(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】搬送車管理装置及び搬送車管理方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20230307BHJP
【FI】
G05D1/02 P
(21)【出願番号】P 2019090451
(22)【出願日】2019-05-13
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福滿 高哉
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-221687(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003814(WO,A1)
【文献】特開平07-287781(JP,A)
【文献】特開平02-310171(JP,A)
【文献】特開平08-035893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に沿って自動走行する複数の搬送車を管理する搬送車管理装置であって、
上記軌道と対向する位置に上記複数の搬送車のそれぞれに取付けられているタグが示す識別情報を読み取り可能に設けられた読み取り部と、
上記軌道と対向する位置に上記複数の搬送車のそれぞれの走行時の動作状態を測定可能に設けられた測定部と、
上記読み取り部によって読み取られた上記識別情報と、上記測定部によって測定された上記動作状態と、を互いに紐付けて紐付け情報として出力する紐付け部と、
を備え、
上記読み取り部と上記測定部が上記複数の搬送車に兼用されて
おり、
上記紐付け部は、上記複数の搬送車のそれぞれが上記読み取り部を通過する間の時間帯で上記測定部が連続的に測定した動作状態を上記動作状態として上記識別情報に紐付ける、搬送車管理装置。
【請求項2】
上記紐付け部によって出力された上記紐付け情報に基づいて、上記複数の搬送車のそれぞれを上記動作状態について判定して判定結果を出力する判定部を備える、請求項1に記載の搬送車管理装置。
【請求項3】
通信回線を介して上記紐付け部との間で通信可能な管理サーバを備え、上記管理サーバに上記判定部が設けられている、請求項2に記載の搬送車管理装置。
【請求項4】
上記軌道を構成する走行面に上記読み取り部と上記測定部の少なくとも一方が埋設されており、上記複数の搬送車のそれぞれにおいて上記走行面と対向する対向部に上記タグが設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の搬送車管理装置。
【請求項5】
上記測定部は、上記複数の搬送車のそれぞれの振動を上記動作状態として測定する振動センサと、上記複数の搬送車のそれぞれの表面温度を上記動作状態として測定する温度センサと、上記複数の搬送車のそれぞれから発生する音を上記動作状態として測定する音センサと、のうちの少なくとも1つのセンサによって構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の搬送車管理装置。
【請求項6】
軌道に沿って自動走行する複数の搬送車を管理する搬送車管理方法であって、
上記軌道と対向する位置に配置した読み取り部を用いて、上記複数の搬送車のそれぞれに取付けられているタグが示す識別情報を読み取る読み取りステップと、
上記軌道と対向する位置に配置した測定部を用いて、上記複数の搬送車のそれぞれの走行時の動作状態を測定する測定ステップと、
上記読み取りステップで読み取った上記識別情報と、上記測定ステップで測定した上記動作状態と、を互いに紐付けて紐付け情報として出力する紐付けステップと、
を有し、
上記読み取り部と上記測定部を上記複数の搬送車に兼用
しており、
上記紐付けステップでは、上記複数の搬送車のそれぞれが上記読み取り部を通過する間の時間帯で上記測定部が連続的に測定した動作状態を上記動作状態として上記識別情報に紐付ける、搬送車管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軌道に沿って自動走行する搬送車として、床面に磁気テープや磁気棒を敷設し、それらが発する磁気により誘導されながら走行するものが知られている。このような搬送車は、生産現場を中心に原材料、部品、完成品などの無人搬送に幅広く活用されている無人搬送車である。
【0003】
下記特許文献1には、無人搬送車の一例が開示されている。この無人搬送車は、軌道上での故障の発生時に非常用回路が作動すると、電源バッテリと走行モータとが直結されて動力での自走が可能になり、且つ方向を変えるハンドル操作が可能となるように構成されている。このため、無人搬送車の故障が発生したときに、この無人搬送車を予定ルートから容易に外すことにより後続の無人搬送車の走行に影響が及ぶのを回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、同一の軌道上を走行する複数の搬送車を管理する場合、各搬送車が軌道上で不用意に止まるのを防ぐために、各搬送車が故障に至るまでのタイミングで当該搬送車の異常を検知できるのが好ましい。ところが、特許文献1に開示の技術は、無人搬送車である搬送車の故障が発生してはじめて異常を検知できるため、ユーザは搬送車が故障に至るまでの過程や予兆を把握するのが難しい。
【0006】
そこで、この種の搬送車の管理技術の設計においては、搬送車の状態を故障などの発生前に把握できる技術が求められている。また、この技術は、搬送車の導入台数が増えても導入コストが増加するのを抑えることができるものであるのが好ましい。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、軌道に沿って自動走行する複数の搬送車の動作状態を把握するための技術を低コストで実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
軌道に沿って自動走行する複数の搬送車を管理する搬送車管理装置であって、
上記軌道と対向する位置に上記複数の搬送車のそれぞれに取付けられているタグが示す識別情報を読み取り可能に設けられた読み取り部と、
上記軌道と対向する位置に上記複数の搬送車のそれぞれの走行時の動作状態を測定可能に設けられた測定部と、
上記読み取り部によって読み取られた上記識別情報と、上記測定部によって測定された上記動作状態と、を互いに紐付けて紐付け情報として出力する紐付け部と、
を備え、
上記読み取り部と上記測定部が上記複数の搬送車に兼用されており、
上記紐付け部は、上記複数の搬送車のそれぞれが上記読み取り部を通過する間の時間帯で上記測定部が連続的に測定した動作状態を上記動作状態として上記識別情報に紐付ける、搬送車管理装置、
にある。
【0009】
本発明の他の態様は、
軌道に沿って自動走行する複数の搬送車を管理する搬送車管理方法であって、
上記軌道と対向する位置に配置した読み取り部を用いて、上記複数の搬送車のそれぞれに取付けられているタグが示す識別情報を読み取る読み取りステップと、
上記軌道と対向する位置に配置した測定部を用いて、上記複数の搬送車のそれぞれの走行時の動作状態を測定する測定ステップと、
上記読み取りステップで読み取った上記識別情報と、上記測定ステップで測定した上記動作状態と、を互いに紐付けて紐付け情報として出力する紐付けステップと、
を有し、
上記読み取り部と上記測定部を上記複数の搬送車に兼用しており、
上記紐付けステップでは、上記複数の搬送車のそれぞれが上記読み取り部を通過する間の時間帯で上記測定部が連続的に測定した動作状態を上記動作状態として上記識別情報に紐付ける、搬送車管理方法、
にある。
【発明の効果】
【0010】
上記の搬送車管理装置によれば、軌道と対向する位置に設けられた読み取り部によって、各搬送車に取付けられているタグが示す識別情報が読み取られる。また、軌道と対向する位置に設けられた測定部によって、各搬送車の動作状態が測定される。そして、紐付け部が識別情報と動作状態とを互いに紐付けることによって、測定した動作状態がどの搬送車のものであるかを示す対応関係を明確にすることができる。
【0011】
また、上記の搬送車管理方法によれば、読み取りステップにおいて、軌道と対向する位置に設けられた読み取り部を用いて、各搬送車に取付けられているタグが示す識別情報を読み取る。また、測定ステップにおいて、軌道と対向する位置に設けられた測定部を用いて、各搬送車の動作状態を測定する。そして、紐付けステップにおいて、識別情報と動作状態とを互いに紐付けることによって、測定した動作状態がどの搬送車のものであるかを示す対応関係を明確にすることができる。
【0012】
このように、上記の各態様では、識別情報の読み取りの実行主体であるリーダとしての読み取り部と、各搬送車の動作状態の測定の実行主体である測定部と、のいずれも搬送車に設けずに複数の搬送車に兼用する一方で、識別情報が読み取られる側のタグを複数の搬送車のそれぞれに設けることを特徴とする。この場合、各搬送車に安価なタグを取付けることにより、各搬送車の動作状態を識別情報に関連付けて把握するのに要するコストを低く抑えることが可能になる。また、搬送車の導入台数が増えても、安価なタグの数を増やすことのみでの対応が可能である。
【0013】
以上のごとく、上記の各態様によれば、軌道に沿って自動走行する複数の搬送車の動作状態を把握するための技術を低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態1の搬送車管理装置の構成を示す図。
【
図2】
図1中のタグに格納されている識別情報を読み取り部で読み取るときの様子について説明するための図。
【
図4】実施形態1の搬送車管理方法の処理フローを示す図。
【
図5】実施形態2の搬送車管理装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0016】
上記の搬送車管理装置は、上記紐付け部によって出力された上記紐付け情報に基づいて、上記複数の搬送車のそれぞれを上記動作状態について判定して判定結果を出力する判定部を備えるのが好ましい。
【0017】
この搬送車管理装置によれば、ユーザは、各搬送車がその動作状態について判定部で判定された判定結果に基づいて、各搬送車が故障に至るまでの過程や予兆を把握することが可能になる。
【0018】
上記の搬送車管理装置は、通信回線を介して上記紐付け部との間で通信可能な管理サーバを備え、上記管理サーバに上記判定部が設けられているのが好ましい。
【0019】
この搬送車管理装置によれば、管理サーバに判定部を設けることによって、複数の搬送車の判定結果を管理サーバで一括管理することが可能になる。
【0020】
上記の搬送車管理装置において、上記紐付け部は、上記複数の搬送車のそれぞれについて当該搬送車が上記読み取り部を通過した基準時よりも前の通過前時点から上記基準時よりも後の通過後時点までの間の時間帯で連続的に測定された通過時間帯動作状態を上記動作状態として上記識別情報に紐付けるように構成されているのが好ましい。
【0021】
この搬送車管理装置によれば、各搬送車の動作状態の経時的な変化を示す時間帯動作状態を識別情報に紐付けることによって、各搬送車の動作状態についての測定の信頼性を高めることが可能になる。
【0022】
上記の搬送車管理装置において、上記タグは、上記識別情報を書き換え可能に格納するパッシブ型のRFタグであり、上記読み取り部は、上記RFタグに設けられているタグ側アンテナとの間で通信可能な送受信アンテナを有し、上記送受信アンテナから上記タグ側アンテナへの信号の送信によって上記RFタグを駆動して、上記RFタグに格納されている上記識別情報を上記タグ側アンテナ及び上記送受信アンテナを介して受信するように構成されているのが好ましい。
【0023】
この搬送車管理装置によれば、各搬送車に取付けるタグとして、電池を内蔵していないパッシブ型のRFタグを使用することによって、タグに要するコストを低く抑えることができ、且つタグを小型化することができる。
【0024】
上記の搬送車管理装置において、上記軌道を構成する走行面に上記読み取り部と上記測定部の少なくとも一方が埋設されており、上記複数の搬送車のそれぞれにおいて上記走行面と対向する対向部に上記タグが設けられているのが好ましい。
【0025】
この搬送車管理装置によれば、読み取り部と測定部の少なくとも一方を走行面に埋設することによって、読み取り部や測定部の設置のために使用する部品数を少なくできる。これにより、読み取り部や測定部を屋内に設置する場合に比べて、装置の初期コスト、運用コスト、メンテナンスコストなどを低く抑えることができる。
【0026】
上記の搬送車管理装置において、上記測定部は、上記複数の搬送車のそれぞれの振動を上記動作状態として測定する振動センサと、上記複数の搬送車のそれぞれの表面温度を上記動作状態として測定する温度センサと、上記複数の搬送車のそれぞれから発生する音を上記動作状態として測定する音センサと、のうちの少なくとも1つのセンサによって構成されているのが好ましい。
【0027】
この搬送車管理装置によれば、測定部として振動センサと温度センサと音センサのうちの少なくとも1つのセンサを用いることによって、各搬送車が故障に至るまでの過程や予兆を把握するのに有効な振動や表面温度や音を測定することが可能になる。
【0028】
上記の搬送車管理方法は、上記紐付けステップで出力された上記紐付け情報に基づいて、上記複数の搬送車のそれぞれを上記動作状態について判定して判定結果を出力する判定ステップを有するのが好ましい。
【0029】
この搬送車管理方法によれば、ユーザは、各搬送車がその動作状態について判定ステップで判定された判定結果に基づいて、各搬送車が故障に至るまでの過程や予兆を把握することが可能になる。
【0030】
上記の搬送車管理方法において、上記紐付けステップは、上記複数の搬送車のそれぞれについて当該搬送車が上記読み取り部を通過した基準時よりも前の通過前時点から上記基準時よりも後の通過後時点までの間の時間帯で連続的に測定された通過時間帯動作状態を上記動作状態として上記識別情報に紐付けるステップであるのが好ましい。
【0031】
この搬送車管理方法によれば、各搬送車の動作状態の経時的な変化を示す時間帯動作状態を識別情報に紐付けることによって、各搬送車の動作状態についての測定の信頼性を高めることが可能になる。
【0032】
上記の搬送車管理方法において、上記測定ステップは、上記測定部としての振動センサ及び温度センサを用いて上記複数の搬送車のそれぞれの振動及び表面温度を上記動作状態として測定するステップであるのが好ましい。
【0033】
この搬送車管理方法によれば、測定部に振動センサ及び温度センサを設けることによって、各搬送車が故障に至るまでの状態や予兆を把握するのに有効な振動及び表面温度を測定することが可能になる。
【0034】
以下、複数の搬送車の管理に使用される、本実施形態の搬送車管理装置及び搬送車管理方法について、図面を参照しつつ説明する。
【0035】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1の搬送車管理装置(以下、単に「管理装置」という。)1は、予め設定された走行ルートである軌道Rに沿って自動走行する複数の搬送車10を管理或いは監視するためのものである。
【0036】
軌道Rは、典型的には直線及び曲線の少なくとも一方によって定まる走行ルートになる。この軌道Rを構成する走行面2には、各搬送車10の無人での自動走行を可能とする磁気テープや磁気マーカーなどのガイド手段(図示省略)が敷設されている。このため、各搬送車10は、軌道R上を自動走行する「自動搬送車」、「無人搬送車」、或いは「AGV(Automatic Guided Vehicle)」と称呼される。
【0037】
本実施形態において、各搬送車10は、駆動源としてのバッテリ12を搭載した搬送部11と、搬送部11に連結された荷台14と、を備える牽引型の搬送車である。
【0038】
搬送部11は、バッテリ12によって駆動される駆動輪13を介して走行面2を走行するように構成されている。各搬送車10の搬送部11において、走行面2と対向する対向部である底部11aには、タグ20が設けられている。
【0039】
タグ20は、詳細については後述するが、各搬送車10を別の搬送車10と識別するための識別情報D1を書き換え可能に格納するRFタグである。なお、このタグ20は、ICタグ、無線タグ、RFID(radio frequency identifier)タグとも称呼されるが、以下では、JIS規格で定められている「RFタグ」として説明する。
【0040】
荷台14は、部品を搭載可能な部位を有し、搬送部11によって牽引されることにより、走行輪15を介して走行面2を走行するように構成されている。走行面2は、工場等の建屋内のフロア面であってもよいし、或いはフロア面よりも高所に設けられた床面であってもよい。
【0041】
なお、荷台14と同様の機能を果たす部位を搬送部11の上部に設けることによって、搬送部11が荷台14の機能を兼務するようにしてもよい。また、複数の搬送車10の全てが牽引型の搬送車であってもよいし、或いは複数の搬送車10の中に牽引型以外の搬送車が含まれていてもよい。
【0042】
管理装置1は、モジュール3と、管理サーバ60と、を備えている。モジュール3は、読み取り部30と、測定部40と、制御部50と、が一体化されてなる。このモジュール3は、軌道Rを構成する走行面2に埋設されている。必要に応じて、1つの軌道Rに対して1又は複数のモジュール3を埋設することができる。
【0043】
モジュール3を構成する読み取り部30及び測定部40は、ともに軌道R上の埋設位置に設けられている。この埋設位置は、軌道Rと対向する位置であって、しかも搬送車10の走行に影響を受けない位置である。これにより、読み取り部30及び測定部40が搬送車10の走行の邪魔になるのを防ぐことができ、また屋内空間に読み取り部30及び測定部40を設置するためのスペースを確保する必要がない。
【0044】
なお、モジュール3の埋設については、モジュール3を走行面2から露出させた状態で埋設してもよいし、或いはモジュール3を屋内から確認不能となるように走行面2よりも下方に埋設してもよい。
【0045】
読み取り部30は、各搬送車10に取付けられているタグ20が示す識別情報D1を、タグ20に対する非接触の状態で読み取り可能に構成されている。この読み取り部30で読み取られた識別情報D1が制御部50に出力される。
【0046】
なお、読み取り部30は、識別情報D1を読み取る機能に加えて、識別情報D1を書き込む機能を有するリーダ・ライタ機器であるのが好ましい。これにより、読み取り部30による識別情報D1の追加や書き換えが可能になる。
【0047】
識別情報D1には、搬送車10の管理番号、型式、積載物、積載量、寸法、メーカー名、導入日(或いは登録日)などの情報のうちの少なくとも1つの搬送車関連データIが含まれている。
【0048】
測定部40は、軌道Rを通る各搬送車10の走行時の動作状態D2を測定可能に構成されている。この測定を「検知」或いは「検出」ということもできる。動作状態D2は、各搬送車10の軌道Rにおける走行開始時から走行終了時までの間で測定部40によって連続的に測定される。この測定部40で測定された動作状態D2が制御部50に出力される。この測定部40は、振動センサ41と温度センサ42とによって構成されている。
【0049】
振動センサ41は、各搬送車10の振動を動作状態D2として測定する機能を果たす。この振動センサ41として典型的には、渦電流式変位センサ、静電容量式変位センサ、超音波式変位センサ、レーザセンサなどの既知の非接触振動センサを使用できる。
【0050】
温度センサ42は、各搬送車10の表面温度を動作状態D2として測定する機能を果たす。この温度センサ42として典型的には、赤外線センサのような既知の非接触温度センサを使用できる。
【0051】
動作状態D2には、搬送車10の振動レベル、変位、速度、加速度の値や、それらの値に関連する情報などからなる振動データNと、搬送車10の表面温度の値や、その値に関連する情報などからなる温度データTと、が含まれている。
【0052】
制御部50は、読み取り部30及び測定部40のそれぞれに関する制御を行う機能を果たす。この機能を達成するために、制御部50は、入力部51、データ処理部52、記憶部53、出力部54、及び紐付け部55を有する。制御部50は、CPU等を有する既知のコンピュータによって構成されており、記憶部53に予め記憶されたプログラムにしたがってデータ処理を実行する。
【0053】
この制御部50において、入力部51には、読み取り部30から出力された識別情報D1と、測定部40から出力された動作状態D2と、が入力される。データ処理部52は、動作状態D2からその一部である時間帯動作状態D2’を抽出する処理を実施した後、記憶部53及び紐付け部55のそれぞれに対して、識別情報D1と時間帯動作状態D2’を出力する。
【0054】
紐付け部55は、読み取り部30によって読み取られた識別情報D1と、測定部40によって測定された動作状態D2の一部である時間帯動作状態D2’と、を互いに紐付けて紐付け情報D3として記憶部53に出力する処理を行う。記憶部53に記憶された情報は、通信部である出力部54から通信回線4を介して管理サーバ60に送信される。
【0055】
管理サーバ60は、モジュール3から離れた遠隔地にあり、通信回線4を介して複数のモジュール3のそれぞれの制御部50との間で通信可能に構成されている。通信回線4として、無線回線及び有線回線の少なくとも一方を使用することができる。
【0056】
管理サーバ60には、通信部61と、判定部62と、記憶部63と、が設けられている。管理サーバ60は、CPU等を有する既知のコンピュータによって構成されており、記憶部63に予め記憶されたプログラムにしたがってデータ処理を実行する。
【0057】
この管理サーバ60において、判定部62は、通信部61を介して制御部50の出力部54から受信した紐付け情報D3に基づいて、各搬送車10をその動作状態について判定して判定結果D4を出力する。そして、判定部62の判定結果D4は、記憶部63のデータベースに記憶される。
【0058】
判定部62の判定結果D4や、この判定結果D4から導出される搬送車10の管理指標などの各種情報は、必要に応じて管理サーバ60の通信部61から通信回線4を介してユーザ端末に提供されるのが好ましい。ユーザ端末とこのように連携する管理サーバ60を、「Iotサーバ」ということができる。
【0059】
判定結果D4として、典型的には、搬送車10の検査実施の必要性の有無を示す検査要否データEを使用することができる。例えば、検査要否データEは、振動情報N及び温度情報Tの少なくとも一方が当該情報の閾値に近い場合や閾値を上回るときに検査実施の必要性が有ることを示すものとされ、振動情報N及び温度情報Tの両方が初期値から変化していないときに検査実施の必要性が無いことを示すものとされる。
【0060】
図2に示されるように、タグ20は、タグ側アンテナ21と、このタグ側アンテナ21に電気的に接続された制御回路22と、制御回路22に電気的に接続されたメモリ23と、を有する。メモリ23に、搬送車10の識別情報D1が格納される。これに対して、読み取り部30は、タグ側アンテナ21との間で通信可能な送受信アンテナ31と、この送受信アンテナ31に電気的に接続された制御回路32と、を有する。
【0061】
タグ20は、電池を内蔵してないタイプのRF(radio frequency)タグであり、「パッシブ型のRFタグ」と称呼される。タグ20は、読み取り部30において制御回路32が駆動されることによって送受信アンテナ31から送信された信号(電波や電磁波)をタグ側アンテナ21で受信する。
【0062】
このとき、タグ側アンテナ21の整流回路で信号が直流電流に変換されることによって電力が発生する。この電力で制御回路22が駆動されることにより、メモリ23に格納されている識別情報D1は、タグ側アンテナ21から読み取り部30の送受信アンテナ31に向けて返信される。その結果、読み取り部30で読み取られた識別情報D1が制御部50に伝送される。
【0063】
図3に示されるように、搬送車10が読み取り部30を通過した時点を基準時trとしたとき、通過時間帯動作状態D2’は、基準時trよりも前の通過前時点taから通過基準時trよりも後の通過後時点tbまでの間の時間帯tzで連続的に測定された動作状態である。
【0064】
このとき、基準時trと通過前時点taとの時間差Δt1と、基準時trと通過後時点tbとの時間差Δt2と、を適宜の値に設定することができる。時間差Δt1と時間差Δt2は、同一の値であってもよいし、或いは異なる値であってもよい。例えば、時間差Δt1と時間差Δt2のいずれか一方を「0」に設定することもできる。
【0065】
2つの時間差Δt1,Δt2を相対的に増やして時間帯tzを長くすることによって、各搬送車10の動作状態D2を測定するための時間的な範囲を広げることができ、搬送車10の故障などの予兆を判定するための測定の信頼性を高めることが可能になる。
【0066】
これに対して、2つの時間差Δt1,Δt2を相対的に減らして時間帯tzを短くすることによって、各搬送車10の動作状態D2を測定するための時間的な範囲を狭めることができ、情報の記憶に要する記憶部53のデータ容量や、制御部50と管理サーバ60との間の情報の送受信に要するデータ容量を少なくできる。
【0067】
次に、上記の管理装置1を使用して実行する、実施形態1の搬送車管理方法(以下、単に「管理方法」という。)について説明する。
【0068】
この管理方法は、軌道Rに沿って自動走行する複数の搬送車10を管理するためのものであり、
図4の第1ステップS101から第6ステップS106までの処理を各搬送車10について順次実行することによって可能になる。
【0069】
なお、これらのステップに対して、必要に応じて1または複数のステップが追加されてもよいし、或いは複数のステップが統合されてもよい。また、必要に応じて各ステップの順番を入れ替えることもできる。
【0070】
図4に示されるように、第1ステップS101は、制御部50によって読み取り部30及び測定部40を起動させる準備ステップである。この第1ステップS101によれば、タグ20に格納されている識別情報D1を読み取り部30によって読み取り可能であり、且つ搬送車10の動作状態D2を測定部40によって測定可能な準備状態になる。
【0071】
第2ステップS102は、タグ20に格納された識別情報D1を読み取る読み取りステップである。この第2ステップS102によれば、搬送車10が読み取り部30の上方を通過するときに、この搬送車10に取付けられているタグ20の識別情報D1が読み取り部30を用いて読み取られる。
【0072】
第3ステップS103は、搬送車10の動作状態D2を測定する測定ステップである。この第3ステップS103によれば、各搬送車10の軌道Rにおける走行開始時から走行終了時までの間で測定が連続的に実行される。そして、搬送車10が測定部40の上方を通過するときに、この搬送車10の実質的な動作状態D2が測定部40を用いて測定される。このときの動作状態D2には、振動データN及び温度データTが含まれている。このため、測定部40の測定結果によれば、測定振動データN及び温度データTのそれぞれの経時変化を知ることができる。
【0073】
第4ステップS104は、データ処理部52(
図1参照)によって時間帯動作状態D2’を抽出する抽出ステップである。この第4ステップS104によれば、動作状態D2のうち基準時trの前後の一部のみが抜き出される(
図3参照)。
【0074】
第5ステップS105は、第2ステップS102で読み取り部30が読み取った識別情報D1と、第4ステップS104でデータ処理部52が抽出した時間帯動作状態D2’と、を互いに紐付けて紐付け情報D3として出力する紐付けステップである。この第5ステップS105によれば、紐付け情報D3を得ることができる。
【0075】
第6ステップS106は、各搬送車10をその動作状態について判定して判定結果を出力する判定ステップである。この第6ステップS106によれば、第5ステップS105で出力された紐付け情報D3に基づいて、各搬送車10のその動作状態についての判定結果D4を得ることができる。
【0076】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0077】
上記の管理装置1によれば、軌道Rと対向する位置に設けられた読み取り部30によって、各搬送車10に取付けられているタグ20が示す識別情報D1が読み取られる。また、軌道Rと対向する位置に設けられた測定部40によって、各搬送車10の動作状態D2が測定される。そして、紐付け部55が識別情報D1と動作状態D2とを互いに紐付けることによって、動作状態D2がどの搬送車10のものであるかを示す対応関係を明確にすることができる。
【0078】
また、上記の搬送車管理方法によれば、第2ステップS102において、軌道Rと対向する位置に設けられた読み取り部30を用いて、各搬送車10に取付けられているタグ20が示す識別情報D1を読み取る。また、第3ステップS103において、軌道Rと対向する位置に設けられた測定部40を用いて、各搬送車10の動作状態D2を測定する。そして、第5ステップS105において、識別情報D1と動作状態D2とを互いに紐付けることによって、動作状態D2がどの搬送車10のものであるかを示す対応関係を明確にすることができる。
【0079】
このように、上述の実施形態1では、識別情報D1の読み取りの実行主体であるリーダとしての読み取り部30と、各搬送車10の動作状態D2の測定の実行主体である測定部40と、のいずれも搬送車10に設けずに複数の搬送車10に兼用する一方で、識別情報D1が読み取られる側のタグ20を複数の搬送車10のそれぞれに設けることを特徴とする。この場合、各搬送車10に安価なタグ20を取付けることにより、各搬送車10の動作状態D2を識別情報D1に関連付けて把握するのに要するコストを低く抑えることが可能になる。また、搬送車10の導入台数が増えても、安価なタグ20の数を増やすことのみでの対応が可能である。
【0080】
従って、上述の実施形態1によれば、軌道Rに沿って自動走行する複数の搬送車10の状態を把握するための技術を低コストで実現することができる。
【0081】
上述の実施形態1によれば、読み取り部30及び測定部40は、搬送車10に設けられる場合に比べて、搬送車10で生じる振動や温度などの使用環境に影響を受けることがなく、本来の機能を発揮することによって精度の良い情報を得ることができる。
【0082】
上述の実施形態1によれば、ユーザは、各搬送車10がその動作状態について判定部62及び第6ステップS106で判定された判定結果に基づいて、各搬送車10が故障に至るまでの過程や予兆を把握することが可能になる。また、管理サーバ60に判定部62を設けることによって、複数の搬送車10の判定結果を管理サーバ60で一括管理することが可能になる。
【0083】
上述の実施形態1によれば、各搬送車10の動作状態D2の経時的な変化を示す時間帯動作状態D2’を識別情報D1に紐付けることによって、各搬送車10の動作状態D2についての測定の信頼性を高めることが可能になる。
【0084】
上述の実施形態1によれば、各搬送車10に取付けるタグ20として、電池を内蔵していないパッシブ型のRFタグを使用することによって、タグ20に要するコストを低く抑えることができ、且つタグ20を小型化することができる。
【0085】
上述の実施形態1によれば、読み取り部30と測定部40の両方を走行面2に埋設することによって、読み取り部30及び測定部40の設置のために使用する部品数を少なくできる。これにより、読み取り部30及び測定部40を屋内に設置する場合に比べて、装置の初期コスト、運用コスト、メンテナンスコストなどを低く抑えることができる。
【0086】
上述の実施形態1によれば、測定部40として振動センサ41及び温度センサ42を用いることによって、各搬送車10が故障に至るまでの過程や予兆を把握するのに有効な振動及び表面温度を測定することが可能になる。
【0087】
以下、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0088】
(実施形態2)
図5に示されるように、実施形態2の管理装置101は、前記の管理サーバ60(
図1参照)を備えていない点で、実施形態1の管理装置1と相違している。
【0089】
管理装置101において、モジュール3を構成する制御部150は、実施形態1の制御部50を構成する要素に加えて判定部56を有する。判定部56は、紐付け部55における紐付け処理で得られた紐付け情報D3に基づいて、各搬送車10の状態を判定し、その判定結果D4(検査要否データE)を記憶部53に対して出力する。
【0090】
また、制御部150において、出力部54は、記憶部53に記憶されているデータを、必要に応じて端末機器57に出力する。端末機器57は、データを印字によって出力するプリンター、データを表示によって出力するモニターやタブレット、データを音声によって出力するスピーカーのうちの少なくとも1つによって構成されるのが好ましい。
【0091】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0092】
実施形態2によれば、制御部150を使用して各搬送車10を設置現場で個別に管理することが可能になる。
【0093】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0094】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0095】
上述の実施形態では、走行面2に読み取り部30と測定部40の両方が埋設される場合について例示したが、これに代えて、読み取り部30と測定部40の少なくとも一方が、屋内において軌道Rと対向する位置に配置されるような実施形態を採用することもできる。この場合、軌道Rと対向する位置は、軌道Rに面する走行空間に障害物を介さずに向かう合う位置であれば、走行面2の上部空間から外れた位置であってもよい。軌道Rと対向する位置を「軌道Rに臨む位置」ということもできる。
【0096】
例えば、側部にタグ20が取付けられた搬送車10に対して、軌道Rの側方に設置された側壁部に読み取り部30や測定部40を配置することができる。また、上部にタグ20が取付けられた搬送車10に対して、軌道Rの上方に設置された上壁部に読み取り部30や測定部40を配置することができる。
【0097】
上述の実施形態では、タグ20としてパッシブ型のRFタグを使用する場合について例示したが、これに代えて、タグ自体が電池を内蔵するアクティブ型のRFタグや、タグ自体が電池を内蔵するが外部信号の検出時のみに作動するセミアクティブ型のRFタグなどを使用することもできる。また、各種のRFタグに代えて、バーコードや2次元コードのような光学的情報媒体を使用することもできる。
【0098】
上述の実施形態では、各搬送車10の走行開始時から走行終了時までの間で測定される動作状態D2の一部である過時間帯動作状態D2’を識別情報D1に紐付ける場合について例示したが、これに代えて、動作状態D2自体を識別情報D1に紐付けたり、動作状態D2から各搬送車10の通過前時点taのみの動作状態を抽出して識別情報D1に紐付けたりしてもよい。
【0099】
上述の実施形態では、測定部40の振動センサ41と温度センサ42とによって各搬送車10の振動及び表面温度を測定する場合について例示したが、振動センサ41及び温度センサ42に代えて或いは加えて、別のセンサやカメラなどを使用することにより、各搬送車10の他の動作状態を測定するようにしてもよい。他の動作状態として、例えば、搬送車10から発生する音や、搬送車10の走行姿勢や挙動などが挙げられる。
【0100】
搬送車10から発生する音は、搬送車10の走行時の動作状態として、マイクロホンのような音センサによって測定可能である。この場合、典型的には、動電型、静電型、圧電型などのマイクロホンを音センサとして使用することができる。
【0101】
上述の実施形態では、各搬送車10の状態を判定するために管理サーバ60の判定部62や制御部150の判定部56を使用する場合について例示したが、例えば、紐付け情報D3のみを出力すれば足りる場合などには、判定部62や判定部56を省略してもよい。
【0102】
上述の実施形態では、各搬送車10が軌道R上を自動走行する場合について例示したが、各搬送車10は、軌道Rから多少外れていても、ガイド手段等の助けによって軌道Rに沿って自動走行することができる構造のものであれば足りる。
【符号の説明】
【0103】
1,101 搬送車管理装置(管理装置)
2 走行面
4 通信回線
10 搬送車
11a 底部(対向部)
20 タグ(RFタグ)
30 読み取り部
40 測定部
41 振動センサ
42 温度センサ
55 紐付け部
56,62 判定部
60 管理サーバ
D1 識別情報
D2 動作状態
D3 紐付け情報
R 軌道
S102 第2ステップ(読み取りステップ)
S103 第3ステップ(測定ステップ)
S105 第5ステップ(紐付けステップ)