(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】織物
(51)【国際特許分類】
D03D 15/20 20210101AFI20230307BHJP
D03D 9/00 20060101ALI20230307BHJP
D03D 15/68 20210101ALI20230307BHJP
【FI】
D03D15/20 200
D03D9/00
D03D15/68
(21)【出願番号】P 2018205378
(22)【出願日】2018-10-31
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武舍 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】酒井 一考
(72)【発明者】
【氏名】林 宏樹
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-151630(JP,A)
【文献】特開2017-020133(JP,A)
【文献】特開平11-093037(JP,A)
【文献】特開2018-035459(JP,A)
【文献】特公昭49-38394(JP,B2)
【文献】特開2004-076211(JP,A)
【文献】特開2016-098456(JP,A)
【文献】特開2011-089231(JP,A)
【文献】特開昭58-115173(JP,A)
【文献】特開2002-69836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D1/02-1/04
3/00-3/08
29/00-31/32
D03D1/00-27/18
D06M10/00-11/84
16/00
19/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメントで構成され、
タテ糸およびヨコ糸が、撚り数300~3000T/m、かつ撚り係数9000~100000であり、タテ糸および/またはヨコ糸が任意の糸本数ごとに間隙を有するよう配されており、間隙を構成するタテ糸および/またはヨコ糸に交差するタテ糸および/またはヨコ糸が表側から裏側へ、または裏側から表側へ襷掛けするよう配され
、目付が60~220g/m
2
である織物。
【請求項2】
明度(L値)が7.0~12.0である請求項
1に記載の織物。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の織物で構成されたブラックフォーマル衣料。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか記載の織物の製造方法であって、最終的に織物を構成するタテ糸および/またはヨコ糸とともに、易溶出性のタテ糸および/またはヨコ糸を任意の本数配して製織し、その易溶出性の織糸を製織後に溶出させることにより、その繊度と配置本数に応じた空隙を形成することにより製造する織物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は織物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フォーマル衣料用織物は上品な外観を表現すために、強撚糸を使用して織られており目付が重く、またハリコシ感や厚みを出すため高密度に織られているため、通気性も得られなかった。そのため、夏場の使用では肉厚で通気性がなく、衣服内が蒸れ、きわめて不快であった。このような背景から、フォーマル衣料では上品な外観やハリコシを有し、かつ、軽量で通気性に優れる織物が求められている。
【0003】
特許文献1は高密度に織ることによって適度な防風性と易溶出繊維を溶解除去することで部分的な通気性を持たせた軽量高密度織物を提案している。
【0004】
特許文献2はタテ糸とヨコ糸との交絡部分の少なくとも一部を溶解することにより、繊維表面から裏面に貫通した穴を形成させ、通気性やストレッチ性に優れる織物を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5833269号公報
【文献】特許第5896059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は記載の織物は軽く薄地であるものの、フォーマル衣料としての外観、風合いとしては乏しかった。
【0007】
特許文献2記載の織物は、前記構成により通気性とストレッチ性を両立させたものであるが、強撚糸を用いた記載はなく、スポーツウェアや一般衣料用途などには適性があっても、フォーマル衣料用途としては不十分である。
【0008】
本発明ではかかる従来技術の背景に鑑み、任意の間隔で間隙を有しており、軽量でありながら目ズレに強く、尚且つ上品な外観と優れたハリコシを有する織物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。本発明は以下の構成よりなる。
(1)ポリエステルマルチフィラメントで構成され、タテ糸および/またはヨコ糸の少なくとも一部が、撚り数300~3000T/m、かつ撚り係数9000~100000であり、タテ糸および/またはヨコ糸が任意の糸本数ごとに間隙を有するよう配されており、間隙を構成するタテ糸および/またはヨコ糸に交差するタテ糸および/またはヨコ糸が表側から裏側へ、または裏側から表側へ襷掛けするよう配されている織物。
(2)目付が60~220g/m2である(1)に記載の織物。
(3)明度(L値)が7.0~12.0である(1)~(2)のいずれかに記載の織物。
(4)(1)~(3)のいずれかに記載の織物で構成されたブラックフォーマル衣料。
(5)(1)~(3)のいずれか記載の織物の製造方法であって、最終的に織物を構成するタテ糸および/またはヨコ糸とともに、易溶出性のタテ糸および/またはヨコ糸を任意の本数配して製織し、その易溶出性の織糸を製織後に溶出させることにより、その繊度と配置本数に応じた空隙を形成することにより製造する織物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、任意の間隔で間隙を有しており、軽量でありながら目ズレに強く、尚且つ上品な外観と優れたハリコシを有する織物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、間隙部に交差する糸が表側から裏側へ、あるいは裏側から表側へ襷掛けするよう配されていることを説明する、説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の織物は、ポリエステルマルチフィラメントで構成される。
【0014】
本発明で用いるポリエステルマルチフィラメントとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、例えば、イソフタル酸スルホネート、アジピン酸、イソフタル酸、ポリエチレングリコールなどを共重合して得られる繊維、または、これらの共重合体やポリエチレングリコールをブレンドして得られる繊維であっても構わない。これらの繊維は、1種単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、物性に優れ、安価に入手可能なことから、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0015】
また、ポリエステルマルチフィラメントのフィラメント断面としても特に制限はなく、丸型の他、異型断面であってもよい。異型断面としては、例えば、H字型、X字型、Y字型、W字型、十字型等の多葉断面や、溝が深い三角形や四角形、五角形、六角形といった多角形が挙げられ、いかなる形状であってもよい。なかでも安価に入手可能であることから円形断面であることが好ましい。
【0016】
本発明で用いるポリエステルマルチフィラメントの総繊度は30~300であることがフォーマル用途としての厚み、ハリコシの点から好ましく、50~200であることがより好ましい。
【0017】
本発明において、前記ポリエステルマルチフィラメントに仮撚加工、エアー加工等の糸加工を施し、加工糸として用いることも好適である。
【0018】
仮撚加工としては、POYを延伸仮撚りするDTY、SDYをフリクション仮撚り、またはピン仮撚りして得られる加工糸の形態で用いることができる。
【0019】
さらに、エアー加工としては、走行中の2種類のポリエステルマルチフィラメント糸に、高圧エアーを当てることで、フィラメントを部分的に混じり絡めるインターレース加工を施しインターレース糸としたり、乱流ノズルに供給量の差を付けて供給することでループを形成させるタスラン加工を施しタスラン加工糸としたりすることができる。
【0020】
また、ポリエステルマルチフィラメントのタテ糸および/またはヨコ糸の少なくとも一部は撚糸であり、なかでもタテ糸およびヨコ糸の少なくとも一部が撚糸であることがより好ましく、すべてが撚り糸であることが最も好ましい。撚糸であることで、フォーマル衣料としての外観品位に優れるだけでなく、低密度であっても比較的剛性が高く、目ズレを起こしにくくすることができる。
【0021】
該撚糸の撚り数は、300~3000T/m、かつ撚り係数9000~100000であり、1000~2900T/m、かつ撚り係数10000~30000であることが好ましく、より好ましくは1500~2800T/m、かつ撚り係数15000~29000であることがさらに好ましい。上記の範囲外となると、溶出後の外観品位が優れず、目ズレが発生しやすいだけでなく、強撚方向では製織に支障を来すおそれがある。
【0022】
なお、撚り係数Kは下記式で表されるものである。
撚り係数(K)=撚り数(T)×√総繊度(D)
(K:撚り係数、T:単位長さあたりの撚り数(T/m)、D:繊度dtex)
【0023】
本発明の織物は、タテ糸および/またはヨコ糸が任意の糸本数ごとに間隙を有するよう配されており、間隙を構成するタテ糸および/またはヨコ糸に交差するタテ糸および/またはヨコ糸が表側から裏側へ、または裏側から表側へ襷掛けするよう配されている。
【0024】
なお、織物は通常タテ方向に配列する織糸とヨコ方向に配列する織糸が交差して構成されるので、構造上隣合うタテ糸間、あるいはヨコ糸間に微細な隙間は必然的に存在するが、本発明でいう間隙は、このような隙間ではなく、任意の糸本数タテ糸またはヨコ糸が配列する(以下この配列したひと配列を織糸群、隣合うタテ糸間またはヨコ糸間を織糸間という場合もある)ごとに出現する、織糸群間に形成される隙間であって、前記織糸群内の隣合う各織糸間隔よりも大きい空隙をいう。すなわち織物平面に対して垂直方向から投影し、隣合う織糸間隔を評価すれば、織糸群内の各織糸間を構成する微小な隙間と隣合う織糸群間の前記微小な隙間よりも大きい空隙が観察できるが、本発明では、後者を間隙という。
【0025】
このような織物は、タテ糸とヨコ糸のいずれか、あるいは両方について、最終的に織物を構成するタテ糸またはヨコ糸とともに、易溶出性のタテ糸またはヨコ糸を任意の本数配して製織し、その易溶出性の織糸を製織後に溶出させることにより、その繊度と配置本数に応じた空隙を形成することにより製造することができる。
【0026】
製織後に溶出させるタテ糸および/またはヨコ糸として用いることができる繊維としては、水やアルカリ性溶液等の液媒で溶出させ得る繊維が好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール系繊維などの水溶性繊維、アルカリ易溶出性ポリエステル繊維、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸およびメトオキシポリオキシエチレングリコールなどの第3成分が共重合され、ポリ乳酸系繊維などの易アルカリ溶出性繊維などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本発明において易溶出性のタテ糸および/またはヨコ糸として用いることができる繊維の総繊度は20~100であることが溶出時の間隙距離を決定する点から好ましく、30~90であることがより好ましい。
【0028】
本発明においては、織物を構成するタテ糸および/またはヨコ糸を任意の糸本数配列する毎に易溶出性繊維を配列する。その際の易溶出性繊維の配列本数は、所望の間隙を構成し得る本数であれば制限はないが、通常1~8本を連続して配列することが好ましい。本数の選定に際しては、織組織を鑑み、易溶出性繊維を溶出した後の織り構成として、後述するように間隙を構成するタテ糸および/またはヨコ糸に交差するタテ糸および/またはヨコ糸が表側から裏側へ、または裏側から表側へ襷掛けするよう配するので、それが実現できる本数を選択する。平織等一本交互にタテ糸とヨコ糸を交錯させるような織組織の場合には、通常偶数本を連続して配列することになる。
【0029】
また、易溶出系ポリエステルマルチフィラメントの撚り数が300~3000T/m(撚り係数2700~28000)であることが好ましく、500~2500T/m(撚り係数4500~23000)であることがより好ましく、さらに好ましくは1000~2000T/m(撚り係数9000~19000)であることが好ましい。上記の範囲外となると、得られる織物の外観品位が優れないだけでなく、強撚しすぎると製織に支障を来すおそれがある。
【0030】
本発明の織物の形態としては、特に限定されるものでなく、平、ツイル、サテンおよびジョーゼット、梨地、空羽カラミ調、平二重等の織物が好ましい。なかでもフォーマル衣料としての品位の観点からジョーゼットであることがより好ましい。
【0031】
また、本発明の織物は、間隙を構成するタテ糸および/またはヨコ糸に交差するタテ糸および/またはヨコ糸が表側から裏側へ、または裏側から表側へ襷掛けするよう配される。この点について
図1を用いて説明する。すなわち、タテ糸1、タテ糸2間には間隙が存在するので、間隙を構成するタテ糸である。そして、タテ糸1、タテ糸2に交差するヨコ糸3は、タテ糸1からタテ糸2の方向から見ると、表側から裏側へ襷掛けされるように配されている。
【0032】
このように間隙を構成する糸と交差する糸は表側から裏側へ、あるいは裏側から表側へ襷掛けするよう配するが、表側から裏側に配される糸と裏側から表側に配される糸が平組織のように交互に配列しているものに限定されるものではない。
【0033】
さらに本発明の織物の目付はフォーマル用途の観点から60~220g/m2であることが好ましく、70~150g/m2であることがより好ましく、さらに好ましくは80~120g/m2であることがより好ましい。
【0034】
本発明の織物は、布帛状物であって、帯状物、紐状物など、その構造、形状はいかなるものであっても差し支えない。
【0035】
本発明の織物の染色仕上げは、一般的な工程で行えばよく、例えば連続糊抜き精錬した後、乾燥セット、減量、液流染色機による染色、捺染を行い、撥水剤や深色剤等の仕上げ剤を付与し、仕上げセットを行って仕上げる。いずれの形態の織物も同様の工程が採用され、染色条件は素材に応じたものを選択すれば良い。織物には、フッ素系、シリコン系やパラフィン系の撥水剤の他、柔軟剤、帯電防止剤、吸水剤や抗菌防臭剤等の仕上げ剤が付与されていてもよい。
【0036】
本発明の織物は、染色仕上げ後の明度L値が7.0~12.0であることが好ましい。
【0037】
また、本発明の織物の通気度はフォーマル衣料として快適性が得られているという観点から200cc/m2/sec以上であることが好ましく、250cc/m2/sec以上であることがより好ましい。なお、ここでいう通気度は後述する方法で評価されるものである。
【0038】
また、本発明は、前記織物を用いた繊維製品としても有用に用いることができる。
【0039】
本発明においては、衣料品として、特にジャケット、スラックス、スカートなどのフォーマルウェアとしても好ましく用いられる。特に前記明度を満たすことでフォーマル衣料、特にブラックフォーマル衣料として申し分ない上品な外観となる。明度は黒色染料の選択と前記加工糸を強撚して用いることで達成することができる。さらに、深色剤を用いて濃染加工を施すことも好ましい。
【実施例】
【0040】
本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例における性能の評価は、以下の方法に従った。
【0041】
(繊度)
JIS-L-1013(2010) 8.3.1 B法に準拠して測定した。
【0042】
(撚り数)
JIS-L-1013(2010) 7.2.2に準拠して測定した。
【0043】
(織密度)
JIS-L-1096(2010) 8.6.1 A法に準拠して測定した。
【0044】
(目付)
JIS-L-1096(2010) 8.3.2 A法に準拠して測定した。
【0045】
(発色性)
コニカミノルタ製のCM-2600d測色計を用いて、L値を測定した。数値の低いものほど、発色性に優れていることを示す。
【0046】
(滑脱抵抗力)
JIS-L-1096(2010) 8.23.1 B法に準拠して測定した。タテ方向3.0mm以下およびヨコ方向3.0mm以下であれば着用上問題ないレベルであると判断した。
【0047】
(通気度)
JIS-L-1096(2010) 8.26.1 A法に準拠して測定した。通気量200cc/m2/sec以上であれば、通気性が良いと判断した。なお、通気量が多い方が通気性に優れる。
【0048】
(外観品位)
◎上品な外観および十分なハリコシがある、○上品な外観または十分なハリコシどちらかを満たす、△外観・風合い共に優れない、×不良(目ズレあり含む)。
【0049】
[実施例1]
タテ糸に105dtex/54フィラメントのポリエステル繊維にタスラン加工を施し、撚り数2600T/mかつ、撚り係数26650の撚りをかけた強撚糸と84dtex/24フィラメントのアルカリ易溶出ポリエステル繊維に撚り数2000T/mかつ、撚り係数18330の撚りをかけた強撚糸をそれぞれ10本:2本の割合で交互に配列し、ヨコ糸もタテ糸と同様に配列したジョーゼット織物を製織した。次に常法に従い精練、乾燥、中間セットを行った後、水酸化ナトリウムを3%濃度となるよう調整した溶液中で95℃、10分間、浴中処理を実施し、アルカリ易溶出ポリエステル繊維を完全溶解し、その後、常法に従い、染色、乾燥を行い、さらに明度を向上させるために深色剤を用いて樹脂加工を施し、仕上げセットを行って、タテ密度が80本/2.54cm、ヨコ密度が71本/2.54cmであり、空隙部以外の組織がジョーゼットとなる加工布を得た。本加工布は、タテ糸およびヨコ糸それぞれ10本ごとに間隙を有し、間隙を構成するタテ糸およびヨコ糸に交差するタテ糸およびヨコ糸が表側から裏側へ、または裏側から表側へ襷掛けするよう配された織物であった。評価結果は表1に示す。
【0050】
[実施例2]
タテ糸に105dtex/54フィラメントのポリエステル繊維にタスラン加工を施し、撚り数2600T/mかつ、撚り係数26650の撚りをかけた強撚糸、ヨコ糸に105dtex/54フィラメントのポリエステル繊維にタスラン加工糸を施し、撚り数2600T/mかつ、撚り係数26650の撚りをかけた強撚糸と84dtex/24フィラメントのアルカリ易溶出ポリエステル繊維に撚り数2000T/mかつ、撚り係数18330の撚りをかけた強撚糸をそれぞれ10本:2本の割合で交互に配列した梨地織物を製織した。次に常法に従い精練、乾燥、中間セットを行った後、水酸化ナトリウムを3%濃度となるよう調整した溶液中で95℃、10分間、浴中処理を実施し、アルカリ易溶出ポリエステル繊維を完全溶解し、その後、常法に従い、染色、乾燥を行い、さらに明度を向上させるために深色剤を用いて樹脂加工を施し、仕上げセットを行って、タテ密度が118本/2.54cm、ヨコ密度が75本/2.54cmであり、空隙部以外の組織が梨地となっている加工布を得た。本加工布は、ヨコ糸10本ごとに間隙を有し、間隙を構成するタテ糸およびヨコ糸に交差するタテ糸およびヨコ糸が表側から裏側へ、または裏側から表側へ襷掛けするよう配された織物であった。評価結果は表1に示す。
【0051】
[実施例3]
タテ糸に167dtex/60フィラメントのポリエステル繊維にタスラン加工を施し、撚り数1600T/mかつ、撚り係数20680の撚りをかけた強撚糸を配列し、ヨコ糸に167dtex/60フィラメントのポリエステル繊維にタスラン加工を施し、撚り数1600T/mかつ、撚り係数20680の撚りをかけた強撚糸と33dtex/12フィラメントのアルカリ易溶出ポリエステル繊維に撚り数2000T/mかつ、撚り係数11490の撚りをかけた強撚糸をそれぞれ10:2の割合で交互に配列した空羽カラミ調織物を製織した。次に常法に従い精練、乾燥、中間セットを行った後、水酸化ナトリウムを3%濃度となるよう調整した溶液中で95℃、10分間、浴中処理を実施し、アルカリ易溶出ポリエステル繊維を完全溶解し、その後、常法に従い、染色、乾燥を行い、さらに明度を向上させるために深色剤を用いて樹脂加工を施し、仕上げセットを行って、タテ密度が45本/2.54cm、ヨコ密度が54本/2.54cmであり、空隙部以外の組織が空羽カラミ調となっている加工布を得た。本加工布は、ヨコ糸10本ごとに間隙を有し、間隙を構成するタテ糸およびヨコ糸に交差するタテ糸およびヨコ糸が表側から裏側へ、または裏側から表側へ襷掛けするよう配された織物であった。評価結果は表1に示す。
【0052】
[実施例4]
タテ糸に200dtex/60フィラメントのポリエステル繊維に仮撚り加工を施し、撚り数1600T/mかつ、撚り係数22630の撚りをかけた強撚糸を配列し、ヨコ糸に172dtex/60フィラメントのポリエステル繊維に仮撚り加工を施し、撚り数1600T/mかつ、撚り係数20980の撚りをかけた強撚糸と33dtex/12フィラメントのアルカリ易溶出ポリエステル繊維に撚り数2000T/mかつ、撚り係数11490の撚りをかけた強撚糸をそれぞれ8本:4本の割合で交互に配列した平二重織物を製織した。次に常法に従い精練、乾燥、中間セットを行った後、水酸化ナトリウムを3%濃度となるよう調整した溶液中で95℃、10分間、浴中処理を実施し、アルカリ易溶出ポリエステル繊維を完全溶解し、その後、常法に従い、染色、乾燥を行い、さらに明度を向上させるために深色剤を用いて樹脂加工を施し、仕上げセットを行って、タテ密度が151本/2.54cm、ヨコ密度が93本/2.54cmであり、空隙部以外の組織が平二重となっている加工布を得た。本加工布は、ヨコ糸8本ごとに間隙を有し、間隙を構成するタテ糸およびヨコ糸に交差するタテ糸およびヨコ糸が表側から裏側へ、または裏側から表側へ襷掛けするよう配された織物であった。評価結果は表1に示す。
【0053】
得られた加工布は、表1に示す通り軽量であり、滑脱抵抗力、通気性が良好なものであった。
【0054】
[比較例1]
タテ糸に200dtex/60フィラメントのポリエステル繊維に仮撚り加工を施し、撚り数1600T/mかつ、撚り係数22630の撚りをかけた強撚糸とヨコ糸に172dtex/60フィラメントのポリエステル繊維に仮撚り加工を施し、撚り数1600T/mかつ、撚り係数20980の撚りをかけた強撚糸を配列した平二重織物を製織した。次に常法に従い精練、乾燥、中間セットを行った後、減量、染色、乾燥を行い、さらに明度を向上させるために深色剤を用いて樹脂加工を施し、仕上げセットを行って、タテ密度が151本/2.54cm、ヨコ密度が93本/2.54cmである一般的なフォーマル衣料に用いられる織物を比較例1とした。本織物は、織糸の溶出はないので、特定の糸本数毎に間隙を有するように配されたものではなかった。評価結果は表1に示す。
【0055】
得られた加工布は、間隙を有さず、表1に示す通り目付が重く、通気性が劣ったものであり、満足できるものではなかった。
【0056】
[比較例2]
タテ糸に105dtex/54フィラメントのポリエステル繊維にタスラン加工を施し、撚り数2600T/mかつ、撚り係数26650の撚りをかけた強撚糸と84dtex/24フィラメントのアルカリ易溶出ポリエステル繊維に撚り数2000T/mかつ、撚り係数18330の撚りをかけた強撚糸をそれぞれ9本:3本の割合で交互に配列し、ヨコ糸もタテ糸と同様に配列したジョーゼット織物を製織した。次に常法に従い精練、乾燥、中間セットを行った後、水酸化ナトリウムを3%濃度となるよう調整した溶液中で95℃、10分間、浴中処理を実施し、アルカリ易溶出ポリエステル繊維を完全溶解し、その後、常法に従い、染色、乾燥を行い、さらに明度を向上させるために深色剤を用いて樹脂加工を施し、仕上げセットを行って、タテ密度が80本/2.54cm、ヨコ密度が71本/2.54cmであり、空隙部以外の組織がジョーゼットとなる加工布を得た。本加工布は、タテ糸、ヨコ糸それぞれ9本ごとに間隙を有していたが、間隙を構成するタテ糸およびヨコ糸に交差するヨコ糸およびタテ糸は、襷掛けに配されず、表側から表側へ、または裏側から裏側へと同じ側に配された織物であった。評価結果は表1に示す。
【0057】
得られた加工布は、表1に示す通り滑脱抵抗力が弱く、目ズレが発生した満足できるものではなかった。
【0058】
[比較例3]
タテ糸に84dtex/36フィラメントのポリエステル無撚糸と84dtex/24フィラメントのアルカリ易溶出ポリエステル無撚糸をそれぞれ8本:2本の割合で交互に配列し、ヨコ糸もタテ糸と同様に配列した平織物を得た。次に常法に従い精練、乾燥、中間セットを行った後、水酸化ナトリウムを3%濃度となるよう調整した溶液中で95℃、10分間、浴中処理を実施し、アルカリ易溶出ポリエステル繊維を完全溶解し、その後、常法に従い、染色、乾燥、仕上げセットを行って、タテ密度が132本/2.54cm、ヨコ密度が105本/2.54cmである、平織の加工布を得た。本加工布は、タテ糸ヨコ糸それぞれ8本ごとに間隙を有し、間隙を構成するタテ糸およびヨコ糸に交差するタテ糸およびヨコ糸が表側から裏側へ、または裏側から表側へ襷掛けするよう配された織物であった。評価結果は表1に示す。
【0059】
得られた加工布は、表1に示す通り外観・風合いに乏しく、発色性も満足できるものではなかった。
【0060】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の織物は間隙が広く、軽量でありながら目ズレに強く、尚且つ上品な外観と優れたハリコシを有するので、フォーマル衣料の製品を好適に製造することができる。
【符号の説明】
【0062】
1.タテ糸
2.タテ糸
3.ヨコ糸