分は鉛である。
【0027】
正極板31の上部に耳部34が設けられ、負極板32の上部に耳部35が設けられている。セル室21~26の内部において、耳部34は正極用のストラップ36に接続され、耳部35は負極用のストラップ36に接続されている。ストラップ36は、左右方向13(図3において紙面に垂直な方向)に延びる板状の部材である。これにより、各セル室21~26内の正極板31が正極用のストラップ36によって電気的に接続され、各セル室21~26内の負極板32が負極用のストラップ36によって電気的に接続されている。隣り合うセル室21~26の正負のストラップ36同士は、ストラップ36に形成された接続部37を介して電気的に接続されている。これにより、6つのセル室21~26の極板群30が、電気的に直列に接続されている。
【0028】
図3が示すように、蓋部材45は、中蓋50及び上蓋100を有し、後述される排気口201(図1及び図7参照)が設けられている。図4は、中蓋50の平面図(上蓋100が外された状態)であり、図5は、中蓋50を下方から見た底面図である。
【0029】
中蓋50は、電槽17に嵌め合わされ、上記開口18を封止する。上蓋100は、中蓋50に設けられている。中蓋50は、合成樹脂からなり、図4及び図5が示すように、蓋板51とフランジ部52とを備える。このフランジ部52は、蓋板51の周縁に沿って形成されている(図3及び図5参照)。本実施形態では、上記排気口201は、図1に示されるように、上蓋100の右側面に形成されている。
【0030】
蓋板51は、上記開口18に対応した大きさの部材であり、上記開口18を確実に封止する。図5が示すように、蓋板51の下面に、上記フランジ部52に沿って周壁53が形成されて、当該周壁53に連続して複数の蓋側隔壁54が形成されている。
【0031】
周壁53は、蓋板51の下面から下方へ突出している。周壁53は、略矩形の環状に形成されており、電槽17の開口18の周縁形状に対応している。蓋側隔壁54は、蓋板51の下面から下方へ突出している。各蓋側隔壁54は、周壁53の内側を仕切っており、電槽17の各隔壁29(図2参照)と対向する。周壁53が電槽17の開口18周縁に重ねられ、蓋側隔壁54が電槽17の隔壁29に重ねられ、熱処理(熱溶着)により接合される。これにより、周壁53と電槽17との間、及び、蓋側隔壁54と隔壁29との間の気密性が確保される。
【0032】
図1及び図3が示すように、蓋板51は、高面部55と低面部56とを備える。高面部55は、蓋板51の前方と後方とに設けられている。後方の高面部55の左右方向13の両端には、一対の端子部38、39が配置されている。詳しくは、後方の高面部55の左方の端部に正極側端子部38が配置され、右方の端部に負極側端子部39が配置されている。正極側端子部38及び負極側端子部39はほぼ同じ形状であるため、以下、負極側端子部39を例として説明し、正極側端子部38の説明を省略する。
【0033】
図3が示すように、負極側端子部39は、ブッシング41と、極柱42とを備える。ブッシング41は、鉛合金等の金属からなり、中空の円筒状の部材である。上記高面部55に筒型の装着部67が形成されており、ブッシング41は、この装着部67に装着されている。ブッシング41は、上記装着部67を貫通しており、ブッシング41の上部が、高面部55の上面から突出している。ブッシング41の上部、すなわち、上記高面部55から突出した部位は、端子接続部を構成し、当該端子接続部にハーネス端子などの接続端子(図示なし)が組み付けられる。
【0034】
極柱42は、円柱状を呈し、鉛合金等の金属からなる。極柱42は、ブッシング41の内側に位置している。極柱42はブッシング41に比べて長く、極柱42の上部はブッシング41に内挿され、極柱42の下部はブッシング41の下面から下方に突出している。極柱42の上端部(先端)は、ブッシング41に溶接され、極柱42の基端部43は、極板群30のストラップ36に接合されている。
【0035】
図1及び図3が示すように、中蓋50の低面部56は、蓋板51の前方寄りに形成されている。低面部56は、上記各セル室21~26を横断して左右方向13(図3おいて紙面に垂直な方向)に延びている。低面部56の上面は、高面部55の上面よりも低い位置にある。
【0036】
図4及び図5が示すように、中蓋50の低面部56の上面壁57に6つの注液孔68が設けられている。各注液孔68は、左右方向13に沿って並設されている。各注液孔68は、低面部56の上面壁57を上下方向11に貫通しており、6つのセル室21~26にそれぞれ連通している。
【0037】
図4が示すように、低面部56は、下側筒壁69、下側外周壁70及び下側隔壁71を備える。これらは、上面壁57の上面から上方へ突出している。下側筒壁69は、注液孔68を囲む円筒状の隔壁であり、6つの注液孔68のそれぞれに設けられている。下側外周壁70は、低面部56の外縁に沿って設けられ、低面部56を囲む略矩形状の隔壁である。下側隔壁71は、後方の下側外周壁70から前方へ延びる隔壁であって、電槽17の各隔壁29(図2参照)に対応して設けられている。
【0038】
上蓋100は、合成樹脂からなる。図6は、上蓋100の平面図であり、図7は、上蓋の底面図である。これらの図が示すように、上蓋100は、蓋本体101と、フランジ部103とを備える。蓋本体101は、中蓋50の低面部56の形状に対応した長方形の部材であり、中蓋50の低面部56と重ね合わせるようにして取り付けられる(図1及び図3参照)。フランジ部103は、蓋本体101の左方及び右方の外縁に形成されている。フランジ部103は、蓋本体101から下方に突出しており、中蓋50の低面部56の左方及び右方の端部の外側に位置する。
【0039】
図6及び図7が示すように、蓋本体101の上面壁102は、左右方向13に並ぶ6つの注液孔104を備える。各注液孔104は、中蓋50の注液孔68(図4参照)に対応する位置に形成されている。各注液孔104は、蓋本体101の上面壁102を上下方向11(紙面に垂直な方向)に貫通しており、6つのセル室21~26にそれぞれ連通している。各注液孔104及び各注液孔68を通じて、各セル室21~26に電解液14が注液される。なお、図1が示すように、各注液孔104に、液口栓105が取り付けられるようになっており、液口栓105によって注液孔104が閉じられる。
【0040】
蓋本体101は、上側筒壁106、上側外周壁107及び上側隔壁108を備える。これらは、上面壁102の下面から下方へ突出している。上側筒壁106は、注液孔104を囲む円筒状の隔壁であり、6つの注液孔104のそれぞれに設けられている。上側外周壁107は、略矩形状の隔壁であり、本体101の外縁に沿ってフランジ部103の内側に設けられている。上側隔壁108は、後方の上側外周壁107から前方へ延びる隔壁である。上側隔壁108は、電槽17の各隔壁29に対応して設けられている。
【0041】
各上側筒壁106は、各下側筒壁69に対応している。上蓋100が中蓋50の低面部56に配置されるとき、各上側筒壁106は、各下側筒壁69の上方に重なって配置される。各上側筒壁106と各下側筒壁69とは熱溶着により接合され、各上側筒壁106と各下側筒壁69との間の気密性が確保される。
【0042】
上側外周壁107は、下側外周壁70に対応している。上蓋100が中蓋50の低面部56に配置されるとき、上側外周壁107は、下側外周壁70の上方に重なって配置される。上側外周壁107と下側外周壁70とは熱溶着により接合され、上側外周壁107と下側外周壁70との間の気密性が確保される。
【0043】
各上側隔壁108は、各下側隔壁71に対応している。上蓋100が中蓋50の低面部56に配置されるとき、各上側隔壁108は、各下側隔壁71の上方に重なって配置される。各上側隔壁108と各下側隔壁71とは熱溶着により接合され、各上側隔壁108と各下側隔壁71との間の気密性が確保される。
【0044】
2.排気通路
【0045】
図4及び図7が示すように、蓋部材45は、中蓋50と上蓋100(図3参照)との間に、排気通路2を備えている。排気通路2は、電槽17の収容室19及び蓋部材45に設けられた排気口201(図1参照)を接続する通路である。排気通路2は、電槽17のセル室21~26で発生するガスを、排気口201へ導き、鉛蓄電池1の外部へ排出する。排気通路2は、複数の個別通路81~86及び共通通路9を含む。
【0046】
本実施形態では、蓋部材45は、6つの個別通路81~86を備えている。各個別通路81~86は、6つのセル室21~26にそれぞれ連通する。
【0047】
共通通路9は、個別通路81~86と連通し、排気口201に接続している。共通通路9は、7つの通路91~97により構成されている。
【0048】
個別通路81及び通路91、並びに個別通路86及び通路96は、同図が示すように左右対称に配置されている。詳細には、個別通路81及び通路91、並びに個別通路86及び通路96は、同図に示された仮想平面15(法線が左右方向13に平行で蓋部材45の左右方向13の中央を通る平面)に関して対称な形状である。同様に、個別通路82及び通路92、並びに個別通路85及び通路95は、上記仮想平面15に関して対称な形状である。個別通路83及び通路93、並びに個別通路84及び通路94は、上記仮想平面15に関して対称な形状である。個別通路82及び通路92の形状と、個別通路83及び通路93の形状とは、概ね同じである。
【0049】
3.個別通路
【0050】
個別通路81~86は、中蓋50と上蓋100(図3参照)との間において、電槽17のセル室21~26ごとに設けられている。個別通路81~86は、共通通路9に連通しており、セル室21~26から流出するガスを共通通路9へ流す機能を果たす。個別通路81~86は、排気部6と、後述する下側通路壁61~66(図8図9参照)及び上側通路壁111~116により形成される通路とを含む。排気部6は、概ね筒形であり、ガスの通り道となっている。
【0051】
排気部6について詳細に説明される。図4が示すように、中蓋50の低面部56は、左右方向13に並ぶ6つの下側筒部78を備える。下側筒部78は、図4及び図8が示すように角筒形状であり、下側外周壁70の一部と、下側隔壁71の一部と、2つの下側周壁72、73(図8参照)とから構成されている。2つの下側周壁72、73は、低面部56の上面壁57の上面から上方に突出している。
【0052】
図4が示すように、低面部56の上面壁57は、左右方向13に並ぶ6つの連通孔74を備える。各連通孔74は、各下側筒部78の内側に配置されている。各連通孔74は、低面部56の上面壁57を上下方向11(図4及び図8において紙面に垂直な方向)に貫通し、電槽17の各セル室21~26に連通する。
【0053】
図7が示すように、上蓋100の蓋本体101は、左右方向13に並ぶ6つの上側筒部118を備える。上側筒部118は、図7及び図9が示すように角筒形状である。上側筒部118は、上側外周壁107の一部と、上側隔壁108の一部と、2つの上側周壁109、110とから構成される。2つの上側周壁109、110は、蓋本体101の上面壁102の下面から下方に突出している。
【0054】
各下側筒部78(図4参照)及び各上側筒部118は、上下に重なって一つの排気部6を構成する。上側周壁109(図9参照)は、下側周壁72(図8参照)に対応し、この下側周壁72と重なって、熱溶着により接合される。一方、上側周壁110(図9参照)は、下側周壁73(図8参照)と重ならず、下側周壁73よりも右方に位置する。なお、右端の排気部6においては、上側周壁110は下側周壁73よりも左方に位置する。前述のように、上側外周壁107及び上側隔壁108は、対応する下側外周壁70及び下側隔壁71と重なって、熱溶着により接合される。
【0055】
以上のように構成された各排気部6は、図8及び図9が示すように、各連通孔74を通じて各セル室21~26に連通する。そのため、電槽17の各セル室21~26にて発生したガスは、連通孔74を通って各排気部6の内部に流入し、左右方向13に沿って離間した上側周壁110と下側周壁73との間から流出し、個別通路81~86を通って排気口201へ向けて流れる。
【0056】
次に、下側通路壁61~66及び上側通路壁111~116により形成される通路について具体的に説明する。図8が示すように、中蓋50の低面部56は、電槽17のセル室21~26ごとに、複数の下側通路壁61~66を有している。下側通路壁61~66は、低面部56の上面壁57の上面から上方に突出している。
【0057】
下側通路壁61は、下側筒部78の下側周壁72に連続しており、下側周壁72が左方に延長された壁である。下側通路壁61の左方の先端は、下側隔壁71の近傍で右斜め後方へ折れ曲がり、下側外周壁70の近傍まで延びている。
【0058】
下側通路壁62は、下側隔壁71から右斜め後方へ延びる。下側通路壁62の右方の先端は、下側通路壁65の近傍で後方へ折れ曲がり、下側通路壁61の近傍まで延びる。
【0059】
下側通路壁63は、下側通路壁62から後方へ延び、その先端は下側通路壁61の近傍に位置する。
【0060】
下側通路壁64は、下側隔壁71から左方へ延び、途中から左斜め後方へ延びる。下側通路壁64の先端は、左方の下側隔壁71の近傍で後方へ折れ曲がり、下側通路壁62の近傍まで延びる。
【0061】
下側通路壁65は、下側通路壁64から後方へ延び、その先端は下側通路壁61の近傍に位置する。
【0062】
下側通路壁66は、下側隔壁71から右方へ延びる壁であり、その先端は、右方の下側隔壁71の近傍に位置する。
【0063】
上記下側通路壁61~66は、図8が示すように、向きの異なる壁の集合体である。前述の通り、下側通路壁61~66は、他の下側通路壁61~66や下側隔壁71と連結されており、これにより、屈曲した壁が形成されている。したがって、個別通路81~86の経路が、非直線の迷路形状となる。すなわち、蓋部材45は、下側通路壁61~66を有し、屈曲した個別通路81~86を形成している。
【0064】
図9が示すように、上蓋100の蓋本体101は、上側通路壁111~116を有している。これら上側通路壁111~116は、電槽17のセル室21~26ごとに設けられている。上側通路壁111~116は、蓋本体101の上面壁102の下面から下方に突出している。
【0065】
上側通路壁111は、上側筒部118の上側周壁109に連続して左方に延びている。上側通路壁111の左方の先端は、上側隔壁108の近傍で右斜め後方へ折れ曲がり、上側外周壁107の近傍まで延びる。
【0066】
上側通路壁112は、上側隔壁108から右斜め後方へ延びる。上側通路壁112の右方の先端は、上側通路壁115の近傍で後方へ折れ曲がり、上側通路壁111の近傍まで延びる。
【0067】
上側通路壁113は、上側通路壁112から後方へ延び、その先端は、上側通路壁111の近傍に位置する。
【0068】
上側通路壁114は、上側隔壁108から左方へ延び、途中から左斜め後方へ延びる。上側通路壁114の先端は、左方の上側隔壁108の近傍で後方へ折れ曲がり、上側通路壁112の近傍まで延びる。
【0069】
上側通路壁115は、上側通路壁114から後方へ延び、その先端は、上側通路壁111の近傍に位置する。
【0070】
上側通路壁116は、上側隔壁108から右方へ延びる壁であり、その先端は、右方の上側隔壁108の近傍に位置する。
【0071】
上記上側通路壁111~116は、図9が示すように、向きの異なる壁の集合体である。上側通路壁111~116は、他の上側通路壁111~116や上側隔壁108と連結されており、これらが屈曲した壁を形成している。これにより、個別通路81~86の経路が、非直線の迷路形状となる。すなわち、蓋部材45は、上側通路壁111~116を有し、屈曲した個別通路81~86を形成している。
【0072】
上側通路壁111~116及び下側通路壁61~66は、上下に重なって通路壁を形成する。上側通路壁111~116は、下側通路壁61~66に対応しており、対応する下側通路壁61~66と重なって、熱溶着により接合される。このようにして形成された通路壁、下側隔壁71、上側隔壁108、下側外周壁70及び上側外周壁107の間に、個別通路81~86が設けられている。
【0073】
図8が示すように、個別通路82及び83の経路は、連通孔74を始点として、下側通路壁61と下側外周壁70との間を左方へ延び、下側通路壁61と下側隔壁71との間を下方に延びる。次に、この経路は、下側通路壁61と下側通路壁62との間を右方へ延び、下側通路壁62と下側通路壁65との間を下方へ延びる。次に、この経路は、下側通路壁62と下側通路壁64との間を左方へ延び、下側通路壁64と下側隔壁71との間を下方へ延びる。そして、この経路は、下側通路壁64と下側通路壁66との間を右方へ延び、下側通路壁66と下側隔壁71との隙間に至り、終点となる。この終点において、個別通路82及び83は、共通通路9と合流する。
【0074】
図8が示すように、個別通路81の経路は、連通孔74を始点として、下側通路壁61と下側外周壁70との間を右方へ延び、下側通路壁61と下側外周壁70との間を下方へ延びる。次に、この経路は、下側通路壁61と下側通路壁62との間を左方へ延び、下側通路壁62と下側通路壁65との間を下方へ延びる。次に、この経路は、下側通路壁62と下側通路壁64との間を右方へ延び、下側通路壁64と下側筒部79との間を下方へ延びる。そして、この経路は、下側通路壁64と下側筒部79との隙間に至り、を終点となる。この終点において、個別通路81は、共通通路9と合流する。
【0075】
ここまで、上記経路に関して、図8が示す中蓋50の側について説明したが、図9が示す上蓋100の側についても同様の構成である。また、個別通路84~86については、個別通路81~83と上記仮想平面15に関して対称な形状であるから、その説明が省略される。
【0076】
4.共通通路
【0077】
共通通路9は、中蓋50と上蓋100との間に設けられている。共通通路9は、6つの個別通路81~86から流入するガスを集合させ、排気口201から鉛蓄電池1の外部へ排出する。本実施形態では、図4及び図7が示すように、共通通路9は、7つの通路91~97により構成されている。通路93及び通路94と通路97との間に中間フィルタ部4が設けられている(図7参照)。すなわち、共通通路9の途中に、中間フィルタ部4が配置されている。通路97の排気口201側の端部に、一括排気部3が設けられている。
【0078】
5.一括排気部
【0079】
一括排気部3は、中蓋50と上蓋100との間に設けられており、セル室21~26で発生したガスを鉛蓄電池1の外部へ一括して排気する機能を果たす。本実施形態では、一括排気部3は、図7が示すように、蓋部材45の右方の端に配置されている。なお、一括排気部3は他の位置に配置されてもよく、例えば、蓋部材45の左方の端に配置されてもよい。
【0080】
図8が示すように、中蓋50の低面部56は、下側筒部79を備える。下側筒部79は、低面部56の上面壁57の上面から上方に突出している。下側筒部79は、右端の下側筒壁69及び下側外周壁70に連続している。
【0081】
図9が示すように、上蓋100の蓋本体101は、上側筒部119と、排気ダクト200とを備える。上側筒部119は、蓋本体101の上面壁102の下面から下方に突出している。上側筒部119は、右端の上側筒壁106及び上側外周壁107に連続している。排気ダクト200の左方の端部は、上側筒部119の内部の空間と連通している。排気ダクト200の右方の端部は、上蓋100の右方の側面に形成された排気口201に接続されている。
【0082】
上側筒部119の内部の空間に、フィルタ205(特許請求の範囲に記載された「第1フィルタ」に相当)が収納されている。フィルタ205の下面は、上側筒部119の下面よりも上方に位置している。フィルタ205は、外部スパークが鉛蓄電池1の内部に侵入するのを抑制する。フィルタ205は、円板状の部材であって、例えば連続した空孔を有する多孔質体である。多孔質体は、例えば、アルミナ等のセラミックスや、ポリプロピレン等の樹脂粒子の焼結体である。フィルタ205の孔径は、例えば、平均径が数十~数百μmである。
【0083】
上側筒部119及び下側筒部79は、上下に重なった状態で熱溶着され、一括排気部3を形成する。通路97を通過するガスは、下側筒部79(図8参照)の前方の開口から下側筒部79の内部の空間に流入し、フィルタ205に達する。フィルタ205を通過したガスは、上側筒部119の上方の空間から排気ダクト200に流入し、排気口201を通って鉛蓄電池1の外部へ放出される。
【0084】
6.中間フィルタ部
【0085】
中間フィルタ部4は、中蓋50と上蓋100との間に設けられている。本実施形態では、中間フィルタ部4は、図7が示すように、蓋部材45の左右方向13の中央部に配置されている。本実施形態では、中間フィルタ部4は、上記左右方向13の中央に配置されている。具体的には、中間フィルタ部4の中心が上記仮想平面15上に配置されている。なお、中間フィルタ部4は上記中央部に配置されていればよく、当該中央部とは、上記仮想平面15を基準として左右方向13に設定された所定領域Eを意味する。この所定領域Eは、上蓋100の左右方向13の長さAに対して、|E|≦0.25Aを満足する領域である。|E|≦0.2がより好ましく、|E|≦0.1がより好ましい。本実施形態では、E=0である。
【0086】
図8図10及び図11が示すように、中蓋50の低面部56は、横断壁75を備える。横断壁75は、低面部56の上面壁57の上面から上方に突出している。横断壁75は、左方の下側筒壁69及び右方の下側筒壁69に連結している。つまり、横断壁75は、共通通路9を横断する壁である。
【0087】
図9図10及び図11が示すように、上蓋100の蓋本体101は、上側筒部211を備える。上側筒部211は、蓋本体101の上面壁102の下面から下方に突出している。上側筒部211は、右方の上側筒壁106、左方の上側筒壁106、及び上側隔壁108に連結している。
【0088】
上側筒部211の内部の空間に、円板状のフィルタ212(特許請求の範囲に記載された「第2フィルタ」に相当)が収納されている。フィルタ212の中心は、上記中間フィルタ部4の中心と一致する。フィルタ212の下面は、上側筒部211の下面よりも上方に位置している。フィルタ212は、例えば連続した空孔を有する多孔質体である。多孔質体は、例えば、アルミナ等のセラミックスや、ポリプロピレン等の樹脂粒子の焼結体である。フィルタ212の孔径は、例えば、平均径が数十~数百μmである。本実施形態では、フィルタ212として、フィルタ205と形状、材質、及び特性が同じものが用いられる。
【0089】
図11が示すように、横断壁75は、フィルタ212の下面に下方から当接する。フィルタ212の上方には、上側筒部211、蓋本体101及びフィルタ212に囲まれた空間16が存在する。通路93及び94を通るガスが、上側筒部211の下方に流入し、横断壁75に導かれてフィルタ212を通過して、フィルタ212の上方の空間16に流入する。空間16に流入したガスは、再びフィルタ212を通過し、上側筒部211と横断壁75との間を通って、横断壁75の前方から通路97へ流出する。すなわち、本実施形態の中間フィルタ部4では、通路93及び94から上側筒部211に流入したガスは、フィルタ212を2回通過する。
【0090】
前述のように、中間フィルタ部4は、通路93及び通路94と通路97との間に配置され(図9参照)、一括排気部3は、通路97の排気口201側の端部(本実施形態では末端)に配置されている。すなわち、中間フィルタ部4と一括排気部3とは、通路97に沿って互いに離間している。つまり、上記フィルタ212は、通路97の経路に沿って上記フィルタ205と所定距離だけ離間している。この所定距離は、通路97の経路の長さであって、例えば115mmに設定される。
【0091】
図7が示すように、通路91~97は、複雑な構造である。これらは、下側連結壁76(図8参照)、上側連結壁117(図9参照)、下側筒壁69(図8参照)、下側外周壁70(図8参照)、下側隔壁71(図8参照)、下側筒部79(図8参照)、上側筒壁106(図9参照)、上側外周壁107(図9参照)、上側隔壁108(図9参照)及び上側筒部119(図9参照)により区画形成される。
【0092】
図8が示すように、中蓋50の低面部56は、下側連結壁76を備える。下側連結壁76は、低面部56の上面壁57の上面から上方に突出している。下側連結壁76は、右方の下側筒壁69、左方の下側筒壁69、及び下側隔壁71と連結している。
【0093】
図9が示すように、上蓋100の蓋本体101は、上側連結壁117を備える。上側連結壁117は、蓋本体101の上面壁102の下面から下方に突出している。上側連結壁117は、右方の上側筒壁106及び左方の上側筒壁106と連結している。
【0094】
上側連結壁117と下側連結壁76(図8参照)とは、上下に重なって通路壁を形成する。詳しくは、上側連結壁117は下側連結壁76に対応しており、対応する下側連結壁76の上に重なって、熱溶着により接合される。このようにして形成された通路壁、下側筒壁69、下側外周壁70、下側隔壁71、下側筒部79、上側筒壁106、上側外周壁107、上側隔壁108及び上側筒部119の間に、通路91~97が形成されている。
【0095】
図9が示すように、通路91の経路は、個別通路81の終点(上側通路壁114と上側筒部119との隙間)を始点として、上側筒部119及び上側筒壁106と、上側通路壁114及び上側隔壁108との間を左斜め前方へ延びる。さらに、この経路91は、上側隔壁108と上側連結壁117との隙間から、上側隔壁108と上側筒壁106との間を通って下方へ延び、個別通路82の終点(上側通路壁116と上側隔壁108との隙間)に至る。
【0096】
通路92の経路は、個別通路82及び通路91の終点(上側通路壁116と上側隔壁108との隙間)を始点として、上側通路壁116及び上側隔壁108と、上側筒壁106との間を左方へ延びる。さらに、この経路92は、上側隔壁108と上側連結壁117との隙間から、上側隔壁108と上側筒壁106との間を通って下方へ延び、個別通路83の終点(上側通路壁116と上側隔壁108との隙間)に至る。
【0097】
通路93の経路は、個別通路83及び通路92の終点(上側通路壁116と上側隔壁108との隙間)を始点として、上側通路壁116と上側筒壁106との間を左方へ延びる。さらに、この経路93は、上側隔壁108と上側筒壁106との間を左斜め前方へ進み、中間フィルタ部4に至る。
【0098】
通路97の経路は、中間フィルタ部4を始点として、上側筒壁106及び上側連結壁117と、上側外周壁107との間を右方へ延び、さらに、後方へ延びて一括排気部3に至る。
【0099】
各通路91~93、97に関して、上蓋100の側(図9参照)の構造について説明がなされているが、中蓋50の側(図8参照)についても同様である。また、通路94~96は、通路91~93と仮想平面15に関して対称な形状であるから、その説明は省略される。
【0100】
[排気について]
【0101】
各セル室21~26で発生したガスが排気通路2を介して排気される要領について、説明される。
【0102】
左右方向13の右方の端に位置するセル室21(図2参照)で発生したガスは、図4が示すように、個別通路81と、通路91、92、93を通り、図9が示すように、中間フィルタ部4及び通路97並びに一括排気部3を経て排気口201から鉛蓄電池1の外部へ排出される。セル室21(図2参照)の左方に隣接して位置するセル室22で発生したガスは、図4が示すように、個別通路82と、通路92、93を通り、図9が示すように、中間フィルタ部4及び通路97並びに一括排気部3を経て排気口201から鉛蓄電池1の外部へ排出される。セル室22(図2参照)の左方に隣接して位置するセル室23で発生したガスは、図4が示すように、個別通路83と、通路93を通り、図9が示すように、中間フィルタ部4及び通路97並びに一括排気部3を経て排気口201から鉛蓄電池1の外部へ排出される。
【0103】
各セル室21~26から中間フィルタ部4までの排気通路2の長さ(通路長)は、次のとおりである。図4が示すように、セル室21の通路長は、個別通路81と、通路91と、通路92と、通路93の長さの合計である。セル室22の通路長は、個別通路82と、通路92と、通路93の長さの合計である。したがって、セル室21の通路長は、セル室22の通路長よりも長い。セル室23の通路長は、個別通路83と、通路93の長さの合計である。したがって、セル室22の通路長は、セル室23の通路長よりも長い。
【0104】
同様に、左右方向13の左方の端に位置するセル室26(図2参照)で発生したガスは、図4が示すように、個別通路86と、通路96、95、94を通り、図9が示すように、中間フィルタ部4及び通路97並びに一括排気部3を経て排気口201から鉛蓄電池1の外部へ排出される。セル室26(図2参照)の右方に隣接して位置するセル室25で発生したガスは、図4が示すように、個別通路85と、通路95、94を通り、図9が示すように、中間フィルタ部4及び通路97並びに一括排気部3を経て排気口201から鉛蓄電池1の外部へ排出される。セル室25(図2参照)の右方に隣接して位置するセル室24で発生したガスは、図4が示すように、個別通路84と、通路94を通り、図9が示すように、中間フィルタ部4及び通路97並びに一括排気部3を経て排気口201から鉛蓄電池1の外部へ排出される。
【0105】
セル室26の通路長は、個別通路86と、通路96と、通路95と、通路94の長さの合計である。セル室25の通路長は、個別通路85と、通路95と、通路94の長さの合計である。したがって、セル室26の通路長はセル室25の通路長よりも長い。セル室24の通路長は、個別通路84と、通路94の長さの合計である。したがって、セル室25の通路長はセル室24の通路長よりも長い。
【0106】
セル室21及びセル室26は、左右方向13の端に位置するセル室の一例である。セル室22、23、24、及び25は、その余のセル室の一例である。
【0107】
図4が示すように、中蓋50の低面部56は、左右方向13に並ぶ6つの還流孔77を備える。各還流孔77は、下側外周壁70、下側隔壁71、下側周壁73及び下側通路壁61に囲まれた領域に位置している。各還流孔77は、低面部56の上面壁57を上下方向11(同図において紙面に垂直な方向)に貫通し、電槽17の各セル室21~26に連通する。
【0108】
低面部56は、個別通路81~86の底面を構成する。この低面部56の上面壁57の上面は、還流孔77に近いほど上下方向11に関して低くなるように傾斜している。これにより、セル室21~26から排出されるガスに含まれる水蒸気(水滴)や、電解液等の液滴は、還流孔77を通じてセル室21~26へ還流する。すなわち、セル室21~26で発生したガスに含まれる水蒸気は、ガスが個別通路81~86を通過する際に、個別通路81~86内にて結露する。結露した液滴は、上面壁57の上面(傾斜面)に沿って還流孔77に向かって流れる。上記ガスに含まれる水蒸気等の液滴は、各セル室21~26に還流する。
【0109】
[変形例]
【0110】
中間フィルタ部4(図9参照)において、フィルタ212が上記一実施形態と異なる態様で配置されてもよい。以下では、上記一実施形態と同一の構成には同一の符号が付され、その説明は省略される。
【0111】
図12及び図13が示すように、中蓋50の低面部56は、下側横断壁311、312を備える。下側横断壁311、312は、低面部56の上面壁57の上面から上方に突出している。下側横断壁311、312は、左方の下側筒壁69及び右方の下側筒壁69に連結している。
【0112】
上蓋100の蓋本体101は、上側横断壁321、322を備える。上側横断壁321、322は、蓋本体101の上面壁102の下面から下方に突出している。上側横断壁321、322は、左方の上側筒壁106及び右方の上側筒壁106に連結している。
【0113】
上側横断壁321、322は、下側横断壁311、312に対応する。図13が示すように、上側横断壁321、322の下面は、上側筒壁106や上側隔壁108等の下面よりも上方に位置する。上側横断壁321、322と、下側横断壁311、312とは、上下方向11に沿って離間している。
【0114】
本変形例では、図13が示すように、フィルタ212は、その厚さ方向が前後方向12に一致する姿勢で中蓋50と上蓋100との間に配置される。フィルタ212の下端が、下側横断壁311と下側横断壁312との間に位置する。フィルタ212の上端が、上側横断壁321と上側横断壁322との間に位置する。通路93及び94を通るガスは、下側横断壁311と上側横断壁321との間を通り、フィルタ212を後方から前方へ通過する。フィルタ212を通過したガスは、下側横断壁312と上側横断壁322との間を通り、通路97へ流出する。すなわち、この変形例に係る中間フィルタ部4は、通路93及び94を通るガスは、フィルタ212を1回通過する。
【0115】
[実施例]
【0116】
高温環境下にて定電圧充電を行いながら鉛蓄電池1に所定時間継続して振動を加えて、電解液の減少量を測定する試験を、次の条件で行った。
【0117】
(1)一括排気部3及び中間フィルタ部4におけるフィルタ205、212の配置等が異なる以下の4種類の鉛蓄電池1に対して試験を行う。
【0118】
実施例1:一括排気部3に1つのフィルタ205を配置する。中間フィルタ部4の形態は、上記の変形例の形態とする。中間フィルタ部4に1つのフィルタ212を配置する。フィルタ205とフィルタ212との間の距離は115mmである。
【0119】
実施例2:一括排気部3に1つのフィルタ205を配置する。中間フィルタ部4の形態は、上記の実施形態の形態とする。中間フィルタ部4に1つのフィルタ212を配置する。フィルタ205とフィルタ212との間の距離は115mmである。
【0120】
比較例1:一括排気部3に1つのフィルタ205を配置する。中間フィルタ部4にはフィルタを配置しない。
【0121】
比較例2:一括排気部3に2つのフィルタ205を重ねて配置する。2つのフィルタ205は接触している。中間フィルタ部4にはフィルタを配置しない。
【0122】
なお、試験に用いるフィルタ205及びフィルタ212の通気抵抗は、いずれも0.3KPaである。フィルタの通気抵抗は次のようにして測定される。フィルタを円筒の内部に配置して、円筒の一方の開口から流量1リットル/分の空気を供給し、フィルタを通過する前の空気の圧力を測定する。測定された圧力から、大気圧を差し引いた値を、フィルタの通気抵抗とする。
【0123】
(2)環境温度は60℃、振動の周波数は10Hz~55Hzでスイープ、加速度は9.8m/sで上下方向、試験時間は120時間とする。
【0124】
(3)試験開始前の鉛蓄電池1の重量と、試験終了後の鉛蓄電池1の重量との差を、試験時間(120時間)で除して、単位時間当たりの減液量を求める。
【0125】
試験結果は、表1に示される通り、実施例1の減液量は0.42g/h、実施例2の減液量は0.37g/h、比較例1の減液量は0.54g/h、比較例2の減液量は0.47g/hとなった。
【0126】
【表1】
【0127】
比較例2は、比較例1に比べて減液量が小さい。これは、比較例2の一括排気部3にて2つのフィルタ205が重ねて配置されており、比較例2の一括排気部3の通気抵抗が比較例1の2倍であることによると考えられる。
【0128】
実施例1は、比較例2に比べて減液量が小さい。排気通路2に配置されるフィルタの数については、実施例1と比較例2とで同じ(2つ)である。したがって、実施例1の減液量の減少は、通気抵抗の増加に起因するものではない。ここで、比較例2では、2つのフィルタが重ねて配置されているのに対し、実施例1では、2つのフィルタが一括排気部3と中間フィルタ部4とに配置され、離間している。実施例1の減液量の減少は、一括排気部3のフィルタ205と中間フィルタ部4のフィルタ212とが離間していることによるものであると推測される。
【0129】
実施例2は、実施例1に比べて減液量が小さい。実施例1の中間フィルタ部4は、上述した変形例の形態である。変形例の中間フィルタ部4では、図13に示されるように、通路93及び94から流入したガスが、フィルタ212を1回通過して、通路97へ流出する。一方、実施例2の中間フィルタ部4は、上述した実施形態の形態である。実施形態の中間フィルタ部4では、図11に示されるように、通路93及び94から流入したガスが、フィルタ212を2回通過して、通路97へ流出する。したがって、実施例2の中間フィルタ部4は、実施例1の中間フィルタ部4に比べて、通気抵抗が大きい。これにより、実施例2の減液量が実施例1に比べて小さくなったと考えられる。
【0130】
以上の試験から、排気通路2に、排気口201側の末端に配置されたフィルタ205と、フィルタ205と離間して排気通路2の途中に配置されたフィルタ212とを設けることにより、電解液の減少を顕著に抑制できることが確認できた。また、中間フィルタ部4の実施形態の形態とすることにより、電解液の減少を抑制できることが確認できた。特に、フィルタ212が共通通路9の中央に配置されているので、各セル室21~26とフィルタ212との間の距離は、セル室21、26からフィルタ212までの距離が最も大きく、電槽7の内側のセル室22、25及びセル室23、24の順に小さくなる。つまり、上記距離は、電槽17の内側よりも外側に配置されているセル室21~26の方が大きくなる。この距離の差は、各セル室21~26からフィルタ212に至るまでの各空間(排気通路2に沿う空間)の容積差を生じさせる。このため、上記各空間内の水蒸気及び電解液14(電解液ミスト)の挙動が各セル室21~26ごとに変化し、各セル室21~26間で湿度・圧力等の不均衡が緩和される。すなわち、各セル室21~26間での電解液14の減少量の差が緩和される。フィルタ212を左右方向13に設定された上記所定領域Eが上蓋100の左右方向13の長さAに対して、|E|≦0.25Aを満足する領域に設置しても上述の各セル室21~26間での電解液14の減少量の差の緩和の効果はある。
【0131】
[他の変形例]
【0132】
上記一実施形態では、図7が示すように、中間フィルタ部4は、通路93及び通路94が合流する位置に配置される。中間フィルタ部4は、排気通路2の途中であれば、他の位置に配置されてもよい。また、中間フィルタ部4が、2つ以上配置されてもよい。
【0133】
上記一実施形態では、図11が示すように、中間フィルタ部4において、フィルタ212の上方に空間16が存在する。この空間16が存在せず、フィルタ212の上面が蓋本体101の上面壁102と当接していてもよい。この形態では、通路93及び94を通るガスが、上側筒部211の下方に流入し、横断壁75に導かれてフィルタ212の内部を通過する。フィルタ212を通過したガスは、上側筒部211と横断壁75との間を通って、横断壁75の前方から通路97へ流出する。
【0134】
一括排気部3の構造を、上記実施形態で説明された中間フィルタ部4の構造と同様にすることも可能である。
【0135】
なお、本発明は、以下の形で実施することができる。
(1)
開口を有し、当該開口に連通し且つ電解液及び電極群を収容した複数のセル室が所定方向に沿って区画された電槽と、
排気口を有し、上記開口を封止する蓋部材とを備え、
当該蓋部材は、
上記電槽の上部に固定される中蓋と、
当該中蓋の上部に固定される上蓋と、
当該上蓋と中蓋との間に形成され、上記セル室の各々と連通する複数の個別通路及び当該各個別通路と連通し上記排気口に接続する共通通路を有する排気通路と、
当該排気通路の排気口側の端部に配置された第1フィルタと、
上記共通通路の途中で且つ上記蓋部材の上記所定方向の中央部に配置された第2フィルタとを備える鉛蓄電池。
【0136】
(2)
上記所定方向の末端に位置するセル室から上記第2フィルタまでの上記個別通路の長さは、その余のセル室から上記第2フィルタまでの上記個別通路の長さよりも長く設定されている
(1)に記載の鉛蓄電池。
【符号の説明】
【0137】
1・・・鉛蓄電池
2・・・排気通路
9・・・共通通路
14・・・電解液
17・・・電槽
18・・・開口
21~26・・・セル室
30・・・極板群
45・・・蓋部材
50・・・中蓋
51・・・蓋板
81~86・・・個別通路
100・・・上蓋
201・・・排気口
205・・・フィルタ(第1フィルタ)
212・・・フィルタ(第2フィルタ)
図1
図2
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図5
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図13