(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】導電性放熱フィルム、導電性放熱フィルムの製造方法、及び電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/373 20060101AFI20230307BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
H01L23/36 M
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2019088241
(22)【出願日】2019-05-08
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 真一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大雄
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-236739(JP,A)
【文献】特開2010-118609(JP,A)
【文献】特開2006-290736(JP,A)
【文献】特開2013-184832(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0172101(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0124025(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0234056(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36-23/373
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の金属粒子を有する第1の仮焼成膜と、
前記第1の仮焼成膜に先端が付着した複数のカーボンナノチューブと、
を有することを特徴とする導電性放熱フィルム。
【請求項2】
複数の前記第1の金属粒子の各々は銀を含み、
前記第1の仮焼成膜は、複数の前記第1の金属粒子を含むペーストを130℃以下の温度で焼成して得られた膜であることを特徴とする請求項1に記載の導電性放熱フィルム。
【請求項3】
複数の前記第1の金属粒子の各々は、互いに固着していないことを特徴とする請求項1に記載の導電性放熱フィルム。
【請求項4】
複数の第2の金属粒子を有する第2の仮焼成膜を更に有し、
複数の前記カーボンナノチューブの前記先端と反対側の端部が前記第2の仮焼成膜に付着したことを特徴とする請求項1に記載の導電性放熱フィルム。
【請求項5】
基板の上に複数のカーボンナノチューブを成長させる工程と、
複数の前記カーボンナノチューブの各々の先端に、複数の第1の金属粒子を含む第1のペーストを塗布する工程と、
前記第1のペーストを加熱して仮焼成することにより第1の仮焼成膜を形成する工程と、
前記第1の仮焼成膜を形成した後に、複数の前記カーボンナノチューブの各々を前記基板から剥離する工程と、
を有することを特徴とする導電性放熱フィルムの製造方法。
【請求項6】
複数の前記第1の金属粒子の各々は銀を含み、
前記仮焼成のとき前記第1のペーストの温度は130℃以下であることを特徴とする請求項5に記載の導電性放熱フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記剥離の後に、複数の前記カーボンナノチューブの前記先端とは反対側の端部の各々に、複数の第2の金属粒子を含む第2のペーストを塗布する工程と、
前記第2のペーストを加熱して仮焼成することにより第2の仮焼成膜を形成する工程とを更に有することを特徴とする請求項5に記載の導電性放熱フィルムの製造方法。
【請求項8】
基板の上に複数のカーボンナノチューブを成長させる工程と、
複数の前記カーボンナノチューブの各々の先端に、複数の第1の金属粒子を含む第1のペーストを塗布する工程と、
前記第1のペーストを加熱して仮焼成することにより第1の仮焼成膜を形成する工程と、
前記第1の仮焼成膜を形成した後に、複数の前記カーボンナノチューブの各々を前記基板から剥離する工程と、
前記剥離の後、前記第1の仮焼成膜が第1の部品に密着した状態で前記第1の仮焼成膜を加熱して本焼成することにより、前記第1の部品に固着した第1の本焼成膜を形成する工程と、
前記剥離の後、複数の前記カーボンナノチューブの前記先端とは反対側の端部を第2の部品に接続する工程と、
を有することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項9】
前記剥離の後、複数の前記カーボンナノチューブの前記先端とは反対側の端部の各々に、複数の第2の金属粒子を含む第2のペーストを塗布する工程と、
前記第2のペーストを加熱して仮焼成することにより第2の仮焼成膜を形成する工程とを更に有し、
複数の前記カーボンナノチューブの前記端部を前記第2の部品に接続する工程は、
前記第2の仮焼成膜が第2の部品に密着した状態で前記第2の仮焼成膜を加熱して本焼成することにより、前記第2の部品に固着した第2の本焼成膜を形成することにより行われることを特徴とする請求項8に記載の電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性放熱フィルム、導電性放熱フィルムの製造方法、及び電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバや電気自動車等には様々な電子デバイスが搭載される。そのような電子デバイスとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)、アンプ、及び車載用IC(Integrated Circuit)等がある。これらの電子デバイスは、動作時に発生する熱を外部に放熱するために、放熱フィルムを介してヒートスプレッダ等の放熱部品に接続される。
【0003】
その放熱フィルムとしてカーボンナノチューブを備えたフィルムが提案されている。カーボンナノチューブは、熱伝導率が1500W/m・Kと非常に高く、更に柔軟性や耐熱性に優れた材料であるため、放熱フィルムに適した素材である。また、カーボンナノチューブを備えた放熱フィルムは導電性も有しており、電子デバイスの電気的な接続にも適している。
【0004】
但し、このようにカーボンナノチューブを備えた導電性放熱フィルムには、形状を安定させるという点で改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-150362号公報
【文献】特開2006-147801号公報
【文献】特開2006-303240号公報
【文献】国際公開WO2017/115831号公報
【文献】特開2014-127535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、形状を安定させることが可能な導電性放熱フィルム、導電性放熱フィルムの製造方法、及び電子装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の開示の一観点によれば、複数の第1の金属粒子を有する第1の仮焼成膜と、前記第1の仮焼成膜に付着した先端を備えた複数のカーボンナノチューブと有する導電性放熱フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導電性放熱フィルムが丸まるのを第1の仮焼成膜によって抑制できるため、導電性放熱フィルムの形状を安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)、(b)は、カーボンナノチューブの導電性放熱フィルムを利用した電子装置の製造途中の断面図(その1)である。
【
図2】
図2(a)、(b)は、カーボンナノチューブの導電性放熱フィルムを利用した電子装置の製造途中の断面図(その2)である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、本願発明者が検討した導電性放熱フィルムの製造途中の断面図である。
【
図4】
図4は、本願発明者が検討した導電性放熱フィルムの外観図である。
【
図5】
図5(a)、(b)は、第1実施形態に係る導電性放熱フィルムの製造途中の断面図(その1)である。
【
図6】
図6(a)、(b)は、第1実施形態に係る導電性放熱フィルムの製造途中の断面図(その2)である。
【
図7】
図7(a)、(b)は、第1実施形態に係る導電性放熱フィルムの製造途中の断面図(その3)である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る導電性放熱フィルムの製造途中の断面図(その4)である。
【
図9】
図9(a)は、第1実施形態に係る導電性放熱フィルムのSEM像を基にして描いた図であり、
図9(b)は、
図7(a)の工程において、仮焼成よりも高い温度で第1のペーストを焼成させたときの各カーボンナノチューブのSEM像を基にして描いた図である。
【
図10】
図10(a)は、
図9(a)よりも高い倍率で導電性放熱フィルムをSEMで観察して得られた像を基にして描いた図であり、
図10(b)は、本焼成を行ったときの金属粒子のSEM像を基にして描いた図である。
【
図11】
図11(a)、(b)は、第1実施形態に係る電子装置の製造途中の断面図(その1)である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る電子装置の製造途中の断面図(その2)である。
【
図13】
図13(a)、(b)は、第2実施形態に係る導電性放熱フィルムの製造途中の断面図(その1)である。
【
図14】
図14(a)、(b)は、第2実施形態に係る導電性放熱フィルムの製造途中の断面図(その2)である。
【
図15】
図15(a)、(b)は、第2実施形態に係る導電性放熱フィルムの製造途中の断面図(その3)である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係る導電性放熱フィルムの製造途中の断面図(その4)である。
【
図17】
図17(a)、(b)は、第2実施形態に係る電子装置の製造途中の断面図である。
【
図18】
図18(a)、(b)は、第3実施形態に係る電子装置の製造途中の断面図(その1)である。
【
図19】
図19は、第3実施形態に係る電子装置の製造途中の断面図(その2)である。
【
図20】
図20(a)、(b)は、第2実施形態の導電性放熱フィルムで二つの部品を電気的に接続する例に係る電子装置の製造途中の断面図(その1)である。
【
図21】
図21は、第2実施形態の導電性放熱フィルムで二つの部品を電気的に接続する例に係る電子装置の製造途中の断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の説明に先立ち、本願発明者が検討した事項について説明する。
【0011】
前述のようにカーボンナノチューブは熱伝導率が非常に高く、かつ高伝導密度を有することから、導電性放熱フィルムに適した素材である。その導電性放熱フィルムを電子デバイスに固着することで、電子デバイスで発生した熱や電子をカーボンナノチューブを介して外部に低抵抗で逃がすことができる。
【0012】
図1~
図2は、カーボンナノチューブの導電性放熱フィルムを利用した電子装置の製造途中の断面図である。
【0013】
まず、
図1(a)に示すように、シリコンウエハ2の表面に酸化シリコン膜3を形成してなる基板1を用意し、その基板1の上にCVD(Chemical Vapor Deposition)法で複数のカーボンナノチューブ4を成長させる。
【0014】
次に、
図1(b)に示すように、CPU等の電子デバイス5の表面に、溶剤6aに銀等の金属フィラー6bと金属粒子6cとが分散したペースト6を塗布する。金属フィラー6bは例えば直径が数100μm程度の銅フィラーであり、金属粒子6cは例えば直径数10nm程度の銅粒子であり、金属フィラー6bの直径は金属粒子6cの直径よりも大きい。そして、基板1と電子デバイス5とで各カーボンナノチューブ4を加圧することにより、ペースト6の表面に各カーボンナノチューブ4の先端4aを密着させる。
【0015】
そして、
図2(a)に示すように、基板1を加熱することにより溶剤6aを揮発させると共に、各金属粒子6cを焼成して金属膜7とし、その金属膜7に各カーボンナノチューブ4の先端4aを固着する。
【0016】
その後に、
図2(b)に示すように、基板1を各カーボンナノチューブ4から剥離して、カーボンナノチューブ4を電子デバイス5側に残す。
【0017】
以上により、複数のカーボンナノチューブ4を備えた導電性放熱フィルム8が金属膜7に固着された構造が完成する。このような構造によれば、電子デバイス5で発生した熱が金属膜7とカーボンナノチューブ4とを伝って外部に速やかに放熱され、電子デバイス5の放熱が促されると考えられる。
【0018】
しかし、この方法では、
図2(b)の工程で基板1から各カーボンナノチューブ4を剥離するときに、カーボンナノチューブ4の一部4xが基板1と共に金属膜7から剥離してしまう。
【0019】
このように一部4xでカーボンナノチューブ4が欠損すると導電性放熱フィルム8の面積が小さくなってしまうため、電子デバイス5の熱や電子を導電性放熱フィルム8を介して外部に逃がすことが難しくなる。
【0020】
このような問題を回避するために、次のようにして導電性放熱フィルムを作製することも考えられる。
【0021】
図3(a)、(b)は、本願発明者が検討した導電性放熱フィルムの製造途中の断面図である。
【0022】
まず、
図3(a)に示すように、前述の
図1(a)と同じ工程を行うことにより、基板1の上に複数のカーボンナノチューブ4が成長した構造を得る。
【0023】
次に、
図3(b)に示すように、刃Aを用いて各カーボンナノチューブ4を基板1から機械的に剥離し、剥離した各カーボンナノチューブ4を導電性放熱フィルム9とする。
【0024】
図4は、このようにして得られた導電性放熱フィルム9の外観図である。
【0025】
図4に示すように、上記のように基板1から機械的に各カーボンナノチューブ4を剥離すると導電性放熱フィルム9が丸まってしまう。これではCPU等の電子デバイスの平坦な表面に導電性放熱フィルム9を貼付することができない。
【0026】
以上のように、導電性放熱フィルム8、9はいずれも形状が安定せず、実使用に耐えることができない。
【0027】
以下に、導電性放熱フィルムの形状を安定させることが可能な各実施形態について説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図5~
図8は、本実施形態に係る導電性放熱フィルムの製造途中の断面図である。
【0029】
まず、
図5(a)に示すように、シリコンウエハ21の表面を熱酸化することにより酸化シリコン膜22を形成し、シリコンウエハ21と酸化シリコン膜22とを基板20とする。酸化シリコン膜22の厚さは特に限定されず、1nm~1000nm程度の厚さ、例えば300nm程度の厚さに酸化シリコン膜22を形成し得る。
【0030】
また、基板20も上記に限定されず、アルミナ基板、MgO基板、及びガラス基板を基板20として使用してもよいし、ステンレス基板等の金属基板を基板20として使用してもよい。更に、基板20に代えて、ステンレスホイルやアルミホイル等の金属ホイルを用いてもよい。
【0031】
そして、その酸化シリコン膜22の上に触媒金属膜23として鉄膜を0.1nm~10nm、例えば2.5nm程度の厚さに形成する。触媒金属膜23も鉄膜に限定されない。触媒金属膜23の材料としては、例えばコバルト、ニッケル、鉄、金、銀、及び白金のいずれかを採用し得る。
【0032】
また、酸化シリコン膜22と触媒金属膜23との間に下地膜を形成してもよい。その下地膜の材料としては、モリブデン、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、バナジウム、窒化タンタル、窒化チタン、チタンシリサイド、アルミニウム、アルミナ、酸化チタン、タンタル、タングステン、銅、金、及び白金がある。これらを単体で下地膜として形成してもよいし、これらの合金で下地膜を形成してもよい。この場合、例えば下地膜として厚さが5nmの窒化チタン膜を形成し、その上に触媒金属膜23としてコバルト膜を2.6nmの厚さに形成し得る。
【0033】
更に、触媒金属膜23に代えて、微分型静電分級器(DMA: Differential Mobility Analyzer)等を用いてサイズが調整された複数の金属微粒子を採用してもよい。例えば、下地層として厚さが例えば5nmの窒化チタン膜を形成し、その上に直径の平均値が3.8nmの複数のコバルト粒子を形成してもよい。
【0034】
次に、
図5(b)に示すように、ホットフィラメントCVD法により触媒金属膜23の上に複数のカーボンナノチューブ24を100μm~500μmの長さに成長させる。このとき、各々のカーボンナノチューブ24は、触媒金属膜23の触媒作用によって基板20の表面の法線方向に沿って直線状に延びる。なお、触媒金属膜23は、カーボンナノチューブ24の成長時に凝集して粒状となり、その上にカーボンナノチューブ24が成長していく。
【0035】
カーボンナノチューブ24の成長条件は特に限定されない。この例では、炭素の原料ガスとしてアセチレンガスを用い、そのアセチレンガスとアルゴンガスとの混合ガスを不図示の成長室に供給する。その混合ガスにおけるアセチレンガスとアルゴンガスとの分圧比は1:9であり、成長室内での混合ガスの圧力は1kPaである。
【0036】
そして、基板温度を620℃、ホットフィラメントの温度を1000℃、及び成長時間を20分とする成長条件を採用し、4μm/分程度の成長レートでカーボンナノチューブ24を成長させる。この成長条件によれば、層数が3層~6層で平均の層数が4層程度の多層のカーボンナノチューブ24が得られる。また、そのカーボンナノチューブ24の直径は4nm~8nmとなり、平均の直径は6nm程度となる。更に、酸化シリコン膜22の表面における各カーボンナノチューブ24の面密度は1×1011本/cm2程度となる。
【0037】
カーボンナノチューブ24の成長方法は上記のホットフィラメントCVD法に限定されず、熱CVD法やリモートプラズマCVD法であってもよい。また、アセチレンに代えてメタンやエチレン等の炭化水素類、又はエタノールやメタノール等のアルコール類を炭素の原料ガスとしてもよい。なお、基板温度は400℃から1000℃の間であればよく、600℃から800℃の範囲が好ましい。
【0038】
次に、
図6(a)に示すように、各カーボンナノチューブ24の先端24aの上にメタルマスク26を載置し、そのメタルマスク26の開口26a内の先端24aに第1のペースト27を数10μm程度の厚さに塗布する。
【0039】
第1のペースト27は、揮発性の溶媒27aに複数の金属粒子27bを分散させた液である。金属粒子27bの材料や大きさは特に限定されないが、ここでは直径が数10nm程度の銀粒子を金属粒子27bとして使用する。このように直径が数10nmオーダの微細な金属粒子は金属ナノ粒子とも呼ばれ、その金属の本来の融点よりも低い温度で焼成する。なお、銅のナノ粒子を金属粒子27bとして使用してもよい。
【0040】
また、第1の溶媒27aも特に限定されないが、第1の溶媒27aにポリマが含有していると毛細管力でカーボンナノチューブ24の隙間にポリマが含浸するため、先端24aに第1のペースト27を塗布するのが困難となる。そのため、第1の溶媒27aとしてポリマを含まない液を使用するのが好ましい。
【0041】
また、この例では複数のカーボンナノチューブ24の一部の先端24aに第1のペースト27を塗布したが、メタルマスク26を用いずに複数のカーボンナノチューブ24の全ての先端24aに第1のペースト27を塗布してもよい。
【0042】
次に、
図6(b)に示すように、カーボンナノチューブ24の各先端24aからメタルマスク26を除去する。
【0043】
続いて、
図7(a)に示すように、基板20を不図示のベーク炉に入れ、特に限定されないが大気中で第1のペースト27を120℃~130℃程度の温度、例えば120℃に加熱して焼成する。その加熱時間は30分程度とする。
【0044】
これにより、第1のペースト27中の第1の溶媒27aが揮発し、複数の銀の金属粒子27bの各々が仮焼成した第1の仮焼成膜28が得られる。仮焼成は、金属粒子27bの各々が相互に固着しない程度の低温で行う焼成であり、仮焼成で得られた第1の仮焼成膜28の内部では金属粒子27bの各々がある程度変位することが可能な状態にある。そして、各カーボンナノチューブ24の先端24aは、この第1の仮焼成膜28に付着して相互に結束される。
【0045】
また、この例のように大気中で酸化し難い銀のナノ粒子を金属粒子27bとして利用すると、大気中で仮焼成膜28を形成することができ、酸化防止のためにベーク炉を真空引きする手間を省くことができる。
【0046】
なお、このように金属粒子27bが銀のナノ粒子の場合に130℃よりも高い温度で焼成を行うと各金属粒子27bが固着して仮焼成の状態が得られない。よって、金属粒子27bとして銀のナノ粒子を使用する場合には、130℃以下の温度に第1のペースト27を加熱して仮焼成を行うのが好ましい。また、第1のペースト27の加熱時間が長すぎると焼成が進んで仮焼成膜28が固くなるため、加熱時間を1時間以内にするのが好ましい。
【0047】
一方、金属粒子27bとして銅のナノ粒子を使用する場合には、210℃以下、例えば200℃程度の温度に第1のペースト27を加熱することにより仮焼成を行うことができる。仮焼成のときの温度の上限を210℃としたのは、これよりも温度が高いと金属粒子27bが固着して仮焼成の状態が得られないためである。また、銅のナノ粒子は銀のナノ粒子よりも酸化し易いため、金属粒子27bとして銅のナノ粒子を使用する場合には減圧雰囲気や不活性ガス雰囲気、例えば窒素ガス雰囲気で仮焼成を行うのが好ましい。
【0048】
次に、
図7(b)に示すように、刃Aを用いて第1の仮焼成膜28が形成されていない部分の各カーボンナノチューブ24を基板1から機械的に剥離する。
【0049】
更に、刃Aを引き続き用いて、第1の仮焼成膜28が形成されている部分の各カーボンナノチューブ24を基板1から機械的に剥離する。このとき、本実施形態では各カーボンナノチューブ24の先端24aが第1の仮焼成膜28で結束されているため、
図3(b)の例のように剥離時にカーボンナノチューブ24の束が丸まるのを抑制することができる。
【0050】
以上により、
図8に示すように、複数のカーボンナノチューブ24と第1の仮焼成膜28とを備えた本実施形態に係る導電性放熱フィルム30の基本構造が完成する。
【0051】
上記した本実施形態によれば、前述のように第1の仮焼成膜28に各カーボンナノチューブ24の先端24aを付着させたことで導電性放熱フィルム30が丸まるのを抑制できる。そのため、導電性放熱フィルム30の形状が安定してその平坦性が良好となり、ヒートシンクやCPU等の平坦な表面に導電性放熱フィルム30を固着するのが容易となる。
【0052】
しかも、第1の仮焼成膜28における金属粒子27bの各々は相互に固着しておらず、更なる加熱によって焼成可能な仮焼成の状態にある。そのため、ヒートシンクやCPU等の部品に第1の仮焼成膜28を密着させ、金属粒子27bを加熱して焼成することにより、部品に導電性放熱フィルム30を容易に固着することができる。
【0053】
次に、第1の仮焼成膜28について更に詳細に説明する。
【0054】
図9(a)は、本実施形態に係る導電性放熱フィルム30のSEM(Scanning Electron Microscope)像を基にして描いた図である。
【0055】
図9(a)に示すように、上記のように第1の仮焼成膜28を形成しても、各カーボンナノチューブ24が複数の束に凝集していない。その結果、導電性放熱フィルム30の柔軟性を保つことができ、導電性放熱フィルム30の扱いも容易となる。
【0056】
一方、
図9(b)は、
図7(a)の工程において、仮焼成よりも高い温度で第1のペースト27を焼成させたときの各カーボンナノチューブ24のSEM像を基にして描いた図である。その焼成時の温度は150℃とし、焼成によって金属粒子27bの各々を溶融して相互に固着させた。
【0057】
以下では、このように金属粒子27bの個別性が失われる程度に金属粒子27bを溶融させることを本焼成と呼ぶ。本焼成における加熱温度は仮焼成のそれよりも高く、金属粒子27bが銀のナノ粒子の場合には180℃以上の温度で本焼成をすることができる。一方、金属粒子27bが銅のナノ粒子の場合には250℃以上の温度で本焼成をすることができる。
【0058】
図9(b)に示すように、本焼成を行うと、各カーボンナノチューブ24が複数の束に凝集してしまい、各カーボンナノチューブ24の間に大きな隙間が空いてしまっている。これにより導電性放熱フィルムの柔軟性が損なわれてしまい、導電性放熱フィルムが壊れやすくなってしまう。
【0059】
この結果から、導電性放熱フィルム30の柔軟性を維持してその取扱いを容易にするという観点からも、第1のペースト27を本焼成せずに、仮焼成の状態に留めるのが好ましいということが明らかとなった。
【0060】
次に、仮焼成と本焼成の各々を行ったときの金属粒子27bの外観について説明する。
【0061】
図10(a)は、
図9(a)よりも高い倍率で導電性放熱フィルム30をSEMで観察して得られた像を基にして描いた図である。
【0062】
図10(a)に示すように、本実施形態では金属粒子27bの個別性が維持されており、金属粒子27bの各々は相互に固着していない。この状態においては、前述のように更なる加熱によって金属粒子27bが焼成する余地があるため、金属粒子27bの各々を焼成してヒートシンク等に第1の仮焼成膜28を固着するのが容易となる。
【0063】
一方、
図10(b)は、250℃で本焼成を行ったときの金属粒子27bのSEM像を基にして描いた図である。なお、そのSEMの倍率は、
図10(a)における倍率と同じである。
【0064】
図10(b)に示すように、本焼成を行うと金属粒子27bの各々が溶融してその直径が大きくなる。この状態では既に金属粒子27bが焼成しているため、更なる加熱により金属粒子27bを焼成させる余地がない。そのため、加熱により金属粒子27bをヒートシンク等に固着してもその接合強度が劣ってしまう。
【0065】
次に、本実施形態に係る電子装置の製造方法について説明する。
【0066】
図11~
図12は、本実施形態に係る電子装置の製造途中の断面図である。
【0067】
まず、
図11(a)に示すように、第1の部品31としてヒートシンク等の放熱部品を用意すると共に、第2の部品32として電子デバイスを用意する。その電子デバイスとしては、携帯電話基地局用のハイパワーアンプ、サーバやPC(Personal Computer)用のCPU等の半導体素子、及び車載用IC等がある。また、ハイブリッド自動車や電気自動車のモータを駆動するためのSiCパワーデバイスを第2の部品32として用いてもよい。
【0068】
そして、第1の部品31の表面に、溶媒33aに金属フィラー33bと金属粒子33cとを分散させたペーストを印刷法等で塗布することにより第1の塗膜33を形成する。第1の塗膜33における金属フィラー33bは、金属粒子33cよりも直径が大きな金属粒であり、ここでは金属フィラー33bとして直径が数100μm程度の銅フィラー、金属粒子33bとして直径数10nm程度の銅粒子を使用する。なお、銅フィラーと銅粒子の各々に代えて銀フィラーや銀粒子を用いてもよい。
【0069】
また、第2の部品32の表面には、第1の部品31の表面に塗布したのと同様のペーストを塗布することにより第2の塗膜34を形成する。
【0070】
この状態で第1の部品31と第2の部品32との間に導電性放熱フィルム30を配し、導電性放熱フィルム30の第1の仮焼成膜28が第1の部品31に面するようにする。
【0071】
なお、第2の塗膜34の溶媒にポリマが添加されていると、前述のように毛細管力でポリマが各カーボンナノチューブ24の隙間に含浸してしまう。これを避けるために、第2の塗膜34の溶媒としては、ポリマを含まない溶媒を使用するのが好ましい。
【0072】
一方、各カーボンナノチューブ24の先端24a側の隙間は第1の仮焼成膜28で塞がれているものの仮焼結の具合で隙間が空く可能性もあり、先端24aから溶媒33aが含浸するおそれがある。よって、溶媒33aとしてポリマを含まない液を使用するのが好ましい。
【0073】
次に、
図11(b)に示すように、各部品31、32で導電性放熱フィルム30を加圧することにより、第1の塗膜33に第1の仮焼成膜28を密着させる。これと共に、各カーボンナノチューブ24の先端24aとは反対側の端部24bを第2の塗膜34に密着させる。
【0074】
このとき、本実施形態では前述のように導電性放熱フィルム30の形状が安定してその平坦性が良好となっているため、各部品31、32と導電性放熱フィルム30とが良好に密着する。
【0075】
続いて、
図12に示すように、上記のように導電性放熱フィルム30を加圧しながら、加熱により第1の仮焼成膜28を本焼成させて第1の本焼成膜35とする。また、この加熱によって各塗膜33、34も焼成し、それぞれ第1の金属膜37及び第2の金属膜38となる。
【0076】
このときの加熱温度は、各塗膜33、34に含まれている銅のナノ粒子やフィラーが溶融し、かつ銀の金属粒子27bを含む第1の仮焼成膜28が本焼成する250℃以上とする。
【0077】
これにより、第1の金属膜37を介して第1の本焼成膜35が第1の部品31に固着する。また、第2の金属膜38を介してカーボンナノチューブ24の端部24bが第2の部品32に接続される。
【0078】
また、この例では金属フィラー33b(
図11(a)参照)の直径を金属粒子27bのそれよりも大きくしたため、広い表面積を有する金属フィラー33bに複数の金属粒子27bが強く結合する。その結果、導電性放熱フィルム30と第1の部品31との接続強度を高めることが可能となる。
【0079】
なお、導電性放熱フィルム30と第1の部品31との接続強度が問題にならない場合には、第1の塗膜33と第2の塗膜34の各々を銅のナノ粒子を分散させたペーストを塗布することにより形成してもよい。
【0080】
以上により、本実施形態に係る電子装置40の基本構造が完成する。
【0081】
その電子装置40によれば、導電性放熱フィルム30の平坦性が良好であるため、各部品31、32と導電性放熱フィルム30との密着性が向上する。その結果、第1の部品31であるCPU等で発生した熱と電子を導電性放熱フィルム30を介して第2の部品32に低抵抗で逃がすことができる。
【0082】
本願発明者の調査によれば、このように導電性放熱フィルム30の形状が安定することで、導電性放熱フィルム30の熱伝導率が70W/m・K以上となりその熱抵抗も0.01℃/W以下となることが明らかとなった。その結果、例えば第2の部品32として発熱量の大きなSiCパワーデバイスを用いてもその熱を速やかに放熱でき、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載されるSiCパワーデバイスの放熱効率を高めることができる。更に、各部品31、32を接続するカーボンナノチューブ24の抵抗率が数十μΩ・cmと非常に小さい。そのため、各部品31、32をカーボンナノチューブ24で電気的に接続しても、大電流によってカーボンナノチューブ24が焼損するおそれが少なく、電子装置40の信頼性を高めることができる。
【0083】
更に、各金属膜37、38に含まれる銅の熱伝導率が銀と比較して高いため、第1の部品31で発生した熱が速やかに第2の部品32に伝わり、第1の部品31の冷却効率が更に向上する。
【0084】
しかも、第1の仮焼成膜28を本焼成せずに仮焼成の状態に留めておいたことにより、
図12の工程で加熱により金属粒子27bが本焼成する余地を残すことができる。そのため、
図12の工程で金属粒子27bを本焼成させることにより、第1の本焼成膜35を介してカーボンナノチューブ24を第1の部品31に強く接続することが可能となる。
【0085】
また、各部品31、32の熱膨張量の相違を導電性放熱フィルム30のカーボンナノチューブ24で吸収できるため、各部品31、32の接続信頼性が向上する。
【0086】
ここまでで示した通り、仮焼成と本焼成では得られる膜の性質に様々な相違が生じる。
【0087】
例えば、第1の本焼成膜35では、本焼成時に溶融した金属粒子27bによってその密度が第1の仮焼成膜28のそれと比較して高くなる。また、
図10(a)、(b)に示したように、このように金属粒子27bが溶融することで、第1の本焼成膜35における金属粒子27bの直径は、第1の仮焼成膜28のそれと比較して大きくなる。
【0088】
更に、
図9(a)、(b)を参照して説明したように、本焼成時に発生する金属粒子同士の結合とそれに伴うカーボンナノチューブ24の凝集が仮焼成では生じ難い。そのため、第1の仮焼成膜28は第1の本焼成膜35よりも柔軟となる。
【0089】
(第2実施形態)
第1実施形態では、
図8に示したように、各カーボンナノチューブ24の先端24aのみに第1の仮焼成膜28を形成した。これに対し、本実施形態では、各カーボンナノチューブ24の先端24aとは反対側の端部にも仮焼成膜を形成する。
【0090】
図13~
図16は、本実施形態に係る導電性放熱フィルムの製造途中の断面図である。なお、
図13~
図16において、第1実施形態で説明したのと同じ要素には同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0091】
まず、第1実施形態で説明した
図5(a)~
図7(a)の工程を行うことにより、
図13(a)に示すように、各カーボンナノチューブ24の先端24aに第1の仮焼成膜28が形成された状態を得る。そして、刃Aを用いてカーボンナノチューブ24の端部24bを基板1から機械的に剥離する。
【0092】
これにより、
図13(b)に示すように、第1の仮焼成膜28に各カーボンナノチューブ24の先端24aが付着した構造が得られる。第1実施形態と同様に、本実施形態でも先端24aが第1の仮焼成膜28で結束されているため、各カーボンナノチューブ24や第1の仮焼成膜28の形状が安定し、これらが丸まるのを抑制することができる。
【0093】
次に、
図14(a)に示すように、各カーボンナノチューブ24の端部24bの上にメタルマスク26を載置し、そのメタルマスク26の開口26a内の端部24bに第2のペースト41を数10μm程度の厚さに塗布する。
【0094】
第2のペースト41は、第1のペースト27(
図6(a)参照)と同様に、揮発性の第2の溶媒41aに複数の金属粒子41bとして直径が数10nm程度の金属ナノ粒子を分散させた液である。金属粒子41bの材料は特に限定されず、金属粒子27bと同一又は異なる金属ナノ粒子を金属粒子41bとして使用し得る。
【0095】
本実施形態では、酸化し難く大気中で仮焼成することが可能な銀のナノ粒子を金属粒子41bとして使用する。なお、銅のナノ粒子を金属粒子41bとして使用してもよい。
【0096】
また、毛細管力によって第2の溶媒41aが各カーボンナノチューブ24の隙間に含浸するのを防止するために、ポリマを含まない第2の溶媒41aを使用するのが好ましい。
【0097】
次に、
図14(b)に示すように、カーボンナノチューブ24の各端部24bからメタルマスク26を除去する。
【0098】
次いで、
図15(a)に示すように、各カーボンナノチューブ24を不図示のベーク炉に入れ、特に限定しないが大気中で第2のペースト41を加熱により仮焼成して第2の仮焼成膜42とする。その仮焼成の条件は特に限定されない。この例のように第2の金属粒子41bが銀のナノ粒子の場合には、120℃~130℃程度の温度、例えば120℃の温度に第2のペースト41を加熱することにより第2の仮焼成膜42を形成し得る。なお、その加熱時間は約30分程度である。
【0099】
また、金属粒子41bが銅のナノ粒子の場合には、減圧雰囲気中や不活性ガス雰囲気中で210℃以下、例えば200℃程度の温度に第2のペースト41を加熱することにより第2の仮焼成膜42を形成し得る。
【0100】
第1の仮焼成膜28と同様に、この第2の仮焼成膜42においても複数の金属粒子41bは相互に固着しておらず、第2の仮焼成膜42の内部において金属粒子41bがある程度変位することが可能な状態にある。そして、各カーボンナノチューブ24の端部24bは、この第2の仮焼成膜42に付着して相互に結束される。
【0101】
次に、
図15(b)に示すように、刃Aを用いて第2の仮焼成膜42が形成されていない部分のカーボンナノチューブ24を除去する。
【0102】
以上により、
図16に示すように、複数のカーボンナノチューブ24と仮焼成膜28、42とを備えた本実施形態に係る導電性放熱フィルム50の基本構造が完成する。
【0103】
以上説明した本実施形態によれば、導電性放熱フィルム50の両面に仮焼成膜28、42を設ける。これらの仮焼成膜28、42における各金属粒子27b、42bは相互に固着しておらず、更なる加熱によって容易に焼成する状態にある。よって、導電性放熱フィルム50の両面にヒートシンクやCPU等の部品を密着させ、加熱により各仮焼成膜28、42を本焼成することにより、導電性放熱フィルム50の両面にこれらの部品を容易に固着することができる。
【0104】
しかも、
図13(a)の工程で基板20から各カーボンナノチューブ24を剥離するときに、各カーボンナノチューブ24が丸まるのを第1の仮焼成膜28で抑制でき、導電性放熱フィルム50の平坦性を良好にすることができる。
【0105】
次に、この導電性放熱フィルム50を利用した本実施形態に係る電子装置について説明する。
【0106】
図17(a)、(b)は、本実施形態に係る電子装置の製造途中の断面図である。なお、
図17(a)、(b)において、第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0107】
まず、
図17(a)に示すように、第1の部品31としてヒートシンク等の放熱部品を用意すると共に、第2の部品32としてCPU等の電子デバイスを用意する。
【0108】
そして、第1の部品31に第1の仮焼成膜28を密着させ、かつ第2の部品32に第2の仮焼成膜42を密着させながら、各部品31、32で導電性放熱フィルム50を加圧する。
【0109】
次に、
図17(b)に示すように、各仮焼成膜28、42を大気中で180℃以上の温度に加熱して本焼成することにより、第1の仮焼成膜28を第1の本焼成膜35にすると共に、第2の仮焼成膜42を第2の本焼成膜51とする。
【0110】
これにより、各本焼成膜35、51がそれぞれ第1の部品31と第2の部品32に固着し、導電性放熱フィルム50が各部品31、32に接続されることになる。
【0111】
以上により、本実施形態に係る電子装置60の基本構造が完成する。
【0112】
上記した本実施形態によれば、導電性放熱フィルム50の平坦性が良好であるため、導電性放熱フィルム50と各部品31、32との密着性が向上し、第1の部品31の熱を効率的に第2の部品32に放熱することができる。
【0113】
(第3実施形態)
本実施形態では、導電性放熱フィルム50と各部品31、32との接続強度を向上させることが可能な電子装置について説明する。
【0114】
図18~
図19は、第3実施形態に係る電子装置の製造途中の断面図である。なお、
図18~
図19において、第1実施形態や第2実施形態で説明したのと同じ要素にはこれらの実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0115】
まず、
図18(a)に示すように、例えば印刷法でヒートシンク等の第1の部品31の表面に第1の塗膜33を形成する。第1実施形態で説明したように、第1の塗膜33は、金属粒子27bよりも直径が大きな金属フィラー33bと金属粒子33cとを溶媒33aに分散させたペーストから形成される。金属フィラー33bの材料は特に限定されないが、本実施形態では金属フィラー33bとして直径が数100μm程度の銅フィラーを使用し、金属粒子33cとして直径が数10μm程度の銅粒子を使用する。なお、銅フィラーと銅粒子の各々に代えて銀フィラーと銀粒子を用いてもよい。
【0116】
そして、CPU等の第2の部品32の表面に、溶媒61aに金属フィラー61b及び金属粒子61cを分散させたペーストを印刷法等で塗布することにより第3の塗膜61を形成する。金属フィラー61bは、金属粒子61cよりも直径が大きな金属粒であればその材料は特に限定されず、金属フィラー33bと同一又は異なる金属粒を金属フィラー61bとして使用する。本実施形態では、直径が数100μm程度で熱伝導率が高い銅フィラーを金属フィラー61bとして使用する。なお、銅フィラーと銅粒子の各々に代えて銀フィラーと銀粒子を用いてもよい。
【0117】
そして、第1の部品31に第1の仮焼成膜28が対向し、かつ第2の部品32に第2の仮焼成膜42が対向するように、各部品31、32の間に導電性放熱フィルム50を配する。
【0118】
次に、
図18(b)に示すように、各部品31、32で導電性放熱フィルム50を加圧する。
【0119】
そして、
図19に示すように、導電性放熱フィルム50を加圧しつつ、各仮焼成膜28、42を加熱して本焼成させることにより、各仮焼成膜28、42をそれぞれ第1の本焼成膜35及び第2の本焼成膜51とする。また、この加熱によって各塗膜33、61も焼成し、それぞれ第1の金属膜37及び第3の金属膜62となる。
【0120】
このときの加熱温度は、各塗膜33、61に含まれている銅の金属フィラー33b、61bが溶融し、かつ銀の金属粒子27b、41bを含む各仮焼成膜28、42が本焼成する250℃以上とする。
【0121】
これにより、第1の本焼成膜35が第1の金属膜37を介して第1の部品31に固着し、かつ第2の本焼成膜51が第3の金属膜62を介して第2の部品32に固着して、各部品31、32に導電性放熱フィルム50が接続される。
【0122】
以上により、本実施形態に係る電子装置70の基本構造が完成する。
【0123】
上記した本実施形態では金属粒子27bがそれよりも大きな金属フィラー33bに強く結合するため、導電性放熱フィルム50と第1の部品31との接続強度を高めることが可能となる。同様に、金属粒子41bがそれよりも大きな金属フィラー61bに強く結合することにより、導電性放熱フィルム50と第2の部品32との接続強度を高めることができる。更に、各部品31、32を接続するカーボンナノチューブ24の抵抗率が数十μΩ・cmと非常に小さい。そのため、各部品31、32をカーボンナノチューブ24で電気的に接続しても、大電流によってカーボンナノチューブ24が焼損するおそれが少なく、電子装置70の信頼性を高めることができる。
【0124】
カーボンナノチューブ24は、熱伝導率が高いだけでなく電気抵抗も小さい。そのため、ここまでに説明した導電性放熱フィルムは二つの部品同士を電気的に接続する素材として好適であり、第1~第3実施形態において二つの部品が電子部品である場合に、導電性放熱フィルムでこれらの部品を電気的に接続するのが好ましい。ここでは、第2実施形態で説明した導電性放熱フィルム50で二つの部品を電気的に接続する例について説明する。
【0125】
図20~
図21は、この例に係る電子装置の製造途中の断面図である。なお、
図20~
図21において、第1~第3実施形態で説明したのと同じ要素にはこれらの実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0126】
まず、
図20(a)に示すように、第1の部品31と第2の部品32との間に導電性放熱フィルム50を配する。この例では、各部品31、32としてCPUやSiCパワーデバイス等の電子デバイスを使用する。そして、第1の部品31の第1の電極31aを第1の仮焼成膜28に対向させ、かつ第2の部品32の第2の電極32aを第2の仮焼成膜48に対向させる。
【0127】
次に、
図20(b)に示すように、各部品31、32で導電性放熱フィルム50を加圧することにより、第1の電極31aに第1の仮焼成膜28を密着させ、かつ第2の電極32aに第2の仮焼成膜42を密着させる。
【0128】
そして、
図21に示すように、導電性放熱フィルム50が加圧された状態を維持しながら、仮焼成膜28、42の各々を大気中で180℃程度の温度に加熱して本焼成する。これにより、第1の仮焼成膜28が第1の本焼成膜35となり、その第1の本焼成膜35により各カーボンナノチューブ24が第1の電極31aに機械的かつ電気的に接続される。同様に、第2の仮焼成膜42が第2の本焼成膜51となり、その第2の本焼成膜51により各カーボンナノチューブ24が第2の電極32aに機械的かつ電気的に接続される。
【0129】
以上により、この例に係る電子装置80の基本構造が完成する。
【0130】
上記した例によれば、各部品31、32を接続するカーボンナノチューブ24の抵抗率が数十μΩ・cmと非常に小さい。そのため、各部品31、32がSiCパワーデバイスのような大電流を使用するデバイスであっても、大電流によってカーボンナノチューブ24が焼損するおそれが少なく、電子装置80の信頼性を高めることができる。
【0131】
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0132】
(付記1) 複数の第1の金属粒子を有する第1の仮焼成膜と、
前記第1の仮焼成膜に先端が付着した複数のカーボンナノチューブと、
を有することを特徴とする導電性放熱フィルム。
(付記2) 複数の前記第1の金属粒子の各々は銀を含み、
前記第1の仮焼成膜は、複数の前記第1の金属粒子を含むペーストを130℃以下の温度で焼成して得られた膜であることを特徴とする付記1に記載の導電性放熱フィルム。
(付記3) 複数の前記第1の金属粒子の各々は銅を含み、
前記第1の仮焼成膜は、複数の前記第1の金属粒子を含むペーストを210℃以下の温度で焼成して得られた膜であることを特徴とする付記1に記載の導電性放熱フィルム。
(付記4) 複数の前記第1の金属粒子の各々は、互いに固着していないことを特徴とする付記1に記載の導電性放熱フィルム。
(付記5) 複数の第2の金属粒子を有する第2の仮焼成膜を更に有し、
複数の前記カーボンナノチューブの前記先端と反対側の端部が前記第2の仮焼成膜に付着したことを特徴とする付記1に記載の導電性放熱フィルム。
(付記6) 基板の上に複数のカーボンナノチューブを成長させる工程と、
複数の前記カーボンナノチューブの各々の先端に、複数の第1の金属粒子を含む第1のペーストを塗布する工程と、
前記第1のペーストを加熱して仮焼成することにより第1の仮焼成膜を形成する工程と、
前記第1の仮焼成膜を形成した後に、複数の前記カーボンナノチューブの各々を前記基板から剥離する工程と、
を有することを特徴とする導電性放熱フィルムの製造方法。
(付記7) 複数の前記第1の金属粒子の各々は銀を含み、
前記仮焼成のとき前記第1のペーストの温度は130℃以下であることを特徴とする付記6に記載の導電性放熱フィルムの製造方法。
(付記8) 複数の前記第1の金属粒子の各々は銅を含み、
前記仮焼成のとき前記第1のペーストの温度は210℃以下であることを特徴とする付記6に記載の導電性放熱フィルムの製造方法。
(付記9) 前記第1の仮焼成膜における複数の前記第1の金属粒子は互いに固着していないことを特徴とする付記6に記載の導電性放熱フィルムの製造方法。
(付記10) 前記剥離の後に、複数の前記カーボンナノチューブの前記先端とは反対側の端部の各々に、複数の第2の金属粒子を含む第2のペーストを塗布する工程と、
前記第2のペーストを加熱して仮焼成することにより第2の仮焼成膜を形成する工程とを更に有することを特徴とする付記6に記載の導電性放熱フィルムの製造方法。
(付記11) 基板の上に複数のカーボンナノチューブを成長させる工程と、
複数の前記カーボンナノチューブの各々の先端に、複数の第1の金属粒子を含む第1のペーストを塗布する工程と、
前記第1のペーストを加熱して仮焼成することにより第1の仮焼成膜を形成する工程と、
前記第1の仮焼成膜を形成した後に、複数の前記カーボンナノチューブの各々を前記基板から剥離する工程と、
前記剥離の後、前記第1の仮焼成膜が第1の部品に密着した状態で前記第1の仮焼成膜を加熱して本焼成することにより、前記第1の部品に固着した第1の本焼成膜を形成する工程と、
前記剥離の後、複数の前記カーボンナノチューブの前記先端とは反対側の端部を第2の部品に接続する工程と、
を有することを特徴とする電子装置の製造方法。
(付記12) 前記本焼成のときの前記第1の仮焼成膜の温度は、前記仮焼成のときの前記第1のペーストの温度よりも高いことを特徴とする付記11に記載の電子装置の製造方法。
(付記13) 複数の前記第1の金属粒子の各々は銀を含み、
前記仮焼成のときの前記第1のペーストの温度は130℃以下であり、前記本焼成のときの前記第1の仮焼成膜の温度は180℃以上であることを特徴とする付記12に記載の電子装置の製造方法。
(付記14) 複数の前記第1の金属粒子の各々は銅を含み、
前記仮焼成のときの前記第1のペーストの温度は210℃以下であり、前記本焼成のときの前記第1の仮焼成膜の温度は250℃以上であることを特徴とする付記12に記載の電子装置の製造方法。
(付記15) 前記第1の本焼成膜は、前記第1の仮焼成膜よりも密度が高いことを特徴とする付記11に記載の電子装置の製造方法。
(付記16) 前記第1の本焼成膜における前記第1の金属粒子の直径は、前記第1の仮焼成膜における前記第1の金属粒子の直径よりも大きいことを特徴とする付記11に記載の電子装置の製造方法。
(付記17) 前記第1の仮焼成膜は、前記第1の本焼成膜よりも柔軟であることを特徴とする付記11に記載の電子装置の製造方法。
(付記18) 前記第1の本焼成膜を形成する工程は、
前記第1の部品の表面に、前記第1の金属粒子よりも直径が大きい第1の金属フィラーを含む第1の塗膜を形成し、
前記第1の塗膜に前記第1の仮焼成膜が密着した状態で前記第1の仮焼成膜を本焼成することにより行われることを特徴とする付記11に記載の電子装置の製造方法。
(付記19) 前記剥離の後、複数の前記カーボンナノチューブの前記先端とは反対側の端部の各々に、複数の第2の金属粒子を含む第2のペーストを塗布する工程と、
前記第2のペーストを加熱して仮焼成することにより第2の仮焼成膜を形成する工程とを更に有し、
複数の前記カーボンナノチューブの前記端部を前記第2の部品に接続する工程は、
前記第2の仮焼成膜が第2の部品に密着した状態で前記第2の仮焼成膜を加熱して本焼成することにより、前記第2の部品に固着した第2の本焼成膜を形成することにより行われることを特徴とする付記11に記載の電子装置の製造方法。
(付記20) 複数の前記カーボンナノチューブの前記端部を第2の部品に接続する工程は、
前記第2の部品の表面に、前記第2の金属粒子よりも直径が大きい第2の金属フィラーを含む第2の塗膜を形成し、
前記第2の塗膜に前記第2の仮焼成膜が密着した状態で前記第2の仮焼成膜を本焼成することにより行われることを特徴とする付記19に記載の電子装置の製造方法。
(付記21) 前記第1の本焼成膜を形成する工程において、前記第1の部品の第1の電極に前記第1の本焼成膜を固着し、
前記端部を前記第2の部品に接続する工程において、前記端部を前記第2の部品の第2の電極に接続することにより、複数の前記カーボンナノチューブを介して前記第1の電極と前記第2の電極とを電気的に接続することを特徴とする付記11に記載の電子装置の製造方法。
【符号の説明】
【0133】
1…基板、2…シリコンウエハ、3…酸化シリコン膜、4…カーボンナノチューブ、4a…先端、4x…一部、5…電子デバイス、6…ペースト、6a…溶剤、6b…金属フィラー、6c…金属粒子、7…金属膜、8…導電性放熱フィルム、9…導電性放熱フィルム、20…基板、21…シリコンウエハ、22…酸化シリコン膜、23…触媒金属膜、24…カーボンナノチューブ、24a…先端、24b…端部、26…メタルマスク、26a…開口、27…第1のペースト、27a…第1の溶媒、27b…金属粒子、28…第1の仮焼成膜、30…導電性放熱フィルム、31…第1の部品、31a…第1の電極、32…第2の部品、32a…第2の電極、33…第1の塗膜、33a…溶媒、33b…金属フィラー、33c…金属粒子、34…第2の塗膜、35…第1の本焼成膜、37…第1の金属膜、38…第2の金属膜、40…電子装置、41…第2のペースト、41a…第2の溶媒、41b…第2の金属粒子、42…第2の仮焼成膜、42b…金属粒子、48…第2の仮焼成膜、50…導電性放熱フィルム、51…第2の本焼成膜、60、70、80…電子装置、61…第3の塗膜、61a…溶媒、61b…金属フィラー、61c…金属粒子、62…第3の金属膜。