(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】ヒートシンク、基板モジュール、伝送装置及びヒートシンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20230307BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H05K7/20 D
(21)【出願番号】P 2019055209
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 勇治
(72)【発明者】
【氏名】江藤 満
(72)【発明者】
【氏名】本郷 知之
(72)【発明者】
【氏名】松本 崚
(72)【発明者】
【氏名】太田 和彦
【審査官】高橋 優斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-203385(JP,A)
【文献】特開2015-050262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
前記ベースプレートに固定されたフィンと、
を有し、
前記ベースプレートには、前記ベースプレートの表面に平行な第1の方向に延びる貫通孔が形成されており、
前記フィンは、前記貫通孔に挿入された突起を有し、
前記ベースプレートの表面に平行で、前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記突起の両端面が、前記ベースプレートの厚さ方向に平行な第3の方向の全体にわたって前記貫通孔の内壁面に接触しており、
前記貫通孔は、前記第1の方向及び前記第2の方向に四角格子状に並んで複数形成されており、
前記フィンは、前記第2の方向に並んで複数設けられており、
複数の前記貫通孔を、最外周に配置された貫通孔を含み、前記第1の方向又は前記第2の方向で隣り合う複数の貫通孔から構成される第1のグループと、中心に配置された貫通孔を含み、前記第1の方向又は前記第2の方向で隣り合う複数の貫通孔から構成される第2のグループとに分けたとき、
前記第2の方向で、前記ベースプレートの表面の単位面積当たりの質量が、前記第2のグループに属する貫通孔間の部分で、前記第1のグループに属する貫通孔間の部分よりも小さいことを特徴とす
るヒートシンク。
【請求項2】
前記ベースプレートの前記四角格子を構成する4個の貫通孔の内側に、前記貫通孔より開口面積が小さい第2の貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
ベースプレートと、
前記ベースプレートに固定されたフィンと、
を有し、
前記ベースプレートには、前記ベースプレートの表面に平行な第1の方向に延びる貫通孔が形成されており、
前記フィンは、前記貫通孔に挿入された突起を有し、
前記ベースプレートの表面に平行で、前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記突起の両端面が、前記ベースプレートの厚さ方向に平行な第3の方向の全体にわたって前記貫通孔の内壁面に接触しており、
前記貫通孔は、前記第1の方向及び前記第2の方向に四角格子状に並んで複数形成されており、
前記フィンは、前記第2の方向に並んで複数設けられており、
前記ベースプレートの前記四角格子を構成する4個の貫通孔の内側に、前記貫通孔より開口面積が小さい第2の貫通孔が形成されていることを特徴とす
るヒートシンク。
【請求項4】
基板と、
前記基板上に設けられた発熱部品と、
前記発熱部品上に設けられた、請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のヒートシンクと、
を有することを特徴とする基板モジュール。
【請求項5】
請求項
4に記載の基板モジュールと、
前記基板モジュールを収納するハウジングと、
を有することを特徴とする伝送装置。
【請求項6】
表面に平行な第1の方向に延びる貫通孔を有するベースプレートを準備する工程と、
前記貫通孔に挿入される突起を有するフィンを準備する工程と、
前記突起を前記貫通孔に挿入して前記フィンと前記ベースプレートとの仮組みを行う工程と、
前記ベースプレートの表面に平行で、前記第1の方向に直交する第2の方向に、前記ベースプレートを圧縮することで、前記突起の両端面を、前記ベースプレートの厚さ方向に平行な第3の方向の全体にわたって前記貫通孔の内壁面に接触させる工程と、
を有することを特徴とするヒートシンクの製造方法。
【請求項7】
前記貫通孔は、前記第1の方向及び前記第2の方向に四角格子状に並んで複数形成し、
前記フィンを、前記第2の方向に並んで複数設けることを特徴とする請求項
6に記載のヒートシンクの製造方法。
【請求項8】
複数の前記貫通孔を、最外周に配置された貫通孔を含み、前記第1の方向又は前記第2の方向で隣り合う複数の貫通孔から構成される第1のグループと、中心に配置された貫通孔を含み、前記第1の方向又は前記第2の方向で隣り合う複数の貫通孔から構成される第2のグループとに分けたとき、
前記第2の方向で、前記第2のグループに属する貫通孔の寸法を、前記第1のグループに属する貫通孔の寸法よりも大きくすることを特徴とする請求項
7に記載のヒートシンクの製造方法。
【請求項9】
前記ベースプレートとして、前記四角格子を構成する4個の貫通孔の内側に、前記貫通孔より開口面積が小さい第2の貫通孔を有するベースプレートを準備することを特徴とする請求項
7又は
8に記載のヒートシンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンク、基板モジュール、伝送装置及びヒートシンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板モジュールが搭載された伝送装置が知られている。基板モジュールには、回路基板と、回路基板に実装された発熱部品と、発熱部品に取り付けられたヒートシンクとが含まれる。ヒートシンクは、発熱部品で発生した熱の放出に用いられる。
【0003】
放熱性の向上を目的として種々のヒートシンクが提案されている。
【0004】
しかしながら、製造しやすい構造にて十分な放熱性を得ることは困難である。例えば、ベースプレートに形成した溝に、かしめ接合やはんだ接合によりフィンを固定したヒートシンクが提案されているが、十分な放熱性を得ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-237555号公報
【文献】特開2011-86722号公報
【文献】特開平9-321186号公報
【文献】特開2005-203385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、放熱性をより向上することができるヒートシンク、基板モジュール、伝送装置及びヒートシンクの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態によれば、ベースプレートと、前記ベースプレートに固定されたフィンと、を有し、前記ベースプレートには、前記ベースプレートの表面に平行な第1の方向に延びる貫通孔が形成されており、前記フィンは、前記貫通孔に挿入された突起を有し、前記ベースプレートの表面に平行で、前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記突起の両端面が、前記ベースプレートの厚さ方向に平行な第3の方向の全体にわたって前記貫通孔の内壁面に接触しており、前記貫通孔は、前記第1の方向及び前記第2の方向に四角格子状に並んで複数形成されており、前記フィンは、前記第2の方向に並んで複数設けられており、複数の前記貫通孔を、最外周に配置された貫通孔を含み、前記第1の方向又は前記第2の方向で隣り合う複数の貫通孔から構成される第1のグループと、中心に配置された貫通孔を含み、前記第1の方向又は前記第2の方向で隣り合う複数の貫通孔から構成される第2のグループとに分けたとき、前記第2の方向で、前記ベースプレートの表面の単位面積当たりの質量が、前記第2のグループに属する貫通孔間の部分で、前記第1のグループに属する貫通孔間の部分よりも小さいヒートシンクが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、放熱性をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】参考例に係るヒートシンクの一部を示す断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係るヒートシンクを示す上面図である。
【
図3】第1の実施形態に係るヒートシンクを示す下面図である。
【
図4】第1の実施形態に係るヒートシンクを示す断面図(その1)である。
【
図5】第1の実施形態に係るヒートシンクを示す断面図(その2)である。
【
図7】第1の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す図(その1)である。
【
図8】第1の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す図(その2)である。
【
図9】第1の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す図(その3)である。
【
図10】第1の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す図(その4)である。
【
図11】第1の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す図(その5)である。
【
図12】第1の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す図(その6)である。
【
図13】第1の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す図(その7)である。
【
図14】第1の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す図(その8)である。
【
図15】第1の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す図(その9)である。
【
図16】第1の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す図(その10)である。
【
図17】第1の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す図(その11)である。
【
図18】第1の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す図(その12)である。
【
図19】第1の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す図(その13)である。
【
図20】第1の実施形態において、圧縮荷重の印加時にベースプレートに作用する応力の分布の概略を示す下面図である。
【
図21】第1の実施形態において、圧縮荷重の印加時にベースプレートに作用する応力の分布の概略を示す断面図である。
【
図22】ベースプレートの反りを示す断面図である。
【
図23】第2の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す図(その1)である。
【
図24】第2の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す図(その2)である。
【
図25】第2の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す図(その3)である。
【
図26】第2の実施形態において、圧縮荷重の印加時にベースプレートに局所的に作用する応力の分布の概略を示す下面図である。
【
図27】第2の実施形態において、貫通孔の間の部位の状態を示す断面図である。
【
図28】第3の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す図(その1)である。
【
図29】第3の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す図(その2)である。
【
図30】第3の実施形態において、圧縮荷重の印加時にベースプレートに局所的に作用する応力の分布の概略を示す下面図である。
【
図31】第3の実施形態において、貫通孔の間の部位の状態を示す断面図である。
【
図35】第4の実施形態に係る基板モジュールを示す断面図である。
【
図36】第5の実施形態に係る伝送装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願発明者らは、ベースプレートに形成した溝に、かしめ接合によりフィンを固定したヒートシンクにおいて、十分な放熱性を得ることが困難な理由を明らかにすべく鋭意検討を行った。この結果、下記の事項が明らかになった。
図1は、参考例に係るヒートシンクの一部を示す断面図である。
【0011】
参考例に係るヒートシンク900では、
図1に示すように、ベースプレート910に溝911が形成され、かしめ接合により溝911内にフィン920の基部925から突出した突起921が固定されている。ヒートシンク900を詳細に観察すると、突起921の側面922と、溝911の内壁面912との間に隙間901が存在する。かしめ接合により溝911内に突起921を固定する場合、隙間901の発生は避けることができない。そして、隙間901により、突起921とベースプレート910との間の熱の伝達が阻害されてしまう。
【0012】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。また、本開示においては、X1-X2方向、Y1-Y2方向、Z1-Z2方向を相互に直交する方向とする。また、X1-X2方向及びY1-Y2方向を含む面をXY面と記載し、Y1-Y2方向及びZ1-Z2方向を含む面をYZ面と記載し、Z1-Z2方向及びX1-X2方向を含む面をZX面と記載する。なお、便宜上、Z1-Z2方向を上下方向とする。また、本開示での寸法の一致とは、厳密に、製造上のばらつきに起因して不一致となったものを排除するものではなく、製造上のばらつきで寸法にばらつきが生じている場合でも、寸法が一致しているものとみなすことができる。
【0013】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態はヒートシンクに関する。
図2は、第1の実施形態に係るヒートシンクを示す上面図である。
図3は、第1の実施形態に係るヒートシンクを示す下面図である。
図4及び
図5は、第1の実施形態に係るヒートシンクを示す断面図である。
図6は、
図5の一部を拡大して示す断面図である。
図4は、
図2及び
図3中のIa-Ib線に沿った断面図に相当し、
図5は、
図2及び
図3中のIIa-IIb線に沿った断面図に相当する。
【0014】
第1の実施形態に係るヒートシンク100は、
図2~
図5に示すように、ベースプレート110と、ベースプレート110に固定された複数のフィン120とを有する。ベースプレート110には、ベースプレート110の表面に平行なX1-X2方向に延びる複数の貫通孔111が形成されている。各フィン120は、基部125と、基部125から突出し、貫通孔111に挿入された突起121とを有する。
【0015】
図6に示すように、ベースプレート110の表面に平行で、X1-X2方向に直交するY1-Y2方向において、突起121の両端面122が、ベースプレート110の厚さ方向に平行なZ1-Z2方向の全体にわたって貫通孔111の内壁面112に接触している。
【0016】
第1の実施形態に係るヒートシンク100では、Y1-Y2方向において、突起121の両端面122がZ1-Z2方向の全体にわたって貫通孔111の内壁面112に接触している。このため、参考例に係るヒートシンク900とは異なり、突起121とベースプレート910との間に優れた熱伝達性を得ることができる。従って、ベースプレート110のZ2側の面を発熱部品に接触させることで、発熱部品で発生した熱をフィン120に高効率で伝達することができ、優れた放熱性を得ることができる。
【0017】
ベースプレート110及びフィン120の材料は限定されない。ベースプレート110及びフィン120の材料には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅又は銅合金等の金属材料を用いることができる。また、例えば、ベースプレート110はフィン120より若干厚い。
【0018】
次に、第1の実施形態に係るヒートシンク100の製造方法について説明する。
図7~
図19は、第1の実施形態に係るヒートシンク100の製造方法を示す図である。
【0019】
先ず、
図7に示すように、ベースプレート110及びフィン120を切り出す金属板105を準備する。金属板105は、例えばアルミニウム板、アルミニウム合金板、銅板又は銅合金板である。金属板105の厚さtは、フィン120の厚さと等しい。
図7は、金属板105を示す斜視図である。
【0020】
次いで、
図8に示すように、金属板105から、複数のベースプレート110及び複数のフィン120を切り出す。ベースプレート110及びフィン120は、例えばレーザ加工又はプレス加工等により切り出すことができる。
図8は、金属板105を示す上面図である。
【0021】
図9に示すように、ベースプレート110には、X1-X2方向及びY1-Y2方向に四角格子状に並ぶ複数の貫通孔111を形成する。また、
図10に示すように、フィン120には、基部125と、基部125からZ1-Z2方向に突出する複数の突起121とを形成する。突起121の数は、X1-X2方向における貫通孔111の数と同数とする。例えば、Z1-Z2方向からみたときの貫通孔111の形状はX1-X2方向に延びる略矩形である。X1-X2方向の両端に円弧となる部分を設けてもよい。例えば、Z1-Z2方向からみたときの突起121の形状は略矩形である。貫通孔111のX1-X2方向の寸法L1は、突起121のX1-X2方向の寸法L2よりも大きくする。貫通孔111のY1-Y2方向の寸法W1は、フィン120の厚さtよりも大きくする。突起121の突出量は、ベースプレート110の厚さtと等しくする。
図9は、第1の実施形態において、金属板105から切り出したベースプレート110を示す上面図である。
図10は、金属板105から切り出したフィン120を示す正面図である。
【0022】
その後、
図11及び
図12に示すように、複数のフィン120の各突起121をベースプレート110の各貫通孔111に挿入して、仮組みを行う。
図11及び
図12は、仮組みを示す断面図である。
図11は、
図2及び
図3中のIa-Ib線に沿った断面図に相当し、
図12は、
図2及び
図3中のIIa-IIb線に沿った断面図に相当する。
【0023】
貫通孔111のX1-X2方向の寸法L1が、突起121のX1-X2方向の寸法L2よりも大きく、貫通孔111のY1-Y2方向の寸法W1が、フィン120の厚さtよりも大きい。このため、
図13~
図16に示すように、突起121と貫通孔111との間には隙間が存在する。
図13は、仮組み後のベースプレート110及びフィン120を示す上面図である。
図14は、第1の実施形態において、仮組み後のベースプレート110及びフィン120を示す下面図である。
図15及び
図16は、仮組み後のベースプレート110及びフィン120を示す断面図である。
図15は、
図2及び
図3中のIa-Ib線に沿った断面図に相当し、
図16は、
図2及び
図3中のIIa-IIb線に沿った断面図に相当する。
【0024】
続いて、仮組みした状態を維持しながら、
図17~
図19に示すように、Y1-Y2方向からベースプレート110に圧縮荷重107を印加する。この結果、Y1-Y2方向で貫通孔111が潰れ、Y1-Y2方向において、突起121の両端面122が、Z1-Z2方向の全体にわたって貫通孔111の内壁面112に接触して密着し(
図6参照)、フィン120がベースプレート110に固定される。
図17は、固定後のベースプレート110及びフィン120を示す上面図である。
図18は、固定後のベースプレート110及びフィン120を示す下面図である。
図19は、固定後のベースプレート110及びフィン120を示す断面図である。
図19は、
図2及び
図3中のIIa-IIb線に沿った断面図に相当する。
【0025】
このようにして、第1の実施形態に係るヒートシンク100を製造することができる。
【0026】
この方法によれば、ベースプレート110とフィン120との間に強固な密着性を得ることができる。従って、押出成形や冷間鍛造で得られる伝熱性と同等の伝熱性を簡易な方法で得ることができる。また、突起121を貫通孔111内で固定できれば、フィン120の平面形状の設計の自由度が高い。従って、表面積をより広げる等して、放熱性がより優れたヒートシンク100を実現することも可能である。
【0027】
また、ベースプレート110の貫通孔111をプレス加工により形成した場合、貫通孔111の端部にテーパ面が形成されることがあるが、この製造方法によれば、圧縮荷重107の印加により、テーパ面も突起121の端面122に密着させることができる。
【0028】
なお、ベースプレート110とフィン120とを、互いに異なる金属板から準備してもよい。
【0029】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、圧縮荷重107の印加前のベースプレート110の形状の点で第1の実施形態と相違する。
図20及び
図21は、第1の実施形態において、圧縮荷重107の印加時にベースプレート110に作用する応力の分布の概略を示す図である。
図20は下面図であり、
図21は断面図である。
図20及び
図21中の3種の破線の円は応力の分布を模式的に表しており、太い円ほど応力が大きいことを示す。
【0030】
図20及び
図21に示すように、圧縮荷重107をベースプレート110に印加すると、X1-X2方向の中央ほど、また、Y1-Y2方向の中央ほど、大きな応力が作用する。従って、
図20及び
図21に示すように、Y1-Y2方向の中央ほど早期に貫通孔111が潰れ、Y1-Y2方向の外側ほど貫通孔111の潰れが遅くなる。このため、Y1-Y2方向の両端の貫通孔111が潰れる時には、Y1-Y2方向の中央に過剰な応力が作用しており、ベースプレート110がY1-Y2方向に圧縮変形するだけでなく、
図22に示すように、ベースプレート110がZ1-Z2方向に反ることがある。
図22は、ベースプレート110の反りを示す断面図である。
【0031】
ベースプレート110がZ1-Z2方向に反ると、ベースプレート110のZ2側の面と発熱部品との間に隙間が生じやすくなる。通常、ベースプレート110と発熱部品との間にはサーマルインタフェースマテリアル(thermal interface material:TIM)が設けられるが、TIMが設けられても、隙間が生じることで熱伝導率が低下してしまう。
【0032】
そこで、第2の実施形態では、圧縮荷重107の印加前のベースプレート110の形状を第1の実施形態とは異ならせ、ベースプレート110のZ1-Z2方向の反りを抑制する。
図23~
図25は、第2の実施形態に係るヒートシンク200の製造方法を示す図である。
【0033】
先ず、第1の実施形態と同様に、金属板105を準備し、金属板105から、複数のベースプレート110及び複数のフィン120を切り出す。このとき、フィン120の形状は、第1の実施形態と同様のものとすることができる。
【0034】
ベースプレート110については、
図23に示すように、Y1-Y2方向の寸法が異なる2種類の貫通孔111を形成する。一方のグループは、Z1-Z2方向からみたときに四角格子状に並ぶ複数の貫通孔111を、最外周に配置された貫通孔111を含み、X1-X2方向又はY1-Y2方向で隣り合う複数の貫通孔111から構成される外側のグループ111Pである。他方のグループは、中心に配置された貫通孔111を含み、X1-X2方向又はY1-Y2方向で隣り合う複数の貫通孔111から構成される内側のグループ111Cである。そして、内側のグループ111Cに属する貫通孔111のY1-Y2方向の寸法W1Cを外側のグループ111Pに属する貫通孔111のY1-Y2方向の寸法W1Pよりも大きくする。寸法W1C及び寸法W1Pは、フィン120の厚さtよりも大きくする。
図23は、第2の実施形態において、金属板105から切り出したベースプレート110を示す上面図である。外側のグループ111Pに属する貫通孔111の数、及び内側のグループ111Cに属する貫通孔111の数は限定されない。また、外側のグループ111Pと内側のグループ111Cとの境界の位置は特に限定されない。ただし、外側のグループ111Pと内側のグループ111Cとの境界は、X1-X2方向に延びる2辺とY1-Y2方向に延びる2辺とからなる矩形であることが好ましい。
【0035】
その後、複数のフィン120の各突起121をベースプレート110の各貫通孔111に挿入して、仮組みを行う。貫通孔111のX1-X2方向の寸法L1が、突起121のX1-X2方向の寸法L2よりも大きく、貫通孔111のY1-Y2方向の寸法W1C及び寸法W1Pが、フィン120の厚さtよりも大きい。このため、
図24に示すように、突起121と貫通孔111との間には隙間が存在する。
図24は、第2の実施形態において、仮組み後のベースプレート110及びフィン120を示す下面図である。
【0036】
続いて、仮組みした状態を保持しながら、
図25に示すように、Y1-Y2方向からベースプレート110に圧縮荷重107を印加する。この結果、Y1-Y2方向で貫通孔111が潰れ、Y1-Y2方向において、突起121の両端面122が、Z1-Z2方向の全体にわたって貫通孔111の内壁面112に接触して密着し、フィン120がベースプレート110に固定される。
図25は、固定後のベースプレート110及びフィン120を示す下面図である。
【0037】
このようにして、第2の実施形態に係るヒートシンク200を製造することができる。
【0038】
第2の実施形態では、内側のグループ111Cに属する貫通孔111のY1-Y2方向の寸法W1Cが、外側のグループ111Pに属する貫通孔111のY1-Y2方向の寸法W1Pよりも大きい。従って、X1-X2方向の中央ほど、また、Y1-Y2方向の中央ほど、大きな応力が作用しても、内側のグループ111Cに属する貫通孔111が潰れるタイミングと、外側のグループ111Pに属する貫通孔111が潰れるタイミングとの間のずれを小さくすることができる。このため、ベースプレート110のZ1-Z2方向の反りを抑制することができる。
【0039】
また、
図23に示すように、Y1-Y2方向で、内側のグループ111Cに属する貫通孔111間の距離が外側のグループ111Pに属する貫通孔111間の距離よりも小さい。従って、ヒートシンク200においては、Y1-Y2方向で、ベースプレート110のXY面の単位面積当たりの質量が、内側のグループ111Cに属する貫通孔111間の部分で、外側のグループ111Pに属する貫通孔111間の部分よりも小さくなっている。また、ヒートシンク200においては、Y1-Y2方向で、ベースプレート110が、内側のグループ111Cに属する貫通孔111間の部分で、外側のグループ111Pに属する貫通孔111間の部分よりも薄くなっている。ヒートシンク200は、このような単位面積当たりの質量や厚さの分布の点でもヒートシンク100と相違する。
【0040】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、圧縮荷重107の印加前のベースプレート110の形状の点で第2の実施形態と相違する。
図26は、第2の実施形態において、圧縮荷重107の印加時にベースプレート110に局所的に作用する応力の分布の概略を示す下面図である。
図26中の3種の破線の楕円は応力の分布を模式的に表しており、太い楕円ほど応力が大きいことを示す。
【0041】
図26に示すように、圧縮荷重107をベースプレート110に印加すると、貫通孔111はY1-Y2方向に潰れるだけでなく、X1-X2方向に延びる。このため、ベースプレート110の、X1-X2方向で隣り合う貫通孔111の間の部位115には、圧縮荷重107からの圧縮応力108だけでなく、X1-X2方向の圧縮応力109が作用する。この結果、
図27に示すように、部位115はZ1-Z2方向に拡大する。このような部位115の拡大が生じると、それ自身が発熱部品との間の隙間の形成を引き起こすことがあり、また、
図22に示すようなベースプレート110の反りがより生じやすくなることがある。
図27は、第2の実施形態において、部位115の状態を示す断面図である。
図27は、
図26中のIIIa-IIIb線に沿った断面図に相当する。
【0042】
そこで、第3の実施形態では、圧縮荷重107の印加前のベースプレート110の形状を第2の実施形態とは異ならせ、部位115の拡大を抑制する。
図28~
図29は、第3の実施形態に係るヒートシンク300の製造方法を示す図である。
【0043】
先ず、第2の実施形態と同様に、金属板105を準備し、金属板105から、複数のベースプレート110及び複数のフィン120を切り出す。このとき、フィン120の形状は、第1の実施形態と同様のものとすることができる。
【0044】
ベースプレート110については、第2の実施形態と同様に、Y1-Y2方向の寸法が異なる2種類の貫通孔111を形成する。更に、
図28に示すように、四角格子を構成する4個の貫通孔111の略中央に、例えば平面形状が円形の貫通孔113を形成する。貫通孔113の開口面積は、外側のグループ111Pに属する貫通孔111の開口面積よりも小さくする。
図28は、第3の実施形態において、金属板105から切り出したベースプレート110を示す上面図である。
【0045】
その後、複数のフィン120の各突起121をベースプレート110の各貫通孔111に挿入して、仮組みを行う。貫通孔111のX1-X2方向の寸法L1が、突起121のX1-X2方向の寸法L2よりも大きく、貫通孔111のY1-Y2方向の寸法W1C及び寸法W1Pが、フィン120の厚さtよりも大きい。このため、突起121と貫通孔111との間には隙間が存在する(
図24参照)。
【0046】
続いて、仮組みした状態を保持しながら、
図29に示すように、Y1-Y2方向からベースプレート110に圧縮荷重107を印加する。この結果、Y1-Y2方向で貫通孔111が潰れ、Y1-Y2方向において、突起121の両端面122が、Z1-Z2方向の全体にわたって貫通孔111の内壁面112に接触して密着し、フィン120がベースプレート110に固定される。
図29は、固定後のベースプレート110及びフィン120を示す下面図である。
【0047】
このようにして、第3の実施形態に係るヒートシンク300を製造することができる。
【0048】
第3の実施形態では、四角格子を構成する4個の貫通孔111の略中央に貫通孔113が形成されている。従って、
図30に示すように、貫通孔111のX1-X2方向への延伸に伴う応力は貫通孔113に向かい、貫通孔113が圧縮されることで、部位115に作用する圧縮応力109が緩和される。このため、
図31に示すように、部位115の拡大を抑制することができる。
図30は、第3の実施形態において、圧縮荷重107の印加時にベースプレート110に局所的に作用する応力の分布の概略を示す下面図である。
図31は、第3の実施形態において、部位115の状態を示す断面図である。
図31は、
図30中のIIIa-IIIb線に沿った断面図に相当する。
【0049】
また、
図29に示すように、ヒートシンク300においては、四角格子を構成する4個の貫通孔111の略中央に貫通孔113が形成されている。ヒートシンク300は、貫通孔113が形成されている点でヒートシンク200と相違する。
【0050】
第1の実施形態において、第3の実施形態のように、ベースプレート110に貫通孔113を形成してもよい。
【0051】
フィン120の形状は限定されない。
図32は、フィン120の変形例を示す側面図である。
図33は、フィン120の変形例を示す正面図である。
図34は、フィン120の変形例を示す斜視図である。
図32~
図34に示すように、フィン120の平面形状が、台形と長方形とを組み合わせた六角形となっていてもよい。
【0052】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、ヒートシンクを含む基板モジュールに関する。
図35は、第4の実施形態に係る基板モジュールを示す断面図である。
【0053】
第4の実施形態に係る基板モジュール400は、
図35に示すように、基板410と、基板410上に設けられた発熱部品420と、発熱部品420上に設けられたヒートシンク430とを有する。基板410は、例えば回路基板である。発熱部品420は、例えば集積回路(integrated circuit:IC)チップ等の半導体チップである。ヒートシンク430は、ヒートシンク100、200又は300であり、ベースプレート110とフィン120とを有する。
【0054】
基板モジュール400では、発熱部品420にて発生した熱はヒートシンク430を介して外方に放出される。ヒートシンク430がヒートシンク100、200又は300であるため、高効率で熱を放出することができる。すなわち、優れた放熱性を得ることができる。
【0055】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は、基板モジュールを含む伝送装置に関する。
図36は、第5の実施形態に係る伝送装置を示す斜視図である。
【0056】
第5の実施形態に係る伝送装置500は、
図36に示すように、ハウジング510と、ハウジング510に収納された複数の基板モジュール520とを有する。複数の基板モジュール520のうち、少なくとも一つは基板モジュール400であり、この基板モジュール400に含まれる発熱部品420は伝送装置500の外部との間で信号の送受信の処理を行う機能を備える。
【0057】
伝送装置500では、信号の送受信の処理を行う機能を備える発熱部品420が多大な熱を発することがあるが、基板モジュール400の放熱性が優れているため、伝送装置500の放熱性を向上することができる。従って、優れた信頼性を得ることができる。
【0058】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0059】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0060】
(付記1)
ベースプレートと、
前記ベースプレートに固定されたフィンと、
を有し、
前記ベースプレートには、前記ベースプレートの表面に平行な第1の方向に延びる貫通孔が形成されており、
前記フィンは、前記貫通孔に挿入された突起を有し、
前記ベースプレートの表面に平行で、前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記突起の両端面が、前記ベースプレートの厚さ方向に平行な第3の方向の全体にわたって前記貫通孔の内壁面に接触していることを特徴とするヒートシンク。
(付記2)
前記貫通孔は、前記第1の方向及び前記第2の方向に四角格子状に並んで複数形成されており、
前記フィンは、前記第2の方向に並んで複数設けられていることを特徴とする付記1に記載のヒートシンク。
(付記3)
複数の前記貫通孔を、最外周に配置された貫通孔を含み、前記第1の方向又は前記第2の方向で隣り合う複数の貫通孔から構成される第1のグループと、中心に配置された貫通孔を含み、前記第1の方向又は前記第2の方向で隣り合う複数の貫通孔から構成される第2のグループとに分けたとき、
前記第2の方向で、前記ベースプレートの表面の単位面積当たりの質量が、前記第2のグループに属する貫通孔間の部分で、前記第1のグループに属する貫通孔間の部分よりも小さいことを特徴とする付記2に記載のヒートシンク。
(付記4)
複数の前記貫通孔を、最外周に配置された貫通孔を含み、前記第1の方向又は前記第2の方向で隣り合う複数の貫通孔から構成される第1のグループと、中心に配置された貫通孔を含み、前記第1の方向又は前記第2の方向で隣り合う複数の貫通孔から構成される第2のグループとに分けたとき、
前記第2の方向で、前記ベースプレートが、前記第2のグループに属する貫通孔間の部分で、前記第1のグループに属する貫通孔間の部分よりも薄いことを特徴とする付記2に記載のヒートシンク。
(付記5)
前記ベースプレートの前記四角格子を構成する4個の貫通孔の内側に、前記貫通孔より開口面積が小さい第2の貫通孔が形成されていることを特徴とする付記2乃至4のいずれか1項に記載のヒートシンク。
(付記6)
基板と、
前記基板上に設けられた発熱部品と、
前記発熱部品上に設けられた、付記1乃至5のいずれか1項に記載のヒートシンクと、
を有することを特徴とする基板モジュール。
(付記7)
付記6に記載の基板モジュールと、
前記基板モジュールを収納するハウジングと、
を有することを特徴とする伝送装置。
(付記8)
表面に平行な第1の方向に延びる貫通孔を有するベースプレートを準備する工程と、
前記貫通孔に挿入される突起を有するフィンを準備する工程と、
前記突起を前記貫通孔に挿入して前記フィンと前記ベースプレートとの仮組みを行う工程と、
前記ベースプレートの表面に平行で、前記第1の方向に直交する第2の方向に、前記ベースプレートを圧縮することで、前記突起の両端面を、前記ベースプレートの厚さ方向に平行な第3の方向の全体にわたって前記貫通孔の内壁面に接触させる工程と、
を有することを特徴とするヒートシンクの製造方法。
(付記9)
前記貫通孔は、前記第1の方向及び前記第2の方向に四角格子状に並んで複数形成し、
前記フィンを、前記第2の方向に並んで複数設けることを特徴とする付記8に記載のヒートシンクの製造方法。
(付記10)
複数の前記貫通孔を、最外周に配置された貫通孔を含み、前記第1の方向又は前記第2の方向で隣り合う複数の貫通孔から構成される第1のグループと、中心に配置された貫通孔を含み、前記第1の方向又は前記第2の方向で隣り合う複数の貫通孔から構成される第2のグループとに分けたとき、
前記第2の方向で、前記第2のグループに属する貫通孔の寸法を、前記第1のグループに属する貫通孔の寸法よりも大きくすることを特徴とする付記9に記載のヒートシンクの製造方法。
(付記11)
前記ベースプレートとして、前記四角格子を構成する4個の貫通孔の内側に、前記貫通孔より開口面積が小さい第2の貫通孔を有するベースプレートを準備することを特徴とする付記9又は10に記載のヒートシンクの製造方法。
【符号の説明】
【0061】
100、200、300、430:ヒートシンク
110:ベースプレート
111:貫通孔
112:内壁面
113:貫通孔
120:フィン
121:突起
122:端面
125:基部
400、520:基板モジュール
420:発熱部品
500:伝送装置