(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】グラビアもしくはフレキソ白色インキとその利用
(51)【国際特許分類】
C09D 11/037 20140101AFI20230307BHJP
C09D 11/102 20140101ALI20230307BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
C09D11/037
C09D11/102
B41M1/30 D
(21)【出願番号】P 2019036455
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光人
(72)【発明者】
【氏名】胡 皓
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0001660(US,A1)
【文献】国際公開第2018/200665(WO,A1)
【文献】特表2010-510953(JP,A)
【文献】特開2010-180402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-11/54
B41M 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化亜鉛顔料を含有する顔料およびバインダー樹脂を含有するグラビアもしくはフレキソ白色インキであって、下記(1)
~(3)を満たすグラビアもしくはフレキソ白色インキ。
(1)硫化亜鉛顔料は平均粒子径が100~500nmであり、モース硬度が1~6である。
(2)インキ総質量中に硫化亜鉛顔料を10~50質量%含有する。
(3)バインダー樹脂
が、ポリウレタン樹脂
および塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、あるいは、ポリアミド樹脂
およびセルロース樹脂を含有する。
【請求項2】
硫化亜鉛顔料は、かさ密度が1~3L/kgである、請求項1に記載のグラビアもしくはフレキソ白色インキ。
【請求項3】
更に酸化チタン顔料を含み、硫化亜鉛顔料と酸化チタン顔料との質量比は90:10~10~90である、請求項1
または2に記載のグラビアもしくはフレキソ白色インキ。
【請求項4】
硫化亜鉛顔料は、アミン化合物で表面処理されている、請求項1~
3いずれかに記載のグラビアもしくはフレキソ白インキ。
【請求項5】
基材1上に請求項1~
4いずれかに記載のグラビアもしくはフレキソ白色インキからなる印刷層を有する印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビアもしくはフレキソ白色インキに関する。さらに詳しくは、樹脂フィルム等の基材に印刷されたときに、優れた印刷適性及び白色度や隠ぺい性に優れるグラビアもしくはフレキソ白色インキに関する。
【背景技術】
【0002】
食品、菓子、生活雑貨、ペットフード等には意匠性、経済性、内容物保護性、輸送性などの機能から、各種樹脂フィルムを使用した包装材料が使用されている。また、多くの包装資材には消費者へアピールする意匠性、メッセージ性の付与を意図してグラビア印刷やフレキソ印刷が施されている。
かかる印刷方法に使用される印刷構成では、包装材の表面に印刷される表刷り印刷、あるいは印刷面に必要に応じて接着剤やアンカー剤を塗布し、フィルムにラミネーション加工を施す裏刷り印刷が行われる。なお、表刷りとは透明なフィルム基材の表側から印刷する印刷形態をいい、インキ成分が内容物に影響を与えるおそれがあるような場合に使用され、絵柄は直接目視で認識できる印刷形態をいう。一方、裏刷りとは透明なフィルム基材へ画像の向きと刷り重ね順を逆にして、裏から印刷する印刷形態を表し、刷り上がり効果を高めるとともに、印刷面の摩耗、汚染を防止できる印刷形態をいい、絵柄は透明フィルムを介して認識できる印刷形態をいう。
【0003】
近年、高い白色度と隠ぺい性を持ち、且つ優れる印刷適性を有するグラビアインキが要求されてきている。従来技術では裏刷り、表刷りそれぞれの印刷物における、白色度および隠ぺい性を向上させるため、グラビア白インキでは顔料として酸化チタン顔料を使用されている。(特許文献1、特許文献2、特許文献3)しかしながら、酸化チタン顔料を用いたグラビア白インキの印刷物は高い白色度と隠ぺい性を有している一方で、酸化チタンのモース硬度が高いため、グラビア印刷時において版カブリ、ドクター筋などの印刷適性は十分ではなかった。
【0004】
また、酸化チタンを顔料として用いた場合、グラビアもしくはフレキソ白インキにおける経時安定性についての要求がある。酸化チタンは比重が重く、ビーズミルその他の分散機で分散安定化させたとしても経時において顔料分が沈降しやすい一方で、上記のように白色度を上げるためにはインキ中の顔料濃度を有機顔料に比べて多くする必要があった。そのためより経時での沈降は顕著となり、それを解決できる技術が渇望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平05-097959号公報
【文献】特開2012-012597号公報
【文献】特開2013-256551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、経時安定性に優れ、白色度や隠ぺい性に優れる印刷層を形成でき、版カブリ、ドクター筋を低減でき、優れた印刷適性を有するグラビアもしくはフレキソ白色インキを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下に記載のグラビアもしくはフレキソ白色インキを用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、硫化亜鉛顔料を含有する顔料およびバインダー樹脂を含有するグラビアもしくはフレキソ白色インキであって、下記(1)および(2)を満たすグラビアもしくはフレキソ白色インキに関する。
(1)硫化亜鉛顔料は平均粒子径が100~500nmであり、モース硬度が1~6である。
(2)バインダー樹脂はポリウレタン樹脂またはポリアミド樹脂を含有する。
【0009】
また、本発明は、硫化亜鉛顔料は、かさ密度が1~3L/kgである、上記グラビアもしくはフレキソ白色インキに関する。
【0010】
また、本発明は、更に塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂および/またはセルロース樹脂を含有する、上記グラビアもしくはフレキソ白色インキに関する。
【0011】
また、本発明は、インキ総質量中に硫化亜鉛顔料を10~50質量%含有する、上記グラビアもしくはフレキソ白色インキに関する。
【0012】
また、本発明は、更に酸化チタン顔料を含み、硫化亜鉛顔料と酸化チタン顔料との質量比は90:10~10~90である、上記グラビアもしくはフレキソ白色インキに関する。
【0013】
また、本発明は、硫化亜鉛顔料は、アミン化合物で表面処理されている、上記グラビアもしくはフレキソ白インキに関する。
【0014】
また、本発明は、基材1上に上記グラビアもしくはフレキソ白色インキからなる印刷層を有する印刷物に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、高い白色度や隠ぺい性に優れる印刷層を形成でき、版カブリ、ドクター筋を低減でき、優れた印刷適性を有するグラビア白色インキを得ることができた。
【0016】
更に、本発明のグラビアもしくはフレキソ白色インキを使用すれば、経時安定性に優れ、かつ、裏刷り印刷のみらならず、表刷り印刷に使用した場合は、耐摩耗性に優れた印刷層を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、硫化亜鉛顔料およびバインダー樹脂を含有するグラビアもしくはフレキソ白色インキであって、下記(1)および(2)を満たすグラビアもしくはフレキソ白色インキである。以下、グラビア印刷の一形態を説明をする。
(1)硫化亜鉛顔料は平均粒子径が100~500nmであり、モース硬度が1~6である。
(2)バインダー樹脂はポリウレタン樹脂またはポリアミド樹脂を含有する。
顔料として上記硫化亜鉛を使用することで白色度や隠ぺい性更に耐版かぶり性が向上し、バインダー樹脂としてポリウレタン樹脂またはポリアミド樹脂を使用することで印刷層が強靭となりラミネート強度または耐摩耗性が向上する。
【0018】
(硫化亜鉛顔料)
本発明では、印刷適性の観点から、硫化亜鉛顔料の平均粒子径が100~500nmであり、100~400nmであることが好ましく、200~400nmであることがなお好ましい。平均粒子径とはレーザー回折法による測定値をいい、例えば粒度分布計を用いて測定することができ、例えばマイクロトラックベル社製のマイクロトラックMT3000IIなどの粒度分布計を用いて測定することができる。
硫化亜鉛顔料のモース硬度は、印刷適性が良化するため、1~6である必要があり、3~6であることが好ましい。また、より好ましい形態として、当該硫化亜鉛顔料のかさ密度が1~3L/kgであり、1.2~2.8L/kgであることが好ましく、1.5~2.5L/kgであることがなお好ましい。更に、硫化亜鉛顔料の吸油量は7~20g/100gであることが好ましく、10~18g/100gであることがなお好ましい。かさ密度とはタップしない状態での粉体試料の質量と粒子間空間容積の因子を含んだ粉体の体積と比をいい、例えばメスシリンダーを用いる方法がある。また、かさ密度および吸油量はDIN53199に記載の方法またはJISK5101に記載の方法で測定することができる。
なお、硫化亜鉛顔料のモース硬度が上記範囲であり、好ましくは、かさ密度等が上記範囲であり、かつ後述のポリウレタン樹脂またはポリアミド樹脂と併用することでグラビア白色インキの経時安定性(特に顔料の沈降性)が良好となる作用を奏する。硫化亜鉛の表面への樹脂吸着が通常の酸化チタンに比べてより促進されるためと考えられ、また、更に塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体および/またはセルロース樹脂を併用することで効果はより明瞭に発揮される。なお本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0019】
なお、硫化亜鉛顔料の表面が、表面処理が為されている場合においても好適である。ここで「表面処理」とは硫化亜鉛顔料の一部または全部の表面が被覆されている状態をいう。表面処理は公知の処理方法でよいが、特にアミン化合物で表面処理されているものが好ましい。アミン化合物としてはアミノ基を有するものであれば特に限定されないが、有機系シランカップリング剤や、界面活性剤等が挙げられる。
【0020】
本発明の効果が損なわれない範囲で他白色顔料を配合することも好ましい。他白色顔料としては、例えば酸化亜鉛(亜鉛華)、鉛白、硫酸鉛、酸化チタン、酸化アンチモン等が好適に挙げられる。
特に酸化チタン顔料を併用することが好ましく、硫化亜鉛顔料と酸化チタン顔料との質量比は90:10~10:90であることが好ましく、30:70~70:30であることがなお好ましい。硫化亜鉛を含む白色顔料全体の吸油量は15~30g/100gであることが好ましい。優れる印刷適性を有する上、印刷物の印刷層が十分な隠ぺい性と白色度を備えることができるためである。更に硫化亜鉛顔料の含有量をグラビア白インキ総質量中に10~50質量%含有することが好ましい。
【0021】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂とはグラビア白色インキからなる印刷層における結着樹脂をいう。該バインダー樹脂は、ポリウレタン樹脂またはポリアミド樹脂を含む。バインダー樹脂は更に塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体および/またはセルロース樹脂を含むことが好ましい。これらはバインダー樹脂総質量中に主成分(50質量%以上)として含むことが好ましい。70質量%以上含有することがなお好ましい。
中でもポリウレタン樹脂とセルロース樹脂、またはポリウレタン樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の併用形態であることが好ましい。前者はポリウレタン樹脂:セルロース樹脂=95:5~5:95の質量比率となる量で併用することが好ましく、95:5~30:70であることがなお好ましく、50:50~70:30の質量比率で併用することが更に好ましい。また、後者の場合、ポリウレタン樹脂:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体=95:5~5:95の質量比率で併用することが好ましく、95:5~30:70であることがなお好ましく、90:10~50:50で併用することが更に好ましい。
別形態としては、ポリアミド樹脂とセルロース樹脂とを併用することが好ましく、その質量比率は、ポリアミド樹脂:セルロース樹脂=95:5~30:70で併用することが好ましく、90:10~50:50であることがなお好ましい。
【0022】
本発明におけるグラビア白色インキ総質量中におけるバインダー樹脂の含有量は、2~20質量%が適量であり、さらに好ましくは3~15質量%である。
【0023】
[ポリウレタン樹脂]
上記したポリウレタン樹脂はアミン価および/または水酸基価を有することが好ましく、アミン価は0.5~20mgKOH/gであることが好ましく、0.5~15mgKOH/gであることがなお好ましい。水酸基価は0.5~20mgKOH/gであることが好ましく、0.5~15mgKOH/gであることがなお好ましい。
ポリウレタン樹脂として、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、および必要に応じて鎖伸長剤、反応停止剤等を反応させて得られるポリウレタン樹脂を好適に採用できる。
【0024】
(ポリイソシアネート化合物)
ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4-シクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物等を好適に採用できる。
【0025】
(ポリオール化合物)
ポリオール化合物は、ジオール化合物が好ましく、より好適なものとしては高分子ジオール化合物であり、数平均分子量が500~3000、より好ましくは、500~2000のものであり、1種のジオール化合物からなるものであってもよく、複数のジオール化合物を併用するものであってもよい。前記の範囲では、白インキの接着性と耐油性が良好である。
ジオール化合物の好ましい具体例としては、分子量が300以上の低分子ジオール、二塩基酸と低分子ジオールの縮合物からなるポリエステルジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルジオール、なお、ポリエーテルジオールは低分子量ジオールやビスフェノールなどの化合物に酸化エチレン、酸化プロピレン等のオキシアルキレンやテトラヒドロフラン等を重付加させて得られるポリエーテルジオールであってもよい。更にポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリオレフィンジオールなどのジオール化合物も挙げられる。
ポリエステルジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の直鎖状グリコール類、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、エチルブチルプロパンジオール等の分岐グリコール類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエーテルジオール類等の低分子ジオールと、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸等の飽和および不飽和脂肪族ジカルボン酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸化合物を、重縮合させて得られるポリエステルジオール、ラクトン等の環状エステル化合物を開環反応させて得られるポリエステルジオール化合物を好適に挙げることができる。
また上記したように、直鎖状あるいは側鎖を有するポリカーボネートジオール、およびポリブタジエングリコール等も併用することができる。
環境に配慮して芳香族炭化水素系有機溶剤(トルエン等)を含有せず、また、アルコールやエステル等の高極性の有機溶剤の含有割合が多い系で良好な印刷適性を得るためには、ジオール化合物としてポリエステルジオール化合物および/またはポリエーテルジオール化合物を利用することが好ましい。
【0026】
(鎖伸長剤および反応停止剤)
さらには、鎖伸長剤や反応停止剤を用いて得られたポリウレタン樹脂を利用することも可能であり、鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等のポリアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’-ジ(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のジオール化合物が例示できる。
なお、反応停止剤としては、メタノール、エタノール等のモノアルコール類、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等のアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等を挙げることができる。
【0027】
以上の合成成分を用いて本発明にて使用されるポリウレタン樹脂を得るためには、まず、ポリイソシアネート化合物のNCOとジオール化合物のOHのモル当量比(ジイソシアネート化合物のNCOのモル当量/ジオール化合物のOHのモル当量)=0.5以上3.0以下、好ましくは1.2以上1.5以下となるように反応させ、次いで、必要に応じて鎖伸長剤、反応停止剤を反応させることにより得ることができる。当該ポリウレタン樹脂は例えば、特開2016-150944号公報、特開2015-108057号公報等に記載の方法で製造をすることができる。
【0028】
(ポリアミド樹脂)
ポリアミド樹脂は以下に限定されるものではないが、好ましくは多塩基酸と多価アミンとを重縮合して得ることができる有機溶剤に可溶な熱可塑性ポリアミドである。特に、重合脂肪酸および/またはダイマー酸を含有する酸成分と、脂肪族および/または芳香族ポリアミンの反応物を含むポリアミド樹脂であることが好ましく、更には一級および二級モノアミンを一部含有するものが好ましい。
【0029】
ポリアミド樹脂の原料で使用される多塩基酸としては、以下に限定されるものではないが、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、グルタル酸、フマル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、トリメリット酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、重合脂肪酸などが挙げられ、その中でもダイマー酸あるいは重合脂肪酸に由来する構造を主成分(ポリアミド樹脂中に50質量%以上)含有するポリアミド樹脂が好ましい。ここで、重合脂肪酸とは、不飽和脂肪酸脂肪酸の環化反応等により得られるもので、一塩基性脂肪酸、二量化重合脂肪酸(ダイマー酸)、三量化重合脂肪酸等を含むものである。なお、ダイマー酸あるいは重合脂肪酸を構成する脂肪酸は大豆油由来、パーム油由来、米糠油由来など天然油に由来するものを好適に挙げることができ、オレイン酸およびリノール酸から得られるものが好ましい。
多塩基酸には、モノカルボン酸を併用することもできる。併用されるモノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。
【0030】
多価アミンとしては、ポリアミン、一級または二級モノアミンなど挙げることができる。ポリアミド樹脂に使用されるポリアミンとしてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミンを挙げることができ、脂環族ポリアミンとしては、シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン等を挙げることができる。また、芳香脂肪族ポリアミンとしてはキシリレンジアミン、芳香族ポリアミンとしてはフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等を挙げることができる。さらに、一級及び二級モノアミンとしては、n-ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどを挙げることができる。
【0031】
また、ポリアミド樹脂は軟化点が80~140℃であることが好ましく、当該範囲においてインキ被膜が強くなる。また、ポリアミド樹脂の溶解性の観点から重量平均分子量は2,000~50,000の範囲であることが好ましい。2,000~10,000であることがなお好ましい。軟化点が80℃以上の場合は、印刷物のインキ被膜の表面タック切れが良好となり、ブロッキングを防ぐ。軟化点が140℃以下の場合はインキ被膜が柔軟となり基材への接着性が向上する。重量平均分子量の範囲はとしては2,000以上の場合はインキの被膜強度が良好となり、耐擦傷性、耐熱性、高速印刷適性が向上する。分子量が50,000以下の場合はインキの粘度が低粘度化でき、貯蔵安定性が良好となる。なお、軟化点はJISK2207(環球法)で測定された値を表す。
【0032】
(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂)
塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂とは塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合した樹脂をいう。以下に好ましい態様を示す。
分子量としては重量平均分子量で5,000~70,000のものが好ましく、5,000~50,000が更に好ましい。塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中の酢酸ビニルモノマー由来の構造は、1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は、70~95質量%であることが好ましい。上記ポリウレタン樹脂との併用で一体となった顔料分散安定性を得るために、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂は水酸基価が20~200mgKOH/gであることが好ましい。また、ガラス転移温度は60℃~80℃であることが好ましい。
【0033】
(セルロース樹脂)
セルロース樹脂とは、有機溶剤に可溶な繊維炭素系樹脂をいう。以下にその好ましい態様を示す。
セルロース樹脂は重量平均分子量が5,000~100,000のものが好ましく、10,000~70,000が更に好ましい。また、ガラス転移温度が100℃~160℃であるものが好ましい。当該セルロース樹脂としては、例えばニトロセルロース、またはセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースアセテートアルキレート類、またはヒドロキシアルキルセルロースもしくはカルボキシアルキルセルロース等のアルキルセルロース類が挙げられ、上記アルキル基は例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していても良い。中でも、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロースが好ましい。
なお、ニトロセルロースで窒素含有量が窒素分は10~13質量%であることが好ましい。低温条件下でもインキの経時安定性および印刷適性が良好であり、更に基材への密着性、被膜物性、ラミネート強度等が良好となるためである。
【0034】
(有機溶剤)
本発明において使用される有機溶剤としては、環境に配慮してトルエン、キシレンその他の芳香族系有機溶剤を含有しない有機溶剤とすることが好ましい。芳香族炭化水素系有機溶剤を含有しない有機溶剤としては、主に、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶剤、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶剤、および、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素系有機溶剤を挙げることができ、バインダー樹脂の溶解性や乾燥性などを考慮して、混合して利用することもできる。但し、上記の有機溶媒の中でも可能な限りケトン系有機溶剤を抑制することが好ましい。エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤の混合溶剤を含有することが好ましく、当該比率としてはエステル系有機溶剤:アルコール系有機溶剤が95:5~50:50であることが好ましい。これら有機溶剤の使用量としては、印刷性を考慮して本発明のグラビア白色インキにおいては15.0質量%以上含有される。また、印刷適性の点から、酢酸プロピルをラミネート用グラビア白色インキ中に5.0質量%以上、より好ましくは10.0質量%以上含有させることが好ましい。
【0035】
<その他の添加剤>
その他、必要に応じて顔料分散剤、キレート架橋剤、レベリング剤、消泡剤、炭化水素ワックス、脂肪酸アミドワックス、可塑剤、光安定化剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤などの添加剤を含むことが好ましい。
本発明グラビア白色インキを表刷り用として使用する場合には、顔料分散剤、キレート架橋剤、レベリング剤、消泡剤、炭化水素ワックス、脂肪酸アミドワックスを含むことが好ましい。裏刷り用として使用する場合には、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、炭化水素ワックス、脂肪酸アミドワックスを含有することが好ましい。
【0036】
[併用樹脂]
本発明のグラビア白色インキはバインダー樹脂に加え、併用樹脂を含有することが好ましい。なお併用樹脂は融点またはガラス転移温度が50~250℃であり、有機溶剤に可溶な樹脂であることが好ましい。例えば、ダイマー酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンエステル樹脂、マレイン酸系樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、ダンマー樹脂、コーパル樹脂等が挙げられる。中でもロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンエステル樹脂およびケトン樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂であることが好ましい。それぞれで同等の効果が得られるためである。本発明のバインダー樹脂総量に対して0.1~20質量%で含有することが好適である。
【0037】
<グラビア白色インキの製造方法>
本発明におけるグラビア白色インキは、硫化亜鉛顔料をバインダー樹脂および有機溶剤と共に混合したのちビーズミルなどの分散機で分散することで得ることが可能である。
例えば、硫化亜鉛をポリウレタン樹脂および塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂等により分散機を用いて有機溶剤中に分散し、得られた顔料分散体にその他樹脂、各種添加剤や有機溶剤等を混合して製造できる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としてはサンドミルの使用が好ましい。また、本発明のグラビア白色インキは粘度が40~600mPa・sであることが好ましい。
【0038】
<グラビア白色インキの印刷>
(グラビア版)
本発明におけるグラビア白色インキは、グラビア版を用いて印刷される。本発明においてグラビア版は金属製の円筒状のものであり、彫刻または腐蝕・レーザーにて凹部を各色で作成される。彫刻とレーザーは使用に制限は無く、柄に合わせて任意に設定が可能である。線数としては100線~300線/インチのものが適宜使用され、線数の大きいものほど高精細な印刷が可能である。
(印刷機)
印刷機は、上記グラビア版を具備した印刷機を好適に使用できる。通常色ごとに印刷ユニットが設置されており、各ユニットにはグラビア版が輪転すると同時にインキを掻き取るドクターブレードが配置され、基材は各印刷ユニットを通過して凹版印刷されたのちにフィルム巻取り物となる。場合に応じてグラビア版にファニッシャーロールを使用することが可能である。また、各ユニットには乾燥オーブンが設けられており、印刷された基材がオーブンを通って乾燥される。乾燥温度は通常40~60℃程度である。
【0039】
<基材1>
本発明のグラビア白色インキは、基材1に、あるいは、基材1と基材2を含む積層体の基材1の表面又は裏面に、印刷されて印刷物となる。
本発明のグラビア白色インキを適用できる基材としては、ポリエチレンおよびポリプロピレンその他のポリオレフィン基材、ポリカーボネート基材、ポリエステル基材(ポリエチレンテレフタレートやポリ乳酸など)、ポリスチレン基材、AS樹脂もしくはABS樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデンの各種基材、セロハン基材、紙基材もしくはアルミニウム箔基材など、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状、またはシート状のものがある。中でも、ガラス転移温度が高いポリエステル基材、ポリアミド基材が好適に用いられる。
【0040】
上記基材は、金属酸化物などを表面に蒸着コート処理および/またはポリビニルアルコールなどコート処理が施されていてもよく、例えば、酸化アルミニウムを基材表面に蒸着させた凸版印刷株式会社製GL-AEや、大日本印刷株式会社製IB-PET-PXB等が挙げられる。さらに、必要に応じて帯電防止剤、紫外線防止剤などの添加剤を処理したものや、基材の表面をコロナ処理あるいは低温プラズマ処理したものなども使用することができる。
【0041】
<基材2>
基材2は基材1と同様のものが挙げられ、同一でも異なっていてもよい。なお、熱可塑性基材(シーラントと称する場合がある)であることが好ましく、無延伸ポリエチレン基材、無延伸ポリプロピレン基材、無延伸ポリエステル基材等が好ましい。
【0042】
<積層体>
上記印刷物を使用して積層体を製造することも可能である。かかる積層体は、少なくとも基材1、印刷層、基材2をこの順に有する積層体となる。少なくとも基材1、印刷層、接着剤層、基材2をこの順に有する積層体の使用形態であることが好ましい。
本発明の積層体はグラビア白色インキを印刷した印刷物の印刷層上に、接着剤層を設け、基材2と貼り合わせる(ラミネートする)ことで得られる。ラミネート加工の代表例として、ドライラミネート法等が挙げられる。ドライラミネート法とは、接着剤を印刷物の印刷層上に塗布・乾燥し、シーラントと熱圧着して積層する方法である。
【0043】
<接着剤層>
接着剤層は接着剤を塗布、乾燥して得られる。当該接着剤としてはポリオールおよびイソシアネート硬化剤の混合物からなる2液型接着剤などが好適であり、ポリオールとしてはポリエステル系、ポリエーテル系などが挙げられる。具体的には東洋モートン株式会社製・TM-250HV/CAT-RT86L-60、TM-550/CAT-RT37、TM-314/CAT-14B等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、質量部および質量%を表わす。なお、実施例1~2は、参考例1~2である。
【0045】
(水酸基価)
JIS K0070に従って求めた。
(酸価)
JIS K0070に従って求めた。
(アミン価)
アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数でJISK0070に準じて以下の方法に従って求めた。
試料を0.5~2g精秤した(試料固形分:Sg)。精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記(式2)によりアミン価を求めた。
(式2)アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S [mgKOH/g]
【0046】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(東ソー株式会社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW2500
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW3000
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW4000
東ソー株式会社製 TSKgel guardcolumn SuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
(軟化点)
樹脂の軟化点はJISK5902に記載の方法に従って求めた。
【0047】
(平均粒子径)
以下に使用した顔料の平均粒子径はレーザー回折法に従って求めた。測定機器としてはマイクロトラック社製MT3000IIを使用した。
【0048】
[合成例1](ポリウレタン樹脂A溶液)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2000のポリ(1,2-プロピレングリコール)(水酸基価56.1mgKOH/g)257.86部、イソホロンジイソシアネート18.01部、ジフェニルメタンジイソシアネート20.27部、2-エチルヘキサン酸スズ(II)0.03部、酢酸エチル200部を仕込み、窒素気流下に90℃で3時間反応させ、末端イソシアネートプレポリマーの溶液496.14部を得た。次いでイソホロンジアミン3.86部、イソプロピルアルコール280部、酢酸エチル220部を混合したものを、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液に室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分30.0%、重量平均分子量78000、アミン価3.0mgKOH/gのポリウレタン樹脂A溶液を得た。
【0049】
(実施例1)[グラビア白インキS1の作成]
硫化亜鉛1(アミン化合物処理された硫化亜鉛 平均粒子径:0.3μm、モース硬度4、かさ密度1.6L/kg、吸油量14g/100g)を40部、ポリウレタン樹脂A溶液(固形分30%)を34部、有機溶剤として、酢酸n-プロピル(NPAC)/イソプロパノール(IPA)=70/30の26部をディスパーで10分間混合したのち、ビーズミル(γミル)で20分間分散して、グラビア白インキS1を得た。
【0050】
(グラビア白インキS1のグラビア印刷)
グラビア印刷するため、前記グラビア白インキS1を100部、混合溶剤(メチルエチルケトン:酢酸ノルマルプロピル:イソプロピルアルコール=30:40:30)を50部混合し、希釈した。次にヘリオ175線ベタ版(版式コンプレスト、100%ベタ柄)により、コロナ処理OPPフィルム(FOR#20、フタムラ化学社製 膜厚20μm)のコロナ処理面に印刷速度100m/分、オーブン乾燥温度60℃にてグラビア印刷し、印刷物を得た。
【0051】
(実施例2~12)[グラビア白インキS2~S12の作成]
表1に示す顔料及び樹脂溶液を用いた以外は実施例1と同様の方法により、グラビア白色インキS2~S12を得た。その後実施例1と同様の操作でグラビア印刷を行い、グラビア白色インキS2~S12の印刷物を得た。なお、表1中の顔料および樹脂溶液は以下に示す。
<顔料>
・硫化亜鉛2:平均粒子径:0.35μm、モース硬度3、かさ密度2.4L/kg、吸油量14g/100g 表面処理無
・酸化チタン:平均粒子径:0.25μm、モース硬度7.5 表面処理有(テイカ社製、製品名チタニックスJR806 表面処理:水酸化アルミニウム、シリカ)
【0052】
<ポリアミド樹脂溶液>
軟化点が116℃、ダイマー酸由来の構造単位を50質量%以上含有する、重量平均分子量4000のポリアミド樹脂30部をメチルシクロヘキサン50部、イソプロピルアルコール20部に混合溶解させて、固形分30%のポリアミド樹脂溶液を得た。
<セルロース樹脂溶液>
重量平均分子量40000、窒素含有量12質量%のニトロセルロース30部を、酢酸エチル20部とイソプロピルアルコール20部、メチルシクロヘキサン30部に混合溶解させて、固形分30%のニトロセルロース樹脂溶液を得た。
<塩化ビニル-酢酸ビニル共重樹脂溶液>
塩化ビニル-酢酸ビニル共重樹脂(日信化学社製 製品名ソルバインTA5R)30部を、酢酸エチル70部に混合溶解させて、固形分30%の塩化ビニル-酢酸ビニル共重樹脂溶液を得た。なお、ソルバインTA5Rの水酸基価は140mgKOH/g、重量平均分子量は50000である。
【0053】
(比較例1)[インキT1の作成]
硫化亜鉛3(大崎工業社製 硫化亜鉛 平均粒子径10μm)を40部、ポリウレタン樹脂A溶液(固形分30%)を24部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重樹脂溶液(固形分30%)を10部、有機溶剤として、酢酸n-プロピル(NPAC)/イソプロパノール(IPA)=70/30の26部を加えて、ビーズミルで10分間混合することで、グラビア白色インキT1を得た。更に実施例1に記載の方法にて印刷物を得た。
【0054】
(比較例2~3)[インキT2およびT3の作成]
表2に記載の顔料及び樹脂溶液を用いた以外は比較例1と同様の手法によりグラビア白色インキT2およびT3を得た。更に実施例1に記載の方法にて印刷物を得た。
【0055】
[特性評価]
上記実施例1~12で得られたグラビア白色インキS1~S12、および比較例で得られたインキT1~T3並びにそれらの印刷物を用いて以下の特性評価を行った。
【0056】
(白色度)
上記において得られたそれぞれの印刷物の印刷層に対し分光測色計(X‐Rite社製eXact)を用いて光源D50、2度視野、濃度ステータスE使用の条件にて印刷面のL値を測定した。なお、ブラックバッキング(黒台紙上で測定)のため、L値が高いと隠蔽性および白色度が高いことになる。
(評価基準)
A:L値が75以上(良好)
B:L値が65以上75未満(可)
C:L値が65未満(不良)
【0057】
(版カブリ性評価およびドクタースジ評価)
NBR(ニトリルブタジエンゴム)製のゴム硬度80Hsの圧胴、刃先の厚みが60μm(母材の厚み40μm、片側セラミック層の厚み10μm)のセラミックメッキドクターブレード、東洋FPP株式会社製のクロム硬度1050Hvの電子彫刻版(スタイラス角度120度、200線/inch)の富士機械工業株式会社製グラビア印刷機に白色希釈印刷インキをセットし、ドクター圧2kg/cm2、200m/minの回転速度で空転を60分行い、版上のインキによる曇り部分面積で版カブリ性を、版上のスジ状不良でそれぞれを評価した。
(版カブリ性:評価基準)
A:版上に版かぶりが見られなかった、もしくは5%未満でみられた(良好)
B:版上に版かぶりが5%以上10%未満の面積でみられた(可)
C:版上に版かぶりが10%以上の面積でみられた(不良)
(ドクタースジ:評価基準)
A:版上にドクタースジが見られなかった(良好)
B:版上薄いドクタースジが1~2本みられた(可)
C:版上にドクタースジが多数みられた(不良)
【0058】
(インキ安定性(経時安定性))
上記実施例および比較例で作成したグラビア白色インキを密閉容器に入れ、40℃のオーブンに14日間静置して経時安定性を確認した。静置後に25℃条件下で沈降性を以下に記載の基準で評価した。
(評価基準)
A:さじで探って、容器の底に顔料の沈降がみられない。
B:さじで探って、容器の底に顔料の沈降が僅かに見られるが撹拌で元の状態に戻る。
C:さじで探って、容器の底に多量の顔料沈降/または顔料の硬い沈降が見られる。
【0059】
【0060】
【0061】
以上の検討結果より、インキ安定性、白色度に優れ、更に印刷適性にも優れたグラビアインキを提供できた。更にインキの経時安定性が良好となる作用を示した。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のグラビアインキは軟包装ラミネート分野および表刷り分野のみに限らず、フレキソインキ印刷用にも適用することができる。