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特許7238840強熱減量推定装置、強熱減量推定方法、機械学習装置、及び機械学習方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】強熱減量推定装置、強熱減量推定方法、機械学習装置、及び機械学習方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/00 20060101AFI20230307BHJP
   B22C 9/00 20060101ALI20230307BHJP
   B22C 5/04 20060101ALI20230307BHJP
   B22C 5/00 20060101ALI20230307BHJP
   B22D 46/00 20060101ALI20230307BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20230307BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
B22C1/00 L
B22C9/00 E
B22C5/04 D
B22C5/00 A
B22D46/00
G06N20/00
G05B23/02 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020063305
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021159941
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】杉野 剛大
(72)【発明者】
【氏名】花井 崇
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-208781(JP,A)
【文献】特開2004-074245(JP,A)
【文献】特開2004-181486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00
B22C 5/00
B22C 9/00
B22D 46/00
G06N 20/00
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械学習により構築された学習済モデルを用いて、鋳物砂の強熱減量を推定する推定ステップを実行する一又は複数のプロセッサを備えており、
前記学習済モデルの入力は、(1)焙焼期間中に検出した前記鋳物砂の重量に関する砂重量データと、(2)前記鋳物砂の性質に関する砂性質データ、前記鋳物砂に添加された添加物に関する添加物データ、及び、前記焙焼期間中に検出した焙焼環境に関する焙焼環境データの少なくとも何れかと、であり、
前記学習済モデルの出力は、前記強熱減量の推定値、又は、前記焙焼期間よりも長い予め定められた時間に亘って焙焼した後の前記鋳物砂の重量の推定値である、
ことを特徴とする強熱減量推定装置。
【請求項2】
前記砂重量データは、前記焙焼期間の開始時点において検出した前記鋳物砂の重量と、前記焙焼期間の終了時点において検出した前記鋳物砂の重量と、を含み、
前記焙焼期間は、60分よりも短い期間である、
ことを特徴とする請求項1に記載の強熱減量推定装置。
【請求項3】
前記砂性質データには、砂種、サンドメタル比、新砂添加量、及び静電容量の少なくとも何れかが含まれている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の強熱減量推定装置。
【請求項4】
前記添加物データには、樹脂種、樹脂添加量、硬化剤種、及び硬化剤添加量の少なくとも何れかが含まれている、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の強熱減量推定装置。
【請求項5】
前記焙焼環境データには、炉内温度、炉温、周辺温度、ガス圧、及びガス量の少なくとも何れかが含まれている、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の強熱減量推定装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記鋳物砂の砂処理サイクルに含まれる工程の実施条件を、前記推定ステップにて推定した強熱減量に応じて設定する条件設定ステップを更に実行する、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の強熱減量推定装置。
【請求項7】
前記実施条件は、砂再生工程の実施条件、混練工程の実施条件、及び新砂投入工程の実施条件の少なくとも何れかである、
ことを特徴とする請求項6に記載の強熱減量推定装置。
【請求項8】
一又は複数のプロセッサが、機械学習により構築された学習済モデルを用いて、鋳物砂の強熱減量を推定する推定ステップを含んでおり、
前記学習済モデルの入力は、(1)焙焼期間中に検出した前記鋳物砂の重量に関する砂重量データと、(2)前記鋳物砂の性質に関する砂性質データ、前記鋳物砂に添加された添加物に関する添加物データ、及び、前記焙焼期間中に検出した焙焼環境に関する焙焼環境データの少なくとも何れかと、であり、
前記学習済モデルの出力は、前記強熱減量の推定値、又は、前記焙焼期間よりも長い予め定められた時間に亘って焙焼した後の前記鋳物砂の重量の推定値である、
ことを特徴とする強熱減量推定方法。
【請求項9】
学習用データセットを用いた教師あり学習によって、鋳物砂の強熱減量を推定する学習済モデルを構築する構築ステップを実行する一又は複数のプロセッサを備えており、
前記学習済モデルの入力は、(1)焙焼期間中に検出した前記鋳物砂の重量に関する砂重量データと、(2)前記鋳物砂の性質に関する砂性質データ、前記鋳物砂に添加された添加物に関する添加物データ、及び、前記焙焼期間中に検出した焙焼環境に関する焙焼環境データの少なくとも何れかと、であり、
前記学習済モデルの出力は、前記強熱減量の推定値、又は、前記焙焼期間よりも長い予め定められた時間に亘って焙焼した後の前記鋳物砂の重量の推定値である、
ことを特徴とする機械学習装置。
【請求項10】
一又は複数のプロセッサが、学習用データセットを用いた教師あり学習によって、鋳物砂の強熱減量を推定する学習済モデルを構築する構築ステップを含んでおり、
前記学習済モデルの入力は、(1)焙焼期間中に検出した前記鋳物砂の重量に関する砂重量データと、(2)前記鋳物砂の性質に関する砂性質データ、前記鋳物砂に添加された添加物に関する添加物データ、及び、前記焙焼期間中に検出した焙焼環境に関する焙焼環境データの少なくとも何れかと、であり、
前記学習済モデルの出力は、前記強熱減量の推定値、又は、前記焙焼期間よりも長い予め定められた時間に亘って焙焼した後の前記鋳物砂の重量の推定値である、
ことを特徴とする機械学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習済モデルを用いて鋳物砂の強熱減量を推定する装置及び方法に関する。また、そのような学習済モデルを構築する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳型の造型に用いる鋳物砂のひとつとして、硬化剤の化学反応により硬化する鋳物砂(自硬性プロセスやガス硬化プロセスなどで使用される砂)が広く用いられている。鋳造に利用された鋳物砂は、砂再生機により研磨され、混練機により新たな樹脂及び硬化剤と混練された後、造型に再利用される。この際、砂再生機や混練機などの動作条件は、鋳造に利用された鋳物砂の強熱減量に応じて最適化される。
【0003】
鋳物砂の強熱減量は、鋳造に利用された鋳物砂に残留している樹脂の量を表し、鋳物砂を乾燥させた後、焙焼することによって測定される。焙焼温度は1000℃、焙焼時間は60分である。強熱減量の定義としては、(W0-W60)/W0が広く用いられている。ここで、W0[g]は、乾燥後かつ焙焼前の鋳物砂の重量であり、W60は、焙焼後の鋳物砂の重量である。強熱減量は、「LOI」と呼ばれることもある。
【0004】
しかしながら、上記の定義に従って強熱減量を測定するためには、乾燥に60分、焙焼に60分、合計120分以上の時間を要する。このため、強熱減量の測定は、鋳造業者にとって時間的な負担の大きい処理となっていた。また、強熱減量の測定に要する時間が長いため、強熱減量の測定をしている間、砂再生機や混練機などの動作条件を、強熱減量に応じて最適化することができず、鋳物の品質を低下させる要因となっていた。
【0005】
特許文献1には、振動圧縮した鋳物砂の静電値(静電容量)から強熱減量を推定する方法が開示されている。特許文献1に記載の方法によれば、鋳物砂を焙焼することなく、強熱減量を推定することができる。したがって、特許文献1に記載の方法によれば、強熱減量の推定が鋳造業者に課す時間的な負担を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-208781号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、強熱減量を精度良くすることが困難であるという問題があった。
【0008】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、強熱減量を短時間で精度良く推定することが可能な技術を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る強熱減量推定装置は、機械学習により構築された学習済モデルを用いて、鋳物砂の強熱減量を推定する推定ステップを実行する一又は複数のプロセッサを備えている。また、本発明の一態様に係る強熱減量推定方法は、一又は複数のプロセッサが、機械学習により構築された学習済モデルを用いて、鋳物砂の強熱減量を推定する推定ステップを含んでいる。
【0010】
また、本発明の一態様に係る機械学習装置は、学習用データセットを用いた教師あり学習によって、強熱減量を推定する学習済モデルを構築する構築ステップを実行する一又は複数のプロセッサを備えている。また、本発明の一態様に係る機械学習方法は、一又は複数のプロセッサが、学習用データセットを用いた教師あり学習によって、強熱減量を推定する学習済モデルを構築する構築ステップを含んでいる。
【0011】
そして、前記強熱減量推定装置、前記強熱減量推定方法、前記機械学習装置、及び前記機械学習方法において、(a)前記学習済モデルの入力は、(1)焙焼期間中に検出した前記鋳物砂の重量に関する砂重量データと、(2)前記鋳物砂の性質に関する砂性質データ、前記鋳物砂に添加された添加物に関する添加物データ、及び、前記焙焼期間中に検出した焙焼環境に関する焙焼環境データの少なくとも何れかと、であり、(b)前記学習済モデルの出力は、強熱減量の推定値、又は、前記焙焼期間よりも長い予め定められた時間に亘って焙焼した後の前記鋳物砂の重量の推定値である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係る強熱減量推定装置及び強熱減量推定方法によれば、強熱減量を短時間で精度良く推定することができる。また、本発明の一態様に係る機械学習装置及び機械学習方法によれば、そのような強熱減量推定装置及び強熱減量推定方法において用いる学習済モデルを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る強熱減量推定システムの構成を示す図である。
図2図1の強熱減量推定システムに含まれる強熱減量推定装置の構成を示すブロック図である。
図3図2の強熱減量推定装置が実施する強熱減量推定方法の流れを示すフローチャートである。
図4図1の強熱減量推定システムに含まれる機械学習装置の構成を示すブロック図である。
図5図4の機械学習装置が実施する機械学習方法の流れを示すフローチャートである。
図6図1の強熱減量推定システムの適用対象となる砂処理サイクルの流れを示すフロー図である。
図7図6の砂処理サイクルに含まれる砂再生工程を実施する砂再生機の一具体例を示す図である。
図8図6の砂処理サイクルに含まれる混練工程を実施する混練機の一具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔強熱減量推定システム〕
本発明の一実施形態に係る強熱減量推定システムSについて、図1を参照して説明する。図1は、強熱減量推定システムSの構成を表す図である。
【0015】
強熱減量推定システムSは、鋳造フェーズC1と砂再生フェーズC2とを含む鋳造サイクルC(図6を参照して後述)において生成される回収砂又は再生砂(以下、特に区別する必要がない限り「鋳物砂」と記載する)の強熱減量を推定するためのシステムである。強熱減量推定システムSは、図1に示すように、強熱減量推定装置1と、機械学習装置2と、焙焼装置3と、センサ群4と、データロガー5と、を備えている。
【0016】
焙焼装置3は、サンプルとして採取した少量(例えば、2g以上10g以下)の鋳物砂を焙焼するための装置である。焙焼装置3は、図5に示すように、坩堝31と、炉35と、を備えている。
【0017】
坩堝31は、鋳物砂を保持するための構成である。炉35は、坩堝31に保持されている鋳物砂を加熱するための構成である。炉35は、予め定められた乾燥時間(例えば60分)に亘って乾燥工程を実施した後、予め定められた焙焼時間(例えば10分)に亘って焙焼工程を実施するよう、炉内温度を制御する。ここで、乾燥工程は、予め定められた乾燥温度(例えば100℃)で鋳物砂に含まれる水分を蒸発させる工程である。また、焙焼工程は、予め定められた焙焼温度(例えば100℃)で鋳物砂の砂粒に付着した可燃性残渣(鋳物砂に添加された樹脂及び硬化剤の残渣)を燃焼させる工程である。焙焼時間は、60分(従来の強熱減量測定方法における焙焼時間)よりも短く設定されている。昇降機構は、坩堝31(又は炉35)を昇降させるための機構である。鋳物砂を投入又は回収するときには、この昇降機構が坩堝31を下降させ(又は炉35を上昇させ)、坩堝31を炉35の外に出す。一方、鋳物砂を加熱するときには、この昇降機構が坩堝31を上昇させ(又は炉35を下降させ)、坩堝31を炉36の中に入れる。
【0018】
センサ群4は、電子秤41、温度計42~44、気圧計45、流量計46を含んでいる。
【0019】
電子秤41は、坩堝31に保持された鋳物砂の重量(以下、「砂重量」と記載する)を測定するためのセンサである。温度計42は、炉35の内部の気体の温度(以下、「炉内温度」と記載する)を測定するためのセンサである。温度計43は、炉35の温度(以下、「炉温」と記載する)を測定するためのセンサである。温度計44は、焙焼装置3の周辺の温度(以下、「周辺温度」と記載する)を測定するためのセンサである。気圧計45は、炉35の内部の気体の圧力(以下、「ガス圧」とも記載する)を測定するためのセンサである。流量計46は、炉35から排出される気体の流量(以下、「ガス量」と記載する)を測定するためのセンサである。なお、炉35の内部の気体、及び、炉35から排出される気体は、主に可燃性残渣が気化したガスである。
【0020】
データロガー5は、センサ群4に属する各センサの出力信号を収集し、砂重量、炉内温度、炉温、周辺温度、ガス圧、及びガス量を表すデータを強熱減量推定装置1及び機械学習装置2に提供するための装置である。データロガー5は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)やIPC(Industrial PC)などにより構成することができる。
【0021】
強熱減量推定装置1は、強熱減量推定方法M1を実施するための装置である。強熱減量推定方法M1は、データロガー5から提供されたデータ、及び、ユーザにより入力されたデータに基づき、機械学習により構築された学習済モデルLMを用いて強熱減量を推定する方法である。学習済モデルLMとしては、例えば、畳み込みニューラルネットワークや再帰型ニューラルネットワークなどのニューラルネットワークモデル、線形回帰などの回帰モデル、又は、回帰木などの木モデルなどのアルゴリズムを用いることができる。強熱減量推定装置1の構成及び強熱減量推定方法M1の流れの詳細については、参照する図面を代えて後述する。
【0022】
学習済モデルLMの入力は、炉内温度が予め定められた焙焼温度に達した時点から予め定められた焙焼時間が経過した時点までの期間(以下、「焙焼期間」とも記載する)において検出した鋳物砂の重量に関する砂重量データ、鋳物砂の性質に関する砂性質データ、鋳物砂に添加した添加物に関する添加物データ、及び、焙焼期間において検出した焙焼環境に関する焙焼環境データである。なお、添加物としては、樹脂及び硬化剤が挙げられる。
【0023】
砂重量データは、データロガー5を介して電子秤41から取得した砂重量により構成される。砂重量データに含まれる砂重量は、焙焼期間において検出した砂重量の時系列全体であってもよいし、焙焼期間に含まれる一又は複数の特定の時点において検出した砂重量であってもよい。本実施形態においては、焙焼期間の開始時点において検出した砂重量(以下、「焙焼開始時砂重量」とも記載する)、及び、焙焼期間の終了時点において検出した砂重量(以下、「焙焼終了時砂重量」とも記載する)を学習済モデルLMに入力する。なお、焙焼開始時砂重量は、乾燥工程終了後、かつ、焙焼工程開始前に、坩堝31を炉35から取り出して測定してもよい。また、焙焼終了時砂重量は、焙焼工程終了後に、坩堝31を炉35から取り出して測定してもよい。
【0024】
砂性質データは、ユーザにより入力された砂種、サンドメタル比、新砂添加量、及び静電容量により構成される。ここで、砂種とは、鋳造サイクルCにおいて用いられる鋳物砂の種類のことを指す。砂種としては、例えば、人工砂、珪砂、クロマイト砂、ジルコン砂、又は、これらの砂種の組み合わせなどが挙げられる。なお、鋳造サイクルCにおいて用いられる鋳物砂が複数の砂種の組み合わせた鋳物砂である場合には、その組成をユーザが強熱減量推定装置1に入力するようにしてもよい。また、サンドメタル比とは、鋳造サイクルCにおいて鋳造される鋳物の重量に対する、鋳造サイクルCにおいて造型される鋳型の重量の比のことを指す。また、新砂投入量とは、鋳造サイクルCにおいて再生砂に投入される新砂の単位時間あたり(連続処理の場合)又は1回あたり(バッチ処理の場合)の投入量(重量であってもよいし、体積であってもよい)のことを指す。また、静電容量とは、サンプルとして採取した鋳物砂の静電容量のことを指す。なお、鋳物砂の静電容量の測定方法ついては、例えば、特許文献1に記載の方法を採用することができる。
【0025】
添加物データは、ユーザにより入力された樹脂種、樹脂添加量、硬化剤種、及び硬化剤添加量により構成される。ここで、樹脂種とは、鋳造サイクルCにおいて鋳物砂に添加される樹脂の種類のことを指す。樹脂種としては、フラン、アルカリフェノール、フェノールウレタン、又は水ガラスなどが挙げられる。樹脂添加量とは、鋳造サイクルCにおいて鋳物砂に添加される樹脂の単位時間あたり(連続処理の場合)又は1回あたり(バッチ処理の場合)の添加量(重量であってもよいし、体積であってもよい)のことを指す。硬化剤種は、鋳造サイクルCにおいて樹脂と共に鋳物砂に添加される硬化剤の種類のことを指す。硬化剤種としては、有機スルホン酸、又は有機エステルなどが挙げられる。硬化剤添加量とは、鋳造サイクルCにおいて樹脂と共に鋳物砂に添加される硬化剤の単位時間あたり(連続処理の場合)又は1回あたり(バッチ処理の場合)の添加量(重量であってもよいし、体積であってもよい)のことを指す。
【0026】
焙焼環境データは、データロガー5を介してセンサ群4から取得した炉内温度、炉温、周辺温度、ガス圧、及びガス量により構成される。ただし、学習済モデルLMに入力する炉内温度は、焙焼期間において検出した炉内温度の時系列全体であってもよいし、焙焼期間において検出した炉内温度の平均値であってもよいし、焙焼期間に含まれる一又は複数の特定の時点において検出した炉内温度であってもよい。本実施形態においては、炉内温度の平均値(以下、「平均炉内温度」とも記載する)を学習済モデルLMに入力する。また、学習済モデルLMに入力する炉温は、焙焼期間において検出した炉温の時系列全体であってもよいし、焙焼期間において検出した炉温の平均値であってもよいし、焙焼期間に含まれる一又は複数の特定の時点において検出した炉温であってもよい。本実施形態においては、炉温の平均値(以下、「平均炉温」とも記載する)を学習済モデルLMに入力する。また、学習済モデルLMに入力する周辺温度は、焙焼期間において検出した周辺温度の時系列全体であってもよいし、焙焼期間において検出した周辺温度の平均値であってもよいし、焙焼期間に含まれる一又は複数の特定の時点において検出した周辺温度であってもよい。本実施形態においては、周辺温度の平均値(以下、「平均周辺温度」とも記載する)を学習済モデルLMに入力する。また、学習済モデルLMに入力するガス圧は、焙焼期間において検出したガス圧の時系列全体であってもよいし、焙焼期間において検出したガス圧の平均値であってもよいし、焙焼期間に含まれる一又は複数の特定の時点において検出したガス圧でもよい。本実施形態においては、ガス圧の平均値(以下、「平均ガス圧」とも記載する)を学習済モデルLMに入力する。また、学習済モデルLMに入力するガス量は、焙焼期間において検出したガス量の時系列全体であってもよいし、焙焼期間において検出したガス量の平均値であってもよいし、焙焼期間に含まれる一又は複数の特定の時点において検出したガス量であってもよい。本実施形態においては、ガス量の平均値(以下、「平均ガス量」とも記載する)を学習済モデルLMに入力する。更に、焙焼環境データには、データロガー5を介してセンサ群4から取得した炉内温度に基づいて、強熱減量推定装置1が算出した昇温速度が含まれる。この昇温速度は、例えば、(焙焼工程開始時点の炉内温度-炉運転開始時点の炉内温度)/(焙焼工程開始時点の時刻-炉運転開始時点の時刻)に従って算出される。
【0027】
学習済モデルLMの出力は、強熱減量である。強熱減量は、焙焼温度を1000℃、焙焼時間を60分、乾燥後かつ焙焼前の砂重量をW0、焙焼後の砂重量をW60として、(W0-W60)/W0により定義される。この定義に従い強熱減量を測定しようとすれば、鋳物砂を60分以上焙焼する必要があるところ、学習済モデルLMを用いれば、60分よりも短い、例えば10分程度の焙焼により得られた砂重量データから強熱減量を推定することができる。また、砂性質データ、添加物データ、及び焙焼環境データと強熱減量との間には、一定の相関がある。したがって、砂重量データに加えて、砂性質データ、添加物データ、及び焙焼環境データを入力とする学習済モデルLMを用いれば、強熱減量を短時間で精度良く推定することができる。
【0028】
機械学習装置2は、機械学習方法M2を実施するための装置である。機械学習方法M2は、データロガー5から提供されたデータ、及び、ユーザにより入力されたデータを用いて学習用データセットDSを構築すると共に、学習用データデータセットDSを用いた機械学習(教師あり学習)によって学習済モデルLMを構築するための方法である。機械学習装置2の構成及び機械学習方法M2の流れの詳細については、参照する図面を代えて後述する。
【0029】
強熱減量推定システムSは、準備フェーズと試用フェーズとを経て実用フェーズに至る。準備フェーズ、試用フェーズ、及び実用フェーズについて、その内容を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0030】
(1)準備フェーズ
準備フェーズにおいては、作業者が60分間焙焼による強熱減量の測定を行う。作業者による強熱減量の測定が行われる度に、機械学習装置2は、データロガー5から提供されたデータ、及び、ユーザにより入力されたデータ(定義に従って算出された強熱減量を含む)から教師データを作成し、作成した教師データを学習用データセットDSに追加する。準備フェーズは、準備フェーズの開始から所定の期間(例えば、1週間、1ヶ月、又は1年など)が経過した時点で終了してもよいし、準備フェーズにおける強熱減量の測定回数が所定の回数(例えば、100回、1000回、又は10000回など)に達した時点で終了してもよい。準備フェーズが終了すると、機械学習装置2は、学習用データDSを用いた機械学習によって学習済モデルLMを構築する。構築された学習済モデルLMは、機械学習装置2から強熱減量推定装置1に転送される。
【0031】
(2)試用フェーズ
試用フェーズにおいては、作業者が60分間焙焼による強熱減量の測定を行うと共に、強熱減量推定装置1が強熱減量の推定を行う。作業者による強熱減量の測定が行われる度に、強熱減量推定装置1は、データロガー5から提供されたデータ、及び、ユーザにより入力されたデータに基づき、学習済モデルLMを用いて強熱減量を推定する。試用フェーズは、試用フェーズの開始から所定の期間(例えば、1週間、1ヶ月、又は1年など)が経過した時点で終了してもよいし、試用フェーズにおける強熱減量の測定回数が所定の回数(例えば、100回、1000回、又は10000回など)に達した時点で終了してもよい。試用フェーズが終了すると、作業者は、定義に従って算出された強熱減量と強熱減量推定装置1が推定した強熱減量とを比較し、強熱減量推定装置1の推定精度を評価する。推定精度が不十分である場合には、準備フェーズに戻る。推定精度が十分である場合には、実用フェーズに進む。
【0032】
(3)実用フェーズ
実用フェーズにおいては、強熱減量推定装置1が10分間焙焼による強熱減量の推定を行う。実用フェーズにおいて強熱減量推定装置1が用いる学習済モデルLMは、試用フェーズにおいて十分な推定精度を有することを確かめられたものである。実用フェーズにおいては、60分間焙焼による強熱減量の測定を省略することができる。このため、60分間焙焼による強熱減量の測定の手間から作業者を解放すると共に、効率良く鋳造サイクルCを運用することが可能になる。
【0033】
なお、本実施形態においては、砂重量データ、砂性質データ、添加物データ、及び焙焼環境データの全てを学習済モデルLMの入力とする構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。これらのデータの中で強熱減量の推定値に支配的な影響を与えるのは、砂重量データである。砂性質データ、添加物データ、及び焙焼環境データは、強熱減量の推定精度を向上させるためのデータであり、必ずしも全てを学習済モデルの入力として採用する必要はない。すなわち、(1)砂重量データと、(2)砂性質データ、添加物データ、及び焙焼環境データの少なくとも何れかと、を学習済モデルLMに入力する構成であれば、どのような構成を採用してもよい。ここで、「砂性質データ、添加物データ、及び焙焼環境データの少なくとも何れか」とは、(a)これら3種類のデータの組み合わせ、(b)これら3種類のデータから選択された2種類のデータ組み合わせ、又は、(c)これら3種類のデータから選択された1種類のデータの何れかのことを指す。
【0034】
また、砂重量データは、必ずしも焙焼開始時砂重量及び焙焼終了時砂重量を含んでいる必要はなく、一又は複数の特定の時点において検出された砂重量を含んでいればよい。例えば、常に一定の重量の鋳物砂をサンプルとする場合には、焙焼終了時砂重量のみにより砂重量データを構成してもよい。また、必ずしも砂性質データは、サンドメタル比、新砂添加量、及び静電容量の全てを含んでいる必要はなく、これらの情報の少なくとも一部を含んでいればよい。また、添加物データは、必ずしも樹脂種、樹脂添加量、硬化剤種、及び硬化剤添加量の全部を含んでいる必要はなく、これらの情報の少なくとも一部を含んでいれば良い。また、焙焼環境データは、必ずしも炉内温度、炉温、周辺温度、ガス圧、ガス量、及び昇温速度の全部を含んでいる必要はなく、これらの情報の少なくとも一部を含んでいればよい。
【0035】
〔強熱減量推定装置の構成〕
強熱減量推定装置1の構成について、図2を参照して説明する。図2は、強熱減量推定装置1の構成を示すブロック図である。
【0036】
強熱減量推定装置1は、汎用コンピュータを用いて実現されており、プロセッサ11と、一次メモリ12と、二次メモリ13と、入出力インタフェース14と、通信インタフェース15と、バス16とを備えている。プロセッサ11、一次メモリ12、二次メモリ13、入出力インタフェース14、及び通信インタフェース15は、バス16を介して相互に接続されている。
【0037】
二次メモリ13には、強熱減量推定プログラムP1及び学習済モデルLMが格納されている。プロセッサ11は、二次メモリ13に格納されている強熱減量推定プログラムP1及び学習済モデルLMを一次メモリ12上に展開する。そして、プロセッサ11は、一次メモリ12上に展開された強熱減量推定プログラムP1に含まれる命令に従って、強熱減量推定方法M1に含まれる各ステップを実行する。一次メモリ12上に展開された学習済モデルLMは、強熱減量推定方法M1の推定ステップM12(後述)をプロセッサ11が実行する際に利用される。なお、強熱減量推定プログラムP1が二次メモリ13に格納されているとは、ソースコード、又は、ソースコードをコンパイルすることにより得られた実行形式ファイルが二次メモリ13に記憶されていることを指す。また、学習済モデルLMが二次メモリ13に格納されているとは、学習済モデルLMを規定するパラメータが二次メモリ13に格納されていることを指す。
【0038】
プロセッサ11として利用可能なデバイスとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。プロセッサ11は、「演算装置」と呼ばれることもある。
【0039】
また、一次メモリ12として利用可能なデバイスとしては、例えば、半導体RAM(Random Access Memory)を挙げることができる。一次メモリ12は、「主記憶装置」と呼ばれることもある。また、二次メモリ13として利用可能なデバイスとしては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ODD(Optical Disk Drive)、FDD(Floppy Disk Drive)、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。二次メモリ13は、「補助記憶装置」と呼ばれることもある。なお、二次メモリ13は、強熱減量推定装置1に内蔵されていてもよいし、入出力インタフェース14又は通信インタフェース15を介して強熱減量推定装置1と接続された他のコンピュータ(例えば、クラウドサーバを構成するコンピュータ)に内蔵されていてもよい。なお、本実施形態においては、強熱減量推定装置1における記憶を2つのメモリ(一次メモリ12及び二次メモリ13)により実現しているが、これに限定されない。すなわち、強熱減量推定装置1における記憶を1つのメモリにより実現してもよい。この場合、例えば、そのメモリの或る記憶領域を一次メモリ12として利用し、そのメモリの他の記憶領域を二次メモリ13として利用すればよい。
【0040】
入出力インタフェース14には、入力デバイス及び/又は出力デバイスが接続される。入出力インタフェース14としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、ATA(Advanced Technology Attachment)、SCSI(Small Computer System Interface)、PCI(Peripheral Component Interconnect)などのインタフェースが挙げられる。入出力インタフェース14に接続される入力デバイスとしては、データロガー5が挙げられる。強熱減量推定方法M1においてセンサ群4から取得するデータは、このデータロガー5を介して強熱減量推定装置1に入力され、一次メモリ12に記憶される。また、入出力インタフェース14に接続される入力デバイスとしては、キーボード、マウス、タッチパッド、マイク、又は、これらの組み合わせが挙げられる。強熱減量推定方法M1においてユーザから取得するデータは、これらの入力デバイスを介して強熱減量推定装置1に入力され、一次メモリ12に記憶される。また、入出力インタフェース14に接続される出力デバイスとしては、ディスプレイ、プロジェクタ、プリンタ、スピーカ、ヘッドホン、又は、これらの組み合わせが挙げられる。強熱減量推定方法M1においてユーザに提供する情報は、これらの出力デバイスを介して強熱減量推定装置1から出力される。なお、強熱減量推定装置1は、ラップトップ型コンピュータのように、入力デバイスとして機能するキーボードと、出力デバイスとして機能するディスプレイとを、それぞれ内蔵してもよい。或いは、強熱減量推定装置1は、タブレット型コンピュータのように、入力デバイス及び出力デバイスの両方として機能するタッチパネルを内蔵していてもよい。
【0041】
通信インタフェース15には、ネットワークを介して他のコンピュータが有線接続又は無線接続される。通信インタフェース15としては、例えば、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などのインタフェースが挙げられる。利用可能なネットワークとしては、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、CAN(Campus Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wide Area Network)、GAN(Global Area Network)、又は、これらのネットワークを含むインターネットワークが挙げられる。インターネットワークは、イントラネットであってもよいし、エクストラネットであってもよいし、インターネットであってもよい。強熱減量推定方法M1において強熱減量推定装置1が他のコンピュータ(例えば、機械学習装置2)から取得するデータ(例えば、学習済モデルLM)、及び、強熱減量推定方法M1において強熱減量推定装置1が他のコンピュータに提供するデータは、これらのネットワークを介して送受信される。
【0042】
なお、本実施形態においては、単一のプロセッサ(プロセッサ11)を用いて強熱減量推定方法M1を実行する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のプロセッサを用いて強熱減量推定方法M1を実行する構成を採用してもよい。この場合、連携して強熱減量推定方法M1を実行する複数のプロセッサは、単一のコンピュータに設けられ、バスを介して相互に通信可能に構成されていてもよいし、複数のコンピュータに分散して設けられ、ネットワークを介して相互に通信可能に構成されていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたプロセッサと、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサとが、連携して強熱減量推定方法M1を実行する態様などが考えられる。
【0043】
また、本実施形態においては、強熱減量推定方法M1を実行するプロセッサ(プロセッサ11)と同じコンピュータに内蔵されたメモリ(二次メモリ13)に学習済モデルLMを格納する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、強熱減量推定方法M1を実行するプロセッサと異なるコンピュータに内蔵されたメモリに学習済モデルLMを格納する構成を採用してもよい。この場合、学習済モデルLMを格納するメモリが内蔵されたコンピュータは、強熱減量推定方法M1を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータとネットワークを介して相互に通信可能に構成される。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたメモリに学習済モデルLMを格納し、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサが強熱減量推定方法M1を実行する態様などが考えられる。
【0044】
また、本実施形態においては、単一のメモリ(二次メモリ13)に学習済モデルLMを格納する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のメモリに学習済モデルLMを分散して格納する構成を採用してもよい。この場合、学習済モデルLMを格納する複数のメモリは、単一のコンピュータ(強熱減量推定方法M1を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータであってもよいし、そうでなくてもよい)に設けられていてもよいし、複数のコンピュータ(強熱減量推定方法M1を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータを含んでいてもよいし、そうでなくてもよい)に分散して設けられていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成する複数のコンピュータの各々に内蔵されたメモリに学習済モデルLMを分散して格納する構成などが考えられる。
【0045】
〔強熱減量推定方法の流れ〕
強熱減量推定方法M1の流れについて、図3を参照して説明する。図3は、強熱減量推定方法M1の流れを示すフローチャートである。
【0046】
強熱減量推定方法M1は、前処理ステップM11と、推定ステップM12と、を含んでいる。
【0047】
前処理ステップM11は、プロセッサ11が、学習済モデルLMに入力するデータを作成するステップである。前処理ステップM11において、プロセッサ11は、データロガー5から提供されたデータ及びユーザにより入力されたデータを一次メモリ12から読み出し、以下の処理を行う。
【0048】
(1)プロセッサ11は、炉35の運転を開始した時刻t0、炉内温度が予め定められた焙焼温度T1(例えば1000℃)に達した時刻t1、及び、時刻t1から予め定められた焙焼時間Δt(例えば10分)が経過した時刻t2を特定する。
【0049】
(2)プロセッサ11は、焙焼開始時砂重量として、時刻t1において電子秤41が示す砂重量を特定すると共に、焙焼終了時砂重量として、時刻t2において電子秤41が示す砂重量を特定する。
【0050】
(3)プロセッサ11は、時刻t0において温度計42の示す炉内温度T0を特定した後、昇温速度として、(T1-T0)/(t1-t0)を算出する。
【0051】
(4)プロセッサ11は、平均炉内温度、平均炉温、平均周辺温度、平均ガス圧、及び平均ガス量として、時刻t1から時刻t2までの期間(焙焼工程実施期間)において温度計42、温度計43、温度計44、気圧計45、及び流量計46が示す炉内温度、炉温、周辺温度、ガス圧、及びガス量の平均値を算出する。
【0052】
(5)プロセッサ11は、以上の処理により特定又は算出した焙焼開始時砂重量、焙焼終了時砂重量、昇温速度、平均炉内温度、平均炉温、平均周辺温度、平均ガス圧、及び平均ガス量を一次メモリ12に書き込む。
【0053】
推定ステップM12は、プロセッサ11が、学習済モデルLMを用いて強熱減量を推定するステップである。推定ステップM12において、プロセッサ11は、砂重量データ、砂性質データ、添加物データ、及び焙焼環境データを一次メモリ12から読み出して学習済モデルLMに入力する。そして、学習済モデルLMから出力された強熱減量の推定値を一次メモリ12に書き込む。
【0054】
上述したように、砂重量データは、焙焼開始時砂重量及び焙焼終了時砂重量により構成される。砂性質データは、焙焼開始時砂重量、焙焼終了時砂重量、砂種、サンドメタル比、新砂添加量、及び静電容量により構成される。添加物データは、樹脂種、樹脂添加量、硬化剤種、及び硬化剤添加量により構成される。焙焼環境データは、炉内温度、炉温、周辺温度、ガス圧、ガス量、及び昇温速度により構成される。また、上述したように、学習済モデルLMの出力は、焙焼温度を1000℃、焙焼時間を60分、乾燥後かつ焙焼前の砂重量をW0、焙焼後の砂重量をW60として、(W0-W60)/W0により定義される強熱減量の推定値である。
【0055】
なお、学習済モデルLMは、強熱減量の推定値を出力する代わりに、焙焼開始時点から60分(特許請求の範囲における「予め定められた時間」の一例)経過した後の砂重量W60の推定値を出力するようにしてもよい。この場合、推定ステップM12において、プロセッサ11は、焙焼開始時の砂重量W0と学習済モデルLMから出力された砂重量W60とを、式(W0-W60)/W0に代入することによって、強熱減量の推定値を算出する。
【0056】
また、強熱減量推定方法M1は、推定ステップM12にて推定した強熱減量を出力する出力ステップを更に含んでいてもよい。この出力ステップにおいて、プロセッサ11は、推定した強熱減量を、ディスプレイに出力することによって、鋳造サイクルCを管理する作業者に提示する。これにより、作業者は、回収砂又は再生砂の強熱減量に応じて砂処理サイクルの最適化を図ることができる。或いは、プロセッサ11は、推定した強熱減量を、鋳造サイクルCを管理するラインコントローラに提供する。これにより、ラインコントローラは、回収砂又は再生砂の強熱減量に応じて鋳造サイクルCの最適化を図ることができる。
【0057】
また、強熱減量推定方法M1は、推定ステップM12にて推定した強熱減量に基づいて鋳造サイクルCを構成する工程の実施条件を設定する条件設定ステップ(後述する条件設定工程C32に相当)を更に含んでいてもよい。この条件ステップにおいて、プロセッサ11は、例えば、後述する砂再生工程C24の実施条件を推定ステップM12にて推定した強熱減量に応じた再生条件に設定する。或いは、プロセッサ11は、後述する新砂投入工程C26の実施条件を推定ステップM12にて推定した強熱減量に応じた混練条件に設定する。或いは、プロセッサ11は、後述する新砂投入工程C26の実施条件を推定ステップM12にて推定した強熱減量に応じた混練条件に設定する。このように、プロセッサ11が条件設定ステップを実行することによっても、回収砂又は再生砂の強熱減量に応じて鋳造サイクルCの最適化を図ることができる。
【0058】
〔機械学習装置の構成〕
機械学習装置2の構成について、図4を参照して説明する。図4は、機械学習装置2の構成を示すブロック図である。
【0059】
機械学習装置2は、汎用コンピュータを用いて実現されており、プロセッサ21と、一次メモリ22と、二次メモリ23と、入出力インタフェース24と、通信インタフェース25と、バス26とを備えている。プロセッサ21、一次メモリ22、二次メモリ23、入出力インタフェース24、及び通信インタフェース25は、バス26を介して相互に接続されている。
【0060】
二次メモリ23には、機械学習プログラムP2及び学習用データセットDSが格納されている。学習用データセットDSは、教師データDS1,DS2…の集合である。プロセッサ21は、二次メモリ23に格納されている機械学習プログラムP2を一次メモリ22上に展開する。そして、プロセッサ21は、一次メモリ22上に展開された機械学習プログラムP2に含まれる命令に従って、機械学習方法M2に含まれる各ステップを実行する。二次メモリ23に格納された学習用データセットDSは、機械学習方法M2の学習用データセット構築ステップM21(後述)にて構築され、機械学習方法M2の学習済モデル構築ステップM22(後述)において利用される。また、機械学習方法M2の学習済モデル構築ステップM22にて構築された学習済モデルLMも、二次メモリ23に格納される。なお、機械学習プログラムP2が二次メモリ23に格納されているとは、ソースコード、又は、ソースコードをコンパイルすることにより得られた実行形式ファイルが二次メモリ23に記憶されていることを指す。また、学習済モデルLMが二次メモリ23に格納されているとは、学習済モデルLMを規定するパラメータが二次メモリ23に格納されていることを指す。
【0061】
プロセッサ21として利用可能なデバイスとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。プロセッサ21は、「演算装置」と呼ばれることもある。
【0062】
また、一次メモリ22として利用可能なデバイスとしては、例えば、半導体RAM(Random Access Memory)を挙げることができる。一次メモリ22は、「主記憶装置」と呼ばれることもある。また、二次メモリ23として利用可能なデバイスとしては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ODD(Optical Disk Drive)、FDD(Floppy Disk Drive)、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。二次メモリ23は、「補助記憶装置」と呼ばれることもある。なお、二次メモリ23は、機械学習装置2に内蔵されていてもよいし、入出力インタフェース24又は通信インタフェース25を介して機械学習装置2と接続された他のコンピュータ(例えば、クラウドサーバを構成するコンピュータ)に内蔵されていてもよい。なお、本実施形態においては、機械学習装置2における記憶を2つのメモリ(一次メモリ22及び二次メモリ23)により実現しているが、これに限定されない。すなわち、機械学習装置2における記憶を1つのメモリにより実現してもよい。この場合、例えば、そのメモリの或る記憶領域を一次メモリ22として利用し、そのメモリの他の記憶領域を二次メモリ23として利用すればよい。
【0063】
入出力インタフェース24には、入力デバイス及び/又は出力デバイスが接続される。入出力インタフェース24としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、ATA(Advanced Technology Attachment)、SCSI(Small Computer System Interface)、PCI(Peripheral Component Interconnect)などのインタフェースが挙げられる。入出力インタフェース24に接続される入力デバイスとしては、データロガー5が挙げられる。機械学習方法M2においてセンサ群4から取得するデータは、このデータロガー5を介して機械学習装置2に入力され、一次メモリ22に記憶される。また、入出力インタフェース24に接続される入力デバイスとしては、キーボード、マウス、タッチパッド、マイク、又は、これらの組み合わせが挙げられる。機械学習方法M2においてユーザから取得するデータは、これらの入力デバイスを介して機械学習装置2に入力され、一次メモリ22に記憶される。また、入出力インタフェース24に接続される出力デバイスとしては、ディスプレイ、プロジェクタ、プリンタ、スピーカ、ヘッドホン、又は、これらの組み合わせが挙げられる。機械学習方法M2においてユーザに提供する情報は、これらの出力デバイスを介して機械学習装置2から出力される。なお、機械学習装置2は、ラップトップ型コンピュータのように、入力デバイスとして機能するキーボードと、出力デバイスとして機能するディスプレイとを、それぞれ内蔵してもよい。或いは、機械学習装置2は、タブレット型コンピュータのように、入力デバイス及び出力デバイスの両方として機能するタッチパネルを内蔵していてもよい。
【0064】
通信インタフェース25には、ネットワークを介して他のコンピュータが有線接続又は無線接続される。通信インタフェース25としては、例えば、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などのインタフェースが挙げられる。利用可能なネットワークとしては、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、CAN(Campus Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wide Area Network)、GAN(Global Area Network)、又は、これらのネットワークを含むインターネットワークが挙げられる。インターネットワークは、イントラネットであってもよいし、エクストラネットであってもよいし、インターネットであってもよい。機械学習装置2が他のコンピュータ(例えば、強熱減量推定装置1)に提供するデータ(例えば、学習済モデルLM)は、これらのネットワークを介して送受信される。
【0065】
なお、本実施形態においては、単一のプロセッサ(プロセッサ21)を用いて機械学習方法M2を実行する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のプロセッサを用いて機械学習方法M2を実行する構成を採用してもよい。この場合、連携して機械学習方法M2を実行する複数のプロセッサは、単一のコンピュータに設けられ、バスを介して相互に通信可能に構成されていてもよいし、複数のコンピュータに分散して設けられ、ネットワークを介して相互に通信可能に構成されていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたプロセッサと、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサとが、連携して機械学習方法M2を実行する態様などが考えられる。
【0066】
また、本実施形態においては、機械学習方法M2を実行するプロセッサ(プロセッサ21)と同じコンピュータに内蔵されたメモリ(二次メモリ23)に学習用データセットDSを格納する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、機械学習方法M2を実行するプロセッサと異なるコンピュータに内蔵されたメモリに学習用データセットDSを格納する構成を採用してもよい。この場合、学習用データセットDSを格納するメモリが内蔵されたコンピュータは、機械学習方法M2を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータとネットワークを介して相互に通信可能に構成される。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたメモリに学習用データセットDSを格納し、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサが機械学習方法M2を実行する態様などが考えられる。
【0067】
また、本実施形態においては、単一のメモリ(二次メモリ23)に学習用データセットDSを格納する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のメモリに学習用データセットDSを分散して格納する構成を採用してもよい。この場合、学習用データセットDSを格納する複数のメモリは、単一のコンピュータ(機械学習方法M2を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータであってもよいし、そうでなくてもよい)に設けられていてもよいし、複数のコンピュータ(機械学習方法M2を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータを含んでいてもよいし、そうでなくてもよい)に分散して設けられていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成する複数のコンピュータの各々に内蔵されたメモリに学習用データセットDSを分散して格納する構成などが考えられる。
【0068】
また、本実施形態においては、強熱減量推定方法M1及び機械学習方法M2を異なるプロセッサ(プロセッサ11及びプロセッサ21)を用いて実行する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、強熱減量推定方法M1及び機械学習方法M2を同一のプロセッサを用いて実行してもよい。この場合、機械学習方法M2を実行することによって、このプロセッサと同じコンピュータに内蔵されたメモリに学習済モデルLMが格納さる。そして、このプロセッサは、強熱減量推定方法M1を実行する際に、このメモリに格納された学習済モデルLMを利用することになる。
【0069】
〔機械学習方法の流れ〕
機械学習方法M2の流れについて、図5を参照して説明する。図5は、機械学習方法M2の流れを示すフローチャートである。
【0070】
機械学習方法M2は、学習用データセット構築ステップM21と、学習済モデル構築ステップM22と、を含んでいる。
【0071】
学習用データセット構築ステップM21は、プロセッサ21が、教師データDS1,DS2,…の集合である学習用データセットDSを構築するステップである。
【0072】
各教師データDSi(i=1,2,…)には、砂重量データ、砂性質データ、添加物データ、及び焙焼環境データが含まれている。教師データDSiに含まれる砂重量データ、砂性質データ、添加物データ、及び焙焼環境データは、学習済モデルLMに入力する砂重量データ、砂性質データ、添加物データ、及び焙焼環境データと同様のデータである。学習用データセット構築ステップM21において、プロセッサ21は、強熱減量推定装置1と同様の方法でこれらのデータを取得する。また、教師データDSiには、焙焼温度を1000℃、焙焼時間を60分、乾燥後かつ焙焼前の砂重量をW0、焙焼後の砂重量をW60として、(W0-W60)/W0により定義される強熱減量がラベルとして含まれる。学習用データセット構築ステップM21において、プロセッサ21は、(1)焙焼開始時点において検出した砂重量をW0とし、(2)焙焼開始時点から60分経過した時点において検出した砂重量をW60とし、(3)(W0-W60)/W0に従って強熱減量を算出する。そして、プロセッサ21は、取得した砂重量データ、砂性質データ、添加物データ、及び焙焼環境データと、算出した強熱減量と、を関連付けて二次メモリ23に格納する。以上のプロセスをプロセッサ21が繰り返すことによって、学習用データセットDSが構築される。
【0073】
学習済モデル構築ステップM22は、プロセッサ21が、学習済モデルLMを構築するステップである。学習済モデル構築ステップM22において、プロセッサ21は、学習用データセットDSを用いた教師あり学習によって、学習済モデルLMを構築する。そして、プロセッサ21は、構築した学習済モデルLMを二次メモリ23に格納する。
【0074】
〔鋳造サイクルの流れ〕
強熱減量推定システムSの適用対象となる鋳造サイクルCの流れについて、図6を参照して説明する。図6は、鋳造サイクルCの流れを示すフロー図である。
【0075】
鋳造サイクルCは、図6に示すように、鋳造フェーズC1と、砂再生フェーズC2と、を含んでいる。
【0076】
鋳造フェーズC1は、砂再生フェーズC2にて再生された鋳物砂(後述する再生砂と新砂との混合物)を用いて鋳造を行うフェーズである。鋳造フェーズC1は、例えば図6に示すように、混練工程C11と、造型工程C12と、抜型工程C13と、塗型工程C14と、枠合せ工程C15と、注湯工程C16と、冷却工程C17と、解枠工程C18と、により構成することができる。
【0077】
混練工程C11は、砂再生フェーズC2にて再生された鋳物砂に樹脂及び硬化剤を含む添加物を加えて混練する工程である。造型工程C12は、混練工程C11にて混練された鋳物砂を鋳枠に充填することによって、鋳型を造型する工程である。ここでは、鋳型の上部に相当する上型と鋳型の下部に相当する下型とが、それぞれ造型されるものとする。抜型工程C13は、造型工程C12にて造型された上型及び下型を鋳枠から分離する工程である。塗型工程C14は、抜型工程C13にて取り出した上型及び下型の製品面に塗型剤を塗布する工程である。枠合せ工程C15は、塗型工程C14にて塗型剤が塗布された上型と下型とを合体させることによって、鋳型を得る工程である。注湯工程C16は、枠合せ工程C15にて得られた鋳型に溶湯を流し込む工程である。冷却工程C17は、注湯工程C16にて鋳型に注入された溶湯を冷却する工程である。冷却された溶湯は、鋳型の内部で凝固して鋳物となる。解枠工程C18は、鋳型に振動を与えることによって、鋳型を解体して砂塊にすると共に、冷却工程C17にて得られた鋳物を取り出す工程である。
【0078】
砂再生フェーズC2は、鋳造フェーズC1にて得られた砂塊から鋳物砂を再生する工程である。砂再生フェーズC2は、例えば図6に示すように、解砕工程C21と、分離工程C22と、再生前冷却工程C23と、砂再生工程C24と、再生後冷却工程C25と、新砂投入工程C26と、により構成することができる。
【0079】
解砕工程C21は、鋳造フェーズC1にて得られた砂塊に振動を与えることによって、砂塊を解砕して砂粒にする工程である。解砕工程C21にて得られる砂粒の集合には、再生対象となる鋳物砂の砂粒の他に、鉄片やガラなどの鋳物砂以外の粒子が含まれている。再生対象となる鋳物砂の砂粒の表面には、樹脂等の可燃性残渣が付着している。分離工程C22は、解砕工程C21にて得られた砂粒の集合から鋳物砂以外の粒子を分離する工程である。分離工程C22にて得られる鋳物砂、すなわち、砂粒の表面に付着した可燃性残渣が除去される前の鋳物砂のことを、以下、「回収砂」とも記載する。再生前冷却工程C23は、分離工程C22にて得られた回収砂を冷却する工程である。砂再生工程C24は、再生前冷却工程C23にて冷却された回収砂の砂粒から可燃性残滓を除去する工程である。砂再生工程C24にて得られる鋳物砂、すなわち、表面に付着した可燃性残渣が除去された後の鋳物砂のことを、以下、「再生砂」とも記載する。再生後冷却工程C25は、砂再生工程C24にて得られた再生砂を冷却する工程である。新砂投入工程C26は、砂再生工程C24にて得られた再生砂に、新砂、すなわち、未使用の鋳物砂を加える工程である。新砂投入工程C26にて得られる再生砂と新砂との混合物は、後続する鋳造フェーズC1において鋳物砂として利用される。
【0080】
鋳造フェーズC1にて利用される鋳物砂の品質を維持するためには、砂再生工程C24の実施条件(以下、「再生条件」とも記載する)、新砂投入工程C26の実施条件(以下、「新砂投入条件」とも記載する)、及び、混練工程C11の実施条件(以下、「混練条件」とも記載する)を適切に設定する必要がある。新砂投入条件としては、新砂投入工程C26において投入する新砂の量が挙げられる。なお、再生条件及び混練条件については、参照する図面を代えて後述する。
【0081】
そこで、鋳造サイクルCにおいては、これらの実施条件の設定を回収砂及び/又は再生砂の強熱減量に基づいて行う。このため、鋳造サイクルCにおいては、回収砂及び/又は再生砂の強熱減量を推定する強熱減量推定工程C31と、強熱減量推定工程C31にて推定された強熱減量に基づいて、再生条件、新砂投入条件、及び混練条件の少なくとも何れかを設定する条件設定工程C32と、を実施する。強熱減量推定工程C31は、上述したように、強熱減量推定装置1が実施する。また、条件設定工程C32は、上述したように、強熱減量推定装置1が実施してもよいし、強熱減量推定装置1から強熱減量を知得した作業者が実施してもよいし、強熱減量推定装置1から強熱減量を取得したラインコントローラが実施してもよい。条件設定工程C32の具体例としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
【0082】
第1の具体例は、回収砂の強熱減量に応じて再生条件を設定するフィードフォワード型の条件設定処理である。第2の具体例は、再生砂の強熱減量に応じて再生条件を設定するフィードバック型の条件設定処理である。第3の具体例は、回収砂の強熱減量及び再生砂の強熱減量の両方に応じて再生条件を設定する、フィードバック型とフィードフォワード型とを組み合わせた条件設定処理である。本具体例には、例えば、回収砂の強熱減量と再生砂の強熱減量との重み付き平均に応じて再生条件を設定する態様が含まれる。第4の具体例は、再生砂の強熱減量に応じて混練条件を設定するフィードフォワード型の条件設定処理である。なお、混練条件の設定は、造型工程C12にて造型される鋳型の強度が予め定められた管理値の範囲外である場合に行ってもよい。第5の具体例は、再生砂の強熱減量に応じて新砂投入条件を設定する条件設定処理である。
【0083】
なお、強熱減量推定工程C31においては、(1)回収砂の強熱減量のみを推定してもよいし、(2)再生砂の強熱減量のみを推定してもよいし、(3)回収砂の強熱減量及び再生砂の強熱減量の両方を推定してもよい。(1)の場合、上述した第1の具体例に係る条件設定工程C32を実施することができる。(2)の場合、上述した第2、第4、及び第5の具体例に係る条件設定工程C32の一部又は全部を実施することがきる。(3)の場合、上述した第3、第4、及び第5の具体例に係る条件設定工程C32の一部又は全部を実施することができる。
【0084】
〔再生条件及びその設定処理の具体例〕
砂再生機を用いて砂再生工程C24を実施する場合、再生条件は、砂再生機の動作条件と言い換えることもできる。砂再生機としては、例えば、図7に示す砂再生機7が挙げられる。
【0085】
砂再生機7は、図7に示すように、回転ドラム71と、回転ドラム71の側壁の内周面に押し当てられた加圧ローラ72と、を有する再生部70を備えている。回収砂を投入して回転ドラム71を回転させると、遠心力により飛散した回収砂の砂粒が回転ドラム71の側壁と加圧ローラ72との間で揉まれて研磨され、可燃性残渣が除去される。また、回転ドラム71の上端には、内側に向かって突出した、オリフィスと呼ばれる鍔73が設けられている。鍔73の突出量を大きくすることによって、投入された回収砂の砂粒が回転ドラム71内に滞留する時間を長くすることができる。
【0086】
砂再生機7を用いて砂再生工程C24を実施する場合、再生条件には、回収砂投入量、回転数、ローラ加圧力、及び鍔突出量が含まれる。また、砂再生機7による砂再生処理がバッチ式の場合には、再生時間も再生条件に含まれる。各再生条件の定義、及び、各再生条件に関する条件設定工程C32の概要は、下表のとおりである。なお、最も優先度の高い再生条件は、ローラ加圧力である。ローラ加圧力の変更のみにより砂再生機7の動作を最適化することができる場合には、その他の再生条件の設定は省略してもよい。また、最も優先度の低い再生条件は、回収砂投入量である。回収砂投入量の設定は、その他の再生条件の変更により砂再生機7の動作を最適化することができない場合にのみ実行すればよい。
【0087】
【表1】
【0088】
なお、砂再生工程C24においては、上述した研磨による可燃性残渣の除去に加えて、或いは、上述した研磨による可燃性残渣の除去に代えて、焙焼による可燃性残渣の除去を行ってもよい。この場合、焙焼温度及び焙焼時間も再生条件の一例となる。各再生条件の定義、及び、各再生条件に関する条件設定工程C32の概要は、下表のとおりである。なお、焙焼温度の設定を行うか否かは、鋳物砂に添加する樹脂の種類に応じて決定することが好ましい。例えば、鋳物砂に添加する樹脂が水ガラスである場合、焙焼温度の設定は省略することが好ましい。
【0089】
【表2】
【0090】
〔混練条件及びその設定処理の具体例〕
混練機を用いて混練工程C11を実施する場合、混練条件は、混練機の動作条件と言い換えることもできる。混練機としては、例えば、図8に示す混練機8が挙げられる。
【0091】
混練機8は、図8に示すように、混練羽根81を有する混練部80を備えている。混練部80に鋳物砂及び添加物(樹脂及び硬化剤)を投入して混練羽根81を回転させると、自硬性鋳物砂を生成することができる。混練機8を用いて混練工程C11を実施する場合、混練条件には添加物添加量(樹脂添加量及び硬化剤添加量)、混練羽根回転数、及び混練砂処理量が含まれる。各再生条件の定義、及び、各再生条件に関する条件設定工程C32の概要は、下表のとおりである。なお、混練砂処理量を変更すると、再生量が増減する。このため、他の混練条件の変更により混練機8の動作を最適化できる場合には、混練砂処理量の設定は省略することが好ましい。
【0092】
【表3】
【0093】
〔まとめ〕
態様1に係る強熱減量推定装置は、機械学習により構築された学習済モデルを用いて、鋳物砂の強熱減量を推定する推定ステップを実行する一又は複数のプロセッサを備えている。態様1に係る強熱減量推定装置において、(a)前記学習済モデルの入力は、(1)焙焼期間中に検出した前記鋳物砂の重量に関する砂重量データと、(2)前記鋳物砂の性質に関する砂性質データ、前記鋳物砂に添加された添加物に関する添加物データ、及び、前記焙焼期間中に検出した焙焼環境に関する焙焼環境データの少なくとも何れかと、であり、(b)前記学習済モデルの出力は、前記強熱減量の推定値、又は、前記焙焼期間よりも長い予め定められた時間に亘って焙焼した後の前記鋳物砂の重量の推定値である。
【0094】
上記の構成によれば、砂重量データに加えて、砂性質データ、添加物データ、及び焙焼関係データの少なくとも何れかに基づいて強熱減量を予測するので、焙焼期間が短くても、強熱減量を精度良く推定することができる。
【0095】
態様2に係る強熱減量推定装置は、態様1に係る強熱減量推定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様2に係る強熱減量推定装置において、前記砂重量データは、前記焙焼期間の開始時点において検出した前記鋳物砂の重量と、前記焙焼期間の終了時点において検出した前記鋳物砂の重量と、を含む。また、態様2に係る強熱減量推定装置において、前記焙焼期間は、60分よりも短い期間(例えば、10分程度)である。
【0096】
上記の構成によれば、定義に従い強熱減量を測定するよりも短い時間で強熱減量を精度良く推定することができる。
【0097】
態様3に係る強熱減量推定装置は、態様1又は2に係る強熱減量推定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様3に係る強熱減量推定装置において、前記砂性質データには、砂種、サンドメタル比、新砂添加量、及び静電容量の少なくとも何れかが含まれている。
【0098】
砂種、サンドメタル比、新砂添加量、及び静電容量は、何れも強熱減量と相関を有する量である。したがって、上記の構成によれば、更に精度良く強熱減量を推定することができる。
【0099】
態様4に係る強熱減量推定装置は、態様1~3の何れか一態様に係る強熱減量推定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様4に係る強熱減量推定装置において、前記添加物データには、樹脂種、樹脂添加量、硬化剤種、及び硬化剤添加量の少なくとも何れかが含まれている。
【0100】
樹脂種、樹脂添加量、硬化剤種、及び硬化剤添加量は、何れも強熱減量と相関を有する量である。したがって、上記の構成によれば、更に精度良く強熱減量を推定することができる。
【0101】
態様5に係る強熱減量推定装置は、態様1~4の何れか一態様に係る強熱減量推定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様5に係る強熱減量推定装置において、前記焙焼環境データには、炉内温度、炉温、周辺温度、ガス圧、及びガス量の少なくとも何れかが含まれている。
【0102】
炉内温度、炉温、周辺温度、ガス圧、及びガス量は、何れも強熱減量と相関を有する量である。したがって、上記の構成によれば、更に精度良く強熱減量を推定することができる。
【0103】
態様6に係る強熱減量推定装置は、態様1~5の何れか一態様に係る強熱減量推定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様6に係る強熱減量推定装置において、前記プロセッサは、前記鋳物砂の砂処理サイクルに含まれる工程の実施条件を、前記推定ステップにて推定した強熱減量に応じて設定する条件設定ステップを更に実行する。
【0104】
上記の構成によれば、砂処理サイクルに含まれる工程の実施条件を、推定した強熱減量に応じた実施条件に設定することができる。
【0105】
態様7に係る強熱減量推定装置は、態様6に係る強熱減量推定装置の特徴に加えて、以下の特徴を有している。すなわち、態様7に係る強熱減量推定装置において、前記実施条件は、砂再生工程の実施条件、混練工程の実施条件、及び新砂投入工程の実施条件の少なくとも何れかである。
【0106】
上記の構成によれば、砂再生工程、混練工程、及び新砂投入工程の少なくとも何れかの実施条件を、推定した強熱減量に応じた実施条件に設定することができる。
【0107】
態様8に係る強熱減量推定方法は、一又は複数のプロセッサが、機械学習により構築された学習済モデルを用いて、鋳物砂の強熱減量を推定する推定ステップを含んでいる。態様8に係る強熱減量推定方法において、(a)前記学習済モデルの入力は、(1)焙焼期間中に検出した前記鋳物砂の重量に関する砂重量データと、(2)前記鋳物砂の性質に関する砂性質データ、前記鋳物砂に添加された添加物に関する添加物データ、及び、前記焙焼期間中に検出した焙焼環境に関する焙焼環境データの少なくとも何れかと、であり、(b)前記学習済モデルの出力は、前記強熱減量の推定値、又は、前記焙焼期間よりも長い予め定められた時間に亘って焙焼した後の前記鋳物砂の重量の推定値である。
【0108】
上記の方法によれば、砂重量データに加えて、砂性質データ、添加物データ、及び焙焼関係データに基づいて強熱減量を予測するので、焙焼期間が短くても、強熱減量を精度良く推定することができる。
【0109】
態様9に係る機械学習装置には、学習用データセットを用いた教師あり学習によって、強熱減量を推定する学習済モデルを構築する構築ステップを実行する一又は複数のプロセッサを備えている。態様9に係る機械学習装置において、(a)前記学習済モデルの入力は、(1)焙焼期間中に検出した前記鋳物砂の重量に関する砂重量データと、(2)前記鋳物砂の性質に関する砂性質データ、前記鋳物砂に添加された添加物に関する添加物データ、及び、前記焙焼期間中に検出した焙焼環境に関する焙焼環境データの少なくとも何れかと、であり、(b)前記学習済モデルの出力は、前記強熱減量の推定値、又は、前記焙焼期間よりも長い予め定められた時間に亘って焙焼した後の前記鋳物砂の重量の推定値である。
【0110】
上記の構成によれば、強熱減量を精度良く推定する学習済モデルを構築することができる。
【0111】
態様10に係る機械学習方法は、一又は複数のプロセッサが、学習用データセットを用いた教師あり学習によって、強熱減量を推定する学習済モデルを構築する構築ステップを含んでいる。態様10に係る機械学習方法において、(a)前記学習済モデルの入力は、(1)焙焼期間中に検出した前記鋳物砂の重量に関する砂重量データと、(2)前記鋳物砂の性質に関する砂性質データ、前記鋳物砂に添加された添加物に関する添加物データ、及び、前記焙焼期間中に検出した焙焼環境に関する焙焼環境データの少なくとも何れかと、であり、(b)前記学習済モデルの出力は、前記強熱減量の推定値、又は、前記焙焼期間よりも長い予め定められた時間に亘って焙焼した後の前記鋳物砂の重量の推定値である。
【0112】
上記の方法によれば、強熱減量を精度良く推定する学習済モデルを構築することができる。
【0113】
〔付記事項1〕
本実施形態は、(1)砂重量データを、強熱減量の推定値に支配的な影響を与える主たるデータとし、(2)砂性質データ、添加物データ、及び焙焼環境データを、推定精度を向上させるための従たるデータとする設計思想に基づいている。砂重量データに加えて、砂性質データ、添加物データ、及び焙焼環境データの少なくとも何れかを入力とする学習済モデルLMを用いて強熱減量を推定する構成を採用しているのは、このためである。
【0114】
しかしながら、砂性質データのひとつである静電容量も、強熱減量の推定値に支配的な影響を与えることが知られている。すなわち、鋳物砂の焙焼を行わずに、(1)静電容量を、強熱減量の推定値に支配的な影響を与える主たるデータとし、(2)静電容量以外の砂性質データ及び添加物データを、推定精度を向上させるための従たるデータとする設計思想に基づく実施形態を採用することも可能である。この場合、静電容量に加えて、静電容量以外の砂性質データ及び添加物データを入力とする学習済モデルを用いて強熱減量を推定することになる。これにより、静電容量のみに基づき強熱減量を推定する従来の方法よりも精度良く強熱減量を推定することが可能になる。
【0115】
〔付記事項2〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる他の実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
1 強熱減量推定装置
11 プロセッサ
12 一次メモリ
13 二次メモリ
14 入出力インタフェース
15 通信インタフェース
16 バス
M1 強熱減量推定方法
M11 前処理ステップ
M12 推定ステップ
2 機械学習装置
21 プロセッサ
22 一次メモリ
23 二次メモリ
24 入出力インタフェース
25 通信インタフェース
26 バス
M2 機械学習方法
M21 学習用データセット構築ステップ
M22 学習済モデル構築ステップ
S 強熱減量推定システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8