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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】耳式体温計
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/01 20060101AFI20230307BHJP
   G01J 5/00 20220101ALI20230307BHJP
【FI】
A61B5/01 350
G01J5/00 101G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018234340
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020094965
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】500374294
【氏名又は名称】株式会社バイオエコーネット
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀樹
【審査官】鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-003538(JP,A)
【文献】特開平10-328146(JP,A)
【文献】特開2002-340681(JP,A)
【文献】特開2015-219195(JP,A)
【文献】特開2011-072637(JP,A)
【文献】特開2002-224050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/01
G01J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測温対象者の耳の鼓膜の温度を非接触で測定する赤外線センサを有し、前記測温対象者の耳穴に装着されるプローブを備える耳式体温計において、
前記プローブは、
前記測温対象者の耳穴に挿入されるプローブ本体と、
該プローブ本体を支持するハウジングと、
前記プローブ本体に装着され、前記測温対象者の耳穴内部に当接するインイヤ型のイヤーピースと
を備え、
前記イヤーピースは、
前記プローブ本体との係合部を有し、一部が中空の円錐状を呈する基底部と、
該基底部の一端に、前記ハウジングから離間する方向に延設される略円筒状の先端部と
を有し、
且つ、前記基底部と前記先端部とは可撓性材料により一体的に形成され、
前記先端部の径は、前記基底部の最大径よりも小さくなるように選定されており、
前記ハウジングは、前記イヤーピースの前記基底部の他端が対向する第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面とを備え、
前記第1の面の一方側には、前記イヤーピースの前記基底部の前記他端よりも外側に突出する平面部が設けられ、
前記ハウジングは、前記平面部が設けられていない側の前記第1の面の他方側の端部から、前記基底部の前記他端と略連続するように、前記第2の面に向かって湾曲する湾曲部を備え、
前記耳式体温計は、前記測温対象者の耳穴に装着したときに、前記イヤーピースの前記先端部の外周面の一点が、外耳道のS字状のカーブのうち、奥の方のカーブである第2カーブ付近の外耳道内壁と接触し、前記ハウジングの前記平面部の一点が、外耳道のS字状のカーブのうち、入口に近い方のカーブである第1カーブ付近の外耳道の一部と接触し、前記ハウジングの前記湾曲部の一点が、前記第1カーブ付近の内、前記平面部とは異なる外耳道の一部と接触することにより、前記イヤーピースの中心線が鼓膜に向いた状態で保持される形状を有する
ことを特徴とする耳式体温計。
【請求項2】
前記赤外線センサは、
前記プローブ本体の先端側に形成される凹部内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の耳式体温計。
【請求項3】
前記プローブ本体は、内壁に反射材を配した円筒状の導光チューブを備え、
前記赤外線センサは、
前記導光チューブの後端側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の耳式体温計。
【請求項4】
前記ハウジングは、外部音を前記プローブ本体側に取り入れる外部音取入孔を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の耳式体温計。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記外部音取入孔から取入れた音を前記イヤーピース側に放出する音出孔を備え、
前記イヤーピースには、前記音出孔から放出された音を前記耳穴内に放出する放音部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の耳式体温計。
【請求項6】
前記ハウジング内に、外部装置に接続されて音声を出力する音声出力手段が設けられていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の耳式体温計。
【請求項7】
前記イヤーピースの前記先端部は、保護膜によって閉塞されていることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の耳式体温計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測温対象者の体温を測定する温度計に係り、特に測温部を耳孔に挿入して鼓膜の温度を測る耳式体温計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば手術室や集中治療室等では、施術中の測温対象者の体温測定は必須である。
【0003】
また、例えば長時間に亘って身体的負担が大きな作業を行う労働者についても体調管理の一環として、体温測定が必要な場合がある。
【0004】
このような患者や労働者等の測温対象者の体温の測定は、長時間にわたり連続して測定する必要があるため身体への負担が少ないことが重要である。
【0005】
このような要求に応える体温計として、プローブを測温対象者の耳穴に挿入して鼓膜の温度を測定する耳式体温計が種々提案されている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-293466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、耳式体温計の形状は、カナル型と呼ばれるイヤホンと相似した形状を有している。これは、耳式体温計とカナル型イヤホンは、共に外耳道に留置して用いる器具であるためである。
【0008】
即ち、両者は、外耳道の外側である耳介と耳珠間に装着させる本体部分(ハウジング)と、外耳道内に挿入されるイヤーピース等を備えている点で近似している。
【0009】
しかしながら、両者において、イヤーピースに求められる機能、目的は異なっている。
【0010】
カナル型イヤホンにおけるイヤーピースは、本体部から発せられた音が外耳道を伝って鼓膜へ効率よく伝えることを目的とした形状を有している。
【0011】
即ち、カナル型イヤホンのイヤーピースは、外耳道内を一定の圧力状態となるように密閉し、トンネル効果を作り出すことで小さな音を効率よく鼓膜に伝えることができる形状とされている。
【0012】
これに対して、耳式体温計のイヤーピースは、鼓膜から発せられている赤外線を赤外線センサが受け取れるように方向づける機能が重要である。
【0013】
また、耳式体温計のイヤーピースは、装着中に上記方向を安定して保持する機能が求められる。
【0014】
このような機能、目的上の相違から、種々提供されているカナル型イヤホンのイヤーピースを耳式体温計のイヤーピースにそのまま適用しても鼓膜からの赤外線を効率的に検出することはできないという問題があった。
【0015】
また、鼓膜からの赤外線を効率的に受け取れる方向に安定して保持するという機能を満たす耳式体温計は未だ開発されていない。
【0016】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、鼓膜からの赤外線を効率的に受け取り可能な状態で安定して保持することのできる耳式体温計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1に係る耳式体温計は、測温対象者の耳の鼓膜の温度を非接触で測定する赤外線センサを有し、前記測温対象者の耳穴に装着されるプローブを備える耳式体温計において、前記プローブは、前記測温対象者の耳穴に挿入されるプローブ本体と、該プローブ本体を支持するハウジングと、前記プローブ本体に装着され、前記測温対象者の耳穴内部に当接するインイヤ型のイヤーピースとを備え、前記イヤーピースは、前記プローブ本体との係合部を有し、一部が中空の円錐状を呈する基底部と、該基底部の一端に、前記ハウジングから離間する方向に延設される略円筒状の先端部とを有し、且つ、前記基底部と前記先端部とは可撓性材料により一体的に形成され、前記先端部の径は、前記基底部の最大径よりも小さくなるように選定されていることを要旨とする。
【0018】
これにより、鼓膜からの赤外線を効率的に受け取れる方向に安定して保持することができる耳式体温計を提供できる。
【0019】
請求項2に係る耳式体温計は、請求項1に記載の発明について、前記イヤーピースの前記耳穴への挿抜方向の全長は、外耳道が有するS字状カーブの内の奥側に位置する第2カーブまで届く長さに選定されていることを要旨とする。
【0020】
これにより、鼓膜からの赤外線を効率的に受け取れる方向により安定して保持することができる。
【0021】
請求項3に係る耳式体温計は、請求項1または請求項2に記載の発明について、前記赤外線センサは、前記プローブ本体の先端側に形成される凹部内に配置されていることを要旨とする。
【0022】
これにより、鼓膜に近接する位置に配置される赤外線センサによって、より正確な体温測定を行うことができる。
【0023】
請求項4に係る耳式体温計は、請求項1または請求項2に記載の発明について、前記プローブ本体は、内壁に反射材を配した円筒状の導光チューブを備え、前記赤外線センサは、前記導光チューブの後端側に配置されていることを要旨とする。
【0024】
これにより、鼓膜からの赤外線についてノイズの影響を抑制して、より正確な体温測定を行うことができる。
【0025】
請求項5に係る耳式体温計は、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の発明について、前記ハウジングは、外部音を前記プローブ本体側に取り入れる外部音取入孔を備えることを要旨とする。
【0026】
これにより、測温対象者への外部からの指示等を音声で伝達することができる。
【0027】
請求項6に係る耳式体温計は、請求項5に記載の発明について、前記ハウジングは、前記外部音取入孔から取入れた音を前記イヤーピース側に放出する音出孔を備え、前記イヤーピースには、前記音出孔から放出された音を前記耳穴内に放出する放音部が形成されていることを要旨とする。
【0028】
これにより、測温対象者への外部からの指示等の音声をより確実に伝達することができる。
【0029】
請求項7に係る耳式体温計は、請求項5または請求項6に記載の発明について、前記ハウジング内に、外部装置に接続されて音声を出力する音声出力手段が設けられていることを要旨とする。
【0030】
これにより、外部装置を介して、測温対象者への指示や警報等を音声でより明確に伝達することができる。
【0031】
請求項8に係る耳式体温計は、請求項1から請求項7の何れか1項に記載の発明について、前記イヤーピースの前記先端部は、保護膜によって閉塞されていることを要旨とする。
【0032】
これにより、空気の揺らぎによる熱ノイズの影響を抑制して、より正確な体温測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、鼓膜からの赤外線を効率的に受け取り可能な状態で安定して保持することのできる耳式体温計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】第1の実施の形態に係る耳式体温計の構成例を示す右側面(a)、底面図(b)および正面図(c)である。
図2】第1の実施の形態に係る耳式体温計の構成例を示す一部断面図である。
図3】第1の実施の形態に係る耳式体温計の寸法を示す説明図である。
図4】第1の実施の形態に係る耳式体温計を装着する右耳の概略構造を示す説明図である。
図5】第1の実施の形態に係る耳式体温計の他の構成例を示す一部断面図である。
図6】第1の実施の形態に係る耳式体温計の右耳への装着状態を示す説明図である。
図7】比較対象としてのイヤホンの右耳への装着状態を示す説明図である。
図8】他の実施の形態に係る耳式体温計の右耳への装着状態を示す説明図である。
図9】第2の実施の形態に係る耳式体温計に適用可能なイヤーピースの構成例を示す斜視図である。
図10】第3の実施の形態に係る耳式体温計の構成例を示す上面図(a)、右側面図(b)および底面図(c)である。
図11】第3の実施の形態に係る耳式体温計にイヤーピースを装着した状態を示す右側面図である。
図12】第3の実施の形態に係る耳式体温計の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[第1の実施の形態]
図1図7を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る耳式体温計E1(E2)について説明する。
【0036】
図1(a)は、第1の実施の形態に係る耳式体温計E1の構成例を示す右側面、図1(b)は底面図、図1(c)はその正面図、図2は耳式体温計E1の構成例を示す一部断面図、図3は耳式体温計E1の寸法を示す説明図である。
【0037】
本実施の形態に係る耳式体温計E1は、図1図3に示すように、測温対象者の耳の鼓膜の温度を非接触で測定する赤外線センサSN1を有し、測温対象者の耳穴に装着されるプローブPBを備えている。
【0038】
プローブPBは、主に、測温対象者の耳穴に挿入されるプローブ本体20と、プローブ本体20を支持するハウジング10と、プローブ本体10に装着され、測温対象者の耳穴内部に当接するインイヤ型のイヤーピース12とから構成されている。
【0039】
ハウジング10およびプローブ本体10は、ABS樹脂等によって成形される。なお、ハウジング10とプローブ本体10は、一体的に成形してもよい。
【0040】
なお、本実施の形態に係る耳式体温計E1では、赤外線センサSN1は、プローブ本体10の先端側に形成される凹部20b内に配置されている。
【0041】
これにより、鼓膜250に近接する位置に配置される赤外線センサSN1によって、より正確な体温測定を行うことができる。
【0042】
図2等に示すように、イヤーピース12は、プローブ本体20側の溝部20aと係合する係合部(凹部)12cを有し、一部が中空の円錐状を呈する基底部12aと、基底部12aの一端に、ハウジング10から離間する方向に延設される略円筒状の先端部12bとを有する。
【0043】
なお、基底部12aと先端部12bとは、シリコンゴム等の柔軟な可撓性材料により一体的に形成される。
【0044】
そして、先端部12bの径L1は、基底部12aの最大径L2よりも小さくなるように選定されている。
【0045】
イヤーピース12の上述のような形状およびハウジング10の形状により、本実施の形態に係る耳式体温計E1は、鼓膜からの赤外線を効率的に受け取り可能な状態で安定して保持される。具体的な寸法例や保持状態の例については後述する。
【0046】
また、イヤーピース12の耳穴への挿抜方向の全長L3は、図5図6に示すように、外耳道201が有するS字状カーブの内の奥側に位置する第2カーブC2まで届く長さに選定されている。
【0047】
(L1,L2,L3の寸法について)
L1~L3の寸法は、次のようにして求められる。
【0048】
a)一般成人の耳内の型を取って、外耳道内の寸法(実測値)を計測する。
【0049】
b)上記寸法を基にして試作したイヤーピースの挿入・装着感(あたり、圧迫感など)を確認する。
【0050】
c)上記2項目を合わせて、外耳道内の大きさを求める。なお、各部位には個人差により幅がある。
【0051】
d)上記外耳道内の大きさの平均値を基準として、各部形状が持つ役割や材質からL1,L2,L3の寸法(平均寸法)を求める。
【0052】
ここで、径L1の寸法は、次の要件を考慮して決定される。
【0053】
イ)第2カーブC2へ向けて細くすることで鼓膜250への方向付けを行うことができる寸法とする。
【0054】
ロ)このとき外耳道への当たりを和らげることを意図して、先端部12a部からクビレを作って細くする。この部分は、赤外線センサSN1を内包する部分であるので、赤外線センサSN1の径+イヤーピースの厚さ以下とはならない部分とする。
【0055】
ハ)また、赤外線センサの径を小さくすると赤外線への感度(分解能)が落ちる。
平均寸法が6mmなので、これよりも小さな値とする必要がある。
【0056】
以上の要件から、先端部12bの径L1は、例えば6mm以下(好ましくは、5.8mm程度)とされる。
【0057】
また、基底部12aの最大径L2の寸法は、次の要件を考慮して決定される。
【0058】
ニ)プローブPBの方向付けに大きな役割を持つ部位ではない。
【0059】
ホ)外耳道201を密閉させる必要はない。
【0060】
ヘ)抜け防止のために外耳道201との間と接触する部分があれば十分である。
【0061】
以上の要件から、基底部12aの最大径L2は、例えば10mm±2mm程度とされる。
【0062】
また、イヤーピース12の耳穴への挿抜方向の全長L3の寸法は、次の要件を考慮して決定される。
【0063】
ト)外耳道201内の第2カーブC2へ届く距離であること。
【0064】
チ)実測値は、10mm~14mmの範囲であった。
【0065】
リ)挿入しすぎることは障害を起こすリスクが増える。
【0066】
以上の要件から、イヤーピース12の耳穴への挿抜方向の全長L3の寸法は、例えば10mm±2mm程度とされる。
【0067】
ここで、図4に示すように、耳(右耳)200の外耳道201は、異物の侵入を防ぐようにS字状に曲がっており、入口に近い方の曲がりを第1カーブC1、奥の方を第2カーブC2と呼称している。
【0068】
また、外耳道201の長さは、入口から鼓膜250までの距離は、一般的に成人で約25mm~30mmである。
【0069】
次に、図3を参照して、本実施の形態に係る耳式体温計E1のハウジングの形状および寸法(サイズ)例について説明する。
【0070】
図3に示すように、ハウジング10の右側の側面には、湾曲部150が形成されている。一方、左側の側面は、直線的形状とされている。
【0071】
また、ハウジング10の下端側には、耳式体温計E1を耳穴から挿抜する際のツマミ部(突起部)11が形成されている。なお、ツマミ部11の下端には、図1(a)等に示す測定器等への接続用ケーブル13の一部を挟んで保持する溝部11aが形成されている。
【0072】
ハウジング10の湾曲部150等の形状および寸法(サイズ)は、外耳道201内の所定位置に当接して、赤外線センサSN1が、鼓膜250からの赤外線を効率的に受け取り可能な状態で安定して保持し得る形状が決定される。
【0073】
より具体的には、湾曲部150の側線とイヤーピース12の基底部12aの左側下端部からの平行線との間の距離W1は、例えば約10.2mm程度とされる。
【0074】
また、ツマミ部11の右側端部と湾曲部150の右側端部との距離W2は、距離W1に基づいて例えば約7.8mm以下とされる。
【0075】
また、ハウジング10の上端部と湾曲部150の下端部との距離W3は、距離W1に基づいて例えば約8.3mm以下とされる。
【0076】
これにより、耳式体温計E1は、鼓膜250からの赤外線を効率的に受け取り可能な状態で安定して保持される。
【0077】
なお、図2に示すように、プローブ本体10の先端部の外周面と、イヤーピース12の先端部12bの内周面との間には、空隙160が設けられている。
【0078】
この空隙160により、イヤーピース12の先端部12bの内側への変形を行い易くして、イヤーピース12の耳内へのフィット感を向上させることができる。
【0079】
また、基底部12a内には空間170が形成され、内側への変形を行い易くして、イヤーピース12の耳内へのフィット感を向上させることができる。
【0080】
(耳式体温計の他の構成例)
次に、図5を参照して、他の構成例に係る耳式体温計E2について説明する。
【0081】
なお、耳式体温計E2の構成について、前述の耳式体温計E1と同様の構成については、同一符号を付して重複した説明は省略する。
【0082】
耳式体温計E1と耳式体温計E2との相違点は、プローブ本体として、内壁190に金メッキ等の反射材を配した円筒状の導光チューブ190を用いている点である。
【0083】
耳式体温計E2において、赤外線センサSN1は、導光チューブ190の後端側に形成される凹部10a内に配置されている。
【0084】
これにより、鼓膜250からの赤外線についてノイズの影響を抑制して、より正確な体温測定を行うことができる。
【0085】
(耳式体温計の装着状態)
図6を参照して、本実施の形態に係る耳式体温計E1(E2)の耳(右耳)200への装着状態について説明する。
【0086】
図6に示すように、耳(右耳)200の外耳道201内に挿入された耳式体温計E1(E2)は、イヤーピース12の先端部12bの外周面が、第2カーブC2付近の外耳道内壁に位置P1で当接する。
【0087】
また、図6上、耳式体温計E1(E2)のハウジング10の左上部の平面部180が、第1カーブC1付近の外耳道201の一部と位置P2で当接する。
【0088】
さらに、図6上、耳式体温計E1(E2)のハウジング10の右側下部の湾曲部150が、第1カーブC1付近の外耳道201の一部と位置P3で当接する。
【0089】
このように、耳式体温計E1(E2)は、耳(右耳)200の外耳道201内において、位置P1~P3の三点で外耳道201の一部と当接することにより、イヤーピース12の中心線D1が鼓膜250側に向いた状態で安定して保持される。
【0090】
そして、このような保持状態において、図6に示すように、鼓膜250から発せされる赤外線IRは、イヤーピース12の先端部12bから効率的に入射し、図2または図5に示す赤外線センサSN1によって確実に温度計測が行われる。
【0091】
以上のように、本実施の形態に係る耳式体温計E1(E2)によれば、鼓膜250からの赤外線IRを効率的に受け取り可能な状態で安定して保持することができる。
【0092】
ここで、図7を参照して、比較対象としての一般的なイヤホンH1の耳(右耳)200への装着状態について簡単に説明する。
【0093】
ハウジング100とイヤーピース101を備えるイヤホンH1は、耳(右耳)200の外耳道201内に挿入された際に、イヤーピース101は、第1カーブC1付近で保持されるに留まる。
【0094】
そのため、図7に示すように、イヤホンH1のイヤーピース101の中心線D2は、鼓膜250から大きくずれた方向となる。このような保持状態は、空気の圧縮等により低音を響かせる等の音響上の効果を得ることはできるが、鼓膜250から発せされる赤外線IRを効率的に捉えるのには不向きである。
【0095】
よって、イヤホンH1のハウジング100の形状や、一般的なイヤーピース101を耳式体温計に適用した場合には、本実施の形態に係る耳式体温計E1(E2)のように、確実な温度計測を行うことはできない。
【0096】
[他の実施の形態]
図8を参照して、他の実施の形態に係る耳式体温計E3について説明する。
【0097】
なお、第1の実施の形態に係る耳式体温計E1(E2)と同様の構成については、同一符号を付して重複した説明は割愛する。
【0098】
第1の実施の形態に係る耳式体温計E1(E2)と、他の実施の形態に係る耳式体温計E3との相違点は、イヤーピース12に代えて、形状を変えたイヤーピース12Aを装着している点である。
【0099】
より具体的には、イヤーピース12Aの先端部12dは、図8に示すように、図上、左端側より右端側の方が低くなる形状とされている。このような形状により、鼓膜250からの赤外線IRがイヤーピース12Aの先端部12dから入射し易くなり、より正確な温度計測を行うことができる。
【0100】
[第2の実施の形態]
図9を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る耳式体温計E3について説明する。
【0101】
なお、耳式体温計E3の全体構成は、第1の実施の形態に係る耳式体温計E1(E2)と同様である。
【0102】
図9には、第2の実施の形態に係る耳式体温計E3に適用されるイヤーピース12Bを示す。
【0103】
第1の実施の形態に係る耳式体温計E1(E2)に適用されるイヤーピース12と同様の構成については、同一符号を付して重複した説明は割愛する。
【0104】
イヤーピース12Bは、先端部12bの端面が、保護膜125によって閉塞されている。
【0105】
なお、保護膜125は、シリコンゴム等により先端部12bと一体的に形成されている。
【0106】
保護膜125の厚さは、例えば0.2mm以下とされる。
【0107】
このような保護膜125を設けることにより、イヤーピース12B内での空気の揺らぎによる熱ノイズの影響を抑制して、より正確な体温測定を行うことができる。
【0108】
[第3の実施の形態]
図10図12を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る耳式体温計E4(E5)について説明する。
【0109】
ここで、図10(a)は、第3の実施の形態に係る耳式体温計E4の構成例を示す上面図、図10(b)は右側面図、図10(c)はその底面図、図11は、イヤーピース12を装着した状態を示す右側面図、図12は、耳式体温計E5の構成例を示す断面図である。
【0110】
なお、第1の実施の形態に係る耳式体温計E1(E2)と同様の構成については、同一符号を付して重複した説明は割愛する。
【0111】
第1の実施の形態に係る耳式体温計E1(E2)と、第3の実施の形態に係る耳式体温計E4(E5)との相違点は、ハウジング10に、外部音をプローブ本体300側に取り入れる外部音取入孔360を備える点である。
【0112】
図10(c)に示すように、本実施の形態では、ハウジング10の底面に3個の外部音取入孔360を穿設している。
【0113】
これにより、測温対象者への外部からの指示等を音声で伝達することができる。
【0114】
また、本実施の形態に係る耳式体温計E4(E5)は、ハウジング10の上側に、外部音取入孔360から取入れた音をイヤーピース12側に放出する音出孔350を備えている。
【0115】
また、図11等に示すように、イヤーピース12には、音出孔350から放出された音を耳穴内に放出する放音部120が形成されている。
【0116】
これにより、測温対象者への外部からの指示等の音声をより確実に伝達することができる。
【0117】
また、図12に示す耳式体温計E5では、ハウジング10内に、合成音声出力装置やマイク等の外部装置(図示せず)に接続されて音声を出力する音声出力手段(例えば、小型スピーカ等)400が設けられている。
【0118】
この際に、音声等は、ハウジング10内を矢印D10、D11の方向に出力される。
【0119】
これにより、外部装置を介して、測温対象者への指示や警報等を音声出力手段400から音声で出力することで、指示等をより明確に伝達することができる。
【0120】
以上、本発明の耳式体温計を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0121】
例えば、本実施の形態では、耳式体温計E1等を測温対象者の右耳に装着する例を示したが、左耳に装着できるように形状を変更してもよい。
【符号の説明】
【0122】
E1~E5…耳式体温計
PB…プローブ
10…ハウジング
12、12A…イヤーピース
12a…基底部
12b…先端部
20…プローブ本体
150…湾曲部
160…隙間
201…外耳道
250…鼓膜
C1…第1カーブ
C2…第2カーブ
IR…赤外線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12