(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】鉄損測定方法および鉄損測定システム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/02 20060101AFI20230307BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20230307BHJP
G01R 27/02 20060101ALN20230307BHJP
【FI】
G01N27/02 Z
G01R19/00 Z
G01R27/02 R
(21)【出願番号】P 2019151516
(22)【出願日】2019-08-21
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2018180142
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】溝上 雅人
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-262075(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0130664(US,A1)
【文献】特開2008-096217(JP,A)
【文献】実開平03-057660(JP,U)
【文献】特開2013-152058(JP,A)
【文献】特開2011-027475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N27/00-G01N27/24
G01R27/00-G01R27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性体板をコイル状に巻き取ることにより構成されるコイルの鉄損を、当該コイル状の状態のままで測定する鉄損測定方法であって、
前記コイル状の軟磁性体板の板幅方向の端面のうちの一方の端面である第1の端面の位置であって、前記コイルの相対的に外周側の位置、内周側の位置に、それぞれ、第1の電極、第2の電極を接触させると共に、前記コイル状の軟磁性体板の板幅方向の端面のうちの他方の端面である第2の端面の位置であって、前記コイルの相対的に外周側の位置、内周側の位置に、それぞれ、第3の電極、第4の電極を接触させ、前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、前記第4の電極、および前記コイルを用いて構成される回路であって、前記第1の電極および前記第2の電極を入力端とし、前記第3の電極および前記第4の電極が電気的に接続された回路を構成する回路構成工程と、
前記入力端に交流電力を供給し、前記第1の電極および前記第2の電極の間に印加される交流電圧と、前記回路に流れる交流電流とを用いて、前記コイルの測定領域の鉄損を導出する鉄損導出工程と、を有し、
前記コイルの測定領域は、前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極の前記軟磁性体板との接触位置により定ま
り、
前記第1の電極と前記第3の電極の、前記コイルの径方向および周方向の位置は略同じであり、
前記第2の電極と前記第4の電極の、前記コイルの径方向および周方向の位置は略同じであることを特徴とする鉄損測定方法。
【請求項2】
前記入力端に直流電力を供給し、前記第1の電極および前記第2の電極の間に印加される直流電圧と、前記回路に流れる直流電流とに基づく、前記回路の直流抵抗を導出する直流抵抗導出工程と、
前記入力端に前記交流電力が供給されたときの前記回路に流れる交流電流または前記第1の電極および前記第2の電極の間に印加される交流電圧と、前記回路の直流抵抗とに基づいて、前記回路のジュール損を導出するジュール損導出工程と、を更に有し、
前記鉄損導出工程では、前記回路のジュール損を更に用いて、前記コイルの測定領域の鉄損を導出することを特徴とする請求項1に記載の鉄損測定方法。
【請求項3】
前記コイルの測定領域の鉄損を導出する際に用いられる前記回路に流れる交流電流は、前記第3の電極と前記第4の電極との間を流れる交流電流であることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄損測定方法。
【請求項4】
前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、前記第4の電極は、それぞれ、並列に接続された複数の電極からなり、
前記複数の電極は、前記コイルの径方向の位置が略同じになるように前記コイルの周方向に配置されることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の鉄損測定方法。
【請求項5】
前記鉄損導出工程では、前記軟磁性体板が曲率を有することにより平坦である場合に比べて鉄損がどの位変化するかを示す指標値を更に用いて、前記コイルの測定領域の鉄損を導出し、
前記指標値は、前記コイルの曲率と略同じ曲率で曲げられた軟磁性体板の鉄損と平坦な軟磁性体板の鉄損とを用いて、前記コイルの測定領域の鉄損の導出が行われる前に事前に定められることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の鉄損測定方法。
【請求項6】
前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極は、それぞれ針状部を有し、
前記第1の電極と前記第3の電極の前記針状部の、前記コイルの径方向および周方向の位置は略同じであり、
前記第2の電極と前記第4の電極の前記針状部の、前記コイルの径方向および周方向の位置は略同じであり、
前記回路構成工程では、前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極の前記針状部の先端を、前記コイルと接触させることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の鉄損測定方法。
【請求項7】
前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極は、それぞれ同軸部を有し、
前記第1の電極と前記第3の電極の前記同軸部の、前記コイルの径方向の位置は略同じであり、
前記第2の電極と前記第4の電極の前記同軸部の、前記コイルの径方向の位置は略同じであり、
前記回路構成工程では、前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極の前記同軸部の軸方向の一方の端面である第1の端面を、前記同軸部と前記コイルとが略同軸になる状態で、前記コイルに接触させ、
前記同軸部を当該同軸部の軸に垂直な方向に切った場合の断面の形状は、環状、一箇所が欠けた環状、または渦巻状であることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の鉄損測定方法。
【請求項8】
前記第1の電極の前記同軸部、前記第2の電極の前記同軸部、前記第3の電極の前記同軸部、および前記第4の電極の前記同軸部の軸方向の他方の端面である第2の端面にはバックアップ部が接続され、
前記同軸部の弾性率は、前記バックアップ部の弾性率よりも低いことを特徴とする請求項7に記載の鉄損測定方法。
【請求項9】
前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極は、可撓性を有し、
前記回路構成工程では、前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極の前記同軸部の大きさを変更することを特徴とする請求項7または8に記載の鉄損測定方法。
【請求項10】
前記回路
構成工程では、それぞれが、前記コイルの周方向において間隔を有して配置され且つ前記コイルの径方向に移動可能な複数の可動部分を有する第1~第4の可動部を用いて、前記複数の可動部分を前記コイルの径方向に移動させることによって、前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極の前記同軸部の大きさを変更し、
前記第1の可動部の前記複数の可動部分は、前記第1の電極の前記同軸部の内周面に接触し、前記第2の可動部の前記複数の可動部分は、前記第2の電極の前記同軸部の内周面に接触し、前記第3の可動部の前記複数の可動部分は、前記第3の電極の前記同軸部の内周面に接触し、前記第4の可動部の前記複数の可動部分は、前記第4の電極の前記同軸部の内周面に接触することを特徴とする請求項7~9の何れか1項に記載の鉄損測定方法。
【請求項11】
前記可動部分は、前記コイルの周方向において間隔を有して配置され且つ前記コイルの径方向に延びる貫通孔に配置され、
前記回路
構成工程では、前記可動部分を、前記貫通孔に沿って移動させ、
複数の前記貫通孔は、前記同軸部の軸方向の他方の端面である第2の端面と接続されるバックアップ部に形成されていることを特徴とする請求項10に記載の鉄損測定方法。
【請求項12】
軟磁性体板をコイル状に巻き取ることにより構成されるコイルの鉄損を、当該コイル状の状態のままで測定する鉄損測定システムであって、
前記コイル状の軟磁性体板の板幅方向の端面のうちの一方の端面である第1の端面の位置であって、前記コイルの相対的に外周側の位置、内周側の位置に、それぞれ接触される、第1の電極、第2の電極と、
前記コイル状の軟磁性体板の板幅方向の端面のうちの他方の端面である第2の端面の位置であって、前記コイルの相対的に外周側の位置、内周側の位置に、それぞれ接触される、第3の電極、第4の電極と、
前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、前記第4の電極、および前記コイルを用いて構成される回路であって、前記第1の電極および前記第2の電極を入力端とし、前記第3の電極および前記第4の電極が電気的に接続された回路に交流電力を供給する交流電力供給手段と、
前記第1の電極および前記第2の電極の間に印加される交流電圧と、前記回路に流れる交流電流とを用いて、前記コイルの測定領域の鉄損を導出する鉄損導出手段と、を有し、
前記コイルの測定領域は、前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極の前記軟磁性体板との接触位置により定ま
り、
前記第1の電極と前記第3の電極の、前記コイルの径方向および周方向の位置は略同じであり、
前記第2の電極と前記第4の電極の、前記コイルの径方向および周方向の位置は略同じであることを特徴とする鉄損測定システム。
【請求項13】
前記回路に直流電力を供給する直流電力供給手段と、
前記第1の電極および前記第2の電極の間に印加される直流電圧と、前記回路に流れる直流電流とに基づく、前記回路の直流抵抗を導出する直流抵抗導出手段と、を更に有し、
前記鉄損導出手段は、前記入力端に前記交流電力が供給されたときの前記回路に流れる交流電流または前記第1の電極および前記第2の電極の間に印加される交流電圧と、前記回路の直流抵抗とに基づくジュール損を更に用いて、前記コイルの測定領域の鉄損を導出することを特徴とする請求項12に記載の鉄損測定システム。
【請求項14】
前記コイルの測定領域の鉄損を導出する際に用いられる前記回路に流れる交流電流は、前記第3の電極と前記第4の電極との間を流れる交流電流であることを特徴とする請求項12または13に記載の鉄損測定システム。
【請求項15】
前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、前記第4の電極は、それぞれ、並列に接続された複数の電極からなり、
前記複数の電極は、前記コイルの径方向の位置が略同じになるように前記コイルの周方向に配置されることを特徴とする請求項12~14の何れか1項に記載の鉄損測定システム。
【請求項16】
前記鉄損導出手段は、前記軟磁性体板が曲率を有することにより平坦である場合に比べて鉄損がどの位変化するかを示す指標値を更に用いて、前記コイルの測定領域の鉄損を導出し、
前記指標値は、前記コイルの曲率と略同じ曲率で曲げられた軟磁性体板の鉄損と平坦な軟磁性体板の鉄損とを用いて、前記コイルの測定領域の鉄損の導出が行われる前に事前に定められることを特徴とする請求項12~15の何れか1項に記載の鉄損測定システム。
【請求項17】
前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極は、それぞれ針状部を有し、
前記第1の電極と前記第3の電極の前記針状部の、前記コイルの径方向および周方向の位置は略同じであり、
前記第2の電極と前記第4の電極の前記針状部の、前記コイルの径方向および周方向の位置は略同じであり、
前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極の前記針状部の先端は、前記コイルに接触させることを特徴とする請求項12~16の何れか1項に記載の鉄損測定システム。
【請求項18】
前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極は、それぞれ同軸部を有し、
前記第1の電極と前記第3の電極の前記同軸部の、前記コイルの径方向の位置は略同じであり、
前記第2の電極と前記第4の電極の前記同軸部の、前記コイルの径方向の位置は略同じであり、
前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極の前記同軸部の軸方向の一方の端面である第1の端面は、前記同軸部と前記コイルとが略同軸になる状態で、前記コイルに接触し、
前記同軸部を当該同軸部の軸に垂直な方向に切った場合の断面の形状は、環状、一箇所が欠けた環状、または渦巻状であることを特徴とする請求項12~16の何れか1項に記載の鉄損測定システム。
【請求項19】
前記第1の電極の前記同軸部、前記第2の電極の前記同軸部、前記第3の電極の前記同軸部、および前記第4の電極の前記同軸部の軸方向の他方の端面である第2の端面と接続されるバックアップ部を有し、
前記同軸部の弾性率は、前記バックアップ部の弾性率よりも低いことを特徴とする請求項18に記載の鉄損測定システム。
【請求項20】
前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極は、可撓性を有し、
前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極の前記同軸部の大きさが変更可能であることを特徴とする請求項18または19に記載の鉄損測定システム。
【請求項21】
それぞれが、前記コイルの周方向において間隔を有して配置され且つ前記コイルの径方向に移動可能な複数の可動部分を有する第1~第4の可動部を更に有し、
前記複数の可動部分を前記コイルの径方向に移動させることによって、前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極の前記同軸部の大きさは変更され、
前記第1の可動部の前記複数の可動部分は、前記第1の電極の前記同軸部の内周面に接触し、前記第2の可動部の前記複数の可動部分は、前記第2の電極の前記同軸部の内周面に接触し、前記第3の可動部の前記複数の可動部分は、前記第3の電極の前記同軸部の内周面に接触し、前記第4の可動部の前記複数の可動部分は、前記第4の電極の前記同軸部の内周面に接触することを特徴とする請求項18~20の何れか1項に記載の鉄損測定システム。
【請求項22】
前記同軸部の軸方向の他方の端面である第2の端面と接続されるバックアップ部を有し、
前記バックアップ部は、前記コイルの周方向において間隔を有して配置され且つ前記コイルの径方向に延びる複数の貫通孔を有し、
前記可動部分は、前記貫通孔に配置され、前記貫通孔に沿って移動することを特徴とする請求項21に記載の鉄損測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄損測定方法および鉄損測定システムに関し、特に、コイル状の軟磁性体板の鉄損を測定するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
電磁鋼板に代表される軟磁性体板は、その鉄損によって評価が決まる。このような鉄損を測定する方法として、特許文献1および非特許文献1に開示されているような単板試験器を用いる方法がある。かかる方法では、製造されたコイル状の電磁鋼板の一部分から規定サイズのサンプルを切り出して平坦化し、当該平坦化したサンプルを単板試験器にセットして、当該サンプルを励磁して得られる電気信号を用いて鉄損を測定する。この方法では、製造された電磁鋼板からサンプルを切り出さなければならない。このため、サンプルの切り出し作業が必要になり効率よく測定を行うことが容易ではないと共に、サンプルが必要になるため材料損失が生じる。また、コイル状の電磁鋼板の全体の鉄損を測定するためには、コイル状の電磁鋼板の多数の位置のサンプルを採取する必要がある。このような場合、サンプルの切り出し作業の負担および材料損失が一層大きくなる。よって、コイル状の電磁鋼板の全体の鉄損を測定する場合、かかる方法を採用することは現実的ではない。
【0003】
コイル状の電磁鋼板の全体の鉄損を評価する方法としては、特許文献2に開示されている方法がある。特許文献2に記載の方法では、コイル状の電磁鋼板をほどきながら鉄損測定装置(測定コイル)に通す。このとき測定コイルに交流電流を流して電磁鋼板を励磁すると同時に電磁鋼板に生じた磁界を検出コイルで検出することにより、電磁鋼板の鉄損を連続測定する。そして、鉄損の測定後の電磁鋼板を再度コイル状に巻き取る。この方法では、コイル状の電磁鋼板の長手方向の各位置における鉄損の差異を評価することができる。しかしながら、この方法では、コイル状の電磁鋼板の鉄損を測定する際に、コイルからの電磁鋼板の引き出しと、引き出した電磁鋼板の再巻き取りとを行うための装置が必要になる。このため、大掛かりな設備となる。また、コイル状の電磁鋼板をほどきながら測定する。コイル状の電磁鋼板の全長は10km以上になることがあり、全長が長いコイル状の電磁鋼板の鉄損を測定する場合には、長時間の測定時間を要する。
【0004】
また、コイル状の電磁鋼板の全体を一度に評価する方法として、特許文献3に開示されている方法がある。特許文献3に記載の方法では、コイル状の電磁鋼板に対し、電気測定用の巻線を巻き回す。具体的には、コイル状の電磁鋼板に対し、外周面→軸方向の一端面→内周面→軸方向の他端面→外周面→・・・のルートを通るように、巻線をコイル状の電磁鋼板の周方向に移動させながら巻き回す。しかしながら、この方法では、特許文献2に記載の方法のように、コイル状の電磁鋼板の長手方向の各位置における鉄損の差異を評価することができない。
【0005】
また、電磁鋼板の局部的な領域の磁束を測定する方法として、非特許文献2および特許文献4、5に開示されている探針法がある。この方法では、交流励磁されている電磁鋼板の板面上の任意の2点それぞれに探針を立てて電磁鋼板と導通を得る。これら2点間の電位差を測定し、電磁誘導の法則を用いて磁束の値を得る。しかしながら、この方法では、磁束密度の測定はできるものの鉄損特性の測定はできない。また、電磁鋼板の板面上に探針を立てるため、コイル状の電磁鋼板の長手方向の各位置における鉄損の差異を評価する場合には、(コイルの外周面のみの測定をする場合を除き)特許文献2と同様、コイル状の電磁鋼板をほどきながら測定しなければならない。このため、特許文献2と同様の課題を有する。特に、特許文献4、5に記載の方法では、電磁鋼板の表面に対して磁気測定センサーを接触させる必要があるため、より一層大掛かりな設備となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-236882号公報
【文献】特開平4-9685号公報
【文献】米国特許第8977511号明細書(US8977511B2)
【文献】特開2011-27475号公報
【文献】特開2015-87374号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】JIS C 2556(2015)、「単板試験器による電磁鋼帯の鉄損の測定方法」
【文献】山口俊尚、外6名、「探針法による局所磁束測定精度の理論的評価」、電気学会論文誌A、平成7年、115巻、第1号、p50~57
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、コイル状の軟磁性体板の長手方向の位置による鉄損の差異を、軟磁性体板をほどくことなく測定することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の鉄損測定方法は、軟磁性体板をコイル状に巻き取ることにより構成されるコイルの鉄損を、当該コイル状の状態のままで測定する鉄損測定方法であって、前記コイル状の軟磁性体板の板幅方向の端面のうちの一方の端面である第1の端面の位置であって、前記コイルの相対的に外周側の位置、内周側の位置に、それぞれ、第1の電極、第2の電極を接触させると共に、前記コイル状の軟磁性体板の板幅方向の端面のうちの他方の端面である第2の端面の位置であって、前記コイルの相対的に外周側の位置、内周側の位置に、それぞれ、第3の電極、第4の電極を接触させ、前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、前記第4の電極、および前記コイルを用いて構成される回路であって、前記第1の電極および前記第2の電極を入力端とし、前記第3の電極および前記第4の電極が電気的に接続された回路を構成する回路構成工程と、前記入力端に交流電力を供給し、前記第1の電極および前記第2の電極の間に印加される交流電圧と、前記回路に流れる交流電流とを用いて、前記コイルの測定領域の鉄損を導出する鉄損導出工程と、を有し、前記コイルの測定領域は、前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極の前記軟磁性体板との接触位置により定まり、前記第1の電極と前記第3の電極の、前記コイルの径方向および周方向の位置は略同じであり、前記第2の電極と前記第4の電極の、前記コイルの径方向および周方向の位置は略同じであることを特徴とする。
【0010】
本発明の鉄損測定システムは、軟磁性体板をコイル状に巻き取ることにより構成されるコイルの鉄損を、当該コイル状の状態のままで測定する鉄損測定システムであって、前記コイル状の軟磁性体板の板幅方向の端面のうちの一方の端面である第1の端面の位置であって、前記コイルの相対的に外周側の位置、内周側の位置に、それぞれ接触される、第1の電極、第2の電極と、前記コイル状の軟磁性体板の板幅方向の端面のうちの他方の端面である第2の端面の位置であって、前記コイルの相対的に外周側の位置、内周側の位置に、それぞれ接触される、第3の電極、第4の電極と、前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、前記第4の電極、および前記コイルを用いて構成される回路であって、前記第1の電極および前記第2の電極を入力端とし、前記第3の電極および前記第4の電極が電気的に接続された回路に交流電力を供給する交流電力供給手段と、前記第1の電極および前記第2の電極の間に印加される交流電圧と、前記回路に流れる交流電流とを用いて、前記コイルの測定領域の鉄損を導出する鉄損導出手段と、を有し、前記コイルの測定領域は、前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極の前記軟磁性体板との接触位置により定まり、前記第1の電極と前記第3の電極の、前記コイルの径方向および周方向の位置は略同じであり、前記第2の電極と前記第4の電極の、前記コイルの径方向および周方向の位置は略同じであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コイル状の軟磁性体板の長手方向の位置による鉄損の差異を、軟磁性体板をほどくことなく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】鉄損測定システムの構成の第1の例を示す図である。
【
図2】コイルを斜めから見た様子の第1の例を概念的に示す図である。
【
図3】コイルの断面の領域のうち、電極が配置される位置付近の領域の様子の一例を概念的に示す図である。
【
図4】コイルを巻き戻したと仮定した場合の電極の位置の第1の例を示す図である。
【
図5】鉄損測定方法の一例を説明するフローチャートである。
【
図6】コイルに流れる電流の一例を概念的に示す図である。
【
図7】鉄損測定システムの構成の第2の例を示す図である。
【
図8】コイルを斜めから見た様子の第2の例を概念的に示す図である。
【
図9】コイルの曲率半径と鉄損劣化率との関係の一例を概念的に示す図である。
【
図10】コイル内に生じる磁束の流れの一例を概念的に示す図である。
【
図11】コイルの第1の端面および第2の端面を(その正面から)見た様子の第1の例を概念的に示す図である。
【
図12】コイルの軸を通るように、コイルの径方向に沿ってコイルを切断した場合の断面の第1の例を概念的に示す図である。
【
図13】電極の第1の端面とコイルの第1の端面とが接触する領域の一例を概念的に示す図である。
【
図14】コイルを巻き戻したと仮定した場合の電極の位置の第2の例を示す図である。
【
図15】コイルの第1の端面および第2の端面を(その正面から)見た様子の第2の例を概念的に示す図である。
【
図16】コイルの第1の端面および第2の端面を(その正面から)見た場合の電極およびバックアップ部の配置の一例を概念的に説明する図である。
【
図17】コイルの軸を通るように、コイルの径方向に沿ってコイルを切断した場合の断面の第2の例を概念的に示す図である。
【
図18A】コイルの第1の端面を(その正面から)見た様子の一例を概念的に示す図である。
【
図19A】コイルの第2の端面を(その正面から)見た様子の一例を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。以下の実施形態では、コイル状の軟磁性体板の鉄損として、コイル状の電磁鋼板の鉄損を測定する場合を例に挙げて説明する。また、コイル状の軟磁性体板(電磁鋼板)を、必要に応じて、コイルと略称する。
【0014】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態を説明する。
図1は、鉄損測定システムの構成の一例を示す図である。
図1において、鉄損測定システムは、直流電源10、交流電源20、切替スイッチ30、電流計40、電圧計50、電力計60、電極70a、70a'70b、70b'、および演算装置80を有する。
直流電源10は、直流電力を出力する。交流電源20は、交流電力を出力する。
切替スイッチ30は、直流電源10から出力される直流電力と、交流電源20から出力される交流電力との何れかを選択してコイルC側に出力する。
【0015】
電流計40は、直流電源10から出力された直流電流、および、交流電源20から出力された交流電流を測定する。このように電流計40は、直流電流および交流電流の何れの電流の測定も可能である(即ち、交直両用の電流計である)。本実施形態では、電流計40は、切替スイッチ30(直流電源10および交流電源20)と、電極70aとの間を流れる電流(直流電流および交流電流)を測定する。また、電流計40は、交流電流の測定に際し、少なくとも実効値を測定することができるものを用いる。
電圧計50は、電極70a、70a'間(電極70aとグランドとの間)に配置され、直流電源10により電極70a、70a'間に印加される直流電圧、および、交流電源20により電極70a、70a'間に印加される交流電圧を測定する。このように電圧計50は、直流電圧および交流電圧の何れの電圧の測定も可能である(即ち、交直両用の電圧計である)。また、電圧計50は、交流電圧の測定に際し、少なくとも平均値を測定することができるものを用いる。後述するようにジュール損の導出の際に電圧計50で交流電圧の実効値を測定してもよい。この場合、電圧計50として、平均値の測定と実効値の測定とを切り替えられるものを用いる。
【0016】
電力計60は、交流電源20から出力された交流電流により電極70a、70a'間に印加される交流電圧と、交流電源20から出力された交流電流とに基づく電力(有効電力)を導出する。
図1に示すように本実施形態では、電力計60は、交流電源20と電極70aとの間を流れる交流電流と、電極70a、70a'間の交流電圧(電極70aの電位とグランド電位との電位差)とを入力する。
【0017】
図2~
図4は、電極70a、70a'70b、70b'とコイルCとの接続箇所の一例を説明する図である。
図2は、コイルCを斜めから見た様子の一例を概念的に示す図である。
図2(a)は、コイルCを構成する電磁鋼板の板幅方向の端面(コイルCの軸Oに沿う方向の端面)のうち、電極70a、70a'が配置される側の端面における電極70a、70a'の配置を示す。
図2(b)は、コイルCを構成する電磁鋼板の板幅方向の端面(コイルCの軸Oに沿う方向の端面)のうち、電極70b、70b'が配置される側の端面における電極70b、70b'の配置を示す。コイルCは、電磁鋼板をコイル状に巻き取ることにより得られるものである。従って、コイルCを構成する電磁鋼板の板幅方向の端面(コイルCの軸Oに沿う方向の端面)は、渦巻き状になっているが、
図2(a)および
図2(b)では、表記の都合上、当該渦巻き状になっていることを省略している。また、
図2(a)および
図2(b)では、鉄損の測定領域をグレーで示している(実際には、
図2のような色分けはなされていない)。
【0018】
図3は、コイルCの軸Oを通るように、コイルCの径方向に沿ってコイルCを切断することによりできるコイルCの断面の領域のうち、電極70a、70a'70b、70b'が配置される位置付近の領域の様子の一例を概念的に示す図である。
図3では、電磁鋼板の領域を太線で示す。前述したようにコイルCは、電磁鋼板をコイル状に巻き取ることにより得られるものである。従って、コイルCの径方向(
図3の上下方向)で相互に隣接する電磁鋼板には大きな隙間は形成されないが、
図3では、表記の都合上、太線で示す電磁鋼板の間に隙間が形成されているようにしている。
【0019】
図4は、コイルCを巻き戻したと仮定した場合の電極70a、70a'70b、70b'の位置の一例を示す図である。
図4では、鉄損の測定領域をグレーで示している(実際には、
図4のような色分けはなされていない)。
図2のグレーで示す領域は、鉄損の測定領域のうち、コイルCを構成する電磁鋼板の板幅方向の端面の領域を示す。
図4のグレーで示す領域は、鉄損の測定領域のうち、コイルCを構成する電磁鋼板の板面の領域を示す。
【0020】
図2(a)、
図2(b)、
図3、および
図4に示すように、本実施形態では、電極70a、70a'、70b、70b'は、針状部(針形状)を有する。電極70a、70a'70b、70b'が複数の層に跨って電磁鋼板と接触することを防止するため、電極70a、70a'70b、70b'の先端の径は、コイルCを構成する電磁鋼板の板厚よりも小さいのが好ましい。
【0021】
図2(a)、
図3、および
図4に示すように、電極70aは、コイルCを構成する電磁鋼板の板幅方向の端面のうち一方の端面の一箇所に接触される(電気的に接続される)。以下の説明では、コイルCを構成する電磁鋼板の板幅方向の端面のうち、電極70aが接触する側の端面を、コイルCの第1の端面と称し、コイルCを構成する電磁鋼板の板幅方向の端面のうち、当該端面とは反対側の端面を、必要に応じて、コイルCの第2の端面と称する。
【0022】
図2(a)、
図3、および
図4に示すように、電極70a'は、コイルCの第1の端面のうち、電極70aが接触する位置よりも内周側の位置に接触される(電気的に接続される)。
図2(b)、
図3、および
図4に示すように、電極70bは、コイルCの第2の端面の一箇所に接触される(電気的に接続される)。
図2(b)、
図3、および
図4に示すように、電極70b'は、コイルCの第2の端面のうち、電極70bよりも内周側の位置に接触される(電気的に接続される)。
【0023】
前述したように、
図2(a)、
図2(b)、および
図4のグレーで示す領域が鉄損の測定領域である。即ち、コイルCを構成する電磁鋼板の領域のうち、鉄損の測定領域の平面の形状は、電極70a、70a'、70b、70b'を頂点とする四角形の領域になる。従って、鉄損の測定領域に応じて、コイルCを構成する電磁鋼板に対して電極70a、70a'、70b、70b'を接触させる位置が決定される。
尚、
図1~
図4では、電極70a、70a'、70b、70b'の、電磁鋼板の板幅方向の端面との接点を、それぞれ、a、a'、b、b'と表記する。
【0024】
図4に示すように、電極70a(接点a)および電極70b(接点b)の、コイルCの径方向(電磁鋼板の巻厚方向)および周方向(電磁鋼板が巻かれる方向)の位置は、近ければ近いほど好ましく、略同じであるのがより好ましく、同じであるのが最も好ましい(実際には完全に同じにするのは容易ではないので、略同じであればよい)。電極70a'(接点a')および電極70b'(接点b')の、コイルCの径方向(電磁鋼板の巻厚方向)および周方向(電磁鋼板が巻かれる方向)の位置も、近ければ近いほど好ましく、略同じであるのがより好ましく、同じであるのが最も好ましい(実際には完全に同じにするのは容易ではないので、略同じであればよい)。このようにすれば、
図4に示すように、非特許文献1等に記載の一般的な鉄損の測定方法と同様に、相互に対向する二辺が圧延方向に沿う長方形(または正方形)の(形状に近い形状の)領域を、測定領域とすることができるからである。尚、ここでは、コイルCの径方向(電磁鋼板の巻厚方向)の位置が同じであることは、コイルCを構成する電磁鋼板の層が同じであることを意味するものとする。
【0025】
本実施形態では、以上のようにして、電極70a(接点a)、電極70b(接点b)、電極70a' (接点a')、および電極70b'(接点b')の位置を決定し、当該位置に、電極70a、電極70b、電極70a'、および電極70b'を固定する。このように本実施形態では、電極70a、電極70b、電極70a'、および電極70b'の位置決めを行うことで、コイルCをほどくことなく、コイルCにおける鉄損の測定領域を変更することができる。
【0026】
電極70a、電極70a'、電極70b、および電極70b'の位置決めの方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、コイルCの第1の端面および第2の端面が左右に位置する状態で画角内にコイルCが入る位置に撮像装置を配置する。そして、位置決め機構に取り付けられた電極70a、電極70a'、電極70b、および電極70b'がコイルCの第1の端面および第2の端面に接触された状態のコイルCを撮像する。位置決め機構は、例えば、電気的に絶縁された状態で取り付けられた電極を高さ方向にスライド可能であり、且つ、電極を高さ方向の任意の位置で固定可能なものである。また、例えば、電極70aおよび電極70a'が同一の位置決め機構に取り付けられ、電極70b、電極70b'が当該位置決め機構とは別の同一の位置決め機構に取り付けられる。
【0027】
撮像装置で撮像された画像に対し画像処理を行い、電極70a、電極70a'、電極70b、および電極70b'の位置を探索する。そして、電極70a、電極70a'、電極70b、および電極70b'の位置を示す情報をコンピュータディスプレイに表示する。検査者は、この表示を見ながら、電極70a、電極70a'、電極70b、および電極70b'を移動させ、電極70a、電極70a'、電極70b、および電極70b'が所望の位置(鉄損の測定領域に対応する位置)であるかを確認する。そして、検査者は、電極70a、電極70a'、電極70b、および電極70b'が所望の位置であると判断すると、電極70a、電極70a'、電極70b、および電極70b'をその位置で固定する。
尚、検査者が目視で電極70a、電極70a'、電極70b、および電極70b'の位置決めを行ってもよい。
【0028】
図1の説明に戻り、電極70aは、電圧計50および電力計60に電気的に接続される。電極70a'は、接地端子に接続される。また、電極70b、70b'は短絡される。
ここで、コイルCを構成する電磁鋼板の板面(の表面)には、絶縁被膜が形成されている。絶縁被膜は非導電性であるため、コイルCの径方向の電気抵抗は、電磁鋼板の電気抵抗に比較して非常に高くなる。このため、電流が流れる経路は、電極70a、接点a、コイルC、接点b、電極70b、電極70b'、接点b'、コイルC、接点a'、電極70a'となり、電磁鋼板も利用する1ターンの励磁電流路が形成される。前述したように、コイルCの径方向の電気抵抗は、電磁鋼板の電気抵抗に比較して非常に高いため、励磁電流路によって発生する磁束は、電極70a、70a'間および電極70b、70b'間でコイルCの周方向(
図3においては紙面に垂直な方向。
図4においては
図4に示す両矢印線(仮想線)の方向)に流れる。このため、鉄損の測定領域は、
図2(a)、
図2(b)、および
図4において、グレーで示す領域になる。
【0029】
図1において、切替スイッチ30により、直流電源10から出力される直流電力が選択された場合、直流電源10から、切替スイッチ30、電流計40、電力計60、電極70a、接点a、コイルC、接点b、電極70b、電極70b'、接点b'、コイルC、接点a'、電極70a'を経由して直流電源10に戻る経路(閉路)に直流電流が流れる。以下の説明では、この直流電流が流れる回路を、必要に応じて第1の測定回路と称する。
【0030】
一方、切替スイッチ30により、交流電源20から出力される交流電力が選択された場合、交流電源20から、切替スイッチ30、電流計40、電力計60、電極70a、接点a、コイルC、接点b、電極70b、電極70b'、接点b'、コイルC、接点a'、電極70a'を経由して交流電源20に戻る経路と、交流電源20から、電極70a' 、接点a'、コイルC、接点b' 電極70b'、電極70b、接点b、コイルC、接点a、電極70a、電力計60、電流計40、切替スイッチ30を経由して交流電源20に戻る経路(閉路)に交流電流が流れる。以下の説明では、この交流電流が流れる回路を、必要に応じて第2の測定回路と称する。
【0031】
演算装置80は、以上のようにして配置される直流電源10、交流電源20、および切替スイッチ30に対する動作の指示を行うと共に、電流計40、電圧計50、および電力計60の測定値を入力して、測定領域の鉄損を導出する。演算装置80は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、および各種のインターフェースを備える情報処理装置を用いることにより実現することができる。以下に、演算装置80が有する機能の一例を説明する。尚、演算装置80が有する機能の一部または全部を、検査者が行うようにしてもよい。尚、
図1において、各構成を相互に繋ぐ線のうち、一点鎖線は、演算装置80内、および、演算装置80と外部との間の情報の伝達経路を示し、実線は、直流電源10から出力される直流電流および交流電源20から出力される交流電流が流れる経路(電線)を示す。
【0032】
制御部81は、直流電源10、交流電源20、および切替スイッチ30に対して動作指示を行う。
第2の測定回路において交流電流が流れる経路には、電線が使用される。電力計60で測定される有効電力には、この電線の直流抵抗や、電極70a、70a'70b、70b'とコイルCとの接触抵抗や、電極70a、70a'70b、70b'および電磁鋼板が持つ電気抵抗によって測定誤差が生じる。
【0033】
そこで、本実施形態では、当該直流抵抗を事前に測定しておき、電力計60で測定された有効電力から、当該直流電流に基づくジュール熱を減算した値を、コイルCの測定領域の質量で割った値をコイルCの測定領域の鉄損として導出する。
そのために、制御部81は、切替スイッチ30に対して、直流電源10から出力される直流電力を選択することを指示する。これにより、切替スイッチ30は、交流電源20と電流計40とが非導通の状態となり、直流電源10と電流計40とが導通状態となるように、スイッチの切り替え動作を行う。
【0034】
そして、制御部81は、直流電源10に対して所定の直流電力を供給することを指示する。これにより、直流電源10から、第1の測定回路に直流電力が出力される。
直流抵抗導出部82は、直流電源10から、第1の測定回路に直流電力が出力された後、電圧計50で測定される直流電圧の値を、電流計40で測定される直流電流の値で割った値を、
図1において、電極70a、70a'を入力端とする回路における直流抵抗として導出して記憶する。尚、この電極70a、70a'を入力端とする回路は、電極70a、70a'70b、70b'およびコイルCを用いて構成される回路であって、電極70b、70b'が電気的に接続された(
図1では短絡された)回路である。
【0035】
その後、制御部81は、直流電源10に対して、直流電力の出力を停止することを指示する。そして、制御部81は、切替スイッチ30に対して、交流電源20から出力される交流電力を選択することを指示する。これにより、切替スイッチ30は、直流電源10と電流計40とが非導通の状態となり、交流電源20と電流計40とが導通状態となるように、スイッチの切り替え動作を行う。
【0036】
その後、制御部81は、交流電源20に対して所定の交流電力を出力することを指示する。これにより、交流電源20から、第2の測定回路に交流電力が出力される。
交流入力調整部83は、交流電源20から、第2の測定回路に交流電力が出力された後、電圧計50で測定される交流電圧の平均値および周波数が目標値になるように、交流電源20から出力される交流電圧の値を調整する。目標値は、鉄心の測定領域の断面積(
図1および
図2に示す例では、接点a、a'、b、b'を頂点とする四角形の面積)と、鉄心の測定条件となる磁束密度とを用いて、当該磁束密度に対応する電極70a、70a'間の電圧を、電磁誘導の法則により導出することにより得られる。
【0037】
鉄損導出部84は、交流入力調整部83により、交流電源20から出力される交流電圧の平均値および周波数が目標値に調整された後、電力計60で測定される交流電力(有効電力)の値と、電流計40で測定される交流電流の値と、直流抵抗導出部82により事前に導出されている直流抵抗と、コイルCの測定領域の質量とに基づいて、コイルCの測定領域の鉄損を導出する。コイルCの測定領域の質量は、例えば、以下のようにして導出される。即ち、電極70a、70a'、70b、70b'のコイルCの中心からの距離(即ち半径)と、コイル幅とを用いて、コイルCの測定領域の体積を求め、当該体積と電磁鋼板の密度との積を、コイルCの測定領域の質量として導出することができる。また、
図4に示す電極70a、70a'、70b、70b'を頂点とする四角形の面積と、電磁鋼板の板厚との積を、コイルCの測定領域の体積として導出してもよい。
【0038】
鉄損導出部84における鉄損の具体的な導出方法の一例を説明すると、まず、鉄損導出部84は、直流抵抗導出部82により事前に導出されている直流抵抗と、電流計40で測定される交流電流の実効値の2乗との積をジュール損として導出する。尚、電圧計50で測定される交流電圧の実効値の2乗を、直流抵抗で割った値をジュール損として導出してもよい。
そして、鉄損導出部84は、電力計60で測定される交流電力(有効電力)の値からジュール損を引いた値を、コイルCの測定領域の質量で割った値を、コイルCの測定領域の鉄損として導出する。制御部81は、このようにしてコイルCの測定領域の鉄損が導出された後、交流電源20に対して、交流電力の供給を停止することを指示する。
【0039】
出力部85は、鉄損導出部84で導出されたコイルCの測定領域の鉄損の情報を出力する。出力の形態としては、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、演算装置80の内部または外部の記憶媒体への記憶、および外部装置への送信のうちの少なくとも何れか1つを採用することができる。
【0040】
次に、
図5のフローチャートを参照しながら、本実施形態の鉄損測定方法の一例を説明する。
まず、ステップS501において、直流電源10、交流電源20、切替スイッチ30、電流計40、電圧計50、電力計60、電極70a、70a'、70b、70b'、および演算装置80を、
図1に示すように配置し、第1の測定回路および第2の測定回路が構成されるように回路を構成する。この回路の構成の少なくとも一部は人手で行われもよい。
【0041】
次に、ステップS502において、制御部81からの指示に基づいて、直流電源10から、第1の測定回路に直流電力が出力された後、直流抵抗導出部82は、電圧計50で測定される直流電圧の値を、電流計40で測定される直流電流の値で割った値を、電極70a、70a'を入力端とする回路における直流抵抗として導出して記憶する。
【0042】
次に、ステップS503において、制御部81からの指示に基づいて、直流電源10から直流電力の出力が停止され、交流電源20から交流電力が出力されると、交流入力調整部83は、電圧計50で測定される交流電圧の平均値および周波数が目標値になるように、交流電源20から出力される交流電圧の値を調整する。
【0043】
次に、ステップS504において、鉄損導出部84は、ステップS502で導出された直流抵抗と、電流計40で測定される交流電流の実効値の2乗との積をジュール損として導出する。
次に、ステップS505において、鉄損導出部84は、電力計60で測定される交流電力(有効電力)の値からステップS504で導出されたジュール損を引いた値を、コイルCの測定領域の質量で割った値を、コイルCの測定領域の鉄損として導出する。
次に、ステップS506において、出力部85は、ステップS506で導出されたコイルCの測定領域の鉄損の情報を出力する。
【0044】
以上のように本実施形態では、コイルCの第1の端面に電極70a、70a'を電気的に接続(接触)させ、コイルCの第2の端面に電極70b、70b'を電気的に接続(接触)させた状態とし、電極70a、電極70a'、電極70b、電極70b'、およびコイルCを用いて構成される回路であって、電極70a、70a'間を入力端とし、電極70bおよび電極70b'が電気的に接続された回路を構成する。そして、当該回路に流れる交流電流と、電極70a、70a'間の交流電圧とに基づいて、コイルCの測定領域における鉄損を導出する。コイルCにおける鉄損の測定領域は、電極70a、70a'、70b、70b'の位置により定まる。従って、電極70a、70a'、70b、70b'の位置を変えることにより、コイルCを構成する電磁鋼板の長手方向の各位置での鉄損をそれぞれ導出することができる。よって、コイルCを構成する電磁鋼板の長手方向の位置による鉄損の差異を、電磁鋼板をほどくことなく、設備として小規模で、且つ、比較的短時間で測定することができる。
【0045】
また、本実施形態では、鉄損の測定前に、前述した回路における直流抵抗を導出して記憶しておく。そして、当該回路に流れる交流電流と、電極70a、70a'間の交流電圧とに基づく有効電力から、当該直流抵抗に基づくジュール損を引いた値を、コイルCの測定領域における鉄損として導出する。従って、コイルCの測定領域における鉄損をより高精度に導出することができる。
また、本実施形態では、電極70a(接点a)および電極70b(接点b)の、コイルCの径方向および周方向の位置を略同じにすると共に、電極70a'(接点a')および電極70b'(接点b')の、コイルCの径方向および周方向の位置を略同じにする。従って、鉄損の測定領域を極力限定し、測定領域を明確化し、一般的な鉄損の測定方法と同様に、圧延方向に沿う長方形(または正方形)の領域を、測定領域とすることができる。
【0046】
以上のように、前述した閉回路に流れる交流電流と、電極70a、70a'間の交流電圧とに基づく有効電力(電力計60で測定される有効電力)からジュール損を引くことにより、鉄損をより高精度に導出することができるので好ましい。しかしながら、例えば、回路の直流抵抗が小さい場合には、必ずしも、ジュール損を導出しなくてもよい。
【0047】
また、電極70a(接点a)および電極70b(接点b)の、コイルCの径方向および周方向の位置を略同じにすると共に、電極70a'(接点a')および電極70b'(接点b')の、コイルCの径方向および周方向の位置を略同じにすれば、一般的な鉄損の測定方法と同様に、相互に対向する二辺が圧延方向に沿う長方形(または正方形)の(形状に近い形状の)領域を、測定領域とすることができるので好ましい。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。前述したように、
図4において、鉄損の測定領域は、電極70a(接点a)、電極70a'(接点a')、電極70b(接点b)、および電極70b'(接点b')を頂点とする四角形の領域になる。従って、電極70a(接点a)、電極70a'(接点a')、電極70b(接点b)、および電極70b'(接点b')の何れか1つの位置が変わると、当該位置が、
図4に示す位置に対して上下方向にずれることになる。
【0048】
また、本実施形態では、電極70a(接点a)および電極70a'(接点a')を、電圧測定と電流測定とで共用とし、電圧および電流を二端子法で測定する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、電極70a(接点a)および電極70a'(接点a')を、電圧測定用と電流測定用のそれぞれのために設け、電圧および電流を四端子法で測定してもよい。
また、電流計40および電圧計50として交直両用のものを用いれば、構成が簡単になるので好ましいが、電流計40に代えて、直流電流計と交流電流計との双方を用いてもよいし、電圧計50に代えて、直流電圧計と交流電圧計との双方を用いてもよい。また、直流電源10および交流電源20を、交直両用の電源に置き替えることもできる。
【0049】
また、本実施形態では、電極70a、70a'、70b、70b'(接点a、a'、b、b')が、電磁鋼板の1つの層(同じ層)のみに接触(電気的に接続)されるようにした。しかしながら、電極70a、70a'、70b、70b'(接点a、a'、b、b')は、電磁鋼板の複数の層に跨って接触(電気的に接続)されてもよい。この場合、複数の層に跨って接触(電気的に接続)されている接点は、複数の接点に分かれる(
図4において、接点a、a'、b、b'のうち、複数の層に跨って接触(電気的に接続)されている接点は、上下方向に並ぶ複数の接点になる)。例えば、接点aの層と当該層の上下の層の合計3つの層に電極が接触する場合、
図4において、接点aは、接点aの位置と、その上下の位置との3つの位置に分かれる。この場合、接点aと接点bとの距離の方が、当該上下の位置の接点と接点bとの距離よりも短い。このため、当該上下の位置の接点と接点bとの間に流れる電流よりも、接点aと接点bとに流れる電流が多くなる。しかしながら、
図4において、接点aの上の位置にも接点があることになるため、コイルCにおける鉄損の測定領域は、厳密には、接点aの上の位置の接点と、接点a'、b、b'とを頂点とする四角形の領域になる。また、当該上下の位置の接点と接点bとの間にも電流が流れるため、コイルCの長手方向に対し傾いた方向の磁束も発生する。このため、コイルCにおける鉄損の測定精度が低下する虞がある。よって、簡易的な測定をする場合には、電極70a、70a'、70b、70b'(接点a、a'、b、b')は、複数の層に跨って接触していてもよいが、コイルCの鉄損の測定領域を明確にし、コイルCの鉄損の測定精度を高める必要がある場合には、電極70a、70a'、70b、70b'(接点a、a'、b、b')が、電磁鋼板の1つの層(同じ層)のみに接触するようにするのが好ましい。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を説明する。
図6は、コイルCに流れる電流の一例を概念的に示す図である。具体的に
図6(a)は、コイルCを巻き戻したと仮定した場合の電流の経路の一例を概念的に示す図である。
図6(a)では、電流の経路を破線で示す。
図6(b)は、コイルCを構成する電磁鋼板の内部における電流の向きと磁束の向きの一例を概念的に示す図である。
図6(b)では、紙面の手前側から奥側に向かう方向(○の中に×が付されている記号がこの方向を示す)に電流が流れるときの磁束の向きを破線で示す。尚、
図6の両矢印線は、電磁鋼板の板幅方向を示す。
【0051】
図6(a)に示すように、コイルCは、電磁鋼板を巻き取った(巻き回した)ものである。従って、電極70a(接点a)、電極70b(接点b)、電極70a'(接点a')、および電極70b'(接点b')は、導通状態である。従って、電極70a(接点a)と電極70b(接点b)との間、および、電極70a'(接点a')と電極70b'(接点b')との間を流れる電流の他に、コイルCの周方向(電磁鋼板の長手方向)を流れる交流電流(電極70a(接点a)と電極70a'(接点a')との間に流れる交流電流)が、コイルCの測定領域の鉄損の測定に影響を与える虞がある。
【0052】
この場合、電極70a(接点a)と電極70a'(接点a')との間におけるジュール損は、第1の実施形態で説明したようにして補正される。しかしながら、電極70a(接点a)と電極70a'(接点a')との間を流れる交流電流は、
図6(b)に示すように、電磁鋼板の長手方向に直交する面内に磁界を発生させ、その交流励磁によって鉄損が発生する。電磁鋼板の鉄損の評価は、一般的に、電磁鋼板をその長手方向(圧延方向)に励磁することにより行われる。従って、電磁鋼板の長手方向に直交する面内に磁界を発生させることは、鉄損の測定誤差の要因になる。特に、コイルCの径方向における電極70a、70a'間(接点a、a'間)の距離が短いと、電極70a(接点a)と電極70a'(接点a')との間の電気抵抗が小さくなる。このため、これらの間を流れる交流電流(即ち、電磁鋼板の長手方向に直交する面内に発生する磁界)を無視することができなくなり、鉄損の測定誤差が無視できない大きさになる虞がある。
【0053】
そこで、本実施形態では、電磁鋼板の長手方向に直交する面内に発生する磁界が、鉄損の測定に与える影響を低減するようにする。このように本実施形態と第1の実施形態とは、当該影響を低減するための構成が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、
図1~
図5に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0054】
図6(a)および
図6(b)に示すコイルCの周方向に流れる交流電流は、例えば、電極70a(接点a)から流入してコイルC内を周方向に流れて電極70a'(接点a')から流出する。このため、コイルCの周方向に流れる交流電流は、コイルCの第2の端面側の電極70b(接点b)、70b'(接点b')には流れない(仮に流れるとしても無視できるほどに小さい)。即ち、コイルCの第2の端面側の電極70b、70b'間(接点b、b'間)に流れる交流電流は、コイルCの周方向(電磁鋼板の長手方向)の磁化のみに寄与する。よって、当該交流電流を用いて鉄損を測定すると、前述した電磁鋼板の長手方向に直交する面内に発生する磁界による鉄損の測定誤差を回避することができる。
【0055】
そこで、本実施形態では、
図7に示すように電流計40は、電極70b、70b'間(接点b、b'間)を流れる電流(直流電流および交流電流)を測定する。これに対し、第1の実施形態では、電極70b、70b'間(接点b、b'間)を電線で短絡する。
また、電力計60は、電極70b、70b'間(接点b、b'間)を流れる交流電流と、電極70a、70a'間の交流電圧(電極70aの電位とグランド電位との電位差)とを入力する。
このように本実施形態と第1の実施形態とは、電流計40および電力計60の配置が異なる。その他については、第1の実施形態と同じである。
【0056】
以上のように本実施形態では、コイルCの第2の端面側の電極70b、70b'間(接点b、b'間)に流れる交流電流と、電極70a、70a'間の交流電圧とに基づいて、コイルCの測定領域における鉄損を導出する。従って、前述した電磁鋼板の長手方向に直交する面内に発生する磁界による鉄損の測定誤差を低減することができ、コイルCの測定領域における鉄損をより一層高精度に導出することができる。
尚、本実施形態においても、第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0057】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を説明する。第1、第2の実施形態では、コイルCの第1の端面において、少なくともコイルCの径方向の位置が異なるように、外周側に電極70aを、内周側に電極70a'を1つずつ配置し、コイルCの第2の端面においても、少なくともコイルCの径方向の位置が異なるように、外周側に電極70bを、内周側に70b'を1つずつ配置する場合を例に挙げて説明した。
【0058】
前述したように電極70a、70a'、70b、70b'は、電磁鋼板の板幅方向の端面に接触される。電磁鋼板の板幅方向の端面は薄い(例えば、電磁鋼板の板厚は0.35[mm]である)。このため、電極70a、70a'、70b、70b'とコイルCとの接触抵抗が大きくなる虞がある。そこで、本実施形態では、コイルCの第1の端面および第2の端面のそれぞれにおいて、コイルCの径方向の同じ位置に、コイルCの周方向の位置を相互に異ならせて複数の電極を配置し、当該複数の電極を並列に接続する。このようにすることにより、コイルCの鉄損をより高精度に安定して測定することができる。このように本実施形態と第1、第2の実施形態とは、コイルCに接触させる電極が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1、第2の実施形態と同一の部分については、
図1~
図7に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0059】
図8は、コイルCを斜めから見た様子の一例を概念的に示す図である。
図8(a)は、コイルCの第1の端面における電極71a、72a、73a、71a'、72a'、73a'の配置を示し、
図8(b)は、コイルCの第2の端面における電極71b、72b、73b、71b'、72b'、73b'の配置を示す。
図8(a)において、電極71a、72a、73aは、コイルCの径方向の位置が同じであり(接触する電磁鋼板の層が同じであり)、且つ、コイルCの周方向の位置が異なるように、コイルCの第1の端面にそれぞれ接触される(電気的に接続される)。電極71a'、72a'、73a'は、コイルCの径方向の位置が、電極71a、72a、73aよりも内周側(内周側の層)になるように配置される。電極71a'、72a'、73a'は、電極71a、72a、73aと同様に、コイルCの径方向の位置が同じであり(接触する電気鋼板の層が同じであり)、且つ、コイルCの周方向の位置が異なるように、コイルCの第1の端面にそれぞれ接触される(電気的に接続される)。
【0060】
電極71a、71a'のコイルCの周方向の位置と、電極72a、72a'のコイルCの周方向の位置と、電極73a、73a'のコイルCの周方向の位置と、は、それぞれ、近ければ近いほど好ましく、略同じであるのがより好ましく、同じであるのが最も好ましい(実際には完全に同じにするのは容易ではないので、略同じであればよい)。同様に、電極71b、71b'のコイルCの周方向の位置と、電極72b、72b'のコイルCの周方向の位置と、電極73b、73b'のコイルCの周方向の位置と、は、それぞれ、近ければ近いほど好ましく、略同じであるのがより好ましく、同じであるのが最も好ましい(実際には完全に同じにするのは容易ではないので、略同じであればよい)。
【0061】
また、電極71aおよび電極71bの、コイルCの径方向(電磁鋼板の巻厚方向)および周方向(電磁鋼板が巻かれる方向)の位置は、近ければ近いほど好ましく、略同じであるのがより好ましく、同じであるのが最も好ましい(実際には完全に同じにするのは容易ではないので、略同じであればよい)。電極71a'および電極71b'の、コイルCの径方向(電磁鋼板の巻厚方向)および周方向(電磁鋼板が巻かれる方向)の位置も、近ければ近いほど好ましく、略同じであるのがより好ましく、同じであるのが最も好ましい(実際には完全に同じにするのは容易ではないので、略同じであればよい)。電極72aおよび電極72bの、コイルCの径方向(電磁鋼板の巻厚方向)および周方向(電磁鋼板が巻かれる方向)の位置も、近ければ近いほど好ましく、略同じであるのがより好ましく、同じであるのが最も好ましい(実際には完全に同じにするのは容易ではないので、略同じであればよい)。電極72a'および電極72b'の、コイルCの径方向(電磁鋼板の巻厚方向)および周方向(電磁鋼板が巻かれる方向)の位置も、近ければ近いほど好ましく、略同じであるのがより好ましく、同じであるのが最も好ましい(実際には完全に同じにするのは容易ではないので、略同じであればよい)。電極73aおよび電極73bの、コイルCの径方向(電磁鋼板の巻厚方向)および周方向(電磁鋼板が巻かれる方向)の位置も、近ければ近いほど好ましく、略同じであるのがより好ましく、同じであるのが最も好ましい(実際には完全に同じにするのは容易ではないので、略同じであればよい)。電極73a'および電極73b'の、コイルCの径方向(電磁鋼板の巻厚方向)および周方向(電磁鋼板が巻かれる方向)の位置も、近ければ近いほど好ましく、略同じであるのがより好ましく、同じであるのが最も好ましい(実際には完全に同じにするのは容易ではないので、略同じであればよい)。
【0062】
以上のようにすれば、非特許文献1等に記載の一般的な鉄損の測定方法と同様に、相互に対向する二辺が圧延方向に沿う長方形(または正方形)の(形状に近い形状の)領域を、測定領域とすることができる。
そして、
図8(a)に示すように、電極71a、72a、73aのコイルCと接触しない方の端部は電線により相互に電気的に接続される。電極71a'、72a'、73a'のコイルCと接触しない方の端部、電極71b、72b、73bのコイルCと接触しない方の端部、電極71b'、72b'、73b'のコイルCと接触しない方の端部も、それぞれ、電線により相互に電気的に接続される。
図8(a)および
図8(b)に示す位置P1、P2、P3、P4は、
図1、
図2、および
図7に示す位置P1、P2、P3、P4に対応する。即ち、電極70a、70a'、70b、70b'に代えて、電極71a、72a、73a、71a'、72a'、73a'、71b、72b、73b、71b'、72b'、73b'を以上のようにしてコイルCに接触させ(電気的に接続して)、
図8(a)および
図8(b)に示す位置P1、P2、P3、P4と、
図1や
図7に示す位置P1、P2、P3、P4とが一致するような状態にする。
【0063】
以上のように本実施形態では、コイルCの第1の端面および第2の端面のそれぞれにおいて、コイルCの径方向の同じ位置に、コイルCの周方向の位置を相互に異ならせて複数の電極71a~73a、71a'~73a'、71b~73b、71b'~73bをコイルCに接触させ(電気的に接続し)、当該複数の電極71a~73a、71a'~73a'、71b~73b、71b'~73bをそれぞれ並列に接続する。このようにすることにより、電極71a~73a、71a'~73a'、71b~73b、71b'~73bとコイルCとの接触抵抗を低減させることができる。また、3つの電極71a~73a、71a'~73a'、71b~73b、71b'~73bのうち、1つまたは2つが導通不良であっても、コイルCの鉄損を測定することができる。よって、コイルCの鉄損をより一層高精度に安定して測定することができる。
【0064】
尚、本実施形態では、並列に接続する電極71a~73a、71a'~73a'、71b~73b、71b'~73bの数が3である場合を例に挙げて示したが、並列に接続する電極の数は2以上であれば、幾つであってもよい。
また、本実施形態は、第1の実施形態および第2の実施形態の何れに対しても適用することができる。また、本実施形態においても、第1の実施形態および第2の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0065】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態を説明する。第1~第3の実施形態では、電力計60で測定される交流電力(有効電力)の値から、ジュール損を引いた値を、コイルCの測定領域の質量で割った値を、コイルCの測定領域の鉄損として導出する場合を例に挙げて説明した。前述したようにコイルCは、電磁鋼板を巻き取ったものである。非特許文献1等に記載の一般的な鉄損の測定では、電磁鋼板は平坦な状態にされる。このため、コイルC(即ち、コイル状とされたままの電磁鋼板)の測定領域の鉄損が、当該測定領域を平坦な状態として測定される鉄損と異なる虞がある。そこで、本実施形態では、第1~第3の実施形態のようにして導出されるコイルCの測定領域の鉄損に対し、電磁鋼板をコイル状としていることに起因する誤差分を補正する。このように本実施形態は、第1~第3の実施形態に対し、コイルCの測定領域の鉄損に対する補正処理を加えたものである。従って、本実施形態の説明において、第1~第3の実施形態と同一の部分については、
図1~
図8に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0066】
本実施形態では、電磁鋼板の種類(鋼種)および励磁条件毎に、コイルCの曲率半径と鉄損劣化率との関係を予め調査する。励磁条件には、磁束密度と励磁周波数とが含まれる。鉄損劣化率Xは、例えば、或る曲率半径で曲げられた電磁鋼板(のサンプル)の鉄損WRの測定値から平坦な当該電磁鋼板(のサンプル)の鉄損WFの測定値を引いた値を、当該平坦な電磁鋼板の鉄損WFの測定値で割った値(を百分率で表したもの)として導出される(X={(WR-WF)/WF}×100)。或る曲率半径で曲げられた電磁鋼板の鉄損劣化率Xが30[%]であることは、当該曲率半径で曲げられた電磁鋼板の鉄損は、平坦な当該電磁鋼板の鉄損に、当該平坦な電磁鋼板の鉄損の30[%]の値を加算した値になることを表す。ここでの鉄損の測定方法は、特に限定されない。曲率半径で曲げられた電磁鋼板の鉄損を測定する際には、当該電磁鋼板の曲率半径と略同じ曲率半径の先端面を有する継鉄(ヨーク)を用いればよい。
図9は、コイルCの曲率半径と鉄損劣化率との関係の一例を概念的に示す図である。
【0067】
或る鋼種の平坦な電磁鋼板(のサンプル)を或る励磁条件で励磁した場合の鉄損を測定することと、或る曲率半径で曲げた状態の当該鋼種の電磁鋼板(のサンプル)を当該励磁条件で励磁した場合の鉄損を測定することとを、当該曲率半径を異ならせて行う。これにより、或る鋼種および或る励磁条件におけるコイルCの曲率半径と鉄損劣化率Xとの関係が得られる。このようなコイルCの曲率半径と鉄損劣化率との関係の導出を、鋼種および励磁条件を異ならせて行うことにより、電磁鋼板の種類(鋼種)および励磁条件毎に、コイルCの曲率半径と鉄損劣化率Xとの関係が得られる。コイルCの曲率半径と鉄損劣化率Xとの関係は、当該関係を示す式であっても、コイルCの曲率半径と鉄損劣化率Xとを相互に関連付けて記憶したテーブルであってもよい。鉄損導出部84は、電磁鋼板の種類(鋼種)および励磁条件毎の、コイルCの曲率半径と鉄損劣化率Xとの関係を示す情報を、コイルCの測定領域の鉄損に先立って(
図5のフローチャートが開始する前の段階で)記憶しておく。かかる情報の取得の形態としては、例えば、外部装置からの受信、可搬型の記憶媒体からの読み出し、または、オペレータによる入力操作が挙げられるが、特に限定されない。
【0068】
コイルCの測定領域の鉄損に先立って(
図5のステップS506よりも前の段階で)、検査者は、測定対象のコイルCを構成する電磁鋼板の種類(鋼種)、励磁条件、およびコイルCの曲率半径を示す情報を、演算装置80のユーザーインターフェースを操作することにより、演算装置80に入力する。鉄損導出部84は、演算装置80に入力された情報に対応する鉄損劣化率Xを、予め記憶しておいた情報から読み出す。そして、ステップS505において、鉄損導出部84は、電力計60で測定される交流電力(有効電力)の値からステップS504で導出されたジュール損を引いた値を、コイルCの測定領域の質量で割った値をW'[W/kg]とし、コイルCの測定領域の鉄損をW[W/kg]とし、読み出した鉄損劣化率をX[%]とすると、以下の(1)式により、コイルCの測定領域の鉄損Wを導出する。
W=W'×{1/(1+X/100)} ・・・(1)
そして、ステップS506において、出力部85は、(1)式で導出されたコイルCの測定領域の鉄損の情報を出力する。
【0069】
以上のように本実施形態では、電極70a、電極70a'、電極70b、電極70b'、およびコイルCを用いて構成される回路であって、電極70a、70a'間を入力端とし、電極70bおよび電極70b'が電気的に接続された回路に流れる交流電流と、電極70a、70a'間の交流電圧とに基づいて導出される鉄損を、コイルCの曲率に応じて補正する。従って、コイルCの測定領域における鉄損をより一層高精度に導出することができる。
【0070】
尚、電磁鋼板が曲率を有することにより平坦である場合に比べて鉄損がどの位変化するかの指標値であって、或る曲率半径で曲げられた電磁鋼板の鉄損WRと平坦な当該電磁鋼板の鉄損WFとを用いて定められる指標値であれば、必ずしも前述したようにして鉄損劣化率Xを定めなくてもよい。例えば、鉄損劣化率Xは、平坦な電磁鋼板の鉄損WFから或る曲率半径で曲げられた当該電磁鋼板の鉄損WRを引いた値を、当該曲率半径で曲げられた電磁鋼板の鉄損WRで割った値(を百分率で表したもの)であってもよい(X={(WF-WR)/WR}×100)。この場合、(1)式に代えて、以下の(1)'式 により、コイルCの測定領域の鉄損Wが導出される。
W=W'×(1+X/100)・・・(1)'
また、本実施形態は、第1の実施形態、第2の実施形態、および第3の実施形態の何れに対しても適用することができる。また、本実施形態においても、第1の実施形態、第2の実施形態、および第3の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0071】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態を説明する。
図10は、第1~第4の実施形態のように、電極が針状部を有し、当該針状部の先端を、コイルCの端面(第1の端面または第2の端面)と電気的に接続した場合にコイルC内に生じる磁束の流れの一例を概念的に示す図である。
図10(a)は、第1の実施形態のように、コイルCの第1の端面において、外周側および内周側にそれぞれ1つずつ電極70a、70a'を配置すると共に、コイルCの第2の端面において、外周側および内周側にそれぞれ1つずつ電極70b、70b'を配置する場合の図である。
図10(b)は、第3の実施形態のように、コイルCの第1の端面において、外周側および内周側にそれぞれ3つずつ電極71a、72a、73a、71a'、72a'、73a'を配置すると共に、コイルCの第2の端面において、外周側および内周側にそれぞれ3つずつ電極71b、72b、73b、71b'、72b'、73b'を配置する場合の図である。
【0072】
図10(a)および
図10(b)において、○の中に×が付されている記号の位置と、○の中に●が付されている記号の位置は、それぞれ、電極の位置を示す。また、○の中に×が付されている記号は、電流が紙面の手前側から奥側に向かう方向に流れることを示す。○の中に●が付されている記号の位置は、電流が紙面の奥側から手前側に向かう方向に流れることを示す。
図10(a)および
図10(b)において、破線1011、1012、1013、1014は、電極から供給された電流によりコイルCに発生する磁束の流れの一例を概念的に示す。
【0073】
図2~
図4、
図8を参照しながら説明したように、
図10(a)および
図10(b)に示す例では、コイルCにおける鉄損の測定領域は、外周側の一点鎖線1001、1003と内周側の一点鎖線1002、1004とで囲まれる領域である(
図2(a)、
図2(b)、
図8においてグレーで示す領域を参照)。コイルCにおける鉄損の測定領域の、コイルCの周方向における長さが短い場合(コイルCにおける鉄損の測定領域の、コイルCの径方向における長さが短い場合や、コイルCを構成する電磁鋼板の板厚が薄くない場合)には、第1の実施形態で説明したように、コイルCの第1の端面(第2の端面)において、外周側および内周側にそれぞれ1つずつ電極70a、70a'(70b、70b')を配置する構成でも、コイルCの鉄損の測定誤差は大きくならない。
【0074】
しかしながら、コイルCにおける鉄損の測定領域の、コイルCの周方向における長さが長い場合(コイルCにおける鉄損の測定領域の、コイルCの径方向における長さが長い場合や、コイルCを構成する電磁鋼板の板厚が薄い場合)、
図10(a)に示すように、コイルCの第1の端面(第2の端面)において、外周側および内周側にそれぞれ1つずつ電極70a、70a'(70b、70b')を配置する構成では、一点鎖線1001、1002で囲まれる領域を流れない磁束の割合が増加する。
【0075】
即ち、コイルCの周方向に流れる磁束は、電極の近傍では、周方向の位置が略同じである2つの電極の間の領域(
図10の○の中に×が付されている記号と、○の中に●が付されている記号との間の領域)を流れる。しかしながら、コイルCの周方向に流れる磁束は、電極から離れるに従って、磁気エネルギーを低下させる作用によって一点鎖線1001、1002で囲まれる領域の外側に流れ出す。このような磁束は、コイルCにおける鉄損の測定領域とは異なる領域に流れる磁束である。従って、コイルCにおける鉄損の測定領域とは異なる領域が励磁され、当該領域の鉄損も測定される。よって、鉄損の測定誤差となり得る。このような鉄損の測定誤差は、コイルCにおける鉄損の測定領域の、コイルCの周方向における長さが長くなると大きくなる。
【0076】
そこで、
図10(b)に示すように、コイルCの径方向の位置が同じである複数の電極(
図10(b)に示す例では3つの電極)を配置することにより、コイルCの周方向における電極の間隔を短くする。このようにすることによって、一点鎖線1003、1004で囲まれる領域外に磁束が流れた方が、当該領域内に磁束が留まるよりも、磁気エネルギーが低下することを抑制することができる。このため、一点鎖線1003、1004で囲まれる領域内を流れる磁束の割合が
図10(a)に示す場合に比べて大きくなる。よって、鉄損の測定精度を向上させることができる。第3の実施形態においては、電極71a、72a、73a、71a'、72a'、73a'の全てがコイルCと接触している場合には、このような効果を有することになる。
【0077】
しかしながら、
図10(b)に示す例でも、電極は、コイルCの周方向において間隔を有した状態で配置される。従って、一点鎖線1003、1004で囲まれる領域内の磁束の割合をより一層高めるためには、コイルCの周方向に配置する電極の数を増やす必要がある。このようにしてもよいが、多数の電極をコイルCに接触させなければならない。そこで、本実施形態では、電極の先端の領域(第1の端面および第2の端面と接触する領域(電気的に接続される領域))の形状を、コイルCの第1の端面および第2の端面における渦巻状の形状に可及的に近い形状とする。
以上のように本実施形態と第1~第4の実施形態とは、コイルCに接触させる電極が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1~第4の実施形態と同一の部分については、
図1~
図9に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0078】
図11は、コイルCの第1の端面および第2の端面を(その正面から)見た様子の一例を概念的に示す図である。
図11(a)は、コイルCの第1の端面を(その正面から)見た様子の一例を概念的に示す図であり、
図11(b)は、コイルCの第2の端面を(その正面から)見た様子の一例を概念的に示す図である。
図12は、コイルCの軸Oを通るように、コイルCの径方向に沿ってコイルCを切断した場合の断面の一例を概念的に示す図である。
【0079】
図11および
図12において、電極1100a、1100a'、1100b、1100b'は、同じ構成のものであり、それぞれ、円環状の同軸部を有する。本実施形態では、電極1100a、1100a'、1100b、1100b'は、いわゆる円環電極であり、円環状の同軸部からなるものとする。電極1100a、1100a'、1100b、1100b'の同軸部を、当該同軸部の軸に垂直な方向に切った場合の断面の形状は、円環状である。
電極1100a、1100a'、1100b、1100b'は、コイルCの軸Oと略同軸となるように配置される。このように、電極1100a、1100a'、1100b、1100b'の軸と、コイルCの軸Oとは略一致する。
電極1100a、1100a'、1100b、1100b'は、それぞれ、電極70a、70a'、70b、70b'に代えて配置されるものである。
【0080】
電極1100aの(円環状の同軸部の)軸方向の端面のうち一方の端面は、コイルCの第1の端面に接触される(電気的に接続される)。電極1100a'の(円環状の同軸部の)軸方向の端面のうち一方の端面は、電極1100aが接触する位置よりも内周側の位置においてコイルCの第1の端面に接触される(電気的に接続される)。
【0081】
電極1100bの(円環状の同軸部の)軸方向の端面のうち一方の端面は、コイルCの第2の端面に接触される(電気的に接続される)。電極1100b'の(円環状の同軸部の)軸方向の端面のうち一方の端面は、電極1100bが接触する位置よりも内周側の位置においてコイルCの第2の端面に接触される(電気的に接続される)。
【0082】
以下の説明では、電極の(円環状の同軸部の)軸方向の端面のうち、コイルCの第1の端面または第2の端面と接触する方の端面を、必要に応じて、電極の第1の端面または電極の同軸部の第1の端面と称する。
【0083】
電極1100aおよび電極1100bの、コイルCの径方向(電磁鋼板の巻厚方向)の位置は、近ければ近いほど好ましく、略同じであるのがより好ましく、同じであるのが最も好ましい(実際には完全に同じにするのは容易ではないので、略同じであればよい)。電極1100a'および電極1100b'の、コイルCの径方向(電磁鋼板の巻厚方向)の位置も、近ければ近いほど好ましく、略同じであるのがより好ましく、同じであるのが最も好ましい(実際には完全に同じにするのは容易ではないので、略同じであればよい)。
【0084】
図13は、電極1100aの第1の端面とコイルCの第1の端面とが接触する領域の一例を概念的に示す図である。
図13(a)は、コイルCの軸Oを通るように、コイルCの径方向に沿ってコイルCを切断した場合の断面のうち、コイルCおよび電極1100aの一部分を示す図である。
図13(b)は、コイルCの第1の端面を(その正面から)見た領域のうち、コイルCの一周分の領域と電極1100aの領域とを示す図である。
尚、
図13(b)において、コイルC(の一周分の領域)を実線で示す。また、電極1100aの領域を破線で示す(電極1100aの領域のうち、コイルC(の一周分の領域)と重なる部分は、実線と破線とが重なる(破線は実線に隠れる))。
【0085】
図14は、コイルCを巻き戻したと仮定した場合の電極1100a、1100a' 1100b、1100b'の位置の一例を示す図である。
図14では、鉄損の測定領域をグレーで示している(実際には、
図14のような色分けはなされていない)。
図14は、
図4に対応する。
図13(a)、
図13(b)、および
図14を参照しながら、電極1100aの第1の端面とコイルCの第1の端面とを接触させる(電気的に接続する)領域の一例を説明する。
【0086】
コイルCは電磁鋼板をコイル状(渦巻状)に巻き取ることにより形成される。一方、電極1100aの同軸部を、当該同軸部の軸に垂直な方向に切った場合の断面の形状は、円環状である。従って、
図13(a)および
図13(b)に示すように、電極1100aの同軸部の第1の端面を、コイルCの第1の端面における電磁鋼板の渦巻状の形状に完全に合わせることはできない。従って、電極1100aの同軸部の第1の端面とコイルCの第1の端面とを対向させる際に、電極1100aの同軸部の第1の端面を、コイルCの第1の端面における渦巻状の形状に可及的に合うような状態とする。このとき、
図13(b)に示すように、コイルCの周方向において、電極1100aの同軸部の第1の端面の少なくとも一部が、コイルCの第1の端面における渦巻状の領域の一周分の領域の少なくとも一部と連続して接触する(電気的に接続される)ようにするのが好ましい。
【0087】
また、電磁鋼板の板面には絶縁被膜が施されている。このため、コイルCにおいて相互に隣接する電磁鋼板の間は、電気的に絶縁される。電極1100aの同軸部の第1の端面の厚み(円環の肉厚)が薄いと、電極1100aの同軸部の第1の端面の厚み方向において、電極1100aの同軸部の第1の端面の領域が、コイルCにおいて相互に隣接する電磁鋼板の間の電気的に絶縁された領域にしか接触しない場合が生じ得る。このような場合、電極1100aとコイルCとが電気的に接続される領域が、コイルCの周方向において不連続になる(
図14において、電極1100aとコイルCとの境界線の全体が電気的に接続されず、電極1100aとコイルCとの境界線に電気的に接続される部分とそうでない部分とが存在することになる)。
【0088】
そこで、電極1100aの同軸部の第1の端面の厚み(円環の肉厚)を、コイルCを構成する電磁鋼板の板厚以上とするのが好ましい。電極1100aの同軸部の第1の端面と、コイルCの第1の端面とが、コイルCの周方向において連続的に電気的に接続されるようにすることが可能になるからである。尚、電極1100aの同軸部の第1の端面の厚み(円環の肉厚)を、コイルCを構成する電磁鋼板の板厚の2倍以上にすれば、コイルCの周方向において、電極1100aの同軸部の第1の端面の少なくとも一部を、コイルCの第1の端面における渦巻状の領域の一周分の領域(の全部)と連続的に接触させる(電気的に接続させる)ことが可能になる。
また、電極1100aの同軸部の径(円環の径)は、コイルCにおける鉄損の測定領域の大きさに応じて定めればよい。径が異なる複数の電極1100aを用意し、コイルCにおける鉄損の測定領域の大きさに合う電極1100aを選択して用いてもよい。
【0089】
尚、電極1100a'の第1の端面と、コイルCの第1の端面とが接触する領域は、以上の電極1100aの第1の端面と、コイルCの第1の端面とが接触する領域の説明において、電極1100aを電極1100a'に置き換えればよい。また、電極1100b、1100b'の第1の端面と、コイルCの第2の端面とが接触する領域は、以上の電極1100aの第1の端面と、コイルCの第1の端面とが接触する領域の説明において、電極1100aを電極1100b、1100b'に置き換え、コイルCの第1の端面をコイルCの第2の端面に置き換えればよい。従って、電極1100a'、1100b、1100b'の第1の端面をコイルCの第1の端面または第2の端面に接触させる領域の詳細な説明を省略する。
【0090】
以上のように本実施形態では、電極1100a、1100a'、1100b、1100b'が円環状の同軸部を有するようにし、コイルCの第1の端面に電極1100a、1100bの同軸部の第1の端面を電気的に接続(接触)させ、コイルCの第2の端面に電極1100a'、1100b'の同軸部の第1の端面を電気的に接続(接触)させる。従ってコイルCの周方向で電流が流れない領域を少なくする(好ましくは無くす)ことができる。よって、
図10に示すような、電極が配置される領域(一点鎖線で囲まれる領域)よりも、コイルCの径方向における外側または内側に、磁束が漏れることを抑制することができる。これにより、コイルCにおける鉄損の測定領域の、コイルCの周方向における長さに関わらず、当該測定領域における鉄損の測定誤差を低減することができる。
【0091】
本実施形態では、電極1100a、1100a'、1100b、1100b'の同軸部を、当該同軸部の軸に垂直な方向に切った場合の断面の形状が、円環状である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、電極の同軸部を、当該同軸部の軸に垂直な方向に切った場合の断面の形状は、渦巻状、または、一箇所が欠けた環状(典型的にはC字状)であってもよい。また、電極の同軸部を、当該同軸部の軸に垂直な方向に切った場合の断面の形状は、円環状以外の環状であってもよい。例えば、コイルCの第1の端面および第2の端面における渦巻状の形状に合うように、電極の同軸部を、当該同軸部の軸に垂直な方向に切った場合の断面の形状を、円環から変形させてもよい(円環の円は真円でなくてもよい)。
【0092】
電極の同軸部を、当該同軸部の軸に垂直な方向に切った場合の断面の形状を、渦巻状とする場合、以下のようにするのが好ましい。即ち、電極の同軸部の第1の端面と、コイルCの第1の端面または第2の端面とが相互に対向したときに、電極の同軸部の第1の端面の渦巻状の巻回方向と、コイルCの第1の端面および第2の端面における渦巻状の巻回方向とが合うようにするのが好ましい。また、少なくともコイルCの周方向の一周分の領域で、電極の同軸部の第1の端面の渦巻状の領域と、コイルCの第1の端面および第2の端面における渦巻状の領域とが相互に重なり合うようにするのが好ましい。即ち、電極の同軸部の第1の端面の渦巻状の領域と、コイルCの第1の端面および第2の端面における渦巻状の領域のうち少なくともコイルCの周方向の一周分の領域との形状および大きさを略同じにするのが好ましい。
また、電極の同軸部を、当該同軸部の軸に垂直な方向に切った場合の断面の形状を、一箇所が欠けた環状にする場合、当該一箇所が欠けた環状の一端と他端の間の距離は可及的に短い方が好ましい。
【0093】
尚、本実施形態の電極1100a、1100a'、1100b、1100b'は、第1の実施形態だけでなく、第2の実施形態や第4の実施形態に対して適用することもできる。
また、本実施形態においても、第1の実施形態、第2の実施形態および第4の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0094】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態を説明する。第5の実施形態のように、電極1100a、1100a'、1100b、1100b'の同軸部の第1の端面を、コイルCの第1の端面または第2の端面に接触させる場合、電極1100a、1100a'、1100b、1100b'の同軸部の第1の端面とコイルCの第1の端面または第2の端面とが相互に接触する領域が広くなる。
【0095】
コイルCの第1の端面および第2の端面は、コイルCを構成する電磁鋼板の幅が一定であれば、略平面である。しかしながら、電磁鋼板を巻き取る際の電磁鋼板のねじれ等によって、コイルCの第1の端面および第2の端面が曲面となることがある。このような場合、電極1100a、1100a'、1100b、1100b'の同軸部の第1の端面の全体が、コイルCの第1の端面または第2の端面に接触しない虞がある。そうすると、コイルCに流れる電流の分布が不均一になる。このような不均一な電流の分布は、鉄損の測定誤差の要因となり得る。そこで、本実施形態では、電極(の同軸部)が弾性を有するようにして、電極の同軸部の第1の端面の可及的に広い領域が、コイルCの第1の端面または第2の端面に接触するようにする。
このように本実施形態と第5の実施形態とは、コイルCに接触させる電極の同軸部が弾性を有するようにすることによる構成が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1~第5の実施形態と同一の部分については、
図1~
図14に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0096】
図15は、コイルCの第1の端面および第2の端面を(その正面から)見た様子の一例を概念的に示す図である。
図15(a)は、コイルCの第1の端面を(その正面から)見た様子の一例を概念的に示す図であり、
図15(b)は、コイルCの第2の端面を(その正面から)見た様子の一例を概念的に示す図である。
図16は、コイルCの第1の端面および第2の端面を(その正面から)見た場合の電極およびバックアップ部の配置の一例を概念的に説明する図である。
図16では、透視して見える部分を破線で示す。
図17は、コイルCの軸Oを通るように、コイルCの径方向に沿ってコイルCを切断した場合の断面の一例を概念的に示す図である。
【0097】
図16および
図17において、電極1500a、1500a'、1500b、1500b'は、同じ構成のものであり、それぞれ、円環状の同軸部を有する。電極1500a、1500a'、1500b、1500b'と、第5の実施形態の電極1100a、1100a'、1100b、1100b'とは、材質のみが異なる。即ち、電極1500a、1500a'、1500b、1500b'と、電極1100a、1100a'、1100b、1100b'の形状、大きさおよび配置する箇所は、同じである。
【0098】
第5の実施形態の電極1100a、1100a'、1100b、1100b'は、弾性を有しない。一方、本実施形態の電極1500a、1500a'、1500b、1500b'は、弾性を有する。電極1500a、1500a'、1500b、1500b'は、例えば、導電性の樹脂や導電性のゴムを用いて構成される。
電極1500a、1500a'の同軸部の第1の端面は、電極1100a、1100a'と同様にして、コイルCの第1の端面に接触する(電気的に接続される)。電極1500b、1500b'の同軸部の第1の端面は、電極1100b、1100b'と同様にして、コイルCの第2の端面に接触する(電気的に接続される)。
【0099】
以下の説明では、電極の同軸部の軸方向の端面のうち、電極の同軸部の第1の端面と反対側の端面を、必要に応じて、電極の第2の端面、または、電極の同軸部の第2の端面と称する。
図15~
図17において、バックアップ部1510aは、電極1500a、1500a'の同軸部の第2の端面に接続される。本実施形態では、バックアップ部1510aは、電極1500a、1500a'の同軸部の第2の端面に、着脱不能に取り付けられるものとする。ただし、着脱可能としてもよい。バックアップ部1510bは、電極1500b、1500b'の同軸部の第2の端面に接続される。本実施形態では、バックアップ部1510bは、電極1500b、1500b'の同軸部の第2の端面に、着脱不能に)取り付けられるものとする。ただし、着脱可能としてもよい。
【0100】
図15~
図17に示す例では、バックアップ部1510a、1510bは、中空円筒形状を有する。バックアップ部1510a、1510bは、コイルCの軸Oおよび電極1500a、1500a'、1500b、1500b'の軸と略同軸になるように配置される。バックアップ部1510a・1510bと、電極1500a、1500a'・1500b、1500b'の同軸部との接続は、例えば、接着剤を用いて行われる。以下の説明では、バックアップ部1510a、1510bの軸方向の端面のうち、電極1500a、1500a'・1500b、1500b'と接続される方の端面を、バックアップ部1510a、1510bの第1の端面と称する。また、バックアップ部1510a、1510bの軸方向の端面のうち、電極1500a、1500a'・1500b、1500b'と接続される方の端面と反対側の端面を、バックアップ部1510a、1510bの第2の端面と称する。
【0101】
電極1500a、1500a'、1500b、1500b'の弾性率は、バックアップ部1510a・1510bの弾性率よりも低い。従って、電極1500a、1500a'、1500b、1500b'は、バックアップ部1510a・1510bよりも変形しやすい。電極1500a、1500a'・1500b、1500b'を、コイルCの第1の端面・第2の端面に接触させる(電気的に接続する)際に、コイルCの第1の端面・第2の端面の形状に応じて電極1500a、1500a'・1500b、1500b'が変形することと、バックアップ部1510a・1510bが変形しないようにすることと、コイルCを構成する電磁鋼板の位置がずれないようにすることと、が実現されるように、電極1500a、1500a'、1500b、1500b'およびバックアップ部1510a、1510bを構成するのが好ましい。バックアップ部1510a、1510bは導電材料を用いて構成されても、絶縁材料を用いて構成されてもよい。バックアップ部1510a、1510bが導電性を有する場合には、電極1500a、1500a'、1500b、1500b'と、バックアップ部1510a・1510bとが電気的に接続されるように、例えば、導電性の接着剤を用いて、バックアップ部1510a・1510bと、電極1500a、1500a'・1500b、1500b'の同軸部とを接続するのが好ましい。
【0102】
加圧機構1531a、1532a、1533aは、同じ構成のものであり、バックアップ部1510aの第2の端面に対して、コイルCの軸Oに略平行な方向に加圧する。加圧機構1531a、1532a、1533aと、バックアップ部1510aは、電気的に絶縁された状態で接触する。加圧機構1531a、1532a、1533aからの加圧力が、バックアップ部1510aに可及的に均一に分散し、コイルCを構成する電磁鋼板の位置がずれない状態で電極1500a、1500a'に可及的に均一な力が付与されるように、加圧機構1531a、1532a、1533aの位置および加圧力が設定されるのが好ましい。例えば、加圧機構1531a、1532a、1533aが、バックアップ部1510aの第2の端面と接触する位置は、バックアップ部1510aの軸を回転軸として回転対称となる位置であるのが好ましい。
図15、
図17に示す例では、3つの加圧機構1531a、1532a、1533aを用いる。従って、加圧機構1531a、1532a、1533aが、バックアップ部1510aの第2の端面と接触する位置は、バックアップ部1510aの軸を回転軸として3回対称となる位置であるのが好ましい。また、加圧機構1531a、1532a、1533aの加圧力は、略同じであるのが好ましく、同じであるのがより好ましい(実際には完全に同じにするのは容易ではないので、略同じであればよい)。尚、加圧機構1531a、1532a、1533aは、バックアップ部1510aに固定されていてもよい。
【0103】
加圧機構1531b、1532b、1533bは、以上の加圧機構1531a、1532a、1533aの説明において、加圧機構1531a、1532a、1533a、バックアップ部1510a、電極1500a、1500a'を、それぞれ、加圧機構1531b、1532b、1533b、バックアップ部1510b、電極1500b、1500b'に置き換えればよい。従って、加圧機構1531b、1532b、1533bの詳細な説明を省略する。また、加圧機構1531a、1532a、1533a、1531b、1532b、1533b自体は公知の技術で実現することができるので、その詳細な説明を省略する。尚、加圧機構1531a、1532a、1533a、1531b、1532b、1533bは、同じ構成のものである。
【0104】
以上のように本実施形態では、電極1500a、1500a'・1500b、1500b'の第2の端面に、電極1500a、1500a'・1500b、1500b'よりも弾性率が高いバックアップ部1510a・1510bを接続する。加圧機構1531a、1532a、1533a・1531b、1532b、1533bを用いて、バックアップ部1510a・1510bを介して、電極1500a、1500a'・1500b、1500b'をコイルCの第1の端面・第2の端面に押し付ける加圧力を付与する。従って、電極1500a、1500a'・1500b、1500b'を変形させることができる。よって、コイルCの第1の端面および第2の端面が曲面である場合でも、電極1500a、1500a'・1500b、1500b'の同軸部の第1の端面の可及的に広い領域(好ましくは全体)を、コイルCの第1の端面・第2の端面に接触させることができる。
尚、本実施形態においても、第1の実施形態、第2の実施形態、第4の実施形態、および第5の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0105】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態を説明する。第5~第6の実施形態では、電極1100a、1100a'、1100b、1100b'、1500a、1500a'、1500b、1500b'の径(円環の径)が固定である場合を例に挙げて説明した。このような場合、第5の実施形態で説明したように、径が異なる複数の電極1100a、1100a'、1100b、1100b'、1500a、1500a'、1500b、1500b'を用意する必要がある。そこで、本実施形態では、電極が可撓性を有するようにし、電極の同軸部の径の大きさを変更可能とする。このように本実施形態と第5~第6の実施形態とは、電極の同軸部の径の大きさを変更可能とすることに基づく構成が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1~第6の実施形態と同一の部分については、
図1~
図17に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0106】
図18A~
図18Cは、コイルCの第1の端面側に配置される電極と、当該電極の同軸部の径を可変とするための構成の一例を示す図である。
図18Aは、コイルCの第1の端面を(その正面から)見た様子の一例を概念的に示す図である。
図18Bは、
図18AのI-I断面図である。
図18Cは、
図18AのII-II断面図である。
図19A~
図19Cは、コイルCの第2の端面側に配置される電極と、当該電極の同軸部の径を可変とするための構成の一例を示す図である。
図19Aは、コイルCの第2の端面を(その正面から)見た様子の一例を概念的に示す図である。
図19Bは、
図19AのI-I断面図である。
図19Cは、
図19AのII-II断面図である。
【0107】
図18A~
図18Cおよび
図19A~
図19Cにおいて、電極1800a、1800a'、1800b、1800b'は、同じ構成のものであり、それぞれ、同軸部および引出部を有する。電極1800a、1800a'、1800b、1800b'の同軸部は、コイルCの軸Oと略同軸となるように配置される。このように、電極1800a、1800a'、1800b、1800b'の軸と、コイルCの軸Oとは略一致する。電極1800a、1800a'、1800b、1800b'の同軸部を、当該同軸部の軸に垂直な方向に切った場合の断面の形状は、C字状である。
【0108】
電極1800a、1800a'、1800b、1800b'の引出部は、同軸部のC字状の一端部および他端部からコイルCの径方向に沿ってコイルCの外周側の方向に引き出される部分である。電極1800a、1800a'、1800b、1800b'の引出部を、同軸部の軸に垂直な方向に切った場合の断面の形状は、コイルCの径方向を長手方向とする細長い矩形状である。電極1800a、1800a'、1800b、1800b'の引出部の概形は、平板状である。電極1800a、1800a'、1800b、1800b'の同軸部および引出部は一体である(境界線がない)。
【0109】
電極1800a、1800a'、1800b、1800b'は、可撓性を有し、電極1800a、1800a'、1800b、1800b'の同軸部の径は可変である。従って、電極1800a、1800a'、1800b、1800b'の同軸部の径が変形することによって、同軸部となる領域および引出部となる領域は変化する。即ち、電極1800a、1800a'、1800b、1800b'の同軸部の径が変形すると、変形前に同軸部であった領域が変形後に引出部となることがある。これとは逆に、変形前に引出部であった領域が変形後に同軸部になることがある。
【0110】
電極1800a、1800a'、1800b、1800b'は、それぞれ、電極1100a・1500a、1100a'・1500a'、1100b・1500b、1100b'・1500b'に代えて配置されるものである。
電極1800aの同軸部の第1の端面は、コイルCの第1の端面に接触される(電気的に接続される)。電極1800a'の第1の端面は、電極1800aが接触する位置よりも内周側の位置においてコイルCの第1の端面に接触される(電気的に接続される)。電極1800bの同軸部の第1の端面は、コイルCの第2の端面に接触される(電気的に接続される)。電極1800b'の第1の端面は、電極1800bが接触する位置よりも内周側の位置においてコイルCの第2の端面に接触される(電気的に接続される)。
【0111】
電極1800a、1800a'、1800b、1800b'は、第6の実施形態の電極1500a、1500a'、1500b、1500b'と同様に弾性を有するものとする。ただし、電極1800a、1800a'、1800b、1800b'は、弾性を有していなくてもよい。
【0112】
以下に、電極1800a、1800a'の同軸部の径を可変とするための構成および方法の一例を説明する。
バックアップ部1810aは、電極1800a、1800a'の同軸部が摺動可能な状態で、電極1800a、1800a'の同軸部の第2の端面に接触する。バックアップ部1810aおよび電極1800a、1800a'は、電気的に絶縁された状態で接触する。バックアップ部1810aは、例えば、絶縁材料を用いて構成される。
図18A~
図18Cに示す例では、バックアップ部1810aは、中空円筒形状に対し、バックアップ部1810aの径方向を長手方向とする貫通孔1811a~1818aと、貫通孔1815aに平行な貫通孔1871a~1872a、1881a~1882aとを形成したものである。バックアップ部1810aは、コイルCの軸Oおよび電極1800a、1800a'の軸と略同軸になるように配置される。尚、説明の都合上、貫通孔1815aを示すが、貫通孔1815aはなくてもよい。
【0113】
図18Aに示すように、コイルCの第1の端面を(その正面から)見た場合に、貫通孔1811a~1818aは、バックアップ部1810aの軸を中心とする放射状となる。貫通孔1811a~1818aは、バックアップ部1810aの軸を回転軸として回転対称となる位置であるのが好ましい。
図18Aに示す例では、8つの貫通孔1811a~1818aがある。従って、8つの貫通孔1811a~1818aは、バックアップ部1810aの軸を回転軸としてとして、8回対称となる位置であるのが好ましい。
【0114】
電極1800a、1800a'の弾性率は、バックアップ部1810aの弾性率よりも低い。電極1800a、1800a'を、コイルCの第1の端面に接触させる(電気的に接続する)際に、コイルCの第1の端面の形状に応じて電極1800a、1800a'が変形することと、バックアップ部1810aが変形しないようにすることと、コイルCを構成する電磁鋼板の位置がずれないようにすることと、が実現されるように、電極1800a、1800a'およびバックアップ部1810aを構成するのが好ましい。尚、電極1800a、1800a'が弾性を有しない場合、電極1800a、1800a'の弾性率は、バックアップ部1810aの弾性率よりも低くなくてもよい。
【0115】
貫通孔1811a、1812a、1813a、1814a、1816a、1817a、1818aには、それぞれ、外周側可動部分1821a、1822a、1823a、1824a、1825a、1826a、1827aと、内周側可動部分1831a、1832a、1833a、1834a、1835a、1836a、1837aが配置される。外周側可動部分1821a、1822a、1823a、1824a、1825a、1826a、1827aは、内周側可動部分1831a、1832a、1833a、1834a、1835a、1836a、1837aよりも、外周側の位置にある。
【0116】
図18A~
図18Cに示す例では、電極1800a、1800a'の引出部は、それぞれ、貫通孔1815aを間に挟んだ状態で、電極1800a、1800a'の同軸部のC字状の一端部および他端部からコイルCの外周側の方向に引き出される。
図18A~
図18Cに示す例では、電極1800aの2つの引出部は、電極1800aに電流が流れた際に電極1800aが短絡しないように離隔される。電極1800a'の2つの引出部は、電極1800a'に電流が流れた際に電極1800aが短絡しないように離隔される。また、電極1800aの引出部と、電極1800a'の引出部は、電極1800a、1800a'に電流が流れた際に、電極1800aの引出部と電極1800a'の引出部とが短絡しないように、離隔される。電極1800a、1800a'の(少なくとも引出部の)表面が絶縁処理されている場合、電極1800a、1800a'の引出部は離隔していなくてもよい(接触していてもよい)。
【0117】
電極1800a、1800a'の同軸部のC字状の一端部および他端部の離隔距離は、以上のようにして電極1800a、1800a'の引出部を配置するのに必要な距離となる。電極1800a、1800a'の同軸部のC字状の一端部および他端部の離隔距離は、短いほど好ましい。電極1800a、1800a'の同軸部のC字状の一端部および他端部の離隔距離の最小値は、電極1800a、1800a'の引出部の厚みの合計値である。電極1800a、1800a'の(少なくとも引出部の)表面が絶縁処理されていない場合、電極1800a、1800a'の引出部の厚みの合計値に、電極1800a、1800a'の短絡を防ぐために確保する必要がある距離の最小値を加算した値が、電極1800a、1800a'の同軸部のC字状の一端部および他端部の離隔距離の最小値になる。電極1800a、1800a'の引出部の間に絶縁物を配置する場合には、当該絶縁物を配置しない場合に比べ、電極1800a、1800a'の短絡を防ぐために確保する必要がある距離は短くなる。
【0118】
外周側可動部分1821a~1827aは、電極1800aの同軸部の内周面に、電極1800aおよびバックアップ部1810aと電気的に絶縁された状態で接触する。内周側可動部分1831a~1837aは、電極1800a'の同軸部の内周面に、電極1800a'およびバックアップ部1810aと電気的に絶縁された状態で接触する。外周側可動部分1821a~1827aおよび内周側可動部分1831a~1837aは、例えば、絶縁材料を用いて構成される。
【0119】
外周側可動部分1821a~1827aおよび内周側可動部分1831a~1837aは、同じ構成のものである。外周側可動部分1821a~1827aおよび内周側可動部分1831a~1837aは、それぞれ、外側円柱部と内側円柱部とを有する。外側円柱部および内側円柱部は同軸の状態で一体となっている。外側円柱部の径は内側円柱部の径よりも長く、且つ、貫通孔1811a~1818aの幅(バックアップ部1810aの周方向の長さ)よりも長い。内側円柱部の径は、貫通孔1811a~1818aの幅よりも僅かに短い。外周側可動部分1821a~1827aおよび内周側可動部分1831a~1837aの内側円柱部は、貫通孔1811a~1818a内に配置される。また、外周側可動部分1821a~1827aおよび内周側可動部分1831a~1837aの内側円柱部の長さ(高さ)は、貫通孔1811a~1818aの深さよりも長い。
【0120】
リニアアクチュエータ1861aは、外周側可動部分1821aおよび内周側可動部分1831aを、貫通孔1811aに沿って、バックアップ部1810aの径方向に移動させるためのものである。本実施形態では、リニアアクチュエータ1861aは、外周側可動部分1821aおよび内周側可動部分1831aを個別に移動させることができるものとする。
外周側可動部分1821aおよび内周側可動部分1831aの内側円柱部の先端は、貫通孔1811aよりも、リニアアクチュエータ1861a側に突出している。リニアアクチュエータ1861aの可動部には、この突出している領域が接続される。
リニアアクチュエータ1861a自体は、公知の技術で実現することができるので、その詳細な説明を省略する。
【0121】
外周側可動部分1822a~1827aおよび内周側可動部分1832a~1837aに対してもリニアアクチュエータが配置される。
図18A~
図18Cに示す例では、外周側可動部分1821a~1827aおよび内周側可動部分1831a~1837aが7つであるので、7つのリニアアクチュエータが配置される。外周側可動部分1822a~1827aおよび内周側可動部分1832a~1837aに対するリニアアクチュエータの説明は、以上の外周側可動部分1821aおよび内周側可動部分1831aに対するリニアアクチュエータ1861aの説明において、外周側可動部分1821a、内周側可動部分1831a、貫通孔1811aを、それぞれ、外周側可動部分1822a、1823a、1824a、1825a、1826a、1827a、内周側可動部分1832a、1833a、1834a、1835a、1836a、1837a、貫通孔1812a、1813a、1814a、1816a、1817a、1818に置き換えればよい。従って、外周側可動部分1822a~1827aおよび内周側可動部分1832a~1837aに対するリニアアクチュエータの詳細な説明を省略する。
【0122】
貫通孔1815aのバックアップ部1810aの周方向の一方側と他方側の両側に、貫通孔1815aの長手方向と平行に、貫通孔1871a~1872a、1881a~1882aが相互に間隔を有した状態で配置される。貫通孔1871a~1872a、1881a~1882aの大きさおよび形状は、例えば、貫通孔1811a~1818aと同じである。貫通孔1871a~1872aは、貫通孔1881a~1882aよりも貫通孔1815aに近い位置に配置される。貫通孔1871a~1872a、1881a~1882aの間隔は、前述した電極1800a、1800a'の短絡が生じないように定められる。
【0123】
外周側可動部分1851a~1852aは、電極1800aの同軸部および引出部の境界部分の位置において、電極1800aの外周面に、電極1800aおよびバックアップ部1810aと電気的に絶縁された状態で接触する。外周側可動部分1851a~1852aは、外周側可動部分1821a~1827aおよび内周側可動部分1831a~1837aと同じもので構成される。外周側可動部分1851a~1852aは、それぞれ、外側円柱部と内側円柱部とを有する。外周側可動部分1851a~1852aの内側円柱部は、それぞれ貫通孔1871a~1872a内に配置される。
【0124】
外周側可動部分1851a~1852aに対してもリニアアクチュエータが配置される。外周側可動部分1821a~1827aおよび内周側可動部分1831a~1837aに対するリニアアクチュエータは、それぞれ、外周側可動部分および内周側可動部分の2つの可動部分を個別に移動させる。これに対し、外周側可動部分1851a~1852aに対するリニアアクチュエータは、それぞれ、1つの可動部分(外周側可動部分1851a~1852a)を移動させる。また、外周側可動部分1851a~1852aを移動させる方向は、貫通孔1815aと平行な方向(貫通孔1871a~1872aに沿う方向)である。外周側可動部分1851a~1852aに対するリニアアクチュエータは、前述した外周側可動部分1821aおよび内周側可動部分1831aに対するリニアアクチュエータ1861aの説明に対して、以上の点が異なるだけである。従って、外周側可動部分1851a~1852aに対するリニアアクチュエータの詳細な説明を省略する。
【0125】
内周側可動部分1841a~1842aは、電極1800a'の同軸部および引出部の境界部分の位置において、電極1800a'の外周面に、電極1800a'およびバックアップ部1810aと電気的に絶縁された状態で接触する。内周側可動部分1841a~1842aは、外周側可動部分1821a~1827aおよび内周側可動部分1831a~1837aと同じもので構成される。内周側可動部分1841a~1842aは、それぞれ、外側円柱部と内側円柱部とを有する。内周側可動部分1841a~1842aの内側円柱部は、それぞれ貫通孔1881a~1882a内に配置される。
【0126】
内周側可動部分1841a~1842aに対してもリニアアクチュエータが配置される。
図18Cでは、内周側可動部分1841aに対するリニアアクチュエータ1862aを例示する。外周側可動部分1821a~1827aおよび内周側可動部分1831a~1837aに対するリニアアクチュエータは、それぞれ、外周側可動部分および内周側可動部分の2つの可動部分を個別に移動させる。これに対し、内周側可動部分1841a~1842aに対するリニアアクチュエータは、それぞれ、1つの可動部分(内周側可動部分1841a~1842a)を移動させる。また、内周側可動部分1841a~1842aを移動させる方向は、貫通孔1815aと平行な方向(貫通孔1881a~1882aに沿う方向)である。内周側可動部分1841a~1842aに対するリニアアクチュエータは、前述した外周側可動部分1821aおよび内周側可動部分1831aに対するリニアアクチュエータ1861aの説明に対して、以上の点が異なるだけである。従って、内周側可動部分1841a~1842aに対するリニアアクチュエータの詳細な説明を省略する。
【0127】
電極1800a、1800a'の同軸部の径に合わせて、外周側可動部分1821a~1827a、1851a~1852aおよび内周側可動部分1831a~1837a、1841a~1842aの位置を、リニアアクチュエータを用いて変更する。このとき、外周側可動部分1821a~1827aのバックアップ部1810a(コイルC)の軸からの距離は略同じにするのが好ましい。また、外周側可動部分1851a~1852aの内周側の端部のバックアップ部1810a(コイルC)の軸からの距離は、外周側可動部分1821a~1827aのバックアップ部1810a(コイルC)の軸からの距離と、電極1800の(可動部の)厚みとを加算した値と略同じにするのが好ましい。外周側可動部分1821a~1827a、1851a~1852aおよび内周側可動部分1831a~1837a、1841a~1842aの位置の変更が終了すると、外周側可動部分1821a~1827a、1851a~1852aおよび内周側可動部分1831a~1837a、1841a~1842aの位置は、固定される。
【0128】
また、不図示の張力付与装置を用いることにより、電極1800a、1800a'の引出部の先端を(
図18Aの白抜き矢印線の方向に)引っ張ることにより、電極1800a、1800a'に張力を付与する。これにより、外周側可動部分1851a~1852aの位置に応じて、電極1800aの同軸部および引出部の境界の位置が変更されると共に、電極1800aの同軸部は、内周側可動部分1821a~1827aの位置に応じた径の円環状になる。同様に、内周側可動部分1841a~1842aの位置に応じて、電極1800a'の同軸部および引出部の境界の位置が変更されると共に、電極1800a'の同軸部は、内周側可動部分1831a~1837aの位置に応じた径の円環状になる。尚、張力付与装置は公知の技術で実現することができるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0129】
電極1800a、1800a'への張力の付与は、外周側可動部分1821a~1827a、1851a~1852aおよび内周側可動部分1831a~1837a、1841a~1842aの位置の変更を行いながら行っても、外周側可動部分1821a~1827a、1851a~1852aおよび内周側可動部分1831a~1837a、1841a~1842aの位置の変更が終了してから行ってもよい。
【0130】
図18Aおよび
図18Bに示すように、電極1800a、1800a'の引出部と、コイルCとは絶縁シート1890aが配置される。
図18Aでは、絶縁シート1890aに隠れる部分を破線で示す。
絶縁シート1890aは、絶縁材により構成される。電極1800a、1800a'の同軸部(
図18AのC字状の部分)とコイルCとの導通が妨げられないように、絶縁シート1890aの厚みは薄い方が好ましい。また、絶縁シート1890aの形状および大きさは、電極1800a、1800a'の径が変更されても、電極1800a、1800a'の引出部と、コイルCとの絶縁が確保されるように定められるのが好ましい。
図18Aでは、絶縁シート1890aの平面形状が矩形である場合を例に挙げて示す。
【0131】
また、
図18Aでは、絶縁シート1890aの径方向の領域は、バックアップ部1810aの内周面と接する位置から、バックアップ部1810aの外周面よりも外側(
図18Aでは下側)の位置までの間にある場合を例に挙げて示す。絶縁シート1890aの径方向の領域は、バックアップ部1810aの内周面と接する位置から、バックアップ部1810aの外周面と接する位置までの間にあってもよい。
また、
図18Aでは、絶縁シート1890aの周方向の領域は、貫通孔1881aの径方向の中心線の位置から貫通孔1882aの中心線の位置までの領域にある場合を例に挙げて示す。絶縁シート1890aの周方向の領域は、貫通孔1881aの径方向の中心線の位置から貫通孔1882aの中心線の位置までの領域にある場合を例に挙げて示す。
以上が、電極1800a、1800a'の同軸部の径を可変とするための構成および方法の一例である。
【0132】
コイルCの第2の端面側に配置される電極1800a'の同軸部の径を可変とするための構成および方法は、前述した電極1800aの同軸部の径を可変とするための構成および方法の一例の説明において、
図18A、
図18B、
図18Cを
図19A、
図19B、
図19Cに、コイルCの第1の端面をコイルCの第2の端面に、電極1800a、1800a'を電極1800b、1800b'に、バックアップ部1810aをバックアップ部1810bに、貫通孔1811a~1818aを貫通孔1811b~1818bに、外周側可動部分1821a~1827aを外周側可動部分1821b~1827bに、内周側可動部分1831a~1837aを内周側可動部分1831b~1837bに、内周側可動部分1841a~1842aを内周側可動部分1841b~1842bに、外周側可動部分1851a~1852aを外周側可動部分1851b~1852bに、リニアアクチュエータ1861a、1862aをリニアアクチュエータ1861b、1862bに、貫通孔1871a~1872a、1881a~1882aを、貫通孔1871b~1872b、1881b~1882bに、絶縁シート1890aを、絶縁シート1890bに、それぞれ置き換えればよい。従って、コイルCの第2の端面側に配置される電極1800a'の同軸部の径を可変とするための構成および方法の詳細な説明を省略する。
【0133】
尚、各実施形態で説明したのと同様に、電極1800aおよび電極1800bの、コイルCの径方向(電磁鋼板の巻厚方向)の位置は、近ければ近いほど好ましく、略同じであるのがより好ましく、同じであるのが最も好ましい(実際には完全に同じにするのは容易ではないので、略同じであればよい)。電極1800a'および電極1800b'の、コイルCの径方向(電磁鋼板の巻厚方向)の位置も、近ければ近いほど好ましく、略同じであるのがより好ましく、同じであるのが最も好ましい(実際には完全に同じにするのは容易ではないので、略同じであればよい)。
【0134】
以上のように本実施形態では、電極1800a、1800a'、1800b、1800b'が可撓性を有するようにし、電極1800a、1800a'、1800b、1800b'の同軸部の径の大きさを変更可能とする。従って、コイルCにおける鉄損の測定領域を自由に設定することができる。
また、本実施形態では、電極1800a、1800bの内周面に接触する外周側可動部分1821a~1827a、1821b~1827bと、電極1800a'、1800b'の内周面に接触する内周側可動部分1831a~1837a、1831b~1837bとを、バックアップ部1810a、1810b(コイルC)の径方向に移動することにより、電極1800a、1800a'、1800b、1800b'の同軸部の径を変更する。従って、電極1800a、1800bの同軸部を可及的に円環状に保ったまま、その径を自由に変更することができる。
【0135】
電極1800a、1800a'、1800b、1800b'の同軸部の径を変更するための構成および方法は、
図18A~
図18Cに示したものに限定されない。例えば、電極1800a、1800a'、1800b、1800b'の内周面と外周面とに当接するように、
図18A~
図18Cおよび
図19A~
図19Cに示したものよりも可動部分の数を増やしてもよい。このようにすれば、可動部分を、電極1800a、1800a'、1800b、1800b'を内周面側と外周面側とから挟むように配置することができるので、電極1800a、1800a'、1800b、1800b'の同軸部の径を変更する際に、電極1800a、1800a'、1800b、1800b'の形状が円環状から変更されることをより一層抑制することができる。
【0136】
また、貫通孔1815a、1815bを設けずに、貫通孔1871a~1872a、1881a~1882a、1871b~1872b、1881b~1882bの向きを、バックアップ部1810a、1810bの径方向に沿う方向としてもよい。このようにする場合にも、電極1800a、1800a'、1800b、1800b'の引出部とコイルCとの絶縁が確保されるように絶縁シートが配置される。この場合、絶縁シートの平面形状および大きさは、貫通孔1871a~1872a、1881a~1882a、1871b~1872b、1881b~1882bの向きおよび大きさに応じて定められる。この場合、絶縁シートの平面形状は、台形とすればよい。
尚、本実施形態においても、第1の実施形態、第2の実施形態、第4~第6の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0137】
(その他の変形例)
尚、以上説明した本発明の実施形態のうち、演算装置80が行う処理は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0138】
(請求項との関係)
以下に、請求項の記載と、前述した実施形態との関係の一例を説明する。尚、請求項の記載が実施形態の記載に限定されないことは、各実施形態の変形例等において説明した通りである。
<請求項1>
回路構成工程は、例えば、
図1、
図7に示すような配置で回路を構成すること(
図5のステップS501)により実現される。
第1の端面の位置であって、前記コイルの相対的に外周側の位置に接触される第1の電極は、例えば、電極70aや、電極71a~73aを用いることにより実現される。
第1の端面の位置であって、前記コイルの相対的に内周側の位置に接触される第2の電極は、例えば、電極70a'や、電極71a'~73a 'を用いることにより実現される。
第2の端面の位置であって、前記コイルの相対的に外周側の位置に接触される第1の電極は、例えば、電極70bや、電極71b~73bを用いることにより実現される。
第2の端面の位置であって、前記コイルの相対的に内周側の位置に接触される第2の電極は、例えば、電極70b'や、電極71b'~73b 'を用いることにより実現される。
前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、前記第4の電極、および前記コイルを用いて構成される回路であって、前記第1の電極および前記第2の電極を入力端とし、前記第3の電極および前記第4の電極が電気的に接続された回路は、例えば、電極70a、電極70a'、電極70b、電極70b'、およびコイルCを用いて構成される回路であって、電極70a、70a'間を入力端とし、電極70bおよび電極70b'が電気的に接続された回路を用いることにより実現される。
図1に示す第1の実施形態では、電極70bおよび電極70b'が短絡される例を示し、
図7に示す第2の実施形態では、電極70bおよび電極70b'は、電流計40および電力計60を介して電気的に接続される例を示す。
鉄損導出工程は、例えば、
図5のステップS505により実現される。
前記コイルの測定領域は、前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、および前記第4の電極の前記軟磁性体板との接触位置により定まることは、例えば、コイルCにおける鉄損の測定領域が、
図2(a)、
図2(b)、
図4においてグレーで示す領域になることに対応する。
<請求項2>
抵抗導出工程は、例えば、
図5のステップS502により実現される。
ジュール損導出工程は、例えば、
図5のステップS504により実現される。
<請求項3、14>
前記回路に流れる交流電流は、前記第3の電極と前記第4の電極との間を流れる交流電流であることは、例えば、
図7に示すように、電流計40により、電極70b、70b'間を流れる交流電流を測定することにより実現される。
<請求項4、15>
前記第1の電極、前記第2の電極、前記第3の電極、前記第4の電極は、それぞれ、並列に接続された複数の電極からなることは、例えば、電極70a、70a'、70b、70b'に代えて、それぞれ、電極71a~73a、71a'~73a'、71b~73b、71b'~73b'を用いることに対応する。
また、前記複数の電極は、前記コイルの径方向の位置が略同じになるように前記コイルの周方向に配置されることは、例えば、電極71a~73a、71a'~73a'、71b~73b、71b'~73b'は、それぞれ、
図8(a)および
図8(b)に示すように、イルCの径方向の位置(
図8(a)および
図8(b)に示すコイルCの軸Oからの距離)が略同じになるように、コイルCの周方向に配置されることに対応する。
<請求項5、16>
前記軟磁性体板が曲率を有することにより平坦である場合に比べて鉄損がどの位変化するかを示す指標値は、例えば、鉄損劣化率Xを用いることにより実現される。
前記指標値は、前記コイルの曲率と略同じ曲率で曲げられた軟磁性体板の鉄損と平坦な軟磁性体板の鉄損とを用いて、前記コイルの測定領域の鉄損の導出が行われる前に事前に定められることは、例えば、
図5のフローチャートが開始される前に、電磁鋼板の種類(鋼種)および励磁条件毎の、コイルCの曲率半径と鉄損劣化率Xとの関係を示す情報を、各曲率半径で曲げられた電磁鋼板(のサンプル)の鉄損WRの測定値と、平坦な当該電磁鋼板(のサンプル)の鉄損WFの測定値とを用いて導出して演算装置80に記憶しておくことにより実現される。
<請求項6、17>
第1の電極は、例えば、電極70a、71a~73aを用いることにより実現される。第2の電極は、例えば、電極70a'、71a'~73a'を用いることにより実現される。第3の電極は、電極70b、71b~73bを用いることにより実現される。例えば、第4の電極は、電極70b'、71b'~73b'を用いることにより実現される。
前記第1の電極と前記第3の電極の前記針状部の、前記コイルの径方向および周方向の位置は略同じであり、前記第2の電極と前記第4の電極の前記針状部の、前記コイルの径方向および周方向の位置は略同じであることは、例えば、電極70a(接点a)および電極70b(接点b)の、コイルCの径方向(電磁鋼板の巻厚方向)の位置(
図2(a)に示すコイルCの軸Oからの距離)および周方向(電磁鋼板が巻かれる方向)の位置が略同じであり、電極70a'(接点a')および電極70b'(接点b')の、コイルCの径方向(電磁鋼板の巻厚方向)の位置(
図2(b)に示すコイルCの軸Oからの距離)および周方向(電磁鋼板が巻かれる方向)の位置が略同じであることに対応する。
<請求項7、18>
第1の電極は、例えば、電極1100a、1500a、1800aを用いることにより実現される。第2の電極は、例えば、電極1100a'、1500a'、1800a'を用いることにより実現される。第3の電極は、例えば、電極1100b、1500b、1800bを用いることにより実現される。第4の電極は、例えば、電極1100b'、1500b'、1800b'を用いることにより実現される。
前記第1の電極と前記第3の電極の前記同軸部の、前記コイルの径方向の位置は略同じであり、前記第2の電極と前記第4の電極の前記同軸部の、前記コイルの径方向の位置は略同じであることは、例えば、例えば、電極1100a、1100bの、コイルCの径方向(電磁鋼板の巻厚方向)の位置(
図11に示すコイルCの軸Oからの距離)が略同じであり、電極1100a'、1100b'の、コイルCの径方向(電磁鋼板の巻厚方向)の位置(
図11に示すコイルCの軸Oからの距離)が略同じであることに対応する。このことは、電極1500a、1500a'、1500b、1500b'についても(
図16を参照)、電極1800a、1800a'、1800b、1800b'についても(
図18A~
図18Cおよび
図19A~
図19Cを参照)同じである。
前記同軸部を当該同軸部の軸に垂直な方向に切った場合の断面の形状が、円環状に限定されず、環状、一箇所が欠けた環状、または渦巻状であればよいことは、例えば、第5の実施形態の変形例に記載した通りである。
<請求項8、19>
バックアップ部は、例えば、バックアップ部1510a、1510bを用いることにより実現される。前記同軸部の弾性率は、前記バックアップ部の弾性率よりも低いことは、例えば、電極1500a、1500a'、1500b、1500b'の弾性率が、バックアップ部1510a、1510bの弾性率よりも低いことに対応する。
<請求項9、20>
第1の電極は、例えば、電極1800aを用いることにより実現される。第2の電極は、例えば、電極1800a'を用いることにより実現される。第3の電極は、例えば、電極1800bを用いることにより実現される。第4の電極は、例えば、電極1800b'を用いることにより実現される。
<請求項10、21>
第1の可動部の複数の可動部分は、例えば、外周側可動部分1821a~1827aを用いることにより実現される。第2の可動部の複数の可動部分は、例えば、内周側可動部分1831a~1837aを用いることにより実現される。第3の可動部の複数の可動部分は、例えば、外周側可動部分1821b~1827bを用いることにより実現される。第4の可動部の複数の可動部分は、例えば、内周側可動部分1831b~1837bを用いることにより実現される。
<請求項11、22>
貫通孔は、例えば、貫通孔1811a~1814a、1816a~1818a、1811b~1814b、1816b~1818bを用いることにより実現される。
バックアップ部は、例えば、バックアップ部1810a、1810bを用いることにより実現される。
<請求項12>
交流電力供給手段は、例えば、交流電源20を用いることにより実現される。
鉄損導出手段は、例えば、鉄損導出部84を用いることにより実現される。
<請求項13>
直流電力供給手段は、例えば、直流電源10を用いることにより実現される。
直流抵抗導出手段は、例えば、直流抵抗導出部82を用いることにより実現される。
【符号の説明】
【0139】
10:直流電源、20:交流電源、30:切替スイッチ、40:電流計、50:電圧計、60:電力計、70a~73a・70a'~73a'・70b~73b・70b'~73b ':電極、80:演算装置、81:制御部、82:直流抵抗導出部、83:交流入力調整部、84:鉄損導出部、85:出力部、a~b:接点