(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】配線部材及び配線部材の組付方法
(51)【国際特許分類】
H01B 7/08 20060101AFI20230307BHJP
H01B 13/012 20060101ALI20230307BHJP
H01B 7/00 20060101ALN20230307BHJP
【FI】
H01B7/08
H01B13/012 Z
H01B7/00 301
(21)【出願番号】P 2019211041
(22)【出願日】2019-11-22
(62)【分割の表示】P 2019548759の分割
【原出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】安田 傑
(72)【発明者】
【氏名】横井 基宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】東小薗 誠
(72)【発明者】
【氏名】後藤 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】白川 純一
(72)【発明者】
【氏名】上 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】野村 康
(72)【発明者】
【氏名】バリラロ ソフィア
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-69866(JP,A)
【文献】特開2000-299019(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0267614(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/08
H01B 7/00
H01B 13/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線状伝送部材と、前記複数の線状伝送部材を扁平に保持するベース部材とを含む扁平配線体と、
前記扁平配線体に設けられ、前記扁平配線体の3次元的な姿勢を認識可能なパターンと、
を備え
、
前記ベース部材は、シート部材を含み、
前記シート部材上に前記複数の線状伝送部材が固定されている、配線部材。
【請求項2】
前記パターンは、グリッド線である、請求項1に記載の配線部材。
【請求項3】
前記グリッド線は前記線状伝送部材を含む、請求項2に記載の配線部材。
【請求項4】
前記グリッド線は前記線状伝送部材が交差している部分を含む、請求項3に記載の配線部材。
【請求項5】
前記グリッド線は色が異なる線を含む、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の配線部材。
【請求項6】
前記パターンがドットの集合である、請求項1に記載の配線部材。
【請求項7】
前記パターンが前記ベース部材における一部の領域のみに設けられている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の配線部材。
【請求項8】
前記パターンが前記ベース部材における全体の領域に設けられている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の配線部材。
【請求項9】
前記パターンとして第1パターン部と、前記第1パターン部よりも細かい第2パターン部とが設けられている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の配線部材。
【請求項10】
前記パターンが前記ベース部材に付与されている、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の配線部材。
【請求項11】
前記扁平配線体は、中間部が持ち上げられたときに端部が垂直に垂れ下がることを抑制可能な剛性を有するように形成されている、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の配線部材。
【請求項12】
複数の線状伝送部材と前記複数の線状伝送部材を扁平に保持するベース部材とを含む扁平配線体と、前記扁平配線体に設けられ、前記扁平配線体の3次元的な姿勢を認識可能なパターンと、を備える配線部材を組付対象に組付ける配線部材の組付方法であって、
前記パターンを認識して正常状態に対する前記パターンの歪みを取得する工程と、
前記パターンの歪みから前記扁平配線体の3次元的な姿勢を取得する工程と、
を備える、配線部材の組付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シート状に形成された機能性外装部材と、長手方向に沿った少なくとも一部の領域で前記機能性外装部材に重なるように配設された電線と、を備え、前記電線の絶縁被覆と前記機能性外装部材とが重なる部分の少なくとも一部が溶着されている、ワイヤーハーネスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで特許文献1に記載のワイヤーハーネスなどの配線部材を車両等に組付ける作業の自動化が望まれている。配線部材を車両等に自動で組付けるにあたって、配線部材における所定の位置を認識することが必要となる場合がある。しかしながら、配線部材は、輸送時に梱包箱内で移動したり、自重によってたわんだりすることによって、所定の形状からずれる場合がある。
【0005】
そこで、配線部材の形状が所定の形状からずれた場合でも、配線部材における所定の位置を認識することを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材は、複数の線状伝送部材と、前記複数の線状伝送部材を扁平に保持するベース部材とを含む扁平配線体と、前記扁平配線体に設けられ、前記扁平配線体の3次元的な姿勢を認識可能なパターンと、を備える、配線部材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、配線部材の形状が所定の形状からずれた場合でも、配線部材における所定の位置を認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態1にかかる配線部材を示す平面図である。
【
図2】
図2は
図1のII-II線に沿って切断した断面図である。
【
図3】
図3は配線部材の中間部が持ち上げられた様子を説明する図である。
【
図4】
図4はパターンを用いて配線部材の姿勢を認識する様子を説明する図である。
【
図5】
図5は実施形態2にかかる配線部材を示す平面図である。
【
図6】
図6は実施形態3にかかる配線部材を示す平面図である。
【
図7】
図7は実施形態4にかかる配線部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の配線部材は、次の通りである。
(1)複数の線状伝送部材と、前記複数の線状伝送部材を扁平に保持するベース部材とを含む扁平配線体と、前記扁平配線体に設けられ、前記扁平配線体の3次元的な姿勢を認識可能なパターンと、を備える、配線部材である。
扁平配線体に設けられたパターンを認識することによって、扁平配線体の3次元的な姿勢を認識できるという作用を生じ、配線部材の形状が所定の形状からずれた場合でも、配線部材における所定の位置を認識することを可能となる。
ここで扁平配線体とは厚み方向の寸法が厚み方向に直交する面方向の寸法よりも小さく形成された配線体である。
(2)前記パターンは、グリッド線であることが好ましい。簡易にパターンを設けることができるからである。
(3)前記グリッド線は前記線状伝送部材を含むことが好ましい。線状伝送部材がグリッド線として用いられている部分について、別途、グリッド線を設けずに済むからである。
(4)前記グリッド線は前記線状伝送部材が交差している部分を含むことが好ましい。線状伝送部材が交差している部分において、線状伝送部材のみでグリッド線を構成できるからである。
(5)前記グリッド線は色が異なる線を含むことが好ましい。回転向きを認識できるからである。
(6)前記パターンがドットの集合であることが好ましい。簡易にパターンを設けることができるからである。
(7)前記パターンが前記ベース部材における一部の領域のみに設けられていることが考えられる。この場合、一部のパターンを省略できる。
(8)前記パターンが前記ベース部材における全体の領域に設けられていることが考えられる。この場合、扁平配線体の全体を認識可能である。
(9)前記パターンとして第1パターン部と、前記第1パターン部よりも細かい第2パターン部とが設けられていることが好ましい。第2パターン部を詳細に認識することができるからである。
(10)前記パターンが前記ベース部材に付与されていることが好ましい。容易にパターンを形成できるからである。
(11)前記扁平配線体は、中間部が持ち上げられたときに端部が垂直に垂れ下がることを抑制可能な剛性を有するように形成されていることが好ましい。配線部材の形状が所定の形状からずれにくくなるからである。
【0010】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
[実施形態1]
以下、実施形態1に係る配線部材について説明する。
図1は実施形態1にかかる配線部材10を示す平面図である。
図2は
図1のII-II線に沿って切断した断面図である。なお
図1においてベース部材26の輪郭とパターン30とを区別するため、ベース部材26の輪郭が実線によって示され、パターン30が二点鎖線によって示されている。
【0012】
配線部材10は、扁平配線体20と、扁平配線体20に設けられたパターン30と、を備える。
【0013】
扁平配線体20は、車両に搭載されて、車両の各機器に電力を供給したり、信号の授受をしたりする部材である。扁平配線体20は、厚み方向の寸法が厚み方向に直交する面方向の寸法よりも小さく形成された配線体である。扁平配線体20は、複数の線状伝送部材22と、複数の線状伝送部材22を扁平に保持するベース部材26とを含む。
【0014】
線状伝送部材22は、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。例えば、線状伝送部材22は、芯線と芯線の周囲の被覆24とを有する一般電線であってもよいし、裸導線、シールド線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。
【0015】
電気を伝送する線状伝送部材22としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材22は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0016】
図2に示す例では、線状伝送部材22は、電気又は光等を伝送する伝送線本体23と、伝送線本体23を覆う被覆24とを含む。線状伝送部材22が一般電線である場合、伝送線本体23は芯線であり、被覆24は絶縁被覆である。また
図2に示す例では、一のベース部材26に同じ径、構造の線状伝送部材22が複数本配設されているが、複数本の線状伝送部材22の径、構造等は適宜設定されていればよく、径、構造等の異なる線状伝送部材22が同じベース部材26に配設されていてもよい。
【0017】
また線状伝送部材22は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(ツイスト線、複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。線状伝送部材22の端部には、線状伝送部材22と相手部材との接続形態に応じて、適宜端子、コネクタC等が設けられる。
【0018】
ベース部材26は、複数の線状伝送部材22を扁平に保つ。ベース部材26は、線状伝送部材22を2次元的に位置決めした状態で保持する部材である。ベース部材26は、シート部材27と、カバー28とを含む。
【0019】
シート部材27の一方主面上に線状伝送部材22が配設されている。シート部材27は、複数の線状伝送部材22を並んだ状態に保持する。シート部材27は、湾曲しつつ複数の線状伝送部材22を平面的に位置決めした状態で保持できる程度の剛性を有する部材であってもよいし、平らな状態を保った状態で複数の線状伝送部材22を2次元的に位置決めした状態で保持できる程度の剛性を有する部材であってもよい。シート部材27は、部分的に壁が立設される等、立体的な形状部分を有していてもよい。ここではシート部材27は曲げ可能な部材であるものとして説明する。
【0020】
シート部材27を構成する材料は特に限定されるものではないが、シート部材27は、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの樹脂を含む材料によって形成される。シート部材27は、不織布、織地、編地など繊維を有する繊維材等であってもよいし、非繊維材であってもよい。非繊維材としては、内部が一様に埋った充実状の部材、または樹脂が発泡成形された発泡体などであってもよい。シート部材27は、金属などの材料を含むこともあり得る。
【0021】
シート部材27は、単層であってもよいし、複数層積層されていてもよい。複数層積層されている場合、例えば、樹脂層と樹脂層とが積層されていることが考えられる。また例えば、樹脂層と金属層とが積層されていることが考えられる。また、シート部材27は、非繊維材層と非繊維材層とが重ねられたものであってもよいし、非繊維材層と繊維材層が重ねられたものであってもよいし、繊維材層と繊維材層とが重ねられたものであってもよい。
【0022】
線状伝送部材22は、シート部材27の主面上において、所定の経路に沿って配設された状態で、シート部材27に固定されている。シート部材27は、線状伝送部材22の経路に沿って延びる帯状に形成されている。シート部材27上における線状伝送部材22の経路は適宜設定されていればよく、線状伝送部材22は、シート部材27上で直線状に配設されていてもよいし、曲がって配設されていてもよい。線状伝送部材22がシート部材27上で曲がって配設されている場合、シート部材27も曲がって形成されていてもよい。複数本の線状伝送部材22は、シート部材27上で分岐したり、交差したりするように異なる経路で配設されていてもよい。この場合、シート部材27も分岐したり、交差したりするように形成されていてもよい。シート部材27が複数の線状伝送部材22の経路に沿った形状に形成されることで、シート部材27と他部品との干渉抑制、軽量化等が可能となる。ここではシート部材27はF字状、つまり帯状部27aの端部及び中間部からそれぞれ帯状部27b、27cが延びる形状に形成されている。
【0023】
線状伝送部材22とシート部材27とは固定されている。係る固定態様として、接触部位固定であってもよいし、非接触部位固定であってもよいし、両者が併用されていてもよい。ここで接触部位固定とは、線状伝送部材22とシート部材27とが接触する部分がくっついて固定されているものである。また、非接触部位固定とは、接触部位固定でない固定態様である。例えば、縫糸、別のシート部材27、粘着テープなどが、線状伝送部材22をシート部材27に向けて押え込んだり、縫糸、別のシート部材27、粘着テープなどが、線状伝送部材22とシート部材27とを囲む状態などとなって、線状伝送部材22とシート部材27とを挟み込んだりして、線状伝送部材22とシート部材27とが固定された状態に維持するものである。以下では、線状伝送部材22とシート部材27とが、接触部位固定の状態にあるものとして説明する。接触部位固定に関する各説明は、適用不可能な構成でない限り、非接触部位固定にも適用可能である。
【0024】
係る接触部位固定の態様として、間接固定であってもよいし、直接固定であってもよいし、異なる領域で両者が併用されていてもよい。ここで間接固定とは、線状伝送部材22とシート部材27とが、その間に設けられた接着剤、粘着剤、両面粘着テープ、面ファスナなどの介在部材を介して間接的にくっついて固定されているものである。また直接固定とは、線状伝送部材22とシート部材27とが別に設けられた接着剤等を介さずに直接くっついて固定されているものである。直接固定では、例えば線状伝送部材22とシート部材27とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶かされることによってくっついて固定されることが考えられる。以下では、線状伝送部材22とシート部材27とが、直接固定の状態にあるものとして説明する。直接固定に関する各説明は、適用不可能な構成でない限り、間接固定にも適用可能である。
【0025】
係る直接固定の状態が形成されるに当たり、樹脂は、例えば、熱によって溶かされることも考えられるし、溶剤によって溶かされることも考えられる。つまり、直接固定の状態としては、熱による直接固定の状態であってもよいし、溶剤による直接固定の状態であってもよい。好ましくは、熱による直接固定の状態であるとよい。
【0026】
このとき直接固定の状態を形成する手段は特に限定されるものではなく、溶着、融着、溶接等の公知の手段を含む各種手段を用いることができる。例えば、溶着によって熱による直接固定の状態を形成する場合、超音波溶着、加熱加圧溶着、熱風溶着、高周波溶着など種々の溶着手段を採用することができる。またこれらの手段によって直接固定の状態が形成されると、線状伝送部材22とシート部材27とは、その手段による直接固定の状態とされる。具体的には、例えば、超音波溶着によって直接固定の状態が形成されると、線状伝送部材22とシート部材27とは、超音波溶着による直接固定の状態とされる。溶着によって熱による直接固定の状態を形成した部分(線状伝送部材22とシート部材27との固定部分)を溶着部、このうち、超音波溶着による固定部分を超音波溶着部、加熱加圧溶着による固定部分を加熱加圧溶着部等と称してもよい。
【0027】
直接固定の場合、線状伝送部材22の被覆24に含まれる樹脂のみが溶けていてもよいし、シート部材27に含まれる樹脂のみが溶けていてもよい。これらの場合において、溶けた方の樹脂が他方の外面にくっついた状態となり、比較的はっきりした界面が形成されることがある。また、直接固定の場合、線状伝送部材22の被覆24に含まれる樹脂とシート部材27に含まれる樹脂の両方が溶けていてもよい。この場合、両方の樹脂が混ざり合ってはっきりした界面が形成されないことがある。特に、線状伝送部材22の被覆24とシート部材27とが、同じ樹脂材料など相溶しやすい樹脂を含む場合などに、両方の樹脂が混ざり合ってはっきりした界面が形成されないことがある。
【0028】
カバー28は、シート部材27に固定されている。カバー28は、シート部材27とは反対側から線状伝送部材22を覆う。カバー28は、線状伝送部材22と固定されていないが、固定されていてもよい。
【0029】
シート部材27及びカバー28は、線状伝送部材22の側方に延出する部分で固定されている。シート部材27とカバー28との固定態様として、
図2に示す例では、接着剤などの介在物を用いない直接固定が示されている。もちろんシート部材27とカバー28との固定態様は、直接固定に限定されるものではなく、シート部材27と線状伝送部材22との固定態様で説明した各種固定態様を用いることができる。
【0030】
シート部材27とカバー28とに同じシート状部材が用いられていてもよいし、異なるシート状部材が用いられていてもよい。ここでは、シート部材27とカバー28とに異なるシート状部材が用いられている。ここではシート部材27に用いられるシート状部材は、カバー28に用いられるシート状部材よりも、線状伝送部材22との固定に適している。カバー28に用いられるシート状部材は、シート部材27に用いられるシート状部材よりも、高剛性であり、形状維持性に優れている。例えばシート部材27は、線状伝送部材22の被覆24と同材料によって充実シート状に形成されて線状伝送部材22が固定される第1層と、不織布によって形成されて第1層に重なる第2層とを有する部材であり、カバー28はナイロンなどによって充実シート状に形成された部材である。
【0031】
カバー28はシート部材27と同様の形状に形成されて、シート部材27全体を覆っている。もちろん、カバー28は、シート部材27と異なる形状に形成されていてもよく、シート部材27の一部を覆うものであってもよい。
【0032】
扁平配線体20は、中間部が持ち上げられたときに端部が垂直に垂れ下がることを抑制可能な剛性を有するように形成されているとよい。扁平配線体20は、ここではカバー28によって剛性が付与され、所定の形状がなるべく維持されるように形成されている。例えば扁平配線体20の形状は、車両へ配設される形態、又はこれに近い形態に維持されているとよい。これにより、車両への配線部材10の組付け時に扁平配線体20を配索する手間を省くことが可能となる。
【0033】
図3に示すように、扁平配線体20は、中間部がロボットRなどによって持ち上げられたとき、換言すると、端部が片持ち梁状に延びるような態様で持ち上げられたとき、当該片持ち梁状の部分が垂れないか、垂れたとしても弓なりに垂れるような剛性を有するとよい。この弓なりの垂れ方は、
図3に示すように、所定部分が持ち上げられて垂れた状態の扁平配線体20がこの扁平配線体20よりも広い台S上に置かれるときに、垂れた部分が台S上で内向きに曲がってその上に別の部分が重なることがないような垂れ方、つまり垂れた部分が台S上で外向きに広がるような垂れ方である。これにより、扁平配線体がロボットRによって運ばれた後に、端部の重なりを直す必要がなくなり、もって組付け作業性の向上を図ることができる。
【0034】
なお扁平配線体20には、輸送時等のために折り畳み可能に形成されている場合もあり得る。扁平配線体20が折り畳まれている状態では、折れ曲がり箇所が扁平配線体20における端部となる。つまり、折り畳まれた状態で、中間部が持ち上げられたときに端部(折れ曲がり箇所)が垂直に垂れ下がることを抑制可能な剛性を有するように形成されているとよい。また折り畳み可能に形成された扁平配線体20が展開された状態では、折り曲げ可能な箇所よりも端部側部分において折り曲げ可能な箇所に近い部分が持ち上げられたときに、端部が垂直に垂れ下がることを抑制可能な剛性を有するように形成されているとよい。
【0035】
パターン30は、扁平配線体20の3次元的な姿勢を認識可能に設けられている。パターン30としては、扁平配線体20が曲がったときに外観が変化するようなパターン30が設けられている。特にパターン30としては、扁平配線体20が表裏方向に曲がったときに外観が変化するようなパターン30が設けられている。パターン30がベース部材26における全体の領域に設けられている。
【0036】
本例ではパターン30は、グリッド線30であるものとして説明する。グリッド線30は、相互に交差する第1、第2の線31、32を含む。第1の線31は、平行に延びる態様で複数設けられている。第2の線32も、平行に延びる態様で複数設けられている。ここでは第1、第2の線31、32は、直交しているが、これ以外の角度で交差していてもよい。またここでは、第1の線31が帯状部27aの延びる方向と同方向に延び、第2の線32が帯状部27b、27cの延びる方向と同方向に延びているが、第1の線31、第2の線32の延びる方向はこれに限られるものではない。第1、第2の線31、32が、帯状部27a、27b、27cの延びる方向と交差する方向に延びていていてもよい。
【0037】
すべてのグリッド線30の色が同じ色であってもよい。またグリッド線30は色が異なる線を含んでいてもよい。例えば、第1の線31の色と第2の線32の色とが相互に異なる色とすることができる。この場合、第1、第2の線31、32の認識が容易となり、配線部材10が所定の位置に位置する状態で面方向における回転(厚み方向に沿って延びる軸回りの回転)の向きを認識することが容易となる。また例えば、複数の第1の線31の中に、異なる色の線が含まれていてもよいし、複数の第2の線32の中に、異なる色の線が含まれていてもよい。
【0038】
グリッド線30の線幅、線間隔は、特に限定されるものではない。例えば、グリッド線30の線幅、線間隔は、撮像画像において認識できるものであればよく、撮像画像の解像度、縮尺等によって適宜設定される。またすべてのグリッド線30において線幅、線間隔が同じであってもよいし、一部で異なる部分があってもよい。
【0039】
ここではパターン30がベース部材26に付与されている。パターン30は、例えばベース部材26とは異なる色を呈する部材がベース部材26に付けられることによって形成されていてもよい。この場合、片面粘着テープがベース部材26に貼り付けられていてもよいし、粘着層を有しない帯片がベース部材26に融着されたり、接着剤、両面粘着テープなどによってベース部材26に貼り付けられたりしていてもよいし、塗料が印刷等によってベース部材26に塗られていてもよい。またパターン30は、レーザマーキングによって形成されたものであってもよい。この場合、ベース部材26にレーザ光が照射されることによって、ベース部材26の表面が溶けたり、焦げたりして変色し、パターン30が形成される。
【0040】
本例のようにベース部材26がシート部材27と、カバー28とを含む場合、パターン30はシート部材27に付与されていてもよいし、カバー28に付与されていてもよい。例えばシート部材27の剛性と、カバー28の剛性とが相互に異なる場合、パターン30は、シート部材27とカバー28とのうち高剛性の部材に付与されているとよい。パターン30が崩れにくいからである。
【0041】
パターン30は、扁平配線体20において少なくともコネクタCとコネクタCとの間の中間配線部に設けられている。本例では、パターン30は、コネクタCの位置の近くまで設けられている。具体的には、線状伝送部材22がベース部材26から延出してすぐの位置にコネクタCが設けられており、ベース部材26の縁までグリッド線30が設けられている。もっともコネクタCの縁部がベース部材26に重なるように設けられてパターン30が、コネクタCの位置まで設けられていてもよい。このように、パターン30がコネクタCの位置又はその近くまで設けられていると、パターン30を認識することによってコネクタCの位置を高精度に認識することができる。コネクタCの位置を高精度に認識することが可能になると、組付け作業時にコネクタCの半嵌合を検知することもできる。
【0042】
<配線部材を認識する方法>
次に上記パターン30を用いて配線部材10を認識する方法について説明する。ここでは、配線部材10を車両に組付けるときに、パターン30を用いて配線部材10を認識するものとして説明する。特にここでは、配線部材10を車両に自動で組付けるときに、パターン30を用いて自動で配線部材10を認識するものとして説明する。配線部材10は、輸送時に梱包箱内で移動したり、自重によってたわんだりすることによって、所定の形状からずれる場合がある。パターン30を用いてこのずれを認識することによって、配線部材10における所定の位置に対する作業ミスをなくすことができる。
【0043】
まず、所定の作業ステーションに輸送された配線部材10を撮像する。例えば
図2に示すように、撮像装置80が扁平配線体20に対して法線方向(厚み方向)から撮像する。撮像装置80は、単眼カメラを含むものであってもよいし、ステレオカメラを含むものであってもよい。パターン30は、法線方向からの単眼カメラによる画像認識で認識可能であるとよい。これにより、撮像装置80の構成を簡易にできる。また撮像装置80は、カラー画像を撮像するものであってもよいし、モノクロ画像を撮像するものであってもよい。パターン30において色の異なるグリッド線30が含まれる場合は、撮像装置80は、カラー画像を撮像するものであるとよい。撮像装置80によって撮像された画像は処理装置82に送られる。
【0044】
処理装置82において、撮像画像から扁平配線体20における歪みを取得する。処理装置82は、例えば、マイクロプロセッサ、ROM、RAM等を含んで構成されるコンピュータを備える。マイクロプロセッサ等の演算処理部は、撮像画像におけるパターン30の状態から扁平配線体20における歪みを取得する処理を行う。例えば、撮像画像におけるパターン30の状態と、予め得られた正常状態の配線部材10におけるパターン30の状態との差異を求め、扁平配線体20における歪みを取得する。ここでいう正常状態の配線部材10とは、扁平配線体20の形状がずれていない状態の配線部材10である。
【0045】
例えば撮像画像として
図4に示すような撮像画像が得られた場合について考える。
図4において、実線が撮像画像で得られたグリッド線30であり、二点鎖線が正常状態の配線部材10におけるグリッド線30である。
図4に示す例では、正常状態の配線部材10におけるグリッド線30は、直線状に延びている。これに対して撮像画像で得られたグリッド線30は、角部において曲がって延びている部分を有する。また、グリッド線30間の間隔も変わっている部分を有する。これらのグリッド線30の変化から、扁平配線体20の歪み(ここでは扁平配線体20における表裏方向への曲がり具合)を取得することができ、もって、扁平配線体20の3次元的な姿勢を取得することができる。
【0046】
なお扁平配線体20における曲がりが、表面側への曲がりか、裏面側への曲がりかは例えば、ステレオカメラによって撮像することによって認識可能である。このほか、測距センサを用いることによって単眼カメラでも認識可能である。
【0047】
扁平配線体20の3次元的な姿勢を取得することができると、ロボットR等によって、扁平配線体20における所定の位置を所定の姿勢で高精度に保持することができる。またコネクタCを嵌合する作業の後にパターン30が認識されて、扁平配線体20の3次元的な姿勢を取得することができると、コネクタCの嵌合状態を判定することもできる。具体的には、コネクタCの位置又はその近くまでパターン30が形成されていると、パターン30を認識することによってコネクタCの位置、姿勢等を高精度で推測でき、もってコネクタCの嵌合状態を判定することが可能となる。
【0048】
なおマイクロプロセッサ等の演算処理部は、撮像画像から扁平配線体20における歪みを取得する処理の一部または全部を含むコンピュータプログラムを、ROM、RAM等の記憶部からそれぞれ読み出して実行する。これら複数の装置のコンピュータプログラムは、それぞれ、外部のサーバ装置等からインストールすることができる。また、これら複数の装置のコンピュータプログラムは、それぞれ、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等の記録媒体に格納された状態で流通する。
【0049】
以上のような配線部材10によると、扁平配線体20に設けられたパターン30を認識することによって、扁平配線体20の3次元的な姿勢を認識できるという作用を生じ、配線部材10の形状が所定の形状からずれた場合でも、配線部材10における所定の位置を認識することを可能となる。パターン30がベース部材26における全体の領域に設けられているため、扁平配線体20の全体を認識可能である。パターン30がベース部材26に付与されているため、容易にパターン30を形成できる。
【0050】
パターン30は、グリッド線30であるため、簡易にパターン30を設けることができる。グリッド線30は色が異なる線を含んでいるため、扁平配線体20の回転向きを認識できる。
【0051】
扁平配線体20は、中間部が持ち上げられたときに端部が垂直に垂れ下がることを抑制可能な剛性を有するように形成されているため、配線部材10の形状が所定の形状からずれにくくなる。
【0052】
[実施形態2]
実施形態2に係る配線部材について説明する。
図5は実施形態2にかかる配線部材110を示す平面図である。また
図5には、配線部材110の一部を拡大した図が描かれている。なお、本実施の形態の説明において、これまで説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。以下の各実施形態でも同様である。
【0053】
本例における配線部材110では、パターン30として、第1パターン部34と、第1パターン部34よりも細かい第2パターン部36とが設けられている。これにより、第2パターン部36を詳細に認識することができる。ここでは第2パターン部36におけるグリッド線30の間隔が、第1パターン部34におけるグリッド線30の間隔よりも狭く形成されている。
【0054】
例えば第1パターン部34は、配線部材110において詳細に認識する必要のない部分に形成される。配線部材110において詳細に認識する必要のない部分としては、例えば直線状に延びる部分の中間部、剛性の高い部分などの歪みにくい部分などが挙げられる。これに対して第2パターン部36は、配線部材110において詳細に認識したい部分に形成される。配線部材110において詳細に認識したい部分としては、例えば枝線部、分岐部、端部などが挙げられる。また詳細に認識したい部分としては、組付け作業時に要求される精度が高精度な部分などが挙げられる。
【0055】
[実施形態3]
実施形態3に係る配線部材について説明する。
図6は実施形態3にかかる配線部材210を示す平面図である。
【0056】
本例における配線部材210にでは、パターン30がベース部材26における一部の領域のみに設けられている。この場合、一部のパターン30を省略できる。パターン30を省略できる部分としては、組付け作業時に認識する必要のない部分、又はパターン30が形成された部分を認識することによってその形状を高精度に推測できる部分などが挙げられる。このほか、例えば、実施形態2に係る配線部材110において、第1パターン部34が本例における省略される部分とされ、第2パターン部36が本例におけるパターン30が設けられる部分とされることなども考えられる。
【0057】
[実施形態4]
実施形態4に係る配線部材について説明する。
図7は実施形態4にかかる配線部材310を示す平面図である。
【0058】
本例における配線部材310では、グリッド線30は線状伝送部材22を含む。つまり、線状伝送部材22がグリッド線30として用いられる。線状伝送部材22がグリッド線30として用いられている部分について、別途、グリッド線30を設けずに済む。線状伝送部材22がグリッド線30として用いられる部分において、例えば、カバー28が設けられておらず線状伝送部材22が露出していたり、カバー28として透明なカバー28が設けられたりして、線状伝送部材22を認識可能であるとよい。例えば、線状伝送部材22はシート部材27と異なる色に設定されるとよい。具体的には、線状伝送部材22とシート部材27とは黒色と白色などコントラストが大きい色の組み合わせに設定されるとよい。
【0059】
本例における配線部材310では、グリッド線30は線状伝送部材22が交差している部分を含む。これにより、線状伝送部材22が交差している部分において、線状伝送部材22のみでグリッド線30を構成できる。つまり交差する線状伝送部材22をグリッド線30における第1、第2の線31、32とすることができる。もちろんグリッド線30における第1、第2の線31、32の一方が線状伝送部材22であり、グリッド線30における第1、第2の線31、32の他方が線状伝送部材22とは別にベース部材26に付与された線33である場合もあり得る。この場合、線状伝送部材22とは別にベース部材26に付与された線33が線状伝送部材22上に線状伝送部材22を横切るように設けられていてもよい。
【0060】
[付記]
これまでパターン30がグリッド線30であるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。パターン30がグリッド線30以外のものであってもよい。例えば、
図8に示すように、パターン38はドット39(点状部)の集合であってもよい。このようにパターン38はドットの集合38である場合も簡易にパターン30を設けることができる。
【0061】
またこれまで扁平配線体20が、シート部材27上に線状伝送部材22が固定されたものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。例えば、扁平配線体は、複数の線状導体を2枚のフィルム材で挟み込んで保持するいわゆるフレキシブルフラットケーブルなどであってもよい。
【0062】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0063】
10、110、210、310 配線部材
20 扁平配線体
22 線状伝送部材
23 伝送線本体
24 被覆
26 ベース部材
27 シート部材
27a、27b、27c 帯状部
28 カバー
30 グリッド線(パターン)
31 第1の線
32 第2の線
33 線
34 第1パターン部
36 第2パターン部
38 ドットの集合(パターン)
39 ドット
80 撮像装置
82 処理装置
C コネクタ
R ロボット
S 台