(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】管状体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/30 20060101AFI20230307BHJP
B29L 23/00 20060101ALN20230307BHJP
【FI】
B29C70/30
B29L23:00
(21)【出願番号】P 2019049078
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【氏名又は名称】住友 教郎
(72)【発明者】
【氏名】阪峯 良太
(72)【発明者】
【氏名】金光 由実
(72)【発明者】
【氏名】大貫 正秀
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-120191(JP,A)
【文献】特開2016-087460(JP,A)
【文献】特開2007-118362(JP,A)
【文献】特開2002-144439(JP,A)
【文献】特開平05-077326(JP,A)
【文献】国際公開第03/078142(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンドレルに、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂材料を巻回して中間巻回体を得る工程と、
前記中間巻回体の外周面に、張力F1を付与しつつ織物テープを巻き付ける第1ラッピング工程と、
前記織物テープの外側に、張力F2を付与しつつ樹脂フィルムテープを巻き付ける第2ラッピング工程と、
前記織物テープ及び前記樹脂フィルムテープが巻き付けられた前記中間巻回体を加熱して前記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程と、
前記硬化工程の後に、前記マンドレルの引き抜きと、前記織物テープ及び樹脂フィルムテープの除去とを行って硬化管状体を得る工程とを含み、
前記張力F2及び前記硬化工程における
加熱条件に基づいて決定される前記樹脂フィルムテープの80℃残留締め付け力が0.4N/mm以上である管状体の製造方法。
【請求項2】
前記硬化工程における前記樹脂フィルムテープの130℃残留締め付け力が0.3N/mm以上である請求項1に記載の管状体の製造方法。
【請求項3】
前記第2ラッピング工程における前記樹脂フィルムテープの伸び率が4%以上である請求項1又は2に記載の管状体の製造方法。
【請求項4】
前記第1ラッピング工程における前記織物テープの巻き付け厚さが400μm以下である請求項1から3のいずれか1項に記載の管状体の製造方法。
【請求項5】
前記張力F2及び前記硬化工程における加熱条件に基づいて決定される前記樹脂フィルムテープの80℃残留締め付け力が0.5N/mm以上である請求項1から4のいずれか1項に記載の管状体の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂フィルムテープが2重巻き、3重巻き又は4重巻きで巻回される請求項1から5のいずれか1項に記載の管状体の製造方法。
【請求項7】
前記織物テープの巻き付け厚さが200μm以上400μm以下である請求項1から6のいずれか1項に記載の管状体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管状体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂製の管状体では、軽量でありながら、高い強度を有しうる。この管状体は、様々な用途で有用である。
【0003】
軽量化及び高強度化には限界がある。この限界を克服するための製造方法が提案されている。特許第5161530号、特許第5113726号、特許4960268号及び特許5074236号は、ラッピングテープとして織物テープを用いた管状体の製造方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5161530号公報
【文献】特許第5113726号公報
【文献】特許第4960268号公報
【文献】特許第5074236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、管状体の性能を更に高めうる製造方法を見いだした。本開示は、軽量で高強度な管状体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様では、管状体の製造方法は、マンドレルに、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂材料を巻回して中間巻回体を得る工程と、前記中間巻回体の外周面に、張力F1を付与しつつ織物テープを巻き付ける第1ラッピング工程と、前記織物テープの外側に、張力F2を付与しつつ樹脂フィルムテープを巻き付ける第2ラッピング工程と、前記織物テープ及び前記樹脂フィルムテープが巻き付けられた前記中間巻回体を加熱して前記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程と、前記硬化工程の後に、前記マンドレルの引き抜きと、前記織物テープ及び樹脂フィルムテープの除去とを行って硬化管状体を得る工程とを含む。前記硬化工程における前記樹脂フィルムテープの80℃残留締め付け力が0.4N/mm以上である。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面として、軽量で高強度な管状体が得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、管状体の一実施形態であるゴルフクラブシャフトを備えたゴルフクラブを示す。
【
図2】
図2は、
図1のゴルフクラブに用いられている管状体(シャフト)を示す。
【
図3】
図3は、テープラッピング工程の一例を示す工程図である。
【
図4】
図4は、螺旋状に巻き付けられた織物テープの断面図である。
図4は、管状体の軸方向に沿った断面図である。
【
図5】
図5(a)は、残留応力の測定に用いられる試験片を示す平面図であり、
図5(b)は
図5(a)のA-A線に沿った断面図である。
【
図6】
図6は、全ての実施例及び比較例で用いられた硬化管状体の積層構成を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面が参照されつつ、実施形態が詳細に説明される。
【0010】
本開示の管状体の用途は様々である。この用途として、ゴルフクラブシャフト、テニスラケットのフレーム、バドミントンラケットのフレーム、釣り竿、トレッキングポール、ウォーキングポール、杖、等が挙げられる。
【0011】
図1は、管状体の一例であるゴルフクラブシャフト6が用いられたゴルフクラブ2を示す。クラブ2は、ヘッド4と、シャフト6と、グリップ8とを備えている。ヘッド4は、シャフト6の先端部に取り付けられている。グリップ8は、シャフト6の後端部に取り付けられている。
【0012】
図2は、シャフト6を示す。シャフト6は、先端Tpと後端Btとを有する。先端Tpでのシャフト6の外径は、後端Btでのシャフト6の外径よりも小さい。シャフト6は、先端Tpに近づくにつれて外径が小さくなるテーパー部を有している。シャフト6は、中心線z1を有する。
【0013】
管状体6の材料は、シート状のプリプレグ、すなわち、プリプレグシートである。本願において、プリプレグシートは単にシートとも称される。典型的なプリプレグシートでは、繊維が一方向に配向している。管状体6は、複数のプリプレグシートを巻回し且つ硬化させてなる。管状体6は、シートワインディング製法で作製されている。管状体6の製法は限定されず、例えば管状体6はフィラメントワインディング製法で作製されてもよい。
【0014】
以下では、管状体(ゴルフクラブシャフト)6の製造方法の一例が説明される。
【0015】
[管状体の製造工程の一例]
【0016】
(1)裁断工程
裁断工程では、プリプレグシートが所望の形状に裁断される。この工程により、複数のシートが切り出される。裁断された複数のシートの例は、後述の
図6で示される。
【0017】
裁断は、裁断機によりなされてもよい。裁断は、手作業でなされてもよい。手作業の場合、例えば、カッターナイフが用いられる。
【0018】
(2)貼り合わせ工程
必要に応じて、複数のシート同士が貼り合わせられて、合体シートが作製される。
【0019】
(3)巻回工程
巻回工程では、マンドレルが用意される。典型的なマンドレルは、金属製である。このマンドレルに、離型剤が塗布される。更に、このマンドレルに、粘着性を有する樹脂が塗布される。この樹脂は、タッキングレジンとも称される。このマンドレルに、裁断されたシートが巻回される。このタッキングレジンにより、マンドレルへのシート端部の端付けが容易とされている。
【0020】
各シートは、所定の端付け位置で、巻回対象物への端付けがなされる。次いで、この巻回対象物が転がされる。この巻回は、手作業によりなされてもよいし、機械によりなされてもよい。この機械はローリングマシンと称される。なお、巻回対象物とは、マンドレル又はマンドレルに1以上のシートが巻回されたものである。全てのシートが巻回されて、中間巻回体が得られる。
【0021】
(4)テープラッピング工程
テープラッピング工程では、上記中間巻回体の外周面にテープが巻き付けられる。このテープは、ラッピングテープとも称される。このテープは、張力を付与されつつ巻き付けられる。本実施形態では、このテープラッピング工程が、第1ラッピング工程と第2ラッピング工程とを有する。これらの工程の詳細は後述される。
【0022】
(5)硬化工程
硬化工程では、テープラッピングがなされた後の中間巻回体が加熱される。この加熱により、マトリクス樹脂が硬化する。この硬化の過程で、マトリクス樹脂が一時的に流動化する。このマトリクス樹脂の流動化により、シート間又はシート内のボイドが排出されうる。ラッピングテープの圧力(締め付け圧)により、このボイドの排出が促進されている。
【0023】
(6)マンドレルの引き抜き工程及びラッピングテープの除去工程
硬化工程の後、マンドレルの引き抜き工程とラッピングテープの除去工程とがなされる。この結果、硬化管状体が得られる。本実施形態では、ラッピングテープは、織物テープ及び樹脂フィルムテープである。ラッピングテープの除去工程の能率を向上させる観点から、マンドレルの引き抜き工程の後にラッピングテープの除去工程がなされるのが好ましい。
【0024】
(7)両端カット工程
この工程では、硬化積層体の両端部がカットされる。このカットにより、先端Tpの端面及び後端Btの端面が、平坦とされる。
【0025】
(8)研磨工程
この工程では、硬化積層体の表面が研磨される。硬化積層体の表面には、螺旋状の凹凸が存在する。この凹凸は、ラッピングテープの跡である。研磨により、この凹凸が消滅し、表面が滑らかとされうる。
【0026】
(9)塗装工程
研磨工程後の硬化積層体が、塗装される。
【0027】
本実施形態の製造方法では、繊維強化樹脂材料として、プリプレグが用いられる。この製造方法では、シート状のプリプレグ(プリプレグシート)がマンドレルに巻回される。なお、繊維強化樹脂材料として、プリプレグシートの他、トウプリプレグ、スリットプリプレグ等が挙げられる。この繊維強化樹脂材料は、液状の樹脂に含浸させた繊維束であってもよい。
【0028】
プリプレグシートは、繊維とマトリクス樹脂とを含む。本実施形態では、この繊維が炭素繊維である。この炭素繊維は、一方向に配向している。この繊維は、炭素繊維以外でもよい。高強度で且つ軽量な管状体とする観点から、炭素繊維が好ましい。
【0029】
[第1ラッピング工程及び第2ラッピング工程]
本実施形態では、テープラッピング工程が、第1ラッピング工程と第2ラッピング工程とを含む。
図3は、第1ラッピング工程St1及び第2ラッピング工程St2を示す工程図である。第1ラッピング工程St1の後に、第2ラッピング工程St2がなされる。
【0030】
第1ラッピング工程St1では、巻回工程で得られた中間巻回体100の外周面に、織物テープTP1が巻き付けられる。張力F1を付与しながら、織物テープTP1が巻き付けられる。織物テープTP1は螺旋状に巻き付けられる。
図3において両矢印Pt1で示されるのは、織物テープTP1における螺旋のピッチPt1である。隙間ができないように螺旋のピッチPt1が設定される。ピッチPt1は、織物テープTP1の幅W1と巻き付け角度θ1とにより設定されうる。巻き付け角度θ1は、テープの長手方向と管状体6の中心線z1との間の角度である。
【0031】
第2ラッピング工程St2では、織物テープTP1の外側に、樹脂フィルムテープTP2が巻き付けられる。張力F2を付与しながら、樹脂フィルムテープTP2が巻き付けられる。樹脂フィルムテープTP2は螺旋状に巻き付けられる。
【0032】
張力F2により、樹脂フィルムテープTP2の幅は変化しうる。張力が付加されていない状態での樹脂フィルムテープTP2の幅が、W2とされる。巻き付けられた状態における樹脂フィルムテープTP2の幅が、W3とされる。幅W3は、幅W2よりも小さいか、又は、幅W2と同じである。
【0033】
図3において両矢印Pt2で示されるのは、樹脂フィルムテープTP2における螺旋のピッチPt2である。隙間ができないように、螺旋のピッチPt2が設定される。ピッチPt2は、樹脂フィルムテープTP2の幅W3と巻き付け角度θ2とにより設定されうる。
【0034】
第1ラッピング工程St1及び第2ラッピング工程St2が完了すると、中間巻回体100には織物テープTP1の層が形成され、この織物テープTP1の層の外側に樹脂フィルムテープTP2の層が形成される。樹脂フィルムテープTP2の層は、織物テープTP1の層に隣接している。樹脂フィルムテープTP2の層は、織物テープTP1の層に接触している。
【0035】
[硬化工程における加熱条件]
上述の通り、硬化工程では、加熱がなされる。マトリクス樹脂の硬化を促進する観点から、この硬化工程は、60℃以上200℃以下の温度に加熱されるのが好ましく、70℃以上200℃以下の温度に加熱されるのがより好ましく、80℃以上200℃以下の温度に加熱されるのがより好ましい。
【0036】
好ましくは、硬化工程は、第1加熱ステップと、第2加熱ステップとを含む。硬化工程は、第1加熱ステップ及び第2加熱ステップのみで構成されていてもよい。第1加熱ステップの後に、第2加熱ステップがなされる。第1加熱ステップの温度は、第2加熱ステップの温度よりも低い。
【0037】
第1加熱ステップでは、マトリクス樹脂が流動化する。この流動化により、織物テープへのマトリクス樹脂の移動が促進されうる。加えて、この流動化は、ボイドの排出を促進する。これらの観点から、第1加熱ステップの温度は、60℃以上が好ましく、70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。過度な硬化の進行を抑制し、マトリクス樹脂の移動を促進する観点から、第1加熱ステップの温度は、115℃以下が好ましく、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。第1加熱ステップの温度は、80°±10°であってもよく、80°±5°であってもよい。
【0038】
マトリクス樹脂が流動化している時間を長くする観点から、第1加熱ステップの時間は、10分以上が好ましく、15分以上がより好ましく、20分以上がより好ましく、30分以上がより好ましい。管状体の生産性の観点から、第1加熱ステップの時間は、50分以下が好ましく、40分以下がより好ましく、30分以下がより好ましい。
【0039】
樹脂の硬化を進行させる観点から、第2加熱ステップの温度は、120℃以上が好ましく、125℃以上がより好ましく、130℃以上がより好ましい。エネルギーのコストを削減する観点から、第2加熱ステップの温度は、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。第2加熱ステップの温度は、130°±10°であってもよく、130°±5°であってもよい。
【0040】
樹脂の硬化を進行させる観点から、第2加熱ステップの時間は、10分以上が好ましく、15分以上がより好ましい。管状体の生産性の観点から、第2加熱ステップの時間は、240分以下が好ましく、120分以下がより好ましく、60分以下がより好ましい。
【0041】
硬化工程の温度は、加熱炉(オーブン)内の空気の温度を意味しうる。硬化工程の温度は、硬化工程におけるラッピングテープの表面温度を意味しうる。
【0042】
[巻き付け厚さ]
本願では、織物テープTP1の巻き付け厚さが定義される。
図4は、螺旋状に巻かれた織物テープTP1の断面図である。この
図4は、管状体6の中心線z1に沿った断面図である。中心線z1に沿った方向は、軸方向とも称される。なお
図4では、見やすい図面とするために、織物テープTP1の厚さt1が誇張されて大きく描かれている。
【0043】
図4が示すように、鎖線上に巻かれた織物テープTP1は層108を構成する。織物テープTP1の層108は、オーバーラップ部110と、非オーバーラップ部112とを有する。軸方向において、オーバーラップ部110と非オーバーラップ部112とが交互に配置される。オーバーラップ部110では、第1周回部TP11と、第2周回部TP12とが重なっている。このため、オーバーラップ部110の厚さは、織物テープTP1の厚さt1の2倍である。一方、非オーバーラップ部112の厚さは、織物テープTP1の厚さt1に等しい。
【0044】
図4において両矢印Waで示されるのは、織物テープTP1の軸方向幅である。この軸方向幅Waは、織物テープTP1の幅W1と巻き付け角度θ1とにより定まる。軸方向幅Waは、W1/sinθ1で算出されうる。
図4において両矢印Wbで示されるのは、オーバーラップ部110の軸方向幅である。
図4において両矢印Wcで示されるのは、非オーバーラップ部112の軸方向幅である。
図4の実施形態では、以下の式が成立する。
・Wa =Wb+Wb+Wc
・Pt1=Wb+Wc
【0045】
このように形成された織物テープTP1において、巻き付け厚さM1は次式(1)により算出される。
M1 = t1×[(4×Wb+Wc)/Wa] (1)
【0046】
この巻き付け厚さM1は、織物テープTP1の層の平均厚さである。よって、織物テープTP1の重なり方が
図4とは相違する場合、その重なりの構成に対応して当該平均厚さが計算されうる。
【0047】
ピッチPt1を変えることで、幅Wb及び幅Wcが調整されうる。よって、ピッチPt1を変えることで、巻き付け厚さM1が調整されうる。
【0048】
図4は、巻回数が1の場合における、織物テープTP1の層108を示す。例えば、巻回数を2とすると、層108が重なり、巻き付け厚さM1は2倍になる。例えば、巻回数を3とすると、巻き付け厚さM1は3倍となる。このように、巻回数によっても、巻き付け厚さM1は調整されうる。
【0049】
[織物テープTP1の幅W1]
図3が示すように、織物テープTP1は幅W1を有する。幅W1は、外力が付与されていない自然状態で測定される。ただし、本実施形態では、張力F1が付与されても、幅W1は変化しない。
【0050】
[樹脂フィルムテープTP2の幅W2]
樹脂フィルムテープTP2は幅W2を有する。幅W2は、外力が付与されていない自然状態で測定される。
【0051】
[巻き付け後の樹脂フィルムテープTP2の幅W3]
張力F2により、樹脂フィルムテープTP2の幅は変化しうる。
図3が示すように、巻き付け後の樹脂フィルムテープTP2は、幅W3を有する。幅W3は、巻き付けられた後に測定される。幅W3は、巻き付け時における樹脂フィルムテープTP2の幅でもある。張力F2に起因して、幅W3は、幅W2よりも小さくなりうる。樹脂フィルムテープTP2の種類及び張力F2によっては、幅W3は幅W2と同じとなりうる。幅W3は、幅W2よりも小さいか、又は、幅W2と同じである。
【0052】
[張力F2]
上述の通り、樹脂フィルムテープTP2の巻き付けでは、張力F2が付与される。この張力F2は、樹脂フィルムテープTP2による締め付け圧を高める。
【0053】
[締め付け力]
本願では、「締め付け力」が定義される。樹脂フィルムテープTP2の締め付け力は、張力F2(N)を、前記幅W3(mm)で割ることによって得られる。締め付け力の単位は、N/mmである。
【0054】
[効果]
本実施形態の製造方法は、以下の効果を奏する。
【0055】
[樹脂抜き取り効果]
樹脂フィルムテープTP2により、中間巻回体は締め付けられている。硬化工程で加熱されると、マトリクス樹脂が流動化し、プリプレグからマトリクス樹脂が排出される。マトリクス樹脂は外部に排出され織物テープTP1に吸収される。織物テープTP1は繊維間の隙間を有しており、この隙間にマトリクス樹脂が入り込む。結果として、マトリクス樹脂がプリプレグから抜き取られる。
【0056】
この樹脂抜き取り効果により樹脂含有率が低下し、軽量化が達成されうる。
【0057】
この樹脂抜き取り効果に起因して、管状体の樹脂含有率を、巻回工程における樹脂含有率よりも下げることができる。巻回工程ではプリプレグの樹脂含有率を比較的高くすることができるので、巻回作業が容易となり、且つ、巻回作業の精度及び効率が高まる。
【0058】
[ボイド排出効果]
巻回工程において、空気がシート間(層間)に入り込む。この空気はボイドとなる。更に、プリプレグシート内にもボイドが存在する。ボイドは管状体の強度を低下させる。マトリクス樹脂が流動化すると、樹脂フィルムテープTP2により締め付けられている中間巻回体からボイドが排出される。ボイドの減少により、管状体の強度が高まる。
【0059】
[織物充填効果]
樹脂フィルムテープTP2と中間巻回体との間には織物テープTP1が介在している。織物テープTP1はマトリクス樹脂を吸収するが、その反面、樹脂フィルムテープTP2による締め付け圧を緩和する。織物テープTP1にはクッション性があり、このクッション性は、樹脂フィルムテープTP2の締め付け圧を緩和する。この緩和は、ボイド排出効果を減少させうる。しかし、織物テープTP1に樹脂が染み込むことで、織物テープTP1のクッション性が低下する。織物テープTP1の樹脂充填率が高まるほど、クッション性が低下する。クッション性の低下により、締め付け圧が緩和されにくくなり、ボイド排出効果が高まる。この効果が、織物充填効果とも称される。
【0060】
[残留応力]
高温時における樹脂フィルムテープTP2の残留締め付け力を高めることで、管状体の強度が高まることが判明した。巻き付け時の張力F2が高くされても、硬化工程での加熱時に残留締め付け力が低下すると、ボイド排出効果が低下することが分かった。80℃残留締め付け力及び130℃残留締め付け力を高めることで、ボイド排出効果が高まり、管状体の強度が向上する。
【0061】
これらの残留締め付け力を算出するために、80℃残留応力及び130℃残留応力が測定される。これらの残留応力は、次の方法で測定される。
図5(a)及び
図5(b)は、残留応力の測定に用いられる試験片120を示す。
図5(b)は、
図5(a)のA-A線に沿った断面図である。試験片120として、180mmの長さにカットされた樹脂フィルムテープTP2が用いられる。つかみ部として、試験片の両端部のぞれぞれの、長さ40mmの部分に、アルミタブ122を貼り付ける。アルミタブは、厚さ2mm、幅W4、長さ40mmのアルミ板であり、2枚のアルミタブ122を試験片120の第1端部の両面に貼り付け、当該第1端部をアルミタブ122で挟み込む。同様に、2枚のアルミタブ122を試験片120の第2端部に貼り付け、当該第2端部をアルミタブ122で挟み込む。引っ張られる部分の長さは100mmである。試験片の幅W4は、樹脂フィルムテープTP2の製品の幅であり、上述の幅W2と同じである。
【0062】
測定には、引張試験機(島津製作所社製の「AG-IS 500N(恒温試験装置付き)」)が用いられる。試験片120の両端部のアルミタブを治具でつかみ、50mm/minの変位速度で試験片120を引き延ばす。張力がその実施例における張力F2(N)になった時点で変位を停止し、そのまま3分間放置したのち、当該実施例の硬化工程における加熱条件を再現する。この加熱条件での加熱中において、80℃の保持時間の終了時刻における荷重が、80℃残留応力である。また、130℃の保持時間の終了時刻における荷重が、130℃残留応力である。実際の加熱条件で測定することで、硬化工程における実際の残留応力に対応する値が測定されうる。
【0063】
例えば、後述される実施例の加熱条件は、次の通りである。30分かけて室温から80℃まで昇温させた後、80℃を30分保持し、続いて30分かけて130℃まで昇温させ、130℃で2時間保持し、その後室温まで降温させる。したがって、この実施例における残留応力の測定でも、この加熱条件が採用される。すなわち、張力が実施例における張力F2(N)になった時点で上記変位を停止し、そのまま3分間放置したのち、加熱を開始して、30分で80℃まで昇温させる。次に、80℃を30分保持した後、30分で130℃まで昇温させる。次に、130℃を120分保持した後、加熱を停止して室温まで降温させる。80℃の保持時間の終了時刻における荷重が、80℃残留応力である。この場合、80℃とされてから30分経過した時点における荷重が、80℃残留応力である。130℃の保持時間の終了時刻における荷重が、130℃残留応力である。この場合、130℃とされてから120分が経過した時点における荷重が、130℃残留応力である。なお、室温は、20℃とされうる。
【0064】
このように、硬化工程の温度条件が80℃での保持時間を含む場合、その保持時間が丁度終了した時刻での残留応力が、80℃残留応力とされる。加熱条件が80℃での保持時間を含まず、80℃を通過するだけの場合、最初に80℃となった時刻での残留応力が、80℃残留応力とされる。加熱条件が130℃での保持時間を含む場合、その保持時間が丁度終了した時刻での残留応力が、130℃残留応力とされる。加熱条件が130℃での保持時間を含まず、130℃を通過するだけの場合、最初に130℃となった時刻での残留応力が、130℃残留応力とされる。
【0065】
[残留締め付け力]
残留応力(N)を上記幅W3(mm)で割った値が、残留締め付け力と定義される。残留締め付け力の単位は、N/mmである。80℃残留締め付け力は、80℃残留応力を幅W3で割った値である。130℃残留締め付け力は、130℃残留応力を幅W3で割った値である。
【0066】
[伸び率]
樹脂フィルムテープTP2の伸び率を大きくすることで、皺等の巻き付け不良が抑制されることが分かった。螺旋状に巻かれるとき、伸び率が小さいと、弛みや皺などが生じやすい。管状体がテーパーを有する場合は、なおさらである。伸び率を高めることで、この樹脂フィルムテープTP2の皺等が抑制されうる。皺等が抑制されることで、管状体の外観不良が抑制され、管状体の強度が高まる。
【0067】
伸び率は、残留応力の測定と同じ試験片及び装置を用いて測定される。残留応力の測定と同じく、前記試験片120を用いて測定がなされる(
図5(a)及び
図5(b)参照)。試験片120の両端部のアルミタブを治具でつかみ、50mm/minの変位速度で試験片120を引き延ばす。張力がF2(N)になった時点で変位を停止する。ここまでは、残留応力の測定と同じである。この変位量に基づき、伸び率が算出される。変位量がXmmとすると、伸び率(%)は、[(100+X)/100]×100で算出される。このように、張力F2で伸び率を測定することで、実際の伸び率が制度よく反映される。
【0068】
管状体の強度及び軽量化の観点から、樹脂フィルムテープの80℃残留締め付け力は、0.4(N/mm)以上が好ましく、0.5(N/mm)以上がより好ましく、0.6(N/mm)以上がより好ましく、0.7(N/mm)以上がより好ましい。樹脂フィルムテープの強度を考慮すると、樹脂フィルムテープの80℃残留締め付け力は、10(N/mm)以下が好ましく、8(N/mm)以下がより好ましく、6(N/mm)以下がより好ましく、4(N/mm)以下がより好ましい。
【0069】
管状体の強度及び軽量化の観点から、樹脂フィルムテープの130℃残留締め付け力は、0.3(N/mm)以上が好ましく、0.4(N/mm)以上がより好ましく、0.5(N/mm)以上がより好ましい。樹脂フィルムテープの強度を考慮すると、樹脂フィルムテープの130℃残留締め付け力は、8(N/mm)以下が好ましく、6(N/mm)以下がより好ましく、4(N/mm)以下がより好ましい。
【0070】
伸び率が小さいと、螺旋巻きされたときに皺等の巻き付け不良が生じやすい。この巻き付け不良は、管状体の表面に皺又は凹みを生じさせる。皺及び凹みは、外観を悪化させる。更に、皺及び凹みは、強度を低下させうる。また、巻き付け不良は、中間巻回体に付与される締め付け力を不均等としうる。これらの観点から、張力F2による樹脂フィルムテープの伸び率は、4%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、6%以上がより好ましい。伸び率が過大である場合、幅W3が過小となることがある。この観点から、張力F2による樹脂フィルムテープの伸び率は、50%以下が好ましく、45%以下がより好ましく、40%以下がより好ましい。
【0071】
樹脂の吸収量を増大させ、樹脂抜き取り効果を高める観点から、織物テープの巻き付け厚さM1は、50μm以上が好ましく、60μm以上がより好ましく、70μm以上がより好ましく、80μm以上がより好ましい。巻き付け厚さが過大であると、上述の織物充填効果が低下し、樹脂フィルムテープによる中間巻回体への締め付け圧が低下しうる。締め付け圧が低下すると、ボイド排出効果が低下し、強度が低下する。織物充填効果を高める観点から、巻き付け厚さM1は、400μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下がより好ましい。なお、管状体の軽量化の観点からは、樹脂の吸収量を最大化するのがよい。この場合、巻き付け厚さM1は、150μ以上400μ以下であってもよく、更には200μm以上400μm以下であってもよい。
【実施例】
【0072】
以下の織物テープ及び樹脂フィルムテープを用いて、実施例及び比較例の試験を行った。
[織物テープ]
・キンキテープ社製の商品名「エステルサテン」
・キンキテープ社製の商品名「エステルタフタ」
[樹脂フィルムテープ]
・信越フィルム社製の商品名「PET 38K」
・信越フィルム社製の開発品「PT-30SD2」
・信越フィルム社製の商品名「PT-30H」
・信越フィルム社製の商品名「PET 75K」
・信越フィルム社製の商品名「PET 25K」
・藤森工業社製の商品名「PET25」
・藤森工業社製の商品名「W16-15」
【0073】
「エステルタフタ」は、平織りの織物テープであり、「エステルサテン」は、朱子織の織物テープである。
【0074】
[実施例1]
図6は、実施例1で用いられるマンドレル126及びプリプレグシートs1かs6を示す。上述した管状体の製造工程に従って、実施例1に係る管状体を作成した。マンドレル126に離型剤を塗布した後、このマンドレル126に6枚のプリプレグs1~s6を巻き付け、中間巻回体100を得た。これら6枚のプリプレグの構成は、
図6で示された通りとされた。シートs1からs6のプリプレグ種類及びプリプレグ構成が、下記の表1で示されている。シートs1からs6は、いずれも東レ社製のプリプレグである。表1における「先端ply数」とは、先端Tpにおけるプリプレグの周回数を示している。表1における「繊維角度」は、シャフト軸線方向に対する炭素繊維の配向角度である。各プリプレグにおいてマトリクス樹脂はエポキシ樹脂である。各プリプレグの品番及び炭素繊維の種類(品番)は表1で示す通りである。
【0075】
次に、横手鉄工所製のラッピング機を用いて、第1ラッピング工程及び第2ラッピング工程が行われた。第1ラッピング工程は、前記中間巻回体100の外周面に織物テープTP1を巻き付ける工程である。第1ラッピング工程は、張力F1を付与しつつなされた。第2ラッピング工程は、第1ラッピング工程で得られた、巻回済みの織物テープTP1の外側に、樹脂フィルムテープTP2を巻き付ける工程である。第2ラッピング工程は、張力F2を付与しつつなされた。張力F1及び張力F2は、日本電産シンポ社製のロードセルにより測定された。
【0076】
第1ラッピング工程では、織物テープとして上記「エステルサテン」が用いられた。この織物テープの幅W1は10mmであり、厚さは80μmであった。第1ラッピング工程における張力F1は40Nとされた。巻き付け厚さM1が80μmとなるように、巻き付け角度θ1及びピッチPt1が調整された。
【0077】
第1ラッピング工程の後、第2ラッピング工程がなされた。第2ラッピング工程では、樹脂フィルムテープが巻き付けられた。この樹脂フィルムテープとして、上記「PET 38K」が用いられた。この樹脂フィルムテープの幅W2は20mmであり、厚さは38μmであった。巻き付け角度θ2はピッチpt2が2mmとなる角度とされ、ピッチPt2は2mmであった。張力F2は90Nとされた。この張力F2に起因して、巻き付け後の幅W3は巻き付け前の幅W2よりも小さくなり、12mmとなった。
【0078】
第2ラッピング工程の後に、硬化工程がなされた。この硬化工程では、30分かけて室温から80℃まで昇温させた後、80℃を30分保持し、続いて30分かけて130℃まで昇温させ、130℃で2時間保持し、その後室温まで降温させた。
【0079】
次に、マンドレル126が引き抜かれた。次に、樹脂フィルムテープ及び織物テープが除去され、実施例1に係る硬化管状体を得た。
【0080】
実施例1の仕様及び評価結果が、下記の表2に示される。
【0081】
[実施例2から23及び比較例1から3]
下記の表2から6に示される仕様の他は実施例1と同じにして、実施例2から23及び比較例1から3に係る管状体を得た。これらの仕様及び評価結果が、下記の表2から6に示される。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
[残留応力の測定、残留締め付け力の算出]
80℃残留応力及び130℃残留応力は、前述の方法により測定された。これらを巻き付け後の幅W3で割ることにより、80℃残留締め付け力及び130℃残留締め付け力を算出した。これらの値が上記表2から6に示されている。
【0089】
[伸び率の測定]
伸び率は、前述の方法により測定された。この伸び率が上記表2から6に示されている。
【0090】
[強度の測定]
SG式3点曲げ強度試験に準拠して、管状体の3点曲げ強度が測定された。これは、日本の製品安全協会が定める試験である。この3点曲げ強度試験に定められたB点の強度が測定された。B点は、先端Tpから525mmの地点である。比較例1の強度を100としたときの指数が、上記表2から6に示されている。
【0091】
[外観評価]
目視により、管状体の全体を確認した、上記表2から6では、表面に凹み又は皺が確認された場合が「×」と表記とされ、表面に凹み及び皺が確認されなかった場合が「○」と表記されている。
【0092】
[重量]
比較例1の重量を100としたときの指数が、上記表2から6に示されている。
【0093】
表2は、実施例1から6の仕様及び評価結果を示す。80℃残留締め付け力及び130℃残留締め付け力が大きい実施例は、強度が比較的高い傾向にある。伸び率が小さい実施例6は、外観評価が低い。伸び率が小さい実施例5は、強度が小さい。
【0094】
表3は、実施例7から10の仕様及び評価結果を示す。表3では、巻き付け厚さM1が変更されている。巻き付け厚さM1が500μmの実施例10では、織物充填効果が小さく、強度が低下している。
【0095】
表4は、実施例11から17の仕様及び評価結果を示す。表4では、巻き付け厚さM1が変更されており、且つ、樹脂フィルムテープの巻き付け量が変更されている。実施例11では、樹脂フィルムテープの巻き付けを2回行った。すなわち、実施例11では、樹脂フィルムテープを先端Tpから後端Btまで螺旋状に巻き付けた後、更にもう一度、樹脂フィルムテープを先端Tpから後端Btまで巻き付けた。このため実施例11には、「巻き量2倍」と記載されている。樹脂フィルムテープの巻き付けを重ねることで、締め付け圧が高まる。実施例12は「巻き量3倍」とされ、実施例13,15,17は「巻き量4倍」とされた。
【0096】
実施例11を実施例7と比較すると、実施例11では、樹脂フィルムテープの巻き付けを2重とすることで、強度が向上している。換言すれば、巻回数を2とすることで、強度が向上している。樹脂フィルムテープ巻き付けを3重とした実施例12では、更に強度が向上している。巻き付け厚さM1が200μmとされた実施例14では、軽量化が達成されているものの、強度が低下している。これは、巻き付け厚さM1が厚いことに起因して、樹脂抜き取り効果は高められたものの、織物充填効果が低下したためと考えられる。この実施例14に比較して、実施例15では、樹脂フィルムテープを4重巻きとすることで、強度が高められている。これは、重ねて巻き付けられた樹脂フィルムテープが、締め付け圧を高め、織物充填効果の低下を補ったためである。実施例16では、巻き付け厚さM1が400μmで、強度が大きく低下している。この実施例16に比較して、実施例17では、樹脂フィルムテープを4重巻きとすることで、強度が高められている。ここでも、重ねて巻き付けられた樹脂フィルムテープが、織物充填効果の低下を補っている。
【0097】
このように、巻き付け厚さM1を大きくすることで、樹脂抜き取り効果が高まり、軽量化が達成されうる。また、巻き付け厚さM1を大きくすると、織物充填効果が低下して強度が下がりうるが、樹脂フィルムテープの締め付け圧を高めることで、この強度低下が抑制されうる。軽量化を重視しつつ、強度も維持する観点から、樹脂フィルムテープTP2は複数回巻かれてもよい。生産効率を考慮すると、樹脂フィルムテープTP2は1重巻きが好ましい。軽量化と生産性とのバランスを考慮すると、樹脂フィルムテープTP2は、2重から4重巻きが好ましく、2重巻き又は3重巻きがより好ましく、2重巻きがより好ましい。
【0098】
表5は、実施例18から23の仕様及び評価結果を示す。表5では、PET25を用いて、伸び率が変更されており、80℃残留締め付け力及び130℃残留締め付け力も変更されている。これらの実施例でも、伸び率が低いと強度が低下する傾向が示されている。また、2つの残留締め付け力が低いと強度が低下する傾向が示されている。
【0099】
表6は、比較例1から3の仕様及び評価結果を示す。比較例1では織物テープが用いられておらず、重量が大きい。比較例2は、80℃残留締め付け力及び130℃残留締め付け力が小さく、強度が低い。比較例3は、伸び率が小さく、且つ、2つの残留締め付け力も小さい。この比較例3は、強度が低く、外観評価も悪い。
【0100】
上述した実施形態に関して、以下の付記を開示する。
[付記1]
マンドレルに、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂材料を巻回して中間巻回体を得る工程と、
前記中間巻回体の外周面に、張力F1を付与しつつ織物テープを巻き付ける第1ラッピング工程と、
前記織物テープの外側に、張力F2を付与しつつ樹脂フィルムテープを巻き付ける第2ラッピング工程と、
前記織物テープ及び前記樹脂フィルムテープが巻き付けられた前記中間巻回体を加熱して前記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程と、
前記硬化工程の後に、前記マンドレルの引き抜きと、前記織物テープ及び樹脂フィルムテープの除去とを行って硬化管状体を得る工程とを含み、
前記硬化工程における前記樹脂フィルムテープの80℃残留締め付け力が0.4N/mm以上である管状体の製造方法。
[付記2]
前記硬化工程における前記樹脂フィルムテープの130℃残留締め付け力が0.3N/mm以上である付記1に記載の管状体の製造方法。
[付記3]
前記第2ラッピング工程における前記樹脂フィルムテープの伸び率が4%以上である付記1又は2に記載の管状体の製造方法。
[付記4]
前記第1ラッピング工程における前記織物テープの巻き付け厚さが400μm以下である付記1から3のいずれか1項に記載の管状体の製造方法。
【符号の説明】
【0101】
2・・・ゴルフクラブ
4・・・ヘッド
6・・・ゴルフクラブシャフト(管状体)
8・・・グリップ
100・・・中間巻回体
108・・・織物テープの層
110・・・オーバーラップ部
112・・・非オーバーラップ部
TP1・・・織物テープ
TP2・・・樹脂フィルムテープ