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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】油回収装置及び油回収方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/40 20230101AFI20230307BHJP
   B30B 9/02 20060101ALI20230307BHJP
   B30B 9/06 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
C02F1/40 E
B30B9/02 B
B30B9/06 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019006435
(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2020114579
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】516342047
【氏名又は名称】関西電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正博
(72)【発明者】
【氏名】進士 国広
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1853945(KR,B1)
【文献】特開2007-039954(JP,A)
【文献】特開2008-055469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/40
B30B1/00、9/02、9/06
A47J31/00ー31/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布からなる袋体に熱可塑性樹脂ナノファイバーの交絡体からなる物理吸着体を収容させた油吸着シート体に吸着された油を分離回収するための油回収装置であって、
側壁に貫通孔を複数有しその内部に前記油吸着シート体を重ねて収容可能な中心軸を有する有底筒形のかご部材と、
前記かご部材の内面に嵌合させた押圧部材を前記中心軸に沿ってその開口側から進退させる進退機構と、
前記かご部材をその内部に取り付けられた取付台を有する筐体と、
前記取付台の下部に配置された油回収タンクと、を含み、
前記かご部材は、油を吸着した前記油吸着シート体を重ねて収容させ前記油吸着シート体の保持する前記油を自重で放出させ前記内部に油面を形成させて、
前記進退機構は、前記油面を形成させた前記かご部材に、前記押圧部材を前記中心軸に沿って前記開口側から進入させ、前記かご部材と前記押圧部材との空間を前記油で満たしてから、前記押圧部材の一軸押圧を前記油に与えて前記空間を前記油で充満させたまま前記貫通孔から前記油を漏出させていくことを特徴とする油回収装置。
【請求項2】
前記進退機構は、単動型の油圧ラムシリンダと、これに加圧及び除圧可能に接続された油圧ポンプからなることを特徴とする請求項1記載の油回収装置。
【請求項3】
前記油圧ポンプは手動の油圧ポンプであることを特徴とする請求項2記載の油回収装置。
【請求項4】
前記押圧部材の押圧面には、放射状に複数の油流れ溝が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちの1つに記載の油回収装置。
【請求項5】
前記かご部材の前記内面は円筒形であり、前記油吸着シート体は略直方体であることを特徴とする請求項1乃至4のうちの1つに記載の油回収装置。
【請求項6】
前記かご部材は外側面に複数の突起を有し、前記筐体の前記取付台には複数の前記突起を着脱自在に係合可能な複数のストッパ体が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のうちの1つに記載の油回収装置。
【請求項7】
不織布からなる袋体に熱可塑性樹脂ナノファイバーの交絡体からなる物理吸着体を収容させた油吸着シート体に吸着された油を分離回収する油回収方法であって、側壁に貫通孔を複数有する中心軸を有する有底筒形のかご部材の内部に油を吸着した前記油吸着シート体を重ねて収容し、前記油吸着シート体の保持する前記油を自重で放出させ前記かご部材の前記内部に油面を形成させて、前記かご部材の内面に嵌合させた押圧部材を前記中心軸に沿ってその開口側から進入させ、前記かご部材と前記押圧部材との空間を前記油で満たしてから、前記押圧部材の一軸押圧を前記油に与えて前記空間を前記油で充満させたまま前記貫通孔から前記油を漏出させていくことを特徴とする油回収方法。
【請求項8】
前記押圧部材は、単動型の油圧ラムシリンダに接続され、油圧ポンプが前記油圧ラムシリンダを加圧及び除圧して一軸加圧することを特徴とする請求項7記載の油回収方法。
【請求項9】
前記油圧ポンプは手動の油圧ポンプであることを特徴とする請求項8記載の油回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着体に物理吸着された油を該吸着体から分離して回収する装置及び方法に関し、特に、不織布からなる袋体に吸着体を収容させた油吸着シート体から油を分離回収する油回収装置及び油回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海や河川あるいは湖沼等の水面に流出してしまった油は、環境汚染を防止する観点から早期に効率よく回収されることが望まれる。また、機械加工を行う工場等の現場においても、加工で使用した油が水に混入することがあり、排水管理の観点からこの油を回収することが望まれる。こうした水中あるいは水面上の油を回収する技術として、油と選択的に結合する化学物質を散布しこれを回収する化学的吸着による方法が知られている。一方、多孔質や繊維状の吸着物を与えて油をこれに物理吸着させる物理的吸着による方法も提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、無端ベルト状に形成された親油撥水性ナノファイバーシートを用いて、船舶のバラスト水を給水しこれを巻取りロールで圧縮し脱水しこれを再度繰り出すことで、バラスト水に含まれる油分やバクテリア類を連続的に分離させる装置が開示されている。親油撥水性ナノファイバーシートは、バラスト水中の油分やバクテリア類を毛細現象により吸着除去できるとともに、目詰まりがなく圧縮損失も小さいため、従来のバラスト水をフィルタ濾過する装置と比べ、メンテナンスコストやランニングコストを大幅に抑制できるとしている。
【0004】
一方、船舶事故などで流出した水上流出油を回収するような場合にあっては、オイルフェンス内に隔離された比較的大量の油を効率よく吸着、回収することが求められる。
【0005】
例えば、特許文献2には、湖沼等に流出した油を連続的に回収するモップ式油回収装置が開示されている。ポリプロピレンのような熱可塑性樹脂を表面処理した樹脂繊維をブラシ状に形成したエンドレスモップ体を滑車と搾り機との間に送出し、油を連続的に回収するとしている。かかる装置では、エンドレスモップ体を送りかつ圧搾する一連の機能を有する一対の圧搾ローターを用いており、圧搾疲労による毛抜けを防止できてモップ体の耐久性を高め得るとともに、リターン側へ油を付着させたままで繰り出すことがなく効率的な回収を達成できるとしている。また、浮き滑車により水上の油層の内部にモップ体を押し込むようにして、エマルジョン化した油をも吸着、回収できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-112594号公報
【文献】実願昭59-49914号(実開昭60-161494号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
物理的吸着による油回収方法では、油を化学的に変化させないため、吸着物から分離すれば再利用可能であり、更に、吸着物も再利用できれば油回収の大幅なコスト抑制につながる。また、近年、樹脂ファイバをシート状の袋体に収容しその体積の数倍もの油を回収できるコンパクトな油吸着シート体が提案されており、このような油吸着シート体を劣化させずに油を分離回収できる油回収装置が求められる。
【0008】
ここで、特許文献1や2の装置のように、一対の加圧ローラーに挟んで油を圧搾する場合、シート状の袋体からなる油吸着シート体ではその内部の油の排出圧力によって袋体が損傷し、また、吸着体に生じる剪断力により劣化し吸着体の吸油性が低下するといった問題が指摘されている。
【0009】
本発明は以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、シート状袋体及びこれに収容された吸着体を再利用できるように損傷させず、効率よく油を分離回収できる油回収装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による油回収装置は、不織布からなる袋体に吸着体を収容させた油吸着シート体に吸着された油を分離回収するための油回収装置であって、側壁に貫通孔を複数有しその内部に前記油吸着シート体を重ねて収容可能な中心軸を有する有底筒形のかご部材と、前記かご部材の内面に嵌合させた押圧部材を前記中心軸に沿ってその開口側から油圧で進退させる進退機構と、前記かご部材をその内部に取り付けられた取付台を有する筐体と、前記取付台の下部に配置された油回収タンクと、を含み、前記進退機構は、前記かご部材の内部の前記油を一軸加圧し、前記貫通孔から前記油を漏出させつつ前記油吸着シート体を押圧していくことを特徴とする。
【0011】
かかる発明によれば、かご部材の内部の油を一軸加圧しながら貫通孔から油を漏出させつつ油吸着シートを押圧し、不織布からなる袋体の内部の油の排出圧力を過剰に形成させず、且つ、油吸着シートと押圧部材との間でせん断力を与えないから、油吸着シート体を再利用できるように損傷させず、効率よく油を分離回収できるのである。
【0012】
上記した発明において、前記進退機構は、単動型油圧ラムシリンダと、これに加圧及び除圧可能に接続された油圧ポンプからなることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、貫通孔から油をゆっくりと漏出させ得て、かご部材の内部での油への加圧を均等にできて、油吸着シート体を再利用できるように損傷させず、効率よく油を分離回収できるのである。
【0013】
上記した発明において、前記油圧ポンプは手動油圧ポンプであることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、動作自体に電源を必要としないので、油を回収する現地に装置を容易に設置でき、油吸着シート体の再利用をより効率的に提供できる。
【0014】
上記した発明において、前記押圧部材の押圧面には、放射状に複数の油流れ溝が形成されていることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、油吸着シートと押圧部材との間でせん断力をより減じるから、油吸着シート体を再利用できるように損傷させないのである。
【0015】
上記した発明において、前記かご部材の前記内面は円筒形であり、前記油吸着シート体は略直方体であることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、油への加圧を均等にできて、油吸着シート体を再利用できるように損傷させず、効率よく油を分離回収できるのである。
【0016】
上記した発明において、前記かご部材は外側面に複数の突起を有し、前記筐体の前記取付台には複数の前記突起を着脱自在に係合可能な複数のストッパ体が設けられていることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、筐体からかご部材を着脱できて油吸着シート体の収容及び取り出しが簡便であるとともに、メインテナンスが容易になるのである。
【0017】
また、本発明による油回収方法は、不織布からなる袋体に吸着体を収容させた油吸着シート体に吸着された油を分離回収する油回収方法であって、側壁に貫通孔を複数有する中心軸を有する有底筒形のかご部材の内部に前記油吸着シート体を重ねて収容し、前記かご部材の内面に嵌合させた押圧部材を前記中心軸に沿ってその開口側から進入させ、前記かご部材の内部の前記油を一軸加圧し、前記貫通孔から前記油を漏出させつつ前記油吸着シート体を押圧していくことを特徴とする。
【0018】
かかる発明によれば、かご部材の内部の油を一軸加圧しながら貫通孔から油を漏出させつつ油吸着シートを押圧し、不織布からなる袋体の内部の油の排出圧力を過剰に形成させず、且つ、油吸着シートと押圧部材との間でせん断力を与えないから、油吸着シート体を再利用できるように損傷させず、効率よく油を分離回収できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による油回収装置の概要を示す部分断面図である。
図2図1に示した吸着体の概要を示す断面図である。
図3図1に示したかご部材及び筐体の概要を示す概略図であって、図3(a)はかご部材の斜視図であり、図3(b)はかご部材を筐体に取り付けた拡大断面図である。
図4】本発明による圧搾動作を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の代表的な一例としての油回収装置及び油回収方法について、図1乃至3を用いて説明する。
【0021】
図1に示すように、本発明による油回収装置100は、側壁に貫通孔を複数有しその内部に不織布からなる袋体に収容された吸着体からなる油吸着シート体110を重ねて収容可能な中心軸を有する有底筒形のかご部材120と、このかご部材120の内面に嵌合させた押圧部材130をかご部材120の中心軸に沿ってその開口側から油圧で進退させる進退機構140と、かご部材120をその内部に着脱自在に取り付ける取付台152を有する筐体150と、取付台152の下部に配置された油回収タンク160と、を含む。進退機構140は、油圧ラムシリンダ143とこれを押し込む油圧ポンプ145を直列に有し、かご部材120の内部の油を一軸加圧し、貫通孔から油を漏出させつつ油吸着シート体110を押圧していくのである。
【0022】
図2に示すように、油吸着シート体110は、回収しようとする油を透過する性質を有する不織布である上面シート112a及び下面シート112bの外周を重ねて接合部112cで周接合した袋体112と、当該袋体112に内包された各種油の吸着体としての熱可塑性樹脂ナノファイバーの交絡体114と、により構成されている。上面シート112a及び下面シート112bは、親油性の樹脂又はゴムのような可撓性を有する不織布であって、内部に収容される交絡体114の物理的特性とともに選択され得る。
【0023】
一方、交絡体114を構成するナノファイバーは、例えば、ポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂の延伸体からなる長繊維を互いに交絡させて束状にしつつ密集させて一体化させたものであって、少なくとも10μm以下、好ましくは5μm以下の平均径を有し、多数の長繊維どうしが複雑に絡み合った交絡構造を形成する。なお、本実施例においては、袋体112と交絡体114とは互いに接合されておらず、単に積層したものとして構成されている。かかる交絡体114は、その体積の数倍から数十倍の多量の油を吸着し得て、後述するように、かご部材120の内部を油で満たすように油を与えることになる。
【0024】
図3(a)に示すように、かご部材120は、底面部122と側壁部124とからなる有底筒状、典型的には、円筒形状の構造物であって、その内側に油吸着シート体110を積層して収容する。かご部材120には、少なくとも側壁部124における底面部122の近傍に多数の貫通孔124aが形成されており、油吸着シート体110に吸着された油は、これらの貫通孔124aを通ってかご部材120の外部に排出される。また、側壁部124の最下部には、外側に突出する複数の突起126が形成されている。なお、かご部材120は、内部の油に大きな加圧力を負荷できるように高い強度及び剛性を有する材料で形成されるのが好ましい。
【0025】
図3(b)に示すように、押圧部材130は、かご部材120に嵌合し内部の油を押圧する円板状の部材であり、その下面に油吸着シート体110と接触する押圧面130aを有するとともに、上面に進退機構140と結合された押圧ロッド132が固着されている。これにより、押圧部材130は、かご部材120の開口120a側から中心軸Cに沿って進入し内部を進退し、油吸着シート体110を直接押圧しようとするのではなく、かご部材120の内部の油を一軸押圧することができる。ここで、押圧部材130についても、かご部材120の内部の油を押圧する際に反力で変形することがないように、軽量でかつ十分な強度及び剛性を有する材料で形成されるのが望ましい。
【0026】
また、押圧部材130の外径は、かご部材120の側壁部124の内径とほぼ同一、すなわち押圧部材130がかご部材120の側壁部124の内面に対して嵌合するように構成するのが好ましい。これにより、押圧部材130がかご部材120に対して蓋の役割を果たすことで、内部に密閉空間Sが形成され、かご部材120の内部の油を一軸押圧することが可能となる。
【0027】
また、押圧部材130の押圧面130aには、放射状に複数の油流れ溝(図示せず)が形成されてもよい。このとき、形成される油流れ溝は、油吸着シート体110からの油を放射方向に導き、油吸着シート体110への剪断力の負荷を低減する。このための油流れ溝は、油の表面張力による毛細管現象を利用して油を押圧部材130の外周方向へ導くことができる程度の幅及び深さに形成されるのが好ましい。これにより、油吸着シート体110と押圧部材130との間でせん断力をより減じるから、油吸着シート体110を再利用できるように損傷させず、油をさらに容易に回収することができる。
【0028】
再度、図1を併せて参照すると、進退機構140は、筐体150の上部に取り付けられたスライダ142と、この中の押圧ロッド132を進退させるよう圧力を負荷する油圧ラムシリンダ143と、油圧ラムシリンダ143を押し込むように圧力を与え又は圧力を解除するように加圧及び除圧可能とする直列に接続された手動の油圧ポンプ145と、を含む。油圧ポンプ145の圧力を手動で高めることで油圧ラムシリンダ143の圧力を高め、押圧部材130がかご部材120の側壁部124の内面に対して嵌合しつつ進退できる。
【0029】
ここで、圧縮性を有する単動型の油圧ラムシリンダ143と非圧縮性の油圧ポンプ145とを直列に配置し、押圧部材130の進退を制御することで、突発的に過大な反力が押圧部材130に負荷されて押圧ロッド132の破損を抑制し、一方、油圧ポンプ145を開放することで瞬時に圧力を逃がすこともできる。
【0030】
図3(b)に示すように、筐体150は、中央に向けて徐々に傾斜する形状を有する底面150aと、その一部を開閉可能な扉150cとした側壁150bと、を含み、底面150aには、かご部材120を着脱自在に取り付ける取付台152が取り付けられている。そして、扉150cを開放した状態でかご部材120を側方から出し入れすることが可能となる。これにより、油吸着シート体110の収容及び取り出しが簡便となるとともに、メインテナンスが容易になるのである。
【0031】
取付台152は、かご部材120を載置する載置部152aと、その外周に下向きに突出した脚部152bとを含み、載置部152aの上面には、かご部材120の外側面の複数の突起126に対応する位置に、当該突起126と係合する複数のストッパ体154が取り付けられている。これにより、押圧部材130による加圧時に、かご部材120の位置ずれが生じるのを防止できる。また、脚部152bの下面には、内外を連通する連通溝(図示せず)が形成されており、かご部材120からしみ出す油が底面150aの中央部に流れることができるような流路を構成する。
【0032】
再び、図1に示すように、取付台152の下部には、油回収タンク160が配置されるとともに、筐体150の底面150aには排油管162が接続されている。そして、圧搾された油は、底面150aの中央に位置する排油管162を通って滴下することにより、油回収タンク160に回収される。
【0033】
次に、図4を用いて、上記した油回収方法における圧搾動作を説明する。
【0034】
まず、図4(a)に示すように、内部に油を十分に吸収した油吸着シート体110を積層した状態で保持するかご部材120を筐体150の取付台152に取り付ける。この状態で、押圧部材130の押圧面130aを積層された油吸着シート体110の上面に接するように配置する。このとき、油吸着シート体110は自重で保持する油を放出し、この滲み出た油は貫通孔124aから急激には流出できず、油面LSをかご部材120の内部に形成する。
【0035】
続いて、図4(b)に示すように、油圧ポンプ145により単動型の油圧ラムシリンダ143を介して押圧ロッド132及び押圧部材130を下向きに進出させる。すると、押圧部材130が下向きに油吸着シート体110を加圧力F1で一軸押圧することとなるが、貫通孔124aから油は急激には流出しないから、かご部材120と押圧部材130とで形成される密閉空間Sが油吸着シート体110に吸収されていた油Lで満たされる。
【0036】
続いて、図4(c)に示すように、加圧力F1による押圧部材130の一軸押圧をさらに続けると、密閉空間Sの内圧が上昇してその内部に充満していた油Lがかご部材120の外部に貫通孔124aからゆっくりと押し出される。その後、かご部材120の外周領域に押し出された油Lは、底面150aの中央側に流れ、排油管162を介して下方に滴下して、最終的に油回収タンク160に回収される。このとき、押圧部材130の一軸押圧は油に与えられ、直接は油吸着シート体110には与えられない。
【0037】
また、有底円筒状のかご部材120内に積層した略直方体の油吸着シート体110を配置して、かご部材120の中心軸Cに沿って押圧部材130で一軸押圧することで、油への加圧を均等にできて、かご部材120と押圧部材130とが中心軸Cに対してずれることがなく、かご部材120の底面部122と押圧部材130との間で挟まれる油吸着シート体110にも中心軸Cと交差する方向の力が加わることがない。したがって、かご部材120及び押圧部材130と油吸着シート体110との間に剪断力が生じることがなく、結果として、油吸着シート体110やその内部の交絡体114の再利用を妨げるように劣化させる過大な力の付与が抑制される。
【0038】
押圧部材130による押圧が終了すると、油圧ポンプ145の圧力を開放し、単動型の油圧ラムシリンダ143のシリンダがバネによって押圧ロッド132を退避させるように戻る。このとき、押圧部材130がかご部材120の側壁部124と嵌合して密閉空間Sが形成されている場合は、押圧部材130を引き上げようとすると当該密閉空間Sに負圧が生じてしまうため、押圧部材130が引き抜きにくくなることがある。これに対して、本実施例のように、かご部材120の突起126に筐体150のストッパ体154が係合可能になっており抜け止めとして機能するように構成すれば、かご部材120が強固に固定されるため、押圧部材130を容易に引き抜くことが可能となる。
【0039】
以上述べたように、上記した油回収装置及び油回収方法によれば、かご部材120内部の油Lを一軸加圧し、貫通孔124aから油Lを漏出させつつ油吸着シート体110を押圧し、不織布からなる袋体の内部の油の排出圧力を形成させず、且つ、油吸着シート体110と押圧部材130との間でせん断力を与えないから、油吸着シート体110を再利用できるように損傷させず、効率よく油を分離回収できるのである。さらに、手動の油圧ポンプ145を用いることで、動作自体には電源を必要としないので、油を回収する現地に装置を容易に設置でき、油吸着シート体110の再利用をより効率的に提供できる。
【0040】
ここまで本発明による実施例及びこれに基づく変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれらの例に限定されるものではない。また、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0041】
100 油回収装置
110 油吸着シート体
112 袋体
114 交絡体
120 かご部材
122 底面部
124 側壁部
124a 貫通孔
126 突起
130 押圧部材
130a 押圧面
132 押圧ロッド
140 進退機構
143 油圧ラムシリンダ
145 油圧ポンプ
150 筐体
150a 底面
150b 側壁
150c 扉
152 取付台
152a 載置部
152b 脚部
160 油回収タンク
162 排油管

図1
図2
図3
図4