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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20230307BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20230307BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20230307BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20230307BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20230307BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20230307BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20230307BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20230307BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20230307BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20230307BHJP
   H01L 21/22 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
H01L29/78 658B
H01L21/28 301B
H01L21/28 301R
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652S
H01L29/78 652K
H01L29/78 652M
H01L29/78 658E
H01L29/78 652H
H01L29/78 652D
H01L29/86 301D
H01L29/91 F
H01L29/86 301F
H01L29/91 K
H01L29/91 D
H01L29/91 B
H01L21/265 601S
H01L21/265 601A
H01L21/265 601H
H01L21/265 F
H01L21/265 V
H01L21/20
H01L21/22 V
H01L21/22 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020023817
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021129057
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】安西 孝太
(72)【発明者】
【氏名】上野 幸久
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-166150(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0286945(US,A1)
【文献】特表2005-526392(JP,A)
【文献】特開2019-197751(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0341260(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110459473(CN,A)
【文献】特開2018-010970(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0019322(US,A1)
【文献】特開2018-101706(JP,A)
【文献】特開2008-153620(JP,A)
【文献】国際公開第2018/146791(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110313071(CN,A)
【文献】特開2004-327890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/28
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 29/872
H01L 29/861
H01L 21/329
H01L 21/265
H01L 21/20
H01L 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に位置し、n型のIII 族窒化物半導体からなる第1n層と、前記第1n層上に位置し、p型のIII 族窒化物半導体からなる第1p層と、を有した半導体素子の製造方法において、
前記基板上に前記第1n層、前記第1p層を順に形成する第1工程と、
前記第1工程後、前記第1p層表面にイオン注入してイオン注入領域を形成する第2工程と、
前記第2工程後、前記第1p層表面の所定領域に前記第1n層に達する深さの溝を形成して前記第1p層を区画し、前記イオン注入領域はその区画された前記第1p層内に含まれるようにする第3工程と、
前記第3工程後、熱処理をして前記1p層中のp型不純物を拡散させ、前記イオン注入領域下であって前記第1n層表面から所定深さで、かつ、前記第1p層の幅の領域に、p型不純物領域を形成する第4工程と、
を有することを特徴とする半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記第2工程におけるイオン注入は、前記第1p層表面の全面に行う、ことを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記第2工程におけるイオン注入は、前記第3工程において区画が予定される前記第1p層の領域よりも内側の領域に行う、ことを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記半導体素子は、前記溝により第1p層が複数に区画されたショットキーバリアダイオードであり、
前記p型不純物領域は、前記溝の角部に接するように形成する、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記半導体素子は、前記溝をトレンチとするトレンチゲート構造のFETであり、
前記p型不純物領域は、前記溝の角部を覆わないように形成する、
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記半導体素子は、前記溝をトレンチとするトレンチゲート構造のFETであり、
前記p型不純物領域は、前記溝の角部に接するように形成する、
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III 族窒化物半導体からなる半導体素子およびその製造方法に関するものであり、特にイオン注入によってp型不純物領域を形成するものに関する。
【背景技術】
【0002】
n型III 族窒化物半導体からなるn層、p型III 族窒化物半導体からなるp層が順に積層された半導体層を有する構造において、n層の所定領域にp型不純物領域を形成する方法として、特許文献1に記載の方法がある。
【0003】
特許文献1には、以下のようにしてp型不純物領域を形成することが記載されている。まず、n層上にp層を積層する。次に、p層表面の所定領域にp型不純物またはn型不純物をイオン注入してイオン注入領域を形成する。次に、熱処理することによりp層中のp型不純物をイオン注入領域下のn層中に拡散させる。これによりイオン注入領域下のn層中にp型不純物領域を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-197751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、発明者らの検討によると、p型不純物領域はイオン注入領域下方だけでなく水平方向にも広く形成されてしまうことがわかった。そのため、意図しない領域にもp型不純物領域が形成されてしまうことがわかった。
【0006】
そこで本発明の目的は、イオン注入によってn層中の意図した領域にp型不純物領域を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板と、基板上に位置し、n型のIII 族窒化物半導体からなる第1n層と、第1n層上に位置し、p型のIII 族窒化物半導体からなる第1p層と、を有した半導体素子の製造方法において、基板上に第1n層、第1p層を順に形成する第1工程と、第1工程後、第1p層表面にイオン注入してイオン注入領域を形成する第2工程と、第2工程後、第1p層表面の所定領域に第1n層に達する深さの溝を形成して第1p層を区画し、イオン注入領域はその区画された第1p層内に含まれるようにする第3工程と、第3工程後、熱処理をして1p層中のp型不純物を拡散させ、イオン注入領域下であって第1n層表面から所定深さで、かつ、第1p層の幅の領域に、p型不純物領域を形成する第4工程と、を有することを特徴とする半導体素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、イオン注入後、熱処理前に溝を形成しているので、意図した領域にp型不純物領域を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の半導体素子の構成を示した図。
図2】トレンチ20を拡大した図。
図3】実施例1の半導体素子の製造工程を示した図。
図4】実施例1の半導体素子の製造工程を示した図。
図5】変形例1-1の半導体素子の構成を示した図。
図6】変形例1-2の半導体素子の構成を示した図。
図7】変形例1-3の半導体素子の構成を示した図。
図8】変形例1-4の半導体素子の構成を示した図。
図9】変形例1-5の半導体素子の構成を示した図。
図10】実施例2の半導体素子の構成を示した図。
図11】溝120を拡大した図。
図12】実施例2の半導体素子の製造工程を示した図。
図13】製造工程の変形例を示した図。
図14】変形例2-1の半導体素子の構成を示した図。
図15】変形例2-2の半導体素子の構成を示した図。
図16】変形例2-3の半導体素子の構成を示した図。
図17】他の変形例の半導体素子の構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1の半導体素子の構成を示した図である。実施例1の半導体素子は、III 族窒化物半導体からなるトレンチ構造のFETであり、図1のように、基板10と、第1n層11と、第1p層12と、p型不純物領域13と、第2n層14と、イオン注入領域15と、ゲート絶縁膜16と、ゲート電極17と、ドレイン電極18と、ソース電極19と、によって構成されている。
【0012】
基板10は、Siがドープされたn-GaNからなる。基板10の材料はGaNに限らず、III 族窒化物半導体を結晶成長可能な導電性材料であれば任意の材料を用いることができる。
【0013】
基板10上には、n-GaNからなる第1n層11、p-GaNからなる第1p層12、n-GaNからなる第2n層14が順に積層されている。各層の不純物濃度は、たとえば次の通りである。第1n層11のSi濃度は、1×1015~2.5×1016/cm3 、第1p層12のMg濃度は、1×1017~2×1019/cm3 、第2n層14のSi濃度は、1×1018~1×1019/cm3 である。また、各層の厚さは、たとえば第1n層11が10μm、第1p層12が1μm、第2n層14が0.2μmである。
【0014】
第2n層14表面の所定領域にはトレンチ20が設けられている。トレンチ20は、第2n層14、第1p層12を貫通して第1n層11に達する深さの溝である。トレンチ20の底面には第1n層11が露出し、側面には第1p層12、第2n層14が露出する。トレンチ20の平面パターンは、たとえばハニカム状であり、第1p層12および第2n層14は正六角形の平面パターンに区画されている。トレンチ20の幅は、たとえば1.6~5μmである。トレンチ20の深さは、第1n層11が露出する深さであれば任意であるが、第2n層14表面から0.1~0.5μmの深さとすることが好ましい。確実に第1n層11を露出させるためである。
【0015】
第1p層12表面近傍には、イオン注入領域15が位置している。イオン注入領域15は、第1p層12表面にMgイオンが注入されたp型の領域であり、p型不純物領域13を形成するための領域である。イオン注入領域15の側面は第1p層12側面よりも内側であり、トレンチ20側面に露出しないように設けられている。トレンチ20側面は素子動作領域であり、イオン注入によりダメージを受けた領域であるイオン注入領域15がトレンチ20側面に露出していると素子動作に悪影響を及ぼす可能性があるためである。
【0016】
p型不純物領域13は、イオン注入領域15下であって第1n層11表面近傍の領域に位置している。p型不純物領域13は、第1p層12およびイオン注入領域15中のMgが拡散したことによって形成された領域である。このp型不純物領域13によって、トレンチ20の角部20aに集中する電界を緩和することができる。p型不純物領域13のMg濃度は、たとえば1×1017~2×1018/cm3 であり、深いほどMg濃度は小さくなる。p型不純物領域13の底面は、基板10側に凸の曲面となっている。また、p型不純物領域13の幅は、トレンチ20によって区画された第1p層12とおよそ同一である。
【0017】
p型不純物領域13の厚さは任意でよいが、次のように設定することが好ましい。トレンチ20の側面と底面の成す角部20aがp型不純物領域13に覆われないような厚さにすることが好ましい(図2参照)。トレンチ20の角部20aが第1n層11と接するようにすることで、その角部20aでチャネルが形成されやすくなり、抵抗の増加を抑制することができる。あるいは、トレンチ20の角部20aがp型不純物領域13に接するような厚さとしてもよい。角部20aがp型不純物領域13に覆われることで、トレンチ20の角部20aでの電界集中をさらに緩和することができ、さらなる耐圧向上や信頼性向上を図ることができる。また、p型不純物領域13の中央部(最も厚い部分)の下面13aが、トレンチ20の底面よりも下方(基板10側)となるようにすることが好ましい。トレンチ20の角部20aへの電界集中をより緩和することができる。
【0018】
ゲート絶縁膜16は、トレンチ20の側面、底面、および上面に沿って膜状に設けられている。ここでトレンチ20の上面とは、第2n層14表面のうちトレンチ20近傍の領域である。ゲート絶縁膜16は、たとえばSiO2 からなる。
【0019】
ゲート電極17は、ゲート絶縁膜16を介してトレンチ20の側面、底面、および上面に沿って膜状に設けられている。ゲート電極17は、たとえばAlからなる。
【0020】
ドレイン電極18は、基板10の裏面に設けられている。ドレイン電極27は、たとえばTi/Alからなる。
【0021】
第2n層14表面であって平面視における中央部には、第2n層14およびイオン注入領域15を貫通して第1p層12に達する深さの溝(リセス)21が設けられている。リセス21の底面には第1p層12が露出している。
【0022】
ソース電極19は、第2n層14表面、リセス21側面および底面に連続して設けられている。ソース電極19は、たとえばTi/Alからなる。ソース電極19は、イオン注入によるダメージのあるp型不純物領域13ではなく、ダメージのない第1p層12と接している。そのため、ソース電極19のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0023】
実施例1の半導体素子では、p型不純物領域13が意図した領域にのみ設けられており、設計通りの素子構造を実現することができる。また、実施例1の半導体素子では、第1p層12表面のn型領域をイオン注入ではなくエピタキシャル成長で形成した第2n層14としているため、Si濃度を制御しやすく、高濃度化が可能である。また、第2n層14にはイオン注入のダメージがないため、高抵抗化などの性能低下の心配がない。そのため、低抵抗化が可能である。
【0024】
次に、実施例1の半導体素子の製造方法について図を参照に説明する。
【0025】
まず、n-GaNからなる基板10上に、MOCVD法により、n-GaNからなる第1n層11、p-GaNからなる第1p層12を順に積層する(図3(a)参照)。そして、第1p層12中のMgを活性化させp型化するための熱処理を行う。
【0026】
次に、第1p層12上にMOCVD法によりAlNからなるスルー膜(図示しない)を形成し、第1p層12表面にMgをイオン注入してイオン注入領域15を形成する。イオン注入する領域は、次々工程において区画が予定されている第1p層12の領域よりも内側となるようにする。イオン注入しない領域に形成するマスクとして、フォトレジストなどを用いることができる。スルー膜は、第1p層12へのイオン注入量を制御するためのものである。イオン注入は、たとえば、500℃、加速電圧230keV、ドーズ量2.3×1014/cm2 で行う。イオン注入後、スルー膜およびマスクは除去する(図3(b)参照)。
【0027】
注入するイオンは、p型不純物であればMg以外を用いてよく、たとえばBeをイオン注入してもよい。また、イオン注入は複数回に分けて行ってもよく、深さ方向のイオン分布をよりよく制御できる。また、イオン注入は、基板10を回転させながら、第1p層12表面に垂直な方向に対して角度を成した方向から行ってもよい。深さ方向における注入したイオンの濃度分布の幅を狭くすることができ、狙いの位置に精度よくイオン注入できる。
【0028】
次に、第1p層12上およびイオン注入領域15上にわたって、MOCVD法によりn-GaNからなる第2n層14を形成する(図3(c)参照)。
【0029】
次に、第2n層14表面の所定領域を第1n層11に達するまでドライエッチングしてトレンチ20を形成する(図3(d)参照)。このトレンチ20によって、第1p層12を所定の領域に区画し、p型不純物領域13を形成したくない領域の第1p層12を除去している。また、イオン注入領域15は、あらかじめ区画が予定されている第1p層12の領域よりも内側となるようなパターンとしていたので、イオン注入領域15は区画された第1p層12の内側となる。そのため、トレンチ20の側面にはイオン注入領域15が露出しない。
【0030】
次に、第2n層14上、トレンチ20側面および底面に連続してSiNからなる保護膜(図示しない)を形成し、熱処理を行う。熱処理の雰囲気は不活性ガス雰囲気であればよく、たとえば窒素雰囲気である。また、熱処理温度は1000~1100℃、熱処理時間は5~120分である。この熱処理によって、第1n層11表面側であって、イオン注入領域15下の領域に、第1p層12およびイオン注入領域15に含まれるMgを拡散させる。これにより、イオン注入領域15下であって第1n層11表面から所定深さまでの領域にp型不純物領域13を形成する。その後、保護膜をフッ酸により除去する(図3(e)参照)。
【0031】
ここで、熱処理前にトレンチ20が形成されているため、Mgはこのトレンチ20を超えて横方向には拡散しない。そのため、p型不純物領域13の幅は、トレンチ20によって区画される第1p層12の幅とおよそ同一となる。
【0032】
Mgの基板10側への拡散は、トレンチ20側面に近い側ほど少なくなり、側面から離れるほど多くなる。その結果、p型不純物領域13の底面は、基板10側に凸の曲面になる。
【0033】
なお、p型不純物領域13の厚さについては、イオン注入条件、熱処理条件、第1p層12の厚さ、Mg濃度、などによって制御することができる。たとえば、イオン注入条件においては、ドーズ量を多くすることでp型不純物領域13を厚くすることができる。また、熱処理条件においては、熱処理時間を長くすることでp型不純物領域13を厚くすることができる。
【0034】
p型不純物領域13の厚さの制御によって、トレンチ20の側面と底面の成す角部20aがp型不純物領域13に覆われないようにすることが好ましい。トレンチ20の角部20aが第1n層11と接するようにすることで、その角部20aでチャネルが形成されやすくなり、抵抗の増加を抑制することができる。
【0035】
あるいは、トレンチ20の角部20aがp型不純物領域13に接するようにすることが好ましい。角部20aがp型不純物領域13に覆われることで、トレンチ20の角部20aでの電界集中をさらに緩和することができ、さらなる耐圧向上や信頼性向上を図ることができる。
【0036】
また、p型不純物領域13の厚さの制御によって、p型不純物領域13の最も厚い部分が、トレンチ20の底面よりも基板10側となるようにすることが好ましい。トレンチ20の角部20aへの電界集中をより緩和することができる。
【0037】
次に、第2n層14表面の所定領域を第1p層12に達するまでドライエッチングしてリセス21を形成する(図4(a)参照)。
【0038】
次に、ALD法によって、トレンチ20の底面、側面、および上面に沿って膜状にゲート絶縁膜16を形成する(図4(b)参照)。
【0039】
次に、蒸着やスパッタによって、第2n層14、リセス21側面、およびリセス21底面に連続してソース電極19を形成する。次に、蒸着によって、トレンチ20の底面、側面、および上面にゲート絶縁膜16を介してゲート電極17を形成する。次に、蒸着によって基板10の裏面にドレイン電極18を形成する。以上によって図1に示す実施例1の半導体素子を作製する。
【0040】
以上、実施例1の半導体素子の製造方法によれば、イオン注入後、熱処理前に、第1n層11に達する深さのトレンチ20を形成し、p型不純物領域13を形成したくない領域の第1p層12を除去しているため、第1p層12およびイオン注入領域15のMgがトレンチ20を超えて横方向に拡散しないようにすることができる。その結果、p型不純物領域13を意図した領域に形成することができ、設計通りの素子構造を実現することができる。
【0041】
(実施例1の変形例)
実施例1の半導体素子について各種変形例を図を参照に説明する。
【0042】
(変形例1-1)
リセス21は底面にp型の領域が露出していればよい。そのため、図5のように、リセス21を浅くして底面にイオン注入領域15が露出する深さとしてもよい。ただし、実施例1で述べたように、イオン注入領域15には注入ダメージが形成されている可能性があり、ソース電極19とイオン注入領域15とのコンタクト抵抗が高い可能性があるため、リセス21の深さは第1p層12が露出する深さとすることが好ましい。
【0043】
(変形例1-2)
図6のように、第1p層12と第2n層14との間に、第2p層22を設け、リセス21の深さを第2p層22が露出する深さとしてもよい。ソース電極19を注入ダメージのない第2p層22と接触させることができるので、コンタクト抵抗を小さくすることができる。
【0044】
(変形例1-3)
図7のように、Mgのイオン注入に替えてSiなどのn型不純物をイオン注入することで、p型のイオン注入領域15に替えてn型のイオン注入領域25とすれば、第2n層14を省くことができ、素子構造をより簡素化することができ、製造コストの低減が可能となる。なお、n型のイオン注入領域25とした場合も、その下の不純物領域はn型ではなく、実施例1と同様にp型不純物領域13となる。
【0045】
(変形例1-4)
また変形例1-3の場合において、図8のように、第1p層12表面にn型不純物をイオン注入しない領域を残しておき、その残存した第1p層12表面とイオン注入領域25とに連続してソース電極19を設けてもよい。リセス21を設ける必要がなく、素子構造をより簡素化することができ、製造コストの低減が可能となる。また、リセス21による段差がなくなるため、ソース電極19を形成する際のフォトパターンの精度が向上し、ソース電極19の被覆性不良のおそれがなくなる。
【0046】
(変形例1-5)
また変形例1-3の場合において、図9のように、第1p層12表面へのn型不純物のイオン注入と、p型不純物のイオン注入の2回のイオン注入を行うことで、n型のイオン注入領域26とp型のイオン注入領域27を形成し、そのイオン注入領域26、27に連続してソース電極19を設けてもよい。p型のイオン注入領域27のMg濃度を制御可能としており、アクセプタ濃度の高いイオン注入領域27を形成可能となるため、コンタクト抵抗を小さくすることができる。また、リセス21を設ける必要がないので、変形例1-4と同様の効果を得ることができる。
【実施例2】
【0047】
図10は、実施例2の半導体素子の構成を示した図である。実施例2の半導体素子は、III 族窒化物半導体からなるMPS(Merged PIN Schottky)構造のSBD(ショットキーバリアダイオード)であり、基板100と、n層101と、第1p層102と、p型不純物領域103と、第2p層104と、イオン注入領域105と、第1電極106と、第2電極107と、裏面電極108と、によって構成されている。
【0048】
基板100は、Siがドープされたn-GaNからなる。基板100の材料はGaNに限らず、III 族窒化物半導体を結晶成長可能な導電性材料であれば任意の材料を用いることができる。
【0049】
基板100上には、n-GaNからなるn層101、p-GaNからなる第1p層102、p-GaNからなる第2p層104が順に積層されている。第2p層104のMg濃度は、第1p層102のMg濃度よりも高く設定されている。たとえば、第1p層102のMg濃度は、1×1017~2×1019/cm3 、第2p層104のMg濃度は、Mg濃度は、1×1018~5×1020/cm3 である。
【0050】
第2p層104表面の所定領域には溝120が設けられている。溝120は、第2p層104、第1p層102を貫通してn層101に達する深さの溝である。この溝200により、第1p層102および第2p層104は複数に区画されている。
【0051】
第1p層102表面近傍には、イオン注入領域105が位置している。イオン注入領域105は、第1p層102表面にMgイオンが注入されたp型の領域であり、p型不純物領域13を形成するための領域である。イオン注入領域105の側面は第1p層102側面よりも内側であり、溝120側面に露出しないように設けられている。ただし、溝120側面に露出していてもかまわない。
【0052】
p型不純物領域103は、イオン注入領域105下であってn層101表面近傍の領域に位置している。p型不純物領域103は、第1p層102およびイオン注入領域105中のMgが拡散したことによって形成された領域である。このp型不純物領域103によって、溝120の角部に集中する電界を緩和することができ、逆バイアス印加時ののリーク電流をより抑制することができる。p型不純物領域103のMg濃度は、たとえば1×1017~2×1018/cm3 であり、深いほどMg濃度は小さくなる。p型不純物領域103の底面は、基板100側に凸の曲面となっている。また、p型不純物領域103の幅は、溝120によって区画された第1p層102とおよそ同一である。
【0053】
p型不純物領域103の厚さは任意でよいが、溝120底面と側面が成す角部120aがp型不純物領域103に接するような厚さにすることが好ましい(図11)。溝120の角部における電界集中をより抑制することができる。
【0054】
第1電極106は、第2p層104表面、溝120側面、および底面に沿って膜状に設けられている。第1電極106は、n層101に対してショットキー接合する材料であり、たとえばNi、Pd、Wなどである。
【0055】
第2電極107は、第1電極106上にその凹凸に沿って膜状に設けられている。第2電極107は、たとえばAlからなる。
【0056】
裏面電極108は、基板10の裏面に設けられている。ドレイン電極27は、基板10に対してオーミック接合する材料であり、たとえばTi/Alからなる。
【0057】
以上、実施例2の半導体素子では、p型不純物領域103が意図した領域にのみ設けられており、設計通りの素子構造を実現することができる。また、実施例2の半導体素子では、半導体層の上面をエピタキシャル成長で形成した第2p層104としているため、Mg濃度を制御しやすく、高濃度化が可能である。また、第2p層104にはイオン注入のダメージがないため、高抵抗化などの素子性能低下の心配がない。そのため、半導体素子の低抵抗化が可能である。
【0058】
次に、実施例2の半導体素子の製造方法について図を参照に説明する。
【0059】
まず、n-GaNからなる基板100上にMOCVD法によりn-GaNからなるn層101、p-GaNからなる第1p層102を順に積層する(図12(a)参照。)。そして、第1p層12中のMgを活性化させp型化するための熱処理を行う。
【0060】
次に、第1p層102上にMOCVD法によりAlNからなるスルー膜(図示しない)を形成し、第1p層102表面の所定領域にMgをイオン注入してイオン注入領域105を形成する。イオン注入しない領域に形成するマスクとして、フォトレジストなどを用いることができる。イオン注入する領域やイオン注入条件は実施例1と同様である。イオン注入後、スルー膜およびマスクは除去する(図12(b)参照)。
【0061】
なお、マスクによってイオン注入する領域を制限することなく、第1p層102の全面にイオン注入してもよい(図13参照)。
【0062】
次に、第1p層102上およびイオン注入領域105上に、MOCVD法によりp-GaNからなる第2p層104を形成する(図12(c)参照)。
【0063】
次に、第2p層104表面の所定領域をn層101に達するまでドライエッチングして溝120を形成する(図12(d)参照)。この溝120によって、第1p層102および第2p層104を区画し、p型不純物領域103を形成したくない領域の第1p層102および第2p層104を除去している。
【0064】
次に、第2p層104上、溝120側面、および底面に連続してSiNからなる保護膜(図示しない)を形成し、熱処理を行う。熱処理条件は実施例1と同様である。この熱処理によって、第1n層101表面側であって、イオン注入領域105下の領域に、第1p層102およびイオン注入領域105に含まれるMgを拡散させる。これにより、イオン注入領域105下であって第1n層101表面から所定深さまでの領域にp型不純物領域103を形成する。その後、保護膜をフッ酸により除去する(図12(e)参照)。
【0065】
ここで、熱処理前に溝120が形成されているため、Mgはこの溝120を超えて横方向には拡散しない。そのため、p型不純物領域103の幅は、溝120によって区画される第1p層102の幅とおよそ同一となる。
【0066】
p型不純物領域103の底面は、実施例1の場合と同様の理由により、基板100側に凸の曲面になる。
【0067】
p型不純物領域103の厚さの制御によって、溝120の側面と底面の成す角部120aがp型不純物領域103に接するようにすることが好ましい。溝120の角部120aへの電界集中をより緩和することができる。なお、p型不純物領域103の厚さの制御は、実施例1のp型不純物領域13の厚さ制御と同様にして行うことができる。
【0068】
次に、第2p層104上、溝120の側面、および底面に沿って第1電極106、第2電極107を順に形成する。また、基板100の裏面に裏面電極108を形成する。以上により図9に示す実施例2の半導体素子を作製する。
【0069】
実施例2の半導体素子の製造方法によれば、イオン注入後、熱処理前に、n層101に達する深さの溝120を形成し、p型不純物領域103を形成したくない領域の第1p層102を除去しているため、第1p層102およびイオン注入領域105のMgが溝120を超えて横方向に拡散しないようにすることができる。その結果、p型不純物領域103を意図した領域に形成することができ、設計通りの素子構造を実現することができる。
【0070】
(実施例2の各種変形例)
次に、実施例2の半導体素子の各種変形例について説明する。
【0071】
(変形例2-1)
実施例2の半導体素子において、図14のように、第2p層104を省いてもよい。素子構造をより簡素化することができ、製造コストの低減が可能となる。この場合、第1電極106とのコンタクト抵抗が大きくなるおそれがあるため、第1p層102やイオン注入領域105のMg濃度を実施例2に比べて高くすることが好ましい。
【0072】
(変形例2-2)
変形例2-1において、図15のように、第1電極106とイオン注入領域105の間、あるいは第1電極106と第1p層102との間に、別途第4電極109を設けてもよい。n型に接触する第1電極106とp型に接触する第4電極とでそれぞれに適した電極設計が可能となり、設計自由度が向上する。第4電極109には、p-GaNに対してオーミック接合可能な材料が好ましく、たとえばNi、Pdなどを用いることができる。変形例2-2は、実施例2に対しても同様に適用することができ、第1電極106と第2p層104との間に、第4電極109を設ければよい。
【0073】
(変形例2-3)
変形例2-1の半導体素子において、図16のように、イオン注入する不純物をp型不純物ではなく、Siなどのn型不純物として、p型のイオン注入領域105に替えてn型のイオン注入領域115としてもよい。あるいは、第1p層102やイオン注入領域105のMg濃度を変形例2-1よりも小さくしてもよい。JBS(Junction Barrier Schottky)構造のSBDを実現できる。
【0074】
(その他の変形例)
実施例1、2では、溝によって第1p層が正六角形の平面パターンに区画されるものとしたが、長方形、その他多角形、円形、それらの組み合わせなど任意のパターンとすることができる。第1p層の面積やイオン注入領域の面積が広いほどp型不純物領域を厚くすることができるので、素子の耐圧や抵抗を平面パターンによって設計することができる。
また、区画された各第1p層全てにp型不純物領域を設ける必要はなく、たとえば1つ飛ばしにp型不純物領域を設けて隣接しないようにしたり、2つ飛ばしでp型不純物領域を設けたり、ランダムにp型不純物領域を設けたりしてもよい。電流を流しやすくする区画や耐圧を確保する区画を意図的に設計することができ、素子設計の自由度が向上する。実施例2において1つ飛ばしに設けた例を図17に示す。
【0075】
実施例1、2は、GaNからなる半導体素子であるが、本発明はGaNに限定されるものではなく、AlGaN、InGaN、AlGaInNなどIII 族窒化物半導体からなる半導体素子であれば適用可能である。
【0076】
実施例1はトレンチゲート構造のFET、実施例2はMPS構造またはJBS構造のSBDであったが、本発明はそれらの構造の素子に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の半導体素子は、パワーデバイスなどに好適である。
【符号の説明】
【0078】
10、100:基板
11、101:第1n層
12、102:第1p層
13、103:p型不純物領域
14:第2n層
15、25、26、27、105、115:イオン注入領域
16:ゲート絶縁膜
17:ゲート電極
18:ドレイン電極
19:ソース電極
20:トレンチ
21:リセス
104:第2p層
106:第1電極
107:第2電極
108:第3電極
109:第4電極
120:溝
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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