(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20230307BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20230307BHJP
H01B 7/08 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H02G3/04
H01B7/08
(21)【出願番号】P 2019100564
(22)【出願日】2019-05-29
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】住田 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】横井 基宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】安田 傑
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】原田 日登実
(72)【発明者】
【氏名】中野 悠
(72)【発明者】
【氏名】工藤 隆祐
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】石田 英敏
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-165135(JP,A)
【文献】特開2002-218634(JP,A)
【文献】特開2003-158150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H02G 3/04
H01B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線状伝送部材と、
前記複数の線状伝送部材が並んだ状態で固定されたシートと、
を備え、
前記シートは、前記複数の線状伝送部材の一方側から覆う第1シートと、前記複数の線状伝送部材を他方側から覆う第2シートとを含み、
前記第2シートの外側に平面領域部が設けられて
おり、
前記第2シートは前記第1シートよりも硬く形成され、
前記第2シートの外面に窪みが形成され、
前記窪みの底面が前記平面領域部をなしている、配線部材。
【請求項2】
請求項
1に記載の配線部材であって、
前記平面領域部の内側に位置している前記複数の線状伝送部材は同じ外径を有する、配線部材。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の配線部材であって、
前記平面領域部の表面粗さは、前記第2シートのうち前記平面領域部でない部分における表面粗さよりも小さい、配線部材。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記平面領域部は、折り畳まれた状態の前記配線部材において露出する箇所に設けられている、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはシート状に形成された機能性外装部材に電線が溶着されたワイヤーハーネスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のワイヤーハーネスのような扁平な配線部材が真空吸着によって保持されつつ搬送されることが望まれている。
【0005】
そこで、真空吸着によって保持されやすい配線部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材は、複数の線状伝送部材と、前記複数の線状伝送部材が並んだ状態で固定されたシートと、を備え、前記シートは、前記複数の線状伝送部材を一方側から覆う第1シートと、前記複数の線状伝送部材を他方側から覆う第2シートとを含み、前記第2シートの外側に平面領域部が設けられている、配線部材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、配線部材が真空吸着によって保持されやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態1にかかる配線部材を示す平面図である。
【
図2】
図2は
図1におけるII-II線に沿った断面図である。
【
図3】
図3は
図1におけるIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は実施形態2にかかる配線部材を示す断面図である。
【
図5】
図5は配線部材の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の配線部材は、次の通りである。
【0011】
(1)複数の線状伝送部材と、前記複数の線状伝送部材が並んだ状態で固定されたシートと、を備え、前記シートは、前記複数の線状伝送部材を一方側から覆う第1シートと、前記複数の線状伝送部材を他方側から覆う第2シートとを含み、前記第2シートの外側に平面領域部が設けられている。これにより、平面領域部に真空吸着パッドがあてられると、平面領域部と真空吸着パッドとが気密状態で密着しやすい。これにより、真空吸着時の空気漏れが抑制されるため、配線部材が真空吸着によって保持されやすい。なお通常の真空吸着と同様に、本明細書における真空吸着の真空とは大気圧よりも負圧になっていればよく、必ずしも厳密な意味での真空である必要はない。
【0012】
(2)前記第2シートは前記第1シートよりも硬く形成され、前記第2シートの外面に窪みが形成され、前記窪みの底面が前記平面領域部をなしていてもよい。これにより、第2シートが曲がっていても平面領域部が設けられる。
【0013】
(3)前記第2シートの外面に設けられた板材をさらに備え、前記板材の外面が前記平面領域部をなしていてもよい。これにより、平面領域部が平面状態に維持されやすくなる。
【0014】
(4)前記板材は前記第2シートよりも硬く形成されていてもよい。これにより、第2シートが曲がっていても平面領域部が設けられる。
【0015】
(5)前記平面領域部の内側に位置している前記複数の線状伝送部材は同じ外径を有していてもよい。これにより、第2シートが曲がりにくい。
【0016】
(6)前記平面領域部の表面粗さは、前記第2シートのうち前記平面領域部のない部分における表面粗さよりも小さくてもよい。これにより、平面領域部と真空吸着パッドとが気密状態で密着しやすい。
【0017】
(7)前記平面領域部は、折り畳まれた状態の前記配線部材において露出する箇所に設けられていてもよい。これにより、配線部材が折り畳まれた状態において平面領域部に真空吸着パッドがあてられて、配線部材が折り畳まれた状態のまま搬送されることができる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
[実施形態1]
以下、実施形態1に係る配線部材について説明する。
図1は実施形態1にかかる配線部材10を示す平面図である。
図2は
図1におけるII-II線に沿った断面図である。
図3は
図1におけるIII-III線に沿った断面図である。なお、
図1において左側の端末部は折り畳まれる前の状態が示され、右側の端末部は折り畳まれた後の状態が示されている。右側の端末部は展開されると、左側の端末部と同様の状態になる。左側の端末部は折り畳まれると、右側の端末部と同様の状態になる。配線部材10は、通常、折り畳まれた状態で車両への組付け作業箇所などに搬送され、車両への組付け作業箇所において展開されつつ車両へ組付けられる。このとき配線部材10は、折り畳まれて台70上に載置された状態で、ロボットアーム80などの先端に設けられた真空吸着パッド82によって吸着されて持ち上げられつつ搬送されるものとして説明される。
【0020】
配線部材10は、全体的に偏平な形態に形成されたものである。配線部材10は、複数の線状伝送部材20とシート(sheet)30とを備える。
【0021】
線状伝送部材20は、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。例えば、線状伝送部材20は、芯線と芯線の周囲の被覆とを有する一般電線であってもよいし、裸導線、シールド線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。
【0022】
電気を伝送する線状伝送部材20としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材20は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0023】
線状伝送部材20は、電気又は光等を伝送する伝送線本体と、伝送線本体を覆う被覆とを含む。線状伝送部材20が一般電線である場合、伝送線本体は芯線22であり、被覆は絶縁被覆24である。芯線22は複数の素線によって構成されていてもよい。複数の素線は撚られていてもよい。
図2に示す例では、一のシート30に同じ径、構造の線状伝送部材20が複数配設されているが、複数の線状伝送部材20の径、構造等は適宜設定されていればよく、径、構造等の異なる線状伝送部材20が同じシート30に配設されていてもよい。
【0024】
線状伝送部材20は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(ツイスト線、複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。線状伝送部材20の端部には、線状伝送部材20と相手部材との接続形態に応じて、適宜端子、コネクタC等が設けられる。
【0025】
図1に示す例では複数の線状伝送部材20はシート30上においてH字状の経路に沿って延びている。これにより配線部材10には4つの端末部分が設けられている。もちろん複数の線状伝送部材20の経路はこれに限られない。複数の線状伝送部材20はシート30上において車両における経路に沿った状態に配線されているとよい。複数の線状伝送部材20がシート30上において車両における経路に沿った状態に配線されていることによって、複数の線状伝送部材20の経路が規制された状態となり、車両への組付が容易となる。以下では、配線部材10の一部分において、線状伝送部材20の長手方向に沿う方向を単に長手方向とし、複数の線状伝送部材20の並ぶ方向に沿う方向を単に並列方向とする。
【0026】
シート30には、複数の線状伝送部材20が並んだ状態で固定されている。シート30は線状伝送部材20の配線形態を保つ。シート30は、第1シート32と第2シート34とを含む。第1シート32は複数の線状伝送部材20を一方側から覆う。第2シート34は複数の線状伝送部材20を他方側(第1シート32とは反対側)から覆う。線状伝送部材20における中間部は第1シート32及び第2シート34に包まれている。これにより、線状伝送部材20における中間部が露出することが抑制されている。シート30は複数の線状伝送部材20の経路に沿った形状に形成されている。帯状部分が複数の線状伝送部材20の経路に沿って延びてシート30をなしている。帯状部分の幅寸法は並列方向に沿った一側部側の線状伝送部材20と他側部側の線状伝送部材20の間隔よりも大きい。
【0027】
ここでは線状伝送部材20は第1シート32及び第2シート34のうち第1シート32のみに固定されている。線状伝送部材20と第1シート32との固定態様は特に限定されるものではなく、接着、溶着などであってもよい。接着とは、接着剤、両面粘着テープなどの介在物を介して2つの部材がくっつくことを言う。溶着とは、介在物を介さずに、2つの部材のうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶けて2つの部材がくっつくことを言う。ここでは線状伝送部材20の絶縁被覆24に含まれる樹脂と、第1シート32に含まれる樹脂とのうち少なくとも一方が溶けて相手側の部材にくっつくことによって、線状伝送部材20と第1シート32とが固定される。
【0028】
第1シート32及び第2シート34を構成する材料は特に限定されるものではないが、第1シート32及び第2シート34は、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、ナイロンなどの樹脂を含む材料によって形成される。第1シート32及び第2シート34は、不織布、織地、編地など繊維を有する繊維材等であってもよいし、非繊維材であってもよい。非繊維材としては、内部が一様に埋った充実状の部材、または樹脂が発泡成形された発泡体などであってもよい。第1シート32及び第2シート34は、金属などの材料を含むこともあり得る。
【0029】
第1シート32及び第2シート34は、単層であってもよいし、複数層積層されていてもよい。複数層積層されている場合、例えば、樹脂層と樹脂層とが積層されていることが考えられる。また例えば、樹脂層と金属層とが積層されていることが考えられる。また、第1シート32及び第2シート34は、非繊維材層と非繊維材層とが重ねられたものであってもよいし、非繊維材層と繊維材層が重ねられたものであってもよいし、繊維材層と繊維材層とが重ねられたものであってもよい。
【0030】
第1シート32は、例えば、2層構造とされる。第1シート32における第1層は線状伝送部材20との固定に向いた層である。例えば第1層は、線状伝送部材20の絶縁被覆24と同じ樹脂を材料として、内部が一様に埋った充実状の部材に形成される。線状伝送部材20は第1層上に固定される。第2層は、シート30の機能を高める層である。例えば第2層は、不織布である。第1層は第2層に対して全体的に設けられていてもよいし、部分的に設けられていてもよい。例えば第1層は第2層における幅方向(線状伝送部材20の並列方向)に沿って中間部にのみ設けられ、側縁部に設けられていなくてもよい。また例えば第1層は第2層における長手方向(線状伝送部材20の長手方向)に沿って、間隔をあけて設けられていてもよい。第1シート32は曲げ容易である。第1シート32は配線部材10が折り畳まれる際に、線状伝送部材20の曲げに追従可能な程度に柔らかい。
【0031】
第2シート34は、例えば、1層構造とされる。第2シート34は第1シート32よりも剛性が高い。第2シート34は、例えば、ナイロンを材料として、内部が一様に埋った充実状の部材である。線状伝送部材20は第2シート34には固定されていない。第2シート34の縁部が第1シート32と固定される。第1シート32と第2シート34との固定態様は特に限定されるものではなく、溶着、接着などであってもよい。第2シート34は、第1シート32における第1層に固定されていてもよいし、第2層に固定されていてもよい。
【0032】
配線部材10には折曲げ容易部12、14が設けられている。折曲げ容易部12、14は、シート30が存在する領域に設けられている。折曲げ容易部12は第2シート34が線状伝送部材20の長手方向に沿って間隔をあけて設けられた部分である。つまり折曲げ容易部12は線状伝送部材20の長手方向に沿って第2シート34がない部分である。なお、上記では第2シート34が無い構成を示したが本構成に限定されず、例えば折曲げ容易部に対応する位置の第2シートの剛性を折曲げ容易部以外の領域の第2シートと比較して低くすれば良い。すなわち、折曲げ容易部14は第2シート34が部分的に折り曲げ容易な形状に形成された部分である。折り曲げ容易な形状として
図1に示す例では蛇腹形状部が形成されている。蛇腹形状部は、線状伝送部材20の長手方向に山、谷が交互に連続する蛇腹状に形成された部分である。端末部側部分が折曲げ容易部12、14の位置で折り曲げられることによって配線部材10は折り畳まれた状態となる。
【0033】
なお、上記に折曲げ容易部として一例を挙げたが、折曲げ容易部は例えば折り目(図示しない)など部分的に折曲げ容易な形状であれば良く、特に限定されない。例えば第2シートではなく、第1シートにスリットを入れること等(図示しない)により、折曲げ容易部とする形状であっても良い。
【0034】
配線部材10には真空吸着箇所が設定されている。
図1に示す例では二点鎖線で示される領域Aが真空吸着箇所である。真空吸着箇所
図1に示す例では、真空吸着箇所は2箇所設定されている。真空吸着箇所は、その位置で配線部材10が真空吸着されて持ち上げられた場合に、配線部材10が傾きにくく、概ね平衡を保てる箇所に設定される。一の配線部材10における真空吸着箇所の数は2箇所に限られない。例えば配線部材10が比較的小さい場合などでは、真空吸着箇所は1箇所であってもよい。また例えば配線部材10が比較的大きい場合などでは、真空吸着箇所は3箇所以上であってもよい。配線部材10が折り畳まれる場合、真空吸着箇所は折り畳まれた状態の配線部材10において露出する箇所に設けられると良い。なお、便宜上、真空吸着として記載しているが真空に限定されないことは言うまでも無い。吸着して持ち上げ可能な程度の負圧を有していれば良い。
【0035】
第2シート34の外側に平面領域部36が設けられている。平面領域部36は第2シート34のうち平面領域部36でない部分と比較して表面粗さが小さいことが好ましい。平面領域部36の表面粗さが小さいことによって、平面領域部36に真空吸着パッド82があてられたときに空気漏れが生じにくくなる。なお、表面粗さは、例えば接触式(触針式)の表面粗さ測定機で測定することができる。この場合、例えばJIS B 0633:2001規格に沿って、各試料につき10回ずつ測定された測定値の算術平均を各試料の表面粗さとすることができる。かかる表面粗さ測定機としては市販の表面粗さ測定機(例えばアメテック株式会社製「フォームタリサーフPGI430」など)を用いることができる。平面領域部36は真空吸着箇所に設けられている。ここでは第2シート34の外面に窪み38が形成されている。窪み38の底面が平面領域部36をなしている。
【0036】
第2シート34において、少なくとも窪み38のない部分では、外面に段差が生じている。段差は第1シート32と第2シート34との固定によって生じうる。また段差は複数の線状伝送部材20の外径の違いによっても生じうる。平面領域部36としたい部分において段差をなくすために窪み38が形成されている。
【0037】
窪み38は、並列方向に沿って延びる溝状に形成されている。窪み38の縁には並列方向に沿って延び、長手方向を向く側壁部が存在する。窪み38の縁には長手方向に延びる側壁部は存在しない。
【0038】
第2シート34は窪み38を形成可能な厚みを有している。第2シート34に窪み38が形成されても、第2シート34に複数の線状伝送部材20を覆う部分が残る。窪み38の深さ寸法は、平面領域部36における並列方向に沿った寸法に応じて設定される。平面領域部36における並列方向に沿った寸法は真空吸着パッド82に応じた寸法に設定される。
【0039】
配線部材10において上記平面領域部36が設けられた部分を第1領域部とする。配線部材10において第1領域部の隣の部分を第2領域部とする。ただし第2領域部はシート30が存在する領域である。つまり第1領域部、第2領域部は、配線部材10におけるシート30が存在する領域において相互に隣り合った領域である。例えば第2領域部は
図3で示される部分である。第2領域部には平面領域部36が設けられていない。なお第2領域部においても第2シート34の外面が平面とされている。ただしこの場合でも、並列方向に沿って見ると、第1領域部における平面領域部36の領域は、第2領域部における平面の領域よりも大きい。また第2領域部には平面が存在していなくてもよい。
【0040】
平面領域部36の内側に位置している複数の線状伝送部材20は同じ外径を有する。これにより平面領域部36の位置における第2シート34材のうち複数の線状伝送部材20を覆う部分が全体に平面となりやすい。これにより窪み38の深さ寸法が大きくなることを抑制できる。これにより第2シート34材の厚み寸法が厚くなることを抑制できる。
【0041】
<動作等>
平面領域部36に真空吸着パッド82があてられると、
図2に示されるように、真空吸着パッド82が平面領域部36に接する。このとき並列方向においても、真空吸着パッド82が平面領域部36からはみ出すことが抑制される。これにより、平面領域部36と真空吸着パッド82とが気密状態で密着しやすくなり、真空吸着時の空気漏れ(真空漏れ)が抑制される。
【0042】
一方、平面領域部36でない部分に真空吸着パッド82があてられると、
図3に示すように、真空吸着パッド82が第2シート34の外面に接する。このとき並列方向において、真空吸着パッド82が第2シート34の外面における段差部分にあてられ、平面からはみ出すことがある。この場合、第2シート34の外面と真空吸着パッド82とが気密状態で密着しにくくなり、真空吸着時の空気漏れ(真空漏れ)が生じうる。
【0043】
<実施形態1にかかる効果等>
配線部材10において、平面領域部36に真空吸着パッド82があてられると、平面領域部36と真空吸着パッド82とが気密状態で密着しやすい。これにより、真空吸着時の空気漏れが抑制される。このため、小さい真空圧によって配線部材10が真空吸着されることができ、配線部材10が真空吸着によって保持されやすい。
【0044】
窪み38の底面が平面領域部36をなしているため、第2シート34が曲がっていても平面領域部36が設けられる。
【0045】
平面領域部36の内側に位置している複数の線状伝送部材20は同じ外径を有するため、第2シート34が曲がりにくい。
【0046】
平面領域部36の表面粗さが、第2シート34のうち平面領域部36でない部分における表面粗さよりも小さく形成されている。これにより、平面領域部36に真空吸着パッド82があてられたときに空気漏れが生じにくい。これにより、平面領域部36と真空吸着パッド82とが気密状態で密着しやすい。
【0047】
平面領域部36は、折り畳まれた状態の配線部材10において露出する箇所に設けられている。これにより、配線部材10が折り畳まれた状態において平面領域部36に真空吸着パッド82があてられて、配線部材10が折り畳まれた状態のまま搬送されることができる。
【0048】
[実施形態2]
実施形態2に係る配線部材について説明する。
図4は実施形態2にかかる配線部材110を示す断面平面図である。なお、本実施の形態の説明において、これまで説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0049】
配線部材110ではシート130は第1シート32と第2シート134とを含む。第2シート134の外面に窪み38は形成されていない。第2シート134は一様な厚み寸法を有している。配線部材110では第2シート134の外面は平面領域部とされていない。配線部材110は、第2シート134の外面に設けられた板材40をさらに備える。板材40の外面が平面領域部42をなしている。
【0050】
板材40は、平板状に形成されている。平面視における板材40の形状は特に限定されるものではなく、角形状、円形状などであってもよい。板材40における第1主面及び第2主面は平面である。板材40における第1主面は第2シート134側を向いている。板材40における第1主面の少なくとも一部は第2シート134に固定されている。板材40における第2主面は平面領域部42をなしている外面である。
【0051】
並列方向に沿った板材40の寸法は特に限定されるものではなく、真空吸着パッド82に対応可能な大きさであればよい。
図4に示す例では、並列方向に沿った板材40の寸法は、並列方向に沿った第2シート134の寸法よりも小さい。並列方向に沿った板材40の寸法は、並列方向に沿った第2シート134の寸法と同じか、それよりも大きくてもよい。また
図4に示す例では、並列方向に沿った板材40の寸法は、並列方向に沿って最も離れた2つの線状伝送部材の間隔よりも大きい。並列方向に沿った板材40の寸法は、並列方向に沿って最も離れた2つの線状伝送部材の間隔と同じかそれよりも小さくてもよい。
【0052】
並列方向に沿って板材40の両端部は第2シート134の外縁部よりも外方に突出していない。並列方向に沿って板材40の一端部は第2シート134の外縁部よりも外方に突出していてもよく、両端部が第2シート134の外縁部よりも外方に突出していてもよい。
【0053】
第2シート134の外面には厚み方向に曲がっている曲面が存在する。当該曲面は、第1シート32と第2シート134とが固定されるにあたって、第1シート32と第2シート134とが線状伝送部材20を覆っている中間部から線状伝送部材20を覆っていない外縁部に向けて相互に接近するために生じる部分である。板材40は第2シート134における曲面を覆う部分を有している。板材40における第1主面のうち曲面を覆う部分は曲面と離れている。板材40における第1主面の一部のみが第2シート134に接している。
【0054】
板材40と第2シート134とは相互に接する部分が固定されている。板材40と第2シート134との固定態様は特に限定されるものではなく、接着、溶着などであってもよい。
【0055】
板材40は、板材40のうち第2シート134に接していない部分も平板状を保つことができる程度の剛性を有しているとよい。例えば板材40は第2シート134よりも硬く形成されていてもよい。例えば板材40と第2シート134とが同じ材料によって形成されている場合、板材40の厚みが第2シート134の厚みよりも厚いことによって、板材40が第2シート134よりも硬く形成される。板材40を構成する材料が第2シート134を構成する材料と異なっていてもよい。この場合、板材40を構成する材料が第2シート134を構成する材料よりも硬い材料であると、板材40の厚みが第2シート134の厚みと同じかそれよりも薄い場合でも、板材40が第2シート134よりも硬く形成されうる。なお材料が異なる場合としては、例えばベースとなる樹脂の種類が異なる場合のほか、ベースとなる樹脂の種類が同じであって添加剤の種類、配合比などが異なる場合も含む。つまり、ベースとなる樹脂が同じであっても添加剤の種類、配合比などが異なることによって、同じ厚みでも硬さの異なる板材40が形成される。
【0056】
図4に示す例では、並列方向に沿って板材40の中間部が第2シート134に固定されている。並列方向に沿って板材40の両端部は第2シート134に固定されておらず、接してもいない。並列方向に沿って板材40の一端部が第2シート134に固定されていてもよい。この場合、並列方向に沿って板材40の一端部が、線状伝送部材20と重なる位置に位置していてもよい。この場合、並列方向に沿って板材40の他端部が第2シート134に固定されていなくてもよく、接していなくてもよい。
【0057】
第2シート134の外面において板材40が設けられる部分に窪みが形成されていてもよい。かかる窪みの形状は板材40を収容可能であれば特に限定されるものではないが、例えば実施形態1における窪み38と同様に溝状に形成されてもよい。かかる窪みに板材40が収まることによって、第2シート134に対して板材40が位置決めされる。また板材40と窪みの底部とが接することによって、板材40と第2シート134における窪み以外の部分の外面とが接する場合と比べて、並列方向に沿って板材40と第2シート134との接触面積が大きくなる。また板材40が設けられる場合でも、板材40が設けられる部分において配線部材110の厚み寸法の増加量が小さくなる。
【0058】
<動作等>
平面領域部42に真空吸着パッド82があてられると、
図4に示されるように、真空吸着パッド82が平面領域部42に接する。このとき並列方向においても、真空吸着パッド82が平面領域部42からはみ出すことが抑制される。これにより、平面領域部42と真空吸着パッド82とが気密状態で密着しやすくなり、真空吸着時の空気漏れ(真空漏れ)が抑制される。
【0059】
<実施形態2にかかる効果等>
配線部材110によっても、平面領域部42に真空吸着パッド82があてられると、平面領域部42と真空吸着パッド82とが気密状態で密着しやすい。これにより、真空吸着時の空気漏れが抑制されるため、配線部材110が真空吸着によって保持されやすい。
【0060】
配線部材110によると、板材40の外面が平面領域部42をなしているため、平面領域部42が平面状態に維持されやすくなる。板材40が第2シート134よりも硬く形成されているため、第2シート134が曲がっていても平面領域部42が設けられる。
【0061】
[変形例]
図5は配線部材110の変形例を示す断面図である。
【0062】
変形例に係る配線部材210では、複数の線状伝送部材20は、第1線状伝送部材20Aと第2線状伝送部材20Bとを含む。第1線状伝送部材20Aは、第2線状伝送部材20Bよりも太い。配線部材210には外径の異なる複数の線状伝送部材20が含まれている。
【0063】
第1線状伝送部材20Aは2本含まれている。第1線状伝送部材20Aは1本であってもよいし、3本以上であってもよい。第2線状伝送部材20Bは2本含まれている。第2線状伝送部材20Bは1本であってもよいし、3本以上であってもよい。
【0064】
並列方向に沿って第1線状伝送部材20Aが内側に位置し、第2線状伝送部材20Bが外側に位置している。並列方向に沿って第2線状伝送部材20Bが内側に位置し、第1線状伝送部材20Aが外側に位置していてもよい。並列方向に沿って第1線状伝送部材20A及び第2線状伝送部材20Bが交互に位置していてもよい。
【0065】
第2シート134の外面には厚み方向に曲がっている曲面が存在する。当該曲面は、第1シート32と第2シート134とが固定されるにあたって、第1シート32と第2シート134とが線状伝送部材20を覆っている中間部から線状伝送部材20を覆っていない縁部に向けて相互に接近するために生じる部分(以下、第1曲面と称する)を含む。当該曲面は、第1線状伝送部材20A、第2線状伝送部材20Bにおける外径差によって生じる部分(以下、第2曲面と称する)を含む。第1曲面は線状伝送部材20を覆わない部分に存在し、第2曲面は線状伝送部材20を覆う部分に存在する。
【0066】
図5に示す例では第1曲面、第2曲面は平面を介さずに連続している。第1曲面、第2曲面の間に平面が存在する場合もあり得る。例えば、シート30の一側部において第2線状伝送部材20Bが複数並ぶ場合、第1曲面、第2曲面の間に平面が存在し得る。
【0067】
第2シート134のうち第1シート32から厚み方向に沿って最も離れた位置を最遠部とする。
図5に示す例では、第2シート134のうち第1線状伝送部材20Aに接する部分が最遠部である。
図5に示す例では一側部において第1曲面、第2曲面は最遠部に対して同じ側に位置している。つまり、第2シート134は最遠部から第2曲面、第1曲面を経て第1シート32との固定部分となる。第1曲面、第2曲面は最遠部に対して相互に反対側に位置していてもよい。例えば、シート30の一側部において並列方向に沿って第2線状伝送部材20Bが内側に位置し、第1線状伝送部材20Aが外側に位置している場合、第1曲面、第2曲面は最遠部に対して相互に反対側に位置し得る。第1曲面が最遠部に対して外側に位置し、第2曲面が最遠部に対して内側に位置するととらえることもできる。
【0068】
板材40は第2シート134における曲面を覆う部分を有している。板材40における第1主面のうち曲面を覆う部分は曲面と離れている。板材40における第1主面の一部のみが第2シート134に接している。
【0069】
なお実施形態1における配線部材10でも同様に複数の線状伝送部材20が第1線状伝送部材20A及び第2線状伝送部材20Bを含んでいてもよい。
【0070】
このほか、上記例では、第1シート32に線状伝送部材20が固定されて、第2シート34に線状伝送部材20が固定されていないものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。第2シート34に線状伝送部材20が固定されて、第1シート32に線状伝送部材20が固定されていなくてもよい。また第1シート32と第2シート34との役割が逆転したうえで、第2シート34の外側に平面領域部36が設けられていてもよい。
【0071】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0072】
10、110、210 配線部材
20 線状伝送部材
20A 第1線状伝送部材
20B 第2線状伝送部材
22 芯線
24 被覆
30、130 シート
32 第1シート
34、134 第2シート
36 平面領域部
38 窪み
40 板材
42 平面領域部
70 台
80 ロボットアーム
82 真空吸着パッド
A 領域
C コネクタ