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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20230307BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
B65G1/00 501C
H01L21/68 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019202650
(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公開番号】P2021075357
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 武司
(72)【発明者】
【氏名】西川 智晶
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-169566(JP,A)
【文献】特開2018-049943(JP,A)
【文献】特開2010-143752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00- 1/20
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能経路に沿って走行して対象物品を搬送元から搬送先に搬送する物品搬送車と、
前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備え、
前記搬送先となる複数の搬送対象場所が前記移動可能経路に沿って設置されている物品搬送設備であって、
前記移動可能経路における複数の前記搬送対象場所のそれぞれに対応する位置に搬送先ステーションが設定されていると共に、前記移動可能経路における前記搬送対象場所に対応しない位置に姿勢変更ステーションが設定され、
前記物品搬送車は、前記対象物品を収容する収容部と、移載機構と、姿勢変更機構と、を備え、
前記移載機構は、前記物品搬送車が前記搬送先ステーションに停止している状態で、前記収容部から前記搬送対象場所に前記対象物品を移載し、
前記姿勢変更機構は、前記収容部に収容されている前記対象物品の少なくとも一部を前記収容部から突出させた状態で前記対象物品の姿勢変更を行う機構であり、
複数の前記搬送先ステーションには、前記姿勢変更のためのスペースがある第1搬送先ステーションと、前記姿勢変更のためのスペースがない第2搬送先ステーションと、が含まれ、
前記姿勢変更ステーションには、前記姿勢変更のためのスペースがあり、
前記制御装置は、前記対象物品の前記姿勢変更を行う必要がある場合であって、
前記搬送先が前記第1搬送先ステーションに対応する前記搬送対象場所である場合には、前記搬送先に対応する前記第1搬送先ステーションで前記姿勢変更を行い、
前記搬送先が前記第2搬送先ステーションに対応する前記搬送対象場所である場合には、前記移動可能経路における、前記物品搬送車の現在位置から前記第2搬送先ステーションまでの前記物品搬送車の搬送経路に前記姿勢変更ステーションが含まれるように、前記搬送経路の設定制御を行い、当該姿勢変更ステーションで前記姿勢変更を行うように、前記物品搬送車を制御し、
前記姿勢変更ステーションが複数ある場合、前記制御装置は、前記対象物品の前記姿勢変更を行う必要がある場合であって、前記搬送先が前記第2搬送先ステーションに対応する前記搬送対象場所である場合には、前記搬送先に対応する前記第2搬送先ステーションに最も近い前記姿勢変更ステーションで前記姿勢変更を行うように、前記物品搬送車を制御する、物品搬送設備。
【請求項2】
移動可能経路に沿って走行して対象物品を搬送元から搬送先に搬送する物品搬送車と、
前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備え、
前記搬送先となる複数の搬送対象場所が前記移動可能経路に沿って設置されている物品搬送設備であって、
前記移動可能経路における複数の前記搬送対象場所のそれぞれに対応する位置に搬送先ステーションが設定されていると共に、前記移動可能経路における前記搬送対象場所に対応しない位置に姿勢変更ステーションが設定され、
前記物品搬送車は、前記対象物品を収容する収容部と、移載機構と、姿勢変更機構と、を備え、
前記移載機構は、前記物品搬送車が前記搬送先ステーションに停止している状態で、前記収容部から前記搬送対象場所に前記対象物品を移載し、
前記姿勢変更機構は、前記収容部に収容されている前記対象物品の少なくとも一部を前記収容部から突出させた状態で前記対象物品の姿勢変更を行う機構であり、
複数の前記搬送先ステーションには、前記姿勢変更のためのスペースがある第1搬送先ステーションと、前記姿勢変更のためのスペースがない第2搬送先ステーションと、が含まれ、
前記姿勢変更ステーションには、前記姿勢変更のためのスペースがあり、
前記制御装置は、前記対象物品の前記姿勢変更を行う必要がある場合であって、
前記搬送先が前記第1搬送先ステーションに対応する前記搬送対象場所である場合には、前記搬送先に対応する前記第1搬送先ステーションで前記姿勢変更を行い、
前記搬送先が前記第2搬送先ステーションに対応する前記搬送対象場所である場合には、前記移動可能経路における、前記物品搬送車の現在位置から前記第2搬送先ステーションまでの前記物品搬送車の搬送経路に前記姿勢変更ステーションが含まれるように、前記搬送経路の設定制御を行い、当該姿勢変更ステーションで前記姿勢変更を行うように、前記物品搬送車を制御し、
前記物品搬送車の現在位置から前記第2搬送先ステーションまでの複数の経路の内で最も早期に前記物品搬送車が前記第2搬送先ステーションに到達可能な経路を最短経路として、
前記制御装置は、前記設定制御において、前記最短経路に前記姿勢変更ステーションが含まれる場合には、前記最短経路を前記搬送経路として設定し、前記最短経路に前記姿勢変更ステーションが含まれない場合は、前記最短経路以外の経路であって、前記物品搬送車の現在位置から前記第2搬送先ステーションまでに少なくとも1つの前記姿勢変更ステーションが含まれる経路の中で最も早期に前記物品搬送車が前記第2搬送先ステーションに到達可能な経路を前記搬送経路として設定する、物品搬送設備。
【請求項3】
上下方向視で前記移動可能経路に対して直交する方向を幅方向として、
前記姿勢変更機構は、前記対象物品を前記収容部から前記幅方向に規定量突出させた状態で前記姿勢変更を行い、
前記姿勢変更ステーションは、前記移動可能経路における、前記物品搬送車の移動軌跡に対して前記幅方向に前記規定量以上広がったスペースであって前記移動可能経路の延在方向に前記収容部の長さ以上広がったスペースが確保された場所に設定されている、請求項1又は2に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動可能経路に沿って走行して対象物品を搬送元から搬送先に搬送する物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備え、前記搬送先となる複数の搬送対象場所が前記移動可能経路に沿って設置されている物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
このような物品搬送設備として、例えば、特開2018-049943号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。以下、背景技術の説明において、かっこ書きの符号又は名称は、先行技術文献における符号又は名称とする。この特許文献1に記載の物品搬送設備の物品搬送車(2)には、収容部(22a)に収容されている対象物品(物品W)の少なくとも一部を収容部から突出させた状態で対象物品の姿勢変更を行う姿勢変更機構(4)が備えられている。そして、移動可能経路には、搬送対象場所に対応する位置に搬送先ステーションが設定されていると共に、移動可能経路における搬送対象場所に対応しない位置に姿勢変更ステーション(姿勢変更許可領域Tp)が設定されている。姿勢変更ステーションには、姿勢変更機構による姿勢変更のためのスペースがある。そのため、搬送元の対象物品の姿勢と搬送先の対象物品の姿勢とが異なっている場合でも、搬送元から搬送先に対象物品を搬送するときに物品搬送車が走行する経路である搬送経路の途中にある姿勢変更ステーションにおいて対象物品の姿勢変更を行うことで、対象物品を搬送元から搬送先に搬送することができるようになっている。
【0003】
つまり、搬送元から搬送先に対象物品を搬送する場合において、対象物品の姿勢変更を行う必要がある場合、物品搬送車は、搬送元の対象物品を搬送元から収容部に移載して対象物品を収容部に収容した後、現在位置から姿勢変更ステーションに走行し、姿勢変更ステーションにおいて対象物品の姿勢を変更した後、姿勢変更ステーションから搬送先に対応する搬送先ステーションまで走行し、対象物品を搬送先に移載するようにして、搬送元から搬送先に対象物品を搬送するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-049943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、このような物品搬送設備において効率的な搬送を行うための搬送経路の設定に関して具体的な記載はない。そのため、対象物品の効率的な搬送を行うことができない場合が生じる可能性があった。
【0006】
そこで、搬送元から搬送先までの間で姿勢変更を行う必要がある対象物品の搬送を効率的に行うことが可能な物品搬送設備の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた、物品搬送設備の特徴構成は、物品搬送設備は、移動可能経路に沿って走行して対象物品を搬送元から搬送先に搬送する物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備え、前記搬送先となる複数の搬送対象場所が前記移動可能経路に沿って設置され、
前記移動可能経路における複数の前記搬送対象場所のそれぞれに対応する位置に搬送先ステーションが設定されていると共に、前記移動可能経路における前記搬送対象場所に対応しない位置に姿勢変更ステーションが設定され、前記物品搬送車は、前記対象物品を収容する収容部と、移載機構と、姿勢変更機構と、を備え、前記移載機構は、前記物品搬送車が前記搬送先ステーションに停止している状態で、前記収容部から前記搬送対象場所に前記対象物品を移載し、前記姿勢変更機構は、前記収容部に収容されている前記対象物品の少なくとも一部を前記収容部から突出させた状態で前記対象物品の姿勢変更を行う機構であり、複数の前記搬送先ステーションには、前記姿勢変更のためのスペースがある第1搬送先ステーションと、前記姿勢変更のためのスペースがない第2搬送先ステーションと、が含まれ、前記姿勢変更ステーションには、前記姿勢変更のためのスペースがあり、前記制御装置は、前記対象物品の前記姿勢変更を行う必要がある場合であって、前記搬送先が前記第1搬送先ステーションに対応する前記搬送対象場所である場合には、前記搬送先に対応する前記第1搬送先ステーションで前記姿勢変更を行い、前記搬送先が前記第2搬送先ステーションに対応する前記搬送対象場所である場合には、前記移動可能経路における、前記物品搬送車の現在位置から前記第2搬送先ステーションまでの前記物品搬送車の搬送経路に前記姿勢変更ステーションが含まれるように、前記搬送経路の設定制御を行い、当該姿勢変更ステーションで前記姿勢変更を行うように、前記物品搬送車を制御する点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、搬送先が第1搬送先ステーションに対応する搬送対象場所であり、搬送対象場所に対応する搬送先ステーションにおいて姿勢変更が可能な場合は、制御装置は、物品搬送車を第1搬送先ステーションに走行させ、当該第1搬送先ステーションにおいて姿勢変更機構によって対象物品の姿勢を変更させた後、移載機構によって対象物品を搬送対象場所に移載する。また、搬送先が第2搬送先ステーションに対応する搬送対象場所であり、搬送対象場所に対応する搬送先ステーションにおいて姿勢変更が不可能な場合は、制御装置は、設定制御によって姿勢変更ステーションが含まれる搬送経路を設定して、物品搬送車を姿勢変更ステーションに走行させ、当該姿勢変更ステーションにおいて姿勢変更機構によって対象物品の姿勢を変更させた後、物品搬送車を第2搬送先ステーションに走行させ、移載機構によって対象物品を搬送対象場所に移載する。
【0009】
このように、本構成によれば、搬送先が第1搬送先ステーションに対応する搬送対象場所である場合は、この第1搬送先ステーションで姿勢変更が可能であるため、搬送経路に姿勢変更ステーションが含まれるか否かを考慮することなく、物品搬送車の搬送経路を設定することができる。そのため、例えば、走行距離が最も短くなる経路や物品搬送車の渋滞が発生し難い経路を搬送経路として設定したりする等、搬送元から搬送先までの対象物品の搬送を効率的に行うことができる搬送経路を設定し易い。一方、搬送先が第2搬送先ステーションに対応する搬送対象場所である場合には、搬送経路に姿勢変更ステーションが含まれるように搬送経路を設定するため、搬送先ステーションにおいて姿勢変更を行うことができない場合であっても、適切に対象物品の姿勢変更をした上で、搬送先に対象物品を搬送することができる。従って、本構成によれば、搬送元から搬送先までの間で姿勢変更を行う必要がある対象物品の搬送を効率的に行うことが可能となる。
また、上記物品搬送設備における第1の特徴構成は、前記姿勢変更ステーションが複数ある場合、前記制御装置は、前記対象物品の前記姿勢変更を行う必要がある場合であって、前記搬送先が前記第2搬送先ステーションに対応する前記搬送対象場所である場合には、前記搬送先に対応する前記第2搬送先ステーションに最も近い前記姿勢変更ステーションで前記姿勢変更を行うように、前記物品搬送車を制御する点にある。
この第1の特徴構成によれば、搬送先に対応する第2搬送先ステーションに最も近い姿勢変更ステーションで姿勢変更を行うことで、この姿勢変更ステーションより搬送経路の上流側にある別の姿勢変更ステーションで姿勢変更する場合に比べて、姿勢変更するタイミングを遅らせることができる。そのため、例えば、対象物品の姿勢変更を行った後に搬送先が変更されたために、対象物品の姿勢を元に戻す必要が生じて2度の姿勢変更を行うことになる、といった事態が生じることを回避し易くなる。
また、上記物品搬送設備における第2の特徴構成は、前記物品搬送車の現在位置から前記第2搬送先ステーションまでの複数の経路の内で最も早期に前記物品搬送車が前記第2搬送先ステーションに到達可能な経路を最短経路として、前記制御装置は、前記設定制御において、前記最短経路に前記姿勢変更ステーションが含まれる場合には、前記最短経路を前記搬送経路として設定し、前記最短経路に前記姿勢変更ステーションが含まれない場合は、前記最短経路以外の経路であって、前記物品搬送車の現在位置から前記第2搬送先ステーションまでに少なくとも1つの前記姿勢変更ステーションが含まれる経路の中で最も早期に前記物品搬送車が前記第2搬送先ステーションに到達可能な経路を前記搬送経路として設定する点にある。
この第2の特徴構成によれば、最短経路に姿勢変更ステーションが含まれる場合には、その最短経路を搬送経路として設定することで、姿勢変更ステーションにおいて対象物品の姿勢を変更しながら、搬送元から搬送先に対象物品を搬送するのに要する時間を短くできる。また、最短経路に姿勢変更ステーションが含まれない場合でも、その最短経路以外の経路であって最も早期に物品搬送車が第2搬送先ステーションに到達可能な経路を搬送経路として設定することで、姿勢変更ステーションにおいて対象物品の姿勢を変更しながら、搬送元から搬送先に対象物品を搬送するのに要する時間が長くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】物品搬送設備の平面図
図2】物品搬送車と搬送対象場所とを示す正面図
図3】物品搬送車の正面図
図4】物品搬送車とフェンスとを示す平面図
図5】制御ブロック図
図6】搬送制御のフローチャート
図7】卸し制御のフローチャート
図8】搬送経路を示す図
図9】搬送経路を示す図
図10】搬送経路を示す図
図11】その他の実施形態に係る物品搬送車の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施形態
物品搬送設備の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、物品搬送設備1は、移動可能経路Rに沿って走行して対象物品W(図2及び図3参照)を搬送元から搬送先に搬送する物品搬送車2と、物品搬送車2を制御する制御装置H(図5を参照)と、を備えている。そして、搬送先となる複数の搬送対象場所6が移動可能経路Rに沿って設置されている。なお、以下では、上下方向Zに沿う上下方向視で、移動可能経路Rに沿う方向を搬送方向Xとし、上下方向視で、移動可能経路Rに対して直交する方向を幅方向Yとして説明する。また、幅方向Yの一方側を幅方向第1側Y1とし、その反対側を幅方向第2側Y2として説明する。
【0012】
1-1.物品搬送設備の機械的構成
図2から図4に示すように、対象物品Wは、物品搬送車2によって搬送される対象となる物品である。ここで、対象物品Wは、上下方向視で非円形状に形成されている。対象物品Wは、例えば、上下方向視で多角形状、より具体的には、四角形状に形成されている(図4参照)。なお、四角形状には、厳密には四角形でなくても、全体としてみれば四角形とみなせる形状も含む。また、多角形状の一部の辺が円弧等の曲線で形成された上下方向視の形状を有していても良い。例えば、対象物品Wの上下方向視の形状はD形であっても良い。以下、「状」という表現を用いて物等の形状を説明する場合は、これと同様の趣旨である。また、対象物品Wの立体的形状に関しては、ここでは、柱状体とされている。対象物品Wは、例えば、内容物が収納される容器である。本実施形態では、対象物品Wは、半導体基板が収納される容器である。ここでは、対象物品Wは、直方体状に形成されており、複数枚の半導体基板を複数段に分けて収容可能である。本実施形態では、対象物品Wの上面及び底面は、常に塞がった状態である。また、対象物品Wの上面には、対象物品Wの搬送の際に物品搬送車2によって把持されるためのフランジ部WAが設けられている。また、対象物品Wの4つの側面のうち一面には、半導体基板を出し入れするための開口部WBが設けられている。
【0013】
搬送対象場所6は、対象物品Wの搬送元となる場所、又は、対象物品Wの搬送先となる場所である。搬送対象場所6は、物品搬送設備1の複数個所に設けられている。搬送対象場所6では、例えば、対象物品Wの処理が行われる。本実施形態では、図1に示すように、搬送対象場所6には、半導体基板に対する処理を行う処理装置6Aと物品搬送車2との間での対象物品Wの授受のための授受部6Bとが含まれている。本実施形態では、授受部6Bには、処理装置6Aに対して開口部WBを対向させた状態の対象物品Wが搬送される。また、対象物品Wに収納された半導体基板が、処理装置6Aが備えるアーム等によって開口部WBから取り出される。そして、半導体基板は、処理装置6Aによって処理される。このように処理装置6Aによって半導体基板が処理されるために、本実施形態では、対象物品Wは、開口部WBが処理装置6Aに対向する適切な姿勢にされた上で、物品搬送車2によって授受部6Bに搬送される。
【0014】
移動可能経路Rは、物品搬送設備1において物品搬送車2が移動可能な経路である。図1に示すように、移動可能経路Rは、複数の搬送対象場所6を経由している。移動可能経路Rは、例えば、床面上に設けられるか、又は、床面から上方に距離を置いた位置に設けられる。本実施形態では、移動可能経路Rは、天井99から吊り下げ支持されたレール98により定まっている(図2及び図3参照)。図1に示すように、本実施形態では、レール98は、複数の授受部6Bを経由する状態で設けられている。また、レール98は、移動可能経路Rに沿って延在すると共に幅方向Yに離間した状態で設けられる一対の長尺部材によって構成されている(図2及び図3参照)。
【0015】
処理装置6Aは、授受部6Bに対象物品Wが搬送される際には、処理装置6Aが対象物品Wから半導体基板を取り出せるように対象物品Wの開口部WBが処理装置6Aに対向する状態となっていなければならない。処理装置6Aによっては、処理装置6Aに対する授受部6Bの位置が異なり、対象物品Wの開口部WBが処理装置6Aに対向する状態となる対象物品Wの姿勢が異なる。
【0016】
物品搬送車2は、複数の搬送対象場所6の間で移動可能経路Rに沿って走行して対象物品Wを搬送する。なお、本実施形態では、物品搬送車2は、移動可能経路Rを一方向にのみ移動し、逆方向には移動しない。また、図5に示すように、物品搬送車2は、移動可能経路R内における当該物品搬送車2の現在位置を検出する位置検出センサSE6を備えている。本実施形態では、移動可能経路Rには、複数の被検出体Uが分散された状態で配置されている。そして、被検出体Uは、移動可能経路Rを区画した複数の領域のそれぞれに割り当てられている。また、複数の被検出体Uのそれぞれは、移動可能経路R内においてそれぞれが配置されている位置の情報が保持されている。本実施形態では、位置検出センサSE6は、移動可能経路R内に配置された複数の被検出体Uのそれぞれに保持された位置情報を読み取ることで、移動可能経路R内における物品搬送車2の現在位置を検出可能に構成されている。例えば、被検出体Uとしてはバーコードが表示されたプレート等であっても良く、その場合の位置検出センサSE6としてはバーコードリーダとなる。
【0017】
図8から図10に示すように、移動可能経路Rにおける複数の搬送対象場所6のそれぞれに対応する位置に搬送ステーションT1が設定されている。また、移動可能経路Rにおける搬送対象場所6に対応しない位置に姿勢変更ステーションT2が設定されている。なお、搬送対象場所6を搬送先とした場合における当該搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1が搬送先ステーションに相当する。本実施形態では、搬送ステーションT1は、物品搬送車2が搬送ステーションT1に停止している状態において当該搬送ステーションT1に対応する搬送対象場所6との間で対象物品Wの移載が可能な位置に設定されている。具体的には、搬送ステーションT1は、授受部6Bの真上等、搬送方向Xにおいて授受部6Bと同じ位置に設定されている。また、本実施形態では、姿勢変更ステーションT2は、物品搬送車2が姿勢変更ステーションT2に停止している状態において搬送対象場所6との間で対象物品Wの移載が不可能な位置に設定されている。具体的には、姿勢変更ステーションT2は、授受部6Bに対して搬送方向Xにずれた位置に設定されている。本実施形態では、姿勢変更ステーションT2は、複数あり、これら複数の姿勢変更ステーションT2のそれぞれが、移動可能経路Rにおける搬送対象場所6に対応しない位置に設定されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、物品搬送車2は、レール98上を走行自在な走行部21と、走行部21に吊り下げ支持される本体部22と、を有している。なお、以下の説明において、移動可能経路Rに沿って物品搬送車2が移動することと、移動可能経路Rに沿って物品搬送車2が走行することとは、同義である。物品搬送車2は、対象物品Wを収容する収容部22Aと、当該収容部22Aを覆うカバー部22Bと、移載機構3と、姿勢変更機構7と、を備えている。本実施形態では、収容部22A及びカバー部22Bは、本体部22の一部として構成されている。
【0019】
移載機構3は、物品搬送車2が搬送ステーションT1に停止している状態で、収容部22Aと当該収容部22Aに対して外側に位置する複数の搬送対象場所6の一つとの間で対象物品Wを移動させて当該搬送対象場所6と物品搬送車2との間の対象物品Wの移載を行う。本実施形態では、移載機構3は、物品搬送車2が搬送ステーションT1に停止している状態で、収容部22Aとこの収容部22Aに対して下方側Z2に位置する搬送対象場所6との間で対象物品Wを移動させて搬送対象場所6と物品搬送車2との間の対象物品Wの移載を行う。具体的には、移載機構3は、物品搬送車2が搬送元の搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1に停止している状態で、搬送対象場所6から収容部22Aに対象物品Wを移載し、物品搬送車2が搬送先の搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1に停止している状態で、収容部22Aから搬送対象場所6に対象物品Wを移載する。
【0020】
図3に示すように、移載機構3は、対象物品Wを把持する把持部3GAと、把持部3GAを上下方向Zに沿って昇降させる昇降機構3Hと、を備えている。ここで、本明細書において、ある特定の方向に沿うとは、当該特定の方向に完全に平行である場合の他、設置や組付け等の製造上の誤差の範囲内において当該特定の方向に対して僅かに傾いている状態も含む概念である。より具体的には、当該特定の方向に対して±15°以下の範囲で傾いている状態も含む。スライド機構3Sは、幅方向Yに沿って把持部3GAをスライドさせることができる。なお、対象物品Wの移載とは、物品搬送車2と搬送対象場所6との間で対象物品Wを移動させることをいう。すなわち、収容部22Aに収容された状態の対象物品Wを授受部6Bに載置するまでの過程、又は、授受部6Bに載置された状態の対象物品Wを収容部22Aに収容するまでの過程が、対象物品Wの移載である。また、対象物品Wの搬送とは、複数の授受部6Bのうち、搬送元となる搬送対象場所6から搬送先となる他の搬送対象場所6まで対象物品Wを移動させることをいう。すなわち、対象物品Wの搬送とは、対象物品Wの移載も含む概念である。また、図8から図10に示すように、搬送経路RTとは、移動可能経路Rにおける、搬送元となる搬送対象場所6から搬送先となる他の搬送対象場所6までの経路である。すなわち、移動可能経路Rの中に、搬送元と搬送先とに応じて、その都度搬送経路RTが設定される。
【0021】
図2に示すように、対象物品Wの移載として、授受部6Bに載置された状態の対象物品Wを収容部22Aに移載する場合は、把持機構3Gにより対象物品Wを把持した状態で昇降機構3Hによって対象物品Wを上昇させる。対象物品Wの移載として、収容部22Aの対象物品Wを授受部6Bに載置する場合には、上記と逆の工程を行う。
【0022】
図3に示すように、物品搬送車2は、走行部21を有している。走行部21は、モータ等の駆動装置により駆動されて移動可能経路Rに沿って走行する。本実施形態では、走行部21は、レール98上を走行する。図3に示すように、本実施形態では、走行部21は、走行用モータ21Mによって駆動されて水平軸周りに回転すると共にレール98の上面を搬送方向Xに沿って転動する走行輪21Aと、レール98の上下方向Zに沿う面に当接して上下方向Zに沿う軸周りに回転すると共に走行部21をレール98に沿って案内する案内輪21Bと、を有している。また、走行部21は、物品搬送車2の走行速度を検出する速度検出センサSE1(図5参照)を備えている。本実施形態では、速度検出センサSE1は、所定時間内における走行輪21Aの回転数やレール98との相対速度等に基づいて物品搬送車2の速度を検出可能に構成されている。
【0023】
物品搬送車2は、本体部22を有している。本体部22は、走行部21に連結されており、走行部21の走行によって当該走行部21と一体的に移動可能経路Rを移動する。本実施形態では、本体部22は、レール98を構成する一対の長尺部材の幅方向Yの隙間を介して、走行部21によって吊り下げ支持されている。本実施形態では、本体部22は、対象物品Wを収容する収容部22Aと、当該収容部22Aを覆うカバー部22Bと、を有している。収容部22Aは、カバー部22Bの内側に配置されている。本実施形態では、カバー部22Bは、幅方向Yの両側及び下方が開放された門状に形成されている。より具体的には、カバー部22Bは、幅方向Yから見て角ばった逆U字状に形成されている。そのため、収容部22Aは、幅方向Yの両側及び下方側Z2において、収容部22Aの外側と連通している。そして、収容部22Aに収容された対象物品Wをスライド機構3Sによって幅方向Yにスライドさせることで、当該対象物品Wを収容部22Aの外側に位置させることができる。
【0024】
本実施形態では、姿勢変更機構7は、幅方向Yに沿って把持部3GAを横移動させる横移動機構としてのスライド機構3Sと、把持部3GAに把持されている対象物品Wの姿勢を特定の軸周りに旋回させる旋回機構4と、を備えている。
【0025】
スライド機構3Sは、幅方向Yに沿って伸縮自在である。例えば、スライド機構3Sは、縮んだ状態でカバー部22Bの内側に収容され、伸びた状態で一部がカバー部22Bの外側に突出するように構成されている。本実施形態では、スライド機構3Sは、収容部22Aに取り付けられている。また、本実施形態では、スライド機構3Sは、スライド用モータ3SMによって駆動又は従動される一対のスライド用プーリ3SCと、一対のスライド用プーリ3SCのそれぞれに巻回されるスライド用ベルト3SBと、スライド用ベルト3SBに連結されて幅方向Yにスライド自在なスライド部3SAと、を有している。そして、図3及び図4に示すように、本実施形態では、スライド部3SAは、収容部22Aと収容部22Aに対して幅方向Yの一方側の外側とに移動できる。具体的には、スライド部3SAは、幅方向第1側Y1にスライドすることで収容部22Aに対して幅方向第1側Y1の外側に移動でき、この状態から幅方向第2側Y2にスライドすることで収容部22Aに移動できる。スライド機構3Sは、スライド部3SAのスライド量を検出するスライド量検出センサSE2を備えている(図5も参照)。本実施形態では、スライド量検出センサSE2は、スライド部3SAのスライド時におけるスライド用プーリ3SCの回転数等に基づいてスライド部3SAのスライド量を検出可能に構成されている。
【0026】
旋回機構4は、把持部3GAを特定の軸周りに旋回させることにより、把持部3GAに把持されている対象物品Wの姿勢を変更する。より具体的には、旋回機構4は、上下方向Zに沿う旋回軸周りに把持部3GAを旋回させることで、把持部3GAに把持されている対象物品Wの姿勢を旋回軸心周りに旋回させて変更する。本実施形態では、旋回機構4は、スライド機構3Sのスライド部3SAと連結している。そのため、旋回機構4は、スライド機構3Sのスライド部3SAと一体的に幅方向Yに沿って移動する。本実施形態では、旋回機構4は、上下方向Zに沿う旋回軸4B周りに把持部3GAを旋回させる旋回部4Aを備えている。ここでは、旋回部4Aの内部において、旋回軸4Bの上部が旋回用モータ4Mと連結している。そして、旋回用モータ4Mによって旋回軸4Bが駆動される。また、旋回機構4は、把持部3GAの旋回量を検出する旋回量検出センサSE5を備えている(図5も参照)。本実施形態では、旋回量検出センサSE5は、旋回軸4Bの回転角度や旋回軸4Bが回転する時間等に基づいて把持部3GAの旋回量を検出可能に構成されている。
【0027】
昇降機構3Hは、対象物品Wを昇降させる。本実施形態では、昇降機構3Hは、カバー部22Bが配置される高さから、少なくとも、授受部6Bが配置される高さまでの間で、対象物品Wを昇降させる。本実施形態では、昇降機構3Hは、昇降用モータ3HMによって駆動される昇降用プーリ3HCと、昇降用ドラム3HDと、昇降用プーリ3HC及び昇降用ドラム3HDに巻回される昇降用ベルト3HBと、昇降用モータ3HMと昇降用プーリ3HCと昇降用ドラム3HDと昇降用ベルト3HBとを内部で保持する昇降部3HAと、を有している。そして、昇降機構3Hは、昇降用モータ3HMによって昇降用プーリ3HCを駆動させることで、昇降用ベルト3HBを巻き取り又は繰り出して、後述するように把持部3GAを昇降させる。また、本実施形態では、昇降部3HAは、旋回機構4が有する旋回軸4Bと連結している。そのため、昇降機構3Hは、旋回軸4B周りに旋回する。昇降機構3Hは、旋回機構4を介してスライド機構3Sと連結しているから、スライド機構3Sと一体的に幅方向Yに沿って移動する。また、昇降機構3Hは、把持部3GAの昇降量を検出する昇降量検出センサSE3を備えている。本実施形態では、昇降量検出センサSE3は、把持部3GAの昇降時における昇降用プーリ3HCの回転数や昇降用プーリ3HCが回転する時間等に基づいて把持部3GAの昇降量を検出可能に構成されている。
【0028】
把持機構3Gは、対象物品Wを把持可能である。例えば、把持機構3Gは、対象物品Wを上方から把持する。より具体的には、把持機構3Gは、上下方向視で対象物品Wと完全に重複した状態で、当該対象物品Wを上方から把持する。本実施形態では、把持機構3Gは、昇降用ベルト3HBに連結される把持部3GAと、把持部3GAの内部で保持される把持用モータ3GM(図5参照)と、把持用モータ3GMにより駆動されて把持姿勢と解除姿勢との間で切り替わり自在な一対の把持爪3GBと、を有している。そして、一対の把持爪3GBは、互いに接近する方向に移動することで把持姿勢となり、互いに離間する方向に移動することで解除姿勢となる。本実施形態では、一対の把持爪3GBは、把持姿勢にて対象物品Wのフランジ部WAを把持する。そして、一対の把持爪3GBは、フランジ部WAを把持した状態から解除姿勢となることで、フランジ部WAの把持を解除する。また、把持機構3Gは、一対の把持爪3GBの把持姿勢と解除姿勢とを検出する把持検出センサSE4を備えている(図5参照)。本実施形態では、把持検出センサSE4は、一対の把持爪3GBによる光軸の遮断の有無等に基づいて一対の把持爪3GBが把持姿勢であるか解除姿勢であるかを検出可能に構成されている。把持部3GAは、昇降用ベルト3HBを介して昇降機構3Hと連結しているから、把持機構3Gは、旋回軸4Bの回転によって旋回する昇降機構3Hと一体的に旋回する。また、把持機構3Gは、昇降機構3H及び旋回機構4を介してスライド機構3Sと連結しているから、昇降機構3H、旋回機構4及びスライド機構3Sと幅方向Yに沿って一体的に移動する。そのため、把持機構3Gに把持された状態の対象物品Wの、昇降、旋回及びスライドの各動作が、昇降機構3H、旋回機構4及びスライド機構3Sによって行われる。
【0029】
旋回機構4は、対象物品Wの姿勢を、搬送元である搬送対象場所6での移載のための姿勢である第1姿勢A1と、搬送先である搬送対象場所6での移載のための姿勢である第2姿勢A2とに変更可能である。第1姿勢A1とは、搬送元である搬送対象場所6の処理装置6Aに対して対象物品Wの開口部WBが対向している状態の姿勢をいう。第2姿勢A2とは、搬送先である搬送対象場所6の処理装置6Aに対して対象物品Wの開口部WBが対向している状態の姿勢をいう。従って、第1姿勢A1は、搬送元に対応する処理装置6Aの向きによって変化するものである。第2姿勢A2は、搬送先に対応する処理装置6Aの向きによって変化するものである。ただし、このような場合に限らず、例えば、第1姿勢A1は、対象物品Wが物品搬送設備1に搬入された時点での姿勢であっても良い。いずれにしても、対象物品Wの搬送を開始する時点での対象物品Wの姿勢が第1姿勢A1となる。
【0030】
本実施形態では、第1姿勢A1と第2姿勢A2との間での対象物品Wの姿勢変更は、旋回軸4B周りでの対象物品Wの旋回によって行われる。すなわち、図4に示すように、対象物品Wを旋回軸4Bの延在方向(本例では上下方向Z)から見たときに、対象物品Wの角WCが旋回軸4Bを中心とする円弧を描くように対象物品Wを旋回させることで、対象物品Wを姿勢変更する。本実施形態では、第1姿勢A1の状態の対象物品Wを、搬送先に対応する処理装置6Aに対して開口部WBが対向する状態となるように、旋回機構4によって旋回軸4B周りで旋回させる。これにより、対象物品Wが第1姿勢A1から第2姿勢A2に姿勢変更される。
【0031】
本実施形態では、図4に示すように、カバー部22Bは、収容部22Aに収容された状態の対象物品Wが第1姿勢A1である場合又は第2姿勢A2である場合に対象物品Wと干渉せず、対象物品Wの姿勢が第1姿勢A1と第2姿勢A2との間で変更する過程の姿勢である中間姿勢AMである場合に対象物品Wと干渉する位置に設けられている。本実施形態では、カバー部22Bは、搬送方向Xで互いに対向する一対の内側面22Fを有している。また、収容部22Aの搬送方向Xにおける領域は、一対の内側面22Fによって区画されている。本実施形態では、収容部22Aに収容された状態の対象物品Wの姿勢が中間姿勢AMである場合に、一対の内側面22Fのうちの少なくとも一つの内側面22Fに対象物品Wが干渉する位置に、カバー部22Bが設けられている。より具体的には、図4に示すように、対象物品Wの旋回時における対象物品Wの回転中心(本例では旋回軸4B)から最も遠い部分(本例では対象物品Wの角WC)が描く旋回軌跡TRが、収容部22Aよりも大きくなるように、カバー部22Bの大きさが設定されている。前述したように対象物品Wは上下方向視で四角形状であるから、旋回軌跡TRの直径は、上下方向視において対象物品Wの対角を結ぶ対角線によって定まる。より具体的には、一対の内側面22Fの搬送方向Xにおける間隔が、上下方向視での対象物品Wの対角線の長さよりも短くなるように設定されている。
【0032】
姿勢変更機構7は、対象物品Wの一部を収容部22Aから突出させた状態で対象物品Wの姿勢を変更する機構である。図3及び図4に示すように、本実施形態では、姿勢変更機構7は、対象物品Wを収容部22Aから幅方向Yに規定量L1突出させた状態で姿勢変更を行う。つまり、姿勢変更機構7は、対象物品Wの少なくとも一部を収容部22Aから幅方向Yの一方側に規定量L1突出させた状態で対象物品Wの姿勢変更を行う。本実施形態では、姿勢変更機構7は、スライド機構3Sにより旋回機構4を幅方向第1側Y1に移動させて、把持機構3Gが把持している対象物品Wを突出位置P2に位置させて収容部22Aから幅方向Yに突出させる。次に、姿勢変更機構7は、対象物品Wが突出位置P2にある状態で旋回機構4によって把持機構3Gを旋回させて当該把持機構3Gに把持されている対象物品Wの姿勢変更を行う。この姿勢変更中、対象物品Wは、収容部22Aから幅方向Yに最大で規定量L1突出した状態となる。そして、姿勢変更機構7は、スライド機構3Sにより旋回機構4を幅方向第2側Y2に移動させて、把持機構3Gが把持している対象物品Wを引退位置P1に位置させて収容部22Aに収容させる。
【0033】
本例では、図4に示すように、物品搬送車2の移動軌跡に対して幅方向第1側Y1に第1フェンスF1が設置されており、物品搬送車2の移動軌跡に対して幅方向第2側Y2に第2フェンスF2が設置されている。これら第1フェンスF1及び第2フェンスF2のそれぞれは、上下方向Zにおいて少なくとも把持機構3Gが把持している対象物品Wが存在する領域の一部に備えられている。本実施形態では、第1フェンスF1及び第2フェンスF2のそれぞれは、本体部22の上端より上方側Z1から本体部22の下端より下方側Z2に亘って設置されている。第1フェンスF1は、第1搬送ステーションT11に対応する部分と姿勢変更ステーションT2に対応する部分とを除いて、本体部22の幅方向第1側Y1の端部に対して幅方向第1側Y1に第1設定距離L2の位置(図4において仮想線で示した位置)に設置されている。第2フェンスF2は、本体部22の幅方向第2側Y2の端部に対して幅方向第2側Y2に第2設定距離L3の位置に設置されている。第1設定距離L2及び第2設定距離L3は、規定量L1(対象物品Wの突出量)より小さい値である。なお、本実施形態では、第1フェンスF1及び第2フェンスF2は、対象物品Wが引退位置P1にある状態で旋回したと想定した場合に、その対象物品Wが干渉する位置に設けられている。なお、搬送対象場所6を搬送先とした場合において、当該搬送対象場所6に対応する第1搬送ステーションT11が第1搬送先ステーションに相当し、当該搬送対象場所6に対応する第2搬送ステーションT12が第2搬送先ステーションに相当する(図8図10参照)。
【0034】
姿勢変更ステーションT2には、姿勢変更のためのスペースがある。具体的には、姿勢変更ステーションT2は、移動可能経路Rにおける、物品搬送車2の移動軌跡に対して幅方向Yに規定量L1以上広がったスペースであって搬送方向X(移動可能経路Rの延在方向)に収容部22Aの長さ以上広がったスペースが確保された場所に設定されている。本実施形態では、姿勢変更ステーションT2に対応する領域において、第1フェンスF1は、本体部22の幅方向第1側Y1の端部に対して幅方向第1側Y1に第3設定距離L4の位置(図4において実線で示した位置)に設置されている。第3設定距離L4は、規定量L1より大きい値である。そして、このような第1フェンスF1における姿勢変更ステーションT2に対応する部分は、搬送方向Xにおいて収容部22Aの長さより長い。このように姿勢変更ステーションT2に対応させて第1フェンスF1を設置することで、姿勢変更ステーションT2に、姿勢変更機構7による対象物品Wの姿勢変更のためのスペースが確保されている。
【0035】
図8図10に示すように、複数の搬送ステーションT1には、姿勢変更のためのスペースがある第1搬送ステーションT11と、姿勢変更のためのスペースがない第2搬送ステーションT12とが含まれている。第1搬送ステーションT11に対応する領域において、第1フェンスF1は、姿勢変更ステーションT2に対応する部分と同様に、本体部22の幅方向第1側Y1の端部に対して幅方向第1側Y1に第3設定距離L4の位置(図4において実線で示した位置)に設置されている。これに対して、第2搬送ステーションT12に対応する領域において、第1フェンスF1は、本体部22の幅方向第1側Y1の端部に対して幅方向第1側Y1に第1設定距離L2の位置に設置されている。そのため、第1搬送ステーションT11には、姿勢変更機構7による対象物品Wの姿勢変更のためのスペースが確保されているが、第2搬送ステーションT12には、姿勢変更機構7による対象物品Wの姿勢変更のためのスペースが確保されていない。
【0036】
1-2.制御装置の構成
図5に示すように、制御装置Hは、物品搬送設備1の全体の制御を行う上位制御装置HUと、物品搬送車2の制御を行う下位制御装置HDと、を含んで構成されている。上位制御装置HUは、物品搬送設備1のいずれかの場所に設置されている。下位制御装置HDは、物品搬送車2に配置されて当該物品搬送車2と共に移動可能経路Rに沿って移動する。制御装置Hは、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ等の周辺回路等を備えている。そして、これらのハードウェアと、コンピュータ等のプロセッサ上で実行されるプログラムと、の協働により、制御装置Hの各機能が実現される。
【0037】
制御装置Hは、複数の搬送対象場所6のそれぞれについての対象物品Wの適正な姿勢を適正姿勢情報JAとして記憶している。適正姿勢情報JAは、上位制御装置HUに記憶されていても良いし、複数の下位制御装置HDのそれぞれによって各別に記憶されていても良い。本実施形態では、上位制御装置HUが記憶部を備え、複数の搬送対象場所6のそれぞれについての対象物品Wの適正な姿勢を適正姿勢情報JAとして当該記憶部に記憶している。すなわち、上位制御装置HUは、複数の搬送対象場所6のそれぞれでの対象物品Wの第2姿勢A2を記憶部に記憶している。
【0038】
制御装置Hは、移動可能経路Rにおける複数の搬送ステーションT1の位置及び複数の姿勢変更ステーションT2の位置をステーション情報JBとして記憶している。また、制御装置Hは、搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1が第1搬送ステーションT11であるか第2搬送ステーションT12であるかを示す情報を含む対象場所情報JCを記憶している。ステーション情報JBや対象場所情報JCは、上位制御装置HUに記憶されていても良いし、複数の下位制御装置HDのそれぞれによって各別に記憶されていても良い。本実施形態では、上位制御装置HUは、ステーション情報JBや対象場所情報JCを記憶部に記憶している。
【0039】
上記のとおり、物品搬送車2は、移動可能経路Rに沿って複数設置された被検出体U(図3参照)を検出する検出装置としての位置検出センサSE6を備えている。物品搬送車2は、位置検出センサSE6が読み取った位置情報を随時、上位制御装置HUに送信する。上位制御装置HUは、移動可能経路Rに存在する複数の物品搬送車2から送信された位置情報に基づいて、移動可能経路Rにおける複数の物品搬送車2のそれぞれの位置を取得する。このように、制御装置Hは、複数の物品搬送車2のそれぞれの位置を取得可能に構成されている。
【0040】
下位制御装置HDは、速度検出センサSE1によって検出される物品搬送車2の走行速度の情報、スライド量検出センサSE2によって検出されるスライド部3SAのスライド量の情報、昇降量検出センサSE3によって検出される把持部3GAの昇降量の情報、把持検出センサSE4によって検出される一対の把持爪3GBの姿勢の情報、旋回量検出センサSE5によって検出される把持部3GAの旋回量の情報、及び位置検出センサSE6によって検出される物品搬送車2の現在位置の情報を、取得する。そして、下位制御装置HDは、各センサによって検出された情報に基づいて、走行用モータ21M、スライド用モータ3SM、昇降用モータ3HM、把持用モータ3GM、及び旋回用モータ4Mの作動を制御する。
【0041】
図6の搬送制御のフローチャートに示すように、制御装置Hは、対象物品Wを搬送元の搬送対象場所6から搬送先の搬送対象場所6に搬送する場合、現在位置から搬送元の搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1まで物品搬送車2を走行させた後に搬送元の搬送対象場所6から収容部22Aに対象物品Wを移載する掬い処理を実行(S1)する。次に、制御装置Hは、搬送先の搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1まで物品搬送車2を走行させた後に収容部22Aから搬送先の搬送対象場所6に対象物品Wを移載する卸し処理を実行する(S2)。そして、制御装置Hは、搬送元の搬送対象場所6での対象物品Wの姿勢(第1姿勢A1)と搬送先の搬送対象場所6での対象物品Wの姿勢(第2姿勢A2)とが異なるために対象物品Wの姿勢変更を行う必要がある場合は、搬送対象場所6から収容部22Aに対象物品Wを移載した後、収容部22Aから搬送先の搬送対象場所6に対象物品Wを移載する前に、姿勢変更制御を実行する。本実施形態では、制御装置Hは、卸し処理において姿勢変更制御を実行する。
【0042】
制御装置Hは、卸し処理では、搬送元の搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1から搬送先の搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1まで物品搬送車2が走行する搬送経路RTを設定する設定制御を実行する。以下に、設定制御を含む卸し処理について説明する。以下の説明において、最短経路とは、搬送元の搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1から搬送先の搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1まで走行することが可能な複数の経路のうちで、物品搬送車2が搬送先の搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1まで最も早期に到達可能な経路としている。例えば、搬送元の搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1を物品搬送車2の現在位置とし、搬送先の搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1が第2搬送ステーションT12の場合は、最短経路は、物品搬送車2の現在位置から第2搬送ステーションT12までの複数の経路の内で最も早期に物品搬送車2が第2搬送ステーションT12に到達可能な経路である。ここで、最短経路の決定基準としては、様々な基準を用いることができる。例えば、複数の経路の内で、物品搬送車2の走行距離が最も短い経路を最短経路とするという基準を用いることができる。或いは、複数の経路のそれぞれにおける物品搬送車2の走行距離に加えて、各経路の渋滞の程度を考慮して、搬送先の搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1に到達するまでに要する時間を予想し、その予想時間が最も短い経路を最短経路とするという基準を用いることができる。更には、複数の経路のそれぞれについて、過去の物品搬送車2の走行の実績に基づいて、搬送先の搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1に到達するまでに要する時間を予想し、その予想時間が最も短い経路を最短経路とするという基準を用いることもできる。
【0043】
制御装置Hは、第1姿勢A1と第2姿勢A2とが同じ姿勢であるため対象物品Wの姿勢変更を行う必要がない場合は、設定制御において、最短経路に姿勢変更ステーションT2が含まれるか否かに関わらず、最短経路を搬送経路RTに設定する。そして、制御装置Hは、現在位置から搬送先の搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1まで、搬送経路RTに沿って物品搬送車2を走行させる走行制御を実行し、収容部22Aから搬送先の搬送対象場所6に対象物品Wを移載する移載制御を実行する。
【0044】
制御装置Hは、第1姿勢A1と第2姿勢A2とが異なる姿勢であるため対象物品Wの姿勢変更を行う必要がある場合であって、搬送先が第1搬送ステーションT11に対応する搬送対象場所6である場合には、搬送先に対応する第1搬送ステーションT11で姿勢変更を行うように、物品搬送車2を制御する。具体的には、制御装置Hは、対象物品Wの姿勢変更を行う必要がある場合であって、搬送先の搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1が第1搬送ステーションT11であるため当該搬送ステーションT1において対象物品Wの姿勢変更が可能な場合は、設定制御において、最短経路に姿勢変更ステーションT2が含まれるか否かに関わらず、最短経路を搬送経路RTに設定する。そして、制御装置Hは、現在位置から搬送先の搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1まで物品搬送車2を搬送経路RTに沿って走行させる走行制御を実行し、搬送ステーションT1において対象物品Wの姿勢を第1姿勢A1から第2姿勢A2に変更する姿勢変更制御を実行した後、収容部22Aから搬送先の搬送対象場所6に対象物品Wを移載する移載制御を実行する。
【0045】
また、制御装置Hは、第1姿勢A1と第2姿勢A2とが異なる姿勢であるため対象物品Wの姿勢変更を行う必要がある場合であって、搬送先が第2搬送ステーションT12に対応する搬送対象場所6である場合には、移動可能経路Rにおける、物品搬送車2の現在位置から第2搬送ステーションT12までの物品搬送車2の搬送経路RTに姿勢変更ステーションT2が含まれるように、搬送経路RTの設定制御を行い、当該姿勢変更ステーションT2で姿勢変更を行うように、物品搬送車2を制御する。具体的には、制御装置Hは、設定制御において、対象物品Wの姿勢変更を行う必要がある場合であって、搬送先の搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1が第2搬送ステーションT12であるため当該搬送ステーションT1において対象物品Wの姿勢変更が不可能な場合は、設定制御において、姿勢変更ステーションT2が含まれる搬送経路RTに設定する。このとき、制御装置Hは、設定制御において、最短経路に姿勢変更ステーションT2が含まれる場合には、最短経路を搬送経路RTとして設定する。また、制御装置Hは、設定制御において、最短経路に姿勢変更ステーションT2が含まれない場合は、最短経路以外の経路であって、物品搬送車2の現在位置から第2搬送ステーションT12までに少なくとも1つの姿勢変更ステーションT2が含まれる経路の中で最も早期に物品搬送車2が第2搬送ステーションT12に到達可能な経路を搬送経路RTとして設定する。
【0046】
このように、制御装置Hは、設定制御において、搬送経路RTに姿勢変更ステーションT2が含まれるように搬送経路RTを設定した場合は、現在位置から姿勢変更ステーションT2まで物品搬送車2を搬送経路RTに沿って走行させる第1走行制御を実行し、姿勢変更ステーションT2において対象物品Wの姿勢を第1姿勢A1から第2姿勢A2に変更する姿勢変更制御を実行し、姿勢変更ステーションT2から搬送先の搬送対象場所6に対応する搬送ステーションT1まで物品搬送車2を搬送経路RTに沿って走行させる第2走行制御を実行し、収容部22Aから搬送先の搬送対象場所6に対象物品Wを移載する移載制御を実行する。
【0047】
また、制御装置Hは、対象物品Wの姿勢変更を行う必要がある場合であって、搬送先が第2搬送ステーションT12に対応する搬送対象場所6である場合には、搬送先に対応する第2搬送ステーションT12に最も近い姿勢変更ステーションT2で姿勢変更を行うように、物品搬送車2を制御する。具体的には、制御装置Hは、設定制御において、搬送経路RTに姿勢変更ステーションT2が含まれるように搬送経路RTを設定した場合であって、その搬送経路RT上に複数の姿勢変更ステーションT2がある場合には、第1走行制御、姿勢変更制御、第2走行制御を次のように行う。つまり、第1走行制御において、現在位置から複数の姿勢変更ステーションT2のうちの第2搬送ステーションT12に最も近い姿勢変更ステーションT2まで物品搬送車2を搬送経路RTに沿って走行させるように物品搬送車2を制御する。また、姿勢変更制御において、第2搬送ステーションT12に最も近い姿勢変更ステーションT2に物品搬送車2が停止している状態で対象物品Wの姿勢を第2姿勢A2に変更するように物品搬送車2を制御する。第2走行制御において、第2搬送ステーションT12に最も近い姿勢変更ステーションT2から搬送先に対応する第2搬送ステーションT12まで物品搬送車2を搬送経路RTに沿って走行させるように物品搬送車2を制御する。
【0048】
本実施形態では、制御装置Hにおける上位制御装置HUが、設定制御を実行し、その設定制御で設定した搬送経路RTを示す情報を含む搬送指令情報を下位制御装置HDに送信(図5参照)する。そして、下位制御装置HDが、上位制御装置HUから受信した搬送指令情報に基づいて、走行制御、移載制御、第1走行制御、及び第2走行制御を実行する。次に、卸し制御について、図7に示す卸し制御のフローチャート、及び、搬送経路RTの具体例を示す図8から図10に基づいて説明する。なお、卸し制御について説明するにあたり、搬送元の搬送対象場所6については、搬送元6Sと称し、搬送先の搬送対象場所6については、搬送先6Gと称して説明する。
【0049】
制御装置Hは、搬送元6Sと搬送先6Gのそれぞれについての適正姿勢情報JA、ステーション情報JB、及び対象場所情報JCに基づいて、物品搬送車2が走行する搬送経路RTを設定する設定制御(S21)を実行する。更に本実施形態では、制御装置Hは、上述したような最短経路を決定するための決定基準にも基づいて、設定制御(S21)を実行する。
【0050】
この設定制御において、第1姿勢A1(搬送元における対象物品Wの姿勢)と第2姿勢A2(搬送先における対象物品Wの姿勢)とが同じ場合は、対象物品Wの姿勢変更を行う必要がないため、制御装置Hは、図8に一点鎖線で示すように、搬送経路RT上に姿勢変更ステーションT2があるか否かに関わらず、搬送元6Sから搬送先6Gまでの最短経路を搬送経路RTに設定する。
【0051】
また、設定制御において、第1姿勢A1と第2姿勢A2とが異なり、且つ、搬送先6Gに対応する搬送ステーションT1が第1搬送ステーションT11である場合は、対象物品Wの姿勢変更を行う必要があるが、搬送先6Gに対応する搬送ステーションT1で対象物品Wの姿勢変更が可能であるため、図9に一点鎖線で示すように、搬送経路RT上に姿勢変更ステーションT2があるか否かに関わらず、搬送元6Sから搬送先6Gまでの最短経路を搬送経路RTに設定する。
【0052】
また、設定制御において、第1姿勢A1と第2姿勢A2とが異なり、且つ、搬送先6Gに対応する搬送ステーションT1が第2搬送ステーションT12である場合は、対象物品Wの姿勢変更を行う必要があると共に、搬送先6Gに対応する搬送ステーションT1で対象物品Wの姿勢変更が不可能であるため、図10に一点鎖線で示すように、姿勢変更ステーションT2がある搬送元6Sから搬送先6Gまでの経路を搬送経路RTに設定する。つまり、搬送元6Sから搬送先6Gまでの最短経路を搬送経路RT(図10に二点鎖線で示す搬送経路RT)とした場合には、この経路上に姿勢変更ステーションT2がないため、このような経路は搬送経路RTとして選択せずに、最短経路に比べて搬送先6Gに到達するまでの期間が長い経路であっても、途中に姿勢変更ステーションT2がある経路を搬送経路RTとして選択する。また、このように設定した搬送経路RTに複数の姿勢変更ステーションT2が含まれている場合には、それら複数の姿勢変更ステーションT2のうちの搬送先6Gに最も近い姿勢変更ステーションT2(図10において搬送経路RT上にある2つの姿勢変更ステーションT2のうち白丸印を付けた姿勢変更ステーションT2)を、対象物品Wの姿勢変更に使用する姿勢変更ステーションT2に設定する。
【0053】
以上のように、制御装置Hは、以下のような手順で卸し制御を実行する。すなわち、制御装置Hは、設定制御において搬送経路RTを設定(S21)した後、第1姿勢A1と第2姿勢A2とが同じ場合(S22:Yes)は、走行制御を実行(S23)し、次に移載制御を実行(S24)して、対象物品Wを搬送先6Gに搬送する。また、制御装置Hは、設定制御において搬送経路RTを設定(S21)した後、第1姿勢A1と第2姿勢A2とが異なっている場合(S22:No)であって、搬送先6Gに対応する搬送ステーションT1が第1搬送ステーションT11である場合(S25:Yes)は、走行制御を実行(S26)し、次に第1搬送ステーションT11において姿勢変更制御を実行(S27)し、その後、移載制御を実行(S24)して、対象物品Wを搬送先6Gに搬送する。また、制御装置Hは、設定制御において搬送経路RTを設定(S21)した後、第1姿勢A1と第2姿勢A2とが異なっている場合(S22:No)であって、搬送先6Gに対応する搬送ステーションT1が第2搬送ステーションT12である場合(S25:No)は、第1走行制御を実行(S28)し、次に姿勢変更ステーションT2において姿勢変更制御を実行(S29)し、更に第2走行制御を実行(S30)し、その後、移載制御を実行(S24)して、対象物品Wを搬送先6Gに搬送する。
【0054】
2.その他の実施形態
次に、物品搬送設備のその他の実施形態について説明する。
【0055】
(1)上記の実施形態では、図4に示すように、姿勢変更機構7が、対象物品Wを収容部22Aから幅方向Yに規定量L1突出させた状態で姿勢変更を行う構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、姿勢変更機構7が、対象物品Wを収容部22Aから下方側Z2に突出させた状態で姿勢変更を行う構成としてもよい。この場合、対象物品Wの少なくとも一部を収容部22Aから下方側Z2に突出させた状態でもよく、対象物品Wの全体を収容部22Aから下方側Z2に突出させた状態でもよい。なお、この場合、姿勢変更機構7は、昇降機構3Hと旋回機構4とを備えて構成すると好適である。
【0056】
(2)上記の実施形態では、図4に示すように、姿勢変更機構7が対象物品Wの姿勢変更を行う場合に、対象物品Wの略全体が収容部22Aから幅方向Yに突出する構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、姿勢変更機構7が対象物品Wの姿勢変更を行う場合に、対象物品Wの1/4から1/2が収容部22Aから幅方向Yに突出する構成や、対象物品Wの1/4以下が収容部22Aから幅方向Yに突出する構成とする等、姿勢変更機構7が対象物品Wの姿勢変更を行う場合の、対象物品Wの収容部22Aから幅方向Yに突出する量は適宜変更してもよい。例えば、図11に示すように、対象物品Wが引退位置P1にある状態で旋回機構4によって対象物品Wを旋回させたとしても対象物品Wがカバー部22Bに接触しないように、カバー部22Bを構成した場合において、姿勢変更機構7が、対象物品Wが引退位置P1にある状態で旋回機構4によって対象物品Wを旋回させることで、対象物品Wの姿勢変更を行い、この姿勢変更中に、対象物品Wの一部が収容部22Aから幅方向Yに突出するような構成であってもよい。
【0057】
(3)上記の実施形態では、姿勢変更機構7が対象物品Wの姿勢変更を行う場合に、対象物品Wが収容部22Aから幅方向第1側Y1のみに突出する構成を例として説明した。しかし、このような限定されない。例えば、幅方向第1側Y1と幅方向第2側Y2との双方に把持部3GAをスライド移動させることが可能なようにスライド機構3Sを構成し、姿勢変更機構7が対象物品Wの姿勢変更を行う場合に、対象物品Wが収容部22Aから幅方向第1側Y1と幅方向第2側Y2とに選択的に突出可能な構成としてもよい。
【0058】
(4)上記の実施形態では、物品搬送車2が搬送ステーションT1にある状態で、スライド機構3Sと昇降機構3Hとのうちの昇降機構3Hのみによって対象物品Wを搬送対象場所6に移載する構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、物品搬送車2が搬送ステーションT1にある状態で、スライド機構3Sと昇降機構3Hとの双方によって対象物品Wを搬送対象場所6に移載する構成としてもよい。
【0059】
(5)上記の実施形態では、対象物品Wの姿勢を変更する必要がある場合であって、搬送経路RT上に複数の姿勢変更ステーションT2がある場合は、搬送先に対応する第2搬送ステーションT12に最も近い姿勢変更ステーションT2で姿勢変更を行う構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、対象物品Wの姿勢を変更する必要がある場合であって、搬送経路RT上に複数の姿勢変更ステーションT2がある場合に、搬送元に対応する第2搬送ステーションT12に最も近い姿勢変更ステーションT2で姿勢変更を行う等、搬送先に対応する第2搬送ステーションT12に最も近い姿勢変更ステーションT2以外の姿勢変更ステーションT2で姿勢変更を行うようにしてもよい。
【0060】
(6)上記の実施形態では、設定制御において、物品搬送車2が最も早期に第2搬送ステーションT12に到達可能な経路を搬送経路RTとして設定する構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、現在位置から第2搬送ステーションT12までの経路として予め設定された経路を搬送経路RTとして設定する等、最も早期に物品搬送車2が第2搬送ステーションT12に到達可能な経路以外の経路を搬送経路RTとして設定する構成としてもよい。
【0061】
(7)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0062】
3.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した物品搬送設備の概要について説明する。
【0063】
物品搬送設備は、移動可能経路に沿って走行して対象物品を搬送元から搬送先に搬送する物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備え、前記搬送先となる複数の搬送対象場所が前記移動可能経路に沿って設置され、
前記移動可能経路における複数の前記搬送対象場所のそれぞれに対応する位置に搬送先ステーションが設定されていると共に、前記移動可能経路における前記搬送対象場所に対応しない位置に姿勢変更ステーションが設定され、前記物品搬送車は、前記対象物品を収容する収容部と、移載機構と、姿勢変更機構と、を備え、前記移載機構は、前記物品搬送車が前記搬送先ステーションに停止している状態で、前記収容部から前記搬送対象場所に前記対象物品を移載し、前記姿勢変更機構は、前記収容部に収容されている前記対象物品の少なくとも一部を前記収容部から突出させた状態で前記対象物品の姿勢変更を行う機構であり、複数の前記搬送先ステーションには、前記姿勢変更のためのスペースがある第1搬送先ステーションと、前記姿勢変更のためのスペースがない第2搬送先ステーションと、が含まれ、前記姿勢変更ステーションには、前記姿勢変更のためのスペースがあり、前記制御装置は、前記対象物品の前記姿勢変更を行う必要がある場合であって、前記搬送先が前記第1搬送先ステーションに対応する前記搬送対象場所である場合には、前記搬送先に対応する前記第1搬送先ステーションで前記姿勢変更を行い、前記搬送先が前記第2搬送先ステーションに対応する前記搬送対象場所である場合には、前記移動可能経路における、前記物品搬送車の現在位置から前記第2搬送先ステーションまでの前記物品搬送車の搬送経路に前記姿勢変更ステーションが含まれるように、前記搬送経路の設定制御を行い、当該姿勢変更ステーションで前記姿勢変更を行うように、前記物品搬送車を制御する。
【0064】
本構成によれば、搬送先が第1搬送先ステーションに対応する搬送対象場所であり、搬送対象場所に対応する搬送先ステーションにおいて姿勢変更が可能な場合は、制御装置は、物品搬送車を第1搬送先ステーションに走行させ、当該第1搬送先ステーションにおいて姿勢変更機構によって対象物品の姿勢を変更させた後、移載機構によって対象物品を搬送対象場所に移載する。また、搬送先が第2搬送先ステーションに対応する搬送対象場所であり、搬送対象場所に対応する搬送先ステーションにおいて姿勢変更が不可能な場合は、制御装置は、設定制御によって姿勢変更ステーションが含まれる搬送経路を設定して、物品搬送車を姿勢変更ステーションに走行させ、当該姿勢変更ステーションにおいて姿勢変更機構によって対象物品の姿勢を変更させた後、物品搬送車を第2搬送先ステーションに走行させ、移載機構によって対象物品を搬送対象場所に移載する。
【0065】
このように、本構成によれば、搬送先が第1搬送先ステーションに対応する搬送対象場所である場合は、この第1搬送先ステーションで姿勢変更が可能であるため、搬送経路に姿勢変更ステーションが含まれるか否かを考慮することなく、物品搬送車の搬送経路を設定することができる。そのため、例えば、走行距離が最も短くなる経路や物品搬送車の渋滞が発生し難い経路を搬送経路として設定したりする等、搬送元から搬送先までの対象物品の搬送を効率的に行うことができる搬送経路を設定し易い。一方、搬送先が第2搬送先ステーションに対応する搬送対象場所である場合には、搬送経路に姿勢変更ステーションが含まれるように搬送経路を設定するため、搬送先ステーションにおいて姿勢変更を行うことができない場合であっても、適切に対象物品の姿勢変更をした上で、搬送先に対象物品を搬送することができる。従って、本構成によれば、搬送元から搬送先までの間で姿勢変更を行う必要がある対象物品の搬送を効率的に行うことが可能となる。
【0066】
ここで、前記姿勢変更ステーションが複数ある場合、前記制御装置は、前記対象物品の前記姿勢変更を行う必要がある場合であって、前記搬送先が前記第2搬送先ステーションに対応する前記搬送対象場所である場合には、前記搬送先に対応する前記第2搬送先ステーションに最も近い前記姿勢変更ステーションで前記姿勢変更を行うように、前記物品搬送車を制御すると好適である。
【0067】
本構成によれば、搬送先に対応する第2搬送先ステーションに最も近い姿勢変更ステーションで姿勢変更を行うことで、この姿勢変更ステーションより搬送経路の上流側にある別の姿勢変更ステーションで姿勢変更する場合に比べて、姿勢変更するタイミングを遅らせることができる。そのため、例えば、対象物品の姿勢変更を行った後に搬送先が変更されたために、対象物品の姿勢を元に戻す必要が生じて2度の姿勢変更を行うことになる、といった事態が生じることを回避し易くなる。
【0068】
また、前記物品搬送車の現在位置から前記第2搬送先ステーションまでの複数の経路の内で最も早期に前記物品搬送車が前記第2搬送先ステーションに到達可能な経路を最短経路として、前記制御装置は、前記設定制御において、前記最短経路に前記姿勢変更ステーションが含まれる場合には、前記最短経路を前記搬送経路として設定し、前記最短経路に前記姿勢変更ステーションが含まれない場合は、前記最短経路以外の経路であって、前記物品搬送車の現在位置から前記第2搬送先ステーションまでに少なくとも1つの前記姿勢変更ステーションが含まれる経路の中で最も早期に前記物品搬送車が前記第2搬送先ステーションに到達可能な経路を前記搬送経路として設定すると好適である。
【0069】
本構成によれば、最短経路に姿勢変更ステーションが含まれる場合には、その最短経路を搬送経路として設定することで、姿勢変更ステーションにおいて対象物品の姿勢を変更しながら、搬送元から搬送先に対象物品を搬送するのに要する時間を短くできる。また、最短経路に姿勢変更ステーションが含まれない場合でも、その最短経路以外の経路であって最も早期に物品搬送車が第2搬送先ステーションに到達可能な経路を搬送経路として設定することで、姿勢変更ステーションにおいて対象物品の姿勢を変更しながら、搬送元から搬送先に対象物品を搬送するのに要する時間が長くなることを抑制できる。
【0070】
また、上下方向視で前記移動可能経路に対して直交する方向を幅方向として、前記姿勢変更機構は、前記対象物品を前記収容部から前記幅方向に規定量突出させた状態で前記姿勢変更を行い、前記姿勢変更ステーションは、前記移動可能経路における、前記物品搬送車の移動軌跡に対して前記幅方向に前記規定量以上広がったスペースであって前記移動可能経路の延在方向に前記収容部の長さ以上広がったスペースが確保された場所に設定されていると好適である。
【0071】
本構成によれば、姿勢変更機構によって姿勢変更をする場合、収容部から幅方向に対象物品が規定量突出する。このような場合において、姿勢変更ステーションは、物品搬送車の移動軌跡に対して幅方向に規定量以上広がったスペースであって移動可能経路の延在方向に収容部の長さ以上広がったスペースが確保された場所に設定されているため、姿勢変更ステーションによる姿勢変更を確実に行うことが可能となっている。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本開示に係る技術は、移動可能経路に沿って走行して対象物品を搬送する物品搬送車と、物品搬送車を制御する制御装置と、を備えている物品搬送設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
2:物品搬送車
3:移載機構
6:搬送対象場所
7:姿勢変更機構
22A:収容部
H:制御装置
L1:規定量
R:移動可能経路
RT:搬送経路
T1:搬送ステーション(搬送先ステーション)
T11:第1搬送ステーション(第1搬送先ステーション)
T12:第2搬送ステーション(第2搬送先ステーション)
T2:姿勢変更ステーション
W:対象物品
Y:幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11