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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】積層フィルム及びそれを用いた偏光板
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230307BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20230307BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20230307BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20230307BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20230307BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20230307BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B3/30
B32B7/023
G02F1/1335 510
H10K50/86
H10K59/10
G06F3/041 490
G06F3/041 495
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018194611
(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公開番号】P2019124913
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2018002583
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018002584
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018002585
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018002586
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018002587
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 尭永
(72)【発明者】
【氏名】柴野 博史
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-118201(JP,A)
【文献】特開2015-132691(JP,A)
【文献】特開2014-065887(JP,A)
【文献】特開2017-161599(JP,A)
【文献】特開2016-200816(JP,A)
【文献】国際公開第2013/100044(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170211(WO,A1)
【文献】特開2007-261140(JP,A)
【文献】国際公開第2015/012199(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 1/00 -43/00
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の特徴(a)~()を有する、基材フィルムと光学等方層とを有する積層フィルムの少なくとも一方の面に透明導電層を有する、透明導電性フィルム。
(a)基材フィルムの少なくとも片面は凹凸面であり、凹凸面の算術平均粗さ(Ra)が0.4~4μmである。
(b)基材フィルムの屈折率異方性(ΔBfNxy)が0.07~0.2である。
(c)基材フィルムの凹凸面上には光学等方層が設けられており、光学等方層の屈折率がBfny-0.15~Bfnx+0.15であり、かつ、1.57以上である。
(但し、基材フィルムの遅相軸方向の屈折率をBfnx、進相軸方向の屈折率をBfnyとし、ΔBfNxy=Bfnx-Bfnyとする)
(d)基材フィルムのリタデーション差(ΔRe)が90~800nmである。
(但し、ΔRe=Ra×ΔBfNxyである)
(e)基材フィルムの面内リタデーションが3000~30000nmである。
(f)基材フィルムのBfnxが1.67~1.73である。
(g)基材フィルムがポリエステルフィルムである。
(h)光学等方層は、前記凹凸面上に他の層を介することなく直接接触して設けられているか、又は、易接着層のみを介して設けられている。
【請求項2】
前記基材フィルムの面配向度(ΔP)が0.09~0.15である請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記光学等方層の屈折率がBfny~Bfnxである請求項1又は2に記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記光学等方層の屈折率がBfny+0.02~Bfnxである請求項1~3のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の透明導電性フィルムを含むタッチパネル。
【請求項6】
請求項5に記載のタッチパネルを含む、画像表示装置。
【請求項7】
QD(量子ドット)光源、及び/又は、赤色領域用にKSF蛍光体を用いた光源を有する、請求項6に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム及びそれを用いた偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムなどの複屈折性を有するフィルムを蛍光灯又は冷陰極管光源の環境下で使用した場合、レタデーションに起因する虹斑が生じることが知られていた。そのため、液晶ディスプレイなどに用いられる偏光子の保護フィルムには光学的に等方性を有するセルロース系のフィルムが用いられてきた。
【0003】
最近、高いレタデーションを有するフィルムを連続的な発光スペクトルを有する白色光源と組み合わせることで虹斑を解消する技術が提案されており(例えば、特許文献1、特許文献2等)、偏光サングラスに対応した偏光解消フィルム又は偏光子保護フィルムとして液晶ディスプレイ等で実用化されてきた。しかしながら、この技術は、冷陰極管光源又はKSF蛍光体(KSiF結晶にMnを添加した蛍光体)と呼ばれるような発光スペクトルの赤色域に急峻な発光ピークを持つ光源を用いる場合に改善の余地があった。また、高いレタデーションを確保するためにはフィルムに厚みが必要であり、近年の画像表示装置の薄型化には十分対応しきれない恐れがあった。
【0004】
急峻な発光ピークを持つ光源を用いた液晶ディスプレイの偏光解消フィルムとして、複屈折を有するフィルムの表面に凹凸を設けることで肉眼で視認可能なレベルより小さな領域内で局所的にλ/4以上の位相差を発生させたフィルムが提案されている(例えば特許文献3)。しかし、かかる従来技術には、コントラストが低い、強い外光環境下では画面が白くなり画像が見えにくい、という問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-215646号公報
【文献】国際公開第2011/162198号
【文献】特開2017-161599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、急峻な発光ピークを持つ光源の環境下で用いる場合等に、虹斑を抑制し、高い透明性、鮮やかな画像表示性を確保できる透明導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。
すなわち本発明は、以下の態様を包含する。
項1.
下記(a)~(c)の特徴を有する、基材フィルムと光学等方層とを有する積層フィルムの少なくとも一方の面に透明導電層を有する、透明導電性フィルム。
(a)基材フィルムの少なくとも片面は凹凸面であり、凹凸面の算術平均粗さ(Ra)が0.2~10μmである。
(b)基材フィルムの屈折率異方性(Bfnx-Bfny)が0.04~0.2である。
(c)基材フィルムの凹凸面上には光学等方層が設けられており、光学等方層の屈折率がBfny-0.15~Bfnx+0.15である。
(但し、基材フィルムの遅相軸方向の屈折率をBfnx、進相軸方向の屈折率をBfnyとする)
項2.
項1に記載の透明導電性フィルムを含むタッチパネル。
項3.
項2に記載のタッチパネルを含む、画像表示装置。。
【発明の効果】
【0008】
本発明の透明導電性フィルムにより、急峻な発光ピークを有する光源の環境下で用いる場合等に、虹斑を抑制し、高い透明性、鮮やかな画像表示性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、凹凸面(粗面化面)を有する屈折率異方性の基材フィルムと光学等方層とを有する積層フィルムの少なくとも一方の面に透明導電層を有する透明導電性フィルムである。なお、以下、この透明導電層を有する積層フィルムを透明導電フィルムとし、単に積層フィルムという場合は凹凸面(粗面化面)を有する屈折率異方性の基材フィルムと光学等方層との積層フィルムを意味する。
(基材フィルム)
まず、基材フィルムに関して説明する。
【0010】
少なくとも基材フィルムとしては、屈折率異方性を持たせられるものであれば特に限定はなく、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネートなどが挙げられる。中でも屈折率異方性の高いフィルムが容易に得られる点でポリエステルが好ましい。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどが挙げられ、中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。これらのポリエステルは、フィルムとしての機械的物性、耐熱性、及び寸法安定性を損なわない程度(例えば10モル%以下)であれば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールビスフェノールAのエチレンオキシド(EO)1~2モル付加物等を共重合してもよい。なお、例えばポリエチレンテレフタレートの重合体であれば通常重合時に副生成物のジエチレングリコールが1~2モル共重合するが、このような副生成物を含んでいてもよい。
【0011】
基材フィルムは複屈折性を有する。基材フィルムの遅相軸方向屈折率(Bfnx)の下限は、好ましくは1.65であり、より好ましくは1.66であり、さらに好ましくは1.67であり、特に好ましくは1.68である。基材フィルムの遅相軸方向屈折率(Bfnx)の上限は、好ましくは1.73であり、より好ましくは1.72であり、さらに好ましくは1.71であり、特に好ましくは1.7である。
【0012】
基材フィルムの進相軸方向屈折率(Bfny)の下限は、好ましくは1.53であり、より好ましくは1.55であり、さらに好ましくは1.56であり、特に好ましくは1.57である。基材フィルムの進相軸方向屈折率(Bfny)の上限は、好ましくは1.62であり、より好ましくは1.61であり、さらに好ましくは1.6である。
【0013】
基材フィルムの屈折率異方性(ΔBfNxy=Bfnx-Bfny)の下限は、好ましくは0.04であり、より好ましくは0.05であり、さらに好ましくは0.06であり、特に好ましくは0.07である。当該下限が0.04以上であると虹斑をより効果的に解消することができる。基材フィルムの屈折率異方性の上限は、好ましくは0.2であり、より好ましくは0.18であり、さらに好ましくは0.17であり、特に好ましくは0.16である。当該上限が0.2以下であると進相軸方向の機械的強度を実用範囲に調節することができ、製造も容易になる。なお、基材フィルムの屈折率は、波長589nmの条件で測定される値である。
【0014】
凹凸面付与前(粗面化前)の基材フィルムの厚みの下限は、好ましくは15μmであり、より好ましくは20μmであり、さらに好ましくは25μmである。当該下限が15μm以上であれば、凹凸付与時に厚みが低減しても、優れた機械的強度を有する。凹凸面付与前の基材フィルムの厚みの上限は、好ましくは200μmであり、より好ましくは150μmであり、さらに好ましくは100μmであり、特に好ましくは90μmであり、最も好ましくは80μmである。当該上限が200μm以下であれば、取り扱い性に優れており、薄型にする(例:薄型の画像表示装置に用いる)のに好適である。
【0015】
凹凸面付与前の基材フィルムの面内レタデーション(Re)の下限は、好ましくは2000nmであり、より好ましくは2500nmであり、さらに好ましくは3000nmであり、特に好ましくは3500nmであり、最も好ましくは4000nmである。当該下限が2000nm以上であると虹斑をより効果的に解消することができる。凹凸面付与前の基材フィルムの面内レタデーション(Re)の上限は、好ましくは30000nmであり、より好ましくは20000nmであり、さらに好ましくは15000nmであり、よりさらに好ましくは12000nmであり、特に好ましくは10000nmであり、より特に好ましくは9000nmであり、最も好ましくは8000nmであり、特に最も好ましくは7500nmである。当該上限が30000nm以下であると薄型化に適する。
【0016】
凹凸面付与前の基材フィルムの面内レタデーション(Re)と厚み方向のレタデーション(Rth)との比(Re/Rth)の下限は、好ましくは0.2であり、より好ましくは0.5であり、さらに好ましくは0.6である。当該下限が0.2以上であると虹斑をより効果的に解消することができる。凹凸面付与前の基材フィルムのRe/Rthの上限は、機械的強度の観点で好ましくは2であり、より好ましくは1.5であり、さらに好ましくは1.2であり、特に好ましくは1である。
【0017】
基材フィルムのNz係数の下限は、好ましくは1.3であり、より好ましくは1.4であり、さらに好ましくは1.45である。当該下限が1.3以上であると進相軸方向の機械的強度も優れる。基材フィルムのNz係数の上限は、好ましくは2.5であり、より好ましくは2.2であり、さらに好ましくは2であり、特に好ましくは1.8であり、最も好ましくは1.7である。当該上限が2.5以下であると虹斑をより効果的に解消することができる。
【0018】
基材フィルムの面配向度ΔPの下限は、好ましくは0.08であり、より好ましくは0.09であり、さらに好ましくは0.1である。当該下限が0.08以上であると虹斑をより効果的に解消することができるだけでなく、フィルムの厚み斑を低減することもできる。基材フィルムの面配向度ΔPの上限は、好ましくは0.15であり、より好ましくは0.14であり、さらに好ましくは0.13である。当該上限が0.15以下であると屈折率異方性をより高く保つことができる。
【0019】
基材フィルムは屈折率異方性を持たせるため、一軸方向に配向されていることが好ましい。配向方法としては、それぞれの樹脂に合わせた通常の方法で行うことができる。例えば、溶融した樹脂を冷却ロール上にシート状に押し出して製造する場合であれば、冷却ロールを押し出される樹脂の速度以上に設定して配向させる方法、溶融して押し出された未延伸フィルムを加熱したロール群で縦方向に延伸して配向させる方法、溶融して押し出された未延伸フィルムをテンター内で加熱して横方向又は斜め方向に延伸して配向させる方法などが挙げられる。
【0020】
これらの中でも、基材フィルムの配向方法としては、溶融して押し出された未延伸フィルムを加熱したロール群で縦方向に延伸して配向させる方法、及び、溶融して押し出された未延伸フィルムをテンター内で加熱して横方向又は斜め方向に延伸して配向させる方法が好ましい。縦方向の延伸倍率としては、2.5~10倍が好ましく、より好ましくは3~8倍であり、特に好ましくは3.3~7倍である。横方向、又は斜め方向の延伸倍率としては、2.5~10倍が好ましく、より好ましくは3~8倍であり、特に好ましくは3.3~7倍である。
【0021】
なお、縦方向に配向させる場合であっても、配向方向に対して垂直方向の機械的強度を高めたり、収縮特性を調整するために、縦方向の延伸前に弱い(2.2倍程度以下の)横方向の延伸を加えたり、縦方向の延伸後に弱い(1.5倍程度以下の)横方向の延伸を加えてもよい。同様に、横方向に配向させる場合であっても、配向方向に対して垂直方向の機械的強度を高めたり、収縮特性を調整するために、横方向の延伸前に弱い(2.2倍程度以下の)縦方向の延伸を加えたり、横方向の延伸後に弱い(1.5倍程度以下の)縦方向の延伸を加えてもよい。また、より配向方向の配向性を上げるため、横方向の延伸時又は延伸後に縦方向に若干収縮させてもよい。収縮後の幅は、延伸時の幅に対して0.7~0.995倍が好ましく、さらには0.8~0.99倍が好ましく、特には0.9~0.98倍が好ましい。なお、縦方向の延伸、及び横方向の延伸は、テンター型の同時二軸延伸機で行ってもよい。
【0022】
延伸時の温度(及び予備加熱の温度)は、縦方向、及び横方向とも80~150℃が好ましい。また、延伸後は、基材フィルムの耐熱性を確保するため、延伸時の加熱温度より高温で熱固定することが好ましい。熱固定温度としては150~250℃が好ましく、さらに好ましくは170~245℃である。
【0023】
基材フィルムは、波長380nmの光線透過率が20%以下であることが望ましい。波長380nmの光線透過率は15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。なお、波長380nmの光線透過率は、フィルムの平面に対して垂直方向に測定したものであり、分光光度計(例えば、日立U-3500型)を用いて測定することができる。
【0024】
基材フィルムの波長380nmの光線透過率を20%以下にするためには、基材フィルムに配合する紫外線吸収剤の種類、濃度、及び基材フィルムの厚みを適宜調節することが望ましい。本発明で使用される紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤及び無機系紫外線吸収剤が挙げられる。透明性の観点から、有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系等、及びその組み合わせが挙げられるが、上述した光線透過率の範囲であれば特に限定されない。耐久性の観点からは、ベンゾトリアゾール系、及び環状イミノエステル系が特に好ましい。2種以上の紫外線吸収剤を併用した場合には、別々の波長の紫外線を同時に吸収させることができるので、より紫外線吸収効果を改善することができる。
【0025】
基材フィルムには、紫外線吸収剤以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、各種の添加剤を含有させることも好ましい。添加剤として、例えば、無機粒子、耐熱性高分子粒子、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン化合物、帯電防止剤、耐光剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、ゲル化防止剤、界面活性剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
また、高い透明性を奏するためには、基材フィルムに粒子を実質的に含有させないことも好ましい。「粒子を実質的に含有させない」とは、例えば無機粒子の場合、蛍光X線分析で基材フィルム中の無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、特に好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。
【0026】
(表面凹凸付与)
本発明では、基材フィルムの少なくとも片面に凹凸面を有する。凹凸面は、基材フィルムの片面のみに設けてもよいし、両面に設けてもよい。なお、凹凸面を有する基材フィルムを、粗面化した基材フィルムと称する場合がある。
【0027】
粗面化した基材フィルムの凹凸面の算術平均粗さ(Ra)の下限は、好ましくは0.2μmであり、より好ましくは0.4μmであり、さらに好ましくは0.6μmであり、特に好ましくは0.7μmであり、最も好ましくは0.8μmである。当該Raの上限は、好ましくは10μmであり、より好ましくは7μmであり、さらに好ましくは5μmであり、特に好ましくは4μmであり、最も好ましくは3μmである。
【0028】
粗面化した基材フィルムの凹凸面の二乗平均平方根粗さ(Rq)の下限は、好ましくは0.3μmであり、より好ましくは0.5μmであり、さらに好ましくは0.7μmであり、特に好ましくは0.9μmであり、最も好ましくは1μmである。当該Rqの上限は、好ましくは13μmであり、より好ましくは10μmであり、さらに好ましくは7μmであり、特に好ましくは5μmであり、最も好ましくは4μmである。
【0029】
粗面化した基材フィルムの凹凸面の十点平均粗さ(Rz)の下限は、好ましくは1.0μmであり、より好ましくは2.0μmであり、さらに好ましくは3.0μmであり、特に好ましくは3.5μmであり、最も好ましくは4.0μmである。当該Rzの上限は、好ましくは15μmであり、より好ましくは12μmであり、さらに好ましくは10μmであり、特に好ましくは8μmである。
【0030】
粗面化した基材フィルムの凹凸面の最大高さ(Ry)の下限は、好ましくは2.0μmであり、より好ましくは3.0μmであり、さらに好ましくは4.0μmであり、特に好ましくは4.5μmであり、最も好ましくは5.0μmである。当該Ryの上限は、好ましくは20μmであり、より好ましくは17μmであり、さらに好ましくは15μmであり、特に好ましくは13μmである。
【0031】
粗面化した基材フィルムの凹凸面の最大山高さ(Rp)の下限は、好ましくは1.0μmであり、より好ましくは1.5μmであり、さらに好ましくは2.0μmであり、特に好ましくは2.5μmである。当該Rpの上限は、好ましくは15μmであり、より好ましくは12μmであり、さらに好ましくは10μmであり、特に好ましくは8μmである。
【0032】
粗面化した基材フィルムの凹凸面の最大谷深さ(Rv)の下限は、好ましくは1.0μmであり、より好ましくは1.5μmであり、さらに好ましくは2.0μmであり、特に好ましくは2.5μmである。当該Rvの上限は、好ましくは15μmであり、より好ましくは12μmであり、さらに好ましくは10μmであり、特に好ましくは8μmである。
【0033】
Ra、Rq、Rz、Ry、Rp、及びRvの値が下限以上であると虹斑をより効果的に解消できる。Ra、Rq、Rz、Ry、Rp、及びRvの値が上限以上であると生産性に優れる。Ra、Rq、Rz、Ry、Rp、及びRvは、JIS B0601-1994又はJIS B0601-2001に準拠して、接触型粗さ計を用いて測定される粗さ曲線から算出される。
【0034】
基材フィルムの表面に凹凸を設ける(粗面化する)ことにより、微少領域でリタデーション差を設け、それぞれの領域でのリタデーションによる着色(虹斑)はあるものの、視覚的に着色を見えなくすることができる。このリタデーション差ΔReは、ΔRe=Ra×ΔBfNxyで表すことができる。ΔReの下限は、好ましくは30nmであり、より好ましくは50nmであり、さらに好ましくは70nmであり、特に好ましくは90nmであり、最も好ましくは100nmである。当該下限が30nm以上であると虹斑をより効果的に解消することができる。ΔReの上限は、好ましくは1500nmであり、より好ましくは1000nmであり、さらに好ましくは800nmであり、特に好ましくは500nmであり、最も好ましくは300nmである。当該上限が1500nm以下であると生産性にも優れる。
【0035】
粗面化した基材フィルムの凹凸の平均間隔(Sm)の下限は、好ましくは5μmであり、より好ましくは10μmであり、さらに好ましくは15μmであり、特に好ましくは20μmであり、最も好ましくは25μmである。当該下限が5μm以上であると凹凸の斜面が緩やかとなり、画像がより鮮明になる。粗面化した基材フィルムの凹凸の平均間隔(Sm)の上限は、好ましくは500μmであり、より好ましくは450μmであり、さらに好ましくは400μmであり、特に好ましくは350μmであり、最も好ましくは300μmである。当該上限が500μm以下であると微少領域のそれぞれのリタデーションによる着色感、又はちらつき感を防止することができる。Smは、JIS B0601-1994に準拠して、接触型粗さ計を用いて測定される粗さ曲線から算出される。
【0036】
凹凸を付与し、粗面化することで基材フィルムは元の厚みから薄くなることがある。粗面化した基材フィルムの厚みの下限は、好ましくは10μmであり、より好ましくは15μmであり、さらに好ましくは20μmであり、特に好ましくは25μmであり、最も好ましくは30μmである。当該下限が10μm以上であると保護フィルムとしての強度を十分に確保することができる。粗面化した基材フィルムの厚みの上限は、好ましくは150μmであり、より好ましくは120μmであり、さらに好ましくは100μmであり、特に好ましくは90μmであり、最も好ましくは80μmである。当該上限が150μm以下であると薄型化に適する。
粗面化した基材フィルムの厚みは、粗面化した基材フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、断面の切片を切り出して顕微鏡観察し、凹凸面は視野の凸部と凹部の中央を基準として、等間隔で10点の厚みを測定し、その平均値として算出される。
【0037】
粗面化した基材フィルムの面内レタデーション(Re)のの下限は、好ましくは2000nmであり、より好ましくは2500nmであり、さらに好ましくは3000nmであり、特に好ましくは3500nmであり、最も好ましくは4000nmである。当該下限が2000nm以上であると虹斑をより有効に解消することができる。粗面化した基材フィルムの面内レタデーション(Re)の上限は、好ましくは30000nmであり、より好ましくは20000nmであり、さらに好ましくは15000nmであり、よりさらに好ましくは12000nmであり、特に好ましくは10000nmであり、より特に好ましくは9000nmであり、最も好ましくは8000nmであり、特に最も好ましくは7500nmである。当該上限が30000nm以下であると薄型化に適する。
【0038】
凹凸付与方法は特に限定するものではなく、従来から知られている粗面化処理の方法が挙げられる。例えば、サンドブラスト処理、サンドペーパー又はやすり、砥石等による処理、サンダー(オービタルサンダー、ランダムサンダー、デルタサンダー、ベルトサンダー、ディスクサンダー、ロールサンダーなど)による処理、金属ブラシなどによる処理、ケミカルエッチング、金型でプレスすることによる賦型等が挙げられる。これらのうち、サンドブラスト処理、サンダーによる処理、ケミカルエッチングが好ましい。
サンドブラスト処理は、例えば、遠心式ブラスト機にロール状の基材フィルムを供給して、基材フィルム面に研磨材を投射する方法であってもよい。この場合、粗さは、研磨材の種類、研磨材の大きさ、処理時間、回転翼の速度等により調節することができる。また、サンドブラスト処理は、ガラス板に基材フィルムを貼り付け、エアーブラストにセットし、基材フィルム面に研磨材を吹きつける方法であってもよい。この場合、粗さは、研磨材の種類、研磨材の大きさ、吹きつけ圧力、処理時間等により調節することができる。
サンダーによる処理は、例えば、ロール状の基材フィルムを、フィルムの搬送ロールの一部のロール表面にサンディングペーパーを貼り付けたもの(ロールサンダー)を有する搬送装置に導き処理する方法であってもよい。この場合、粗さはサンディングペーパーの種類、ロールサンダーの回転数、フィルムの搬送速度等で調節することができる。また、処理方向は、ロールサンダーとフィルムとの抱き付け角度、ロールサンダーの回転数、フィルムの搬送速度等で調節することができる。
また、サンダーによる処理は、ガラス板にウレタンフォームを貼り付け、さらにその上に基材フィルムを貼り付け、基材フィルム面をサンダーで縦、横、斜め(45度、135度)の合計4方向から処理する方法であってもよい。粗さは、サンダーのサンディングディスクの種類、処理時間等により調節することができる。
なお、サンダー処理、及びサンドブラスト処理したものは、局所突起を除くため、さらに処理表面をサンドペーパー等で研磨してもよい。
ケミカルエッチングは、酸又はアルカリ溶液に浸漬し、水洗した後、マスキングフィルムを剥離し、乾燥する方法であってもよい。粗さは、浸漬時間等により調節することができる。基本的にケミカルエッチングは両面処理になるが、片面のみ処理する場合は、例えば、基材フィルムの片面にマスキングフィルムを貼り合せて行う。
【0039】
(光学等方層)
基材フィルムの凹凸面上には光学等方層が設けられていることが好ましい。光学等方層は、前記凹凸面上に接触して設けられていることが好ましい。「接触して設けられている」とは、凹凸面に他の層を介することなく直接接触して設けられていることを意味する。但し、凹凸面と光学等方層との接着力を向上させるための易接着層は設けられていてもよい。易接着層の厚みは光学的に感知されない厚みであることが好ましく、100nm以下が好ましく、さらに好ましくは50nm以下であり、特に好ましくは20nm以下である。なお、易接着層が下記の光学等方層の屈折率の範囲を満たすのであれば、易接着層及びその上に設けられている光学等方層を合わせて、1つの光学等方層とみなすことができる。また、易接着層が光学等方層として十分な厚みを有するのであれば、易接着層を光学等方層とみなしてもよい。光学等方層を設けることで、基材フィルムの表面の凹凸による乱反射を低減させ、透明性を確保することができる。なお、易接着層の好ましい屈折率は、下記の光学等方層の好ましい屈折率の範囲と同様であり、その屈折率の調整方法も同様である。
【0040】
光学等方層の屈折率の下限は、好ましくはBfny-0.15であり、より好ましくはBfny-0.12であり、さらに好ましくはBfny-0.1であり、よりさらに好ましくはBfny-0.08であり、特に好ましくはBfnyであり、最も好ましくはBfny+0.02である。
光学等方層の屈折率の上限は、好ましくはBfnx+0.15であり、より好ましくはBfnx+0.12であり、さらに好ましくはBfnx+0.1であり、よりさらに好ましくはBfnx+0.08であり、特に好ましくはBfnxであり、最も好ましくはBfnx-0.02である。
上記範囲にすることにより、コントラスト又は画像の鮮鋭性を維持し、強い外光があたった場合に画面が白っぽくなる現象を抑制することができる。
【0041】
光学等方層の屈折率の下限は、好ましくは1.44であり、より好ましくは1.47であり、さらに好ましくは1.49であり、よりさらに好ましくは1.51であり、特に好ましくは1.53であり、より特に好ましくは1.55であり、最も好ましくは1.57であり、特に最も好ましくは1.59である。光学等方層の屈折率の上限は、好ましくは1.85であり、より好ましくは1.83であり、さらに好ましくは1.80であり、よりさらに好ましくは1.78であり、特に好ましくは1.76であり、より特に好ましくは1.74であり、最も好ましくは1.72であり、より最も好ましくは1.70であり、特に最も好ましくは1.68である。上記範囲にすることによりコントラスト又は画像の鮮鋭性を維持し、強い外光があたった場合に画面が白っぽくなる現象を抑制することができる。なお、光学等方層の屈折率も、波長589nmの条件で測定される値である。
【0042】
光学等方層の組成としては、特に限定するものではないが、アクリル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、エポキシ樹脂、チオエポキシ樹脂等が好ましい。適宜組成を調整することで、屈折率を上記範囲に設定することが可能である。例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレート)の場合、一般的に屈折率は1.49程度である。アクリル系の粘着剤では長鎖又は分岐アルキル基を導入する場合が多く、さらに屈折率が低下する。屈折率を上げるためには、芳香族基を有するアクリルモノマーを共重合するか、又はスチレンを共重合することが有効である。
ポリマー又は樹脂中にイオウ、臭素、フルオレン基などを導入することも屈折率を上げる上で好ましい方法であり、これらを含有するモノマーを共重合させたアクリル、フルオレン基含有ポリエステル、フルオレン基含有ポリカーボネート、チオエポキシ樹脂などが高屈折率樹脂として好ましい。
【0043】
また、ポリマー又は樹脂中に高屈折微粒子を添加することも屈折率を調整する好適な方法である。
高屈折微粒子の屈折率は1.60~2.74であることが好ましい。高屈折微粒子としては、TiO2、ZrO2、CeO2、Al23、BaTiO3、Nb25、及びSnO2等の微粒子が挙げられる。高屈折微粒子は、TEM(透過電子顕微鏡)観察による平均一次粒子径が3nm~100nmであることが好ましい。これらの高屈折微粒子を1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
なお、明細書において、「平均一次粒径」又は「一次粒子の平均粒子径」とは、体積累積の50%粒径を指す。より詳細には、粒子の一次粒子200個を顕微鏡観察により適切な倍率で観察し、それぞれの直径を測長してその体積を算出し、その体積累積の50%粒径を平均一次粒径とする。
【0044】
光学等方層は架橋硬化されていることが好ましい。硬化方法としては特に限定されず、熱硬化、紫外線、電子線などの放射線硬化が好ましい。硬化のための架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド、オキサゾリン化合物、メラミンなどのアミノ樹脂、多官能アクリレート等が挙げられる。
【0045】
光学等方層は、上記の成分からなるコート剤を基材フィルムの凹凸面に塗布する、離型フィルムに塗布して作製した光学等方層を基材フィルムの凹凸面に転写する、又は他のフィルム上に設けた光学等方層を基材フィルムの凹凸面に貼り合わせる等の方法で積層することができる。この場合、コート剤は、溶媒で溶解又は希釈して、塗工し易い粘度にすることが好ましい。また、コート剤は、アクリル系など放射線硬化タイプのコート剤であれば無溶剤であってもよい。
【0046】
例えば、アクリル系など放射線硬化タイプのコート剤は、通常、光重合性化合物を含有する。
【0047】
光重合性化合物としては、光重合性モノマー、光重合性オリゴマー、光重合性ポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して用いることができる。光重合性化合物としては、光重合性モノマーと、光重合性オリゴマーまたは光重合性ポリマーとの組み合わせが好ましい。
【0048】
光重合性モノマー
光重合性モノマーは、重量平均分子量が1000未満のものである。光重合性モノマーとしては、光重合性官能基を2つ(すなわち、2官能)以上有する多官能モノマーが好ましい。本明細書において、「重量平均分子量」は、THF等の溶媒に溶解して、従来公知のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算により得られる値である。
【0049】
多官能モノマーとしては、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、これらをPO、EO等で変性したものが挙げられる。
【0050】
これらの中でも硬度が高い機能層を得る観点から、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)等が好ましい。
【0051】
光重合性オリゴマー
光重合性オリゴマーは、重量平均分子量が1000以上10000未満のものである。光重合性オリゴマーとしては、2官能以上の多官能オリゴマーが好ましい。多官能オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
光重合性ポリマー
光重合性ポリマーは、重量平均分子量が10000以上のものであり、重量平均分子量としては10000以上80000以下が好ましく、10000以上40000以下がより好ましい。重量平均分子量が80000を超える場合は、粘度が高いため塗工適性が低下してしまい、得られる積層フィルムの外観が悪化するおそれがある。光重合性ポリマーとしては、2官能以上の多官能ポリマーが好ましい。多官能ポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
コート剤には、上記成分の他に重合開始剤、架橋剤の触媒、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、界面活性剤などが含まれていてもよい。
【0054】
また、基材フィルムの凹凸面上に溶融させた光学等方層組成物を押し出して積層する、基材フィルムの凹凸面と別のフィルムとの間に溶融させた光学等方層組成物を押し出してラミネートするなどの方法も好ましい。
【0055】
光学等方層は凹凸面に設けられることで凹凸面の乱反射を低減する機能を有するが、併せて他の機能を持つものであってもよい。光学等方層は、例えば、ハードコート層、反射防止層、防眩層、帯電防止層などの機能を有していてもよい。また、光学等方層は、他のフィルム又はシート、装置の構成部材と貼り合わせるための粘着剤層、又は接着剤層であってもよい。
【0056】
光学等方層の厚みの下限は、好ましくは0.5μmであり、より好ましくは1.0μmであり、さらに好ましくは2μmであり、特に好ましくは3μmであり、最も好ましくは4μmである。当該厚みが0.5μm以上であると、基材フィルムの凹凸を平坦化しヘイズを低減することができ、鮮明性を向上することができる。
光学等方層の厚みの上限は、好ましくは30μmであり、より好ましくは25μmであり、さらに好ましくは20μmであり、特に好ましくは15μmであり、最も好ましくは10μmである。当該厚みが30μm以下であると薄型化に適する。
光学等方層の厚みは、後述の積層フィルムの厚みから、粗面化した基材フィルムの厚みを引いた値である。
【0057】
光学等方層の面内レタデーションの上限は、虹斑の発生を抑制する観点で、好ましくは50nmであり、より好ましくは30nmであり、さらに好ましくは10nmであり、特に好ましくは5nmである。
【0058】
光学等方層の最も屈折率の高い方向の屈折率と最も屈折率の低い方向の屈折率との屈折率差の上限は、虹斑の発生を抑制する観点で、好ましくは0.01であり、より好ましくは0.007であり、さらに好ましくは0.005であり、特に好ましくは0.003であり、最も好ましくは0.002である。
【0059】
(積層フィルム)
積層フィルムの厚みの下限は、好ましくは12μmであり、より好ましくは15μmであり、さらに好ましくは18μmであり、特に好ましくは20μmである。当該下限が12μm以上であると積層フィルムの強度に優れ、製造又はその後の加工の取り扱いが容易になる。
積層フィルムの厚みの上限は、好ましくは180μmであり、より好ましくは150μmであり、さらに好ましくは120μmであり、特に好ましくは100μmであり、最も好ましくは90μmである。当該上限が180μm以下であると、各種用途での薄型化に適する。
積層フィルムの厚みは、積層フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、断面の切片を切り出して顕微鏡観察し、等間隔で10点の厚みを測定し、その平均値として算出される。
【0060】
積層フィルムのヘイズの上限は、好ましくは10%であり、より好ましくは7%であり、さらに好ましくは5%であり、特に好ましくは4%であり、最も好ましくは3%であり、より最も好ましくは2.5%であり、特に最も好ましくは2%である。当該上限が10%以下であると、コントラストの低下、及び、強い外光があたった場合に画面が白っぽくなることをより有効に抑制することができる。
【0061】
積層フィルムは基材フィルムの片面のみが凹凸面であってもよいが、基材フィルムのΔReが比較的低くかったり、凹凸の粗さが比較的小さかったりして虹斑が十分に解消されない場合は、両面に凹凸面と光学等方層を設けることが好ましい。
【0062】
本発明の積層フィルムは、凹凸面(粗面化面)を有する基材フィルムを2枚以上有していてもよく、光学等方層を2層以上有していてもよく、凹凸面(粗面化面)を有する基材フィルムと光学等方層以外のフィルム又は層を有していてもよい。
積層例としては、下記のタイプ1~4などが挙げられる。
(タイプ1)基材フィルム(凹凸面)/光学等方層(接着剤又は粘着剤)/他のフィルム
(タイプ2)基材フィルム(凹凸面)/光学等方層(接着剤又は粘着剤)/(凹凸面)基材フィルム
(タイプ3)基材フィルム(凹凸面)/光学等方層(接着剤又は粘着剤)/他のフィルム/光学等方層(接着剤又は粘着剤)/(凹凸面)基材フィルム
(タイプ4)他のフィルム/光学等方層(接着剤又は粘着剤)/(凹凸面)基材フィルム(凹凸面)/光学等方層(接着剤又は粘着剤)/他のフィルム
屈折率異方性の基材フィルムのΔBfNxyが比較的小さかったり、凹凸の粗さが比較的小さい場合は、タイプ2~タイプ4の構成を採ることが好ましい。なお、以下の本発明の積層フィルムの用途等の説明で、積層フィルムという場合には上記タイプ1~4の構成も含むものとする。タイプ2~タイプ4の場合、2枚の基材フィルムの遅相軸は、互いに平行又は垂直であることが好ましく、製造の容易さからは平行であることが好ましい。ここで、「平行又は垂直」とは0度又は90度から好ましくは±10度、さらには±7度、特には±5度まで許容される。
【0063】
なお、明細書中で粘着剤、又は粘着層という場合は、対象物に粘着剤用のコート剤を塗工して架橋又は乾燥させたもの、又は基材レスの光学用粘着剤を転写したものを意味する。
【0064】
(透明導電層)
透明導電層は積層フィルムの少なくとも片面に設けられ、基材フィルム面であっても光学等方層面であっても良い。両側に設けられていてもよい。透明導電層としては、特に制限されないが、導電性ペーストのメッシュ印刷物、カーボンナノチューブ含有コート、自己組織化ナノ銀コート、針状導電フィラー含有コート、酸化金属薄膜が挙げられる。中でも、酸化金属薄膜が好ましく、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫、インジウム錫酸化物(ITO)、錫アンチモン酸化物、亜鉛アルミニウム酸化物、インジウム亜鉛酸化物等の薄膜が好ましい。
【0065】
透明導電層は、エッチングによりライン状若しくは格子状のようなパターン形状に形成されていることが好ましい。
【0066】
以下、最も好ましいITOの薄膜を例として詳しく説明する。
透明導電層の厚さは5~500nmであることが好ましく、15~250nmであることがより好ましく、20~100nmであることがさらに好ましい。上記厚さにより、導電性を確保しながら、導電層に起因する色味を抑えることができる。
【0067】
透明導電層は真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法、ゾル-ゲル法等の公知の方法により、形成することができる。
【0068】
透明導電層は製膜後、フォトリソグラフィー法により所定のパターンのレジストマスクを形成した後、エッチング処理を施してパターン等を形成することができる。
【0069】
透明導電層は非晶質であっても良いが、得られた透明導電性層を130~180℃で0.5~2時間加熱処理して結晶を成長させて導電層を結晶質とし、導電性を上げることが好ましい。
【0070】
導電層の下層として、ハードコート層、屈折率調整層を設けることも好ましい形態である。屈折率調整層はエッチング後のパターンを見えにくくする効果がある。屈折率調整層は導電層に近い屈折率の層(高屈折率層)であっても良く、高屈折率層と低屈折率層をこの順(高屈折率層の方が透明導電層により近い位置になる順)に設けても良い。特に高屈折率層と低屈折率層をこの順に設けることが好ましい。
【0071】
(高屈折率層)
高屈折率層は、基材フィルム及び/又は光学等方層に直接、或いは、他のフィルム又は層(例えば、易接着層、ハードコート層)を介して設けられてもよい。高屈折率層は、低屈折率層よりも内側の層であることが好ましい。高屈折率層は、さらに他の機能を有していてもよく、光学等方層であってもよい。
【0072】
高屈折率層の屈折率は1.55~1.85とすることが好ましく、1.56~1.80とすることがより好ましく、1.56~1.75とすることがさらに好ましい。なお、高屈折率層の屈折率は、波長589nmの条件で測定される値である。
【0073】
高屈折率層の厚みは、20~2μmの範囲が一般的であり、高屈折率層のみでパターンを見えにくくする場合や平屈折率層との組合せでパターンを見えにくくする場合などに合わせて適宜厚みを調整できる。各屈折率層の厚みと屈折率で界面の反射をキャンセルする考え方に基づく場合、高屈折率層の厚みは20~200nmが好ましく、さらには30~190nmが好ましく、50~180nmであることがより好ましい。高屈折率層は複数の層であっても良いが、2層以下が好ましく、単層がより好ましい。複数の層の場合は複数の層の合計が上記厚みであることが好ましい。
【0074】
高屈折率層を2層とする場合は、低屈折率層側の高屈折率層の屈折率をより高くすることが好ましく、具体的には、低屈折率層側の高屈折率層の屈折率は1.60~1.85であることが好ましく、他方の高屈折率層の屈折率は1.55~1.70であることが好ましい。
【0075】
高屈折率層は、光学等方層で挙げた粒子及び樹脂を含む樹脂組成物からなることが好ましい。中でも、高屈折率粒子としては、五酸化アンチモン粒子(1.79)、酸化亜鉛粒子(1.90)、酸化チタン粒子(2.3~2.7)、酸化セリウム粒子(1.95)、スズドープ酸化インジウム粒子(1.95~2.00)、アンチモンドープ酸化スズ粒子(1.75~1.85)、酸化イットリウム粒子(1.87)、及び酸化ジルコニウム粒子(2.10)等が好ましい。なお、上記かっこ内は、各粒子の材料の屈折率を示す。これらの中でも酸化チタン粒子及び酸化ジルコニウム粒子が好適である。
【0076】
一実施形態において、高屈折粒子は2種以上を併用してもよい。特に、第1の高屈折率粒子とそれより表面電荷量が少ない第2の高屈折率粒子とを添加することも凝集を防ぐためには好ましい。また、高屈折率粒子は表面処理されていることも分散性の面から好ましい。
【0077】
高屈折粒子の一次粒子の平均粒子径は、5~200nmが好ましく、5~100nmがより好ましく、10~80nmがさらに好ましい。
【0078】
高屈折粒子の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、30~400質量部であることが好ましく、50~200質量部であることがより好ましく、80~150質量部であることがさらに好ましい。
【0079】
一実施形態において、高屈折率層は、蒸着やITOの製膜で挙げたドライプロセスで設けることが好ましい。ドライプロセスの場合、Ta,Nb,Zr及びTiからなる群から選ばれた少なくとも一種と、Siとを含む複合酸化物が好ましい。例えばNbとSiとの複合酸化物、TiとSiとの複合酸化物、ZrとSiとの複合酸化物、TaとSiとの複合酸化物等が挙げられる。なお、ドライプロセスで高屈折率層を設ける場合は 高屈折率層の屈折率は1.60~1.95とすることが好ましく、さらに好ましくは1.65~1.90である。 ドライプロセスの場合、高屈折率層の厚みは5~50nmであることが好ましく、さらには10nm~40nmであることが好ましい。
【0080】
高屈折率層の厚みはウエットプロセス、ドライプロセス共に、低屈折率層の屈折率、厚み、高屈折率層の屈折率、透明導電層の厚み、屈折率などを考慮して適宜調整することができる。
(低屈折率層)
一実施形態において、高屈折率層の上にさらに低屈折率層を設けることが好ましい。高屈折率層の上に低屈折率層を設ける方法としては、高屈折率層に低屈折率層用組成物を塗工する方法などが好ましい。
【0081】
低屈折率層の屈折率は、1.50以下の屈折率を有することが好ましく、1.46以下が好ましく、1.45以下が好ましく、1.42以下がより好ましい。また、低屈折率層の屈折率は、1.20以上が好ましく、1.25以上がより好ましい。
なお、低屈折率層の屈折率は、波長589nmの条件で測定される値である。
【0082】
低屈折率層の厚みは限定されないが、5~120nmが好ましく、より好ましくは10~100nm、特に好ましくは15~70nmである。
【0083】
低屈折率層は単層でもよく、2層以上設けてもよい。2層以上の低屈折率層を設ける場合、各々の低屈折率層の屈折率及び厚みは、互いに同一であっても異なっていてもよいが、互いに異なっていることが好ましい。
【0084】
低屈折率層としては、好ましくは(1)低屈折率粒子を含有する樹脂組成物からなる層、(2)低屈折率樹脂であるフッ素系樹脂からなる層、(3)シリカ又はフッ化マグネシウムを含有するフッ素系樹脂組成物からなる層、(4)シリカ、フッ化マグネシウム等の低屈折率物質の薄膜等が挙げられる。
【0085】
低屈折率粒子としては、シリカ、フッ化マグネシウム等が挙げられ、中でも、中空シリカ微粒子が好ましい。このような中空シリカ微粒子は、例えば、特開2005-099778号公報の実施例に記載の製造方法により作製できる。
【0086】
低屈折率粒子の一次粒子の平均粒子径は、5~200nmが好ましく、5~100nmがより好ましく、10~80nmがさらに好ましい。
【0087】
低屈折率粒子は、シランカップリング剤で表面処理されたものがより好ましく、中でも(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面処理されたものが好ましい。
【0088】
低屈折率層における低屈折率粒子の含有量は、バインダ樹脂100質量部に対して10~250質量部が好ましく、50~200質量部がより好ましく、100~180質量部がさらに好ましい。
【0089】
高屈折率層及び/又は低屈折率層を塗工により設ける場合に使用するバインダー樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート及びアクリル挙げることができる。中でもアクリルが好ましく、光照射により光重合性化合物を重合(架橋)させて得られたものが好ましい。
【0090】
光重合性化合物としては、光重合性モノマー、光重合性オリゴマー、光重合性ポリマーが挙げられ、これらを適宜調製して用いることができる。光重合性化合物としては、光重合性モノマーと、光重合性オリゴマーまたは光重合性ポリマーとの組み合わせが好ましい。具体的には光学等方層として挙げたものを使用することができる。
【0091】
一実施形態において、高屈折率層及び/又は低屈折率層は、例えば、上記微粒子および光重合性化合物を含む樹脂組成物を、基材フィルム及び/又は光学等方層に塗布し、乾燥させた後、塗膜状の樹脂組成物に紫外線等の光を照射して、光重合性化合物を重合(架橋)させることにより形成することができる。
【0092】
高屈折率層及び/又は低屈折率層には、必要に応じて、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、溶剤、重合開始剤を添加してもよい。さらに、機能層用組成物には、機能層の硬度を高くする、硬化収縮を抑制する、又は屈折率を制御する等の目的に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
【0093】
低屈折率層には耐指紋性を向上させる目的で、公知のポリシロキサン系又はフッ素系の防汚剤を適宜添加することも好ましい。ポリシロキサン系防汚剤の好ましい例としては、例えばアクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルシロキサン、アクリル基を有するポリエステル変性ジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサンなどが挙げられる。フッ素系防汚剤は、低屈折率層の形成又は低屈折率層との相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は、1個又は複数個あってもよく、複数個の置換基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。好ましい置換基の例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。
【0094】
低屈折率層の表面は、凹凸面(例えば、防眩表面)であってもよいが、平滑面であることも好ましい。
低屈折率層の表面が平滑面である場合、低屈折率層の表面の算術平均粗さRa(JIS B0601:1994)は、好ましくは20nm以下であり、より好ましくは15nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下であり、特に好ましくは1~8nmである。また、低屈折率層の表面の十点平均粗さRz(JIS B0601:1994)は、好ましくは160nm以下であり、より好ましくは50~155nmである。
【0095】
低屈折率層のRaを上記範囲にするためには、例えば、以下の方法を採用することができる。
・低屈折率層、高屈折率層、ハードコート層等に低屈折率層の厚みの1/2を超える粒径の粒子を用いないか、その添加量を少なくする。
・低屈折率層よりも内側の層(高屈折率層、基材フィルム層、光学等方層、ハードコート層等)の表面粗さを小さくする。
・基材フィルム、光学等方層の粗さが大きい場合はハードコート層等で平滑化させる。
【0096】
(ハードコート層)
ハードコート層は、基材フィルム及び/又は光学等方層に直接、或いは、他のフィルム又は層を介して設けられてもよい。ハードコート層は、さらに他の機能を有していてもよく、光学等方層であってもよい。
ハードコート層は鉛筆硬度でH以上が好ましく、2H以上がより好ましい。ハードコート層は、例えば、熱硬化性樹脂又は放射線硬化性樹脂の組成物溶液を塗布、硬化させて設けることができる。
【0097】
熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、これらの組合せ等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
【0098】
放射線硬化性樹脂は、放射線硬化性官能基を有する化合物であることが好ましく、放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。このうち、電離放射線硬化性化合物としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物が更に好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマーであってもオリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0099】
これらの具体例としては、低屈折率層のバインダ樹脂として挙げたものが用いられる。
ハードコートとしての硬度を達成するためには、放射線硬化性官能基を有する化合物中、2官能以上のモノマーが50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。さらには、放射線硬化性官能基を有する化合物中、3官能以上のモノマーが50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
上記放射線硬化性官能基を有する化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0100】
ハードコート層の厚みは、0.1~100μmの範囲が好ましく、0.8~20μmの範囲がより好ましい。
【0101】
ハードコート層の屈折率は、1.45~1.70であることがより好ましく、1.50~1.60であることがさらに好ましい。
なお、ハードコート層の屈折率は、波長589nmの条件で測定される値である。
【0102】
ハードコート層の屈折率を調整するためには、樹脂の屈折率を調整する方法、粒子を添加する場合は粒子の屈折率を調整する方法が挙げられる。粒子としては、光学等方層又は低屈折率層の粒子として例示したものが挙げられる。
【0103】
(帯電防止層)
帯電防止層を別途設けることも好ましい形態である。帯電防止層は、基材フィルムと高屈折率層との間、光学等方層と高屈折率層との間、基材フィルムとハードコート層との間、光学等方層とハードコート層との間、基材フィルム又は光学等方層の高屈折率層が積層されていない面などに設けることが好ましい。帯電防止層は帯電防止剤及びバインダ樹脂からなるものが好ましい。
【0104】
帯電防止剤としては、4級アンモニウム塩、ポリアニリンやポリチオフェンなどの導電性高分子、針状金属フィラー、スズドープ酸化インジウム微粒子、アンチモンドープ酸化スズ微粒子などの導電性高屈折率微粒子、これらの組合せが挙げられる。
【0105】
バインダ樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、アクリルなどが用いられる。
【0106】
ハードコート層に帯電防止剤を添加し、ハードコート層が帯電防止層として機能してもよい。ハードコート層に添加する帯電防止剤としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、第4級アンモニウム塩等のカチオン性帯電防止剤、スズドープ酸化インジウム(ITO)等の微粒子、導電性ポリマー等を用いることができる。上記帯電防止剤の含有量は、ハードコート層の全固形分の合計質量に対して、1~30質量%であることが好ましい。
【0107】
本発明の積層フィルムは各用途に合わせて、表面に各種の機能層を設けてもよい。各種の機能層とは、ハードコート層、防眩層、反射防止層、低反射層、導電層、帯電防止層、着色層、紫外線吸収層、防汚層、粘着層等が挙げられる。
【0108】
(積層フィルムの用途)
本発明の積層フィルムは、偏光子保護フィルム又は偏光解消フィルム、タッチパネルなどの透明導電性基材フィルム、飛散防止フィルム、表面の意匠付与フィルム等の光学用フィルムだけでなく、窓ガラス等の飛散防止フィルム、デコレーション用フィルムなど様々な分野で用いることができる。
【0109】
一実施形態において、透明導電性積層フィルムをタッチパネルに用いることが好ましい。中でも静電容量方式のタッチパネルに用いることが好ましい。
【0110】
タッチパネルとして用いる場合、片面のみに透明導電層を設けたフィルムを2枚組み合わせてタッチセンサーの構成としても良いし、本発明の透明導電性フィルムとTACやCOP、や一般的なPETなどのフィルムを基材とした透明導電フィルムと組み合わせてタッチセンサーの構成としても良い。さらに、本発明の透明導電性フィルムと表面カバーガラスなど他の構成部材に設けられた透明導電層と組み合わせてタッチセンサーの構成としても良い。また、積層フィルムの両面に透明導電層を設けてタッチセンサーの構成としても良い。
【0111】
タッチセンサーの構成として本発明の透明導電性フィルムを貼り合わせる場合、光学用基材レスの粘着剤、紫外線や熱硬化型の接着剤など、従来用いられている粘着剤や接着剤を制限なく用いることができる。
【0112】
透明導電性フィルムは、液晶表示装置や円偏光板を設けた有機EL表示装置を偏光サングラスを掛けて見た時に生じる虹斑や着色を防止するために使用することができる。この場合、表示装置の最視認側偏光板の偏光子の透過軸方向と積層フィルムの基材フィルムの遅相軸又は進相軸とがなす角は20~45度であることが好ましい。この角度はより好ましくは25~45度であり、さらに好ましくは30~45度、特に好ましくは35~45度である。上記範囲を超えると、頭を傾けて表示装置を見た場合に(見る角度に依存した)明るさの変化が大きくなる場合がある。
【0113】
飛散防止フィルムや透明導電性フィルムの基材として一般的な二軸延伸PETフィルム(リタデーションが500nm以上3000未満)と本発明の透明導電性フィルムを組み合わせて用いる場合、本発明の透明導電性フィルムと一般的な二軸延伸PETフィルムの配置順序は任意である。
画像表示装置の視認側偏光子の透過軸が画像表示装置の短辺に対して略45度である場合で透明導電性フィルムを透明樹脂成形体の視認側に設置する場合は、積層フィルムの基材フィルムの遅相軸又は進相軸と偏光子の透過軸とがなす角度は20度以下が好ましく、より好ましくは15度以下、さらに好ましくは10度以下である。
【0114】
一般的な二軸延伸PETフィルムが複数枚用いられる場合、本発明の透明導電性フィルムが最も視認側又は最も光源側に設けられることが好ましい。このような配置にすることにより、効果的に虹斑、着色を防止することができる。
【0115】
VA方式やIPS方式の液晶表示装置や有機EL表示装置の場合、一般的に視認側偏光子の透過軸は画面の垂直方向(短辺方向)に平行又は垂直となっている。このような表示装置に透明導電性フィルムを配置する場合、基材フィルムの遅相軸は偏光子の透過軸と略45度(45度±10度以下)に配置されることが好ましい。
【0116】
TN方式の液晶表示装置の場合は、一般的に視認側偏光子の透過軸は画面の垂直方向(短辺方向)に略45度となっている。透明導電性フィルムを最光源側に配置する場合は基材フィルムの遅相軸は偏光子の透過軸と略45度(45度±10度以下)に配置されることが好ましい。一方、透明導電性フィルムを最視認側に配置する場合は基材フィルムの遅相軸は偏光子の透過軸と略平行(0度±10度以下)又は略垂直(90度±10度以下)であることが好ましい。
なお、上記で最光源側、最視認側とは、液晶表示装置やEL表示装置の偏光板板より視認側に、飛散防止フィルムや透明導電性フィルムとして設けられる一般的な二軸延伸PETフィルム(リタデーションが500nm以上3000未満)と本発明の透明導電性フィルムの中で、最も光源側、視認側を意味する。
【0117】
本発明の透明導電性フィルムを用いたタッチパネルは表示装置の前面に設けられる。表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置など、特に制限はない。液晶表示装置の場合、様々な光源を虹斑無く使用できるが、中でも、青色発光ダイオードと黄色蛍光体の光源、KSF蛍光体を用いた光源、QD光源などが好ましい。
【0118】
(表示装置)
【0119】
液晶表示装置のバックライトとしては、青色発光ダイオードと黄色蛍光体の光源、青緑赤の各色発光ダイオード光源、青色発光ダイオードと緑色蛍光体と赤色蛍光体の光源、量子ドットによる波長変換光源、半導体レーザー光源、冷陰極管など特に制限無く用いることができる。
【0120】
本発明の透明導電性フィルムを含む表示装置は、急峻な発光ピークを持つ光源を持つ場合であっても、虹斑が認識できないレベルに低減されており、各色の発光ピークの半値幅が狭い光源との組合せがより好ましい形態である。光源の半値幅としては、最も半値幅の狭い発光ピークの半値幅が、好ましくは25nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは15nm以下、特に好ましくは10nm以下である。半値幅の下限は、現実的な値又は測定器の分解能の面で0.5nmである。具体的に好適な光源として、QD(量子ドット)光源及び赤色領域用にKSF蛍光体を用いた光源が挙げられ、最も好適な光源はKSF蛍光体を用いたものである。
【実施例
【0121】
以下、実施例を参照して本発明をより具体的に説明する。本発明は、下記実施例に限定されず、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能である。なお、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0122】
(1)基材フィルムの遅相軸方向屈折率(Bfnx)、進相軸方向屈折率(Bfny)、及び屈折率異方性(△BfNxy)
分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA-6004型分子配向計)を用いて、粗面化する前の基材フィルムの配向軸方向を求め、配向軸方向が長辺となるように4cm×2cmの長方形を切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルについて、直交する二軸の屈折率(Bfnx,Bfny)、及び厚さ方向の屈折率(Bfnz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T、測定波長589nm)を用いて測定し、前記二軸の屈折率の差の絶対値(|Bfny-Bfnx|)を屈折率異方性(△BfNxy)とした。なお、粗面化した基材フィルムの屈折率は、耐水性の紙やすり等で研磨して粗面化面を平坦化して測定することができる。
【0123】
(2)原反フィルムの厚みd
電気マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて、5点の厚みを測定し、その平均値を求めた。
【0124】
(3)面内リタデーション(Re)
屈折率の異方性(△BfNxy)とフィルムの厚みd(nm)との積(△BfNxy×d)より、面内リタデーション(Re)を求めた。
【0125】
(4)Nz係数
|Bfnx-Bfnz|/|Bfnx-Bfny|で得られる値をNz係数とした。
【0126】
(5)面配向度(ΔP)
(Bfnx+Bfny)/2-Bfnzで得られる値を面配向度(ΔP)とした。
【0127】
(6)厚さ方向リタデーション(Rth)
厚さ方向リタデーションとは、フィルム厚さ方向断面から見たときの2つの複屈折△BfNxz(=|Bfnx-Bfnz|)、△BfNyz(=|Bfny-Bfnz|)にそれぞれフィルム厚さdを掛けて得られるリタデーションの平均を示すパラメーターである。前記と同様の方法でBfnx、Bfny、Bfnzとフィルム厚みd(nm)を求め、(△BfNxz×d)と(△BfNyz×d)との平均値を算出して厚さ方向リタデーション(Rth)を求めた:Rth=(△BfNxz×d+△BfNyz×d)/2。
【0128】
(7)表面粗さ(Ra、Rq、Rz、Ry、Rp、Rv、Sm)
表面粗さの各パラメータは、接触型粗さ計(ミツトヨ社製,SJ-410,検出器:178-396-2,スタイラス:標準スタイラス122AC731(2μm))を用いて測定される粗さ曲線から求めた。設定は以下の通りに行った。
曲線:R
フィルタ:GAUSS
λc:0.8mm
λs:2.5μm
測定長さ:5mm
測定速度:0.5mm/s
なお、RqはJIS B0601-2001に準拠し、その他はJIS B0601-1994に準拠して、求めた。
【0129】
(8)光学等方層の厚み
粗面化した基材フィルム及び積層フィルムの厚みは、各フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、断面の切片を切り出し、顕微鏡で観察して等間隔で10点の厚みを測定し、その平均値とした。なお、界面が見にくい場合は偏光顕微鏡を用いた。また、粗面化した基材フィルムの凹凸面は、視野の凸部と凹部の中央を基準とした。光学等方層の厚みは、積層フィルムの厚みから、粗面化した基材フィルムの厚みを引くことにより求めた。
【0130】
(9)光学等方層の屈折率
離型フィルムに光学異方層を凹凸面に設ける場合と同じ条件で、厚みが約20μmとなるように設け、離型フィルムから剥離したサンプルの屈折率を基材フィルムと同様にして測定した。nx、ny、nzが同じ値であることを確認した。
【0131】
(易接着層成分の製造)
(ポリエステル樹脂の重合)
攪拌機、温度計、及び部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート194.2質量部、ジメチルイソフタレート184.5質量部、ジメチル-5-ナトリウムスルホイソフタレート14.8質量部、ジエチレングリコール233.5質量部、エチレングリコール136.6質量部、及びテトラ-n-ブチルチタネート0.2質量部を仕込み、160℃から220℃の温度で4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂は、淡黄色透明であった。共重合ポリエステル樹脂の還元粘度を測定したところ0.70dl/gであった。DSCによるガラス転移温度は40℃であった。
【0132】
(ポリエステル水分散体の調製)
攪拌機、温度計及び還流装置を備えた反応器に、共重合ポリエステル樹脂30質量部、及びエチレングリコールn-ブチルエーテル15質量部を入れ、110℃で加熱、攪拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水55質量部をポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分30質量%の乳白色のポリエステル水分散体を作製した。
【0133】
(易接着層で用いるブロックポリイソシアネート系架橋剤の重合)
攪拌機、温度計、及び還流冷却管を備えたフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)100質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55質量部、及びポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量750)30質量部を仕込み、窒素雰囲気下、70℃で4時間保持した。その後、反応液温度を50℃に下げ、メチルエチルケトオキシム47質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認し、固形分75質量%のブロックポリイソシアネート水分散液を得た。
【0134】
(易接着層用塗工液の調整)
下記の塗剤を混合しP1塗布液を作成した。
水 50.00質量%
イソプロパノール 33.00質量%
ポリエステル水分散体 12.00質量%
ブロックイソシアネート系架橋剤 0.80質量%
粒子 1.40質量%
(平均粒径100nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
触媒
(有機スズ系化合物 固形分濃度14質量%) 0.30質量%
界面活性剤 0.50質量%
(シリコン系、固形分濃度10質量%)
【0135】
(フィルム用ポリエステル樹脂の製造)
(製造例1-ポリエステルX)
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコール64.6質量部を仕込み、撹拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部、酢酸マグネシウム4水和物を0.064質量部、及びトリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。ついで、加圧昇温を行い、ゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った後、エステル化反応缶を常圧に戻し、リン酸0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部を添加した。次いで15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行った。
【0136】
重縮合反応が終了した後、95%カット径が5μmのナスロン(登録商標)製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却し、固化させ、ペレット状にカットした。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂(X)の固有粘度は0.62dl/gであり、不活性粒子及び内部析出粒子は実質上含有していなかった。(以後、PET(X)と略す。)
【0137】
(原反フィルムA、Bの製造)
フィルム用原料として粒子を含有しないPET(X)樹脂ペレットを押出機に供給し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。次いで、リバースロール法によりこの未延伸PETフィルムの両面にP1塗布液をいずれも乾燥後の塗布量が0.12g/mになるように塗布した後、乾燥機に導き80℃で20秒間乾燥した。
【0138】
この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度135℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に3.8倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃で30秒間処理し、その後、130℃まで冷却したフィルムの両端部をシェア刃で切断し、0.5kg/mmの張力で耳部を切り取った後に巻き取り、フィルム厚み80μmの原反フィルムAを得た。
【0139】
キャスティング以降のラインスピードを速くして未延伸フィルムの厚みを変えた以外は原反フィルムAと同様にして製膜し、フィルム厚みの異なる原反フィルムBを得た。
【0140】
(原反フィルムCの製造)
原反フィルムAと同様の方法により作製された未延伸フィルム(易接着層塗工済み)を、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターを用いて105℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で走行方向に2.0倍延伸した後、原反フィルムAと同様の方法により温度135℃の熱風ゾーンに導き幅方向に4.0倍延伸し、原反フィルムCを得た。
【0141】
(原反フィルムD)
原反フィルムAと同様の方法により作製された未延伸フィルム(易接着層塗工済み)を、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターを用いて105℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で走行方向に3.5倍延伸した後、原反フィルムAと同様の方法により温度135℃の熱風ゾーンに導き幅方向に3.5倍延伸し、原反フィルムDを得た。
【0142】
【表1】
【0143】
(表面粗面化フィルムの製造)
ガラス板にウレタンフォームを貼り付け、さらにその上に原反フィルムAの周辺を両面テープで貼り付け、この原反フィルム面を手持ちタイプのベルトサンダー(サンディングベルト#320)で縦、横、斜め(45度、135度)の合計4方向から処理を行い、表面粗面化フィルムA1を得た。
ガラス板に原反フィルムAの周辺を両面テープで貼り付け、乾式のサンドブラスターにセットし、研磨材を吹き付けで処理(サンドブラスト処理)し、表面粗面化フィルムA2を得た。
原反フィルムAの片面にポリプロピレンフィルム製マスキングフィルムを貼り合わせ、これを38%の水酸化カリウム水溶液(95℃)に浸漬(ケミカルエッチング)し、水洗した後、マスキングフィルムを剥離して乾燥し、表面粗面化フィルムA4を得た。
ベルトサンダーの条件(サンディングベルトの種類等)、サンドブラストの条件(研磨材の粒径等)を変え、原反フィルムA、B、C、及びDから表2に示す各表面粗面化フィルムを得た。
なお、B1及びC1の製造には#320のサンディングベルトを用い、A3及びD1の製造には#180のサンディングベルトを用いた。また、サンドブラスターの研磨材はA5、A6、B2、A2の順に大きなものを用いた。
なお、ベルトサンダー処理、及びサンドブラスト処理したものは、局所突起の影響を除くため、処理表面を#400のサンドペーパーで軽く研磨した。
【0144】
【表2】
【0145】
(積層フィルムF1~F17の製造)
(光学等方層用のコート剤の準備)
光学等方層用のコート剤として表3に示すものを準備した。
【0146】
【表3】
【0147】
20cm×30cmの表面粗面化フィルムA1の凹凸面に、上述の易接着層を水/イソプロパノール=2/1の溶液で4倍に希釈したものを塗工して乾燥させ、約30nmの易接着層を設けた。さらにその上に光学等方層用のコート剤aをアプリケーターで塗工した後、塗工面から高圧水銀灯で硬化させて積層フィルムF1を得た。
【0148】
表面粗面化フィルム及び/又はコート剤の種類を変更した以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムF2~F8、及びF10~F17を得た。なお、積層フィルムF15は両面に光学等方層を設けた。
【0149】
20cm×30cmの表面粗面化フィルムA1の凹凸面に、上述の易接着層を水/イソプロパノール=2/1の溶液で4倍に希釈したものを塗工して乾燥させ、約30nmの易接着層を設けた。さらにその上に光学等方層用のコート剤aをアプリケーターで塗工した後、塗工面に防眩性を持たせるために凹凸構造を設けた表面ニッケルメッキの金属板金型を重ね、基材フィルム面から高圧水銀灯で硬化させて光学等方層に防眩性を持たせた積層フィルムF9を得た。
【0150】
積層フィルムF1~F17の構成及び物性を表4に示す。
【0151】
【表4】
【0152】
実施例1~13及び比較例1~3:光学等方層面に透明導電層を有する透明導電性フィルムの作成
東洋紡社製二軸延伸ポリエステルフィルム(A4300)の長尺フィルムに積層フィルムF1~F16のいずれかを約20m間隔に光学等方層面が表になるように貼り付けて巻き取り、フィルムロールを作成した。このフィルムロールを巻き取り式スパッタ装置に投入し、表面(光学等方層面)に透明導電層として厚み20nmのインジウム・スズ酸化物層(アルゴンガス98%と酸素2%とからなる0.4Paの雰囲気中、酸化インジウム97重量%-酸化スズ3重量%からなる焼結体を用いたスパッタリング)を積層し、その後アニール処理を行いITO層を結晶化させて透明導電性フィルムを作製した。
【0153】
実施例14~26、比較例4~6
積層フィルムF1~F17の基材フィルム面に、ペルトロン(TM) A-2005(ペルノックス株式会社製)を塗工し、紫外線を照射して、厚みは5μmのハードコート層を形成した。得られた積層フィルムを、基材フィルム面(ハードコート面)が表になるように、東洋紡社製二軸延伸ポリエステルフィルム(A4300)に貼り付け、実施例1と同様に、表面(ハードコート面)に透明導電層を設け、透明導電性フィルムを作製した。
【0154】
実施例25
積層フィルムF4の光学等方層面に高屈折率層A(オプスターKZ6728(荒川化学株式会社製)屈折率1.74)を厚み1.5μmになるよう設けた。次いで、実施例1と同様に、表面(高屈折率層A)に透明導電層を設け、透明導電性フィルムを作製した。
【0155】
実施例26
積層フィルムF5の基材フィルム面に実施例14と同様にハードコート層を設け、このハードコート層面に高屈折率層Aを厚み1.5μmになるよう設けた。次いで、実施例1と同様に、表面(高屈折率層A)に透明導電層を設け、透明導電性フィルムを作製した。
【0156】
実施例27
積層フィルムF7の光学等方層面に低屈折率層C(オプスターTU-2362(荒川化学株式会社製)屈折率1.40)を厚み10nmになるよう設けた。次いで、実施例1と同様に、表面(低屈折率層C)に透明導電層を設け、透明導電性フィルムを作製した。
【0157】
実施例28
高屈折率層Aの上に低屈折率層Cを厚み10nmになるよう設けた以外は実施例25と同様にして、透明導電性フィルムを作製した。
【0158】
実施例29
高屈折率層Aの上に低屈折率層Cを厚み10nmになるよう設けた以外は実施例26と同様にして、透明導電性フィルムを作製した。
【0159】
実施例30
積層フィルムF5の基材フィルム面に高屈折率層B(オプスターZ7415(荒川化学株式会社製)屈折率1.65)を厚み150nmになるよう設け、さらにその上に低屈折率層Cを厚み30nmになるように設けた。次いで、実施例1と同様に、表面(低屈折率層C)に透明導電層を設け、透明導電性フィルムを作製した。
【0160】
実施例31
積層フィルムF5の基材フィルム面に実施例14と同様にハードコート層を設け、このハードコート層面に高屈折率層Bを厚み150nmになるよう設けた。高屈折率層Bの上にスパッタリング法により、ホウ素をドープした珪素ターゲットを用いて、アルゴンガス80体積%と窒素ガス20体積%とからなる混合雰囲気中で成膜して、窒化珪素からなる高屈折率層(屈折率1.90、厚み10nm)を設け、引き続き、スパッタリング法により、ホウ素をドープした珪素ターゲットを用いて、アルゴンガス95体積%と酸素ガス5体積%とからなる混合雰囲気中で、酸化珪素からなる低屈折率層(屈折率(n3)は1.46、厚み30nm)を設けた。さらに、この低屈折率層上に実施例1と同様に透明導電層を設け、透明導電性フィルムを作製した。
【0161】
(透明導電性フィルムの評価)
(虹斑の観察)
透明導電性フィルムを、クロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に基材フィルムの遅相軸が光源側の偏光板の透過軸と45度になるように、かつ透明導電層が視認側となるように置き、視認側の偏光板から約60cm離れた正面から透過光の状態を観察し、虹斑の有無を下記の基準に従って評価した。なお、光源は冷陰極管を用いた。
○:虹斑は観察されなかった
△:わずかに虹斑が観察された
×:虹斑が観察された
【0162】
(白化)
透明導電性フィルムに対し下方からハロゲンランプを照射し、斜め上方45度の方向から透明導電性フィルムの白化度合いを下記の基準に従って評価した。透明導電性フィルムは透明導電層が上になるようにした。
◎:白化はほとんど認められなかった。
○:少し白化が認められたが、透明性は高かった。
△:白化が認められ、透明性がやや劣っていた。
×:白化があり、透明性も低かった。
【0163】
(骨見え)
透明導電性フィルムの透明導電層をエッチングにより導電層1mm、間隔1mmのストライプ状にパターン加工した。得られたパターン加工された透明導電性フィルムを黒色の紙の上に置き、上方からハロゲンランプを照射してパターンが確認できるか評価した。
◎:パターンは見えなかった。
○:パターンがわずかに見えた
△:パターンがはっきりと見えた
【0164】
透明導電性フィルムの構造、物性、及び評価結果を表5に示す。
【0165】
【表5】
1*:積層フィルム番号
2*:粗面化フィルム番号
3*:凹凸面
4*:光学等方性層コート剤
5*:光学等方層屈折率
6*:透明導電層を設けた表面
7*:ハードコート層の有無
8*:虹斑評価
9*:白化評価
10*:高屈折率層の有無
11*:低屈折率層の有無
12*:骨見え
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明の透明導電性フィルムにより、急峻なピークを有する光源の環境下で用いる場合等に、虹斑を抑制し、高い透明性、及び鮮やかな画像表示性を確保することができる。