IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧

特許7238352接合用ペースト、及び該接合用ペーストで接合されてなる物品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】接合用ペースト、及び該接合用ペーストで接合されてなる物品
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/0545 20220101AFI20230307BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20230307BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20230307BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20230307BHJP
   B22F 1/107 20220101ALI20230307BHJP
【FI】
B22F1/0545
B22F9/00 B
H01B1/22 A
H01B1/22 D
H05K3/32 B
B22F1/107
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018213687
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2020080279
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上杉 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】野上 孝幸
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-501657(JP,A)
【文献】特開2012-060114(JP,A)
【文献】国際公開第2006/013793(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F1/0545
B22F1/102
B23K35/22
B23K35/363
H01L21/52
H01B1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子(A)と焼結促進剤(B)と液状分散媒(C)とを含有し、
金属粒子(A)は、金属粒子(A)100質量%中に、金属ナノ粒子を25~100質量%含有し、
前記金属ナノ粒子は、平均粒子径が1~500nmであり、
焼結促進剤(B)が、下記一般式(1)で表されるアミジン誘導体(D)と有機酸(E)とからなるアミジニウム塩(F)であり、
前記アミジン誘導体(D)が、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、又は1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノネンを含む、接合用ペースト。
(ただし前記有機酸(E)は、金属ナノ粒子を被覆する有機物である場合を除く。)
一般式(1)
【化1】
(一般式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してよいアルキル基、又は置換基を有してよいアルケニル基を表す。R~Rは、共有結合を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。)
【請求項2】
金属粒子(A)と焼結促進剤(B)と液状分散媒(C)との合計100質量%中に、金属粒子(A)を80質量%以上含む、請求項1に記載の接合用ペースト。
【請求項3】
金属粒子(A)と焼結促進剤(B)と液状分散媒(C)との合計100質量%中に、焼結促進剤(B)を0.1~1.5質量%含む、請求項1又は2に記載の接合用ペースト。
【請求項4】
有機酸(E)が、カルボキシル基を有する、請求項1~いずれか1項に記載の接合用ペースト。
【請求項5】
有機酸(E)がギ酸である、請求項1~いずれか1項に記載の接合用ペースト。
【請求項6】
金属ナノ粒子の表面の少なくとも一部が、炭素数が3~22である飽和又は不飽和の脂肪酸により被覆されている、請求項1~いずれかに1項に記載の接合用ペースト。
【請求項7】
金属粒子(A)100質量%中に、金属ナノ粒子を80~100質量%以上含む、請求項1~いずれか1項に記載の接合用ペースト。
【請求項8】
金属ナノ粒子の平均粒子径が2~200nmである、請求項1~いずれか1項に記載の接合用ペースト。
【請求項9】
金属部材同士、金属部材と半導体素子、又は金属部材とLED素子との間に、請求項1~いずれか1項に記載の接合用ペーストを挟み、加熱し、液状分散媒(C)を除去すると共に、金属粒子(A)の少なくとも一部を溶融して焼結体を形成し、
金属部材同士、金属部材と半導体素子、又は金属部材とLED素子との間を、前記焼結体で接合することを特徴とする物品の製造方法。
【請求項10】
金属部材同士、金属部材と半導体素子、又は金属部材とLED素子とが、請求項1~8いずれか1項に記載の接合用ペーストから形成された焼結体で接合されており、-40℃の温度条件で10分間保持した後、250℃の温度条件で10分間保持する処理工程を1サイクルとし、この処理を500サイクル行う冷熱サイクル試験の前及び後において、ダイシェア強度が5MPa以上である物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接合用ペースト、及び該接合用ペーストで接合されてなる物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属部材同士、金属部材と半導体素子、又は金属部材とLED素子等を接合するための接合材料としては、はんだが使用されていた。次世代パワーエレクトロニクスの分野では、SiC等のデバイスのための接合剤としては、高温動作に対応でき、環境に配慮した、はんだの代替材(鉛を含まない)が求められている。例えば、特許文献1~4に示すように銀ナノ粒子を用いた接合用ペーストの利用が提案されている。
【0003】
また、接合用ペーストに金属ナノ粒子を含有するだけでは、焼結が進まず十分な接合強度が得られないことから、添加剤を併用する技術が提案されている。例えば、特許文献5には、銀フィラーの焼結を促進する材料として、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン)のような有機塩基化合物を含む焼結性接合材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-126869号公報
【文献】特開2011-240406号公報
【文献】特開2013-4309号公報
【文献】特開2016-54098号公報
【文献】特表2018-501657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、銀ナノ粒子を用いた接合用ペーストは、接合強度を向上させるため、高い銀ナノ粒子含有率が求められる。それにより、ペーストの粘度が高くなり、塗工適性が悪化し、均質な膜が得られず、結果として初期の接合強度が低下するという課題があった。
また、接合材料には、初期の接合強度だけでなく、各種耐久性が求められる。最も過酷な耐久試験の一例としては、接合部材を、200℃以上の高温状態と、-40℃程度の低温状態に繰り返しさらす冷熱サイクル試験が挙げられるが、現状、金属ナノ粒子を高い比率で含有しながらも、初期及び200℃を超える冷熱サイクル試験後の接合強度に優れる物品を形成可能な接合ペーストは見出されておらず、高温動作が必要な次世代パワー半導体を実現するための大きな課題となっている。
【0006】
特許文献5に記載のDBUを含む焼結性接合材料であっても、DBUの高い揮発性のために加熱焼結時に十分に機能せず、初期及び冷熱サイクル試験後の接合強度が不十分であり、さらなる改良が求められていた。
【0007】
すなわち、本発明の目的は、金属微粒子を高い比率で含有しながらも塗工適性に優れる接合用ペーストであって、初期及び冷熱サイクル試験後の接合強度に優れる物品を形成できる接合用ペーストを提供することにある。また、本発明の目的は、初期及び冷熱サイクル試験後の接合強度に優れる物品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決するため、鋭意検討の結果、一般式(1)で表される特定のアミジン誘導体(D)と有機酸(E)とからなるアミジニウム塩(F)である焼結促進剤(B)を利用することにより、塗工適性に優れ、且つ初期及び冷熱サイクル後の接合強度にも優れる接合用ペーストを見出した。
すなわち、本発明は以下の発明に関する。
【0009】
〔1〕 金属粒子(A)と焼結促進剤(B)と液状分散媒(C)とを含有し、
金属粒子(A)は、金属粒子(A)100質量%中に、金属ナノ粒子を25~100質量%含有し、
焼結促進剤(B)が、下記一般式(1)で表されるアミジン誘導体(D)と有機酸(E)とからなるアミジニウム塩(F)である、接合用ペースト。
【0010】
一般式(1)
【化1】
【0011】
(一般式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してよいアルキル基、又は置換基を有してよいアルケニル基を表す。R~Rは、共有結合を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。)
【0012】
〔2〕 金属粒子(A)と焼結促進剤(B)と液状分散媒(C)との合計100質量%中に、金属粒子(A)を80質量%以上含む、〔1〕に記載の接合用ペースト。
【0013】
〔3〕 金属粒子(A)と焼結促進剤(B)と液状分散媒(C)との合計100質量%中に、焼結促進剤(B)を0.1~1.5質量%含む、〔1〕又は〔2〕に記載の接合用ペースト。
【0014】
〔4〕 アミジン誘導体(D)が、複素環化合物である、〔1〕~〔3〕いずれか1項に記載の接合用ペースト。
【0015】
〔5〕 有機酸(E)が、カルボキシル基を有する、〔1〕~〔4〕いずれか1項に記載の接合用ペースト。
【0016】
〔6〕 有機酸(E)がギ酸である、〔1〕~〔5〕いずれか1項に記載の接合用ペースト。
【0017】
〔7〕 金属ナノ粒子の表面の少なくとも一部が、炭素数が3~22である飽和又は不飽和の脂肪酸により被覆されている、〔1〕~〔6〕いずれかに1項に記載の接合用ペースト。
【0018】
〔8〕 金属粒子(A)100質量%中に、金属ナノ粒子を80~100質量%以上含む、〔1〕~〔7〕いずれか1項に記載の接合用ペースト。
【0019】
〔9〕 金属ナノ粒子の平均粒子径が2~200nmである、〔1〕~〔8〕いずれか1項に記載の接合用ペースト。
【0020】
〔10〕 金属部材同士、金属部材と半導体素子、又は金属部材とLED素子との間に、〔1〕~〔9〕いずれか1項に記載の接合用ペーストを挟み、加熱し、液状分散媒(C)を除去すると共に、金属粒子(A)の少なくとも一部を溶融して焼結体を形成し、
金属部材同士、金属部材と半導体素子、又は金属部材とLED素子との間を、前記焼結体で接合することを特徴とする物品の製造方法。
【0021】
〔11〕 金属部材同士、金属部材と半導体素子、又は金属部材とLED素子とが、〔1〕~〔9〕いずれか1項に記載の接合用ペーストから形成される焼結体で接合されている物品。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、金属微粒子を高い比率で含有しながらも塗工適性に優れる接合用ペーストであって、初期及び冷熱サイクル試験後の接合強度に優れる物品を形成できる接合用ペーストを提供することができる。また、本発明により、初期及び冷熱サイクル試験後の接合強度に優れる物品及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の接合用ペーストは、前述の通り、金属粒子(A)と焼結促進剤(B)と液状分散媒(C)とを含有し、 金属粒子(A)は、金属粒子(A)100質量%中に、金属ナノ粒子を25~100質量%含有し、焼結促進剤(B)が、前述の一般式(1)で表されるアミジン誘導体(D)と有機酸(E)とからなるアミジニウム塩(F)であることを特徴とする。
アミジン誘導体が、有機酸とのアミジニウム塩を形することで、焼結を促進させ、優れた初期及び冷熱サイクル試験後の接合強度を発現させ、さらに、ペースト粘度の上昇を抑制し塗工適性に優れる、という格別な効果を奏する。
【0024】
<金属粒子(A)>
金属粒子(A)としては、例えば金、銀、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、ケイ素、アルミニウム、タングステン、モリブデン、及び白金等の金属粉、並びにこれらの合金、並びにこれらの複合粉が挙げられる。また、核体と、前記核体物質とは異なる物質で被覆した微粒子、具体的には、例えば、銅を核体とし、その表面を銀で被覆した銀コート銅粉等が挙げられる。また、例えば酸化銀、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、ITO(スズドープ酸化インジウム)、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、及びGZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)等の金属酸化物の粉末、並びにこれらの金属酸化物で表面被覆した粉末等が挙げられる。
使用する金属の種類は1種でもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明では、金属粒子(A)100質量%中、いわゆる金属ナノ粒子を25~100質量%含むものを金属粒子(A)として用いる。金属ナノ粒子は、平均粒子径が1μm未満である金属粒子であれば特に限定されない。本願の平均粒子径は、体積粒度分布の累積粒度(D50)であり、ナノトラック UPA-EX150(日機装社製)等を用いて測定することができる。
金属ナノ粒子として、平均粒子径が1~500nmの金属ナノ粒子を使用することが好ましく、より好ましくは2~200nmであり、特に好ましくは2~100nmである。金属ナノ粒子は、特定の粒子径範囲のものを単独で使用してもよいし、異なる粒子径範囲のものを複数組み合わせて使用してもよい。
金属ナノ粒子を必須とする金属粒子(A)を使用することにより、粒子表面の活性が上がり、ナノサイズ効果により融点が下がるため、低温での十分な焼結が可能となる。低温焼結により電子部品の実装時の温度を下げることが可能になるので熱ストレスを低減できる。そして、金属ナノ粒子は、焼結により互いに結合してサイズが大きくなると、通常サイズの金属材料(バルク金属材料)と同等の高い融点を示すようになるので、実装後は耐熱温度を向上できる。
【0026】
本発明では、金属粒子(A)として、ナノサイズの金属粒子の他に、ナノサイズ以外の金属粒子も用いることができるが、金属粒子(A)100質量%中、金属ナノ粒子は25~100質量%であり、好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
なお、本発明における金属粒子(A)のうち、金属ナノ粒子の平均粒子径は、ナノトラック UPA-EX150(日機装社製)用いて、体積粒度分布の累積粒度(D50)を測定した。また、ナノサイズ以外の金属粒子の平均粒子径は、島津製作所社製レーザー回折粒度分布測定装置「SALD-3000」を用いて、体積粒度分布の累積粒度(D50)を測定した。
【0027】
本発明における金属ナノ粒子は、その表面の少なくとも一部が、炭素数が3~22である飽和又は不飽和の脂肪酸により被覆されていることが好ましい。
被覆前の金属ナノ粒子と前記脂肪酸との合計100質量%中、被覆前の金属ナノ粒子は70~99質量%、前記脂肪酸は1~30質量%であることが好ましく、被覆前の金属ナノ粒子は80~95質量%、前記脂肪酸は5~20質量%であることがより好ましい。前記脂肪酸の量が5~20質量%であることによって、被覆後の金属ナノ粒子の凝集を抑制でき、優れた接合強度を発現できる。
なお、前記脂肪酸で被覆された金属ナノ粒子を用いる場合は、被覆後の金属ナノ粒子全体を、金属粒子(A)に含まれる金属ナノ粒子とするものとする。
【0028】
本発明の接合用ペーストは、金属粒子(A)と、後述する焼結促進剤(B)と後述する液状分散媒(C)との合計100質量%中に、金属粒子(A)を80質量%以上含むものであり、85~95質量%含むことがより好ましい。金属粒子(A)を80質量%以上含むことによって、後述する接合対象である部材同士を強固に接合することが可能である。
【0029】
<焼結促進剤(B)、アミジニウム塩(F)>
本発明の接合用ペーストは、特定構造の焼結促進剤(B)を含む。焼結促進剤(B)はアミジン誘導体(D)と有機酸(E)とからなる、アミジニウム塩(F)の構造を有する。
このようなアミジニウム塩(F)が、金属粒子(A)の焼結を促進する詳細な機構は完全には明らかではないが、現在のところ以下のように推察している。
【0030】
アミジニウム塩(F)は、部材を接合するために、金属粒子(A)と共存しながら高温で焼成されるが、その際に、アミジニウム塩(F)の解離が進行し、接合材中にアミジン誘導体(D)と有機酸(E)が生成する。そのいずれもが、金属粒子(A)の表面に親和性を有するために、金属粒子(A)中の金属ナノ粒子の表面を被覆している有機物を引き剥がす効果を有すると考えられる。有機物が引き剥がされた金属ナノ粒子は安定性を失い、凝集が起こりやすい状態となる。その結果、金属ナノ粒子同士の接触や融着が促進され、緻密な金属焼結膜の形成が可能となると考えられる。
【0031】
さらに、アミジニウム塩(F)は、塩の構造を有するため、接合用ペーストが主に使用される室温程度以下の温度では、金属粒子(A)中の金属ナノ粒子表面に直接相互作用すると考えられるアミジン誘導体(D)中の窒素原子が、有機酸(E)のプロトンによって不活性化されていると考えられる。したがって、アミジン誘導体(D)と金属粒子(A)中のナノ粒子との相互作用が抑制され、金属粒子が凝集することがない。これにより、ペーストの粘度上昇が抑制され、優れた塗工適性を発揮すると考えられる。さらに、アミジニウム塩(F)は塩構造を有するために蒸気圧が低く、揮散し難い一方、高温では揮発性のアミジン(D)と有機酸(E)に変化するため、焼結材層中に残留し難く、緻密な金属焼結膜を形成することが可能と考えている。
【0032】
<アミジン誘導体(D)>
まず、アミジニウム塩(F)を形成するアミジン誘導体(D)について説明する。アミジン誘導体(D)は、下記一般式(1)で表される構造を有する。
【0033】
一般式(1)
【化2】
【0034】
(一般式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してよいアルキル基、又は置換基を有してよいアルケニル基を表す。R~Rは、共有結合を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。)
【0035】
一般式(1)中のR~Rにおけるアルキル基としては、炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状又は縮合多環状アルキル基が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、tert-オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、及び、4-デシルシクロヘキシル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
一般式(1)中のR~Rにおけるアルケニル基としては、炭素数2から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状又は縮合多環状アルケニル基が挙げられる。さらに、それらは構造中に複数の炭素-炭素二重結合を有していても良い。具体的には、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、1,3-ブタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、及び、シクロペンタジエニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
一般式(1)中のR~Rにおける、アルキル基、及び、アルケニル基は、その骨格中に、さらに置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、-O-Rで表されるアルコキシル基が挙げられる。ここで、Rはアルキル基を表し、一般式(1)中のR~Rで説明したアルキル基と同義である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0038】
一般式(1)中のR~Rは、共有結合を介して互いに結合し、一体となって環構造を形成してもよい。すなわち、アミジン誘導体(D)は複素環化合物であってもよい。そのようなアミジンン誘導体(D)としては、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾ[1,5-a]ピリジン、イミダゾ[1,2-a]ピリジン、1,3,5-トリアジン、ピリミジン、2-アミノピリジン、キナゾリン等の芳香族化合物、及び、それらの誘導体が挙げられ、
さらに、2-イミダゾリン、3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノネン(DBN)等の非芳香族化合物、及び、それらの誘導体を挙げることができるが、こられに限定されるものではない。
【0039】
これらのアミジン誘導体(D)の中で、特に金属粒子(A)との相互作用が大きいと推察され、その結果、接合強度が飛躍的に高まる点で、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノネン(DBN)が好ましい。
【0040】
<有機酸(E)>
次に、本発明のアミジニウム塩(F)を形成する有機酸(E)について説明する。
有機酸(E)は、アミジン誘導体(D)にプロトンを供与することでアミジニウムカチオンを形成し、有機酸の残基はカウンターアニオンの役割を担う。
【0041】
有機酸(E)としては、分子中に、少なくとも1つのカルボキシル基、あるいは、スルホン酸基を有する材料であれば特に限定されない。また、分子中に少なくとも1つのフェノール性の水酸基を有する有機物も本発明の有機酸(E)に包含される。
【0042】
(カルボキシル基を有する有機酸)
カルボキシル基を有する有機酸としては、ギ酸、酢酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等の一価の直鎖の飽和脂肪酸;2-ヘキシルデカン酸、2-ペンチルノナン酸等の一価の分岐飽和脂肪酸;ソルビン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、イソオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、セラコレイン酸等の一価の不飽和脂肪酸;マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、ジグリコール酸、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸等の多価の脂肪酸;さらに、安息香酸、ナフトエ酸、o-フタル酸、m-フタル酸、p-フタル酸、等の一価又は多価の芳香族カルボン酸を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。さらに、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸等のヒドロキシル基で置換されたカルボン酸類も本発明の有機酸(E)に包含される。
【0043】
(スルホン酸基を有する有機酸)
スルホン酸基を有する有機酸としては、メタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等を挙げることができる。
【0044】
(フェノール性水酸基を有する有機酸)
フェノール性水酸基を有する有機酸としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、1-ナフトール、2-ナフトール、カテコール、ヒドロキノン、等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、フェノール性有機酸を有する有機酸は、フェノール性水酸基を有するオリゴマーや樹脂であってもよく、具体的には、フェノール樹脂、フェノール-ノボラック樹脂等を挙げることができる。
【0045】
これらの有機酸(E)の中では、高い接合強度が得られる点で、カルボキシル基を有する有機酸であることが好ましい。さらに、接合材中に残存し難く、金属粒子(A)の融着を阻害し難い点で、炭素数8以下の有機酸であることが好ましく、ギ酸であることが最も好ましい。
【0046】
焼結促進剤(B)は、前述したアミジン誘導体(D)と有機酸(E)のいかなる組み合わせからなるアミジニウム塩(F)であってもよい。具体的な化合物としては、DBUのギ酸塩、DBUのフェノール塩、DBUのp-トルエンスルホン酸塩、DBUのo-フタル酸塩、DBUのオクチル酸塩、DBUのフェノール-ノボラック樹脂塩等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの中で、先に述べた理由から、焼結促進剤(B)は、DBUのギ酸塩であることが最も好ましい。
【0047】
焼結促進剤(B)は、市販材料として、U-CAT SA(登録商標、サンアプロ株式会社)シリーズ等として入手可能である。具体的には、同シリーズの、102、506、603、810、831、841、851、881、891等を挙げることができる。
【0048】
また、焼結促進剤(B)は、公知の中和反応によっても得ることが可能である。例えば、適当な有機溶媒中で、所望のアミジン誘導体(D)と有機酸(E)を当量になるように添加して中和し、溶剤を除去することで容易に得ることが可能である。
【0049】
本発明において、焼結促進剤(B)は一種のみを単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。複数を併用した場合、それぞれの融点の違いを利用し焼結温度設定の許容幅が広がることや焼結性等が向上するといった相乗効果が発揮されるため望ましい。
焼結促進剤(B)の含有量は、金属粒子(A)と焼結促進剤(B)と後述する液状分散媒(C)との合計100質量%中、好ましくは0.1~1.5質量%であり、より好ましくは0.3~1.0質量%である。所定範囲量の焼結促進剤(B)を使用することにより、塗工適性を向上でき、金属ナノ粒子を被覆する有機物を引き剥がす効果を利用し焼結を促進させることでバルクに近い緻密な金属の膜を形成でき、冷熱サイクル試験後も高レベルで接合強度を維持できるため好ましい。
【0050】
<液状分散媒(C)>
本発明の接合用ペーストは、液状分散媒(C)を含有する。液状分散媒(C)は、分散質である金属粒子(A)を分散する機能を担う。また、液状分散媒(C)に前述の焼結促進剤(B)は溶解してもよいし、微粒子として分散してもよい。
【0051】
液状分散媒(C)のうち、比較的沸点の低いものとしては、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン、イソプロパノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が挙げられる。液状分散媒(C)のうち、比較的沸点の高いのものとしては、カルビトールアセテート、メトキシプロピルアセテート、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、イソボルニルシクロヘキサノール、オクタノール、炭化水素系溶剤に含まれるイソパラフィン系溶剤等が挙げられる。これら液状分散媒(C)は、適宜単独で、又は複数用いることができる。
【0052】
<接合用ペースト>
本発明の接合用ペーストは、導電ペーストであり、接合した物品としては、電子基板にある電気回路とその上に搭載する電子部品に展開できる。具体的には、ICチップ等が挙げられる。
【0053】
本発明の接合用ペーストには、凝集を防止する観点で適宜分散剤を添加してもよい。市販分散剤の例としては、ソルスパース9000、ソルスパース12000、ソルスパース17000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース35100、ソルスパース54000、ソルシックス250(以上、日本ルーブリゾール株式会社製)、EFKA 4008、EFKA 4009、EFKA 4010、EFKA 4015、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 7462、EFKA 4020、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 6220、EFKA 6225、EFKA 6700、EFKA 6780、EFKA 6782、EFKA 8503(以上、エフカアディディブズ社製)、アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPN411、フェイメックスL-12(以上、味の素ファインテクノ株式会社製)、DisperBYK101、DisperBYK102、DisperBYK106、DisperBYK108、DisperBYK111、DisperBYK116、DisperBYK130、DisperBYK140、DisperBYK142、DisperBYK145、DisperBYK161、DisperBYK162、DisperBYK163、DisperBYK164、DisperBYK166、DisperBYK167、DisperBYK168、DisperBYK170、DisperBYK171、DisperBYK174、DisperBYK180、DisperBYK182、DisperBYK192、DisperBYK193、DisperBYK2000、DisperBYK2001、DisperBYK2020、DisperBYK2025、DisperBYK2050、DisperBYK2070、DisperBYK2155、DisperBYK2164、BYK220S、BYK300、BYK306、BYK320、BYK322、BYK325、BYK330、BYK340、BYK350、BYK377、BYK378、BYK380N、BYK410、BYK425、BYK430(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が用いることができる。
添加する分散剤の量としては、接合用ペースト100質量%中、5質量%以下、好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは、0.5質量%以下である。凝集防止効果の点から0.1質量%以上が好ましく、焼結の際、残存しないように5質量%以下であることが好ましい。
【0054】
(接合方法及び接合物品)
本発明は、上記接合用ペーストを少なくとも第1の部材に塗布する工程と、前記第1の部材上の接合用ペーストに第2の部材を接触させ、焼成することにより、第1の部材と第2の部材とを接合することができる。
接合する部材の種類は特に限定されず、金属部材、電子素子、プラスチック材料、セラミック材料等を挙げることができる。金属部材同士、金属部材と半導体素子、金属部材とLED素子とを接合することが好ましい。
即ち、金属部材同士、金属部材と半導体素子、又は金属部材とLED素子との間に、本発明の接合用ペーストを挟み、加熱し、液状分散媒(C)を除去すると共に、金属粒子(A)の少なくとも一部を溶融し、焼結体を形成し、金属部材同士、金属部材と半導体素子、又は金属部材とLED素子との間を、前記焼結体で接合することが好ましい。
【0055】
金属部材としては、例えば、銅基板、金基板、アルミ基板等を挙げることができる。
電子素子としては、半導体素子、LED素子を挙げることができる。
半導体素子としては、シリコン(ケイ素)やゲルマニウムのほかに、ヒ化ガリウム、リン化ガリウム、硫化カドミウム等が用いられる。LED素子としてはアルミニウム、窒化珪素、ダイヤモンド、黒鉛、酸化イットリウム及び酸化マグネシウム等が用いられる。特に、炭化ケイ素や窒化ガリウム等のパワーデバイス素子を使用することができる。
プラスチック材料としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート等を挙げることができる。
セラミック材料としては、例えば、ガラス、シリコン等を挙げることができる。
第1の部材及び第2の部材は、同じ種類だけではなく、異なる種類の部材であってもよい。上記部材は、接合強度を大きくするため適宜コロナ処理、メッキ等で加工してもよい。
【0056】
接合用ペーストを塗布する方法としては、部材上に均一に塗布できる方法であれば特に限定されるものではない。例えばスクリーン印刷、メタルマスク印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、及びグラビアオフセット印刷等の各種印刷法、ディスペンサー等が挙げられる。
【0057】
接合工程における焼成条件は、適宜変更されるが、例えば、大気圧下、窒素雰囲気、真空中、加圧又は還元雰囲気で200~300℃等の条件を挙げることができる。また、温度条件は段階的に変化させてもよい。焼成装置としては、熱風オーブン、赤外線オーブン、リフローオーブン、マイクロウエーブオーブン及び光焼成装置等が挙げられる。光焼成装置の場合、照射する光の種類はとくに限定されないが、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、レーザー光等が挙げられる。これら装置を適宜単独で又は複数用いることができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【実施例
【0058】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。部は質量部の意である。
【0059】
<金属粒子(A)>
(銀粉Aの製造方法)
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で攪拌しながらトルエン200部及びヘキサン酸銀22.3部を仕込み、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)、オレイン酸2.8部(金属1molに対し0.1mol倍)を添加し溶解させた。その後、還元剤として濃度20%のこはく酸ジヒドラジド(以下、SUDHという)水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)を滴下すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。さらに反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。静置、分離した後、水相を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去し、さらにトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄、分離を繰り返した後、乾燥させて銀粉Aを得た。銀粉Aの平均粒子径(D50)は、10nmであった。
【0060】
(銀粉B)
製品名 銀ナノ粒子乾粉-2(平均粒子径(D50)60nm、比表面積5~8m/g)DOWAエレクトロニクス株式会社製
【0061】
(銀粉C)
球状銀粉(平均粒子径(D50)1.6μm、比表面積1.0m/g)
【0062】
<焼結促進剤(B)>
焼結促進剤として、以下を用いた。なお、DBUは、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセンの略称である。
・DBUのギ酸塩 (製品名:U-CAT SA603、サンアプロ株式会社製)
・DBUのo-フタル酸塩 (製品名:U-CAT SA810、サンアプロ株式会社製)
・DBUのフェノール塩 (製品名:U-CAT SA1、サンアプロ株式会社製)
・DBUのp-トルエンスルホン酸塩 (製品名:U-CAT SA506、サンアプロ株式会社製)
・DBU (東京化成工業株式会社製)
・イミダゾール (東京化成工業株式会社製)
【0063】
<液状分散媒>
ガムテレビン油から誘導された、α-, β-, γ-ターピネオールの異性体混合物
(製品名 ターピネオールC 日本テルペン化学株式会社製)
【0064】
<接合ペーストの製造>
[実施例1]
銀粉A:87.0部、焼結促進剤:0.5部、液状分散媒:12.5部を混合し、接合用ペーストを調製した。
【0065】
[実施例2~13、比較例1~3]
表1に示す組成に従って、実施例1と同様に接合用ペーストを調製した。
【0066】
<接合ペーストの評価>
(1)塗工適性
調製した各接合用ペーストを鋼板に下記条件で塗工し、その塗工適性を下記基準で判断した。
<塗工条件>
・メタルマスク:開口部4mm角、板厚50μm(セリアコーポレーション製)
・メタルスキージ:40mm×250mm、厚み1mm(セリアコーポレーション製)
<評価基準>
○:接合用ペーストが、良好な流動性を有し、開口部(4mm角)全体に均一に付着している状態(良好)
△:接合用ペーストが、良好な流動性を有するが、開口部の一部(2~3mm角の範囲)に付着するが、付着していない部分がある状態(使用可能)
×:接合用ペーストが、流動性が乏しく、開口部のうち、2mm角範囲以下にしか付着していない状態(不良)
【0067】
(2)接合強度(シェア強度)
(接合条件)
前記塗工条件にて、各接合用ペーストを下記基材1の金メッキ面に塗工し、金メッキ面がペースト側となるように下記基材2を貼り付けた。これを250℃の熱風乾燥オーブン中で60分間、大気雰囲気で焼結して試験片を得た。なお、塗工時の接合用ペーストの厚みは用いたメタルマスクの板厚:50μmである。
基材1:片側が金メッキされた銅板 1.3cm×1.3cm(厚み2mm)
基材2:片側が金メッキされたSiチップ 5mm×5mm(厚み300μm)
【0068】
得られた試験片について、冷熱サイクル試験の前・後の接合強度(ダイシェア強度)[MPa]を測定した。
[冷熱サイクル試験]
試験片を、-40℃の温度条件で10分間保持した後、250℃の温度条件で10分間保持する処理工程を1サイクルとし、この処理を500サイクル行った。
【0069】
測定装置:万能型ボンドテスタ(デイジ・ジャパン株式会社製、4000シリーズ)
試験条件
・測定高さ:100μm
・測定スピード:500μm/s
具体的には基材1を固定し、基材1と焼結体との界面を起点として基材2に向かって高さ100μmの位置を、500μm/sの速度で押し、接合が破壊される強度を求めた。
◎:15MPa以上(非常に良好)
○:10MPa以上、15MPa未満(良好)
△:5MPa以上、10MPa未満(使用可能)
×:5MPa未満(不良)
【0070】
【表1】
【0071】
表1の結果は、焼結促進剤(B)として、特定のアミジン誘導体(D)と有機酸(E)とからなるアミジニウム塩(F)を含有する本発明の接合用ペーストが、金属微粒子を高い比率で含有しながらも塗工適性に優れる、且つ初期及び冷熱サイクル試験後の接合強度に優れることを示している。