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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】窓及びそれを備えた建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/64 20060101AFI20230307BHJP
   E06B 7/30 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
E06B3/64
E06B7/30 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020214946
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100761
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000155207
【氏名又は名称】株式会社明工
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】山根 正之
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 裕一
(72)【発明者】
【氏名】小玉 知久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 五大
【審査官】素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-084412(JP,A)
【文献】特開2008-151307(JP,A)
【文献】登録実用新案第3222148(JP,U)
【文献】特開2004-360244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/54 - 3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建具に設けられる窓であって、
前記窓は、第1窓枠と第2窓枠とからなり、これらの窓枠が前記建具に形成され取付孔を通して結合されることによって窓を構成し、
前記第1窓枠は、窓縁と、この窓縁の背面側に延出する周枠部とを有し、この周枠部の内面側に周方向に任意の間隔でパネル嵌合部を複数備えるとともに、このパネル嵌合部によってパネルが嵌合支持され、
前記周枠部の外面側に、窓縁から離れた遠位点から徐々に近接する近位点まで傾斜状に形成されたラチェット用ラックギアを1箇所または周方向に複数配置するとともに、前記ラチェット用ラックギアに隣接する位置であって前記周枠部よりも外周側となる位置に、前記窓縁の背面側に延出する係合枠部を設け、前記係合枠部の先端側内面に凸部を形成するとともに、所定の離間を空けた位置に周枠部から連続する壁部との間に形成された溝によって相手側窓枠のラチェット用ラックギアが係合するためのラチェット嵌合部を形成し、かつ前記係合枠部にラチェット用ラックギアに係止することにより逆戻りを防止するラチェット爪を形成し、
前記第2窓枠は前記第1窓枠と同一の部材とされ、前記第1窓枠と第2窓枠とを前記取付孔を通して対面させるとともに、少なくとも一方側の窓枠を中心回りに回転させることにより窓枠同士間で前記ラチェット用ラックギアと前記ラチェット嵌合部とを夫々係合させ、
前記ラチェット嵌合部に係合したラチェット用ラックギアが傾斜状に形成されていることによる引寄せによって窓枠同士が前記建具を隙間無く挟んで結合されるとともに、前記ラチェット爪のラチェット用ラックギアに対する歯合による逆戻り防止によって窓枠同士の結合維持と緩み止めが図られていることを特徴とする窓。
【請求項2】
前記第1窓枠および第2窓枠において、ラチェット用ラックギア及び係合枠部が周方向に1~5個配置されている請求項1記載の窓。
【請求項3】
前記窓縁は、正面視で円形又は多角形の窓縁とされる請求項1、2いずれかに記載の窓。
【請求項4】
請求項1~3いずれかに記載の窓を備えたことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉、内壁又は間仕切り、外壁などの建具に設けられる窓及びそれを備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、扉、内壁または間仕切り、外壁などの建具に対して、室内灯の確認、採光、意匠性の向上等を目的として、窓を設けることが行われている。
【0003】
窓の構造としては、従来より種々の構造のものが提案されている。例えば、下記特許文献1では、ドアパネルの装着穴に係合装着されるホルダーと、ホルダーで支持される窓板とを備えており、ホルダーは、装着穴の周縁壁で受け止められるフランジと、フランジの片面から突設されて、装着穴に差し込み係合される弾性係合片とを備えており、ホルダーの少なくともフランジが透明プラスチック材で形成してあるドア用小窓が提案されている。
【0004】
また、下記特許文献2では、厚みが互いに異なる2種類のドアに適用可能な明り窓であって、閉成時にドアが仕切る一方の空間と他方の空間とを連通するように形成されたドアの窓孔に、当該一方の空間側から嵌合される第1の部材と、当該他方の空間側から嵌合される第2の部材とから成り、前記第1の部材及び第2の部材の両者の形状は、同一平面上で所定の角度回転させても互いの合同関係を保持する形状をなし、前記第1の部材及び第2の部材の両者は、前記窓孔の開口を塞ぐ採光部と、前記窓孔内に嵌め込まれたときに前記採光部の周縁部が鍔となるようにその嵌合方向に沿って突出した筒状の嵌入部と、互いに対をなす第1の部材及び第2の部材の両者の嵌入部同士を互いに結合する結合手段とを備え、前記第1の部材及び第2の部材の両者の嵌入部には、互いに線対称関係を有する複数の凹状領域と、互いに線対称関係を有する複数の凸状領域とが交互に形成され、前記第1の部材及び第2の部材の両者の凹状領域の長さ寸法は、当該凹状領域の凹み空間内に対をなす第1の部材及び第2の部材の凸状領域が収まるように設定されている明り窓が提案されている。
【0005】
更に、下記特許文献3では、第一の窓部材と、第二の窓部材との別体から形成され、前記第一の窓部材を前記第二の窓部材にねじ込んで装着穴に挟持固定する固定構造を備えてなり、前記第一の窓部材は、略円板状の窓部と、該窓部を保持する略円筒状の内枠部と、該内枠部の外周面上に形成された雄ねじ部とを有し、前記第二の窓部材は、略円板状の窓部と、該窓部を保持する略円筒状の外枠部と、該外枠部の内周面上に形成された雌ねじ部とを有する丸窓が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-360244号公報
【文献】特開2007-309000号公報
【文献】実用新案登録第3222148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に係るドア用小窓は、ドアに形成した小窓装着穴の壁面に対して圧接する弾性係合片のみで窓枠の取付けを行うものであり、ドアの振動などによって徐々に前記弾性係合片による圧接が弛み、窓枠が外れる可能性があるなどの問題があるため、小さな窓にしか適用できず、ある程度大きな窓への適用は困難であるなどの問題があった。
【0008】
前記特許文献2に係る明り窓は、第1の部材(一方側窓枠)と第2の部材(他方側窓枠)とが同一部材で済むため金型も一つで済み製作が容易化するとともに、破損などによる補充や在庫管理も簡略化されるなどの利点を有する一方で、厚みの異なる2種類のドアにしか適用できず、ドア厚の違いに柔軟に対応できないという問題があるとともに、第1の部材(一方側窓枠)と第2の部材(他方側窓枠)とが係合爪と被係合孔との係合のみによって結合される構造であり、製作誤差や経時的変形によって第1の部材(一方側窓枠)と第2の部材(他方側窓枠)との係合が甘くなり、ガタ付きが生じるようになるなどの問題もあった。
【0009】
前記特許文献3に係る丸窓は、第一の窓部材と第二の窓部材とが雄ネジと雌ネジとの螺合構造によって結合される構造であるため、両者間の隙間(ドア厚に相当)を柔軟に対応できるようになり、ドア厚の違いに柔軟に対応できるようになるという利点を有する。しかしながら、螺合によって窓枠同士を結合する場合は、第一の窓部材と第二の窓部材とが別々の構造となり製作が煩雑になるという問題とともに、経時的に弛みが生じてしまうなどの問題があった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、組となる一方側窓枠と他方側窓枠とを同一の部材とすることができるとともに、経時的にも弛みが生じない構造の窓及びそれを備えた建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、建具に設けられる窓であって、
前記窓は、第1窓枠と第2窓枠とからなり、これらの窓枠が前記建具に形成され取付孔を通して結合されることによって窓を構成し、
前記第1窓枠は、窓縁と、この窓縁の背面側に延出する周枠部とを有し、この周枠部の内面側に周方向に任意の間隔でパネル嵌合部を複数備えるとともに、このパネル嵌合部によってパネルが嵌合支持され、
前記周枠部の外面側に、窓縁から離れた遠位点から徐々に近接する近位点まで傾斜状に形成されたラチェット用ラックギアを1箇所または周方向に複数配置するとともに、前記ラチェット用ラックギアに隣接する位置であって前記周枠部よりも外周側となる位置に、前記窓縁の背面側に延出する係合枠部を設け、前記係合枠部の先端側内面に凸部を形成するとともに、所定の離間を空けた位置に周枠部から連続する壁部との間に形成された溝によって相手側窓枠のラチェット用ラックギアが係合するためのラチェット嵌合部を形成し、かつ前記係合枠部にラチェット用ラックギアに係止することにより逆戻りを防止するラチェット爪を形成し、
前記第2窓枠は前記第1窓枠と同一の部材とされ、前記第1窓枠と第2窓枠とを前記取付孔を通して対面させるとともに、少なくとも一方側の窓枠を中心回りに回転させることにより窓枠同士間で前記ラチェット用ラックギアと前記ラチェット嵌合部とを夫々係合させ、
前記ラチェット嵌合部に係合したラチェット用ラックギアが傾斜状に形成されていることによる引寄せによって窓枠同士が前記建具を隙間無く挟んで結合されるとともに、前記ラチェット爪のラチェット用ラックギアに対する歯合による逆戻り防止によって窓枠同士の結合維持と緩み止めが図られていることを特徴とする窓が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、建具を挟んで一方側に設けられる第1窓枠と、他方側に設けられる第2窓枠とからなり、これらの窓枠が前記建具に形成された取付孔を通して結合することによって窓が構成されている。
【0013】
前記第一窓枠は、窓縁と、この窓縁の背面側に延出する周枠部とを有し、この周枠部の内面側に周方向に任意の間隔でパネル嵌合部を複数備えるとともに、このパネル嵌合部によってパネルが嵌合支持されている。また、前記周枠部の外面側には、窓縁から離れた遠位点から徐々に近接する近位点まで傾斜状に形成されたラチェット用ラックギアを周方向に1箇所または複数配置するとともに、前記ラチェット用ラックギアに隣接する位置であって前記周枠部よりも外周側となる位置に、前記窓縁の背面側に延出する係合枠部を設け、前記係合枠部の先端側内面に凸部を形成するとともに、所定の離間を空けた位置に周枠部から連続する壁部との間に形成された溝によって相手側窓枠のラチェット用ラックギアが係合するためのラチェット嵌合部を形成し、かつ前記係合枠部にラチェット用ラックギアに係止することにより逆戻りを防止するラチェット爪を形成している。
【0014】
前記第2窓枠としては、前記第1窓枠と同一の部材がそのまま用いられる。従って、組となる一方側窓枠と他方側窓枠とを同一の部材とすることができるため、金型も一つで済み製作が容易化するとともに、破損などによる補充や在庫管理も簡略化されるなどの利点を有するようになる。
【0015】
取付けに当たっては、前記第1窓枠と第2窓枠とを前記取付孔を通して対面させるとともに、少なくとも一方側の窓枠を中心回りに回転させることにより窓枠同士間で前記ラチェット用ラックギアと前記ラチェット嵌合部とを夫々係合させるようにする。従って、前記ラチェット嵌合部に係合したラチェット用ラックギアが傾斜状に形成されていることによる引寄せによって窓枠同士が前記建具を隙間無く挟んで結合されるようになる。この場合、第1窓枠と第2窓枠との距離が連続的に調整可能となるため、建具の厚みの違いに柔軟に対応できるようになる。
【0016】
また、前記ラチェット爪のラチェット用ラックギアに対する歯合による逆戻り防止によって窓枠同士の結合維持と緩み止めが図られているため、経時的に窓枠同士の結合が緩くなってガタ付きが生じるようになるのを未然に防止できるようになる。
【0017】
請求項2に係る本発明として、前記第1窓枠および第2窓枠において、ラチェット用ラックギア及び係合枠部が周方向に1~5個配置されている請求項1記載の窓が提供される。
【0018】
上記請求項2記載の発明は、前記第1窓枠および第2窓枠におけるラチェット用ラックギア及び係合枠部の周方向の配置数を具体的に1~5個に規定したものである。
【0019】
請求項3に係る本発明として、前記窓縁は、正面視で円形又は多角形の窓縁とされる請求項1、2いずれかに記載の窓が提供される。
【0020】
上記請求項3記載の発明は、前記窓縁の正面視形状を規定したものである。具体的には、前記窓縁は正面視で円形又は多角形の窓縁とする例を挙げることができる。
【0021】
請求項4に係る本発明として、請求項1~3いずれかに記載の窓を備えたことを特徴とする建具が提供される。
【発明の効果】
【0022】
以上詳説のとおり本発明によれば、組となる一方側窓枠と他方側窓枠とを同一の部材とすることができるとともに、経時的にも弛みが生じない構造の窓及びそれを備えた建具を提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る窓1を示す部分斜視図である。
図2】その縦断面図である。
図3】窓1の分解図である。
図4】(A)は第1窓枠3の正面からの斜視図、(B)は背面からの斜視図である。
図5】第1窓枠3の背面からの拡大斜視図である。
図6】第1窓枠3の裏面からの斜視図である。
図7】第1窓枠3の背面からの平面図である。
図8】第1窓枠3の縦断面図である。
図9】パネル9の嵌め込み要領図である。
図10】第1窓枠3と第2窓枠との結合説明図である。
図11】係合枠部11とラチェット用ラックギア10との係合状態を示す要部拡大図(図10のX部)である。
図12】窓1の取付け手順図(A)~(D)である。
図13】ラチェット用ラックギア10と係合枠部11とを周方向に1箇所ずつ設けた形態例を示す、(A)は片側窓枠の平面図、(B)は組立て状態を示す図である。
図14】窓縁5の正面視形状を多角形状とした場合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0025】
本発明に係る窓1は、図1に示されるように、扉、内壁または間仕切り、外壁などの建具2に対して設けられるものである。前記窓1は、図2及び図3に示されるように、第1窓枠3と第2窓枠4とからなり、これらの窓枠3、4が前記建具2に形成された丸い取付孔2aを通して結合されることによって構成されている。すなわち、後述するように、窓1は、第1窓枠3を部材2の一方側から取付孔2aに挿入するとともに、第2窓枠4を建具2の他方側から取付孔2aに挿入し、取付孔2a内においてこれら窓枠同士3、4を結合することにより建具2に取り付けられているものである。なお、前記「建具」とは、開口部に設けられた障子や襖(ふすま)、窓、ドア、戸などの部分とそれを支える枠などの総称をいう。なお、障子や襖、室内ドアや戸などを「内部建具」、玄関などに用いられる引き戸や片開きドアなどを「出入り口建具」、建物の外周に設置された窓などを「窓建具」、門扉やフェンスなどを「外構建具」と分類される場合もある。
【0026】
前記第1窓枠3は、図4に示されるように、正面視で円形の窓縁5と、この窓縁5の背面側に延出する周枠部6とを有し、この周枠部6の基端側に周方向に任意の間隔でパネル嵌合部8、8…を複数備えるとともに、このパネル嵌合部8、8…によってパネル9が嵌合支持されている。
【0027】
前記窓縁5は、全周に亘って外方への突出片部5aを有し、この突出片部5aが図2に示されるように、建具2に形成された取付孔2aの縁に掛かるようになっている。前記周枠部6は、窓縁5の背面側に延出するように、すなわち窓縁5の垂直面に対して直交する方向に延出するように形成された部材である。この周枠部6の延出代(延出長さS)は、図5を見ても分かるように、一定長さではなく、必要部分では長く形成され、また干渉を避けるため一部では短く形成されている。具体的には、図6において、後述のラチェット用ラックギア10の形成部Aでは突出代が時計回り方向に漸次減少するように形成され、これに隣接する部分Bでは一定の突出代で形成され、更にこれに隣接する干渉回避部では突出代が漸次減少する減少部Cとこれに連続する突出代最小部Dが形成されている。これらA~Dの区間を一組として、周方向に3組形成されている。なお、前記周枠部6は窓縁5の全周に亘って形成される必要はなく、前記最小部Dでは突出代を無くし、周枠部6が不連続に形成されていても良い。
【0028】
前記パネル嵌合部8は、図4に示されるように、周枠部6の内面側(中心側)に断面三角形状の凸部7を形成することにより、この凸部7と前記窓縁5(窓縁5の内方側への突出部分)との間の溝として形成されている。前記凸部7は全体で6~12個程度形成することが望ましい。図示例では、不等間隔で9個の凸部7が形成されている。このパネル嵌合部8、8…に対するパネル9の嵌合は、図9に示されるように、例えば第1窓枠3の背面側を上に向けた状態でテーブルなどの上に載置し、その上面側からパネル9を第1窓枠3の内部に押し込んでパネル嵌合部8に対して嵌合させるようにする。前記凸部7は断面三角形状を成しており、上側からパネル9を強引に押し込むと弾性変形によって拡開するように変形し、パネル9がパネル嵌合部8内に嵌め込まれるようになる。なお、前記パネル9としては、優れた強度と透明性、劣化しない耐候性を備えるアクリル板を用いることが望ましい。
【0029】
前記周枠部6の外面側には、窓縁5から離れた遠位点から徐々に近接する近位点まで傾斜状に形成されたラチェット用ラックギア10を1箇所または周方向に複数配置されている。具体的には、図5及び図6に示されるように、周枠部6の突出代を大きくした位置から徐々に突出代を小さくしたラックギア形成部Aを形成するとともに、このラックギア形成部Aの先端部分の外面側に、前記ラチェット用ラックギア10を形成している。このラチェット用ラックギア10は矩形状の凸部を形成した上でのその上面に鋸歯状のラックギア10aを形成したものであり、ラックギア10aはラチェット爪14が係止した状態から外れ難いようにラチェット爪側に向けて傾斜させたラックギアとしている。図5に示される形態例では、前記ラチェット用ラックギア10は、窓縁5の周方向に均等間隔で3個配置され、図7に示されるように、中心角で120°間隔とする位置に均等配置でそれぞれ形成されている。
【0030】
なお、前記ラチェット用ラックギア10は、周方向に均等配置で形成することでもよいが、不均等な間隔で形成することでもよい。すなわち、前記ラチェット用ラックギア10は周方向に任意の間隔で設けられていればよく、その間隔は均等でも不均等でもよい。
【0031】
前記ラチェット用ラックギア10、10…に隣接する位置であって前記周枠部6よりも外周側となる位置に、前記窓縁5の背面側に延出する係合枠部11が設けられている。この係合枠部11も周方向に1箇所または均等間隔で複数、具体的には前記ラチェット用ラックギア10と同数配置されている。本形態例では、前記係合枠部11は、図7に示されるように、中心角で120°間隔とする位置に均等配置でそれぞれ形成されている。
【0032】
前記係合枠部11の突出代は、前記ラチェット用ラックギア10の遠位点とほぼ同等の長さとされ、前記係合枠部11の内面側には、相手側窓枠のラチェット用ラックギア10が係合するためのラチェット嵌合部13が形成されている。このラチェット嵌合部13は、図5に示されるように、前記係合枠部11の先端側内面に凸部12を形成するとともに、所定の離間を空けた位置に周枠部6から連続する壁部との間に形成された溝とされる。また、前記係合枠部11の周枠方向両端部の片側、すなわち前記ラチェット用ラックギア10の遠位点が存在する側に、ラチェット用ラックギア10に係止することにより逆戻りを防止するラチェット爪14が形成されている。前記ラチェット爪14は、前記係合枠部11の端部にやや内側向き方向(中心側方向)に傾斜させて形成した突出片である。
【0033】
前記係合枠部11の前記ラチェット爪14が形成される側の端部と、ラックギア形成部Aとの間の周枠部6は、窓枠同士を結合した際に、相手側のラックギア形成部Aの収容部分となるため、突出代が短く切欠き状に形成され、前記突出代が漸次減少する減少部Cとこれに連続する突出代最小部Dとなっている。
【0034】
一方、前記第2窓枠4については、前記第1窓枠3と全く同一の部材が使用される。そのため構造説明を省略するが、図3に示されるように、第1窓枠3と第2窓枠4とを対面合わせとした状態で、少なくとも一方側の窓枠、図示例では第1窓枠3を中心軸回りに回転させ、窓枠同士間で前記ラチェット用ラックギア10と前記ラチェット嵌合部13とを夫々係合させることにより窓枠同士が結合されるようになっている。この点について、更に図10及び図11に基づいて詳述する。
【0035】
先ず、図3に示されるように、第1窓枠3と第2窓枠4とを対面させた状態から、図10(B)に示されるように、窓枠同士3、4間で前記ラチェット用ラックギア10と前記係合枠部11のラチェット嵌合部13とを夫々係合させるようにする。すなわち、第1窓枠3の係合枠部11(ラチェット嵌合部13)と第2窓枠4のラチェット用ラックギア10とが係合させたならば、その隣接位置では第1窓枠3のラチェット用ラックギア10と第2窓枠4の係合枠部11(ラチェット嵌合部13)とを係合させる。この係合関係が周方向に繰り返されることになる。
【0036】
そして、図10(B)に示されるように、第2窓枠4を固定した状態で、第1窓枠3を時計回りに回転させると、詳細には図11に示されるように、ラチェット用ラックギア10が係合枠部11の凸部12の側面と接触した状態で、ラチェット嵌合部13内を徐々に進入して行くと同時に、ラチェット用ラックギア10が傾斜状に形成されていることによる引寄せ作用によって第1窓枠3が第2窓枠4側に接近するように移動する。また同時、前記ラチェット用ラックギア10に対してラチェット爪14が歯合することによる逆戻り防止によって窓枠3、4同士の結合維持と緩み止めが図られるようになる。
【0037】
次に、図12に基づいて、実際の窓1の取付け手順について説明する。本例では、第2窓枠4を固定側とし、第1窓枠3を回転側として取り付ける場合について説明を行う。
【0038】
先ず、図12(A)に示されるように、第2窓枠4の周枠部6を建具2の取付孔2aに挿入した状態で位置決めし、第1窓枠3を第2窓枠4に対して対面させた状態とし、第1窓枠3の周枠部6を取付2aに挿入し、図12(B)に示されるように、窓枠3、4同士間で前記ラチェット用ラックギア10と前記係合枠部11のラチェット嵌合部13とを夫々係合させるようにする。すなわち、第1窓枠3の係合枠部11のラチェット嵌合部13を第2窓枠4のラチェット用ラックギア10に係合させるとともに、第1窓枠3のラチェット用ラックギア10を第2窓枠4の係合枠部11のラチェット嵌合部13に係合させるようにする。
【0039】
次に、図12(C)に示されるように、第1窓枠3を中心軸周りに時計回り方向に回転させると、ラチェット用ラックギア10が係合枠部11の凸部12の側面と接触した状態でラチェット嵌合部13内を徐々に進入して行くと同時に、ラチェット用ラックギア10が傾斜状に形成されていることによる引寄せ作用によって第1窓枠3が第2窓枠4側に接近するように移動する。この際、同図に示されるように、ラチェット用ラックギア10と係合枠部11との係合開始時の窓縁5から建具2までの距離が厚み調整可能量となり、この厚み調整可能量の範囲内でドア厚の違いに柔軟に対応できるようになる。
【0040】
その後、図12(D)に示されるように、窓縁5が建具2に隙間無く密着するまで第1窓部3を回転させると、第1窓枠3と第2窓枠4とが弛みなくきっちりと結合されるようになる。前記ラチェット爪14のラチェット用ラックギア10に対する歯合による逆戻り防止によって窓枠3、4同士の結合維持と緩み止めが図られているため、経時的にも両窓枠3、4に弛みが生じてガタ付きが発生することもない。
【0041】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、第2窓枠4を固定側とし、第1窓枠3を回転側として取り付ける場合について説明を行ったが、第1窓枠3を固定側とし、第2窓枠4を回転側(反時計回りに回転させる。)として取付けを行っても良いし、第1窓枠3と第2窓枠4の両方を回転させるようにしても良い。
【0042】
(2)上記形態例では、前記ラチェット用ラックギア10と係合枠部11とをそれぞれ窓縁5の周方向に均等間隔(中心角で120°間隔)で3個配置した例について説明を行ったが、図13に示されるように、前記ラチェット用ラックギア10と係合枠部11とをそれぞれ周方向の1箇所ずつ設けるようにしてもよい。
【0043】
図13(A)に示されるように、ラチェット用ラックギア10を周方向に1箇所設けるとともに、このラチェット用ラックギア10に隣接する位置に係合枠部11を1箇所設けるようにする。なお、同図では、他に周方向に中心保持用ラック20と中心保持用係合部21とを中心角で120°間隔位置にそれぞれ設けているが、これらは第1窓枠3と第2窓枠4とを組み合わせた際に、これら窓枠3、4を中心位置(同心位置)に保持するためのものである。
【0044】
図13(B)に示されるように、第1窓枠3と第2窓枠4とを対面させた組み合わせた際には(第1窓枠3側を実線、第2窓枠4側を鎖線で示す。)、第1窓枠3のラチェット用ラックギア10と第2窓枠4の係合枠部11とが係合するとともに、その隣接位置で第1窓枠3の係合枠部11と第2窓枠4のラチェット用ラックギア10とが夫々係合するようになっている。このように、前記ラチェット用ラックギア10と係合枠部11とをそれぞれ周方向に1箇所ずつ設けるようにした場合でもあっても、第1窓枠3と第2窓枠4とは弛みなくきっちりと結合されるようになる。また、前記ラチェット爪14のラチェット用ラックギア10に対する歯合による逆戻り防止によって窓枠3、4同士の結合維持と緩み止めが図られているため、経時的にも両窓枠3、4に弛みが生じてガタ付きが発生することがない。
なお、前記中心保持用ラック20と中心保持用係合部21との構造は、両者の係合により窓枠3、4を同心位置に合わせるだけの機能であるため、もっと簡易的な構造または形状であってもよい。更に、図示しないが、前記ラチェット用ラックギア10と係合枠部11とをそれぞれ180°方向位置に設けるようにしてもよい。
【0045】
(3)上記形態例では、窓縁5の正面視の形状を円形とした丸窓について説明を行ったが、窓縁5の正面視形状は、図14に示されるように、多角形状(図示は八角形状)としてもよい。更に、外形状を多角形状としパネル部分の窓形状を円形としたり、逆に外形状を円形としパネル部分の窓形状を多角形状とすることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…窓、2…建具、3…第1窓枠、4…第2窓枠、5…窓縁、6…周枠部、7…凸部、8…パネル嵌合部、9…パネル、10…ラチェット用ラックギア、11…係合枠部、12…凸部、13…ラチェット嵌合部、14…ラチェット爪
図1
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