(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】誘導加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/40 20060101AFI20230307BHJP
H05B 6/44 20060101ALI20230307BHJP
H05B 6/36 20060101ALI20230307BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20230307BHJP
B23K 1/002 20060101ALI20230307BHJP
B23K 1/18 20060101ALI20230307BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
H05B6/40
H05B6/44
H05B6/36 B
H05B6/10 331
B23K1/002
B23K1/18 B
B23K1/00 330H
(21)【出願番号】P 2019120087
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】591150797
【氏名又は名称】株式会社デンソーエアクール
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】柳田 昭
(72)【発明者】
【氏名】新郷 晴紀
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/018438(WO,A1)
【文献】特許第6268653(JP,B2)
【文献】特開2009-254027(JP,A)
【文献】特開平10-296433(JP,A)
【文献】特公昭49-029411(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/00- 6/44
B23K 1/00-33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器(1)における、アルミニウムを含む材質によって形成された部材同士を接続したろう付け接合部を、高周波電流の通電によって磁束を発生させて誘導電流により加熱する
複数のコイル(3;10
3;503)と、
前記コイルに通電する高周波電流を出力する電流出力部(4)と、
を備え、
前記コイルは、
複数の前記ろう付け接合部が並んで列をなす被加熱対象物に沿って延びて、誘導電流により前記被加熱対象物を加熱する第1加熱部(31a,32a,33a,34a,35a)と、
前記被加熱対象物および前記第1加熱部に沿うように延び、高周波電流が前記第1加熱部に流れる電流の向きとは逆向きに流れて、誘導電流により前記被加熱対象物を加熱する第2加熱部(31b,32b,33b,34b,35b)と、
高周波電流が前記第1加熱部から前記第2加熱部に流れるように前記第1加熱部と前記第2加熱部とを連結する折返し部(31c,32c,33c,34c,35c)と、
を含
み、
複数の前記コイルは、複数の前記ろう付け接合部が並ぶ方向に対して直交する複数列方向に並んでおり、
前記コイルは、前記複数列方向に少なくとも2個並んでいる前記被加熱対象物のそれぞれに対して、前記複数列方向について前記被加熱対象物の一方側の側方と他方側の側方との両方に設置されており、
前記一方側の前記コイルと前記他方側の前記コイルは、互いに前記第1加熱部と前記第2加熱部とが対向しかつ電流の向きが逆向きになるように、設置されており、
前記第1加熱部と前記第2加熱部は、側方視された前記被加熱対象物が前記第1加熱部と前記第2加熱部の間に位置するように、設置されており、
前記複数列方向に少なくとも2個並んでいる前記被加熱対象物は、第1の被加熱対象物と第2の被加熱対象物を含み、
前記第1の被加熱対象物に対して、一方側に位置する第1コイル部と他方側に位置する第2コイル部は、前記第1コイル部における前記第2加熱部と前記第2コイル部における前記第1加熱部とが複数の被加熱対象物が並ぶ方向について前記折返し部の反対側に位置する連結部によって連結されて、設けられている構成であり、
前記第2の被加熱対象物に対して、一方側に位置する前記第2コイル部と他方側に位置する第3コイル部は、前記第2コイル部における前記第2加熱部と前記第3コイル部における前記第1加熱部とが複数の被加熱対象物が並ぶ方向について前記折返し部の反対側に位置する連結部によって連結されて、設けられている構成である誘導加熱装置。
【請求項2】
前記
折返し部と前記連結部は、
複数の前記ろう付け接合部が並ぶ方向について前記被加熱対象物よりも外側であって、前記被加熱対象物に対して前記複数列方向に対向しない位置に設けられている請求項1に記載の誘導加熱装置。
【請求項3】
熱交換器(1)における、アルミニウムを含む材質によって形成された部材同士を接続したろう付け接合部を、高周波電流の通電によって磁束を発生させて誘導電流により加熱するコイル(203;303;403;503)と、
前記コイルに通電する高周波電流を出力する電流出力部(4)と、
を備え、
前記コイルは、
複数の前記ろう付け接合部が並んで列をなす被加熱対象物に沿って延びて、誘導電流により前記被加熱対象物を加熱する第1加熱部(31a,32a,33a,34a,35a)と、
前記被加熱対象物および前記第1加熱部に沿うように延び、高周波電流が前記第1加熱部に流れる電流の向きとは逆向きに流れて、誘導電流により前記被加熱対象物を加熱する第2加熱部(31b,32b,33b,34b,35b)と、
高周波電流が前記第1加熱部から前記第2加熱部に流れるように前記第1加熱部と前記第2加熱部とを連結する折返し部(31c,32c,33c,34c,35c)と、
を含み、
前記コイルは、前記第1加熱部と前記第2加熱部が前記被加熱対象物に対して両側に位置するように、設置されている誘導加熱装置。
【請求項4】
前記コイル
(203)は、
第1コイル部(131)と、前記第1コイル部に沿うように延びる第2コイル部(132)とを含み、
前記第1コイル部と前記第2コイル部とは、これらのコイル部の間に前記被加熱対象物が介在するように設置されており、
前記
第1コイル部における前記第1加熱部と前記第2コイル部における前記第2加熱部とは、対向しかつ電流の向きが逆向きになる関係であり、
前記第1コイル部における前記第2加熱部と前記第2コイル部における前記第1加熱部とは、対向しかつ電流の向きが逆向きになる
関係である請求項
3に記載の誘導加熱装置。
【請求項5】
前記コイル
(303)は、前記第1加熱部と前記第2加熱部
の間に前記被加熱対象物が介在するように、設置されている請求項
3に記載の誘導加熱装置。
【請求項6】
前記コイル
を冷却するための冷却用流体が流通可能な冷却装置(6)を備え、
前記冷却装置は前記冷却用流体が前記コイルに対して並列に流れる冷却用通路を有し、
前記高周波電流は前記コイルに対して直列に流れる構成である請求項1から請求項5
のいずれか一項に記載の誘導加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、誘導加熱装置および熱交換器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、特許文献2および特許文献3には、金属製の管同士の接合に関して、誘導加熱装置を用いたろう付け接合の方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5842183号公報
【文献】特許第6065743号公報
【文献】特許第6268653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、特許文献2、特許文献3のそれぞれに開示されたろう付け接合の方法は、生産性の向上に関して、改善の余地がある。
【0005】
開示される一つの目的は、ろう付け接合の生産性を高めることが可能な誘導加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示された誘導加熱装置の一つは、熱交換器(1)における、アルミニウムを含む材質によって形成された部材同士を接続したろう付け接合部を、高周波電流の通電によって磁束を発生させて誘導電流により加熱する複数のコイル(3;103;503)と、コイルに通電する高周波電流を出力する電流出力部(4)と、を備え、
コイルは、複数のろう付け接合部が並んで列をなす被加熱対象物に沿って延びて、誘導電流により被加熱対象物を加熱する第1加熱部(31a,32a,33a,34a,35a)と、被加熱対象物および第1加熱部に沿うように延び、高周波電流が第1加熱部に流れる電流の向きとは逆向きに流れて、誘導電流により被加熱対象物を加熱する第2加熱部(31b,32b,33b,34b,35b)と、高周波電流が第1加熱部から第2加熱部に流れるように第1加熱部と第2加熱部とを連結する折返し部(31c,32c,33c,34c,35c)と、を含む。
複数のコイルは、複数のろう付け接合部が並ぶ方向に対して直交する複数列方向に並んでおり、
コイルは、複数列方向に少なくとも2個並んでいる被加熱対象物のそれぞれに対して、複数列方向について被加熱対象物の一方側の側方と他方側の側方との両方に設置されており、
一方側のコイルと他方側のコイルは、互いに第1加熱部と第2加熱部とが対向しかつ電流の向きが逆向きになるように、設置されており、
第1加熱部と第2加熱部は、側方視された被加熱対象物が第1加熱部と第2加熱部の間に位置するように、設置されており、
複数列方向に少なくとも2個並んでいる被加熱対象物は、第1の被加熱対象物と第2の被加熱対象物を含み、
第1の被加熱対象物に対して、一方側に位置する第1コイル部と他方側に位置する第2コイル部は、第1コイル部における第2加熱部と第2コイル部における第1加熱部とが複数の被加熱対象物が並ぶ方向について折返し部の反対側に位置する連結部によって連結されて、設けられている構成であり、
第2の被加熱対象物に対して、一方側に位置する第2コイル部と他方側に位置する第3コイル部は、第2コイル部における第2加熱部と第3コイル部における第1加熱部とが複数の被加熱対象物が並ぶ方向について折返し部の反対側に位置する連結部によって連結されて、設けられている構成である。
開示された誘導加熱装置の一つは、熱交換器(1)における、アルミニウムを含む材質によって形成された部材同士を接続したろう付け接合部を、高周波電流の通電によって磁束を発生させて誘導電流により加熱するコイル(203;303;403;503)と、コイルに通電する高周波電流を出力する電流出力部(4)と、を備え、
コイルは、複数のろう付け接合部が並んで列をなす被加熱対象物に沿って延びて、誘導電流により被加熱対象物を加熱する第1加熱部(31a,32a,33a,34a,35a)と、被加熱対象物および第1加熱部に沿うように延び、高周波電流が第1加熱部に流れる電流の向きとは逆向きに流れて、誘導電流により被加熱対象物を加熱する第2加熱部(31b,32b,33b,34b,35b)と、高周波電流が第1加熱部から第2加熱部に流れるように第1加熱部と第2加熱部とを連結する折返し部(31c,32c,33c,34c,35c)と、を含み、コイルは、第1加熱部と第2加熱部が被加熱対象物に対して両側に位置するように、設置されている。
【0008】
この誘導加熱装置によれば、被加熱対象物に沿うように延びる第1加熱部と第2加熱部とによって、複数のろう付け接合部に対して一斉に誘導電流を発生させることができる。この誘導加熱装置は、複数のろう付け接合部をまとめて誘導加熱できるので、ろう付け接合の生産性を高めることができる。また、コイルを複数のろう付け接合部の並び方向に移動させることにより、コイルを複数のろう付け接合部の近傍に設置することができる。これにより、複数のろう付け接合部をまとめて誘導加熱できるコイルの設置作業性が高く、ろう付け接合の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】コイルとろう付け接合部とを示した平面図である。
【
図6】コイルとろう材との位置関係を示した平面図である。
【
図7】ろう付け接合部とろう材との位置関係を示した図である。
【
図9】第1実施形態について磁束と誘導電流とを示した正面図である。
【
図10】第1実施形態のコイルとろう付け接合部とを示した側面図である。
【
図11】比較例について磁束を示した正面図である。
【
図12】比較例について誘導電流を示した側面図である。
【
図13】第2実施形態について磁束と誘導電流とを示した正面図である。
【
図14】第3実施形態について磁束と誘導電流とを示した正面図である。
【
図15】第4実施形態について磁束と誘導電流とを示した正面図である。
【
図16】第5実施形態について磁束と誘導電流とを示した正面図である。
【
図17】第6実施形態に係る装置の平面断面図である。
【
図21】第6実施形態の装置における側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について
図1~
図12を参照しながら説明する。アルミニウム製の部材同士のろう付け接合部は、熱交換器に適用することができる。ろう付け接合部は、管同士の結合部、管と容器の結合部などに適用される。この明細書におけるろう付け接合部は、誘導加熱装置を使用して製造することができる。ろう付け接合部は、高周波電流の通電により発生した磁束に配置されることで、誘導電流が発生してジュール熱により自己発熱する。この発熱により、ろう付け接合部のろう材が溶融し、さらにろう材が固化すると接合が完了する。
【0014】
熱交換器1は、誘導加熱装置10を用いて接合されたろう付け接合部を備え、管12の内部を流れる流体と管の外部を流れる流体との間で熱交換を提供する。
図1に示すように、熱交換器1は、複数の管12と複数のフィン18とサイドプレート11とフィン18およびサイドプレート11に挿通された管12とを有する。管12は、主成分としてアルミニウムを含む材質によって形成されている。熱交換器1は、フィン18とサイドプレート11を一方向に並べ、サイドプレート11およびフィン18を貫通する複数の開口部に管12を挿通し、サイドプレート11の外側で管12と別の管とをろう付け接合することで製造できる。管12は、流体を導入する入口管、隣接する2つの管12を接続するU字状管、管12を流通した出口管にそれぞれ接続されて流体が流通する流路を形成している。
【0015】
サイドプレート11は、非磁性材料によって形成された板状の部材である。サイドプレート11は、アルミニウム合金によって形成されていることが好ましい。サイドプレート11は、フィン18よりも厚い板厚を有する平板状部材である。サイドプレート11は、複数のフィン18のうち、並べられた方向における端部に位置するフィン18よりも外側に設置されている。サイドプレート11は、隣接するフィン18と平行に設置されている。サイドプレート11は、管12が挿通する複数の開口部を有する。開口部は、サイドプレート11を板厚方向に貫通する貫通穴である。サイドプレート11は、開口部の管12との密着によって管12を支持する支持部材である。
【0016】
ろう付け接合部を加熱する誘導加熱装置10について説明する。
図2は、サイドプレート11を平面視し、コイルとろう付け接合部との位置関係を示している。
図3は、コイルとろう付け接合部を、コイルが延びるコイルの長手方向に視た状態を示している。
図4は、コイルとろう付け接合部を、被加熱対象物の複数列の並び方向に視た状態を示している。
図5は、誘導加熱装置10の構成を示している。
図6は、サイドプレート11を平面視し、コイルとろう材との位置関係を示している。
図7は、ろう付け接合部とろう材との位置関係を示している。
図8は、ろう付け接合が完了して固化した後のろう材を示している。
【0017】
誘導加熱装置10は、電源部8と高周波インバータ4とコイル3とを備える。高周波インバータ4は、コイル3に通電する高周波電流を出力する電流出力部の一例である。高周波インバータ4は、電源部8から供給される電気を高周波エネルギに変換する高周波発振装置である。高周波インバータは4の出力は、電子式制御装置であるECU7によって制御される構成である。ECU7は、高周波インバータ4の装置内に設置されている構成でもよいし、当該装置の外部に設置されている構成でもよい。高周波インバータ4は、出力する交流電流の周波数を変更することにより磁束を制御して、ろう付け接合部の温度を制御し、ろう材の溶融状態を設定できる。また、高周波インバータ4は、出力する交流電流の周波数を変更することにより、ろう付け接合部における加熱範囲を設定することができる。ECU7は、高周波インバータ4を制御するだけでなく、ろう付け接合工程を制御する制御装置として機能する構成でもよい。
【0018】
誘導加熱装置10は、変流器5を備える。変流器5は、交流電流の大きさを変換する装置である。変流器5は、コイル3のインピーダンスが小さい場合に電流出力を増加させることができる。誘導加熱装置10は、コイル3に入力する電流値に対して高周波インバータ4の出力能力が十分である場合は変流器5を備えない構成でもよい。
【0019】
誘導加熱装置10は、コイル3を冷却するための冷却装置6を備える。冷却装置6は、コイル3を冷却するための冷却用流体が流通する冷却用通路を有する。冷却装置6は、例えば、冷却水などの冷却用流体が循環する流体循環回路を有している。ECU7は、冷却装置6の運転、停止を制御する制御装置として機能する構成でもよい。冷却装置6は、電源部8、基盤類、高周波インバータ4の冷却する装置として用いる構成としてもよい。
【0020】
図2~
図4、
図6に示すように、誘導加熱装置10は、ろう材が塗布された複数のろう付け接合部を一度に加熱してろう付け接合できる装置である。複数のろう付け接合部は、並んで列をなしており、誘導加熱装置10によって加熱される被加熱対象物である。複数のろう付け接合部の並び方向は、各図における一列の並び方向に相当し、被加熱対象物が延びる方向であり、被加熱対象物に沿う方向でもある。この明細書において、ろう付け接合部による一列の並び方向は単に並び方向ともいう。
【0021】
熱交換器1は、複数のろう付け接合部である列を複数有している。熱交換器1は、列をなす被加熱対象物を複数列有している。複数の被加熱対象物が並ぶ方向は、複数列方向に相当する。複数列方向は、ろう付け接合部の一列の並び方向に対して直交する方向であり、かつサイドプレート11に沿う方向である。複数列の被加熱対象部は、等間隔に複数列方向に並んでいることが好ましい。
【0022】
この実施形態の熱交換器1は、
図2、
図3および
図6に示すように、4列の被加熱対象物を有している。ここでは、第1列の被加熱対象物に含まれる管12を第1列の管12aとし、第2列の被加熱対象物に含まれる管12を第2列の管12bとする。さらに、第3列の被加熱対象物に含まれる管12を第3列の管12cとし、第4列の被加熱対象物に含まれる管12を第4列の管12dとする。管12a、管12b、管12cおよび管12dは、熱交換器1において、一続きの流体通路を形成している。
【0023】
熱交換器1は、
図3のような様々な形状の接続管、第1の被加熱対象物である管12aと分配器17、第2、第3の被加熱対象物である連結管、第4の被加熱対象物である管12dと集合器14を備える。
【0024】
第1の被加熱対象物は、4列の被加熱対象物のうち最も一方側において列をなす複数の管12aと複数の第1連結管16とが接触している結合部である。この複数の管12aのそれぞれと第1連結管16の端部16aとは、ろう付け接合部を構成する。第1連結管16は、管12aと分配器17とを連結する管である。分配器17は、例えば、外部から流入した流体を複数の管12aに分配する容器である。例えば、管12aは、熱交換器1の内部通路において上流側の流路を形成する。第1の被加熱対象物を構成するすべてのろう付け接合部は、サイドプレート11に対してほぼ等しく離間した距離に位置するように、設けられていることが好ましい。
【0025】
第2の被加熱対象物は、4列の被加熱対象物のうち第1の被加熱対象物よりも他方側において列をなす複数の管12bと複数の第2連結管15とが接触している結合部である。この複数の管12bのそれぞれと第2連結管15の一端部15aとは、ろう付け接合部を構成する。第2の被加熱対象物を構成するすべてのろう付け接合部は、サイドプレート11に対してほぼ等しく離間した距離に位置するように、設けられていることが好ましい。
【0026】
第3の被加熱対象物は、4列の被加熱対象物のうち第2の被加熱対象物よりも他方側において列をなす複数の管12cと複数の第2連結管15とが接触している結合部である。この複数の管12cのそれぞれと第2連結管15の他端部15bとは、ろう付け接合部を構成する。第2連結管15は、第2の被加熱対象物をなす複数の管12bと第3の被加熱対象物をなす複数の管12cとを連結する管であり、U字状の管である。第3の被加熱対象物を構成するすべてのろう付け接合部は、サイドプレート11に対してほぼ等しく離間した距離に位置するように、設けられていることが好ましい。
【0027】
第4の被加熱対象物は、4列の被加熱対象物のうち最も他方側において列をなす複数の管12dと複数の第3連結管13とが接触している結合部である。この複数の管12dのそれぞれと第3連結管13の端部13aとは、ろう付け接合部を構成する。第3連結管13は、管12dと集合器14とを連結する管である。集合器14は、例えば、複数の管12dから流出する流体が集まる容器である。例えば、管12dは、熱交換器1の内部通路において下流側の流路を形成する。第4の被加熱対象物を構成するすべてのろう付け接合部は、サイドプレート11に対してほぼ等しく離間した距離に位置するように、設けられていることが好ましい。複数列の被加熱対象物を構成するすべてのろう付け接合部は、サイドプレート11に対してほぼ等しく離間した距離に位置するように、設けられていることが好ましい。
【0028】
誘導加熱装置10が備えるコイルの一例について説明する。コイル3は、複数のコイル部を備えている。複数のコイル部は、複数の被加熱対象物と同様に、複数列方向に並んでいる。コイル部は、被加熱対象物に沿うように延びる形状である。複数のコイル部は、複数列方向に平行に並んでいる。コイル3を構成する複数のコイル部は、高周波電流が順番に流れるように直列に接続されている。
【0029】
各コイル部は、被加熱対象物を加熱する第1加熱部と、第1加熱部から離間し被加熱対象物を加熱する第2加熱部と、第1加熱部と第2加熱部とを連結する折返し部とを備える。第1加熱部は被加熱対象物に沿って延びている。第2加熱部は、第1加熱部と被加熱対象物とに沿って延びている。コイル部において電流は、第1加熱部、折返し部、第2加熱部の順に流れる。したがって、第2加熱部における電流の向きは、第1加熱部における電流の向きとは反対になる。コイル部は、例えば、
図4に示すように平行線をなす第1加熱部および第2加熱部と、ヘアピン状の折返し部とがU字状をなす構成である。
【0030】
コイル3は、複数列方向に隣り合う被加熱対象物の間に位置するコイル部を備える。この実施形態のコイル3は、
図2、
図3に示すように、5個のコイル部を有している。コイル3は、複数列方向に並ぶ、第1コイル部31、第2コイル部32、第3コイル部33、第4コイル部34および第5コイル部35を備える。第1コイル部31は、電流導入部36を介して電流出力部側のケーブルに接続されている。第5コイル部35は、電流導出部38に接続されている。高周波電流は、電流導入部36から第1コイル部31に流下する。5個のコイル部は、第1コイル部31から第5コイル部35まで順番に高周波電流が流れるように、直列に接続されている。高周波電流は、第5コイル部35から電流導出部38に流下する。
【0031】
コイル3は、一つの被加熱対象物に対して、複数列方向の両側に設置されている一組のコイル部を備える。コイル3は、第1の被加熱対象物の両側のうち、一方側の側方に位置する第1コイル部31と、他方側の側方に位置する第2コイル部32とを備える。第1コイル部31と第2コイル部32とは、複数列方向に対向する位置に設けられている。コイル3は、第2の被加熱対象物の両側のうち、一方側の側方に位置する第2コイル部32と、他方側の側方に位置する第3コイル部33とを備える。第2コイル部32と第3コイル部33とは、複数列方向に対向する位置に設けられている。コイル3は、第3の被加熱対象物の両側のうち、一方側の側方に位置する第3コイル部33と、他方側の側方に位置する第4コイル部34とを備える。第3コイル部33と第4コイル部34とは、複数列方向に対向する位置に設けられている。コイル3は、第4の被加熱対象物の両側のうち、一方側の側方に位置する第4コイル部34と、他方側の側方に位置する第5コイル部35とを備える。第4コイル部34と第5コイル部35とは、複数列方向に対向する位置に設けられている。
【0032】
複数列方向に隣り合うコイル部は、複数列方向に延びている連結部37によって連結されている。第1コイル部31と第2コイル部32は、連結部37aによって連結されている。連結部37aは、並び方向について被加熱対象物よりも外側であって、被加熱対象物に対向しない位置に設けられている。第2コイル部32と第3コイル部33は、連結部37bによって連結されている。連結部37bは、並び方向について被加熱対象物よりも外側であって、被加熱対象物に対向しない位置に設けられている。第3コイル部33と第4コイル部34は、連結部37cによって連結されている。連結部37cは、並び方向について被加熱対象物よりも外側であって、被加熱対象物に対向しない位置に設けられている。第4コイル部34と第5コイル部35は、連結部37dによって連結されている。連結部37dは、並び方向について被加熱対象物よりも外側であって、被加熱対象物に対向しない位置に設けられている。
【0033】
第1コイル部31は、第1加熱部31aと、第1加熱部31aよりもサイドプレート11側に位置する第2加熱部31bと、折返し部31cとを備える。折返し部31cは、並び方向について連結部37aの反対側において被加熱対象物よりも外側であり、被加熱対象物に対向しない位置に設けられている。第1加熱部31aは、被加熱対象物よりもサイドプレート11の反対側に位置している。第2加熱部31bは、被加熱対象物よりもサイドプレート11寄りに位置している。第1加熱部31aと第2加熱部31bは、側方視された被加熱対象物が第1加熱部31aと第2加熱部31bの間に位置するように、設置されている。高周波電流は、第1コイル部31において、第1加熱部31a、折返し部31c、第2加熱部31bの順に流れ、さらに連結部37aを介して第2コイル部32へ流下する。
【0034】
第2コイル部32は、第1加熱部32aと、第1加熱部32aよりもサイドプレート11の反対側に位置する第2加熱部32bと、折返し部32cとを備える。折返し部32cは、並び方向について連結部37の反対側において被加熱対象物よりも外側であり、被加熱対象物に対向しない位置に設けられている。第1加熱部32aは、被加熱対象物よりもサイドプレート11寄りに設置されている。第2加熱部32bは、被加熱対象物よりもサイドプレート11の反対側に設置されている。第1加熱部32aと第2加熱部32bは、側方視された被加熱対象物が第1加熱部32aと第2加熱部32bの間に位置するように、設置されている。第1加熱部31aと第2加熱部32bは、複数列方向に対向する位置に設けられている。第2加熱部31bと第1加熱部32aは、複数列方向に対向する位置に設けられている。折返し部31cと折返し部32cは、複数列方向に対向する位置に設けられている。高周波電流は、第2コイル部32において、第1加熱部32a、折返し部32c、第2加熱部32bの順に流れ、さらに連結部37bを介して第3コイル部33へ流下する。
【0035】
第3コイル部33は、第1加熱部33aと、第1加熱部33aよりもサイドプレート11側に位置する第2加熱部33bと、折返し部33cとを備える。折返し部33cは、並び方向について連結部37の反対側において被加熱対象物よりも外側であり、被加熱対象物に対向しない位置に設けられている。第1加熱部33aは、被加熱対象物よりもサイドプレート11の反対側に設置されている。第2加熱部33bは、被加熱対象物よりもサイドプレート11寄りに設置されている。第1加熱部33aと第2加熱部33bは、側方視された被加熱対象物が第1加熱部33aと第2加熱部33bの間に位置するように、設置されている。第1加熱部32aと第2加熱部33bは、複数列方向に対向する位置に設けられている。第2加熱部32bと第1加熱部33aは、複数列方向に対向する位置に設けられている。折返し部32cと折返し部33cは、複数列方向に対向する位置に設けられている。高周波電流は、第3コイル部33において、第1加熱部33a、折返し部33c、第2加熱部33bの順に流れ、さらに連結部37cを介して第4コイル部34へ流下する。
【0036】
第4コイル部34は、第1加熱部34aと、第1加熱部34aよりもサイドプレート11の反対側に位置する第2加熱部34bと、折返し部34cとを備える。折返し部34cは、並び方向について連結部37の反対側において被加熱対象物よりも外側であり、被加熱対象物に対向しない位置に設けられている。第1加熱部34aは、被加熱対象物よりもサイドプレート11寄りに設置されている。第2加熱部34bは、被加熱対象物よりもサイドプレート11の反対側に設置されている。第1加熱部34aと第2加熱部34bは、側方視された被加熱対象物が第1加熱部34aと第2加熱部34bの間に位置するように、設置されている。第1加熱部33aと第2加熱部34bは、複数列方向に対向する位置に設けられている。第2加熱部33bと第1加熱部34aは、複数列方向に対向する位置に設けられている。折返し部33cと折返し部34cは、複数列方向に対向する位置に設けられている。高周波電流は、第4コイル部34において、第1加熱部34a、折返し部34c、第2加熱部34bの順に流れ、さらに連結部37dを介して第5コイル部35へ流下する。
【0037】
第5コイル部35は、第1加熱部35aと、第1加熱部35aよりもサイドプレート11側に位置する第2加熱部35bと、折返し部35cとを備える。折返し部35cは、並び方向について連結部37の反対側において被加熱対象物よりも外側であり、被加熱対象物に対向しない位置に設けられている。第1加熱部35aは、被加熱対象物よりもサイドプレート11の反対側に設置されている。第2加熱部35bは、被加熱対象物よりもサイドプレート11寄りに設置されている。第1加熱部35aと第2加熱部35bは、側方視された被加熱対象物が第1加熱部35aと第2加熱部35bの間に位置するように、設置されている。第1加熱部34aと第2加熱部35bは、複数列方向に対向する位置に設けられている。第2加熱部34bと第1加熱部35aは、複数列方向に対向する位置に設けられている。折返し部34cと折返し部35cは、複数列方向に対向する位置に設けられている。高周波電流は、第5コイル部35において、第1加熱部35a、折返し部35c、第2加熱部35bの順に流れ、電流導出部38に流下する。
【0038】
第1コイル部31または第2加熱部31bは、サイドプレート11に対して30mm以下の距離となるように設置されている。第2コイル部32または第1加熱部32aは、サイドプレート11に対して30mm以下の距離となるように設置されている。第3コイル部33または第2加熱部33bは、サイドプレート11に対して30mm以下の距離となるように設置されている。第4コイル部34または第1加熱部34aは、サイドプレート11に対して30mm以下の距離となるように設置されている。第5コイル部35または第2加熱部35bは、サイドプレート11に対して30mm以下の距離となるように設置されている。サイドプレート11がアルミニウムなどの非磁性の金属で形成されている場合には、上記の各距離は3~8mmの範囲に設定するようにしてもよい。非磁性材料のサイドプレート11によれば、コイル3の通電によりろう付け接合部のろう付け接合が行われた場合に、磁性体である鉄と比較して誘導電流で加熱されにくい。これにより、サイドプレート11の過加熱によるサイドプレートの母材溶融、ろう付け接合部の過加熱で発生する母材溶融、熱交換器部材の溶融を防ぐことができる。このようなコイルとサイドプレート11との距離関係は、明細書におけるすべての実施形態において適用されるものである。
【0039】
ろう付け接合部材を備える熱交換器の製造方法は、ろう付け接合部の設置工程と、ろう材の設置工程と、コイルの設置工程と、加熱溶融工程と、ろう材の固化工程とを含む。ろう付け接合部の設置工程は、ろう付けする部材と部材とを接続して所定位置に設置する工程である。この工程では、
図2~
図4を参照して説明した、前述の被加熱対象物を準備する工程である。
【0040】
ろう材の設置工程は、後の加熱溶融工程において溶融するろう材を所定位置に設置する工程である。この工程では、
図6および
図7に示す位置にろう材19を塗布することが好ましい。
図6は、複数列の被加熱対象物を有する場合に、ろう材19と各コイル部との位置関係を示している。
図7は、ろう材19の設置場所の代表例として、管12dと第3連結管13との結合部における状態を示している。この工程では、ペースト状のろう材19を、ろう付け接合部を構成する部材である管において各コイル部と対向しない側面に塗布する。各コイル部と対向しない側面は、管表面において、並び方向またはコイルの挿入方向の両端に位置する側面である。ペースト状のろう材19は、ろう合金、フラックス、バインダ、溶剤などの混合物である。この位置に塗布されたろう材19によれば、被加熱対象物の側方に設置されたコイル部とろう材19との距離が、コイル部と管との距離よりも小さくなることを防止できる。このため、後のコイルを複数のろう付接合部の近傍に設置する工程や加熱溶融工程において、ろう材19がコイル部に干渉する事態を抑制できる。
【0041】
コイルの設置工程は、被加熱対象物に対してコイルを、
図2~
図4を参照して説明した所定位置に設置する工程である。コイルの設置工程では、コイルを被加熱対象物に沿うように移動させて、被加熱対象物近傍の所定位置に設置する。コイルの設置工程では、コイルが被加熱対象物に対して平行に並ぶようにコイルを設置する。複数の被加熱対象物をろう付け接合する場合には、コイルの設置工程において複数のコイル部を同時に被加熱対象物に沿うように移動させて所定位置に設置する。各コイル部は、隣り合う被加熱対象物の中間に設置されている。
【0042】
加熱溶融工程は、前述したように、高周波インバータ4の出力を制御してろう付け接合部を加熱し、ろう材19を溶融する工程である。加熱溶融工程では、ろう材19が適正に溶融するようにろう付け接合部の加熱温度や加熱範囲を設定している。
【0043】
ろう材の固化工程は、加熱溶融工程において溶融して接合部を適正に接合したろう材を固化する工程である。この工程では、所定時間が経過するまで、ろう付け接合部を常温または所定温度の環境下におく。固化工程が完了すると、製品においてろう材19は
図8に示すような状態で固化した痕跡が残ることが想定できる。
図8は、ろう付け後の代表例として、管12dと第3連結管13との結合部において固化したろう材19を示している。
図8に示すように、ろう材19は、ろう付け接合部を構成する部材においてコイルに対向する側面には他の側面よりも少ない量が存在するように、固化している。このように部材においてコイルと対向する側面に流れ込むろう材19が少ないことは、
図7に示すろう材19の設置位置によるためである。これにより、コイルを複数のろう付接合部の近傍に設置する工程においてろう材19がコイルに接近しすぎる状態を抑制できる。また、加熱溶融工程において溶融したろう材19がコイルに接近しすぎる状態を抑制することができる。以上の製造工程によれば、列をなす複数のろう付け接合部をまとめてろう付け接合できる製造方法を提供できる。さらに以上の製造工程によれば、複数のろう付け接合部の列が複数の列をなす複数の被加熱対象物をまとめてろう付け接合できる製造方法を提供できる。
【0044】
ろう材の設置工程では、ろう材として、例えば、適正ろう材量となるように、1巻きまたは複数巻きのリングろう材をコイルに接近しすぎないように設置してもよい。あるいは、ろう材の設置工程では、差しろう材をろう付け接合部に供給することにより設置してもよい。この構成でも、コイルを複数のろう付接合部の近傍に設置する工程や加熱溶融工程においてろう材19がコイルに接近しすぎる状態を抑制することができる。
【0045】
次に誘導加熱装置10を用いて製造されたろう付け接合部に作用する誘導電流について
図9および
図10を参照して説明する。
図9は、第1の被加熱対象物、第2の被加熱対象物および第3の被加熱対象物のそれぞれに作用する誘導電流と、コイル3の通電により発生する磁束とを示している。
図9において、実線の矢印は磁束の向きを示し、コイル部には高周波電流の向きを示し、白抜き太矢印はろう付け接合部に作用する誘導電流を示している。
図10において、第2コイル部32には高周波電流の向きを示し、白抜きの太矢印はろう付け接合部に作用する誘導電流を示している。
【0046】
第1コイル部31と第2コイル部32の間に存在する複数のろう付け接合部に作用する誘導電流について説明する。第1加熱部31aと第2加熱部32bを流れる電流によって、ろう付け接合部およびその反プレート側近傍にはサイドプレート11から離れる方向に磁束が発生する。第1加熱部31aと第2加熱部32bの間の部位には、この磁束を打ち消す向きの磁束を発生させる誘導電流により、
図9の白抜き太矢印のような渦電流が集中的に発生する。さらにろう付け接合部およびそのプレート側近傍には、第2加熱部31bと第1加熱部32aを流れる電流によって、サイドプレート11に近づく方向に磁束が発生する。第2加熱部31bと第1加熱部32aの間の部位には、この磁束を打ち消す向きの磁束を発生させる誘導電流により、
図9の白抜き太矢印のような渦電流が集中的に発生する。反プレート側近傍の渦電流とプレート側近傍の渦電流によれば、第1の被加熱対象物における複数のろう付け接合部を均一な状態に加熱することに寄与する。第1の被加熱対象物において、反プレート側近傍の渦電流とプレート側近傍の渦電流は、渦の向きが逆向きになっている。
【0047】
第2コイル部32と第3コイル部33の間に存在する複数のろう付け接合部に作用する誘導電流について説明する。第2加熱部32bと第1加熱部33aを流れる電流によって、ろう付け接合部およびその反プレート側近傍にはサイドプレート11に近づく方向に磁束が発生する。第2加熱部32bと第1加熱部33aの間の部位には、この磁束を打ち消す向きの磁束を発生させる誘導電流により、
図9の白抜き太矢印のような渦電流が集中的に発生する。さらにろう付け接合部およびそのプレート側近傍には、第1加熱部32aと第2加熱部33bを流れる電流によって、サイドプレート11から離れる方向に磁束が発生する。第1加熱部32aと第2加熱部33bの間の部位には、この磁束を打ち消す向きの磁束を発生させる誘導電流により、
図9の白抜き太矢印のような渦電流が集中的に発生する。反プレート側近傍の渦電流とプレート側近傍の渦電流によれば、第2の被加熱対象物における複数のろう付け接合部を均一な状態に加熱することに寄与する。第2の被加熱対象物において、反プレート側近傍の渦電流とプレート側近傍の渦電流は、渦の向きが逆向きになっている。
【0048】
第3コイル部33と第4コイル部34の間に存在する複数のろう付け接合部に作用する誘導電流について説明する。第1加熱部33aと第2加熱部34bを流れる電流によって、ろう付け接合部およびその反プレート側近傍にはサイドプレート11から離れる方向に磁束が発生する。第1加熱部33aと第2加熱部34bの間の部位には、この磁束を打ち消す向きの磁束を発生させる誘導電流により、
図9の白抜き太矢印のような渦電流が集中的に発生する。さらにろう付け接合部およびそのプレート側近傍には、第2加熱部33bと第1加熱部34aを流れる電流によって、サイドプレート11に近づく方向に磁束が発生する。第2加熱部33bと第1加熱部34aの間の部位には、この磁束を打ち消す向きの磁束を発生させる誘導電流により、
図9の白抜き太矢印のような渦電流が集中的に発生する。反プレート側近傍の渦電流とプレート側近傍の渦電流によれば、第3の被加熱対象物における複数のろう付け接合部を均一な状態に加熱することに寄与する。第3の被加熱対象物において、反プレート側近傍の渦電流とプレート側近傍の渦電流は、渦の向きが逆向きになっている。いずれの渦電流も、ろう付け接合部を構成する管の周囲を周回するように流れるようになる。
【0049】
これに対して比較例として、ろう付け接合部の両側に設けられて対向する第1コイル部100と第2コイル部101とに同じ向きに電流が流れる場合について説明する。
図11は、比較例について、コイルの通電によって発生する磁束を正面から示している。
図12は、同様の比較例について、渦電流でないループ状の誘導電流を示している。
図11および
図12は、代表例として、管12dと第3連結管13のろう付け接合部について示している。
【0050】
図11に示すように、第1コイル部100の第1加熱部100aと第2コイル部101の第1加熱部101aは、被加熱対象物を間において対向する関係にある。第1コイル部100の第2加熱部100bと第2コイル部101の第2加熱部101bは、被加熱対象物を間において対向する関係にある。第1加熱部100aと第1加熱部101aには同じ向きに電流が流れるため、ろう付け接合部の反プレート側近傍には、
図11のような当該部位を横切る磁束が発生する。第2加熱部100bと第2加熱部101bには同じ向きに電流が流れるため、ろう付け接合部のプレート側近傍には、
図11のような当該部位を横切る磁束が発生する。これらの磁束は、ろう付け接合部に対して同じ向きに横切る磁束を提供する。
【0051】
ろう付け接合部には、
図12において破線で示すように誘導電流が発生する。この誘導電流は、ろう付け接合部を通過し、並び方向に隣り合うろう付け接合管をループするように流れる。
図12において隣り合う破線の誘導電流は打ち消し合う関係になり、誘導電流の密度が場所によって不均一になる。したがって、複数のろう付け接合部を均一に自己発熱させることが難しく、複数のろう付け接合部の温度を均一に近づけることが難しい。誘導加熱装置10を用いて作用する誘導電流によれば、前述したように、各ろう付け接合部の近傍において集中的な渦電流を形成できる。このため、比較例と比べて、
図3のような熱交換器においてもループを形成せず、複数のろう付け接合部の温度を均一に近づける誘導電流密度を提供することができる。
【0052】
次に第1実施形態の誘導加熱装置10がもたらす作用効果について説明する。誘導加熱装置10は、コイル3と、コイル3に通電する高周波電流を出力する電流出力部とを備える。コイル3は熱交換器1における、アルミニウムを含む材質によって形成された部材同士のろう付け接合部を、高周波電流の通電によって磁束を発生させて誘導電流により加熱する。コイル3は、第1加熱部と、第2加熱部と、高周波電流が第1加熱部から第2加熱部に流れるように第1加熱部と第2加熱部とを連結する折返し部とを含む。第1加熱部と第2加熱部は、被加熱対象物に沿うように延びており、誘導電流により被加熱対象物を加熱する。第2加熱部は、第1加熱部に沿うように延びており、高周波電流が第1加熱部に流れる電流の向きとは逆向きに流れる。
【0053】
誘導加熱装置10によれば、被加熱対象物に沿うように延びる第1加熱部と第2加熱部とによって複数のろう付け接合部に対して一斉に誘導電流を発生させて加熱できる。誘導加熱装置10は、複数のろう付け接合部をまとめて誘導加熱できるので、ろう付け接合部の生産性の向上を図ることができる。製造工程においてコイル3を複数のろう付け接合部の並び方向に移動させる動作ができるため、複数のろう付け接合部の近傍に対してコイル3を少ない工数により設置できる。これにより、複数のろう付け接合部をまとめて誘導加熱するためのコイル3の設置作業性が良好になり、ろう付け接合の生産性を高めることができる。誘導加熱装置10によれば、複数のろう付け接合部を誘導電流により一斉にろう付け接合できるコイル3を複雑でない形状によって提供できる。
【0054】
このように誘導加熱装置10は、複数のろう付け接合部をまとめて誘導加熱できるため、多種多様な熱交換器の生産性の向上、設備の小型化を実現することができる。
【0055】
コイル3は、被加熱対象物の両側のうち一方側の側方に位置する。第1加熱部と第2加熱部は、側方視された被加熱対象物が第1加熱部と第2加熱部の間に位置するように、被加熱対象物に対して設置されている。この構成によれば、被加熱対象物に対して、第1加熱部が与える磁束と第2加熱部が与える磁束は逆向きになる。これらの磁束は、被加熱対象物を構成する複数のろう付け接合部に対して、プレート側と反プレート側との両側において渦電流を発生させる。ろう付け接合部の両側に作用する渦電流は、複数のろう付け接合部を同様に自己発熱させ、被加熱対象物に含まれるすべてのろう付け接合部を同様な温度に加熱できる。
【0056】
コイル3は、被加熱対象物の両側のうち一方側の側方に位置する第1コイル部31と他方側の側方に位置して第1コイル部31に沿うように延びる第2コイル部32とを含む。第1コイル部31における第1加熱部31aと第2コイル部32における第2加熱部32bとは、対向しかつ電流の向きが逆向きになる関係である。第1コイル部31における第2加熱部31bと第2コイル部32における第1加熱部32aとは、対向しかつ電流の向きが逆向きになる関係である。
【0057】
この構成によれば、第1コイル部31と第2コイル部32の間に存在する被加熱対象物に対して、対向関係の第1加熱部と第2加熱部は
図9のように同じ向きの磁束を与える。さらにこの磁束は、ろう付け接合部に対して、プレート側と反プレート側とのそれぞれにおいて渦電流を発生させる。このような渦電流の発生により、複数のろう付け接合部は同様に自己発熱し、被加熱対象物に含まれるすべてのろう付け接合部を同様な温度に加熱できる。被加熱対象物に含まれる複数のろう付け接合部についてろう付け後の接合状態のばらつきが少なく、ろう付け品質の安定化が図れる誘導加熱装置10を提供できる。
【0058】
コイルは、少なくとも2個並んでいる被加熱対象物に対して、被加熱対象物の一方側の側方と他方側の側方との両方に設置されている。一方側のコイルと他方側のコイルは、互いに第1加熱部と第2加熱部とが対向しかつ電流の向きが逆向きになるように、設置されている。
【0059】
これによれば、複数の被加熱対象物のそれぞれについて、両側にコイルが存在し、対向関係の第1加熱部と第2加熱部は
図9のように同じ向きの磁束を与える。この磁束は、複数の被加熱対象物を構成するすべてのろう付け接合部に対して、プレート側と反プレート側との両側のそれぞれにおいて渦電流を発生させる。このような渦電流の発生により、各ろう付け接合部は同様に自己発熱し、複数の被加熱対象物を構成するすべてのろう付け接合部を同様な温度に加熱することができる。複数の被加熱対象物に含まれるろう付け接合部についてろう付け後の接合状態のばらつきが少なく、ろう付け品質の安定化が図れる誘導加熱装置10を提供できる。
【0060】
誘導加熱装置10がろう付け接合するろう付け接合部は、互いに接続された管と管との接合部である。コイル3は一方の管を支持する熱交換器1のサイドプレート11に近接して設置されている。サイドプレート11の材質は、例えばアルミ合金である。この構成によれば、誘導加熱装置10によるろう付け接合時に、サイドプレート11の過加熱によるサイドプレートの母材溶融、ろう付け接合部の過加熱で発生する母材溶融、熱交換器部材の溶融などを防ぐことができる。
【0061】
サイドプレート11とコイル3の最短離間距離は30mm以下である。この構成によれば、ろう付け接合時のサイドプレート11の温度を、製品として機能を果たせる許容範囲に抑えられる誘導加熱装置10を提供できる。
【0062】
熱交換器の製造方法は、熱交換器1における、アルミニウムを含む材質によって形成された部材同士を接続したろう付け接合部を、高周波電流を通電するコイルを用いて加熱してろう付け接合する製造方法である。この製造方法は、ろう付け接合部を複数個、列をなすように並べて設置して被加熱対象物を形成するろう付け接合部の設置工程と、ろう材の設置工程と、コイルの設置工程と、加熱溶融工程と、ろう材の固化工程とを含む。ろう材の設置工程は、ろう付け接合部を形成するろう材を設置する。コイルの設置工程は、第1加熱部、第2加熱部、および第1加熱部と第2加熱部とを連結する折返し部を備えるコイルを、第1加熱部と第2加熱部とが被加熱対象物の近傍において被加熱対象物に沿うように、設置する。加熱溶融工程は、コイルに高周波電流を通電して、第1加熱部を流れる電流と、第1加熱部を流れる電流の向きとは逆向きに第2加熱部を流れる電流とによって磁束を発生させ、誘導電流により被加熱対象物を加熱してろう材を溶融する。ろう材の固化工程は、加熱溶融工程において溶融してろう付け接合部を接合したろう材を固化する。
【0063】
この製造方法によれば、被加熱対象物に沿うように延びる第1加熱部と第2加熱部とによって複数のろう付け接合部に対して一斉に誘導電流を発生させて加熱することができる。このように複数のろう付け接合部をまとめて誘導加熱できるので、ろう付け接合部の生産性の向上を図ることができる。この製造方法は、コイル3を複数のろう付け接合部の並び方向に移動させる動作が実施できるため、複数のろう付け接合部の近傍に対してコイル3を少ない工数により設置できる。したがって、複数のろう付け接合部をまとめて誘導加熱するためのコイル3の設置作業性が良好になり、ろう付け接合の生産性を向上可能である。
【0064】
ろう材の設置工程では、部材においてコイルと対向しない位置の側面にろう材を設置する。この製造方法によれば、後のコイルを複数のろう付接合部の近傍に設置する工程や加熱溶融工程においてろう材19がコイル3に接近して、工程進捗やろう付け接合の品質が損なわれる事態を抑えることに寄与する。
【0065】
さらにコイルの設置工程においては、コイルとして、被加熱対象物の両側のうち一方側の側方に位置する第1のコイルと他方側の側方に位置する第2のコイルとを設置する。詳細には、第1のコイルの第1加熱部と第2のコイルの第2加熱部とを対向させ、かつ第1のコイルの第2加熱部と第2のコイルの第1加熱部とを対向させる。加熱溶融工程においては、第1のコイルの第1加熱部と第2のコイルの第2加熱部とについて高周波電流の向きが逆向きになるように通電する。さらに第1のコイルの第2加熱部と第2のコイルの第1加熱部とについて高周波電流の向きが逆向きになるように通電する。
【0066】
この製造方法によれば、第1のコイルと第2のコイルの間に存在する被加熱対象物に対して、対向関係の第1加熱部と第2加熱部は
図9のように同じ向きの磁束を与える。さらにこの磁束は、プレート側と反プレート側とのそれぞれにおいて渦電流を発生させるので、複数のろう付け接合部は同様に自己発熱する。この作用によれば、被加熱対象物に含まれるすべてのろう付け接合部を同様な温度に加熱できる。被加熱対象物に含まれる複数のろう付け接合部についてろう付け後の接合状態のばらつきが少なく、ろう付け品質の安定化が図れる製造方法を提供できる。
【0067】
コイルの設置工程においては、複数の被加熱対象物に対して、それぞれが被加熱対象物の側方に隣接する複数のコイルを設置する。加熱溶融工程においては、複数のコイルのうち、任意に選択した少なくとも一つのコイルに高周波電流を通電する。これによれば、複数の被加熱対象物に対して、必要に応じて複数回に分けてろう付け接合を実施可能な製造方法を提供できる。
【0068】
(第2実施形態)
第2実施形態では、誘導加熱装置が備えるコイル103について
図13を参照して説明する。
図13において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0069】
第2実施形態のコイル103は、コイル部の個数が第1実施形態に対して相違する。コイル103は、第1コイル部31と第2コイル部32とを備える。コイル103は、一つの被加熱対象物についてろう付け接合を実施するための誘導加熱装置に適用することができる。
【0070】
第2実施形態のコイル103は、複数のコイル部が直列接続されており、電流が直列に流れている。また、コイル103は、複数のコイル部が並列に接続されて、電流が各コイル部を並列に流れる構成でもよい。
【0071】
(第3実施形態)
第3実施形態では、誘導加熱装置が備えるコイル203について
図14を参照して説明する。
図14において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0072】
第3実施形態のコイル203は、被加熱対象物とコイル部との位置関係が第1実施形態に対して相違する。コイル203は、複数のろう付け接合部を間において、管12や第1連結管16が延びる方向に対向する第1コイル部131と第2コイル部132とを備える。第2コイル部132は、第1コイル部131よりもサイドプレート11側に位置する。
【0073】
第1コイル部131は、第1加熱部131aと第2加熱部131bと折返し部131cとを備える。第1加熱部131aと第2加熱部131bの両者は、サイドプレート11との距離やろう付け接合部との距離が同じになるように、設置されている。第1加熱部131aと第2加熱部131bとの間には、第1連結管16が存在している。第1加熱部131aは、第1連結管16の両側のうち、一方側の側方に位置する。第2加熱部131bは、第1連結管16の両側のうち他方側の側方に位置する。折返し部131cは、第1連結管16を跨ぐように延びて、第1加熱部131aと第2加熱部131bとを連結している。
【0074】
第2コイル部132は、第1加熱部132aと第2加熱部132bと折返し部132cとを備える。第1加熱部132aと第2加熱部132bの両者は、サイドプレート11との距離やろう付け接合部との距離が同じになるように、設置されている。第1加熱部132aと第2加熱部132bとの間には、管12aが存在している。第2加熱部132bは、管12aの両側のうち、一方側の側方に位置する。第1加熱部132aは、管12aの両側のうち他方側の側方に位置する。折返し部132cは、管12aを跨ぐように延びて、第1加熱部132aと第2加熱部132bとを連結している。
【0075】
第1コイル部131と第2コイル部132は、側方視された被加熱対象物が第1コイル部131と第2コイル部132の間に位置するように、設置されている。第1加熱部131aと第2加熱部132bは、管12や第1連結管16が延びる方向に対向する位置に設けられている。第2加熱部131bと第1加熱部132aは、管12や第1連結管16が延びる方向に対向する位置に設けられている。折返し部131cと折返し部132cは、管12や第1連結管16が延びる方向に対向する位置に設けられている。
【0076】
コイル203は、複数のコイル部が直列接続されており、電流が直列に流れている。高周波電流は、第1コイル部131において、第1加熱部131a、折返し部131c、第2加熱部131bの順に流れ、さらに連結部を介して第2コイル部132へ流下する。高周波電流は、第2コイル部132において、第1加熱部132a、折返し部132c、第2加熱部132bの順に流下する。また、コイル203は、複数のコイル部が並列に接続されて、電流が各コイル部を並列に流れる構成でもよい。
【0077】
図14は、被加熱対象物に作用する誘導電流と、コイル203の通電により発生する磁束とを示している。
図14において、実線の矢印は磁束の向きを示し、コイル部には高周波電流の向きを示し、白抜き太矢印はろう付け接合部に作用する誘導電流を示している。
【0078】
第1コイル部131と第2コイル部132の両方の内側に存在する複数のろう付け接合部に作用する誘導電流について説明する。第1加熱部131aと第2加熱部131bを流れる電流によって、ろう付け接合部およびその反プレート側近傍にはサイドプレート11に近づく方向に磁束が発生する。第1加熱部131aと第2加熱部131bの間には、この磁束を打ち消す向きの磁束を発生させる誘導電流により、
図14の白抜き太矢印のような渦電流が集中的に発生する。さらにろう付け接合部およびそのプレート側近傍には、第1加熱部132aと第2加熱部132bを流れる電流によって、サイドプレート11から離れる方向に磁束が発生する。第1加熱部132aと第2加熱部132bの間には、この磁束を打ち消す向きの磁束を発生させる誘導電流により、
図14の白抜き太矢印のような渦電流が集中的に発生する。これらの渦電流は、複数のろう付け接合部に対して反プレート側とプレート側との両方から集中的な自己発熱を促している。これらの渦電流は、被加熱対象物における複数のろう付け接合部を均一な状態に加熱することに寄与する。反プレート側近傍の渦電流とプレート側近傍の渦電流は、渦の向きが逆向きになっている。
【0079】
第3実施形態のコイル203は、第1加熱部と第2加熱部が被加熱対象物に対して両側に位置するように、設置されている。この構成によれば、被加熱対象物に対して、第1加熱部が与える磁束と第2加熱部が与える磁束は同じ向きになる。これらの磁束は、被加熱対象物を構成する複数のろう付け接合部に対して渦電流を発生させる。この渦電流は、複数のろう付け接合部を同様に自己発熱させ、被加熱対象物に含まれるすべてのろう付け接合部を同様な温度に加熱できる。
【0080】
さらにコイル203は、第1コイル部131と、第1コイル部131に沿うように延びる第2コイル部132とを含む。第1コイル部131と第2コイル部132とは、これらのコイル部の間に被加熱対象物が介在するように設置されている。第1コイル部131の第1加熱部131aと第2コイル部132の第2加熱部132bとは、対向しかつ電流の向きが逆向きになる関係である。第1コイル部131の第2加熱部131bと第2コイル部132の第1加熱部132aとは、対向しかつ電流の向きが逆向きになる関係である。
【0081】
これによれば、第1コイル部131と第2コイル部132の間に存在する被加熱対象物に対して、対向関係の第1加熱部と第2加熱部は
図14のように同じ向きの磁束を与える。さらにこの磁束は、ろう付け接合部に対して、プレート側と反プレート側とのそれぞれにおいて渦電流を発生させるので、複数のろう付け接合部は同様に自己発熱する。したがって、コイル203は、被加熱対象物に含まれるすべてのろう付け接合部を同様な温度に加熱できる。第3実施形態の誘導加熱装置は、被加熱対象物に含まれる複数のろう付け接合部についてろう付け接合状態のばらつきが少なく、ろう付け品質を安定させることができる。
【0082】
(第4実施形態)
第4実施形態では、誘導加熱装置が備えるコイル303について
図15を参照して説明する。
図15において前述の実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0083】
第4実施形態のコイル303は、被加熱対象物とコイルとの位置関係が第3実施形態に対して相違する。コイル303は、複数のろう付け接合部の両側に第1加熱部231aと第2加熱部231bが設けられた第1コイル部231を備える。第1コイル部231は、第1加熱部231aと第2加熱部231bと折返し部231cとを備える。第1加熱部231aは、被加熱対象物の両側のうち、一方側の側方に位置する。第2加熱部231bは、被加熱対象物の両側のうち他方側の側方に位置する。第1加熱部231aと第2加熱部231bの両者は、サイドプレート11との距離がろう付け接合部と同じになるように、設置されている。折返し部231cは、複数のろう付け接合部を跨ぐように延びて、第1加熱部231aと第2加熱部231bとを連結している。第1コイル部231は、側方視された被加熱対象物が第1コイル部231と重なるように、設置されている。
【0084】
高周波電流は、コイル303において、第1加熱部231a、折返し部231c、第2加熱部231bの順に流下する。
図15は、被加熱対象物に作用する誘導電流と、コイル303の通電により発生する磁束とを示している。
図15において、実線の矢印は磁束の向きを示し、コイル部には高周波電流の向きを示し、白抜き太矢印はろう付け接合部に作用する誘導電流を示している。
【0085】
第1加熱部231aと第2加熱部231bを流れる電流によって、ろう付け接合部およびその近傍にはサイドプレート11に近づく方向に磁束が発生する。第1加熱部231aと第2加熱部231bの間には、この磁束を打ち消す向きの磁束を発生させる誘導電流により、
図15の白抜き太矢印のような渦電流が集中的に発生する。この渦電流は、複数のろう付け接合部に対して自己発熱を促し、被加熱対象物における複数のろう付け接合部を均一な状態に加熱することに寄与する。
【0086】
第4実施形態のコイル303は、第1加熱部と第2加熱部の間に被加熱対象物が介在するように、設置されている。この構成によれば、被加熱対象物に対して第1加熱部が与える磁束と第2加熱部が与える磁束は、コイル203と同様に、同じ向きになる。この磁束は、被加熱対象物を構成する複数のろう付け接合部に対して高い磁束密度を作用させるため、効率的に渦電流を発生させることができる。第4実施形態の誘導加熱装置は、被加熱対象物に含まれる複数のろう付け接合部について、ろう付け品質を安定させることに寄与する。
【0087】
(第5実施形態)
第5実施形態では、誘導加熱装置が備えるコイル403について
図16を参照して説明する。
図16において前述の実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0088】
第5実施形態のコイル403は、被加熱対象物が複数列である点が第3実施形態に対して相違する。第5実施形態では、コイル403が3列の被加熱対象物を加熱する例を説明する。コイル403は、第1の被加熱対象物、第2の被加熱対象物および第3の被加熱対象物を加熱する。第2の被加熱対象物は、第1の被加熱対象物と第3の被加熱対象物の間に位置している。コイル403は、第1の被加熱対象物を加熱する第1コイル部131と第2コイル部132に加え、第3コイル部331と第4コイル部332とを備える。
【0089】
第3コイル部331と第4コイル部332は、第3の被加熱対象物を構成する複数のろう付け接合部を間において、管12や第2連結管15が延びる方向に対向する。第4コイル部332は、第3コイル部331よりもサイドプレート11側に位置する。
【0090】
第3コイル部331は、第1加熱部331aと第2加熱部331bと折返し部331cとを備える。第1加熱部331aと第2加熱部331bの両者は、サイドプレート11との距離やろう付け接合部との距離が同じになるように、設置されている。第1加熱部331aと第2加熱部331bとの間には、第2連結管15における他端部15b側の部位が存在している。第1加熱部331aは、第2連結管15の両側のうち、一方側の側方に位置する。第2加熱部331bは、第2連結管15の両側のうち他方側の側方に位置する。折返し部331cは、第2連結管15の他端部15b側の部位を跨ぐように延びて、第1加熱部331aと第2加熱部331bとを連結している。
【0091】
第4コイル部332は、第1加熱部332aと第2加熱部332bと折返し部331cとを備える。第1加熱部332aと第2加熱部332bの両者は、サイドプレート11との距離やろう付け接合部との距離が同じになるように、設置されている。第1加熱部332aと第2加熱部332bとの間には、管12cが存在している。第2加熱部332bは、管12cの両側のうち、一方側の側方に位置する。第1加熱部332aは、管12cの両側のうち他方側の側方に位置する。折返し部332cは、管12cを跨ぐように延びて、第1加熱部332aと第2加熱部332bとを連結している。
【0092】
第3コイル部331と第4コイル部332は、側方視された第3の被加熱対象物が第3コイル部331と第4コイル部332の間に位置するように、設置されている。第1加熱部331aと第2加熱部332bは、管12や第2連結管15が延びる方向に対向する位置に設けられている。第2加熱部331bと第1加熱部332aは、管12や第2連結管15が延びる方向に対向する位置に設けられている。折返し部331cと折返し部332cは、管12や第2連結管15が延びる方向に対向する位置に設けられている。
【0093】
第1加熱部131aと第2加熱部331bは、複数列方向に対向するように第2被加熱対象物の両側に、設置されている。第1加熱部131aと第2加熱部331bの両者は、サイドプレート11との距離やろう付け接合部との距離が同じになるように、設置されている。第1加熱部131aと第2加熱部331bとの間には、第2連結管15における一端部15a側の部位が存在している。第2加熱部331bは、第2連結管15の両側のうち、一方側の側方に位置する。第1加熱部131aは、第2連結管15の両側のうち他方側の側方に位置する。
【0094】
第2加熱部132bと第1加熱部332aは、複数列方向に対向するように第2の被加熱対象物の両側に、設置されている。第2加熱部132bと第1加熱部332aの両者は、サイドプレート11との距離やろう付け接合部との距離が同じになるように、設置されている。第2加熱部132bと第1加熱部332aとの間には、管12bが存在している。第1加熱部332aは、管12bの両側のうち、一方側の側方に位置する。第2加熱部132bは、管12bの両側のうち他方側の側方に位置する。
【0095】
コイル403は、複数のコイル部が直列接続されており、電流が直列に流れている。高周波電流は、第1コイル部131において、第1加熱部131a、折返し部131c、第2加熱部131bの順に流れ、連結部を介して第2コイル部132へ流下する。高周波電流は、第2コイル部132において、第1加熱部132a、折返し部132c、第2加熱部132bの順に流れ、さらに連結部を介して第4コイル部332へ流下する。高周波電流は、第4コイル部332において、第1加熱部332a、折返し部332c、第2加熱部332bの順に流れ、さらに連結部を介して第3コイル部331へ流下する。高周波電流は、第3コイル部331において、第1加熱部331a、折返し部331c、第2加熱部331bの順に流下する。また、コイル403は、複数のコイル部が並列に接続されて、電流が各コイル部を並列に流れる構成でもよい。
【0096】
図16は、被加熱対象物に作用する誘導電流と、コイル403の通電により発生する磁束とを示している。
図16において、実線の矢印は磁束の向きを示し、コイル部には高周波電流の向きを示し、白抜き太矢印はろう付け接合部に作用する誘導電流を示している。
【0097】
第1コイル部131と第2コイル部132の両方の内側に存在する第1の被加熱対象物に作用する誘導電流については、第3実施形態の説明と同様である。
【0098】
第2の被加熱対象物に作用する誘導電流について説明する。第1加熱部131aと第2加熱部331bを流れる電流によって、第2の被加熱対象物およびその反プレート側近傍にはサイドプレート11から離れる方向に磁束が発生する。第1加熱部131aと第2加熱部331bの間には、この磁束を打ち消す向きの磁束を発生させる誘導電流により、
図16の白抜き太矢印のような渦電流が集中的に発生する。第2の被加熱対象物およびそのプレート側近傍には、第2加熱部131bと第1加熱部332aを流れる電流によってサイドプレート11に近づく方向に磁束が発生する。第2加熱部131bと第1加熱部332aの間には、この磁束を打ち消す向きの磁束を発生させる誘導電流により、
図16の白抜き太矢印のような渦電流が集中的に発生する。これらの渦電流は、第2の被加熱対象物に対して反プレート側とプレート側との両方から集中的な自己発熱を促している。これらの渦電流は、第2の被加熱対象物における複数のろう付け接合部を均一な状態に加熱することに寄与する。第2の被加熱対象物に対する反プレート側の渦電流とプレート側の渦電流は、渦の向きが逆向きになっている。
【0099】
第3の被加熱対象物に作用する誘導電流について説明する。第1加熱部331aと第2加熱部331bを流れる電流によって、第3の被加熱対象物およびその反プレート側近傍にはサイドプレート11に近づく方向に磁束が発生する。第1加熱部331aと第2加熱部331bの間には、この磁束を打ち消す向きの磁束を発生させる誘導電流により、
図16の白抜き太矢印のような渦電流が集中的に発生する。第3の被加熱対象物およびそのプレート側近傍には、第2加熱部332bと第1加熱部332aを流れる電流によって、サイドプレート11から離れる方向に磁束が発生する。第2加熱部332bと第1加熱部332aの間には、この磁束を打ち消す向きの磁束を発生させる誘導電流により、
図16の白抜き太矢印のような渦電流が集中的に発生する。これらの渦電流は、第3の被加熱対象物に対して反プレート側とプレート側との両方から集中的な自己発熱を促している。これらの渦電流は、第3の被加熱対象物における複数のろう付け接合部を均一な状態に加熱することに寄与する。第3の被加熱対象物に対する反プレート側近傍の渦電流とプレート側近傍の渦電流は、渦の向きが逆向きになっている。
【0100】
(第6実施形態)
第6実施形態では、誘導加熱装置が備えるコイル503について
図17~
図21を参照して説明する。各図において前述の実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0101】
コイル503は、前述の実施形態に係る誘導加熱装置において適用可能な冷却用通路を備えている。
図17、
図18に示すように、コイル503は、複数列方向に隣り合う被加熱対象物の間に位置するコイル部を備える。コイル503は、例えば、複数列方向に並ぶ、第1コイル部531、第2コイル部532および第3コイル部533を備える。各コイル部には、高周波電流が同時に流れるように、並列に接続されている。
【0102】
第1コイル部531は、第1の被加熱対象物の両側のうち、一方側の側方に位置する。第2コイル部532は、第1の被加熱対象物の両側のうち、他方側の側方に位置する。第1コイル部531と第2コイル部532とは、複数列方向に対向する位置に設けられている。第2コイル部532は、第2の被加熱対象物の両側のうち、一方側の側方に位置する。第3コイル部533は、第2の被加熱対象物の両側のうち、他方側の側方に位置する。第2コイル部532と第3コイル部533とは、複数列方向に対向する位置に設けられている。
【0103】
第1コイル部531は、第1加熱部31aと、第1加熱部31aよりもサイドプレート11側に位置する第2加熱部31bと、折返し部531cとを備える。第1コイル部531は、第1加熱部31aと通電可能に結合されている第1導通部531dと、第2加熱部31bと通電可能に結合されている第2導通部531eとを備える。第1導通部531dの内部は、第1加熱部31aの内部と連通している。第2導通部531eの内部は、第2加熱部31bの内部と連通している。第2導通部531eの内部は、第2加熱部31bの内部、折返し部531cの内部、第1加熱部31aの内部を通じて第1導通部531dの内部に連通している。第2導通部531eから第1導通部531dに至る内部通路は、冷却用通路を構成する。折返し部531cは、並び方向について被加熱対象物よりも外側であり、被加熱対象物に対向しない位置に設けられている。高周波電流は、第1コイル部531において、第1導通部531d、第1加熱部31a、折返し部531c、第2加熱部31b、第2導通部531eの順に流れる。
【0104】
第2コイル部532は、第1加熱部32aと、第1加熱部32aよりもサイドプレート11の反対側に位置する第2加熱部32bと、折返し部532cとを備える。第2コイル部532は、第1加熱部32aと通電可能に結合されている第1導通部532dと、第2加熱部32bと通電可能に結合されている第2導通部532eとを備える。第1導通部532dの内部は、第1加熱部32aの内部と連通している。第2導通部532eの内部は、第2加熱部32bの内部と連通している。第2導通部532eの内部は、第2加熱部32bの内部、折返し部532cの内部、第1加熱部32aの内部を通じて第1導通部532dの内部に連通している。第2導通部532eから第1導通部532dに至る内部通路は、冷却用通路を構成する。折返し部532cは、並び方向について被加熱対象物よりも外側であり、被加熱対象物に対向しない位置に設けられている。折返し部531cと折返し部532cは、複数列方向に対向する位置に設けられている。高周波電流は、第2コイル部532において、第1導通部532d、第1加熱部32a、折返し部532c、第2加熱部32b、第2導通部532eの順に流れる。
【0105】
第3コイル部533は、第1加熱部33aと、第1加熱部33aよりもサイドプレート11側に位置する第2加熱部33bと、折返し部533cとを備える。第3コイル部533は、第1加熱部33aと通電可能に結合されている第1導通部533dと、第2加熱部33bと通電可能に結合されている第2導通部533eとを備える。第1導通部533dの内部は、第1加熱部33aの内部と連通している。第2導通部533eの内部は、第2加熱部33bの内部と連通している。第2導通部533eの内部は、第2加熱部33bの内部、折返し部533cの内部、第1加熱部33aの内部を通じて第1導通部533dの内部に連通している。第2導通部533eから第1導通部533dに至る内部通路は、冷却用通路を構成する。折返し部533cは、並び方向について被加熱対象物よりも外側であり、被加熱対象物に対向しない位置に設けられている。折返し部532cと折返し部533cは、複数列方向に対向する位置に設けられている。高周波電流は、第3コイル部533において、第1導通部533d、第1加熱部33a、折返し部533c、第2加熱部33b、第2導通部533eの順に流れる。
【0106】
図19は、第1加熱部33aを代表例として、コイル503における第1加熱部、第2加熱部に係る構成を示している。したがって、以下に説明する第1加熱部33aに係る構成は、他の第1加熱部や第2加熱部に援用される。
図19に示すように、第1加熱部33aは、二つの銅管33a1と銅管33a2がろう材部33fを介して一体に結合された構成を有する。ろう材部33fは、リン銅ろう材料であることが好ましい。銅管33a1、銅管33a2は、例えば、JIS規格のC1862、C5010という耐熱性銅合金によって形成されていることが好ましい。また、コイル503における第1加熱部、第2加熱部は、銅管の他、内部通路を有する銅製部材や、内部通路を有していない銅製部材によって構成されてもよい。内部通路を有していない銅製部材を採用する場合は、例えば、銅製部材を空冷によって冷却することができる。
【0107】
図20に示すように、第1導通部531d、第2導通部531e、第1導通部532d、第2導通部532e、第1導通部533d、第2導通部533eは、絶縁部503aによって互いに電気的に絶縁されている。折返し部531c、折返し部532c、折返し部533cは、互いに電気的に絶縁されている。
図21は、コイル503に含まれる複数のコイル部のうち代表例として第3コイル部533の構成を示している。
【0108】
コイル503において冷却用通路を流下する流体の経路について
図20を参照して説明する。第1コイル部531において冷却用流体は、流入部531e1から第2導通部531e内に流入し、第2加熱部31bの二つの銅管31b1,31b2の内部を通過して折返し部531c内に流下する。さらに冷却用流体は、折返し部531c内から第1加熱部31aの二つの銅管31a1,31a2の内部を通過して第1導通部531d内に流入し流出部531d1から流出する。第2コイル部532において冷却用流体は、流入部532d1から第1導通部532d内に流入し、第1加熱部32aの二つの銅管32a1,32a2の内部を通過して折返し部532c内に流下する。さらに冷却用流体は、折返し部532c内から第2加熱部32bの二つの銅管32b1,32b2の内部を通過して第2導通部532e内に流入し流出部532e1から流出する。第3コイル部533において冷却用流体は、流入部533e1から第2導通部533e内に流入し、第2加熱部33bの二つの銅管33b1,33b2の内部を通過して折返し部533c内に流下する。さらに冷却用流体は、折返し部533c内から第1加熱部33aの二つの銅管33a1,33a2の内部を通過して第1導通部533d内に流入し流出部533d1から流出する。
【0109】
第6実施形態のコイル503は、複数の銅管または銅製部材によって形成されている。複数の銅管または銅製部材は、リン銅ろう付け接合により一体に形成されている。この構成によれば、ろう付け接合後に強度の高いコイルを提供できる。
【0110】
銅管または銅製部材は、耐熱性銅合金によって形成されていることが好ましい。この構成によれば、真直度の高いコイルを提供できる。真直度が高く強度を有するコイルによれば、隣り合う管と管のピッチが小さい熱交換器に対してもコイルとろう付け接合部との距離を保つことが可能になる。したがって、複数のろう付け接合部を同様な温度に加熱することができる誘導加熱装置を提供できる。
【0111】
また、複数列のコイル部に通電すると、隣り合うコイル部の間には逆方向の磁界が発生するため、両端のコイル部には互いに反発する方向に力が作用する。複数の銅管または銅製部材をリン銅ろう付けにより一体に形成する構成、コイルの材質を耐熱銅合金にする構成によれば、高い剛性をもつコイルが得られる。
【0112】
第6実施形態の誘導加熱装置は、コイル503を冷却するための冷却用流体が流通可能な冷却装置6を備える。冷却装置6は冷却用流体がコイル503に対して並列に流れる冷却用通路を有する。高周波電流はコイル503に対して直列に流れる構成である。この構成によれば、コイル503は冷却用流体が並列に流通する構成であるため、コイル503を形成する管の径を小さくしても、管内の流体流量を確保しやすい。この誘導加熱装置は、管径が細く管ピッチが狭い複数のろう付け接合部の側方にコイル503を設置でき、加熱溶融工程のコイルの異常発熱を抑制する冷却性能を確保できる。
【0113】
(他の実施形態)
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0114】
明細書に開示する目的を達成可能な誘導加熱装置は、前述の実施形態において説明した構成に限定されない。目的を達成可能な誘導加熱装置は、例えば、第2実施形態において第2コイル部32を備えていないコイルの構成である装置も含んでいる。すなわち、誘導加熱装置は、1個のコイル部を有する構成でもよい。この場合も第1コイル部31は、高周波電流の通電によって磁束を発生させて誘導電流により、複数のろう付け接合部をまとめて加熱でき、複数のろう付け接合を実施できる。
【0115】
第1実施形態のコイル3は、複数のコイル部が直列接続されており、電流が直列に流れているが、複数のコイル部を並列に接続し、電流が並列に流れる構成でもよい。
【0116】
前述の実施形態に係る誘導加熱装置や製造方法は、被加熱対象物が多い場合に、直列通電するコイル回路を変更し、ろう付けを複数回に分けて実施する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0117】
3,103,203,303,403…コイル
4…高周波インバータ(電流出力部)、 11…サイドプレート
31,131…第1コイル部
31a,32a,33a,34a,35a…第1加熱部
31b,32b,33b,34b,35b…第2加熱部
31c,32c,33c,34c,35c…折返し部
32,132…第2コイル部