(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】手術支援装置
(51)【国際特許分類】
A61B 34/20 20160101AFI20230307BHJP
【FI】
A61B34/20
(21)【出願番号】P 2021543844
(86)(22)【出願日】2019-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2019034636
(87)【国際公開番号】W WO2021044522
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-08-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514074496
【氏名又は名称】株式会社インキュビット
(73)【特許権者】
【識別番号】520285640
【氏名又は名称】アナウト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 直
(72)【発明者】
【氏名】北村 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】熊頭 勇太
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-202313(JP,A)
【文献】国際公開第2018/203304(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0223957(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0071032(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00-34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象領域の3次元情報を含む領域情報を取得する領域情報取得部と、
器具の3次元情報を含む器具情報を取得する器具情報取得部と、
前記領域情報と前記器具情報とに基づいて、前記処理対象領域に対する前記器具の位置及び角度を含む状態情報を算出する状態情報算出部と、
算出した前記状態情報を提示する提示部と、
を有
し、
前記器具は自動縫合器であり、
前記提示部は、前記自動縫合器により縫合されるべきラインを補助線として更に提示することを特徴とする、手術支援装置。
【請求項2】
前記状態情報は、少なくとも前記器具の前記処理対象領域表面に対する向き、速さ、又は強さのいずれかを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の手術支援装置。
【請求項3】
前記提示部は、前記状態情報を表示部に表示させることを特徴とする、請求項1または2に記載の手術支援装置。
【請求項4】
前記提示部は、前記
器具の種別及び手術の術式に応じて、少なくとも前記器具の前記処理対象領域表面に対する位置、角度、向き、速さ、又は強さのいずれかの範囲を提示することを特徴とする、請求項2に記載の手術支援装置。
【請求項5】
前記提示部は、前記器具
の前記処理対象領域表面に対する位置、角度、向き、速さ、又は強さの範囲内
を提示することを特徴とする、請求項2に記載の手術支援装置。
【請求項6】
コンピュータに、
処理対象領域の3次元情報を含む領域情報を取得するステップと、
器具の3次元情報を含む器具情報を取得するステップと、
前記領域情報と前記器具情報とに基づいて、前記処理対象領域に対する前記器具の位置及び角度を含む状態情報を算出するステップと、
算出した前記状態情報を提示するステップと、
を実行させる為のプログラム
であって、
前記器具は自動縫合器であり、
前記コンピュータに、前記自動縫合器により縫合されるべきラインを補助線として更に提示させる為のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットを用いた遠隔手術が行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手術器具には様々な種類があるところ、その種類によって最適な操作は異なる。
【0005】
本発明はこのような背景を鑑みてなされたものであり、手術器具を効果的に操作することを支援する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、手術支援装置であって、処理対象領域の3次元情報を含む領域情報を取得する領域情報取得部と、器具の3次元情報を含む器具情報を取得する器具情報取得部と、前記領域情報と前記器具情報とに基づいて、前記器具の前記処理対象領域に対する状態情報を算出する状態情報算出部と、算出した前記状態情報を提示する提示部と、を有することとする。
【0007】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、手術器具を効果的に操作することを支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態による手術支援システムの構成例を示す図である。
【
図2】本実施の形態による手術支援システムの構成例を示す図である。
【
図3】インスツルメント部200を説明する図である。
【
図4】可動アーム211の動作を説明する図である。
【
図5】手術支援装置3のハードウェア構成例の概略を説明するブロック図である。
【
図6】手術支援装置3のソフトウェア構成例の概略を説明するブロック図である。
【
図7】姿勢基準情報記憶部332に登録される姿勢基準情報の構成例を示す図である。
【
図10】器具状態情報出力部314による出力例を示す図である。
【
図11】手術器具212の移動方向についてのアドバイス情報の一例を示す図である。
【
図12】モノポーラー電気メスによる処理可能領域(手術対象領域)の切離手術(術式)を説明する図である。
【
図13】シーリングデバイスによる処理可能領域(手術対象領域)の切離手術(術式)を説明する図である。
【
図14】シーリングデバイスによる血管のシーリングの術式を説明する図である。
【
図15】血管クリッピングの術式を説明する図である。
【
図16】自動縫合器による臓器離断の術式を説明する図である。
【
図17】自動縫合器による臓器離断の術式を説明する図である。
【
図18】自動縫合器による臓器部分切除の術式を説明する図である。
【
図19】自動縫合器による消化管の側々吻合の術式を説明する図である。
【
図20】自動縫合器による消化管の側々吻合の術式を説明する図である。
【
図21】針糸、持針器を用いた縫合による閉鎖、臓器再建の術式を説明する図である。
【
図22】針糸、持針器を用いた縫合による閉鎖、臓器再建の術式を説明する図である。
【
図23】針糸、持針器を用いた縫合による閉鎖、臓器再建の術式を説明する図である。
【
図24】針糸、持針器を用いた縫合による閉鎖、臓器再建の術式を説明する図である。
【
図25】針糸、持針器を用いた縫合による閉鎖、臓器再建の術式を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明は、以下のような構成を備える。
【0011】
[項目1]
処理対象領域の3次元情報を含む領域情報を取得する領域情報取得部と、
器具の3次元情報を含む器具情報を取得する器具情報取得部と、
前記領域情報と前記器具情報とに基づいて、前記器具の前記処理対象領域に対する状態情報を算出する状態情報算出部と、
算出した前記状態情報を提示する提示部と、
を有することを特徴とする、手術支援装置。
[項目2]
前記状態情報は、少なくとも前記器具の前記処理対象領域表面に対する位置、角度、向き、速さ、又は強さのいずれかを含むことを特徴とする、項目1に記載の手術支援装置。
[項目3]
前記提示部は、前記状態情報を表示部に表示させることを特徴とする、項目1または2に記載の手術支援装置。
[項目4]
前記提示部は、前記処理内容に応じて、少なくとも前記器具の前記処理対象領域表面に対する位置、角度、向き、速さ、又は強さのいずれかの範囲を提示することを特徴とする、項目1~3のいずれかに記載の手術支援装置。
[項目5]
前記提示部は、前記器具が、前記適切な位置、角度、向き、速さ、又は強さの範囲内となるように指示することを特徴とする、項目1~4のいずれかに記載の手術支援装置。
[項目6]
前記器具は、少なくとも電気メスを含むエネルギーデバイス、鉗子、剪刀、自動縫合器、自動吻合器、結紮用クリップ、タッカーのいずれかであることを特徴とする、項目1~5のいずれかに記載の手術支援装置。
[項目7]
コンピュータに、
処理対象領域の3次元情報を含む領域情報を取得するステップと、
器具の3次元情報を含む器具情報を取得するステップと、
前記領域情報と前記器具情報とに基づいて、前記器具の前記処理対象領域に対する状態情報を算出するステップと、
算出した前記状態情報を提示するステップと、
を実行させる為のプログラム。
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る手術支援システムについて説明する。本実施形態の手術支援システムは、たとえば、鏡視下手術やロボット手術のように遠隔操作により行う手術を支援するものである。具体的には、遠隔操作の対象となる手術器具の理想的な状態を示すとともに、実際の手術器具の状態を理想的にするための誘導指示を出力する。
<概要>
図1および
図2は、本実施の形態による手術支援システム(以下、単に「システム」と呼ぶ)1を構成する要素を示す概略図である。なお、図の構成は一例であり、これら以外の要素が含まれていてもよい。
【0013】
システム1は、手術装置2と手術支援装置3とを備えている。手術装置2は、手術対象4に対してオペレータ5による手術を実施するための装置である。本実施の形態によるオペレータは手術の執刀医等であり、手術対象4は患者等である。
【0014】
<手術装置2>
手術装置2は、手術対象4に対し実際に手術を行う(即ち、手術対象4の身体に直接に作用する)作業ユニット20と、作業ユニット20に対するオペレータ5からの操作を受け付ける操作ユニット22と、作業ユニット20及び操作ユニット22を制御する制御ユニット24を有している。本実施の形態による手術装置2は、所謂鏡視下で行うことができる手術、眼科手術、脳外科手術、脊髄手術、人口関節手術等のように、手術対象領域(閉じられた空間に限られない)に対して、当該領域に手術器具を貫通させるための小さな孔を作り、当該孔から手術器具を領域へと挿入することによって低侵襲で行う手術方法のための装置である。例示すれば、喉頭内視鏡、気管支鏡、消化管内視鏡、十二指腸内視鏡、小腸内視鏡、大腸内視鏡、胸腔鏡、腹腔鏡、膀胱鏡、胆道鏡、関節鏡、脊椎内視鏡、血管内視鏡、硬膜外腔内視鏡等が挙げられるがこれに限られない。
【0015】
<作業ユニット20>
図2に示されるように、作業ユニット20は、手術に利用するインスツルメント部200と、少なくとも手術対象4の手術野の状態又はインスツルメント部200の状態を把握するセンサ部202とを備えている。センサ部202には内視鏡カメラ部202’が含まれている。内視鏡カメラ部202’は好適には複数配される。
【0016】
図3は、インスツルメント部200を説明する図である。インスツルメント部200は、操作可能な可動アーム211の先端に手術器具212が取付られる。これらの手術器具212は操作ユニット22によって受け付けた操作によって制御することができる。手術器具212としては、鑷子、剪刀、鉗子、持針器及び針、電気メス等のエネルギーデバイス、自動縫合器、自動吻合器、結紮用クリップ、タッカー等やこれらと同等の機能を発揮するものが含まれるが、用途に応じてこれ以外の器具を使用されていてもよい。手術器具212は、使用時に適切とされる固有の向きが設定されているものとする。
図3の例では、一例としてピンセットの手術器具212を示しており、2つの把持部2121および2122の間の矢印213が示す方向を、手術器具212の向きとして設定することができる。この場合、把持部2121および2122が開閉動作を行った場合でも、手術器具212の向きは矢印213の方向として把握することができる。また、手術器具212は、3自由度で回動可能である。なお、手術器具212は、回動ではなく揺動するようにしてもよいし、湾曲するなどによりその姿勢を変化させるようにしてもよい。
図3の例では、手術器具212は、可動アーム211の長手方向に並行な軸231を中心に回動可能であるとともに、軸231に直交する2つの軸232および233を中心に回動可能である。
【0017】
図4は、可動アーム211の動作について説明する図である。可動アーム211は、矢印234が示す可動アーム211の長手方向に並行に移動させることができる。また、可動アーム211は、支点235を中心として揺動させることができる。支点235は、手術対象4の内側であっても外側であってもよいが、手術対象4の皮膚部を支点とすることができる。可動アーム211の端部2111は、矢印236および237が示す方向に揺動される。したがって、端部2111に設けられる手術器具212は、矢印234が示す長手方向と直交する平面の座標系の任意の座標に位置することができる。このようにして、インスツルメント部200は6自由度で動作可能である。
【0018】
センサ部202は、例えば、インスツルメント部200の状態を検知するための圧力センサ、ジャイロセンサ、加速度センサ、温度センサ、カメラ等、各種のセンサを採用可能である。カメラとしては、光学カメラ、赤外線カメラ、X線カメラ等取得したい情報に応じて適宜採用可能である。本実施形態では、センサ部202により、インスツルメント部200の手術器具212の方向213を把握することができるものとする。なお、センサ部202は稼働アーム211の長手方向を検出し、手術器具212の向き213については、手術器具212が各軸221、222および223を中心に回動した角度を検出して、長手方向と各角度とに基づいて、手術器具212の向き213を算出するようにしてもよい。
【0019】
<操作ユニット22>
操作ユニット22は、オペレータ5の操作を受けるコントローラ部222と、オペレータ5へ情報を表示するディスプレイ部224と、オペレータ5へ音声等による情報を提供するスピーカ部226とを備えている。コントローラ部222は、例えば、ジョイスティック状の入力機器やフットペダル等を組み合わせることができる。本実施の形態によるディスプレイ部224は、所謂VR(Vertual Reality;仮想現実)のHMD(Head Mount Display)状の構造を有しており、ユーザの両目による視差を利用して手術対象領域の立体視が可能である。なお、ディスプレイ部は、依正モニタや、AR(Augmented Reality;拡張現実)等、オペレータに対して作業ユニット20や手術対象者の情報等、手術の実施にあたって必要な情報を視覚的に提供することができるものであればよい。
【0020】
<制御ユニット24>
制御ユニット24は、作業ユニット20と操作ユニット22との情報通信を制御する。例えば、操作ユニット22が受け付けた操作を作業ユニット20に伝達したり、カメラ部202’で取得した画像情報をディスプレイ部224表示したりする。
【0021】
<手術支援装置3>
図5は、手術支援装置3のハードウェア構成例の概略を説明するブロック図である。図示のように、手術支援装置3は、プロセッサ301、メモリ302、ストレージ303、送受信部304、及び入出力部305を主要構成として備え、これらが互いにバス306を介して電気的に接続される。
【0022】
プロセッサ301は、手術支援装置3の動作を制御し、各要素間におけるデータの送受信の制御や、アプリケーションプログラムの実行に必要な処理等を行う演算装置である。このプロセッサ301は、本実施の形態では例えばCPU(Central Processing Unit)であり、ストレージ303に格納されてメモリ302に展開されたアプリケーションプログラム等を実行して各処理を行う。
【0023】
メモリ302は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶装置、及びフラッシュメモリやHDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶装置で構成される補助記憶装置を備える。このメモリ302は、プロセッサ301の作業領域として使用される一方、手術支援装置3の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、及び各種の設定情報等が格納される。
【0024】
ストレージ303は、アプリケーションプログラムや各種の処理に用いられるデータ等が格納される。
【0025】
送受信部304は、手術支援装置3を通信ネットワークに接続する。この送受信部304は、Bluetooth(登録商標)やBLE(Bluetooth Low Energy)といった近距離通信インターフェースを具備するものであってもよい。本実施の形態では、この送受信部304を介して、手術支援装置3が手術装置2と接続される。
【0026】
入出力部305には、必要に応じて、キーボードやマウスといった情報入力機器やディスプレイ等の出力機器が接続される。バス306は、接続したプロセッサ301、メモリ302、ストレージ303、送受信部304及び入出力部305の間において、例えばアドレス信号、データ信号及び各種の制御信号を伝達する。
【0027】
図6は、手術支援装置3のソフトウェア構成例の概略を説明するブロック図である。手術支援装置3は、対象領域情報取得部311、器具情報取得部312、器具状態情報算出部313、器具状態情報算出部313、器具状態情報出力部314、アドバイス情報作成部315、およびアドバイス情報出力部316の各機能部と、対象領域情報記憶部331、および基準情報記憶部332の各記憶部とを備える。
【0028】
対象領域情報取得部311は、手術対象領域に関する情報(以下、対象領域情報という。)を取得する。手術対象領域とは、手術の対象物(たとえば、臓器など)のうち、手術器具212が処置を行う表面部分である。対象領域情報は、少なくとも対象領域の形状に関する情報を含む。たとえば、対象領域情報は、3次元モデルのポリゴンなどのサーフェイス情報とすることができる。本実施形態では、対象領域情報は、3次元空間における3次元座標系における座標情報を含むものとする。対象領域情報取得部311は、たとえば、複数のカメラからの複数の画像に基づいて対象領域情報を作成することができる。本実施形態では、内視鏡カメラ部202’が複数存在し、対象領域情報取得部311は、内視鏡カメラ部202’からの画像に基づいて対象領域情報を作成することを想定する。対象領域情報取得部311は、たとえば、公知の画像認識処理の手法を用いて手術対象領域を特定して追随し、リアルタイムに対象領域情報を取得し続けることができる。
【0029】
対象領域情報取得部311は、取得した対象領域情報を対象領域情報記憶部331に登録する。対象領域情報記憶部331は、最新の対象領域情報のみを記憶し、対象領域情報取得部311が対象領域情報を取得するたびに更新されるようにしてもよいし、対象領域情報の履歴を蓄積するようにしてもよい。
【0030】
器具情報取得部312は、インスツルメント部200に関する情報(以下、器具情報という。)を取得する。本実施形態では、器具情報取得部312は、手術器具212の位置、姿勢、移動速度等の状態を取得する。器具情報取得部312は、たとえばセンサ部202からの信号に基づいて、3次元空間の座標系における、可動アーム211の位置および姿勢と、手術器具212の位置、姿勢、移動速度とを取得することができる。器具情報取得部312は、可動アーム211の長手方向の手術対象領域に向かう向き(以下、可動アーム211の向きという。)と、稼働アーム211の端部2111の位置とを取得するとともに、手術器具212の回動中心となる軸231、232および233のそれぞれを中心とした回転角度を取得し、取得した回転角度から手術器具212の向き213を算出することができる。
【0031】
基準情報記憶部332は、手術器具212の基準となる状態に関する情報(以下、基準情報という。)を記憶する。本実施形態では、基準情報は、手術器具212の種別及び術式等の処理内容に応じた好適な状態を示す情報であり、手術対象領域に対する手術器具212の角度の好適な範囲と、手術器具212の姿勢(軸231、232および233のそれぞれを中心に回動した度合で表現することができる。)、位置、速さ、強さの好適な範囲とが含まれる。
図7は、基準情報記憶部332に登録される基準情報の構成例を示す図である。同図に示すように、基準情報には、手術器具212の種別、手術対象となる対象物(たとえば、臓器等)、手術の術式、角度範囲および姿勢範囲、位置範囲、速度範囲、強さ範囲が含まれる。角度範囲は、手術器具212の向き213の手術対象領域に対する角度(以下、操作角度ともいう。)の範囲である。姿勢範囲は、手術器具212の姿勢に対する条件である。本実施形態では、軸231、232および233のそれぞれについての回転角度の範囲で指定することができるものとする。位置範囲は、手術器具212と手術対象領域との間の位置に関する条件である。速度範囲は、手術器具212を処理中に移動させる場合の速度に関する条件であり、例えば切開に用いる器具の切開時の動作速度や、臓器を引っ張る速さ等が該当する。強さ範囲は、手術器具212が手術対象領域に対して与える圧力に関する条件が含まれ、例えば臓器を押す力や臓器をつかむ力等が該当する。また、強さ範囲には、エネルギーデバイスの場合に出力の強さに関する条件も含まれる。基準情報は、角度、姿勢、位置、速度、強さのうち必要な情報を含んでいればよく、必ずしもすべての情報を有する必要はない。
【0032】
ここで、基準情報の例を示す。たとえば、
図12は、モノポーラー電気メスによる処理可能領域(手術対象領域)の切離手術(術式)を説明する図である。この場合、手術器具212はモノポーラー電気メスであり、対象物は、たとえば胃などの切除臓器と温存臓器との間の処理可能領域であり、適切な角度範囲は、処理可能領域の面に対して60~90度(電気メスの先端がピンポイントで作用する様にコンタクトする。)、姿勢範囲は、電気メスのヘラの平手面が、処理可能領域の拡がりの方向と水平であり、電気メスが対象臓器に作用する位置(交点214)が、処理可能領域内であり、かつ、温存領域の血管からの距離が所定距離以上である範囲である。
【0033】
また、
図13は、シーリングデバイスによる処理可能領域(手術対象領域)の切離手術(術式)を説明する図である。この場合、手術器具212はシーリングデバイスであり、対象物は、たとえば胃などの切除臓器と温存臓器との間の処理可能領域である。適切な角度範囲には、処理可能領域の拡がりに対して、効率的(垂直に組織を挟み込むことが可能)な角度の範囲が設定される。また、姿勢範囲は、アクティブブレードの外側が、組織(温存臓器)に触れず、シーリングデバイスが対象臓器に作用する位置(交点214)が、処理可能領域内であって、温存臓器や血管からの距離が所定値以上であり、シーリングデバイスによる把持量が切離する組織に合わせて適切と設定された量以上となるような姿勢が設定される。
【0034】
また、
図14は、シーリングデバイスによる血管のシーリングの術式を説明する図である。この場合、手術器具212はシーリングデバイスであり、対象物は、クリッピングされた血管であって、シーリング能力内の血管である。適切な角度範囲には、血管走行に対してシーリングデバイスの向き213と垂直になる角度が設定される。姿勢範囲には、アクティブブレードの外が、他の組織に触れず、血管を垂直にはさみこむことができ、シーリングデバイスが対象臓器に作用する位置(交点214、不図示)がクリップや処理血管の根部または分岐部から所定値以上離れた位置であり、かつ、デバイスの作用領域内に血管が含まれている(シーリングデバイスの先端が出ている)ような姿勢が設定される。この姿勢は、たとえば、矢印501で示す手術器具212の向きに平行な方向での位置と、矢印502で示す手術器具212の長手軸を中心とした回転角度とにより指定することが可能である。
【0035】
また、
図15は、血管クリッピングの術式を説明する図である。この場合、手術器具212はクリッピングデバイスであり、対象物は、クリッピング可能な血管(血管径5ないし10mm程度)である。角度範囲には、血管走行に対してクリッピングデバイスの向き213が垂直となる角度が設定される。姿勢範囲には、クリッピングデバイスが対象臓器に作用する位置(交点214、不図示)が、処理血管の根部または分岐部から所定値以上の距離以上離れた位置であり、デバイスの作用領域内に血管が含まれている(先端が出ている)ような姿勢が設定される。クリッピングデバイスの姿勢は、たとえば、矢印501で示すクリッピングデバイスの向きに平行な方向での位置と、矢印502で示すクリッピングデバイスの長手軸を中心とした回転角度とにより指定することが可能である。
【0036】
図16および
図17は、自動縫合器による臓器離断の術式を説明する図である。この場合、手術器具212は自動縫合器であり、対象物は、臓器(食道、胃、小腸、大腸、膵臓、気管、主要血管、肺など)である。適切な角度範囲には、
図16に示す切断開始前に状態については、デバイスの向き213が、対象臓器の始点504側の辺縁に対して垂直となる(切離線505が最小距離になる)角度が設定される。姿勢範囲には、自動縫合機が術者任意の切離ライン(
図16の例では、胃の噴門直下を示している。)に沿うような姿勢が設定される。姿勢は、矢印503が示す自動縫合器の向き503と、矢印502が示す、自動縫合器の向きを中心とする回転角度とから指定することができる。なお、一度で臓器離断する場合、あるいは
図17に示すように、1回または複数回の切断処理後に切離を完了する場合には、自動縫合器の作用範囲が対象臓器をこえている姿勢、すなわち、自動縫合器の先端506が対象臓器を超えている姿勢を指定することができる。また、効率的な切離作業のため、自動縫合器の作用範囲が最限に機能している姿勢、すなわち、切断の始点504が、自動縫合器の又近傍まで挿入されている姿勢を設定することが好適である。
【0037】
図18は、自動縫合器による臓器部分切除の術式を説明する図である。この場合、手術器具212は自動縫合器であり、対象物は、臓器(食道、胃、小腸、大腸、膵臓、気管、主要血管、肺など)である。適切な角度範囲には、自動縫合器の向きが、病変箇所511から一定の距離を保ち、臓器を最小範囲部分切除するためのライン512に沿うような角度が設定される。また、姿勢範囲には、自動縫合器の作用範囲を最大限機能させる姿勢(切断の始点504が、自動縫合器の又近傍まで挿入されている姿勢)を設定することが原則だが、小刻みに離断することもあるため、任意の姿勢を設定することができる。
【0038】
図19および
図20は、自動縫合器による消化管の側々吻合の術式を説明する図である。この場合、手術器具212は自動縫合器であり、対象物は、食道、胃、小腸、大腸などの臓器(
図19は小腸と小腸の側々吻合の例を示している。)である。角度範囲には、自動縫合器の向きが消化管の長軸方向に平行となる(消化管壁を垂直にはさみこむ)角度が設定される。姿勢範囲には、自動縫合器の対象臓器への作用点214-1および214-2が、小腸の間膜対側となる位置および吻合する臓器に合わせた挿入度合(
図19の例では、縫合器の又まで挿入している)を設定することができる。ディスプレイ部224には、縫合の補助線521および522を表示することもできる。
【0039】
図21ないし
図25は、針糸、持針器を用いた縫合による閉鎖、臓器再建の術式を説明する図である。この場合、手術器具212は持針器であり、対象物は、食道、胃、小腸、大腸、胆管、膵管、気管、主要血管、子宮、膀胱、尿管などの臓器である。
図21ない
図24では、小腸-小腸吻合の機械挿入口の閉鎖の例を示している。角度範囲には、それぞれ臓器に対して針の刺入角度が好適には90度、範囲としては80-100度等となるような持針器の角度を設定することができる。姿勢範囲には、針が理想的な刺入角度531となる持針器の向きが指定され、縫合閉鎖する口から、所定範囲(たとえば5mm-10mm)の離れた位置を作用点214となる姿勢を設定することができる。なお、当該術式では、縫い進めるごとに最適な角度および姿勢が変化するため、施術の進行に応じて異なる角度範囲および姿勢範囲を設定することができる。たとえば、
図22の状態において、角度範囲としては、針の刺出角度534が理想の角度(たとえば、80-100度)となるような持針器の向きの角度を設定することができる。また、予定縫合線533が刺入点と刺出点の中線となるように縫合するように、ディスプレイ部224には、予定縫合線533を表示することができる。さらに、
図23の状態では、角度範囲には、針の刺入角度が理想の角度(たとえば、80-100度)となるような持針器の向きの角度を設定することができ、姿勢範囲には、第一縫合から5ないし10mmの距離535で刺入ができ、小腸壁を貫通させるような姿勢を設定することができる。さらに
図24の状態では、姿勢範囲として、第一縫合から刺入位置と針出位置が均等な距離536となるような姿勢が設定される。なお、
図25は、上述したプロセスを繰り返した状態を示している。
【0040】
以上のような基準情報が設定されることにより、上述したようなモノポーラー電気メスによる切離、シーリングデバイスによる切離、シーリングデバイスによる血管のシーリング、血管のクリッピング、自動縫合器による臓器離断、自動縫合器による臓器部分切除、自動縫合器による消化管の側々吻合、針糸、持針器を用いた縫合による閉鎖、臓器再建などの各種術式について、最適な手術器具212の向きや姿勢を設定することができる。
【0041】
器具状態情報算出部313は、手術器具212の状態を求める。器具状態情報算出部313は、器具情報に基づいて、例えば操作角度を算出する。
図8は、操作角度について説明する図である。操作角度は、たとえば、手術器具212の向き213を延長した直線と手術対象領域41との交点において手術対象領域41に接する平面251と、手術器具212の向き213との間の角度252として算出することができる。なお、器具状態情報算出部313が、軸231、232および233のそれぞれを中心とした回転角度から手術器具212の向き213を算出するようにしてもよい。
【0042】
器具状態情報出力部314は、手術器具212に関する情報を出力する。本実施形態では、器具情報出力部313は、手術器具212の現在の状態と、当該手術器具212の好適な状態とを出力する。器具情報出力部313は、手術器具212の現在の位置を併せて出力するようにしてもよい。器具情報出力部313は、たとえば、「メスは肝臓に対して30度です。理想的な角度は85度から90度です。」というようなメッセージとしてディスプレイ部224に表示することができる。また、器具情報出力部313は、手術器具212から手術対象領域までの位置を算出して出力してもよい。
【0043】
アドバイス情報作成部315は、手術器具212の状態に対するアドバイス情報を作成する。本実施形態では、アドバイス情報は、手術器具212の操作についての指示であることを想定している。アドバイス情報作成部315は、例えば姿勢に関するアドバイス情報を作成する場合、器具姿勢情報と姿勢基準情報とに基づいてアドバイス情報を作成することができる。たとえば、アドバイス情報作成部315は、操作角度が基準情報の角度範囲の下限値よりも小さい場合には、当該下限値から操作角度を引いた角度だけ手術器具212を起こすように、たとえば「メスをあと60度起こして下さい。」というようなメッセージをアドバイス情報として作成することができる。同様に、アドバイス情報作成部315は、操作角度が基準情報の角度範囲の上限値よりも大きい場合には、操作角度から当該上限値を引いた角度だけ手術器具212を寝かせるように、たとえば「鉗子をあと50度寝かせて下さい。」というようなメッセージをアドバイス情報として作成することができる。
【0044】
アドバイス情報出力部316は、アドバイス情報を出力する。本実施形態では、アドバイス情報出力得316は、ディスプレイ部224にアドバイス情報を表示することができる。
【0045】
<動作>
図9は、手術支援装置3の動作を説明する図である。
【0046】
対象領域情報取得部311は、内視鏡カメラ部202’が撮影した画像などに基づいて手術対象領域の3次元空間における座標情報を含む3次元モデル(対象領域情報)を作成する(S401)。器具情報取得部312は、たとえばセンサ部202からの信号に基づいて、3次元空間の座標系における、可動アーム211の位置および姿勢や手術器具212の位置および姿勢などの器具情報を取得し、器具状態情報算出部313は、手術器具212の状態(位置および姿勢)を計算することができる(S402)。器具状態情報算出部313は、手術器具212から手術対象領域までの位置を計算するとともに(S403)、操作角度(手術器具212の向き213の手術対象領域の表面に対する角度)を計算する(S404)。
【0047】
器具状態情報出力部314は、装着されている手術器具212の種別および手術対象物に対応する基準情報を基準情報記憶部332から読み出し(S405)、算出された位置および操作角度と、基準情報に設定されている角度範囲とを出力する(S406)。なお、器具状態情報出力部314は、基準情報の姿勢範囲に設定されている、手術器具212の好適な姿勢を出力するようにしてもよい。
【0048】
図10は、器具状態情報出力部314による出力例を示す図である。ディスプレイ部224には、手術対象領域41および手術器具212(
図10では、手術器具212の一例として、メス212aと鉗子212bが示されている。)が表示される。
【0049】
器具状態情報出力部314は、手術器具212の向き213(たとえば、メス212aの向き213a)を示す直線または矢印を3次元空間内に描画して手術対象領域41に重畳表示させることができる。また、器具状態情報出力部314は、向き213aと手術対象領域41との交点214aも重畳表示させることができる。さらに、器具状態情報出力部314は、基準情報の角度範囲215を重畳表示させることもできる。
図10では、角度範囲の上限値215aと下限値215bとを、交点214aを通る直線として重畳表示させた例を示している。このようにして、手術器具212に応じて好適な姿勢を拡張現実として手術対象領域に重畳表示させることができるので、効率的かつ効果的な手術器具212の操作を実現することができる。
【0050】
加えて、
図10の例では、器具状態情報出力部314は、メッセージ41として、手術器具212から手術対象領域までの距離(53mm)、手術器具212の手術対象領域に対する角度252(60度)、好適な角度範囲(85度-90度)を表示している。このように、メッセージとして画面上でオペレータ5に手術器具212と手術対象領域41とに係る状況を説明することができるので、オペレータ5は術野の把握を迅速に行うことができる。
【0051】
図9に戻り、アドバイス情報作成部315は、手術器具212が好適な姿勢とするための指示を含むアドバイス情報を作成する(S315)。アドバイス情報作成部315は、たとえば、現在の手術器具212の向き213と手術対象領域との操作角度が、基準情報の角度範囲に入っていない場合に、操作角度が角度範囲の下限値未満であれば、下限値から操作角度を引いた値、操作角度が角度範囲の上限値を超えていれば、操作角度から上限値を引いた値を、指示角度として算出し、指示角度だけ動かすようなメッセージを作成することができる。
【0052】
また、アドバイス情報作成部315は、指示角度だけ手術器具212を動かすにあたり、動かす方向の指示もアドバイス情報に含めることができる。この場合において、操作角度は、現在の手術器具212の向き213と手術対象領域41との交点214aに接する平面251の法線方向に対する角度として算出されることになるところ、当該法線方向を基準とするとディスプレイ部224を視認しているオペレータ5にとっては方向が把握しづらい。そこで、移動方向については、3次元空間の座標系における方向を設定することがっできる。アドバイス情報作成部315は、たとえば、3次元空間の座標系において、手術器具212の向き213を示す直線から、角度範囲内の所定角度(上限値であってもよいし、下限値であってもよいし、上限値と下限値との間の値であってもよい。)を示す直線に変換可能な関数を求め、向き213を示す直線上の任意の1点の座標から、当該座標を当該関数に与えた座標への直線を移動方向のベクトルとして求めることができる。アドバイス情報作成部315は、この移動方向のベクトルについて、たとえば、ディスプレイ部224で視認している3次元空間の座標系における3軸のそれぞれに対する角度を算出し、ディスプレイ部224の画面左右方向をx軸、上下方向をy軸、奥行き方向をz軸とした場合に、x軸に対する角度に応じて「上方向」または「下方向」、z軸に対する角度に応じて「右方向」または「左方向」、およびy軸に対する角度に応じて「奥側」または「手前側」の指示メッセージを作成することができる。
【0053】
図9に戻り、アドバイス情報出力部316は、作成されたアドバイス情報を出力する(S408)。
図11は、手術器具212の移動方向についてのアドバイス情報の一例を示す図である。
図11の例では、アドバイス情報42には、上下方向についての手術器具212の移動指示が含まれている。このようにアドバイス情報作成部315は、たとえば、1つまたは2つの方向についてのみの指示をアドバイス情報に含めるようにしてもよい。アドバイス情報42をディスプレイ部224で視認したオペレータ5は、どのように手術器具214を操作すれば効果的であるかを即座に把握することが可能となり、手術の効率化を図ることができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の手術支援システムによれば、術野の画像に対して手術器具212の現在の角度や好適な角度などを重畳表示することができるので、オペレータ5は術野における手術器具212の状態を迅速かつ直感的に把握することが可能となる。内視鏡やロボット手術では、オペレータ5はディスプレイ等を通して手術対象領域を視認し手術を行うが、ディスプレイ越しでは対象を直接目視する場合に比べ、対象と器具との立体的な位置や姿勢の関係性を認識しづらいところ、本実施形態の手術支援システムによれば、手術器具212の立体的な位置や姿勢を容易に把握することができる。
【0055】
また、通常の手術器具の操作に比べて、コントローラ部222の操作は一般に難しく、器具の理想的な姿勢に動かすことは困難であるところ、本実施形態の手術支援システムによれば、遠隔操作により制御される手術器具214をどのように操作すれば理想的な姿勢になるかを案内することができる。したがって、手術器具212に応じて適切な角度で手術対象領域に当接させるようにすることができる。これにより、手術器具212の性能を効果的に引き出すように遠隔手術を行うことが可能となり、効率的かつ効果的な手術の実現が期待される。
【0056】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0057】
たとえば、本実施形態では、手術支援装置3と手術装置2とは別体の装置であるものとしたが、手術支援装置3の機能を、手術装置2の制御ユニット24や操作ユニット22が備えるようにしてもよいし、手術装置2が、作業ユニット20、操作ユニット22および制御ユニット24とは別のユニットとして手術支援装置3の機能を備えるようにしてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、手術支援装置3は1台のコンピュータであるものとしたが、これに限らず、複数台のコンピュータにより実現するようにすることもできる。たとえば、記憶部をデータベースサーバに設けるようにし、これにネットワーク経由でアクセスするようにしてもよいし、複数台のコンピュータに手術支援装置3の機能を分散させて配備するようにしてもよい。また、複数台のコンピュータにより1台の仮想コンピュータを実装し、当該仮想コンピュータに手術支援装置3の機能を配備してもよい。
【0059】
また、本実施形態では、基準情報の姿勢範囲は、手術器具212の3自由度の回転角度(軸231、232および233のそれぞれを中心とした回転角度)で指定するものとしたが、これに限らず、手術器具212の任意の姿勢についての数値範囲を設定することができる。たとえば、鉗子のように、把持部が対向する第1方向についての数値範囲を設定することができる。この場合に、3次元空間の座標系における向きについての範囲を指定してもよいし、手術対象範囲の表面に接する平面に対する向きの範囲を指定してもよい。
【0060】
また、本実施形態では、角度についてのアドバイスのみを提供するものとしたが、姿勢(軸231、232および233のそれぞれを中心とした回転度合)についてのアドバイスを同様の構成により提供することが可能である。この場合にも、アドバイス情報作成部315は、手術器具212の現在の姿勢が、基準情報の姿勢範囲に含まれていない場合に、手術器具212の姿勢が姿勢範囲に含まれるように、手術器具212の各自由度についての動作についてのアドバイスを提案すればよい。
【0061】
また、本実施形態では、アドバイス情報出力部316は、ディスプレイ部224にアドバイス情報を出力するものとしたが、これに代えて、またはこれに加えて、たとえば、音声合成等により音声としてアドバイス情報をスピーカ部226から出力するようにしてもよい。
【0062】
また、本実施形態では、人体に対する手術の支援を想定していたが、これに限らず、動物に対する手術も同様の構成により支援することが可能である。また、自動車や家電製品、ロボットなどの機械に対するメンテナンス作業を遠隔で行う場合において、作業器具の角度や姿勢の制御に本発明の構成を適用することが可能である。
【0063】
また、本実施形態では、腹腔鏡下における手術を想定していたが、これに限らず、インスツルメント部200を遠隔操作する形態での手術であれば広く適用可能である。たとえば、脳を外気に触れる状態とし、これを顕微鏡で手術するような形態であっても、本実施形態は適用可能である。
【0064】
また、本実施形態では、制御ユニット24が作業ユニット20および操作ユニット22と別体で配置されている構成を示したが、これに限らず、作業ユニット20および操作ユニット22の少なくともいずれかに制御ユニット24を組み入れるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 手術支援システム
2 手術装置
3 手術支援装置
4 手術対象
5 オペレータ
20 作業ユニット
22 操作ユニット
24 制御ユニット
41 対象物
200 インスツルメント部
202 センサ部
202’ カメラ部
211 可動アーム
212 手術器具
213 方向
222 コントローラ部
224 ディスプレイ部
226 スピーカ部
231 軸
232 軸
233 軸
311 対象領域情報取得部
312 器具情報取得部
313 器具状態情報算出部
314 器具状態情報出力部
315 アドバイス情報作成部
316 アドバイス情報出力部
331 対象領域情報記憶部
332 基準情報記憶部
2121 把持部
2122 把持部