IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧

<>
  • 特許-工具ユニット 図1
  • 特許-工具ユニット 図2
  • 特許-工具ユニット 図3
  • 特許-工具ユニット 図4
  • 特許-工具ユニット 図5
  • 特許-工具ユニット 図6
  • 特許-工具ユニット 図7
  • 特許-工具ユニット 図8
  • 特許-工具ユニット 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】工具ユニット
(51)【国際特許分類】
   B23F 21/04 20060101AFI20230307BHJP
   B23F 5/12 20060101ALI20230307BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
B23F21/04
B23F5/12
B23Q11/10 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018225000
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020082319
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 尚
(72)【発明者】
【氏名】各務 誠司
(72)【発明者】
【氏名】中野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】外山 弘治
(72)【発明者】
【氏名】今野 悠生
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-066841(JP,A)
【文献】実開昭60-061123(JP,U)
【文献】特開昭52-008580(JP,A)
【文献】特開昭61-192411(JP,A)
【文献】特開2017-113808(JP,A)
【文献】特開2004-338000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/00-17/00,
21/00-21/28,
23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される主軸と、前記主軸を回転可能に支持する主軸ハウジングを有する主軸装置を備えた工作機械に用いる工具ユニットであって、
軸線方向一方の端面にすくい面を持つ複数の刃を外周面に有し、スカイビング加工により工作物を歯車加工するスカイビングカッタである回転工具と、
前記主軸に対して着脱可能に構成され、前記主軸に対して一体回転可能に保持されると共に、前記回転工具の軸線方向において前記すくい面とは反対側に位置する前記回転工具の第一端部に対し、前記回転工具と同軸に、且つ、前記回転工具と一体回転可能に連結される第一ホルダと、
前記回転工具の軸線方向において前記すくい面側に位置する前記回転工具の第二端部に対し、前記回転工具と同軸に、且つ、前記回転工具と一体回転可能に連結される第二ホルダと、
前記第一ホルダ及び前記第二ホルダを回転可能に支持すると共に、前記主軸ハウジングに対して相対回転不能に連結される第三ホルダと、
を備え、
前記第三ホルダは、
筒状に形成され、前記回転工具前記第一端部よりも前記主軸側で前記第一ホルダの第一外周被支持面を回転可能に支持する第一支持面を有し、前記主軸ハウジングに対して相対回転不能に連結される連結部材を有する基端側ホルダと、
筒状に形成され、前記回転工具前記第二端部よりも前記主軸とは反対側で前記第二ホルダの第二外周被支持面を回転可能に支持する第二支持面を有する先端側ホルダと、
前記回転工具の軸線方向において前記基端側ホルダと前記先端側ホルダとの間に挟まれて配置され、前記基端側ホルダ及び前記先端側ホルダに対して着脱可能に構成され、前記回転工具が位置する軸線方向の範囲に配置され、前記回転工具の一部の前記刃を突出させる開放部を有するC字状に形成されるスペーサと、
を有し、
前記スペーサは、
前記回転工具の軸線から前記開放部へ向かう方向において、前記開放部を形成する前記C字状の周方向開放端の位置が、前記第一ホルダの前記第一外周被支持面及び前記第二ホルダの前記第二外周被支持面に対して、前記回転工具の軸線よりも遠い側に位置するように構成された、工具ユニット。
【請求項2】
回転駆動される主軸と、前記主軸を回転可能に支持する主軸ハウジングを有する主軸装置を備えた工作機械に用いる工具ユニットであって、
軸線方向一方の端面にすくい面を持つ複数の刃を外周面に有し、スカイビング加工により工作物を歯車加工するスカイビングカッタである回転工具と、
前記主軸に対して着脱可能に構成され、前記主軸に対して一体回転可能に保持されると共に、前記回転工具の軸線方向において前記すくい面とは反対側に位置する前記回転工具の第一端部に対し、前記回転工具と同軸に、且つ、前記回転工具と一体回転可能に連結される第一ホルダと、
前記回転工具の軸線方向において前記すくい面側に位置する前記回転工具の第二端部に対し、前記回転工具と同軸に、且つ、前記回転工具と一体回転可能に連結される第二ホルダと、
前記第一ホルダ及び前記第二ホルダを回転可能に支持すると共に、前記主軸ハウジングに対して相対回転不能に連結される第三ホルダと、
を備え、
前記第三ホルダは、
筒状に形成され、前記回転工具前記第一端部よりも前記主軸側で前記第一ホルダの第一外周被支持面を回転可能に支持する第一支持面を有し、前記主軸ハウジングに対して相対回転不能に連結される連結部材を有する基端側ホルダと、
筒状に形成され、前記回転工具前記第二端部よりも前記主軸とは反対側で前記第二ホルダの第二外周被支持面を回転可能に支持する第二支持面を有する先端側ホルダと、
前記回転工具の軸線方向において前記基端側ホルダと前記先端側ホルダとの間に挟まれて配置され、前記基端側ホルダ及び前記先端側ホルダに対して着脱可能に構成され、前記回転工具が位置する軸線方向の範囲に配置され、前記回転工具の一部の前記刃を突出させる開放部を有するC字状に形成されるスペーサと、
を有し、
前記スペーサは、
前記C字状の内周面において前記回転工具の軸線方向の中央部にて周方向に延びるように形成され、前記回転工具の前記刃に対して径方向に対向する位置に形成され、前記回転工具の前記刃の外径よりも大きな内径の溝底面を有する溝部と、
前記C字状の内周面において前記回転工具の軸線方向に前記溝部を挟んだ両側に形成され、前記回転工具の前記刃の外径よりも小さな内径を有する両端部と、を有する、工具ユニット。
【請求項3】
前記スペーサは、
前記C字状の内周面において前記回転工具の軸線方向の中央部にて周方向に延びるように形成され、前記回転工具の前記刃に対して径方向に対向する位置に形成され、前記回転工具の前記刃の外径よりも大きな内径の溝底面を有する溝部と、
前記C字状の内周面において前記回転工具の軸線方向に前記溝部を挟んだ両側に形成され、前記回転工具の前記刃の外径よりも小さな内径を有する両端部と、を有する、請求項1に記載の工具ユニット。
【請求項4】
前記スペーサの前記溝部において、
前記回転工具の軸線方向において、前記回転工具の前記刃の前記すくい面と前記溝部の先端側の溝側面との離間距離を先端側離間距離と定義し、
前記回転工具の軸線方向において、前記回転工具の前記刃の前記すくい面とは反対側の面と前記溝部の基端側の溝側面との離間距離を基端側離間距離と定義し、
前記溝部は、前記先端側離間距離が前記基端側離間距離より長くなるように、前記回転工具に対して形成される、請求項2又は3に記載の工具ユニット。
【請求項5】
前記回転工具の前記第一端部及び前記第一ホルダの何れか一方には、前記回転工具の軸線方向に突出する第一インロー部が形成され、
前記回転工具の前記第一端部及び前記第一ホルダの何れか他方には、前記第一インロー部の外周面に嵌合する第一嵌合面が形成され、
前記回転工具の前記第二端部及び前記第二ホルダの何れか一方には、前記回転工具の軸線方向に突出する第二インロー部が形成され、
前記回転工具の前記第二端部及び前記第二ホルダの何れか他方には、前記第二インロー部の外周面に嵌合する第二嵌合面が形成される、請求項1~4の何れか一項に記載の工具ユニット。
【請求項6】
前記第三ホルダは、
前記第一支持面を有する筒状の部材であって、前記主軸ハウジングに対して相対回転不能に連結される基端側ホルダと、
前記第二支持面を有する筒状の部材であって、前記基端側ホルダとは別体に設けられる先端側ホルダと、
前記基端側ホルダと前記先端側ホルダとの間に設けられ、前記基端側ホルダ及び前記先端側ホルダに対して一体回転可能に連結されるスペーサと、
を備える、請求項1~5の何れか一項に記載の工具ユニット。
【請求項7】
前記工具ユニットは、
前記第一支持面に対して前記第一ホルダの外周面を相対回転可能に支持するアンギュラ軸受と、
前記第二支持面に対して前記第二ホルダの外周面を相対回転可能に支持するラジアル軸受と、
を備える、請求項1~6の何れか一項に記載の工具ユニット。
【請求項8】
前記工具ユニットは、
前記第三ホルダ及び前記主軸ハウジングの何れか一方に設けられ、前記第三ホルダ及び前記主軸ハウジングの前記何れか一方から前記回転工具の軸線方向へ突出する複数の結合ピンと、
前記第三ホルダ及び前記主軸ハウジングの何れか他方に設けられ、前記複数の結合ピンの各々を挿入可能に形成された複数の結合穴と、
を備える、請求項1~7の何れか一項に記載の工具ユニット。
【請求項9】
前記複数の結合ピンのうち少なくとも1つは、前記結合穴にクランプ可能なクランプ装置である、請求項に記載の工具ユニット。
【請求項10】
前記工作機械は、クーラントを供給するクーラント供給装置を備え、
前記第一ホルダは、前記クーラント供給装置から供給されたクーラントを、前記回転工具による加工位置へ吐出するノズル部を備える、請求項1~9の何れか一項に記載の工具ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
回転工具の軸線方向の第一端部に連結された工具ホルダをマシニングセンタの主軸装置に装着する場合に、回転工具は、主軸装置に対して片持ち支持されるため、回転工具の支持剛性を十分に得られない。
【0003】
この点に関し、特許文献1には、回転工具であるホブの先端に装着された工具ホルダを主軸装置にクランプしつつ、ホブの後端に固定されたホブ軸を、主軸装置に支持されたL字状の支持部材によって回転可能に支持することにより、ホブを両持ち支持する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-79718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の技術では、回転工具の軸線方向における長さ寸法が大きい場合に、回転工具の支持剛性を十分に得られない。
【0006】
本発明は、主軸装置に対する回転工具の支持剛性を高めることができる工具ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る工具ユニットは、回転駆動される主軸と、前記主軸を回転可能に支持する主軸ハウジングを有する主軸装置を備えた工作機械に用いる工具ユニットであって、
軸線方向一方の端面にすくい面を持つ複数の刃を外周面に有し、スカイビング加工により工作物を歯車加工するスカイビングカッタである回転工具と、
前記主軸に対して着脱可能に構成され、前記主軸に対して一体回転可能に保持されると共に、前記回転工具の軸線方向において前記すくい面とは反対側に位置する前記回転工具の第一端部に対し、前記回転工具と同軸に、且つ、前記回転工具と一体回転可能に連結される第一ホルダと、
前記回転工具の軸線方向において前記すくい面側に位置する前記回転工具の第二端部に対し、前記回転工具と同軸に、且つ、前記回転工具と一体回転可能に連結される第二ホルダと、
前記第一ホルダ及び前記第二ホルダを回転可能に支持すると共に、前記主軸ハウジングに対して相対回転不能に連結される第三ホルダと、
を備え、
前記第三ホルダは、
筒状に形成され、前記回転工具前記第一端部よりも前記主軸側で前記第一ホルダの第一外周被支持面を回転可能に支持する第一支持面を有し、前記主軸ハウジングに対して相対回転不能に連結される連結部材を有する基端側ホルダと、
筒状に形成され、前記回転工具前記第二端部よりも前記主軸とは反対側で前記第二ホルダの第二外周被支持面を回転可能に支持する第二支持面を有する先端側ホルダと、
前記回転工具の軸線方向において前記基端側ホルダと前記先端側ホルダとの間に挟まれて配置され、前記基端側ホルダ及び前記先端側ホルダに対して着脱可能に構成され、前記回転工具が位置する軸線方向の範囲に配置され、前記回転工具の一部の前記刃を突出させる開放部を有するC字状に形成されるスペーサと、
を有し、
前記スペーサは、
前記回転工具の軸線から前記開放部へ向かう方向において、前記開放部を形成する前記C字状の周方向開放端の位置が、前記第一ホルダの前記第一外周被支持面及び前記第二ホルダの前記第二外周被支持面に対して、前記回転工具の軸線よりも遠い側に位置するように構成されている
本発明の他の態様に係る工具ユニットは、回転駆動される主軸と、前記主軸を回転可能に支持する主軸ハウジングを有する主軸装置を備えた工作機械に用いる工具ユニットであって、
軸線方向一方の端面にすくい面を持つ複数の刃を外周面に有し、スカイビング加工により工作物を歯車加工するスカイビングカッタである回転工具と、
前記主軸に対して着脱可能に構成され、前記主軸に対して一体回転可能に保持されると共に、前記回転工具の軸線方向において前記すくい面とは反対側に位置する前記回転工具の第一端部に対し、前記回転工具と同軸に、且つ、前記回転工具と一体回転可能に連結される第一ホルダと、
前記回転工具の軸線方向において前記すくい面側に位置する前記回転工具の第二端部に対し、前記回転工具と同軸に、且つ、前記回転工具と一体回転可能に連結される第二ホルダと、
前記第一ホルダ及び前記第二ホルダを回転可能に支持すると共に、前記主軸ハウジングに対して相対回転不能に連結される第三ホルダと、
を備え、
前記第三ホルダは、
筒状に形成され、前記回転工具の前記第一端部よりも前記主軸側で前記第一ホルダの第一外周被支持面を回転可能に支持する第一支持面を有し、前記主軸ハウジングに対して相対回転不能に連結される連結部材を有する基端側ホルダと、
筒状に形成され、前記回転工具の前記第二端部よりも前記主軸とは反対側で前記第二ホルダの第二外周被支持面を回転可能に支持する第二支持面を有する先端側ホルダと、
前記回転工具の軸線方向において前記基端側ホルダと前記先端側ホルダとの間に挟まれて配置され、前記基端側ホルダ及び前記先端側ホルダに対して着脱可能に構成され、前記回転工具が位置する軸線方向の範囲に配置され、前記回転工具の一部の前記刃を突出させる開放部を有するC字状に形成されるスペーサと、
を有し、
前記スペーサは、
前記C字状の内周面において前記回転工具の軸線方向の中央部にて周方向に延びるように形成され、前記回転工具の前記刃に対して径方向に対向する位置に形成され、前記回転工具の前記刃の外径よりも大きな内径の溝底面を有する溝部と、
前記C字状の内周面において前記回転工具の軸線方向に前記溝部を挟んだ両側に形成され、前記回転工具の前記刃の外径よりも小さな内径を有する両端部と、を有する。
【0008】
本発明の工具ユニットによれば、第三ホルダは、回転工具の第一端部に対して一体回転可能に連結された第一ホルダと、回転工具の第二端部に対して一体回転可能に連結された第二ホルダとを支持する。これにより、回転工具は、第一ホルダ及び第二ホルダを介して第三ホルダに回転可能に支持される。これに加え、第三ホルダは、第一支持面及び第二支持面を備える。そして、第一支持面は、回転工具よりも第一端部側で第一ホルダの外周面を回転可能に支持し、第二支持面は、回転工具よりも第二端部側で第二ホルダの外周面を回転可能に支持する。これにより、工具ユニットは、第三ホルダによって回転工具の径方向への変位を効果的に規制することができるので、回転工具の支持剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態における工作機械の斜視図である。
図2】制御装置のブロック図である。
図3】回転工具の正面図であり、一部を断面で示す。
図4】スカイビング加工を行う際の回転工具及び工作物の動作を示す図である。
図5】主軸装置に工具ユニットが装着される前の状態を示す図であり、工具ユニットの一部を断面で示す。
図6】結合ピンが結合穴にクランプされた状態を示す図であり、結合部及びクランプ装置の一部を断面で示す。
図7】工具ユニットを図5に示すVII方向から見た図である。
図8】工具ユニットを図5に示すVIII方向から見た図である。
図9】工具ユニットの分割図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る工具ユニットを適用した実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態である工具ユニット100を用いて歯車加工を行う工作機械1の概略を説明する。
【0011】
(1.工作機械1の概略)
図1に示すように、工作機械1は、相互に直交する3つの直進軸(X軸、Y軸及びZ軸)と2つの回転軸(A軸及びC軸)を駆動軸として有するマシニングセンタである。工作機械1は、ベッド10と、コラム20と、サドル30と、主軸装置40と、テーブル50と、チルトテーブル60と、回転テーブル70と、クーラント供給装置80と、制御装置90とを主に備える。
【0012】
ベッド10は、床上に配置される。このベッド10の上面には、コラム20及びX軸モータ21(図2参照)が設けられ、コラム20は、X軸モータ21に駆動されることにより、X軸方向(水平方向)へ移動可能に設けられる。さらに、コラム20の側面には、サドル30及びY軸モータ31(図2参照)が設けられ、サドル30は、Y軸モータ31によりY軸方向(鉛直方向)に移動可能に設けられる。主軸装置40は、サドル30内に収容された主軸モータ41(図2参照)により回転可能に設けられる。また、主軸装置40には、工具ユニット100が着脱可能に装着される。後述するように、工具ユニット100は、工作物Wを加工する回転工具110を備え、回転工具110は、主軸42の回転に伴って回転する。
【0013】
また、ベッド10の上面には、テーブル50及びZ軸モータ51(図2参照)が設けられる。テーブル50は、Z軸モータ51によりZ軸方向(水平方向)に移動可能に設けられる。テーブル50の上面には、チルトテーブル60を支持する一対のチルトテーブル支持部61が設けられる。そして、一対のチルトテーブル支持部61の間には、チルトテーブル60がX軸に平行なA軸(水平方向)周りに揺動可能に設けられる。チルトテーブル60の底面には、テーブル用モータ71(図2参照)が設けられ、回転テーブル70は、テーブル用モータ71によりA軸に直交するC軸回りに回転可能に設けられる。回転テーブル70には、工作物Wを保持する保持部72が装着される。
【0014】
クーラント供給装置80は、クーラント貯留槽81と、ポンプ82とを主に備える。クーラント貯留槽81及びポンプ82は、ベッド10の脇に設置される。クーラント供給装置80は、クーラント貯留槽81に貯留されたクーラントをポンプ82により汲み出し、工具ユニット100にクーラントを送出する。なお、工具ユニット100には、クーラント供給装置80から供給されたクーラントを、回転工具110による工作物Wの加工位置に向けて吐出するノズル部148及びノズル口(図8参照)が一体形成される。
【0015】
図2に示すように、制御装置90は、歯車加工に関する制御を行う。制御装置90は、工具回転速度制御部91と、工作物回転速度制御部92と、位置制御部93とを主に備える。工具回転速度制御部91は、主軸モータ41を駆動制御し、設定された回転速度で回転工具110を回転させる。工作物回転速度制御部92は、テーブル用モータ71を駆動制御し、設定された回転速度で工作物Wを回転させる。位置制御部93は、X軸モータ21、Y軸モータ31及びZ軸モータ51を駆動制御し、工作物Wに対する回転工具110の位置決めを行う。また、位置制御部93は、Z軸モータ51を駆動制御し、設定された送り速度で回転工具110をZ軸方向へ送る。
【0016】
(2.回転工具110)
次に、図3を参照して、回転工具110について説明する。図3に示すように、回転工具110は、外周面に複数の刃111を有するカッタ部112を備えたスカイビングカッタであり、各々の刃111の端面は、すくい角γを有するすくい面を構成する。各々の刃111のすくい面は、回転工具110の中心軸線を中心としたテーパ状としてもよく、刃111ごとに異なる方向を向く面状に形成してもよい。
【0017】
(3.工作機械1の動作)
次に、切削加工時における工作機械1の動作を説明する。図1から図4に示すように、工作機械1は、スカイビング加工により工作物Wに歯車を創成する。工作機械1は、チルトテーブル60をA軸周りに揺動させることにより、工作物Wの軸線であるC軸を、回転工具110の軸線Oの平行線に対して傾斜させる。なお、工作物Wの軸線(C軸)に対する回転工具110の軸線Oの傾斜角を交差角δと称す。そして、工作機械1は、工作物Wと回転工具110とを同期回転させつつ、回転工具110を工作物Wの軸線O方向へ送ることにより工作物Wを切削加工し、歯車を創成する。
【0018】
なお、図4に示すように、スカイビング加工において、工作物Wの回転速度V1及び回転工具110の回転速度V2は、交差角δと切削速度V3に基づいて決定される。切削速度V3及び工作物Wに対する回転工具110の送り速度V4は、歯車加工に要する加工時間(サイクルタイム)、回転工具110の諸元、工作物Wの材質、及び、工作物Wに形成する歯車のねじれ角等に基づいて設定される。即ち、切削速度V3及び送り速度V4は、歯車加工を行う際の加工能率及び回転工具110の工具寿命等を勘案し、最適な速度に設定される。
【0019】
(4.工具ユニット100の概要)
次に、工具ユニット100について説明する。最初に、図5を参照しながら、工具ユニット100の概略構成を説明する。図5に示すように、工具ユニット100は、上記した回転工具110と、第一ホルダ120と、第二ホルダ130と、第三ホルダ140とを主に備える。
【0020】
第一ホルダ120は、回転工具110の軸線O方向の第一端部110a(図5右側端部)に対し、回転工具110と一体回転可能に連結される。第二ホルダ130は、回転工具110の軸線O方向の第二端部110b(図5左側端部、第一端部110aとは反対側の端部)に対し、回転工具110と一体回転可能に連結される。つまり、第一ホルダ120及び第二ホルダ130は、回転工具110と一体回転する。
【0021】
第三ホルダ140は、回転工具110、第一ホルダ120及び第二ホルダ130の外周面を覆うように設けられた部材であり、回転工具110の刃111の一部は、第三ホルダ140から下方へ突出する。また、第三ホルダ140は、主軸装置40に対して相対回転不能に連結され、第一ホルダ120及び第二ホルダ130を回転可能に支持する。
【0022】
(5.主軸装置40と工具ユニット100との連結態様)
次に、主軸装置40と工具ユニット100との連結態様について説明する。図5に示すように、主軸装置40は、上記した主軸モータ41と、主軸モータ41に回転駆動される主軸42と、主軸モータ41及び主軸42を収容する筒状の主軸ハウジング43とを主に備える。主軸42は、主軸モータ41に回転駆動される。主軸42の先端部分には、第一ホルダ120をチャックするテーパ面42aが形成される。主軸ハウジング43は、玉軸受44を介して主軸42の外周面を回転可能に支持する。
【0023】
一方、第一ホルダ120は、テーパ面42aにチャックされるテーパ状のシャンク121を備える。第一ホルダ120は、シャンク121がテーパ面42aにチャックされることにより、主軸42に対して主軸42と一体回転可能に保持され、主軸モータ41の回転駆動力は、主軸42及び第一ホルダ120を介して回転工具110に伝達される。
【0024】
また、第三ホルダ140は、主軸ハウジング43に連結するときに主軸ハウジング43と対向する面に設けられた2つの結合ピン160を備える。2つの結合ピン160は、回転工具110の軸線O方向へ突出するように形成される。
【0025】
一方、主軸ハウジング43には、2つの結合ピン160と対応する位置に、結合ピン160を挿入可能に形成された結合穴171を有する結合部170が取り付けられている。工具ユニット100は、2つの結合ピン160が結合穴171に挿入されることで、主軸ハウジング43に対する相対回転が規制される。なお、結合穴171は、主軸ハウジング43に直接形成してもよい。
【0026】
本実施形態において、2つの結合ピン160のうちの1つの結合ピン160には、結合穴171にクランプ可能なクランプ装置180が用いられる。図6に示すように、クランプ装置180は、装置本体181と、結合ピン160としてのピン本体182と、ロッド183と、クランプ部184とを主に備える。装置本体181は、第三ホルダ140に収容される。ピン本体182は、装置本体181から主軸ハウジング43側へ向けて突出する。
【0027】
ロッド183は、ピン本体182に収容された軸状部材であり、ロッド183の先端部分は、先端側へ向かうにつれて拡径する楔状に形成される。ロッド183は、装置本体181に設けられたアクチュエータ(図示せず)に駆動されることで、軸線O方向へ往復移動する。クランプ部184は、ロッド183の先端部分における外周面とピン本体182の内周面との間に設けられ、クランプ部184の一部は、ピン本体182に形成された孔から径方向外側へ突出している。
【0028】
クランプ装置180は、結合ピン160としてのピン本体182を結合部170にクランプする際、ピン本体182が結合穴171に挿入された状態で、ロッド183を装置本体181側へ引き込む。これに伴い、クランプ部184は、楔状に形成されたロッド183の先端部分により径方向外側へ押し広げられ、ピン本体182から径方向外側へ突出する部位が結合穴171の内周面に押し当てられる。これにより、ロッド183は、クランプ部184を介して結合穴171の内周面にクランプされ、結合部170及び主軸ハウジング43に対するピン本体182の軸線O方向への変位が規制される。
【0029】
このように、クランプ装置180は、主軸ハウジング43に対する工具ユニット100の相対回転を規制すると共に、主軸ハウジング43に対する工具ユニット100の軸線O方向両側への相対移動を規制することができる。よって、工具ユニット100は、主軸ハウジング43に対して強固に連結することができる。
【0030】
(6.工具ユニット100の詳細)
続いて、工具ユニット100の各構成について説明する。図7に示すように、第一ホルダ120は、第一端部側に形成されるシャンク121と、第二端部側に形成される第一ホルダ本体122と、シャンク121と第一ホルダ本体122との間に形成されるフランジ部123とを備える。
【0031】
シャンク121は、上記したように、主軸42(図5参照)に対して一体回転可能に保持される部位であり、シャンク121を主軸42にチャックすることにより、第一ホルダ120は、主軸42と同軸に配置される。第一ホルダ本体122は、回転工具110の第一端部110aに連結される円柱状の部位である。フランジ部123は、シャンク121及び第一ホルダ本体122よりも径方向外方へ張り出す部位であり、フランジ部123には、周方向全体に亘って延びる環状溝123aが形成される。
【0032】
ここで、工作機械1には、主軸装置40に装着可能な複数の工具が収容された工具マガジン(図示せず)と、主軸装置40に装着された工具を工具マガジンに収容された工具と交換する工具交換装置(図示せず)とが設けられる。工具ユニット100は、未使用時には工具マガジンに収容され、使用時に工具交換装置を用いて主軸装置40に装着される。工具交換装置は、フック状の把持部を有する交換アームを備える。交換アームは、主軸装置40に対する工具ユニット100の着脱を行う際、把持部を環状溝123aに引っ掛けることにより、工具ユニット100を把持する。
【0033】
ここで、回転工具110、第一ホルダ120及び第二ホルダ130の連結態様を説明する。回転工具110には、軸線O方向に貫通する貫通孔113が形成される。そして、回転工具110は、貫通孔113を形成する内周面であって軸線O方向の第一端部110a(図5右側端部)に開口する第一開口112aを形成する嵌合面114を備える。
【0034】
一方、第一ホルダ120の第二端部側の端面には、第一開口112aから貫通孔113に挿入される円筒状の第一インロー部124が形成される。第一インロー部124が貫通孔113に挿入されると、第一インロー部124の外周面は、嵌合面114に嵌合される。これにより、工具ユニット100は、第一ホルダ120を回転工具110と同軸に配置され、回転工具110が主軸42と同軸に配置される。
【0035】
また、回転工具110は、貫通孔113を形成する内周面であって軸線O方向の第二端部110b(図5左側端部)に開口する第二開口115aを形成する円筒面115を備える。円筒面115は、嵌合面114よりも大径であって、嵌合面114及び円筒面115は、第二端部110b側を向く接続面116を介して段状に接続される。
【0036】
一方、第二ホルダ130の第一端部側の端面には、回転工具110の接続面116に係止される係止部131と、係止部131から第一端部側へ突出する円筒状の第二インロー部132とが形成される。第二インロー部132は、第二開口115aから貫通孔113へ挿入されることにより、第二インロー部132の外周面が嵌合面114に嵌合し、第二ホルダ130は、回転工具110と同軸に配置される。
【0037】
工具ユニット100は、回転工具110に対して第一ホルダ120及び第二ホルダ130を一体回転可能に連結する連結ボルト150を備える。一方、第二ホルダ130には、連結ボルト150を挿入可能なボルト孔134が形成される。ボルト孔134は、第二ホルダ130と同軸に形成された貫通孔であり、ボルト孔134の内周面には、連結ボルト150を第二端部側から挿入した場合に連結ボルト150の頭部151が係止される座繰り部135が形成される。
【0038】
また、第二ホルダ130には、第二インロー部132から更に第一端部側へ突出する円筒状の突起133が形成される。一方、第一ホルダ120には、第二端部側の端面に開口する連結孔125と、連結孔125に連通するめねじ孔126とが形成される。これら連結孔125及びめねじ孔126は、第一ホルダ120と同軸に形成される。連結孔125は、突起133を挿入可能な孔であり、少なくとも第一インロー部124に形成される。めねじ孔126は、連結孔125よりも小径の孔であり、めねじ孔126の内周面には、連結ボルト150の軸部152に形成されたおねじに螺合するめねじが形成される。
【0039】
連結ボルト150は、第一インロー部124及び第二インロー部132が貫通孔113に対して、突起133が連結孔125に対して、それぞれ挿入された状態でボルト孔134に挿入され、めねじ孔126に螺合される。このとき、第二インロー部132は、ボルト孔134に挿入された連結ボルト150によりボルト孔134が径方向外方へ押し広げられて拡径し、嵌合面114にクランプされる。また、第一インロー部124に挿入された突起133が、突起133に挿入された連結ボルト150により径方向外方へ押し広げられることで第一インロー部124が拡径し、嵌合面114にクランプされる。これにより、第一ホルダ120及び第二ホルダ130は、回転工具110に対し、同軸に、且つ、一体回転可能に連結される。
【0040】
なお、ボルト孔134は、拡径しなくてもよい。つまり、例えば、連結ボルト150がめねじ孔126に螺合することにより、或いは、連結ボルト150とボルト孔134とがキー結合することにより、第一ホルダ120及び第二ホルダ130が、回転工具110に対し、同軸に、且つ、一体回転可能に連結されていればよい。
【0041】
次に、第三ホルダ140について説明する。第三ホルダ140は、主軸ハウジング43に連結される基端側ホルダ141と、基端側ホルダ141よりも主軸装置40から離れた位置に配置される先端側ホルダ142と、基端側ホルダ141と先端側ホルダ142の間に設けられるスペーサ143とを備える。
【0042】
基端側ホルダ141、先端側ホルダ142及びスペーサ143は、それぞれが別体に形成される。スペーサ143は、4つの第一固定ボルト191によって基端側ホルダ141に一体回転可能に連結されると共に、3つの第二固定ボルト192によって先端側ホルダ142に対して一体回転可能に連結される。また、基端側ホルダ141には、上記した2つの結合ピン160が設けられる。第三ホルダ140は、2つの結合ピン160が主軸ハウジング43に取り付けられた結合部170の結合穴171に挿入されることで、主軸ハウジング43に対して相対回転不能に連結される。
【0043】
ここで、第三ホルダ140に設けられた2つの結合ピン160は、第一ホルダ120よりも図8に示す上側に配置される。つまり、2つの結合ピン160は、片側に寄せて配置される。この場合、主軸装置40に対する工具ユニット100の着脱が工具交換装置を用いて行われる場合に、交換アーム(図示せず)は、下方からフランジ部123を把持することで、2つの結合ピン160との干渉を回避できる。
【0044】
続いて、第三ホルダ140の各構成を説明する。図5から図9に示すように、基端側ホルダ141は、筒状に形成される。基端側ホルダ141は、第一支持面144を備える。第一支持面144は、基端側ホルダ141の内周面であって、第一ホルダ本体122の外周面と対向する位置に配置される。そして、第一支持面144は、第一軸受193を介して第一ホルダ本体122の外周面を回転可能に支持する。さらに、基端側ホルダ141には、主軸装置40に連結された際に主軸ハウジング43よりも外側へ張り出す位置に、クーラント供給装置80(図1参照)からクーラントが供給されるクーラント供給口147が設けられる。
【0045】
先端側ホルダ142は、筒状に形成される。先端側ホルダ142は、第二支持面145を備える。第二支持面145は、先端側ホルダ142の内周面であって、第二ホルダ130の外周面と対向する位置に配置される。そして、第二支持面145は、第二軸受194を介して第二ホルダ130の外周面を回転可能に支持する。
【0046】
スペーサ143は、回転工具110の軸線O方向に沿って延びる部材であり、回転工具110の軸線O方向から見たスペーサ143の形状は、下方が開放されたC字状に形成される。スペーサ143は、回転工具110の周囲を覆うように設けられ、カッタ部112の一部は、スペーサ143から下方へ突出する。これにより、スペーサ143は、回転工具110による加工を行う際に、工作物Wとスペーサ143との干渉を防止できる。
【0047】
なお、第三ホルダ140を軸線O方向から見た場合に、カッタ部112の一部は、基端側ホルダ141及び先端側ホルダ142よりも下方へ突出しているので、基端側ホルダ141及び先端側ホルダ142は、回転工具110による加工時において、基端側ホルダ141及び先端側ホルダ142と工作物Wとの干渉を回避できる。
【0048】
その一方で、スペーサ143の下端は、第一ホルダ120及び第二ホルダ130よりも下方に位置している。これにより、スペーサ143は、回転工具110による加工に伴って発生する切粉や、加工位置に向けて供給されるクーラントの飛散を抑制できる。また、第一軸受193及び第二軸受194軸線O方向両側には、一対のオイルシール195,196が設けられているので、切粉やクーラント等が第一軸受193及び第二軸受194に飛散することを防止できる。
【0049】
また、スペーサ143の内周面には、回転工具110のカッタ部112と対向する位置に、周方向に延びる溝部146が形成される。溝部146の内径は、カッタ部112の外径よりも大きな寸法に形成される。これにより、スペーサ143は、スペーサ143の内周面と刃111との干渉を回避できる。
【0050】
一方、溝部146を挟んだ軸線O方向両側において、スペーサ143の内径は、カッタ部112の外径よりも小さな寸法に設定される。この場合、スペーサ143は、回転工具110の軸線O方向に直交する方向におけるスペーサ143の厚さ寸法を大きくすることができるので、第三ホルダ140の剛性を高めることができる。これにより、工具ユニット100は、主軸装置40に対して回転工具110を強固に保持することができるので、回転工具110の支持剛性を高めることができる。
【0051】
ここで、第三ホルダ140は、回転工具110及び第一ホルダ120の軸線O方向における長さ寸法に応じて、スペーサ143の軸線O方向長さを変更することができる。つまり、回転工具110及び第一ホルダ120の軸線O方向長さは、加工する工作物Wの形状や寸法、加工位置等により様々である。そのため、工具ユニット100は、回転工具110及び第一ホルダ120の軸線O方向長さに応じた軸線O方向長さを有する第三ホルダ140を用いる必要がある。
【0052】
これに対し、第三ホルダ140は、回転工具110及び第一ホルダ120の軸線O方向における長さ寸法に応じたスペーサ143を用いることで、基端側ホルダ141及び先端側ホルダ142の部品共通化を図ることができる。よって、工具ユニット100は、第三ホルダ140の汎用性を高めることができる。また、第三ホルダ140は、基端側ホルダ141及び先端側ホルダ142と比べて形状が簡素なスペーサ143の軸線O方向長さを変えることで、第三ホルダ140の全体としての軸線O方向長さを調整できる。つまり、スペーサ143は、基端側ホルダ141及び先端側ホルダ142と比べて製造コストを抑えることができるので、第三ホルダ140は、全体としての製造コストの低減を図ることができる。
【0053】
ここで、基端側ホルダ141、先端側ホルダ142及びスペーサ143の各々には、クーラント供給口147に連通するノズル部148が形成され、先端側ホルダ142には、ノズル部148に連通するノズル口149が下方に向けて開口している。よって、クーラント供給装置80から供給されたクーラントは、クーラント供給口147からノズル部148に流入し、ノズル口149から加工位置へ向けて吐出される。このように、第三ホルダ140には、クーラント供給装置80から供給されたクーラントを加工位置へ吐出するクーラントノズルが一体形成されている。よって、工作機械1は、部品点数を少なくすることができる。また、工具ユニット100は、主軸装置40から取り外すことにより、ノズル部148の洗浄を効率よく行うことができる。
【0054】
上記したように、第一ホルダ120は、回転工具110の第一端部110aに対して、同軸に、且つ、一体回転可能に連結される。そして、第三ホルダ140は、回転工具110よりも主軸装置40に対して近い位置に設けた第一支持面144で、回転工具110の第一端部110aに連結された第一ホルダ120の外周面を回転可能に支持する。
【0055】
これに加え、第二ホルダ130は、回転工具110の第二端部110bに対して、同軸に、且つ、一体回転可能に連結される。そして、第三ホルダ140は、回転工具110よりも主軸装置40に対して離れた位置に設けた第二支持面145で、回転工具110の第二端部110bに連結された第一ホルダ120の外周面を回転可能に支持する。
【0056】
このように、回転工具110は、第一ホルダ120及び第二ホルダ130を介して第三ホルダ140に回転可能に両持ち支持される。また、第一支持面144は、回転工具110よりも第一端部110a側で第一ホルダ120の外周面を回転可能に支持し、第二支持面145は、回転工具110よりも第二端部110b側で第二ホルダ145の外周面を回転可能に支持する。これにより、工具ユニット100は、第三ホルダ140によって回転工具110の径方向への変位を効果的に規制することができるので、回転工具100の支持剛性を高めることができる。
【0057】
さらに、第三ホルダ140は、第一支持面144が主軸42よりも回転工具110に近い位置で第一ホルダ120を支持するので、回転工具110の支持剛性を高めることができる。第二ホルダ130は、第二インロー部132が回転工具110の嵌合面114を支持し、第三ホルダ140は、第二支持面145で第二ホルダ130の外周面を支持するので、回転工具110の支持剛性を高めることができる。
【0058】
ここで、第一軸受193は、回転工具110よりも主軸装置40に近い位置で、第一ホルダ本体122の外周面を第一支持面144に対して相対回転可能に支持する。そして、工具ユニット100には、第一軸受193として一対のアンギュラ玉軸受が用いられている。これにより、第一軸受193は、ラジアル荷重に加えてスラスト荷重を支持することができる。特に、工具ユニット100は、回転工具110よりも主軸装置40に近い位置に配置する第一軸受193にアンギュラ軸受を用いることにより、主軸装置40に対して工具ユニット100を強固に固定することができる。その結果、工具ユニット100は、主軸装置40に対する回転工具110の支持剛性を高めることができる。
【0059】
一方、第二軸受194は、回転工具110よりも主軸装置40から離れた位置で、第二ホルダ130の外周面を第二支持面145に対して相対回転可能に支持する。そして、工具ユニット100には、第二軸受194としてラジアルころ軸受が用いられている。これにより、工具ユニット100は、第二軸受194の部品コストを抑えつつ、ラジアル荷重を支持することができる。
【0060】
なお、回転工具110は、連結ボルト150によって第一ホルダ120及び第二ホルダ130に固定されているので、連結ボルト150による固定を解除することで、回転工具110を第一ホルダ120及び第二ホルダ130から取り外すことができる。よって、工具ユニット100は、回転工具110の交換を容易に行うことができる。
【0061】
具体的に、工具ユニット100は、連結ボルト150による固定を解除した後、第二ホルダ130及び回転工具110を第一ホルダ120に対して第二端部側へスライドさせることにより、回転工具110を第一ホルダ120及び第二ホルダ130から取り外すことができる。この点に関して、溝部146は、カッタ部112よりも軸線O方向における長さ寸法を大きく形成することで、回転工具110をスライドさせた際に、カッタ部112がスペーサ143の内周面と干渉することを回避できる。
【0062】
さらに、第一ホルダ120は、アンギュラ軸受である第一軸受193を介して第一支持面144に支持され、第二ホルダ130は、ラジアル軸受である第二軸受194を介して第二支持面145に支持される。よって、工具ユニット100は、回転工具110を取り外す際に、第一ホルダ120の軸線O方向へのスライドを規制しつつ、第二ホルダ130のスライドを円滑に行うことができるので、回転工具110の着脱作業を効率よく行うことができる。
【0063】
特に、本実施形態において、回転工具110は、スカイビングカッタであり、ホブカッタ等と比べて摩耗しやすく、交換頻度が高い。これに対し、工具ユニット100は、回転工具110の着脱作業を効率よく行うことができるので、作業者の負担を効果的に軽減させることができる。
【0064】
(7.その他)
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施形態では、回転工具110がスカイビングカッタである場合に本発明を適用する場合を挙げて説明したが、回転工具110がホブカッタや他の回転工具である場合においても、本発明を適用することができる。
【0065】
上記実施形態では、第一インロー部124が第一ホルダ120に形成され、嵌合面114が回転工具110に形成される場合について説明したが、第一インロー部124を回転工具110に形成し、嵌合面114を第一ホルダ120に形成してもよい。同様に、第二インロー部132が第二ホルダ130に形成される場合について説明したが、第二インロー部132を回転工具110に形成してもよい。また、上記実施形態では、嵌合面114に第一インロー部124及び第二インロー部132の双方が嵌合される場合を例に挙げて説明したが、第一インロー部124が嵌合する第一嵌合面と第二インロー部132が第二嵌合面とを別々に設けてもよく、第一嵌合面と第二嵌合面とが異なる内径を有するものであってもよい。
【0066】
上記実施形態では、結合ピン160が工具ユニット100に設けられ、結合穴171が主軸装置40に設けられる場合を例に挙げて説明したが、主軸装置40に結合ピン160を設け、工具ユニット100に結合穴171を設けてもよい。また、結合ピン160及び結合穴171の数は、少なくとも2つ以上設ければよく、結合ピン160及び結合穴171の配置やクランプ装置180を設ける数は、任意である。
【符号の説明】
【0067】
1:工作機械、 40:主軸装置、 42:主軸、 43:主軸ハウジング、 80:クーラント供給装置、 100:工具ユニット、 110:回転工具、 110a:回転工具の第一端部、 110b:回転工具の第二端部、 114:嵌合面(第一嵌合面、第二嵌合面) 120:第一ホルダ、 124:第一インロー部、 132:第二インロー部、 140:第三ホルダ、 141:基端側ホルダ、 142:先端側ホルダ、 143:スペーサ、 144:第一支持面、 145:第二支持面、 160:結合ピン、 171:結合穴、 180:クランプ装置、 O:回転工具の軸線、 W:工作物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9