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特許7238636量子ドット、量子ドット含有組成物、インクジェットインキ及び印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】量子ドット、量子ドット含有組成物、インクジェットインキ及び印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20230307BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20230307BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20230307BHJP
   C01B 25/08 20060101ALI20230307BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20230307BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230307BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20230307BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230307BHJP
   C09K 11/70 20060101ALN20230307BHJP
   C09K 11/56 20060101ALN20230307BHJP
【FI】
C09K11/08 G ZNM
H01L29/06 601D
C09D11/322
C01B25/08 A
B82Y20/00
G02B5/20
H05B33/14 Z
H05B33/14 A
C09K11/70
C09K11/56
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019119528
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2020132844
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2019022749
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 秀一
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-539584(JP,A)
【文献】特開2012-054227(JP,A)
【文献】特開2013-049661(JP,A)
【文献】国際公開第2012/128173(WO,A1)
【文献】特表2016-505661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
H01L 33/50
B82Y
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体微粒子が、下記一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される処理剤で表面処理された、量子ドット。
一般式(1)
【化1】
[一般式(1)中、
1 は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアシル基であり、
1 ~R 8 は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよい(ポリ)オルガノシロキサン基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、
1 及びR 1 ~R 8 の内、少なくとも1つが、カルボキシル基を有する基であるか、X 1 がスルファニル基を有し且つエステル結合を有するアルキル基である。]

一般式(2)
【化2】
[一般式(2)中、
13 、R 18 及びR 23 の内少なくとも1つが、それぞれ独立して、カルボキシル基又はカルボキシル基を有するアルキル基であるか、スルファニル基又はスルファニル基を有するアルキル基であり、
13 、R 18 及びR 23 の内少なくとも1つが、カルボキシル基又はカルボキシル基を有するアルキル基である場合、R 11 ~R 25 の内、その他は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアミノ基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、
13 、R 18 及びR 23 の内少なくとも1つが、スルファニル基又はスルファニル基を有するアルキル基である場合、R 11 ~R 25 の内、その他は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基である。]

一般式(3)
【化3】
[一般式(3)中、
2 は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基(ただしフェニル基を除く)、又は置換基を有してもよいアシル基であり、
26 ~R 35 は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよい(ポリ)オルガノシロキサン基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアシル基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、X 2 及びR 26 ~R 35 の内、少なくとも1つが、カルボキシル基を有する基又はスルファニル基を有する基である。]
【請求項2】
半導体微粒子が化合物半導体である請求項1に記載の量子ドット。
【請求項3】
半導体微粒子がコア・シェル型である、請求項1または2に記載の量子ドット。
【請求項4】
請求項1~いずれか1項に記載の量子ドットと溶媒とを含有する、量子ドット含有組成物。
【請求項5】
請求項に記載の量子ドット含有組成物を含有し、粘度が3~50mPa・sであるインクジェットインキ。
【請求項6】
請求項に記載の量子ドット含有組成物又は請求項6に記載のインクジェットインキにより形成される印刷物。
【請求項7】
基板上に、陽極と発光層と陰極とを有する発光素子であって、前記発光層が、請求項1~いずれか1項に記載の量子ドットを含む、発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドット、該量子ドットを含む量子ドット含有組成物、インクジェットインキ及び該インクジェットインキを用いて形成される印刷物。
【背景技術】
【0002】
量子ドットは、量子力学に従う独特な光学特性を発現させるために、電子を微小な空間に閉じ込めるために形成された極小さな粒(ドット)である。1粒の量子ドットの大きさは、直径1ナノメートルから数10ナノメートルであり、約1万個以下の原子で構成されている。発する蛍光の波長が、粒の大きさで連続的に制御できること、蛍光強度の波長分布が対称性の高いシャープな発光が得られることから近年注目を集めている。
量子ドットは、人体を透過しやすい波長に蛍光を調整でき、体内のあらゆる場所に送達できることより発光材料として生体イメージング用途(非特許文献1)、褪色の恐れがない波長変換材料として太陽電池用途(特許文献1)、鮮明な発光材料、波長変換材料としてエレクトロニクス・フォトニクス用途(特許文献2,3)への展開検討が行われている。
【0003】
これらの用途に展開する場合、必要となる特性として、蛍光の量子収率が挙げられる。蛍光の量子収率を向上させるために、非特許文献2には、半導体微粒子をIn-Pからなる半導体微粒子に有機脂肪族カルボン酸であるミリスチン酸で被覆する例が開示されている。
【0004】
しかしながら、上記量子ドットと、溶剤、モノマー又は樹脂等とを混合すると粘度安定性が低下するだけでなく、塗工又は印刷後の蛍光の量子収率が大きく低下する問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-216560号公報
【文献】特開2008-112154号公報
【文献】特開2009-251129号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】神隆、「半導体量子ドット、その合成法と生命科学への応用」、生産と技術、第63巻、第2号、2011年、p58~p65
【文献】Journal of the American chemical society 2007 129 15432-15433
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって本発明の課題は、優れた蛍光の量子収率を有し、組成物とした場合でも粘度安定性が良好であり、さらに、塗工・印刷後も優れた蛍光の量子収率を維持可能である、量子ドット及び該量子ドットを用いた量子ドット含有組成物、インクジェットインキ及び印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するために、鋭意検討した結果、特定の構造を有する処理剤で表面処理された半導体微粒子を用いることにより、蛍光の量子効率を向上させるとともに、組成物とした場合の粘度安定性、印刷後の蛍光量子効率維持を達成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下〔1〕~〔8〕の発明に関する。
【0010】
〔1〕 半導体微粒子を含有する量子ドットであって、
前記半導体微粒子が、カルバゾール骨格、ジアリールアミン骨格、トリアリールアミン骨格、キノリン骨格及びインドール骨格からなる群から選ばれる少なくとも1種の部分構造と、カルボキシル基及びスルファニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の吸着部位とを有する処理剤で表面処理された、量子ドット。
【0011】
〔2〕 前記処理剤が下記一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される、〔1〕に記載の量子ドット。
【0012】
一般式(1)
【化1】
【0013】
[一般式(1)中、
は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいアシル基であり、
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよい(ポリ)オルガノシロキサン基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、
及びR~Rの内、少なくとも1つが、カルボキシル基を有する基又はスルファニル基を有する基である。]
【0014】
一般式(2)
【化2】
【0015】
[一般式(2)中、
11~R25は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよい(ポリ)オルガノシロキサン基、ニトロ基、置換基を有してもよいアミノ基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、R11~R25の内、少なくとも1つが、カルボキシル基を有する基又はスルファニル基を有する基である。]
【0016】
一般式(3)
【化3】
【0017】
[一般式(3)中、
は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基(ただしフェニル基を除く)、又は置換基を有してもよいアシル基であり、
26~R35は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよい(ポリ)オルガノシロキサン基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアシル基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、
及びR26~R35の内、少なくとも1つが、カルボキシル基を有する基又はスルファニル基を有する基である。]
【0018】
〔3〕 半導体微粒子が化合物半導体である〔1〕又は〔2〕に記載の量子ドット。
【0019】
〔4〕 半導体微粒子がコア・シェル型である、〔1〕~〔3〕いずれか1項に記載の量子ドット。
【0020】
〔5〕 〔1〕~〔4〕いずれか1項に記載の量子ドットと溶媒とを含有する、量子ドット含有組成物。
【0021】
〔6〕 請求項5に記載の量子ドット含有組成物を含有し、粘度が3~50mPa・sであるインクジェットインキ。
【0022】
〔7〕 〔5〕に記載の量子ドット含有組成物又は〔6〕に記載のインクジェットインキにより形成される印刷物。
【0023】
〔8〕 基板上に、陽極と発光層と陰極とを有する発光素子であって、前記発光層が、〔1〕~〔4〕いずれか1項に記載の量子ドットを含む、発光素子。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、優れた蛍光の量子収率を有し、組成物とした場合でも粘度安定性が良好であり、さらに、塗工・印刷後も優れた蛍光の量子収率を維持可能である、量子ドット及び該量子ドットを用いた量子ドット含有組成物、インクジェットインキ及び印刷物を提供することができる。当該量子ドットを用いた印刷物は、蛍光の量子収率の維持率が良好であることから、電界発光素子の発光層としても好適に用いることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<量子ドット>
本発明の量子ドットは、カルバゾール骨格、ジアリールアミン骨格、トリアリールアミン骨格、キノリン骨格及びインドール骨格からなる群から選ばれる少なくとも1種の部分構造と、カルボキシル基及びスルファニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の吸着部位とを有する処理剤で表面処理されたことを特徴とする。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
<半導体微粒子>
本発明における半導体微粒子は、無機物を成分とする半導体であり、単一組成でも、コア・シェル型でも、3層以上の複数層になっていてもよい。
上記半導体は、1族元素、2族元素、10属元素、11族元素、12族元素、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素及び17族元素で示される元素の群から選ばれる少なくとも2種以上の元素を含む化合物からなる半導体である。さらに好ましくは化合物半導体である。
化合物半導体は、Ag、Cu、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、N、P、As、Sb、Pb、S,Se,Teで示される元素群から選ばれる少なくとも2種の元素を含む化合物からなる半導体である。さらに好ましくは、Zn、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、N、P、S,Teで示される元素群から選ばれる少なくとも2種の元素を含む化合物からなる半導体である。
可視光を発光する用途では、バンドギャップの狭さからInを構成元素として含む半導体が、さらに好ましい。
【0027】
コア・シェル型の半導体微粒子は、コアを形成する半導体と異なる成分からなる半導体でコア構造を被覆された構造である。シェルをバントギャップの大きい半導体をすることで、光励起によって生成された励起子(電子-正孔対)はコア内に閉じ込められる。その結果、半導体微粒子表面での無輻射遷移の確率が減少し、発光の量子収率及び半導体量子ドットの蛍光特性の安定性が向上するため好ましい。
【0028】
コアとシェルとを含めた半導体微粒子の平均粒子径は、0.5nm~100nmであることが好ましく、所望の発色が得られる粒子径を選択することができる。コア・シェル型の場合、一つの半導体微粒子の中に複数のシェル微粒子を含有してもよい。単一半導体組成である場合の半導体微粒子の平均粒子径及び、コア・シェル型のコアの平均粒子径は、0.5nm以上であると合成面で好ましく、10nm以下であると量子閉じ込め効果が向上し求める蛍光が得られやすいため好ましい。また、リガンドを含む量子ドットの平均粒子径は、2nm~1μmであることが好ましい。量子ドットの形状は、球状に限らず、棒状、円盤状、そのほかの形状であっても良い。
【0029】
ここでいう平均粒子径とは、半導体微粒子を透過型電子顕微鏡で観察し、無作為に30個のサイズを計測してその平均値を採用した値を指す。この際、半導体微粒子は、後述の処理剤を伴うため、エネルギー分散型X線分析が付帯した走査型透過電子顕微鏡を用いることで、半導体材質部を特定した上で、透過型電子顕微鏡像において電子密度の違いから後述の処理剤に対し半導体微粒子部分は暗く撮像されることを利用し粒径を計測する。
【0030】
<処理剤>
本発明における処理剤は、カルバゾール骨格、ジアリールアミン骨格、トリアリールアミン骨格、キノリン骨格及びインドール骨格からなる群から選ばれる少なくとも1種の部分構造と、カルボキシル基及びスルファニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の吸着部位とを有していればよく、1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。上記トリアリールアミン骨格としては、好ましくはトリフェニルアミン骨格であり、上記インドール骨格にはイソインドール骨格が含まれ、上記キノリン骨格にはイソキノリン骨格が含まれる。
【0031】
QY維持率及び組成物にした際の粘度安定性の観点から、処理剤は、カルバゾール骨格、ジアリールアミン骨格及びトリアリールアミン骨格からなる群から選ばれる少なくとも1種の部分構造と、カルボキシル基及びスルファニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の吸着部位とを有することが好ましい。これは、立体反発が大きいほど量子ドットの凝集が抑制されることに起因すると考えられる。より好ましくは、下記一般式(A)で表されるカルバゾール骨格を有する処理剤、下記一般式(B)で表されるトリアリールアミン骨格を有する処理剤又は一般式(C)で表されるジアリールアミン骨格を有する処理剤である。
【0032】
一般式(A)
【化4】
【0033】
一般式(B)
【化5】
【0034】
一般式(C)
【化6】
【0035】
[一般式(A)~(C)中、
は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアシル基、ニトロ基、ハロゲノ基、ホルミル基、ニトリル基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、
は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアシル基、ニトロ基、ハロゲノ基、ホルミル基、ニトリル基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、
~R、R11~R25及びR26~R35は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよい(ポリ)オルガノシロキサン基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアシル基、ニトロ基、ハロゲノ基、ホルミル基、ニトリル基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、
、X、R~R、R11~R25及びR26~R35の内、少なくとも1つが、カルボキシル基を有する基又はスルファニル基を有する基である。]
【0036】
より好ましくは、下記一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する処理剤、下記一般式(2)で表されるトリアリールアミン骨格を有する処理剤、又は一般式(3)で表されるジアリールアミン骨格を有する処理剤である。
【0037】
一般式(1)
【化7】
【0038】
[一般式(1)中、
は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいアシル基であり、
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよい(ポリ)オルガノシロキサン基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、
及びR~Rの内、少なくとも1つが、カルボキシル基を有する基又はスルファニル基を有する基である。]
【0039】
一般式(2)
【化8】
【0040】
[一般式(2)中、
11~R25は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよい(ポリ)オルガノシロキサン基、ニトロ基、置換基を有してもよいアミノ基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、R11~R25の内、少なくとも1つが、カルボキシル基を有する基又はスルファニル基を有する基である。]
【0041】
一般式(3)
【化9】
【0042】
[一般式(3)中、
は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基(ただしフェニル基を除く)、又は置換基を有してもよいアシル基であり、
26~R35は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよい(ポリ)オルガノシロキサン基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいアシル基、カルボキシル基又はスルファニル基であり、
及びR26~R35の内、少なくとも1つが、カルボキシル基を有する基又はスルファニル基を有する基である。]
【0043】
以下に、上記一般式(A)~(C)及び(1)~(3)における置換基について説明する。
アルキル基は、直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、一部の水素原子が脱落し2重結合や3重結合を形成していてもよい。組成物中における半導体微粒子の含有率を高めることが可能となる点から、処理剤の分子量は小さいことが好ましく、アルキル基の炭素数が1~30であることが好ましい。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ヘキシル基、ドデシル基、エイコシル基等の直鎖アルキル基;2-エチルヘキシル基等の分岐アルキル基;シクロヘキシル基、3-シクロヘキシルプロピル基等の環状アルキル基;エテニル基、ドデセン基等のアルケニル基;プロパ-2-イン-1-基、プロパルギル基等のアルキニル基が挙げられる。
【0044】
アリール基は、芳香環から形式的に水素原子を1つ取り除いた残基であり、より好ましくは、炭素数6から30の芳香環から形式的に水素原子を1つ取り除いた残基である。
芳香環としては例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピレン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、キノリン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾフラン環、プリン環、アクリジン環、フェノチアジン環、ビフェニル基、又はターフェニル基等を挙げることができる。
【0045】
アルコキシ基は、エーテル結合を介してアルキル基が結合した官能基であり、当該アルキル基としては、前述の一般式(A)~(C)及び(1)~(3)におけるアルキル基と同義である。
【0046】
アリールオキシ基は、エーテル結合を介してアリール基が結合した官能基であり、当該アリール基としては、前述の一般式(A)~(C)及び(1)~(3)におけるアリール基と同義である。
【0047】
アシル基は、カルボニル基を介してアルキル基又はアリール基が結合した官能基であり、当該アルキル基及びアリール基としては、前述の一般式(A)~(C)及び(1)~(3)におけるアルキル基及びアリール基と同義である。
【0048】
(ポリ)オルガノシロキサン基は、シロキサン化合物から形式的に水素原子を1つ取り除いた残基であり、シロキサン化合物のケイ素には、アルキル基が置換していてもよい。置換してもよいアルキル基は、前述の一般式(A)~(C)及び(1)~(3)におけるアルキル基と同義である。シロキサン化合物の例としては、例えば、ペンタメチルジシロキサン、ヘプタエチルトリシロキサン、ウンデカメチルテトラシロキサン、トリメチルシロキシジメチルシラノール、1,1,3,3,テトラメチル-1,3-ジヒドロキシジシロキサン又は1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-1,5-ジヒドロキシ-トリシロキサン等が挙げられる。
組成物中における半導体微粒子の含有率を高めることが可能となる点から、処理剤の分子量は小さいことが好ましく、シロキサン結合の繰り返し数は4回以下であることが好ましい。
【0049】
置換基を有してもよいアミノ基は、アミノ基及び置換アミノ基を含み、置換アミノ基の置換基としては、アルキル基、アリール基又はアシル基が挙げられる。上記アルキル基、アリール基及びアシル基は、前述の一般式(A)~(C)及び(1)~(3)におけるアルキル基、アリール基又はアシル基と同義である。
【0050】
また、一般式(A)~(C)及び(1)~(3)におけるアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アリールオキシ基及びアシル基は、置換基を有していてもよい。
有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲノ基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、スルファニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、又はシロキサン結合を含む基等が挙げられる。
本発明における有してもよい置換基は、上述の1価の置換基と、必要に応じてアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、エーテル結合、エステル結合、スルフィド結合、カルボニル基、イミノ基又はそれらを組み合わせた2価の連結基と、を組み合わせた1価の基であってもよい。
【0051】
また、カルボキシル基又はスルファニル基を有する基とは、カルボキシル基及びスルファニル基のほか、置換基としてカルボキシル基又はスルファニル基を有する、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、(ポリ)オルガノシロキサン基又はアシル基を含む。ここで、カルボキシル基及びスルファニル基のほか、置換基としてカルボキシル基又はスルファニル基を有する、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(ポリ)オルガノシロキサン基、アシル基又はニトロ基は、前述の一般式(A)~(C)及び(1)~(3)における基と同義である。
【0052】
カルボキシル基を有するアルキル基、又はカルボキシル基を有するアリール基の例としては、例えば、2-カルボシキシルエチル基、2,2-ジカルボキシルエチル基、2-カルボシキシルエテニル基、2-シアノ-2-カルボシキシルエテニル基、2-トリフルオロメチル-2-カルボシキシルエテニル基、2-フルオロ-2-カルボシキシルエテニル基等が挙げられる。
【0053】
スルファニル基を有するアルキル基、スルファニル基を有するアリール基、又はスルファニル基を有するアシル基としては、例えば、[(3-スルファニルプロパノイル)オキシ]エチル基、[(2-スルファニルアセチル)オキシ]エチル基、4-(スルファニルメチル)フェニル基、[(3-スルファニルプロパノイル)オキシ]プロピル基、3-スルファニル[(3-スルファニルプロパノイル)オキシ]エチル基、又は{[(2-スルファニルエトキシ)プロパノイル]オキシ}エチル基等が挙げられる。
【0054】
本発明における処理剤は、半導体微粒子間の架橋による粘度上昇抑制の観点から、吸着部位は1つであることが好ましい。
本発明における処理剤がカルボキシル基を有する場合、カルボキシル基を有する基はアリール基又は多重結合を形成している炭素原子に結合していることが好ましい。中でも、一般式(1)において、R及びRの内少なくとも1つがカルボキシル基、カルボキシル基を有するアルキル基を有するアリール基又はカルボキシル基を有するアリール基であることが好ましい。一般式(2)において、R13、R18及びR23の内少なくとも1つがカルボキシル基、カルボキシル基を有するアルキル基又はカルボキシル基を有するアリール基であることが好ましい。また、一般式(3)において、R27 及びR32の内少なくとも1つがカルボキシル基、カルボキシル基を有するアルキル基又はカルボキシル基を有するアリール基であることが好ましい。
【0055】
本発明における処理剤がスルファニル基を有する場合、処理剤の空気中における安定性の観点から、スルファニル基を有する基は、好ましくは置換基としてスルファニル基を有するアルキル基である。さらに、溶媒相溶性の観点からより好ましくは、置換基としてスルファニル基を有し且つエステル結合を有する基である。中でも、一般式(1)において、Xはスルファニル基を有するアルキル基であり、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアルコキシ基であることが好ましい。一般式(2)において、R13及びR18のいずれかがカルボキシル基を有するアルキル基又はスルファニル基を有するアルキル基であり、R11、R12、R14~R17及びR19~R25がそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアルコキシ基であることが好ましい。また、一般式(3)において、Xがスルファニル基を有するアルキル基であり、R26~R35がそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアルコキシ基であることが好ましい。
【0056】
処理剤の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。なお、下記構造式において、シス型及びトランス型の幾何異性体が存在する場合は、シス型であってもよく、トランス型であってもよく、シス型及びトランス型の異性体混合物であってもよい。シン-アンチの幾何異性についても同様である。
【0057】
【化10】
【0058】
【化11】
【0059】
【化12】
【0060】
【化13】
【0061】
【化14】
【0062】
【化15】
【0063】
<量子ドット含有組成物>
本発明の量子ドット含有組成物は、上述の量子ドットと、さらに溶媒を含有する。 量子ドット含有組成物が含んでもよい溶媒は、量子ドットを分散させ、ガラス基板等の基板上に本発明の量子ドット含有組成物を乾燥膜厚が所望の膜厚になるように塗布することを容易にするために用いられる。
【0064】
(溶媒)
溶媒としては、特に制限されず、例えば、1,2,3-トリクロロプロパン、1,3-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,4-ジオキサン、2-ヘプタノン、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、3-メトキシブタノール、3-メトキシブチルアセテート、4-ヘプタノン、m-キシレン、m-ジエチルベンゼン、m-ジクロロベンゼン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、n-ブチルアルコール、n-ブチルベンゼン、n-プロピルアセテート、N-メチルピロリドン、トルエン、オクタン、ノナン、ヘキサン、o-キシレン、o-クロロトルエン、o-ジエチルベンゼン、o-ジクロロベンゼン、P-クロロトルエン、P-ジエチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、γ―ブチロラクトン、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ターシャルターシャルブタノール、イソブチルアルコール、イソホロン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノールアセテート、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、トリアセチン、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ベンジルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、酢酸n-アミル、酢酸n-ブチル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、及び二塩基酸エステル等が挙げられる。
これらの溶剤は、1種を単独で、又は必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0065】
<インクジェットインキ>
本発明の量子ドットを含む組成物は、溶媒や、後述する樹脂成分あるいは重合性単量体等を用いて、粘度を調整することで、インクジェットインキとして使用することもできる。インクジェットインキとして用いる場合は、25℃における粘度を3-50mPa・sに調製することが好ましい。
【0066】
インクジェットインキとする場合には、溶媒は、樹脂に対する溶解性、装置部材に対する膨潤作用、粘度、及びノズルにおけるインキの乾燥性の点から選択され、下記溶剤(A-1)、(A-2)及び(A-3)からなる群から選ばれる、760mmHgでの沸点が135℃以上の1種類以上の有機溶剤を含むことが好ましい。
溶剤(A-1): R36-(O-C)m-O-C(=O)-CH
[ただし、R36は炭素原子数1~8のアルキル基であり、C24は直鎖若しくは分岐エチレン鎖であり、1≦m≦3である。]
溶剤(A-2): R37-(O-C)p-O-C(=O)-CH
[ただし、R37は炭素原子数1~8のアルキル基であり、C36は直鎖若しくは分岐プロ
ピレン鎖であり、1≦p≦3である。]
溶剤(A-3): アセテート構造を2つ以上持つ有機溶剤
【0067】
溶剤(A-1)~(A-3)の具体例としては、例えばプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、トリアセチン等を挙げることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。中でも、好ましくはジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテートが、吐出安定性の点から好ましい。
さらに好ましくは、前記760mmHgでの沸点が135℃以上の溶剤の含有量が、全溶媒中60質量%以上であることが、吐出安定性やノズルにおけるインキの乾燥性の点から好ましい。
【0068】
また、インクジェットインキには、印刷物への要求物性により、樹脂、架橋剤、重合性単量体、光感応性物質、熱感応性物質を添加することができる。樹脂、架橋剤、重合性単量体、光感応性物質、熱感応性物質等の添加物質の添加量としては、所望の量子ドット濃度により、量子ドット1質量部に対し、添加物質を0~100質量部添加することができる。100質量部を超えると量子ドット含有率が低くなり、十分な蛍光強度が得られない場合がある。
【0069】
本発明の量子ドットを含む組成物を、塗布し、紫外線照射により、フォトリソグラフィー法によりパターニングする際には、光感応性物質、重合性単量体を添加して、ポジ型レジスト、又は、ネガ型レジストとすることができる。これら添加物質は、単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0070】
(樹脂)
樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のいずれも使用可能であり、石油系樹脂、マレイン酸樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、又はブチラール樹脂等があげられ、基材により適時選択することができる。
【0071】
(架橋剤)
架橋剤としては、架橋剤はメラミン化合物、ベンゾグアナミン化合物、アクリレート系モノマー、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、フェノール化合物、ベンゾオキサジン化合物、ブロック化カルン酸化合物、ブロック化イソシアネート化合物、及びシランカップリング剤からなる群から選ばれる化合物1種若しくは2種以上であることが耐熱耐性を持つ熱架橋性の架橋剤である点から好ましい。
【0072】
(重合性単量体)
重合性単量体には、紫外線や熱などにより硬化して樹脂を生成するモノマー若しくはオリゴマーが含まれ、これらを単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
重合性単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
これらの重合性化合物は、1種を単独で、又は必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0073】
(熱感応性物質、光感応性物質)
熱感応性物質としては、熱重合開始剤として、有機過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤等を挙げることができる。また、光感応性物質としては、光重合開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0074】
(光重合開始剤、光酸発生剤)
光重合開始剤としては、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物、オキシムエステル系化合物、ホスフィン系化合物、キノン系化合物、ボレート系化合物; カルバゾール系化合物;
イミダゾール系化合物;あるいは、チタノセン系化合物等が用いられる。
光酸発生剤としては、スルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、 N-スルホ
ニルオキシイミド化合物等が挙げられる。
【0075】
光重合開始剤及び/又は光酸発生剤は、重合性単量体100部に対して、0.01部~20部であることが好ましい。0.01部未満であると硬化が不十分であり、20部より多い場合、光酸発生剤由来の着色や他の諸物性の低下を招く。
【0076】
(光塩基発生剤)
光塩基発生剤としては、複素環基含有光塩基発生剤、2-ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、[[(2,6-ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン-1,6-ジアミン、トリフェニルメタノール、o-カルバモイルヒドロキシルアミド、o-カルバモイルオキシム、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)等が挙げられる。
【0077】
(増感剤)
さらに、本発明の組成物には、増感剤を含有させることができる。
増感剤としては、カルコン誘導体、ジベンザルアセトン等に代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノン等に代表される1,2-ジケトン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノ-ル誘導体等のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体、又はミヒラーケトン誘導体、α-アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’-ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,又は4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
これらの増感剤は、1種を単独で、又は必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0078】
<印刷物>
印刷物は、基材上に、本発明の量子ドットを含む量子ドット含有層を有するものである。量子ドット含有層は、前述の量子ドット含有組成物又はインクジェットインキによって形成することができ、組成物等を塗工・印刷後に有機溶剤を乾燥して膜を形成する方法や、紫外線照射をして硬化膜を形成する方法によって、形成することができる。
基材は特に限定はないが、ポリカーボネート、硬質塩ビ、軟質塩ビ、ポリスチレン、発砲スチロール、PMMA、ポリプロピレン、ポリエチレン、PET等のプラスチック基材やこれら混合又は変性品、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙等の紙基材、ガラス基材、ステンレス等の金属基材等が挙げられる。
【0079】
<光波長変換層>
本発明の量子ドットを含有する層は、光波長変換層として用いることができる。光波長変換層は、励起光を長波長側の蛍光に変換して放出することが可能であり、励起光波長と放出蛍光波長の関係を維持できれば特に制限はなく、例として、青色や紫外光を励起光として用いて緑色や赤色の蛍光を得ることや、紫外光や可視光を励起光として近赤外領域の蛍光を得る事等を挙げることができる。
光波長変換層の厚みは、好ましくは1~500μmであり、より好ましくは1~50μmであり、さらに好ましくは1~10μmである。厚みが1μm以上であると、高い波長変換効果が得られるため、好ましい。また、厚みが500μm以下であると、光源ユニットに組み込んだ場合に、光源ユニットを薄くすることができるため、好ましい。
【0080】
<光波長変換部材>
前述の光波長変換層を用いて、光波長変換部材とすることもできる。
光波長変換部材は、特定基材の少なくとも片面に、前述の光波長変換層が形成された部材である。基材は特に限定はないが、ポリカーボネート、硬質塩ビ、軟質塩ビ、ポリスチレン、発砲スチロール、PMMA、ポリプロピレン、ポリエチレン、PET等のプラスチック基材やこれら混合又は変性品、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙等の紙基材、ガラス、ステンレス等の金属基材等が挙げられる。
用途によって使用される基材は選択されるが、プリペイドカードや通行カード等であれば、耐久性の観点から、プラスチック基材やこれらの混合又は変性品が好ましい。情報記録媒体としての1次元バーコード、2次元バーコード、QRコード(登録商標)(マトリックス型2次元コード)であれば、プラスチック基材の他にも紙基材が好ましい。波長変換用カラーフィルタであれば、透明基板が好ましい。
【0081】
<発光素子>
本発明の量子ドットを含有する層は、発光素子における発光層として用いることができる。発光素子は、基板と、基板上に設けられた陰極と陽極を有し、両電極の間に発光層を備え、陰極及び陽極の少なくとも一方に電荷輸送層を備えている。さらに、発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は透明である。
発光素子の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。さらに、正孔輸送層と発光層との間、又は、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。また、発光層としては一層だけでもよく、また、第一発光層、第二発光層、第三発光層等に発光層を分割してもよい。さらに、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0082】
発光素子を形成するための基板としては、例えば、公知の有機EL素子に用いられる基板を用いることができる。基板は樹脂フィルムであってもよく、ガスバリアフィルムであってもよく、特開2004-136466号公報、特開2004-148566号公報、特開2005-246716号公報、特開2005-262529号公報等に記載のガスバリアフィルムも好ましく用いることができる。
基板の厚みは、特に規定されないが30μm~700μmが好ましく、より好ましくは40μm~200μm、さらに好ましくは50μm~150μmである。さらにいずれの場合もヘイズは3%以下が好ましく、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下、全光透過率は70%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0083】
<陽極>
陽極は、通常、有機化合物あるいは無機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。上述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述がある。基板として耐熱性の低いプラスチック基材を用いる場合は、ITO、IZO又はIGZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0084】
<陰極>
陰極は、通常、有機化合物あるいは無機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体例としては2属金属(例えばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、リチウム- アルミニウム合金、マグネシウム- 銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0085】
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01~100質量% のアルカリ金属又は2属金属との合金(例えば、リチウム- アルミニウム合金、マグネシウム- アルミニウム合金など)をいう。なお、陰極の材料については、特開平2-15595号公報、特開平5-121172号公報に詳述されている。また、陰極と前記有機化合物又は無機化合物層との間に、アルカリ金属又は2属金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1~5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。
【0086】
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm~5μm程度であり、50nm~1μmが好ましい。また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1~10nmの厚さに薄く成膜し、さらにITO、IZOやIGZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0087】
<発光層>
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子との再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。発光層は、本発明の量子ドットのみで構成されていてもよく、量子ドットとホスト材料との混合層の構成でもよい。発光材料は、さらに、蛍光発光材料でも燐光発光材料を含有してもよく、ドーパントは1種であっても2種以上であってもよい。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であってもよく、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料とを混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0088】
前記蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8-キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体等の化合物等が挙げられる。
【0089】
前記燐光発光材料は、例えば、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。
前記遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金である。
前記ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマ
リウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エル
ビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原
子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
【0090】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著, Comprehensive Coordination Chemistry, PergamonPress社1987年発行、H. Yersin著, 「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学-基礎と応用- 」裳華房社1982年発行等に記載の配位子等が挙げられる。
【0091】
また、発光層に含有されるホスト材料としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するもの及びアリールシラン骨格を有するものや、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。
【0092】
<正孔注入層、正孔輸送層>
正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。前述する機能を有すれば有機化合物であっても無機化合物であってもよく、低分子化合物でも高分子化合物でも金属酸化物であってもよい。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、フタロシアニン系化合物、有機シラン誘導体等の低分子化合物、カーボン、フラーレン等の炭素化合物、五酸化バナジウムや三酸化モリブデン等の金属酸化物からなる無機化合物、ポリビニルカルバゾール、ポリピロール、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT-PSS)等の高分子化合物等を含有する層であることが好ましい。
【0093】
<電子注入層、電子輸送層>
電子注入層及び電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8-キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体等の低分子化合物、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)等の金属酸化物やアルカリ金属ドーピングされた有機あるいは無機化合物を含有する層であることが好ましい。
【0094】
<正孔ブロック層>
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。また、電子輸送層・電子注入層が正孔ブロック層の機能を兼ねていてもよい。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。また、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層を、発光層と陽極側で隣接する位置に設けることもできる。正孔輸送層・正孔注入層がこの機能を兼ねていてもよい。
【0095】
<発光デバイス>
また、光波長変換部材と発光素子とを組み合わせて、発光デバイスとして用いることができる。前記発光デバイスは、少なくとも、光波長変換部材の光波長変換層又は発光素子の発光層のいずれか一方が、本発明のインク組成物を用いて形成されていればよい。
光波長変換部材は、励起光を長波長側の蛍光に変換して放出するものであり、例えば、青色や紫外光を緑色や赤色の蛍光に変換することや、紫外光や可視光を近赤外領域の蛍光に変換することができる。光波長変換部材は、励起光波長と放出蛍光波長の関係を維持するものであれば特に制限はなく、適宜最適なものを選択することができる。
また、従来公知の発光素子の光源としては、発光ダイオード(LED)や半導体レーザー(LD)等の半導体発光素子、;有機エレクトロルミネッセンス(有機EL);又は量子ドット(quantum dot)を用いることができる。
【実施例
【0096】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を表す。
【0097】
<樹脂の製造>
[樹脂溶液1の調製]
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器にメシチレン70.0部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりn-ブチルメタクリレート18.0部、メタクリル酸メチル12.0部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、質量平均分子量(Mw)26,000のアクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が30質量%になるようにメシチレンを添加して、アクリル樹脂溶液1を調製した。
【0098】
[樹脂溶液2の調製]
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器に、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(DBCA)70.0部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりn-ブチルメタクリレート14.0部、メタクリル酸メチル10.0部、スチレン6.0部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、質量平均分子量(Mw)26,000のアクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が30質量%になるようにジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを添加して、アクリル樹脂溶液2を調製した。
【0099】
[樹脂溶液3の調製]
ノルボルネン200部、シクロペンテン50部、1-ヘキセン180部及びトルエン750部を、窒素置換した反応容器に仕込み、60℃に加熱した。これに、トリエチルアルミニウム(1.5モル/l)のトルエン溶液0.62部、tert-COH/CHOHで変性(tert-COH/CHOH/W=0.35/0.3/1;モル比)したWCl溶液(濃度0.05モル/l)3.7部を加え、80℃で3時間加熱攪拌して、開環重合反応、水素添加反応を行い、次いでトリメチルベンゼンを用いて不揮発分を30%に調製して、シクロペンタジエン樹脂溶液3を得た。
【0100】
<量子ドット含有組成物の製造>
[比較例1]
(量子ドットR1含有組成物)
無水酢酸亜鉛0.55部、ドデカンチオール(処理剤R1)7.0部、オレイルアミン5.0部を加熱溶解し添加液を作成した。次に、塩化インジウム0.22部、オクチルアミン8.25部を反応容器に入れ、窒素バブリングを行いながら、165℃に加熱した。塩化インジウムが溶解した後、ジエチルアミノホスフィン0.86部を短時間で注入し、20分間165℃に制御した。その後、急冷し、40℃に冷却した。
冷却した溶解液に、上記添加液を注入し、240℃2時間加熱した後に、室温まで放冷した。放冷後、ヘキサンとエタノールを用いて再沈殿法で精製を行い、コアがInPでシェルがZnSのコア・シェル型半導体微粒子をドデカンチオール(処理剤R1)で表面処理した量子ドットR1を得た。さらにトリメチルベンゼンを用いて、固形分濃度10%に調製し、量子ドットR1含有組成物を得た。
【0101】
[実施例1]
(量子ドット1含有組成物)
比較例1で得られた量子ドットR1を、トルエンを用いて固形分濃度1%に希釈した。同量の5%処理剤1のトルエン溶液を添加し、12時間撹拌した。トルエンとエタノールを用いて再沈殿法で精製を行った。ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを用いて、固形分濃度10%に調製し、コアがInPでシェルがZnSのコア・シェル型半導体微粒子を処理剤1で表面処理した量子ドット1を含む組成物を得た。
【0102】
[実施例2~21、比較例2~4]
処理剤を表1~表3記載の処理剤2~21及びR2~R4に変更して、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートとエタノールとを用いて精製した以外は、実施例1と同様にして、コアがInPでシェルがZnSのコア・シェル型半導体微粒子を表1~表3の処理剤で表面処理した量子ドット2~21及びR2~R4を含む、固形分濃度10%の組成物を得た。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
<インクジェットインキ(IJインキ)の製造>
[実施例22~45、比較例5~8]
密閉できる容器に、表4に示した配合組成にて、量子ドット含有組成物、樹脂溶液、及び溶剤を配合した。その後、密閉して撹拌し、孔径1μmのメンブレンフィルターを用いてろ過を行い、インクジェットインキ1~24、及びインクジェットインキR1~R4を調整した。
【0107】
<インクジェットインキの評価方法>
得られたインクジェットインキについて以下の評価を行った。結果を表4に示す。
【0108】
[初期粘度]
インクジェットインキの初期粘度は、25℃にて振動式粘度計ビスコメイトVM-10A-L(SEKONNIC社製)を用いて測定した。
【0109】
[粘度安定性]
インクジェットインキを40℃環境下で7日間保管した後、初期粘度評価と同様にして粘度測定を行い、経時後の粘度を初期粘度で除して変化率を算出した。変化率が、10%未満を◎(非常に良好)、10%以上20%未満を○(良好)、20%以上30%未満を△(使用可能)、30%以上を×(使用不可)とした。変化率30%未満であることが必要である。
【0110】
[インクジェット印刷適性]
下記の印刷条件でインクジェット印刷を行い、問題なく印刷パターンを印刷できた場合を○(使用可能)、吐出不良等により印刷できなかった場合を×(使用不可)とした。
≪インクジェット印刷条件≫
印刷機:Dimatix Materials Printer
カートリッジ:10Dimatix Materials Cartriges、10pL
印刷パターン:直径9mmの円形パターン
基板:丸カバーガラス・松浪ガラス工業製
基板温度:30℃
印刷後乾燥:40℃20分間
【0111】
[量子収率(QY)維持率]
インクジェットインキ及び上述のインクジェット印刷適性評価で得られた印刷物について下記の測定条件で蛍光の量子収率を測定し、インクジェットインキの量子収率を1とした場合の、印刷物の量子収率の比率を量子収率維持率とした。量子収率維持率は1に近い方が好ましく、0.6以上であれば実用上使用可能である。
◎: 0.8 ≦ QY維持率 (非常に良好)
○: 0.7 ≦ QY維持率 < 0.8(良好)
△: 0.6 ≦ QY維持率 < 0.7(使用可能)
×: QY維持率 < 0.6(使用不可)
≪量子収率測定条件≫
測定機 量子効率測定システムQE-2000 大塚電子株式会社製
励起波長 400nm積分範囲 375~425nm
蛍光積分範囲 430~800nm
【0112】
【表4】
【0113】
表4中の略称を以下に示す。
DBCA:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
【0114】
表4の結果より、半導体微粒子が、カルバゾール骨格、ジアリールアミン骨格、トリアリールアミン骨格、キノリン骨格及びインドール骨格からなる群から選ばれる少なくとも1種の部分構造と、少なくとも1つのカルボキシル基とを有する処理剤で表面処理された量子ドットを用いることで、インクジェットインキとしての使用が可能であり、粘度安定性が良好で、さらに印刷後も優れた蛍光の量子収率を維持可能であることが示された。
上記効果の詳細なメカニズムは明らかになっていないが、カルバゾール骨格、トリアリールアミン骨格、キノリン骨格及びインドール骨格からなる群から選ばれる少なくとも1種の部分構造を有する本願特定の処理剤は、電子供与性のアミノ基がフェニル基に置換した構造を有しており、これにより量子ドットの凝集が抑制されているためと考えられる。
【0115】
<量子ドット含有組成物の製造>
[実施例46~66、比較例9~12]
密閉できる容器に、表5に示した配合組成にて、量子ドット含有組成物及び溶媒を配合した。その後、密閉して撹拌し、孔径1μmのメンブレンフィルターを用いてろ過を行い、量子ドット含有組成物1~21、及び量子ドット含有組成物R1~R4を調整した。
【0116】
<量子ドット含有組成物の評価>
得られた量子ドット含有組成物について以下の評価を行った。結果を表5に示す。
【0117】
[沈降安定性]
沈降安定性は、量子ドット含有組成物を40℃環境下で7日間保管した後の外観を目視観察して、以下の基準で評価を行った。
◎:沈降物及び濁りなし(非常に良好)、
○:沈降物なし、ごく薄く濁り発生(良好)、
△:沈降物なし、濁りあり(使用可能)
×:沈降物あり(使用不可)
【0118】
【表5】
【0119】
表5の結果より、半導体微粒子が、カルバゾール骨格、ジアリールアミン骨格、トリアリールアミン骨格、キノリン骨格及びインドール骨格からなる群から選ばれる少なくとも1種の部分構造と、カルボキシル基及びスルファニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の吸着部位とを有する処理剤で表面処理された量子ドットを用いた組成物は、量子ドットの沈降安定性が優れており、長期にわたり安定的に使用可能である。
処理剤がトリフェニルアミン骨格を有する場合は、沈降安定性の観点において、吸着部位としてカルボキシル基又はスルファニル基を1つ有していることが好ましく、より好ましくは、カルボキシル基が芳香環に直接結合している処理剤、又は、スルファニル基がアルキレン基を介して芳香環に結合している処理剤である。さらに、トリフェニルアミン骨格が有してもよい置換基が、水素原子、無置換のアルキル基又は無置換のアルコキシ基であると特に好ましい。
処理剤がカルバゾール骨格又はジフェニルアミン骨格を有する場合は、沈降安定性の観点において、X又はXがスルファニル基を有する基である処理剤が好ましい。より好ましくは、当該スルファニル基を有する基が、アルキレン基とエステル結合を有するものである。
作用機構は明確になっていないが、量子ドット間の疑似架橋による凝集の可能性がないように吸着部位は処理剤材1分子あたり1部位が良好と考えられ、骨格と吸着部位の間に適切な交互作用があり、良好な組み合わせとなった場合にあり、良好な結果をなったと推定される。