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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】電流センサの取付状態判定方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
H02J3/38 170
H02J3/38 110
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019120668
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021007280
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠田 一平
(72)【発明者】
【氏名】安藤 泰明
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 翔太
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-179787(JP,A)
【文献】特開2018-194313(JP,A)
【文献】特開2018-113732(JP,A)
【文献】特開2009-118673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型電源と、該分散型電源の電力を変換して出力する電力変換装置と、前記電力変換装置の出力線間に接続される電圧センサと、前記電力変換装置の出力線間に接続される内部負荷と、を備え、単相3線式の電力系統の2つの電圧相のいずれかと中性相とに前記電力変換装置の出力線がそれぞれ接続される2相連系の分散型電源システムにおいて、前記2つの電圧相に2つの電流センサを取り付ける際の前記2つの電流センサの取付状態を判定する電流センサの取付状態判定方法であって、
前記中性相を特定する第1ステップと、
前記第1ステップで特定した中性相に2つの電流センサを取り付けて前記内部負荷を動作させる第2ステップと、
前記内部負荷の動作の前後において前記2つの電流センサおよび前記電圧センサにより計測される計測値に基づいて特定される前記2つの電流センサの計測電流の変化方向または計測電力の変化方向に基づいて前記2つの電流センサの取付向きを判定する第3ステップと、
前記中性相に取り付けられた2つの電流センサの一方を同じ取付向きを維持したまま前記中性相とは異なる2つの電圧相の一方に取り付けると共に前記2つの電流センサの他方を同じ取付向きを維持したまま前記2つの電圧相の他方に取り付けて前記内部負荷を動作させる第4ステップと、
前記内部負荷の動作の前後において前記2つの電流センサおよび前記電圧センサにより計測される計測値に基づいて前記2つの電流センサのうち前記内部負荷に相当する電流変化または電力変化が計測された方を前記2つの電圧相のうち前記分散型電源システムが連系される電圧相である連系相に取り付けられた電流センサであると判定すると共に前記2つの電流センサのうち前記内部負荷に相当する電流変化または電力変化が計測されなかった方を前記2つの電圧相のうち前記分散型電源システムが連系されていない電圧相である非連系相に取り付けられた電流センサであると判定する第5ステップと、
前記第3ステップの判定結果に基づいて前記2つの電流センサの取付向きを補正すると共に前記第5ステップの判定結果に基づいて前記2つの電流センサの取付位置を補正する第6ステップと、
を備える電流センサの取付状態判定方法。
【請求項2】
分散型電源と、該分散型電源の電力を変換して出力する電力変換装置と、前記電力変換装置の出力線間に接続される電圧センサと、前記電力変換装置の出力線間に接続される内部負荷と、を備え、単相3線式の電力系統の2つの電圧相のいずれかと中性相とに前記電力変換装置の出力線がそれぞれ接続される2相連系の分散型電源システムにおいて、前記2つの電圧相に2つの電流センサを取り付ける際の前記2つの電流センサの取付状態を判定する電流センサの取付状態判定方法であって、
前記中性相を特定する第1ステップと、
前記第1ステップで特定した中性相に2つの電流センサを取り付けて前記内部負荷を動作させる第2ステップと、
前記内部負荷の動作の前後において前記2つの電流センサおよび前記電圧センサにより計測される計測値に基づいて特定される前記2つの電流センサの計測電流の変化方向または計測電力の変化方向に基づいて前記2つの電流センサの取付向きを判定する第3ステップと、
前記中性相に取り付けられた2つの電流センサの一方を前記第3ステップの判定結果に基づいて正向きとなるように前記中性相とは異なる2つの電圧相の一方に取り付けると共に前記2つの電流センサの他方を前記第3ステップの判定結果に基づいて正向きとなるように前記2つの電圧相の他方に取り付けて前記内部負荷を動作させる第4ステップと、
前記内部負荷の動作の前後において前記2つの電流センサおよび前記電圧センサにより計測される計測値に基づいて前記2つの電流センサのうち前記内部負荷に相当する電流変化または電力変化が計測された方を前記2つの電圧相のうち前記分散型電源システムが連系される電圧相である連系相に取り付けられた電流センサであると判定すると共に前記2
つの電流センサのうち前記内部負荷に相当する電流変化または電力変化が計測されなかった方を前記2つの電圧相のうち前記分散型電源システムが連系されていない電圧相である非連系相に取り付けられた電流センサであると判定する第5ステップと、
前記第5ステップの判定結果に基づいて前記2つの電流センサの取付位置を補正する第6ステップと、
を備える電流センサの取付状態判定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電流センサの取付状態判定方法であって、
前記第3ステップは、前記内部負荷の動作の前後における前記2つの電流センサの計測電流の変化量または計測電力の変化量が絶対値として所定量未満である場合にはエラーの発生を通知する、
電流センサの取付状態判定方法。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の電流センサの取付状態判定方法であって、
前記第5ステップは、前記内部負荷の動作の前後における前記2つの電流センサの計測電流の変化方向または計測電力の変化方向の判定結果が、前記第3ステップの判定結果と同じである場合にはエラーの発生を通知する、
電流センサの取付状態判定方法。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載の電流センサの取付状態判定方法であって、
前記第5ステップは、前記内部負荷の動作の前後において前記2つの電流センサのいずれにも前記内部負荷に相当する電流変化または電力変化が計測された場合または前記2つの電流センサのいずれにも前記内部負荷に相当する電流変化または電力変化が計測されなかった場合にはエラーの発生を通知する、
電流センサの取付状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単相3線式の電力系統の2つの電圧相のいずれかと中性相とに電力変換装置の出力線がそれぞれ接続される2相連系の分散型電源システムにおいて、2つの電流センサの取付状態を判定する電流センサの取付状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単相3線式の電力系統の3つの電線であるU相(電圧相),V相(電圧相)およびN相(中性相)に連系する分散型電源システムにおいて、連系点よりも電力系統側に取り付けられる2つの電流センサの取付状態を判定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このシステムは、U相-N相間の電圧とV相-N相間の電圧を検出する電圧検出器や、ヒータなどの内部電力負荷、内部電力負荷の電力系統への接続をU相-N相間とV相-N相間とに切り替える接続機構(スイッチ)などを備える。そして、接続機構により内部電力負荷をU相-N相間またはV相-N相間に接続したときに2つの電流センサによりそれぞれ検出される電流の変化量に基づいて、2つの電流センサの取付位置と取付方向とを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2011/093109A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、単相3線のうち2つの電圧相(U相,V相)のいずれかと中性相(N相)とに分散型電源システムを連系する方式も提案されている。この方式では、分散型電源システムが連系していない電圧相を引き込んでいないため、引き込んでいない電圧相に内部負荷を接続することができない。このため、単相3線のうち2つの電圧相のいずれかと中性相とに分散型電源システムを連系する方式では、特許文献1記載の手法によって、電流センサの取付位置や取付方向を判定することができない。また、この方式では、分散型電源システムが連系している相がU相-N相間か、V相-N相間かを認識できないだけでなく、連系している相(2つの電圧相のいずれかと中性相)が分散型電源システム(インバータの両出力端子)に対して正接続か逆接続かも判断できないため、こうした状況でも、2つの電流センサの取付位置や取付方向を適切に判定できるようにする必要がある。
【0005】
本発明の電流センサの取付状態判定方法は、単相3線式の電力系統の2つの電圧相のいずれかと中性相とに電力変換装置の出力線がそれぞれ接続される2相連系の分散型電源システムにおいて、2つの電流センサの取付向きと取付位置とを判定することができる取付状態判定方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電流センサの取付状態判定方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の第1の電流センサの取付状態判定方法は、
分散型電源と、該分散型電源の電力を変換して出力する電力変換装置と、前記電力変換装置の出力線間に接続される電圧センサと、前記電力変換装置の出力線間に接続される内部負荷と、を備え、単相3線式の電力系統の2つの電圧相のいずれかと中性相とに前記電力変換装置の出力線がそれぞれ接続される2相連系の分散型電源システムにおいて、前記2つの電圧相に2つの電流センサを取り付ける際の前記2つの電流センサの取付状態を判定する電流センサの取付状態判定方法であって、
前記中性相を特定する第1ステップと、
前記第1ステップで特定した中性相に2つの電流センサを取り付けて前記内部負荷を動作させる第2ステップと、
前記内部負荷の動作の前後において前記2つの電流センサおよび前記電圧センサにより計測される計測値に基づいて特定される前記2つの電流センサの計測電流の変化方向または計測電力の変化方向に基づいて前記2つの電流センサの取付向きを判定する第3ステップと、
前記中性相に取り付けられた2つの電流センサの一方を同じ取付向きを維持したまま前記中性相とは異なる2つの電圧相の一方に取り付けると共に前記2つの電流センサの他方を同じ取付向きを維持したまま前記2つの電圧相の他方に取り付けて前記内部負荷を動作させる第4ステップと、
前記内部負荷の動作の前後において前記2つの電流センサおよび前記電圧センサにより計測される計測値に基づいて前記2つの電流センサのうち前記内部負荷に相当する電流変化または電力変化が計測された方を前記2つの電圧相のうち前記分散型電源システムが連系される電圧相である連系相に取り付けられた電流センサであると判定すると共に前記2つの電流センサのうち前記内部負荷に相当する電流変化または電力変化が計測されなかった方を前記2つの電圧相のうち前記分散型電源システムが連系されていない電圧相である非連系相に取り付けられた電流センサであると判定する第5ステップと、
前記第3ステップの判定結果に基づいて前記2つの電流センサの取付向きを補正すると共に前記第5ステップの判定結果に基づいて前記2つの電流センサの取付位置を補正する第6ステップと、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の第1の電流センサの取付状態判定方法では、中性相を特定し、特定した中性相に2つの電流センサを取り付けて内部負荷を動作させる。続いて、内部負荷の動作の前後において2つの電流センサおよび電圧センサにより計測される計測値に基づいて特定される2つの電流センサの計測電流の変化方向または計測電力の変化方向に基づいて2つの電流センサの取付向きを判定する。次に、中性相に取り付けられた2つの電流センサの一方を同じ取付向きを維持したまま中性相とは異なる2つの電圧相の一方に取り付けると共に2つの電流センサの他方を同じ取付向きを維持したまま2つの電圧相の他方に取り付けて内部負荷を動作させる。内部負荷の動作の前後において2つの電流センサのうち電流変化または電力変化が計測された方を連系相に取り付けられた電流センサであると判定すると共に2つの電流センサのうち電流変化または電力変化が計測されなかった方を非連系相に取り付けられた電流センサであると判定する。そして、取付向きの判定結果に基づいて2つの電流センサの取付向きを補正すると共に取付位置の判定結果に基づいて2つの電流センサの取付位置を補正する。これにより、2相連系の分散型電源システムにおいて、2つの電流センサの取付向きと取付位置とを判定することができる取付状態判定方法とすることができる。
【0009】
本発明の第2の電流センサの取付状態判定方法は、
分散型電源と、該分散型電源の電力を変換して出力する電力変換装置と、前記電力変換装置の出力線間に接続される電圧センサと、前記電力変換装置の出力線間に接続される内部負荷と、を備え、単相3線式の電力系統の2つの電圧相のいずれかと中性相とに前記電力変換装置の出力線がそれぞれ接続される2相連系の分散型電源システムにおいて、前記2つの電圧相に2つの電流センサを取り付ける際の前記2つの電流センサの取付状態を判定する電流センサの取付状態判定方法であって、
前記中性相を特定する第1ステップと、
前記第1ステップで特定した中性相に2つの電流センサを取り付けて前記内部負荷を動作させる第2ステップと、
前記内部負荷の動作の前後において前記2つの電流センサおよび前記電圧センサにより
計測される計測値に基づいて特定される前記2つの電流センサの計測電流の変化方向または計測電力の変化方向に基づいて前記2つの電流センサの取付向きを判定する第3ステップと、
前記中性相に取り付けられた2つの電流センサの一方を前記第3ステップの判定結果に基づいて正向きとなるように前記中性相とは異なる2つの電圧相の一方に取り付けると共に前記2つの電流センサの他方を前記第3ステップの判定結果に基づいて正向きとなるように前記2つの電圧相の他方に取り付けて前記内部負荷を動作させる第4ステップと、
前記内部負荷の動作の前後において前記2つの電流センサおよび前記電圧センサにより計測される計測値に基づいて前記2つの電流センサのうち前記内部負荷に相当する電流変化または電力変化が計測された方を前記2つの電圧相のうち前記分散型電源システムが連系される電圧相である連系相に取り付けられた電流センサであると判定すると共に前記2つの電流センサのうち前記内部負荷に相当する電流変化または電力変化が計測されなかった方を前記2つの電圧相のうち前記分散型電源システムが連系されていない電圧相である非連系相に取り付けられた電流センサであると判定する第5ステップと、
前記第5ステップの判定結果に基づいて前記2つの電流センサの取付位置を補正する第6ステップと、
を備えることを要旨とする。
【0010】
この本発明の第2の電流センサの取付状態判定方法では、中性相を特定し、特定した中性相に2つの電流センサを取り付けて内部負荷を動作させる。続いて、内部負荷の動作の前後において2つの電流センサおよび電圧センサにより計測される計測値に基づいて特定される2つの電流センサの計測電流の変化方向または計測電力の変化方向に基づいて2つの電流センサの取付向きを判定する。次に、中性相に取り付けられた2つの電流センサの一方を上記取付向きの判定結果に基づいて正向きとなるように中性相とは異なる2つの電圧相の一方に取り付けると共に2つの電流センサの他方を上記取付向きの判定結果に基づいて正向きとなるように2つの電圧相の他方に取り付けて内部負荷を動作させる。内部負荷の動作の前後において2つの電流センサのうち電流変化または電力変化が計測された方を2つの電圧相のうち連系相に取り付けられた電流センサであると判定すると共に2つの電流センサのうち電流変化または電力変化が計測されなかった方を非連系相に取り付けられた電流センサであると判定する。そして、その判定結果に基づいて2つの電流センサの取付位置を補正する。これにより、2相連系の分散型電源システムにおいて、2つの電流センサの取付向きと取付位置とを判定することができる取付状態判定方法とすることができる。
【0011】
こうした本発明の第1または第2の電流センサの取付状態判定方法において、前記第3ステップは、前記内部負荷の動作の前後における前記2つの電流センサの計測電流の変化量または計測電力の変化量が絶対値として所定量未満である場合にはエラーの発生を通知するものとしてもよい。こうすれば、取付異常や故障の発生を作業者に速やかに通知することができる。なお、上記エラーに該当する場合としては、例えば、電流センサに断線が生じている場合や、電流センサが中性相でなく非連系相に取り付けられている場合が考えられる。
【0012】
また、本発明の第1または第2の電流センサの取付状態判定方法において、前記第5ステップは、前記内部負荷の動作の前後における前記2つの電流センサの計測電流の変化方向または計測電力の変化方向の判定が、前記第3ステップの判定と同じである場合にはエラーの発生を通知するものとしてもよい。こうすれば、取付異常の発生を作業者に速やかに通知することができる。なお、上記エラーに該当する場合としては、例えば、電流センサが中性相に取り付けられたままである場合が考えられる。
【0013】
さらに、本発明の第1または第2の電流センサの取付状態判定方法において、前記第5ステップは、前記内部負荷の動作の前後において前記2つの電流センサのいずれにも前記内部負荷に相当する電流変化または電力変化が計測された場合または前記2つの電流センサのいずれにも前記内部負荷に相当する電流変化または電力変化が計測されなかった場合にはエラーの発生を通知するものとしてもよい。こうすれば、取付異常の発生を作業者に速やかに通知することができる。なお、上記エラーに該当する場合としては、例えば、2つの電流センサのいずれにも内部負荷に相当する電流変化または電力変化が計測された場合には2つの電流センサが共に連系相に取り付けられ、2つの電流センサのいずれにも内部負荷に相当する電流変化または電力変化が計測されなかった場合には2つの電流センサが共に非連系相に取り付けられていると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】分散型電源システム20の構成の概略を示す構成図である。
図2】CT取付状態判定工程を示す説明図である。
図3】CT取付状態判定工程を示す説明図である。
図4】電流センサCT1,CT2をN相に取り付ける様子を示す説明図である。
図5】電力変化と電流センサCT1,CT2の取付向きとの関係を示す説明図である。
図6】電流センサCT1,CT2をN相でない別々の相に取り付ける様子を示す説明図である。
図7】電流変化と電流センサCT1,CT2の取付位置との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、分散型電源システム20の構成の概略を示す構成図である。分散型電源システム20は、単相3線式の商用電力系統10から電力を受電する住宅等に設置された受電設備に接続され、商用電力系統10の3つの相のうち1つの電圧相と中性相との2相に連系するシステムとして構成される。例えば、分散型電源システム20を屋外設置する場合、屋外コンセントを利用して分散型電源システム20を商用電力系統10に連系することができ、屋外に単相3線を引き込むための工事などが不要である。以下、商用電力系統10の3つの相のうち中性相はN相(中性相)12nとも呼び、2つの電圧相の一方はU相(電圧相)12uとも呼び、2つの電圧相の他方はV相(電圧相)12vとも呼ぶ。N相12nはポールトランス(図示せず)で接地されている。U相-N相間には家庭内負荷(外部負荷)14uが接続され、V相-N相間には家庭内負荷(外部負荷)14vが接続される。
【0017】
分散型電源システム20は、本実施形態では、商用電力系統10に対する逆潮流が許容されていないシステムであり、図1に示すように、直流電力を発電する発電装置22と、発電装置22の発電電力を交流電力に変換するパワーコンディショナ24と、商用電力系統10に対して連系/解列を行なう解列リレー26(RY1,RY2)と、商用電力系統10のU相12u,V相12vのうち分散型電源システム20が連系している方の連系相(本実施形態では、U相12u)に流れる電流を計測する電流センサCT1と、分散型電源システム20が連系していない方の非連系相(本実施形態では、V相12v)に流れる電流を計測する電流センサCT2と、連系相(U相12u)と中性相(N相12n)との間に作用する電圧(連系相電圧)を計測する電圧センサ32と、連系相(U相12u)と中性相(N相12n)とに補機用駆動装置44を介して接続される補機42と、システム全体を制御する制御装置50と、を備える。
【0018】
発電装置22は、例えば、固体酸化物形の燃料電池や蒸発器、改質器等を含み、原燃料ガスを改質して生成される改質ガス(水素ガス)と酸化剤ガスとにより発電する燃料電池装置として構成される。なお、発電装置22は、原動機(ガスエンジンやガスタービンなど)とこの原動機からの動力により発電する発電機との組み合わせにより構成されてもよい。
【0019】
パワーコンディショナ24は、発電装置22で発電された直流電力の電圧を変換するDC/DCコンバータや、DC/DCコンバータから出力される直流電力を交流電力に変換するインバータを備える。インバータの2つの出力線は、解列リレー26を介して商用電力系統10のU相12uとN相12nとに接続される。
【0020】
電流センサCT1,CT2は、商用電力系統10のU相12u,V相12vに取り付けられるCT(Current Transformer)と、CTの巻き線に接続されるCT計測回路と、を備える。CTは、例えば、貫通形の変流器として構成される。CT計測回路は、例えば、CTの巻き線間に接続される抵抗を有し、当該抵抗に作用する電圧を計測することで、CTが取り付けられた電線に流れる電流を計測する計測回路として構成される。電流センサCT1,CT2は、計測される電流波形が電圧センサ32により計測される電圧波形と同位相か逆位相かにより、電流方向も計測する。
【0021】
補機42は、発電装置22の周辺機器(分散型電源システム20の内部負荷)であり、例えば、分散型電源システム20が燃料電池とその排熱を用いて貯湯する貯湯装置とを備えるコージェネレーションシステムに適用される場合、燃料電池に燃料ガスを供給するポンプや酸化剤ガスとしての空気を供給するブロワ、燃料ガスの流量を計測する流量センサ、空気の流量を計測する流量センサ、貯湯装置の貯湯水を燃料電池の排熱と熱交換するために貯湯水を循環させるポンプ、貯湯装置の配管内の凍結を予防するための凍結予防ヒータ等を挙げることができる。
【0022】
制御装置50は、図示しないが、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM,ワークメモリとしてのRAM、入出力ポートなどを備える。この制御装置50には、電流センサCT1,CT2からの計測信号が入力ポートを介して入力されている。一方、制御装置50からは、発電装置22への制御信号やパワーコンディショナ24への制御信号、解列リレー26へのオンオフ信号、表示器52への表示信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0023】
制御装置50は、2つの電流センサCT1,CT2により商用電力系統10のU相12uを流れる電流とV相12vに流れる電流とを計測すると共に電圧センサ32によりU相12u-N相12n間(連系相)に作用する電圧(連系相電圧)を計測し、計測した電流および電圧に基づいて潮流方向を監視する。そして、逆潮流(分散型電源システム20から商用電力系統10へ向かう有効電力の流れ)が発生したと判定すると、解列リレー26をオフして分散型電源システム20を商用電力系統10から切り離す。これにより、逆潮流が許容されていない分散型電源システム20において、逆潮流を防止することができる。このように、電流センサCT1,CT2は、潮流方向の監視に用いられるため、取付位置や取付方向が誤っていると、潮流監視を正しく行なうことができない。
【0024】
次に、こうして構成された分散型電源システム20の住宅等への設置に伴い、電流センサCT1,CT2を2つの電圧相(U相12u,V相12v)に取り付ける際にその取付向きと取付位置とを判定するための工程について説明する。図2および図3は、CT取付状態判定工程を示す説明図である。
【0025】
CT取付状態判定工程では、まず、N相12nを特定する(ステップS100)。このステップS100は、例えば、作業者がU相12u,V相12vおよびN相12nのうち任意の2相にテスターの電圧プローブを押し当て、計測値が約200Vであった場合に、その2相をU相12uおよびV相12vのいずれかであると判定し、残りの1相をN相12nと判定することにより行なわれる。続いて、作業者により、図4に示すように、特定したN相12nに2つの電流センサCT1,CT2を取り付け(ステップS110)、各電流センサCT1,CT2により電流を計測すると共に(ステップS120)、計測した電流と電圧センサ32により計測される連系相電圧とにより電流センサCT1,CT2の電力を計測する(ステップS130)。
【0026】
次に、内部負荷としての補機42が動作するよう補機用駆動装置44を制御した後(ステップS140)、ステップS120,S130と同様に、各電流センサCT1,CT2により電流を計測すると共に(ステップS150)、計測した電流と電圧センサ32により計測される連系相電圧とにより電流センサCT1,CT2の電力を計測する(ステップS160)。
【0027】
こうして補機42の動作前後において、電流センサCT1,CT2の電流と電力とを計測すると、補機42の動作前後における電流センサCT1,CT2の電流の差分をとって電流変化量を算出すると共に(ステップS170)、電流センサCT1,CT2の電力の差分をとって電力変化量を算出する(ステップS180)。
【0028】
そして、補機42を動作させた後、規定時間が経過したか否かを判定する(ステップS190)。ここで、規定時間は、補機42の動作が安定するまでに要する時間として予め定められている。規定時間が経過していないと判定すると、ステップS150に戻ってステップS150~S180の処理を繰り返し、規定時間が経過したと判定すると、更に、電流センサCT1,CT2の電流変化量の絶対値がいずれも既定値以上であるか否かを判定する(ステップS200)。ここで、既定値は、電流センサCT1,CT2が取り付けられた相(N相12n)における補機42の負荷に相当する電流変化量として予め定められている。電流センサCT1,CT2のいずれかの電流変化量の絶対値が既定値以上でないと判定すると、該当する電流センサの取付位置が間違っている(例えば、該当する電流センサが分散型電源システム20が連系していない非連系相に取り付けられている)か該当する電流センサに断線が生じていると判断し、エラーが発生した旨を表示器52に表示して(ステップS360)、本工程を終了する。
【0029】
ステップS200において、電流センサCT1,CT2のいずれの電流変化量の絶対値も既定値以上であると判定すると、ステップS180で計測した電力変化量により電流センサCT1,CT2の取付向きを判定して制御装置50のRAMに記憶する(ステップS210)。このステップS210の判定は、図5に例示するCT取付向き判定用マップを用いて行なわれる。このCT取付向き判定用マップでは、図5に示すように、電流センサの電力変化量が増加側(図中、「増」)であれば、当該電流センサは、正向きに取り付けられていると判定され、電流センサの電力変化量が減少側(図中、「減」)であれば、当該電流センサは、逆向きに取り付けられていると判定される。こうしてN相12nに取り付けられた各電流センサCT1,CT2の取付向きを判定すると、判定した取付向きを表示器52に表示して作業者に通知する(ステップS220)。
【0030】
次に、作業者により、図6に示すように、N相12nに取り付けられている電流センサCT1,CT2を、N相12nに取り付けた向きと同じ向きを維持した状態で、それぞれ別々の相(U相12u,V相12v)に取り付ける(ステップS230)。続いて、ステップS120~S190と同様に、補機42の動作前後において、電流センサCT1,CT2の電流と電力とを計測し、補機42の動作前後における電流センサCT1,CT2の電流変化量と電力変化量とを算出する(ステップS240~S310)。そして、ステップS300で算出した電流センサCT1,CT2の電力変化量の符号とステップS180で算出した電流センサCT1,CT2の電力変化量の符号とが同じであるか否かを判定する(ステップS320)。両電力変化量の符号が同じであると判定すると、ステップS230において行なわれた電流センサCT1,CT2の取り付けが間違っている(該当する電流センサが中性相に取り付けられたままである)と判断し、エラーが発生した旨を表示器52に表示して(ステップS360)、本工程を終了する。
【0031】
一方、両電力変化量の符号が同じでないと判定すると、ステップS290で算出した電流変化量により電流センサCT1,CT2の取付位置を判定する(ステップS330)。このステップS330の判定は、図7に例示するCT取付位置判定用マップを用いて行なわれる。CT取付位置判定用マップでは、図7に示すように、電流センサに補機42の負荷に相当する電流変化が有れば(図中、「有」)、当該電流センサは、連系相(本実施形態ではU相12u)に取り付けられていると判定され、電流センサに補機42の負荷に相当する電流変化が無ければ(図中、「無」)、当該電流センサは、非連系相(本実施形態ではV相12v)に取り付けられていると判定される。すなわち、電流センサCT1,CT2のうち片方のみに補機42の負荷に相当する電流変化が有れば(ステップS340の「YES」)、電流変化があった方の電流センサが連系相に取り付けられ、且つ、電流変化がなかった方の電流センサが非連系相に取り付けられていると判断して、S350に進む。一方、電流センサCT1,CT2の両方に補機42の負荷に相当する電流変化が有るか両方に補機42の負荷に相当する電流変化が無ければ(ステップS340の「NO」)、電流センサCT1,CT2が共に連系相に取り付けられているか共に非連系相に取り付けられていると判断し、エラーが発生した旨を表示器52に表示して(ステップS360)、本工程を終了する。
【0032】
こうして各電流センサCT1,CT2の取付向きと取付位置とを判定すると、判定の結果に従って電流センサCT1,CT2の補正を行なって(ステップS350)、本工程を終了する。取付向きの補正は、取付向きの判定結果が「正」であれば、計測値の位相をそのままとし、取付向きの判定結果が「逆」であれば、計測値の位相を反転することにより行なわれる。また、取付位置の補正は、取付位置が連系相であれば、該当する電流センサの計測値を連系相電流として認識し、取付位置が非連系相であれば、該当する電流センサの計測値を非連系相電流として認識することにより行なわれる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の電流センサの取付状態判定方法は、中性相(N相12n)を特定し、特定した中性相に2つの電流センサCT1,CT2を取り付けて内部負荷としての補機44を動作させる。続いて、補機44の動作の前後において2つの電流センサCT1,CT2および電圧センサ32により計測される計測値に基づいて特定される2つの電流センサCT1,CT2の計測電力の変化方向に基づいて2つの電流センサCT1,CT2の取付向きを判定する。次に、中性相に取り付けられた2つの電流センサCT1,CT2の一方を同じ取付向きを維持したまま2つの電圧相(U相12u,V相12v)の一方に取り付けると共に2つの電流センサの他方を同じ取付向きを維持したまま2つの電圧相の他方に取り付けて補機44を動作させる。補機44の動作の前後において2つの電流センサCT1,CT2のうち補機44の負荷に相当する電流変化が計測された方を2つの電圧相(U相12u,V相12v)のうち連系相(U相12u)に取り付けられた電流センサであると判定すると共に補機44の負荷に相当する電流変化が計測されなかった方を2つの電圧相のうち非連系相(V相12v)に取り付けられた電流センサであると判定する。そして、取付向きの判定結果に基づいて2つの電流センサCT1,CT2の取付向きを補正すると共に取付位置の判定結果に基づいて2つの電流センサCT1,CT2の取付位置を補正する。これにより、単相3線式の電力系統の2つの電圧相のいずれかと中性相とに電力変換装置の出力線がそれぞれ接続される2相連系の分散型電源システムにおいて、2つの電流センサの取付向きと取付位置とを判定することができる取付状態判定方法とすることができる。
【0034】
実施形態では、ステップS210において、補機44(内部負荷)の動作前後における2つの電流センサCT1,CT2の電力変化量の増減に基づいて当該2つの電流センサCT1,CT2の取付向きを判定するものとした。しかしながら、補機44(内部負荷)の動作前後における2つの電流センサCT1,CT2の電流変化量の増減に基づいて当該2つの電流センサCT1,CT2の取付向きを判定するものとしてもよい。
【0035】
実施形態では、ステップS230において、N相12nに取り付けられている電流センサCT1,CT2を、N相12nに取り付けた向きと同じ向きを維持した状態で、別々の相(U相12u,V相12v)に取り付け、ステップS350において、ステップS210の取付向きの判定結果に基づいて電流センサCT1,CT2の計測値を補正するものとした。しかし、ステップS220において通知した電流センサCT1,CT2の取付向きの判定結果に従って、作業者が、N相12nに取り付けられている電流センサCT1,CT2を正しい向きにしてそれぞれU相12u,V相12vに取り付けるようにしてもよい。この場合、ステップS350において電流センサCT1,CT2の取付向きの補正は不要である。
【0036】
実施形態では、ステップS330において、補機44(内部負荷)の動作前後における2つの電流センサCT1,CT2の電流変化の有無に基づいて当該2つの電流センサCT1,CT2の取付位置を判定するものとした。しかし、補機44(内部負荷)の動作前後における2つの電流センサCT1,CT2の電力変化の有無に基づいて当該2つの電流センサCT1,CT2の取付位置を判定するものとしてもよい。
【0037】
実施形態では、本発明を、逆潮流が許容されている分散型電源システム20に適用して説明したが、逆潮流が許容されていない分散型電源システムに適用するものとしてもよい。
【0038】
実施形態では、分散型電源システム20は、発電装置22を備える分散型発電システムとして構成されたが、発電装置22に代えて蓄電装置(バッテリ)を備えるものとしてもよい。
【0039】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、発電装置22が「分散型電源」に相当し、パワーコンディショナ24が「電力変換装置」に相当し、電圧センサ32が「電圧センサ」に相当し、補機42が「内部負荷」に相当し、電流センサCT1,CT2が「電流センサ」に相当する。
【0040】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0041】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、分散型電源システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 商用電力系統、12u U相、12v V相、12n N相、14u,14v 家庭内負荷、20 分散型電源システム、22 発電装置、24 パワーコンディショナ、26,RY1,RY2 解列リレー、32 電圧センサ、42 補機、44 補機用駆動装置、50 制御装置、52 表示器、CT1,CT2 電流センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7