(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】中空屈曲部品の製造方法、中空屈曲部品の製造装置、及び中空屈曲部品
(51)【国際特許分類】
B21D 7/00 20060101AFI20230307BHJP
B21D 7/16 20060101ALI20230307BHJP
B21D 51/02 20060101ALI20230307BHJP
B21D 53/88 20060101ALI20230307BHJP
B21C 37/15 20060101ALI20230307BHJP
B21D 53/84 20060101ALI20230307BHJP
B21D 37/16 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
B21D7/00 Z
B21D7/16
B21D51/02
B21D53/88 Z
B21C37/15 B
B21D53/84 B
B21D37/16
(21)【出願番号】P 2019134902
(22)【出願日】2019-07-22
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】富澤 淳
(72)【発明者】
【氏名】植松 一夫
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/024741(WO,A1)
【文献】特開昭61-229425(JP,A)
【文献】特開2009-148780(JP,A)
【文献】国際公開第2008/123505(WO,A1)
【文献】特開2000-263144(JP,A)
【文献】国際公開第2018/186102(WO,A1)
【文献】特開昭50-097567(JP,A)
【文献】特表2018-514387(JP,A)
【文献】特開昭56-011111(JP,A)
【文献】特開昭63-293394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 7/00
B21D 7/16
B21D 51/02
B21D 53/88
B21C 37/15
B21D 53/84
B21D 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の長尺な中空素材を、その長手方向に沿った送り方向へ送りながら第1の位置で支持し、
前記送り方向に沿って前記第1の位置よりも下流の第2の位置に配置された加熱手段で前記中空素材を被加熱部において部分的に加熱し、
前記送り方向に沿って前記第2の位置よりも下流の第3の位置に配置された冷却手段で前記中空素材を冷却し、
前記送り方向に沿って前記第3の位置よりも下流の第4の位置で前記中空素材を支持して支持位置を二次元方向又は三次元方向に移動させることにより、前記中空素材の前記被加熱部にせん断力を与える、
中空屈曲部品の製造方法であって、
前記中空素材の、前記せん断力の付与前後に形成されるせん断角度に応じて、前記送り方向に対する前記加熱手段及び前記冷却手段の傾斜角度の設定を行うことで、前記中空素材におけるせん断曲げ加工部分の幅寸法を変
え、
前記設定を行う際、前記せん断角度をθ(度)とし、前記傾斜角度をα(度)とし、前記中空素材の元の幅寸法をW
0
(mm)とし、前記せん断曲げ加工部分の幅寸法をW(mm)とし、下式(1)を満たすように、前記せん断角度及び前記傾斜角度を設定する
ことを特徴とする中空屈曲部品の製造方法。
【数1】
【請求項2】
金属製の長尺な中空素材を、その長手方向に沿った送り方向へ送りながら第1の位置で支持する支持装置と、
前記送り方向に沿って前記第1の位置よりも下流の第2の位置に配置され、前記中空素材を被加熱部において部分的に加熱する加熱手段と、
前記送り方向に沿って前記第2の位置よりも下流の第3の位置に配置され、前記中空素材を冷却する冷却手段と、
前記送り方向に沿って前記第3の位置よりも下流の第4の位置で前記中空素材を支持して支持位置を二次元方向又は三次元方向に移動させることにより、前記中空素材の前記被加熱部にせん断力を与える、せん断力付与手段と、
前記中空素材の、前記せん断力の付与前後に形成されるせん断角度に応じて、前記送り方向に対する前記加熱手段及び前記冷却手段の傾斜角度の設定を行い、前記設定に基づいて前記加熱手段、前記冷却手段、前記せん断力付与手段を制御することで、前記中空素材におけるせん断曲げ加工部分の幅寸法を変える制御手段と、
を備
え、
前記制御手段が、前記設定を行う際、前記せん断角度をθ(度)とし、前記傾斜角度をα(度)とし、前記中空素材の元の幅寸法をW
0
(mm)とし、前記せん断曲げ加工部分の幅寸法をW(mm)とし、下式(2)を満たすように、前記せん断角度及び前記傾斜角度を設定する
ことを特徴とする中空屈曲部品の製造装置。
【数2】
【請求項3】
金属製の長尺な中空の一体部品であって、その長手方向に沿って見て熱処理された
せん断曲げ加工部分である曲がり部における幅が、前記曲がり部に隣接する他の部分の幅と異なる
ことを特徴とする中空屈曲部品。
【請求項4】
前記長手方向に垂直な断面形状が円形または矩形の閉断面形状を有し、
前記曲がり部が、前記曲がり部の内周側の外形と外周側の外形との間の寸法である前記幅の2倍以下の曲げ半径を有する
ことを特徴とする請求項
3に記載の中空屈曲部品。
【請求項5】
鋼製であり、
前記曲がり部のマルテンサイト量が50%以上である、
ことを特徴とする請求項
3または
4に記載の中空屈曲部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空屈曲部品の製造方法、中空屈曲部品の製造装置、及び中空屈曲部品、に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車や各種機械等に用いられる、中空の屈曲した形状を有する金属製の強度部材、補強部材または構造部材には、軽量かつ高強度であること等が求められる。従来、この種の中空屈曲部品は、例えば、冷間の曲げ加工、プレス加工品の溶接、厚板の打ち抜き、さらには鍛造等により製造されてきた。しかし、これらの製造方法により製造される中空屈曲部品の軽量化および高強度化には限界があり、その実現は容易なことではなかった。
【0003】
近年では、例えば非特許文献1に開示されるように、いわゆるチューブハイドロフォーミング工法によりこの種の中空屈曲部品を製造することも積極的に検討されている。しかし、特に、チューブハイドロフォーミング工法は冷間成形であるため、高強度材の成形には限界がある。非特許文献1の28頁にも記載されているように、チューブハイドロフォーミング工法には、素材となる材料の開発や成形可能な形状の自由度の拡大等といった課題があり、今後より一層の開発が必要である。
【0004】
このような現状に鑑み、本発明者らは、先に特許文献1により曲げ加工装置に係る発明を開示した。
図8は、この曲げ加工装置100の概略を模式的に示す説明図である。
図8に示すように、この曲げ加工装置100では、一対の支持手段101,101によりその軸方向へ移動自在に支持された鋼管(以下、中空素材Pm)を上流側から下流側へ向けて矢印F方向へ図示しない送り装置により送りながら、支持手段101,101の下流位置で曲げ加工を行って、鋼製の中空屈曲部品Ppを製造する。すなわち、支持手段101,101の下流位置で高周波加熱コイル102によって中空素材Pmを部分的に焼入れ可能な温度域に急速加熱するとともに、高周波加熱コイル102の下流に配置される水冷装置103により中空素材Pmを急冷する。そして、中空素材Pmを支持しながら送るロール対104a,104aを少なくとも一組有する可動ローラダイス104の位置を三次元方向(場合によっては二次元方向)に変更して中空素材Pmの加熱された部分に曲げモーメントを付与することにより、中空素材Pmに曲げ加工を行う。この曲げ加工装置100によれば、高い作業効率で高強度の中空屈曲部品Ppを製造することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2006/093006号
【文献】国際公開第2011/024741号
【非特許文献】
【0006】
【文献】自動車技術 Vol.57,No.6,2003 23~28頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自動車や各種機械等に用いられる中空屈曲部品には、種々の形状を持つものが存在する。中でも、曲がり部の曲げ半径が例えば金属管の直径(矩形断面の場合には曲げ方向の辺の長さ)の1~2倍あるいは、それ以下の、極めて小さな曲がり部を有する中空屈曲部品が多く存在する。
しかしながら、特許文献1の方法により、曲げ半径が例えば金属管の直径(矩形断面の場合には曲げ方向の辺の長さ)の1~2倍あるいはそれ以下の曲げ半径を持つように曲げ加工をした場合、曲がり部の内周側にしわや折れこみを生じたり、あるいは曲がり部の外周側の板厚が大きく減少して破断が発生したりする虞がある。そのため、小さな曲がり部を有する中空屈曲部品を製造することは困難であった。
【0008】
そこで、これらの課題解決に応えるために、本発明者らは、特許文献2によりせん断曲げ加工装置に係る発明を開示した。
図9に示すように、このせん断曲げ加工装置200は、第1の支持手段201と、加熱手段202と、冷却手段203と、把持手段204と、を備える。第1の支持手段201は、金属製の中空素材Pmを、その長手方向へ相対的に送りながら、第1の位置Aにおいて支持する。加熱手段202は、中空素材Pmの送り方向に沿った第1の位置Aよりも下流にある第2の位置Bにおいて中空素材Pmを部分的に加熱する。冷却手段203は、中空素材Pmの送り方向に沿った第2の位置Bよりも下流にある第3の位置Cにおいて中空素材Pmの加熱部分を冷却(強制冷却または自然冷却)する。把持手段204は、中空素材Pmの送り方向に沿った第2の位置Cよりも下流にある第3の位置Dにおいて中空素材Pmを位置決めしながら二次元方向または三次元方向に移動させることによって、中空素材Pmの加熱部分にせん断力を与える。
【0009】
このせん断曲げ加工装置200によれば、中空素材Pmの加熱部分に対しせん断加工と熱処理とを加えることが可能になる。そして、このせん断曲げ加工装置200によれば、金属管の直径(矩形断面の場合には曲げ方向の辺の長さ)の1~2倍、あるいは、それ以下の曲げ半径の曲がり部を有する高強度の中空屈曲部品を、低コストで確実に量産可能である。
従って、特許文献2に記載の製造方法によれば、高強度でありながら小さな曲げ半径を有する中空屈曲部品の製造が可能となり、自動車をはじめとする多数の機械部品の大幅な軽量化が可能となった。
【0010】
一方、機械部品として一体型の中空屈曲部品を設計する場合、設計上で必要となる強度や剛性などを確保するために、部分的に製品幅を増す必要がある部位が存在する。逆に、組み立てられる部品が他の部品と干渉する場合、部分的に製品幅を減らす必要がある部位も存在する。これらの様々な要求に対して、高強度材の製品幅を変更する一体成形の技術はなく、製品の成形後に付加的な溶接などで補強せざるを得なかった。このような付加的な溶接工程が煩雑であることは否めない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、付加的な溶接工程等を要することなく、多様な設計ニーズに合わせて長手方向の各位置で製品幅を変更できる中空屈曲部品の製造方法の提供を目的とする。また、本発明は、この中空屈曲部品の製造方法を実施するための、中空屈曲部品の製造装置の提供も目的とする。さらに、本発明は、これら中空屈曲部品の製造方法及び製造装置により製造された中空屈曲部品の提供も目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用している。[1]本発明の一態様は、金属製の長尺な中空素材を、その長手方向に沿った送り方向へ送りながら第1の位置で支持し、前記送り方向に沿って前記第1の位置よりも下流の第2の位置に配置された加熱手段で前記中空素材を被加熱部において部分的に加熱し、前記送り方向に沿って前記第2の位置よりも下流の第3の位置に配置された冷却手段で前記中空素材を冷却し、前記送り方向に沿って前記第3の位置よりも下流の第4の位置で前記中空素材を支持して支持位置を二次元方向又は三次元方向に移動させることにより、前記中空素材の前記被加熱部にせん断力を与える、中空屈曲部品の製造方法であって、前記中空素材の、前記せん断力の付与前後に形成されるせん断角度に応じて、前記送り方向に対する前記加熱手段及び前記冷却手段の傾斜角度の設定を行うことで、前記中空素材におけるせん断曲げ加工部分の幅寸法を変え、前記設定を行う際、前記せん断角度をθ(度)とし、前記傾斜角度をα(度)とし、前記中空素材の元の幅寸法をW
0
(mm)とし、前記せん断曲げ加工部分の幅寸法をW(mm)とし、下式(1)を満たすように、前記せん断角度及び前記傾斜角度を設定する。
【0014】
【0015】
[2]本発明の他の態様は、金属製の長尺な中空素材を、その長手方向に沿った送り方向へ送りながら第1の位置で支持する支持装置と、前記送り方向に沿って前記第1の位置よりも下流の第2の位置に配置され、前記中空素材を被加熱部において部分的に加熱する加熱手段と、前記送り方向に沿って前記第2の位置よりも下流の第3の位置に配置され、前記中空素材を冷却する冷却手段と、前記送り方向に沿って前記第3の位置よりも下流の第4の位置で前記中空素材を支持して支持位置を二次元方向又は三次元方向に移動させることにより、前記中空素材の前記被加熱部にせん断力を与える、せん断力付与手段と、前記中空素材の、前記せん断力の付与前後に形成されるせん断角度に応じて、前記送り方向に対する前記加熱手段及び前記冷却手段の傾斜角度の設定を行い、前記設定に基づいて前記加熱手段、前記冷却手段、前記せん断力付与手段を制御することで、前記中空素材におけるせん断曲げ加工部分の幅寸法を変える制御手段と、を備え、前記制御手段が、前記設定を行う際、前記せん断角度をθ(度)とし、前記傾斜角度をα(度)とし、前記中空素材の元の幅寸法をW
0
(mm)とし、前記せん断曲げ加工部分の幅寸法をW(mm)とし、下式(2)を満たすように、前記せん断角度及び前記傾斜角度を設定する中空屈曲部品の製造装置である。
【0017】
【0018】
[3]本発明のさらに他の態様は、金属製の長尺な中空の一体部品であって、その長手方向に沿って見て熱処理されたせん断曲げ加工部分である曲がり部における幅が、前記曲がり部に隣接する他の部分の幅と異なる中空屈曲部品である。
【0019】
[4]上記[3]の態様において、以下の構成を採用してもよい:前記長手方向に垂直な断面形状が円形または矩形の閉断面形状を有し;前記曲がり部が、前記曲がり部の内周側の外形と外周側の外形との間の寸法である前記幅の2倍以下の曲げ半径を有する。さらには、前記曲がり部が、前記幅の0.2倍~2倍の曲げ半径を有してもよい。
【0020】
[5]上記[3]又は[4]の態様において、以下の構成を採用してもよい:鋼製であり、前記曲がり部のマルテンサイト量が50%以上である。
【発明の効果】
【0021】
上記態様に係る中空屈曲部品の製造方法及び製造装置によれば、付加的な溶接工程等を要することなく、多様な設計ニーズに合わせて長手方向の各位置で製品幅を変更できる。また、上記態様に係る中空屈曲部品によれば、多様な設計ニーズに合わせて長手方向の各位置で製品幅が変更されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る中空屈曲部品の製造装置を模式的に示す縦断面図である。
【
図2】同製造装置を用いた中空屈曲部品の製造方法を説明するための図であって、
図1のX1部における部分拡大図である。
【
図3】同製造装置を用いた中空屈曲部品の製造方法を説明するための図であって、
図1のY1-Y1線における断面図である。
【
図4】同製造装置を用いた製造方法による効果の原理を説明するための図であって、加熱コイルの傾斜角度αを15度~120度の範囲で変化させた場合の、せん断角度θと幅比との関係を示すグラフである。
【
図5】(a)~(c)は、実施例1で加工された中空屈曲部品の外形を示す図である。
【
図6】実施例2で加工された中空屈曲部品の外形を示す図である。
【
図7】本発明の実施例で加工された中空屈曲部品を示す図であって、焼き入れ部をハッチングで示している。
【
図8】特許文献1に開示された曲げ加工装置の概略構成を示す説明図である。
【
図9】特許文献2に開示されたせん断曲げ加工装置の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る中空屈曲部品の製造方法及び製造装置、ならびに同製造方法及び同製造装置により製造された中空屈曲部品を、図面を参照しながら説明する。以降の説明では、本発明により製造される中空屈曲部品が、鋼製であって矩形の横断面形状を有する中空の角管を素材(以下、中空素材Pm)とし、自動車や各種機械に用いられる強度部品、補強部品または構造部品等の製品(以下、中空屈曲部品Pp)を製造する場合を例示して説明する。まず、本製造方法を適用する中空屈曲部品の製造装置(以下、製造装置10)を先に説明し、続いて製造方法、さらに中空屈曲部品を説明する。
【0024】
[中空屈曲部品の製造装置]
図1は、本実施形態に係る中空屈曲部品の製造装置10を模式的に示す説明図である。
この製造装置10により、中空素材Pmをせん断曲げ加工して中空屈曲部品Ppを得る。中空素材Pmは、その長手方向に垂直な断面が中空矩形の閉断面形状を有する長尺な角管である。なお、本実施形態の加工対象は、角管に限定されるものではなく、例えば、円形、楕円形、さらには各種異形の横断面形状を有するその他の鋼管にも適用可能である。また、矩形断面を持つ中空素材Pmとしては、その横断面形状が正方形、長方形の何れにも適用可能である。さらに言うと、鋼管以外の金属管を中空素材Pmとしてもよい。
【0025】
図1に示すように、この製造装置10は、支持装置11と、加熱装置12と、冷却装置13と、せん断力付与装置14と、制御装置15と、を備える。
(1)支持装置11
図1の矢印Fに示すように、支持装置11においては、中空素材Pmを図示しない送り装置によりその長手方向へ送る。
前記送り装置は、電動サーボシリンダーを用いたタイプが例示されるが、特定型式のものに限らず、ボールネジを用いたタイプやタイミングベルトやチェーンを用いたタイプ等、公知のものが採用できる。
【0026】
中空素材Pmは、前記送り装置によって所定の送り速度でその軸方向(矢印Fに沿った紙面左手方向)へ送られる。中空素材Pmは、第1の位置Aにおいて支持装置11により支持される。すなわち、支持装置11は、前記送り装置によってその軸方向へ送られる中空素材Pmを、第1の位置Aにおいて支持する。
【0027】
本実施形態では、支持装置11としてブロックを用いている。ブロックは、中空素材Pmが隙間を有して挿通することができる貫通穴11aを有する。図示を省略するが、ブロックを複数分割し、油圧シリンダーやエアシリンダーを接続し、中空素材Pmを挟持して支持する構成としてもよい。また、支持装置11は、特定型式のものに限定されず、この種の支持装置として公知のものが採用できる。例えばその他の構成として、互いに対向配置される一対の孔型のロールを1組もしくは2組以上並設して用いることが可能である。
支持装置11は、図示されない搭載台上に固定配置されている。しかし、この態様のみに限定されるものではなく、支持装置11を産業用ロボットのエンドエフェクター(図示略)によって支持してもよい。
中空素材Pmは、支持装置11が設置された第1の位置Aを通過した後、さらに矢印F方向へ送られる。
【0028】
(2)加熱装置12
加熱装置12は、中空素材Pmの送り方向に沿った第1の位置Aよりも下流にある第2の位置Bに配置されている。加熱装置12は、支持装置11から送られてくる中空素材Pmの長手方向の一部分における横断面の全周を加熱する。加熱装置12として誘導加熱装置を用いる。この誘導加熱装置は、中空素材Pmを例えば高周波誘導加熱することができるコイルを有するものであればよく、公知のものが採用できる。
加熱装置12の加熱コイル12aは、中空素材Pmの外表面から所定の距離だけ離れて、中空素材Pmの長手方向の一部における横断面の全周を囲むように、配置される。そして、中空素材Pmは、加熱装置12により部分的に急速加熱される。
【0029】
加熱装置12の設置手段(不図示)は、加熱コイル12aを第2の位置Bにおいて傾斜角度調整自在に配置できる。すなわち、加熱装置12の前記設置手段は、加熱コイル12aを、中空素材Pmの送り方向に対して設定した角度に傾斜させることができる。
図1の例では、中空素材Pmの長手方向(矢印Fに示す、中空素材Pmの送り方向)に対し、側面視で傾斜角度αをもって交差するように、加熱コイル12aが傾斜配置されている。より具体的には、
図1に示すように加熱コイル12aの中心線を含む断面で見て、加熱コイル12aの上側にある断面での幅方向中央位置と、加熱コイル12aの下側にある断面での幅方向中央位置とを結ぶ直線L1とする。そして、加熱コイル12aに至る前の中空素材Pmの中心軸線を直線L2とする。このとき、直線L1と直線L2とがなす角を前記傾斜角度αとした場合、この傾斜角度αを90°未満の鋭角あるいは90°超の鈍角とすることで、加熱コイル12aの傾斜配置を変更することができる。また、傾斜角度αを90°(直角)とすることもできる。
【0030】
加熱装置12の設置手段としては、例えば周知慣用の産業用ロボットのエンドエフェクターを例示することができるが、前記傾斜角度αを指定通り調整可能であればよく、公知のものが採用できる。加熱装置12の設置手段による傾斜角度αの調整は、製造装置10に備わる制御装置15からの制御信号を前記設置手段が受けて、自動制御する構成としてもよい。この場合、中空素材Pmの長手方向において、せん断曲げ加工を行う位置と、同位置において設定すべき傾斜角度αとの関係を予め制御装置15に保存しておき、中空素材Pmの送り量が所定の送り量に達した際の加熱コイル12aの傾斜角度αが、所定の角度をなすように制御することが一例として考えられる。
【0031】
図示していないが、中空素材Pmの送り方向に沿った加熱装置12の上流側位置に、中空素材Pmを予熱できる予熱装置(例えば小型の高周波加熱装置)を一つ以上配置しておき、この予熱手段を加熱装置12と併用して中空素材Pmを加熱することもできる。この場合、中空素材Pmを複数回加熱することが可能になる。
【0032】
(3)冷却装置13
冷却装置13は、中空素材Pmの送り方向に沿った第2の位置Bよりも下流にある第3の位置Cに配置される。冷却装置13は、中空素材Pmのうち、第2の位置Bで加熱された部分を急速に冷却する。中空素材Pmは、冷却装置13で冷却されることによって、加熱装置12により加熱された第1の部分と、冷却装置13により冷却された第2の部分との間の部分が、高温であって変形抵抗が大幅に低下した状態となる。
【0033】
冷却装置13は、所望の冷却速度が得られるものであればよく、特定方式の冷却装置に限定されない。一般的には、冷却水を中空素材Pmの外周面の所定位置へ向けて噴射することによって中空素材Pmを冷却する水冷装置を用いることが望ましい。本実施形態では、多数の冷却水噴射ノズル13aを、加熱装置12の直ぐ下流側に、中空素材Pmの長手方向の一部の横断面を囲むように、中空素材Pmの外表面から離して配置している。そして、これら冷却水噴射ノズル13aからの冷却水を中空素材Pmの外表面へ向けて噴射する。
冷却水は、中空素材Pmが送り出される方向へ向けて斜めに吹き付けることが、加熱装置12による中空素材Pmの加熱を阻害しない上で望ましい。また、中空素材Pmの軸方向と直交する断面において、各冷却水噴射ノズル13aと、中空素材Pmとの間の距離を変更して設定すれば、中空素材Pmの冷却される軸方向の領域を調整することができる。
【0034】
中空素材Pmにおいて加熱装置12により加熱された部分は、冷却装置13により、急速に冷却される。
冷却装置13による水冷の開始温度および冷却速度を適宜調整することにより、中空素材Pmにおける急速冷却部の一部または全部を焼入れたり、あるいは焼き鈍ますことが可能になる。これにより、例えば、中空素材Pmの曲がり部の一部または全部の強度を、例えば1500MPa以上と大幅に高めることも可能である。
【0035】
冷却装置13の設置手段は、冷却装置13を第3の位置Cに配置できる手段であればよく、特定の設置手段のみに限定されない。ただし、本実施形態の製造装置10により高い寸法精度を有する中空屈曲部品Ppを製造するためには、第2の位置B及び第3の位置C間の距離をできる限り短く設定することによって、加熱装置12により加熱された第1の部分と、冷却装置13により冷却された第2の部分との間の領域をできるだけ小さく設定することが望ましい。このためには、冷却水噴射ノズル13aを高周波加熱コイル12aに近接配置することが望ましい。そのため、冷却水噴射ノズル13aを誘導加熱コイル12aの直後の位置に配置することが望ましい。さらには、前記加熱装置12の設置手段に対し、冷却装置13を固定してもよい。この場合、各冷却水噴射ノズル13aと加熱コイル12aとの相対位置関係を保ったまま、これら冷却水噴射ノズル13a及び加熱コイル12aの双方が同じ傾斜角度αで傾斜させることが可能になる。
【0036】
しかし、この構成のみに限らず、冷却装置13の設置手段を、前記加熱装置12の設置手段とは別に備えてもよい。冷却装置13の設置手段(不図示)は、各冷却水噴射ノズル13aを第3の位置Cにおいて傾斜角度調整自在に配置できる。すなわち、冷却装置13の前記設置手段は、冷却装置13を、中空素材Pmの送り方向に対して設定した角度に傾斜させることができる。例えば
図1に示すように、中空素材Pmの長手方向(矢印Fに示す、中空素材Pmの送り方向)に対し、側面視で傾斜角度αをもって交差するように、各冷却水噴射ノズル13aを傾斜配置できる。そして、各冷却水噴射ノズル13aの傾斜角度を、加熱コイル12aの傾斜角度と同期させて常に同じとすることにより、各冷却水噴射ノズル13aを、加熱コイル12aと干渉させることなく隣接配置することが可能になる。
【0037】
この場合の冷却装置13の設置手段としては、例えば周知慣用の産業用ロボットのエンドエフェクターを例示することができるが、前記傾斜角度αを指定通り調整可能であればよく、公知のものが採用できる。冷却装置13の設置手段による傾斜角度αの調整は、制御装置15からの制御信号を冷却装置13の設置手段が受けて、自動制御する構成としてもよい。この場合、制御装置15から加熱装置12の設置手段に送られる制御信号を参照して、同じ傾斜角度αをもって同期傾斜できるように制御することが一例として考えられる。
【0038】
(4)せん断力付与装置14
せん断力付与装置14は、中空素材Pmの送り方向に沿った第3の位置Cよりも下流にある第4の位置Dに配置される。せん断力付与装置14は、中空素材Pmを位置決めしながら二次元方向または三次元方向に移動する。これにより、せん断力付与装置14は、中空素材Pmにおける、加熱装置12により加熱された第1の部分と、冷却装置13により冷却された第2の部分との間の領域に、せん断力を与えて中空素材Pmにせん断曲げ加工を行う。
【0039】
図1に示す例では、せん断力付与装置14として上下一対の把持手段14a,14bを備える。これら把持手段14a,14bは、中空素材Pmの外表面に接触することによって中空素材Pmの支持位置を決めする。そして、その支持位置の調整により、
図1に示すせん断角度θを調整することができる。このせん断角度θは、上述した直線L1,L2を含む仮想平面上における、中空素材Pmの送り方向(より具体的には直線L2に沿った方向)と、冷却装置13を経た後の中空素材Pmの外表面との間の角度である。
【0040】
上下一対の把持手段14a,14bは、二次元方向または三次元方向に移動自在に保持する移動機構(同じく図示しない)により保持される。
なお、中空素材Pmの送り方向に沿ったせん断力付与装置14の設置位置よりも下流位置に、せん断力付与装置14を経た後の中空素材Pmを支持する支持装置(不図示)をさらに設けてもよい。この場合、より高い寸法精度を有する中空屈曲部品Ppを製造することが可能になる。
【0041】
中空素材Pmの長手方向の一部における横断面は、加熱装置12により加熱されて変形抵抗が大幅に低下する。このため、中空素材Pmの送り方向に沿った第3の位置Cよりも下流にある第4の位置Dにおいて上下一対の把持手段14a,14bの位置を三次元方向に移動させることによって、
図1に示すように、中空素材Pmにおける、加熱装置12により加熱された第1の部分と、冷却装置13により冷却された第2の部分との間の領域にせん断力Wsを与えることができる。
【0042】
中空素材Pmにせん断力Wsが作用することにより、曲がり部が形成される。本実施形態では、特許文献1により開示された発明のように中空素材Pmの加熱された部分に曲げモーメントを与えるのではなく、せん断力を与える。このため、曲げ半径が曲がり部の内周側の外形曲線と外周側の外形曲線との間の間隔である幅W(製品幅)の0.2倍~2倍といった、極めて小さい曲げ半径の曲がり部を持つ中空屈曲部品Ppを製造することができる。
本実施形態の制御装置10を用いた製造方法は、せん断角度θと傾斜角度αの組み合わせを適宜設定することにより、曲げ半径の加工可能範囲を広くとることができる。そのため、前記曲げ半径が2倍を超える大きな曲げ半径の加工も可能である。一方、製品設計上の理由により小さな曲げ半径が求められる場合も、従来技術では難しかった0.2倍以上2倍以下の極めて小さい曲げ半径を得ることも可能としている。
なお、ここで言う幅Wと曲げ半径の詳細については、中空屈曲部品Ppの説明において後述する。
【0043】
せん断力付与装置14は、上下一対の把持手段14a,14bを、上述したように二次元方向または三次元方向に移動自在に配置することができる機構を介して、設置されればよい。そのような機構は特に限定を要さない。例えば、周知の産業用ロボットのエンドエフェクターにより、把持手段14a,14bを保持してもよい。
【0044】
(5)制御装置15
制御装置15(制御手段)は、上述した支持装置11、加熱装置12、冷却装置13、せん断力付与装置14、の各種動作を制御する。
制御装置15は、中空素材Pmの、送り方向に沿ってせん断力の付与前後に形成されるせん断角度θに応じて、前記送り方向に対する加熱装置12及び冷却装置13の傾斜角度αの設定を行い、前記設定に基づいて加熱装置12、冷却装置13、せん断力付与装置14を制御することで、中空素材Pmにおけるせん断曲げ加工部分の幅寸法Wを、中空素材Pmの元の幅寸法W0と同じ値又は異なる値に変える。すなわち、幅比W/W0が1、1超、または1未満、となるように、せん断角度θと傾斜角度αの組み合わせを設定する。幅比W/W0=1に設定した場合には幅寸法維持となり、幅比W/W0>1に設定した場合には製品幅は増加し、幅比W/W0<1に設定した場合には製品幅は減少する。
【0045】
[中空屈曲部品の製造方法]
続いて、上記製造装置10を用いて、中空素材Pmより中空屈曲部品Ppを製造する方法について以下に説明する。この製造方法では、中空素材Pmにせん断曲げ加工を加えることにより、その長手方向に沿って見て、部分的な幅(以下、製品幅)の変更を可能としている。
すなわち、本実施形態の製造方法によれば、(1)素材である中空素材Pmの送り方向と製品である中空屈曲部品Ppとの間における進行方向の角度(せん断角度θ)と、(2)素材である中空素材Pmの送り方向と加熱装置12との間における角度(加熱コイル12aの傾きである傾斜角度α)とを適切に選ぶことによって、せん断曲げ加工を受けた後の中空屈曲部品Ppの製品幅を変更可能としている。
【0046】
この点について、
図2及び
図3を用いて以下に説明する。
図2は、製造装置10を用いた中空屈曲部品Ppの製造方法を説明するための図であって、
図1のX1部における部分拡大図である。
図3は、製造装置10を用いた中空屈曲部品Ppの製造方法を説明するための図であって、
図1のY1-Y1線における断面図である。
【0047】
厳密には、
図1に示す加工中における実際変形は純粋なせん断変形とならず、中空素材Pmの寸法(外形寸法や板厚など)、加熱装置12及び冷却装置13の各寸法や、せん断力付与装置14の構造によって若干異なる場合がある。しかし、ここでは説明のために、理想的で純粋なせん断変形を仮定して説明する。
【0048】
以下、板厚t
0で寸法W
0×寸法H
0の矩形断面を持つ中空素材Pmを
図1に示したように、幅方向に沿う2次元方向にせん断曲げ加工した場合を説明する。
【0049】
ここで、加熱コイル12aの傾斜角度をα(度)とし、中空素材Pmのせん断曲げ加工時のせん断角度をθ(度)とする。そして、寸法W
0×寸法H
0の矩形断面を持つ中空素材Pmに対し製造装置10によりせん断曲げ加工を加えて、寸法W×寸法Hの矩形断面を持つ中空屈曲部品Ppを得るものとする。この場合、せん断曲げを受けた曲がり部は、
図2に示すように幅寸法が変化する。
【0050】
この点について具体的に言うと、
図2に示す幾何学形状より、下式(3)が求められる。
【0051】
【0052】
上式(3)を変形させると下式(4)が得られ、この下式(4)をさらに変形させると下式(5)が得られる。
【0053】
【0054】
【0055】
図4は、上式(4)に基づき、製品幅Wを素管幅W
0で除算した幅比であるW/W
0が、せん断角度θ及び傾斜角度αの組み合わせによって増減する傾向を示すグラフである。せん断角度θは0度~90度の範囲で変化させ、傾斜角度αは15度~120度の範囲(15度、20度、30度、45度、60度、90度、120度)で変化させた。この
図4のグラフにおいて、「幅比=1.0」のラインが、製品幅の増減無しで元のまま(W=W
0)を示す。そして、このラインよりも上方の「幅比>1.0」では、製品幅が増している(W>W
0)ことを示す。逆に、このラインよりも下方の「幅比<1.0」では、製品幅が減っている(W<W
0)ことを示す。
【0056】
したがって、必要とされるせん断角θに応じて、加熱コイル12aの傾斜角度αを設定する(あるいは変更する)ことにより、下記3パターンの幅寸法Wを得ることが可能になる。
(a)部分的に製品幅Wを増加させる(W/W0>1)
(b)製品幅Wを素管幅のまま維持する(W/W0=1)
(c)部分的に製品幅Wを減少させる(W/W0<1)
すなわち、目標とする製品幅Wを部分的に設定し、上記(a)または上記(c)を決めた上で、せん断角θに対して上式(5)を満たす適切な傾斜角度αを設定すれば、製品幅が変更可能になる。逆に、上記(b)を決めた上で、せん断角θに対して上式(5)を満たす適切な傾斜角度αを設定すれば、製品幅を元のままに維持できる。
【0057】
一方、製品高さ製品高さHは、下式(6)に示す通り寸法H0のままである。
【0058】
【0059】
上述したように、上記各式は理想的な純粋せん断変形を仮定したものであるため、実際には中空素材Pmの寸法(外形寸法や板厚など)、加熱装置12及び冷却装置13の各寸法や、せん断力付与装置14の構造によって若干変化する場合がある。したがって、生産準備の段階で、実際の中空素材Pmと加熱装置12と冷却装置13とを用いて、事前に加熱コイル12aの傾斜角度αを変更させた場合の、せん断角θと幅比W/W0との関係を求めておくことが望ましい。これらの事前データを活用して実際の製品生産を行うことによって、よりスムーズな生産が可能となる。
【0060】
上記生産準備によって、上式(4)を満たす、傾斜角度α及びせん断角θと幅比W/W
0との関係を得た後、本実施形態の製造方法は以下の工程を経て中空屈曲部品Ppを製造する。
すなわち、
図1において、始めに、鋼製で長尺な中空素材Pmを、前記送り装置によりその長手方向へ相対的に送りながら、第1の位置Aに配置された支持装置11により支持する。
【0061】
次に、加熱装置12により、送られてくる中空素材Pmを部分的に急速加熱する。その前に、加熱コイル12aの傾きを傾斜角度αとし、冷却装置13も同じ傾斜角度αとしておく。
中空素材Pmの加熱温度は、中空素材Pmを構成する鋼のAc3点以上とすることが望ましい。Ac3点以上とすることにより、加熱に続いて行われる冷却時の冷却速度を適宜設定することによって中空素材Pmの曲がり部を焼入れことができる。しかも、中空素材Pmの前記第1の部分と前記第2の部分との間の変形抵抗を、所望の小さな曲げ半径を有する加工を行うことができる程度に、十分に低下させることが可能になる。
【0062】
中空素材Pmの送り方向に沿った第2の位置Bよりも下流にある第3の位置Cに配置された冷却装置13の冷却水噴射ノズル13aから、冷却水を中空素材Pmへ向けて噴射する。これにより、加熱された部分を第3の位置Cで冷却する。中空素材Pmの鋼種にもよるが、この冷却時の冷却速度を100℃/秒以上とすることにより、曲がり部に焼入れを行ってその強度を高めることができる。
【0063】
この冷却によって、中空素材Pmに、加熱装置12により加熱された第1の部分と、冷却装置13により冷却された第2の部分とが形成される。中空素材Pmの第1の部分と第2の部分との間は、高温状態にあってその変形抵抗が大幅に低下する。
【0064】
中空素材Pmのせん断曲げ加工予定部の先端部が、せん断力付与装置14の一対の把持手段14a,14bに到達した時に、把持手段14a,14bを、その原位置を起点として、中空素材Pmの送り方向、および、加熱装置12により加熱された中空素材Pmの長手方向における横断面と略平行な方向の2方向が合成された方向(
図1における紙面左斜め下方向)へ、図示しない支持枠により回転自在に支持された上下一対の把持手段14a,14bを移動させる。この時、せん断力付与装置14によるせん断角度がθとなるようにする。
このようにして、中空素材Pmの前記第1の部分と前記第2の部分との間に、せん断力Wsが与えられ、中空素材Pmにせん断曲げ加工が行われ、中空屈曲部品Ppが得られる。
【0065】
[中空屈曲部品]
中空屈曲部品Ppは、鋼製の中空かつ長尺部材であり、閉断面形状を有し、長手方向へ一体に構成された曲がり部を有する。本実施形態の中空屈曲部品Ppは、その曲がり部における曲げ半径が、曲がり部の内周側の外形曲線と外周側の外形曲線との間の間隔である幅Wの0.2倍~2倍以下といった、極めて小さい曲げ半径の曲がり部を少なくとも一箇所有することができる。すなわち、曲がり部が複数箇所有る場合、それらのうちの一箇所以上において、上述のような極めて小さい曲げ半径を得ることができる。
【0066】
前記幅Wは、中空屈曲部品Ppの曲がり部をその曲げ方向に沿って見た場合に、曲がり部の曲がり方向に沿った中心線に対して直交する方向での、内周側の外形曲線と外周側の外形曲線との間の製品幅である。また、この幅Wが曲がり部の曲げ方向に沿った各位置で異なる場合には、曲がり部内での最大値をもって幅Wとする。
前記曲げ半径は、内周側の外形曲線について求めた値でもよいし、外周側の外形線について求めた値でもよい。曲がり部がせん断変形により形成されたものであるため、通常の曲げ変形の場合と異なり、内周側の外形曲線について求めた曲げ半径と、外周側の外形曲線について求めた曲げ半径とが略同じになるからである。実際の加工において、内周側の外形曲線について求めた曲げ半径と、外周側の外形曲線について求めた曲げ半径との間で多少の違いが出る可能性もある。その場合には、それらのうちの小さい方をもって曲げ半径とすればよい。
【0067】
上記規定のもと、中空屈曲部品Ppが円形断面の金属管の場合、その曲がり部における曲げ半径を、円形断面の直径(外径)の1~2倍あるいはそれ以下(0.2倍~2倍)の極めて小さい曲げ半径とすることができる。同様に、中空屈曲部品Ppが矩形の金属管の場合も、その曲がり部における曲げ半径を、矩形断面の曲げ方向の辺の長さの1~2倍あるいはそれ以下(0.2倍~2倍)の極めて小さい曲げ半径とすることができる。
【0068】
加えて、この中空屈曲部品Ppでは、せん断曲げ加工された部分の製品幅Wを、部分的に変化または維持させている。すなわち、製品幅Wが、上述した(a)~(c)の各パターンを含んでいる。
このようにして得られた中空屈曲部品Ppにおいて、せん断曲げ加工を受けた曲がり部では、鋼を素材として用いた場合には、そのミクロ組織におけるマルテンサイトの比率(体積比率)が50%以上となる。
【0069】
以下に本実施形態の骨子を述べる。
[1]本実施形態は、金属製の長尺な中空素材Pmを、その長手方向に沿った送り方向へ送りながら第1の位置Aで支持し、前記送り方向に沿って第1の位置Aよりも下流の第2の位置Bに配置された加熱装置12で中空素材Pmを被加熱部において部分的に加熱し、前記送り方向に沿って第2の位置Bよりも下流の第3の位置Cに配置された冷却装置13で中空素材Pmを冷却し、前記送り方向に沿って第3の位置Cよりも下流の第4の位置Dで中空素材Pmを支持して支持位置を二次元方向又は三次元方向に移動させることにより、中空素材Pmの前記被加熱部にせん断力を与える、中空屈曲部品の製造方法であって、中空素材Pmの、前記せん断力の付与前後に形成されるせん断角度θに応じて、前記送り方向に対する加熱装置12及び冷却装置13の傾斜角度αの設定を行うことで、中空素材Pmにおけるせん断曲げ加工部分の幅寸法Wを変える。
【0070】
[2]上記[1]において、前記設定を行う際、前記せん断角度をθ(度)とし、前記傾斜角度をα(度)とし、中空素材Pmの元の幅寸法をW0(mm)とし、前記せん断曲げ加工部分の幅寸法をW(mm)とし、下式(7)を満たすように、せん断角度θ及び傾斜角度αを設定してもよい。
【0071】
【0072】
[3]本実施形態は、金属製の長尺な中空素材Pmを、その長手方向に沿った送り方向へ送りながら第1の位置Aで支持する支持装置11と、前記送り方向に沿って第1の位置Aよりも下流の第2の位置Bに配置され、中空素材Pmを被加熱部において部分的に加熱する加熱装置12と、前記送り方向に沿って第2の位置Bよりも下流の第3の位置Cに配置され、中空素材Pmを冷却する冷却装置13と、前記送り方向に沿って第3の位置Cよりも下流の第4の位置Dで中空素材Pmを支持して支持位置を二次元方向又は三次元方向に移動させることにより、中空素材Pmの前記被加熱部にせん断力を与える、せん断力付与装置14と、中空素材Pmの、前記せん断力の付与前後に形成されるせん断角度θに応じて、前記送り方向に対する加熱装置12及び冷却装置13の傾斜角度αの設定を行い、前記設定に基づいて加熱装置12、冷却装置13、せん断力付与装置14を制御することで、中空素材Pmにおけるせん断曲げ加工部分の幅寸法Wを変える制御装置15と、を備える中空屈曲部品の製造装置である。
【0073】
[4]上記[3]において、以下の構成を採用してもよい:制御装置15が、前記設定を行う際、前記せん断角度をθ(度)とし、前記傾斜角度をα(度)とし、中空素材Pmの元の幅寸法をW0(mm)とし、前記せん断曲げ加工部分の幅寸法をW(mm)とし、下式(8)を満たすように、せん断角度θ及び傾斜角度αを設定する。
【0074】
【0075】
[5]本実施形態は、金属製の長尺な中空の一体部品であって、その長手方向に沿って見て熱処理された曲がり部における幅Wが、前記曲がり部に隣接する他の部分の幅W0と異なる中空屈曲部品Ppを提供する。
【0076】
[6]上記[5]において、以下の構成を採用してもよい:前記長手方向に垂直な断面形状が矩形の閉断面形状を有し、前記曲がり部における曲げの外周側壁部と、前記曲がり部における曲げの内周側壁部との間の幅Wが、前記隣接する他の部分の幅W0と異なる。
【0077】
[7]上記[5]又は[6]において、以下の構成を採用してもよい:鋼製であり、曲がり部のマルテンサイト量が50%以上である。
【実施例1】
【0078】
以下に説明する実施例1に基づいて本発明の効果を説明する。本発明例1~3のそれぞれに対して、表1~3に、製造時の加熱コイル12aの傾斜角度αとせん断角θの値を示す。それぞれの条件に対して、上式(4)で算出した幅比W/W
0も同表1~3に示している。また、それぞれの製品形状を、
図5の(a)~(c)に示す。
【0079】
[本発明例1]
本発明例1では、中空素材Pmの送り方向に対して、加熱コイル12aを垂直(傾斜角度α=90度)に設定した上で、
図5(a)に示す領域Iでは、せん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れする。続く領域IIでは、せん断角θ=30度でせん断加工を行いつつ焼入れし、その後、領域IIIでせん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れする。計算結果を下表1に示す。各領域I~IIIにおける幅比W/W
0は、下表1に示される通りである。せん断曲げ加工を受けた領域IIの製品幅Wは元の幅寸法に対して約13%減少する。本発明例1に対応する製品外観は、
図5の(a)である。
【0080】
【0081】
[本発明例2]
本発明例2は、中空素材Pmの送り方向に対して、加熱コイル12aをα=45度に傾斜させた。この設定の元、領域Iでは、せん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れする。続く領域IIでは、せん断角度θ=30度でせん断曲げ加工を行いつつ焼入れする。続く領域IIIでは、せん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れする。計算結果を下表2に示す。各領域I~IIIにおける幅比W/W
0は、下表2に示される通りである。本製造方法では、せん断曲げ加工を受けた領域IIの製品幅Wが約36%増加する。本発明例2に対応する製品外観は、
図5(b)である。
【0082】
【0083】
[本発明例3]
本発明例3は、中空素材Pmの送り方向に対して、加熱コイル12aをα=30度に傾斜させた。この設定の元、領域Iでは、せん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れする。続く領域IIでは、せん断角度θ=30度でせん断曲げ加工を行いつつ焼入れする。続く領域IIIでは、せん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れする。計算結果を下表3に示す。各領域I~IIIにおける幅比W/W
0は、下表3に示される通りである。本製造方法では、せん断曲げ加工を受けた領域IIの製品幅Wが約73%と大幅に増加する。本発明例3に対応する製品外観は、
図5(c)である。
【0084】
【0085】
[実施例1の効果確認]
上記の表1~3に示すコイル傾斜角度αとせん断角度θの設定で、本発明例1~3の製造方法を実施した。その結果、0.2%炭素鋼であり、高さ寸法H0=30mm、幅寸法W0=50mm、板厚t0=1.0mm、全長L=1200mmの製品を各ケース毎に75本ずつ、中空屈曲部品Ppとして製造した。なお、加熱装置12による被加熱部の加熱温度は950℃とした。そして、それら中空屈曲部品Ppの幅寸法を測定したところ、表1~3に示した値の±5%以内の誤差で一致した。また、中空屈曲部品Ppの引張強度は全長に亘り1470MPa以上となり、100%のマルテンサイト組織が得られた。
【0086】
[本発明例1]
設計上、
図5の領域IIに示す製品幅Wとして45.5mm以下が必要である場合には、従来の製造方法では、中空素材Pmとして矩形断面の幅W
0が45.5mmのものを使用することになる。本発明例1では、幅W
0が50mmの中空素材Pmを使用しながらも製品幅Wを45.5mm以下にできる。従来の製造方法で、本発明例1のように製品幅Wの異なる同一製品を得るためには、領域I,II,IIIの製品を互いに別体として製造後に、これらを溶接して一つに組み立てる必要がある。
【0087】
[本発明例2]
設計上、
図5の領域IIに示す製品幅Wが64mm必要である場合には、従来の製造方法では、中空素材Pmとして矩形断面の幅W
0が64mmのものを使用することになる。本発明例2では、幅W
0が50mmの中空素材Pmを使用しながらも製品幅Wを64mmにできるため、約15%の軽量化が可能となる。従来の製造方法で、本発明例2のように製品幅Wの異なる同一製品を得るためには、領域I,II,IIIの製品を互いに別体として製造後に、これらを溶接して一つに組み立てる必要がある。
【0088】
[本発明例3]
設計上、
図5の領域IIに示す製品幅Wが82mm必要である場合には、従来の製造方法では、中空素材Pmとして矩形断面の幅W
0が82mmのものを使用することになる。本発明例3では、幅W
0が50mmの中空素材Pmを使用しながらも製品幅Wを82mmにできるため、約28%の軽量化が可能となる。従来の製造方法で、本発明例3のように製品幅Wの異なる同一製品を得るためには、領域I,II,IIIの製品を互いに別体として製造後に、これらを溶接して一つに組み立てる必要がある。
【0089】
以上に示す様に、設計上で必要となる製品寸法の条件に対して、式(5)を目安として事前に実験を行ない、そして適切な中空素材Pmを選定することにより、中空屈曲部品Ppの軽量化が可能となる。
【実施例2】
【0090】
[本発明例4]
本発明例4は、
図6に示す中空屈曲部品Ppを製造する。
まず、中空素材Pmの送り方向に対して、加熱コイル12aをα=120度に傾斜させた設定で、領域Iではせん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れする。続く領域IIでは、加熱コイル12aをα=120度傾斜させたまません断角度θ=30度でせん断加工を行いつつ焼入れする。その後、加熱コイル12aをα=120度からα=45度に傾斜角度を変更しつつ領域IIIでせん断力を付与せず真っ直ぐに送りながら焼入れする。続いて、加熱コイルをα=45度に傾斜させた設定で、領域IVではせん断角度θ=30度でせん断加工を行いつつ焼入れする。その後、加熱コイルをα=45度に傾斜させたまま、領域Vでせん断力を付与せずに真っ直ぐに送りながら焼入れする。計算結果を下表4に示す。下表4に、幅比W/W
0を示している。本方法では、せん断曲げ加工を受けた領域IIと領域IVで製品幅Wを変更することが出来る。本例に対応する製品外観は、
図6である。
【0091】
【0092】
[実施例2の効果確認]
表4に示したコイル傾斜角度αとせん断角度θの設定で、本発明例4の製造方法を実施した。その結果、0.2%炭素鋼であり、高さ寸法H
0=30mm、幅寸法W
0=50mm、板厚t
0=1.0mm、全長L=2000mmの製品を50本、中空屈曲部品Ppとして製造した。なお、加熱装置12による被加熱部の加熱温度は950℃とした。そして、それら中空屈曲部品Ppの幅寸法を測定したところ、表4に示した値の±5%以内の誤差で一致した。また、中空屈曲部品Ppの引張強度は全長に亘り1470MPa以上となり、100%のマルテンサイト組織が得られた。
設計上、他の部品との干渉のために
図6の領域IIにおける製品幅Wを31mm以下とすることが必要であり、さらに、
図6の領域IVにおける製品幅Wが64mm必要である場合、本発明の製造方法によれば、50mm幅の中空素材Pmを用いて製造することが可能である。従来の製造方法で、本実施例2のように幅の異なる同一製品を得ようとする場合、領域I~Vをそれぞれ個別に製造し、そしてこれらを互いに溶接で組み立てる必要がある。
【0093】
以上説明の実施例1,2に示される通り、本実施形態によれば、曲がり部の曲げ半径が例えば曲げ方向の辺の長さ(円管の場合には外径)の1~2倍あるいはそれ以下(0.2倍~2倍)の、極めて小さい曲がり部を有する高強度の中空屈曲部品Ppを、低コストで確実に提供できる。しかも、製品の必要な部分に設計で必要とされる幅を加工工程で付与できるため、これまで以上に軽量化や工程の省略が達成される。このため、本発明によれば、例えば自動車の車体構成部材や足廻り部材といった、自動車の各種部品の設計の自由度を高めるとともに、これら各種部品のさらなる低コスト化および軽量化を図ることができる。
【0094】
また、製品強度についても、
図7のハッチング部分に示す様に、鋼を素材とした製品においては、部分的に焼き入れを施すことが可能である。中空素材Pmにおける被加熱部の加熱温度や中空素材Pmの成分組成を組み合わせることにより、中空屈曲部品Ppの焼き入れ部におけるマルテンサイト量を制御できる。好適な様態として、焼入れ部のマルテンサイト量が50%以上の組成で、比較的高強度な中空屈曲部品Ppを得ることができる。このため、本実施形態によれば、自動車の各種の車体構成部材の設計自由度を高めるとともに、これら各種部品のさらなる低コスト化および軽量化を図ることができる。
なお、実施例1,2では非連続的にせん断角度θを変更した場合を例示したが、中空素材Pmの送りとともに連続的にせん断角度θとそれに対応した傾斜角度αとを設定することにより、任意の曲線形状を持つ2次元製品あるいは3次元製品を得ることができる。すなわち、本実施形態に係る中空屈曲部品の製造方法及び製造装置によれば、一平面内において曲がり部を持つ2次元製品だけではなく、前記一平面内と同一平面に対し交差(直交を含む)する他の平面内との両方において任意形状の曲がり部を持ち所定の幅を有する3次元製品を製造することも可能である。
【0095】
なお、以上の説明では、せん断変形を、矩形断面を有する金属製の中空素材Pmに与える場合を例示したが、本発明はこの態様のみに限定されない。すなわち、金属製の中空素材の断面形状が矩形以外である丸管や多角形管あるいは任意の曲面形状を持つ管であっても、同様に加熱コイル12aの傾斜角度αとせん断角θとを変更することにより、せん断曲げ加工を受ける部分の幅を変更することができる。
【0096】
また、従来の曲げ変形にせん断力による変形を付加することにより、幅を変更することが可能であるため、せん断力による変形成分を含む加工が本発明の対象である。
本発明に係る中空屈曲部品Ppは、せん断力による加工時に同時に熱処理(例えば焼入れ)が行われて製造される。そのため、冷間でせん断曲げ加工が行われてその後に熱処理(例えば焼入れ)を行った中空屈曲部品に比較して、例えば1470MPa以上の高強度の部分を有する中空屈曲部品Ppを、より単純な工程かつ高い加工精度で製造することができる。
【0097】
本発明に係る製造方法により製造される中空屈曲部品Ppは、例えば以下に例示する用途(i)~(vii)に対して適用可能である。
(i)例えば、フロントサイドメンバー、クロスメンバー、サイドメンバー、サスペンションメンバー、ルーフメンバー、Aピラーのレインフォース、Bピラーのレインフォース、バンパーのレインフォース等といった自動車車体の構造部材
(ii)例えば、シートフレーム、シートクロスメンバー等といった自動車の強度部材や補強部材
(iii)自動車の排気管等の排気系部品
(iv)自転車や自動二輪車のフレームやクランク
(v)電車等の車輛の補強部材、台車部品(台車枠、各種梁等)
(vi)船体等のフレーム部品、補強部材
(vii)家電製品の強度部材、補強部材または構造部材
【0098】
[付記]
(a)支持手段で保持された被加工材を上流側から逐次または連続的に送りながら、前記支持手段の下流側で曲げ加工を行う金属材の加工方法であって、前記支持手段の下流側に設けられたせん断力付与手段で前記金属材をクランプし、当該せん断力付与手段の位置または/および移動速度を制御しつつ、前記せん断力付与手段の入り側であり前記金属材の外周に配置した加熱手段および冷却手段を用いて、前記金属材を局部的に塑性変形が可能な温度域でかつ焼入が可能な温度域に加熱し、前記加熱部にせん断力を付与した後、急冷する金属材の加工方法において、加工された製品の進行方向のなす角度θに対して、該加熱手段および該冷却手段を金属製の中空の素材の長手方向に対してα傾斜設定することにより製品幅を変更することを特徴とする中空屈曲部材の製造方法。
【0099】
(b)支持手段で保持された被加工材を上流側から逐次または連続的に送りながら、前記支持手段の下流側で曲げ加工を行う金属材の加工方法であって、前記支持手段の下流側に設けられたせん断力付与手段で前記金属材をクランプし、当該せん断力付与手段の位置または/および移動速度を制御しつつ、前記せん断力付与手段の入り側であり前記金属材の外周に配置した加熱手段および冷却手段を用いて、前記金属材を局部的に塑性変形が可能な温度域でかつ焼入が可能な温度域に加熱し、前記加熱部にせん断力を付与した後、急冷する金属材の加工方法において、加工された製品の進行方向のなす角度θに対して、該加熱手段および該冷却手段を金属製の中空の素材の長手方向に対して下式(9)に示すα傾斜設定することにより製品幅を変更することを特徴とする中空屈曲部材の製造方法。
【0100】
【0101】
(c)金属製の中空一体部品であって、部品の幅が部分的に異なり、部品の一部が熱処理されたことを特徴とする一体型中空屈曲部品。
【0102】
(d)上記(c)に記載の金属製の中空一体部品において、該中空部品が鋼製であり、部分的に熱処理された部分のマルテンサイト量が50%以上であることを特徴とする一体型中空屈曲部品。
【符号の説明】
【0103】
12 加熱装置(加熱手段)
13 冷却装置(冷却手段)
14 せん断力付与手段(せん断力付与装置)
15 制御装置(制御手段)
A 第1の位置
B 第2の位置
C 第3の位置
D 第4の位置
Pm 中空素材
Pp 中空屈曲部品
α 傾斜角度
θ せん断角度