(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】グレーチング蓋設置構造
(51)【国際特許分類】
E03F 5/06 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
E03F5/06 A
(21)【出願番号】P 2019043483
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】弁理士法人小竹アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】磯野 栄次
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-184819(JP,A)
【文献】特開2008-031842(JP,A)
【文献】特開2015-168966(JP,A)
【文献】特開2011-099237(JP,A)
【文献】登録実用新案第3170759(JP,U)
【文献】登録実用新案第3133644(JP,U)
【文献】特開2015-187334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の複数のグレーチング蓋を、側溝ブロックの上方開口部の両側縁に設けられた蓋受部に順次並べて載置するグレーチング蓋設置構造であって、
前記グレーチング蓋を、平板状のグレーチング本体と、このグレーチング本体の底部に前記側溝に沿って固定された筒状体と、を有して構成し、
それぞれのグレーチング蓋の筒状体に連続した鉄筋を挿通させた状態で前記複数のグレーチング蓋を前記蓋受部に載置させたことを特徴とするグレーチング蓋設置構造。
【請求項2】
前記クレーチング蓋は、嵩上げ型グレーチングであり、前記筒状体は、前記蓋受部に載置可能な嵩上材であることを特徴とする請求項1記載のグレーチング蓋設置構造。
【請求項3】
前記複数のグレーチング蓋のうち、両端のグレーチング蓋は、隣接するグレーチング蓋が配されていない側の前記筒状体の開口端部がエンドプレートで閉塞されていることを特徴とする請求項1又は2記載のグレーチング蓋設置構造。
【請求項4】
前記嵩上材に挿入される鉄筋は、前記
嵩上材に溶接されていることを特徴とする
請求項2に記載のグレーチング蓋設置構造。
【請求項5】
前記連続した鉄筋は、複数の鉄筋部材を溶接して形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のグレーチング蓋設置構造。
【請求項6】
隣り合う前記グレーチング蓋は、連結具で連結されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のグレーチング蓋設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の複数のグレーチング蓋を側溝ブロックの上方開口部の蓋受部に順次並べて載置するグレーチング蓋設置構造に関し、グレーチング蓋の盗難を防止することが可能な設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、
図6(a)に示されるように、道路等の側溝1を構成する側溝ブロック10には、上方開口部の両側縁に設けられた蓋受部2に金属製のグレーチング蓋3を入子蓋状に順次並べて載設し、グレーチング蓋3のはねあがりを防止するために、隣り合うグレーチング蓋3の突合せ部分に、
図6(b)にも示されるような断面コ字状の連結具12を渡すように嵌め付け、ボルト留めするようにしていた。
【0003】
このような連結具12は、グレーチング蓋3の盗難防止にも寄与するが、ボルト留めする単純な構造であるため、
図6(c)に示されるように、この連結具12が取り外され、又は、破壊されてグレーチング蓋3が盗難される事態が懸念されている。グレ-チング蓋3は、一旦設置すると放置される場合も多く、盗難に合うと、その箇所が発見されない限り、側溝の上方が開放状態となるので、歩行者や車両が側溝に転落する恐れがあり、危険な状態となる。
【0004】
そこで、グレーチング蓋3の盗難対策として、従来、側溝の開口部にコンクリートで固定された受枠を設け、この受枠に対して受枠内に突出した状態で固定される固定ピンと、受枠内に出入り自在に取り付けられる可動ピンとを設け、これら一対にピンでグレーチング蓋を揺動開閉可能に連結する設置構造(特許文献1参照)や、グレーチング蓋の前位に設置するコンクリート蓋の後端面や梁部の後端面に、インサート雌ねじをグレーチング蓋に固設された嵩上材の開口部と対応した位置に埋設し、このインサート雌ねじに係合突起を螺合させ、この係合突起を嵩上材に挿入される状態でグレーチング蓋を設置する設置構造(特許文献2参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-252332号公報
【文献】実用新案登録第3185754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の盗難防止を意図したグレーチング蓋の設置構造は、グレーチング蓋と対峙する側に構造上の変更が必要となり、グレーチング蓋が1枚や2枚程度の箇所では有効であるが、多くのグレーチング蓋を順次並べて設置する側溝等においては、それぞれのグレーチング蓋に対して同様の設置構造を採用するには、グレーチング蓋以外の箇所で多くの構造変更が必要となり、多大の労力と費用が必要となる。
【0007】
そこで、複数のグレーチング蓋を側溝ブロックの上方開口部の蓋受部に順次並べて設置する場合に、グレーチング蓋側の変更のみで効果的にグレーチング蓋の盗難を防止することが可能なグレーチング蓋設置構造を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明に係るグレーチング蓋設置構造は、金属製の複数のグレーチング蓋を、側溝ブロックの上方開口部の両側縁に設けられた蓋受部に順次並べて載置する設置構造であって、前記グレーチング蓋を、平板状のグレーチング本体と、このグレーチング本体の底部に前記側溝に沿って固定された筒状体と、を有して構成し、それぞれのグレーチング蓋の筒状体に連続した鉄筋を挿通させた状態で前記複数のグレーチング蓋を前記蓋受部に載置させたことを特徴としている。
【0009】
したがって、複数あるグレーチング蓋の一枚を取り外そうとしても、筒状体に挿通された鉄筋により隣接するグレーチング蓋と同時にしか動かすことができないので、グレーチング蓋を持ち上げることができず、取り外されることを防止することが可能となる。しかも、鉄筋は、筒状体の内部を挿通されているので、それ自体を外部から破壊することはできず、効果的に盗難防止を図ることが可能となる。
【0010】
ここで、グレーチング蓋が、U字溝タイプや溝蓋タイプにあっては、グレーチング本体に筒状体を固定する必要があるが、グレーチング本体に蓋受部に載置可能な嵩上材が固定されている嵩上げ型グレーチングである場合は、前記筒状体は嵩上材で代用するとよい。
【0011】
また、複数のグレーチング蓋のうち、両端の前記グレーチング蓋においては、隣接するグレーチング蓋が配されていない側の筒状体の開口端部をエンドプレートで閉塞することが好ましい。
複数のグレーチング蓋は嵩上材に挿通させた鉄筋によって相互に動きが規制されているので、両端のグレーチング蓋において隣接するグレーチング蓋が配されていない側の筒状体の開口端部をエンドプレートで閉塞することで、鉄筋が除去される不都合を回避することが可能となる。
【0012】
また、前記嵩上材に挿入された鉄筋は、嵩上材に部分的にでも溶接されることがより好ましい。複数のグレーチング蓋の嵩上げ材に連続した鉄筋を挿入するだけも十分な効果は見込まれるが、嵩上材に挿入された鉄筋を嵩上材に溶接することで、グレーチング蓋を鉄筋に対してその軸方向に相対的にスライドさせることもできなくなり、盗難防止効果を一層高めることが可能となる。
【0013】
なお、鉄筋は、嵩上材に複数本並列に挿入してもよいが、複数のグレーチング蓋に亘って連続して配設するために十分な長さがない場合には、複数の鉄筋部材を溶接して長さを確保するとよい。
【0014】
また、複数のグレーチング材の嵩上材に挿入した連続した鉄筋により、それぞれのグレーチング蓋の跳ね上がりを抑える効果も期待できるが、より効果的に跳ね上がりを抑えるために、隣り合うグレーチング蓋を連結具で連結するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明によれば、側溝ブロックの上方開口部の蓋受部に順次並べて載置される金属製の複数のグレーチング蓋の設置構造において、グレーチング蓋を、平板状のグレーチング本体と、このグレーチング本体の底部に側溝に沿って固定された筒状体と、を有して構成し、それぞれのグレーチング蓋の筒状体に連続した鉄筋を挿通させた状態で複数のグレーチング蓋を蓋受部に載置させるようにしたので、グレーチング蓋側の変更のみでグレーチング蓋の盗難を効果的に防止することができ、グレーチング蓋以外の部分の構造を改変する必要がないため、多くの労力や費用が不要となる。
また、各グレーチング蓋は、筒状体に挿通される鉄筋によって動きが規制されるので、各グレーチング蓋の跳ね上がりも抑えることが可能となるし、鉄筋は、各グレーチング蓋の筒状体の内部に挿通されて表出されないので、外部から鉄筋が破断される不都合もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明に係るグレーチング蓋設置構造の一例を示す図であり、(a)は、グレーチング蓋を側溝の蓋受部に設置した状態の一部を示す斜視図、(b)は、隣接するグレーチング蓋の設置状態を示す断面図であり、(a)のA-A線から見た図である。
【
図2】
図2は、複数の鉄筋部材をつなげて連続した鉄筋を構成するに当たり、隣り合う鉄筋部材の接合状態を示す図であり、(a)は、隣り合う鉄筋部材の端面同士を溶接した例を示す図、(b)は、隣り合う鉄筋部材の端部を一部オーバーラップさせて重ね合わせ、その重ね合わせた部分を溶接した例を示す図である。
【
図3】
図3は、嵩上材の内部を挿通させた鉄筋を嵩上材に部分的に溶接した例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、端部に配されたグレーチング蓋の嵩上材の開口端部をエンドプレートで閉塞した状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明のグレーチング蓋設置構造を形成する手順を説明する斜視図である。
【
図6】
図6は、従来のグレーチング蓋の設置構造を説明する図であり、(a)は、グレーチング蓋の一部が盗難された状態を示す斜視図、(b)は、隣り合うグレーチング蓋を連結具で連結している状態を示す断面図、(c)は、連結具を取り外され、又は、破壊されてグレーチング蓋を取り外される状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳述する。
【0018】
図1において、本発明のグレーチング蓋設置構造を説明するために、側溝1の上部開口部の両側縁に設けられた蓋受部2にグレーチング蓋3を載置させた状態が示されている。
この例においてグレーチング蓋3は、嵩上げ型グレーチングが用いられているもので、その全体が鋼製で形成され、矩形板状のグレーチング本体4と、このグレーチング本体4の底部両側に側溝1に沿って固定されると共に蓋受部2に載置可能な筒状の嵩上材5と、を有して構成されている。
【0019】
グレーチング本体4は、矩形状の外枠4aと、この外枠4a内で溝路の長手方向で所定の間隔に並設された横桁4bと、前記外枠4a内で、横桁4bに対して垂直に所定の間隔で並設された縦桁4cと、外枠4a内で横桁4b及び縦桁4cによって画成される複数の方形状の開口部4dとによって構成されている。
【0020】
嵩上材5は、グレーチング本体4の長さと一致させた長さに形成されているもので、断面円形の筒状体であってもよいが、蓋受部2への安定した設置を確保するために、断面矩形状の筒状体(中空の角材)をグレーチング本体4の裏面両側縁部に溶接等で一体化させている。
【0021】
側溝1はコンクリート等で形成された側溝ブロック10により構成されるもので、上部開口部の両側縁部に段差を設けることによって側溝1に沿って延びる蓋受部2が形成されている。蓋受部2の側溝1の開口端からの深さは、グレーチング本体4の厚みと嵩上材5の高さとの和にほぼ等しく設定され、グレーチング蓋3を蓋受部2に載置させた状態において、グレーチング本体4が側溝1の上端面から突出しないようになっている。
【0022】
そして、このようなグレーチング蓋3を側溝ブロック10の蓋受部2に順次並べて設置するに当たり、それぞれのグレーチング蓋3の嵩上材5の内部に、連続した鉄筋11を挿通させた状態としている。
【0023】
この鉄筋11は、少なくとも一枚のグレーチング蓋3の長さよりも長く形成されているもので、側溝上に配置されるひとまとまりの複数のグレーチング蓋3のほぼ全範囲に亘って嵩上材5の内部に連続的に挿通させている。
したがって、グレーチング蓋3の枚数が多い場合には、鉄筋11の長さが足りなくなる場合もあるが、この場合には、
図2に示されるように、複数の鉄筋部材11aを順次接合して必要となる長さにするとよい。
【0024】
この際、鉄筋部材同士の接合は、特に限定されるものはないが、
図2(a)に示されるように、隣接する鉄筋を軸心を一致させて突き合わせ、その突き合わせ面を溶接するようにしても(図中において溶接部位をAで示す)、
図2(b)に示されるように、隣接する鉄筋の端部を互いにオーバーラップするように重ね合わせ、その重ね合わせた部分を溶接するようにしてもよい(図中において溶接部位をBで示す)。
【0025】
また、鉄筋11は、それぞれのグレーチング蓋3の嵩上材5に単に挿入するだけでもよいが、
図3に示されるように、それぞれの嵩上材5に、部分的に溶接して(図中において溶接部位をCで示す)嵩上げ材5の軸方向に鉄筋11が相対的に移動しないようにしてもよい。
【0026】
そして、側溝ブロック10の蓋受部2に順次並べて設置したグレーチング蓋3のうち、両端に位置するグレーチング蓋3は、隣接するグレーチング蓋が配されていない側の嵩上材5の開口端部を、
図4に示されるように、嵩上材5の断面形状に合わせた鋼製のエンドプレート20を溶接等によって固定することで閉塞するようにしている。
【0027】
以上のグレーチング蓋設置構造を形成するためには、
図5に示されるように、先ず、側溝1の開口部を渡すように枕木30を所定の間隔で複数配置し、その上にグレーチング蓋3を嵩上げ材5を下にして載置する。そして、順次並べたグレーチング蓋3の最も端に位置するグレーチング蓋の嵩上材5の開口端から鉄筋11を挿入していく。この際、鉄筋11の長さが足りなければ、都度、新たな鉄筋部材11aを溶接して継ぎ足し、鉄筋11の全長を長くして並べた複数のグレーチング蓋3のほぼ全範囲に亘って鉄筋11が挿入されるようにする。
【0028】
そして、鉄筋11を挿入し終えた後に、
図4に示されるように、両端のグレーチング蓋3の嵩上材5の開口端にエンドプレート20を溶接してこの開口端を閉塞する。なお、鉄筋11を嵩上材5に溶接する必要がある場合には、エンドプレート20で嵩上材の開口端を閉塞する前に、鉄筋11の所望位置を嵩上材5に溶接する。
【0029】
そして、以上の作業が完了した後に、枕木30を取り外して、グレーチング蓋3を側溝ブロック10の蓋受部2に設置すれば、グレーチング蓋3の設置作業は完了する。
【0030】
したがって、上述したグレーチング蓋設置構造によれば、グレーチング蓋3に固定されている嵩上材5の内部に、連続した鉄筋11を全グレーチング蓋3にかけて挿入するようにしたので、並べられたグレーチング蓋3の一部を取り外そうとしても、嵩上材5の内部の鉄筋11を介して隣接しているグレーチング蓋3から分離されることを抑制しているので、取り外すことができず、グレーチング蓋3の盗難を防止することが可能となる。
【0031】
また、鉄筋11は、嵩上材5の中に挿入されて表出されることがないので、外部から破壊されるおそれもなく、また、複数のグレーチング蓋3に亘って設けられているので、一部のグレーチング蓋3が跳ね上がる不都合も同時に回避することが可能となる。
【0032】
さらに両端のグレーチング蓋3には、嵩上材5の開口部を塞ぐエンドプレート20が固定されるので、鉄筋11を抜き取られる不都合も回避することができ、また、鉄筋11を嵩上材5に部分的に溶接することで、鉄筋11に対するグレーチング蓋3の相対的な移動を防ぐことができるので、グレーチング蓋3の盗難をより確実に防ぐことが可能となる。
【0033】
なお、上述の例では、1本の連続した鉄筋11を嵩上材5に挿入した例を示したが、複数本の連続した鉄筋を嵩上げ材5に挿入するようにしてもよい。順次並べて設置されるグレーチング蓋の全範囲に鉄筋11を挿入できない場合には、複数のグレーチング蓋3のまとまり単位で連続した鉄筋11を挿通させるようにしてもよい。
また、それぞれのグレーチング蓋3の跳ね上がりをより効果的に抑えるために、隣り合うグレーチング蓋3を、従来と同様、
図6で示されるような連結具12によって連結するようにしてもよい。
【0034】
以上の例においては、グレーチング蓋3として、嵩上げ型グレーチングを用いた例を示したが、嵩上材5が付いていないU字溝タイプや溝蓋タイプにあっては、グレーチング本体4の下面に適当な筒状体を溶接等によって固定し、この筒状体に連続した鉄筋11を挿通させることで同様の作用効果を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1 側溝
2 蓋受部
3 グレーチング蓋
4 グレーチング本体
5 嵩上材(筒状体)
11 鉄筋
11a 鉄筋部材
12 連結具
20 エンドプレート