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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】ふき取り用化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/26 20060101AFI20230307BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230307BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230307BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20230307BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
A61K8/26
A61K8/73
A61K8/34
A61Q1/14
A61Q19/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019042376
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020143026
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】田中 駿貴
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-284962(JP,A)
【文献】Marionnaud Lafayette, France,Mini Deodorant Wipes,Mintel GNPD [online],2017年05月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#4833047, [検索日:2022.9.15], 製品詳細, 製品情報, 商品説明
【文献】Nippon Menard Cosmetic, France,Spa Mask Sheet,Mintel GNPD [online],2011年10月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#1661949, [検索日:2022.9.15],
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)キサンタンガム
(B)グリセリンまたは1,3-ブチレングリコールから選ばれる一種以上
(C)硫酸アルミニウムカリウム
を含有し、前記(A)成分の含有量が0.1~0.4質量%であり、前記(B)成分の含有量が3~12質量%であり、前記(C)成分の含有量が0.2~1質量%であり、前記(A)成分と前記(B)成分の質量比(B)/(A)が15~70であることを特徴とするふき取り用化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ふき取り用化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肌荒れは、様々な要因によって引き起こされる。その要因の一つとして乾燥が挙げられる。乾燥した肌は、角質層の乱れによりバリア機能が低下するとともに、肌のターンオーバーを乱し、肌荒れを引き起こす。また、近年は化粧料の分野において時間の短縮化が進んでおり、オールインワン化粧料やリンスインシャンプーなど、化粧料の多機能化による簡便さが求められている。また、フェイシャルケアは、肌上の余分な皮脂を除去するために十分な洗顔が有効であるが、反面、過剰な洗顔は、肌の乾燥を引き起こしやすく、肌荒れを悪化させる場合がある。そのような中でふき取り用化粧料は、洗顔によって引き起こされるような過剰な皮脂の除去を防ぎ、かつ洗顔と化粧水を兼ねた化粧料として、注目されている。
【0003】
特許文献1には、高い角質除去効果を有し、且つ刺激等の安全性上問題のないふき取り用化粧料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-172343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示されるようなふき取り用化粧料は、ふき取り時に使用するシート材との摩擦により、肌に刺激を与え、肌荒れを起こす場合がある。また、肌上に潤いを残し難く、十分な保湿効果を付与できないといった問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記問題を解決するため鋭意検討した結果、(A)キサンタンガム、(B)多価アルコール、(C)硫酸アルミニウムカリウムを含有し、前記成分(A)と前記成分(B)の質量比(B)/(A)が10~140であることを特徴とするふき取り用化粧料が上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、シート材による摩擦感のなさ、保湿性、べたつきのなさ、ひきしめ感があるふき取り用化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、含有量を示す単位は、特に明記しない限り全て質量%である。
【0009】
本発明は、(A)キサンタンガム、(B)多価アルコール、(C)硫酸アルミニウムカリウムを含有し、前記成分(A)と前記成分(B)の質量比(B)/(A)が10~140であることを特徴とするふき取り用化粧料である。
【0010】
本発明は、シート材による摩擦感のなさの観点から(A)キサンタンガムを含有する。
【0011】
本発明で用いられる前記(A)成分の含有量は、好ましくは0.05%~0.5%、より好ましくは0.1%~0.4%がよい。前記(A)成分が0.05%未満の場合、摩擦感が大きくなる恐れがある。前記(A)成分が0.5%を超える場合、ぬるつきが出る恐れがある。
【0012】
本発明は、保湿性の観点から、(B)多価アルコールを含有する。
【0013】
本発明の前記(B)成分である多価アルコールとしては、1,3-ブチレングリコ-ル、ジプロピレングリコール、プロピレングリコ-ル、エチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、グリセリン等が挙げられる。好ましくは、1,3-ブチレングリコ-ル、ジプロピレングリコール、プロピレングリコ-ル、グリセリンが良く、より好ましくは、1,3-ブチレングリコ-ル及びグリセリンが良い。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いても良い。
【0014】
本発明で用いられる前記(B)成分の含有量は、好ましくは2%~15%、より好ましくは3%~12%がよい。前記(B)成分が2%未満の場合、保湿性が低くなる恐れがある。前記(B)成分が15%を超える場合、べたつきが出て使用性が悪くなる。
【0015】
本発明によるふき取り用化粧料には、べたつきを抑える観点から、前記(A)成分と前記(B)成分の質量比(B)/(A)が、好ましくは10~140、より好ましくは15~70である。含有比率(B)/(A)が10未満では、つっぱり感が増し、使用性が悪くなる恐れがある。また、含有比率(B)/(A)が140を超える場合、べたつきが出て使用性が悪くなる恐れがある。
【0016】
本発明は、ひきしめ感の観点から(C)硫酸アルミニウムカリウムを含有する。
【0017】
本発明で用いられる前記(C)成分の含有量は、好ましくは0.1%~1%、より好ましくは0.2%~0.5%がよい。前記(C)成分が0.1%未満の場合、ひきしめ感が低くなる恐れがある。前記(C)成分が1%を超える場合、効果の増強は認められにくい。
【0018】
本発明に用いるシート材としては、織布、不織布から選ばれるものが好ましい。織布、不織布に使用される繊維としては、天然繊維、再生繊維、合成繊維が挙げられる。具体的繊維としては、パルプ、羊毛、セルロース繊維(コットンを含む)、レーヨン、アクリル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET) 、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリエステル系繊維及びポリオレフィン系繊維等が挙げられる。
【0019】
シート材としては、セルロース繊維を含むものが好ましく、セルロース繊維を70%以上、特に100%含むシートが、ふき取り用化粧料を含浸しやすいため好ましい。また、織布と不織布とでは、不織布の方が、肌さわりが柔らかく好ましい。特に、コットンやセルロース繊維を含む不織布が使用時に上滑りせず、しっかりと汚れが拭き取られる感触を出せる点で好ましい。
【0020】
また、本発明のふき取り用化粧料は、予め上記シート基材に含浸させることにより、シート化粧料とすることができる。
【0021】
本発明の化粧料は前記必須成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば、他の界面活性剤、油性成分、保湿剤、増粘剤、キレート剤、薬効成分、蛋白誘導体、加水分解蛋白、アミノ酸類、キレート剤、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、香料、防腐剤、色素、顔料、粉体、pH調整剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、香料等から選ばれる少なくとも1種以上を含有することができる。ただし、これら例示に限定されるものでない。
【実施例
【0022】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0023】
本明細書に示す評価試験において、ふき取り用化粧料に含まれる成分および、その含有量を種々変更しながら実施した各種の実験結果を以下に示す。なお、ふき取り用化粧料の各成分の含有量を示す単位は全て質量%であり、比率は質量比を示し、これを常法にて調製した。
【0024】
<試験1>
本明細書に示す評価試験において、肌に対する「シート材による摩擦感のなさ」、「保湿性」、「べたつきのなさ」、「ひきしめ感」について評価した。
【0025】
シート材による摩擦感のなさは10名の女性パネラーが、実施例および比較例で得られたふき取り用化粧料をそれぞれシート材(デイリープレミアム コットン、コーセー社製)に1gを含浸させた後、得られたふき取り用化粧料を含浸させたシートにより、顔全体をふき取り、下記の基準により、摩擦感を評価した。なお、ふき取りは、ふき取り用化粧料を含浸させたシートを肌の上に軽く押し当てて、ふき取り用化粧料を肌に馴染ませた後に、一方向にふき取る方法とした(ふき取り回数:3回)。
◎:8~10名が、シート材による摩擦感が少ないと判定した。
○:5~7名が、シート材による摩擦感が少ないと判定した。
△:3~4名が、シート材による摩擦感が少ないと判定した。
×:0~2名が、シート材による摩擦感が少ないと判定した。
【0026】
保湿性は10名の女性パネラーが、実施例および比較例で得られたふき取り用化粧料をそれぞれシート材(デイリープレミアム コットン、コーセー社製)に1gを含浸させた後、得られたふき取り用化粧料を含浸させたシートにより、顔全体をふき取り、下記の基準により、保湿性を評価した。なお、ふき取りは、ふき取り用化粧料を含浸させたシートを肌の上に軽く押し当てて、ふき取り用化粧料を肌に馴染ませた後に、一方向にふき取る方法とした(ふき取り回数:3回)。
◎:8~10名が、保湿性があると判定した。
○:5~7名が、保湿性があると判定した。
△:3~4名が、保湿性があると判定した。
×:0~2名が、保湿性があると判定した。
【0027】
べたつきのなさは10名の女性パネラーが、実施例および比較例で得られたふき取り用化粧料をそれぞれシート材(デイリープレミアム コットン、コーセー社製)に1gを含浸させた後、得られたふき取り用化粧料を含浸させたシートにより、顔全体をふき取り、下記の基準により、べたつきのなさを評価した。なお、ふき取りは、ふき取り用化粧料を含浸させたシートを肌の上に軽く押し当てて、化粧料を肌に馴染ませた後に、一方向に拭き取る方法とした(ふき取り回数:3回)。
◎:8~10名が、べたつきが少ないと判定した。
○:5~7名が、べたつきが少ないと判定した。
△:3~4名が、べたつきが少ないと判定した。
×:0~2名が、べたつきが少ないと判定した。
【0028】
ひきしめ感は10名の女性パネラーが、実施例および比較例で得られたふき取り用化粧料をそれぞれシート材(デイリープレミアム コットン、コーセー社製)に1gを含浸させた後、得られたふき取り用化粧料を含浸させたシートにより、顔全体をふき取り、下記の基準により、ひきしめ感を評価した。なお、ふき取りは、化粧料を含浸させたシートを肌の上に軽く押し当てて、ふき取り用化粧料を肌に馴染ませた後に、一方向に拭き取る方法とした(ふき取り回数:3回)。
◎:8~10名が、ひきしめ感があると判定した。
○:5~7名が、ひきしめ感があると判定した。
△:3~4名が、ひきしめ感があると判定した。
×:0~2名が、ひきしめ感があると判定した。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
表1~4に示す実施例1~29から、シート材による摩擦感のなさ、保湿性、べたつきのなさおよびひきしめ感について良好な結果を得ることが確認された。
【0034】
以下にふき取り用化粧料の実施例30を記載する。
【0035】
実施例30により得られたふき取り用化粧料は、シート材による摩擦感のなさ、保湿性、べたつきのなさおよびひきしめ感に関して良好な結果を得た。
【0036】
実施例30
成 分 含有量(%)
クエン酸 0.01
クエン酸ナトリウム 0.35
エデト酸二ナトリウム 0.10
濃グリセリン 4.00
硫酸アルミニウムカリウム水和物 0.20
キサンタンガム 0.20
ピリドキシン環状リン酸 0.10
L-アスコルビン酸 2-グルコシド 0.10
サクシニルアテロコラーゲン 0.10
1,3-ブチレングリコール 3.00
パラオキシ安息香酸メチル 0.20
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.10
フェノキシエタノール 0.30
グリセリンモノ2-エチルヘキシルエーテル 0.10
エクトイン 0.10
酵母エキス(4) 0.10
精製水 90.94
合計 100.00
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明はシート材による摩擦感のなさ、保湿性、べたつきのなさ、ひきしめ感があるふき取り用化粧料を提供できる。