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特許7239179NK細胞および抗PDL1による癌治療法に関連する方法および組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】NK細胞および抗PDL1による癌治療法に関連する方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230307BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230307BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230307BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230307BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230307BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230307BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20230307BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20230307BHJP
   C07K 14/54 20060101ALN20230307BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20230307BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230307BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61K35/17
A61K35/12
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K38/20
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61K39/395 E
C12N5/0783
C07K16/30
C07K14/54
C07K14/47
C12N15/13
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2019518292
(86)(22)【出願日】2017-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 US2017055352
(87)【国際公開番号】W WO2018067825
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】62/404,520
(32)【優先日】2016-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510170730
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ セントラル フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】コピク,アリシャ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】イガラシ,ロバート ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】オイヤー,ジェレミア ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】アルトメア,デボラ エー.
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0359853(US,A1)
【文献】Natural killer cells stimulated with PM21 particles expand and biodistribute in vivo: Clinical implications for cancer treatment,Cytotherapy,Vol. 18, No. 5,p. 653-663,doi: 10.1016/j.jcyt.2016.02.006.
【文献】Antibody-Dependent Cellular Cytotoxicity Activity of a Novel Anti-PD-L1 Antibody Avelumab (MSB0010718C) on Human Tumor Cells,Cancer Immunology Research,2015年,Vol. 3, No. 10,p. 1148-1157
【文献】Membrane-Bound IL-21 Promotes Sustained Ex Vivo Proliferation of Human Natural Killer Cells,PLOS ONE,2012年,Vol. 7, No. 1,e30264
【文献】Interleukin-21 Increases Direct Cytotoxicity and IFN-γ Production of Ex Vivo Expanded NK Cells towards Breast Cancer Cells,Anticancer Research,2012年,Vol. 32,p. 839-846
【文献】Interleukin-18 (IL-18)によるNatural Killer (NK)細胞活性化および腫瘍細胞のアポトーシス誘導,頭頸部腫瘍,Vol. 29, No. 1,2003年,p. 217-223
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 35/00
A61K 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の癌を治療する方法に使用するための組合せ物であって、
拡大記憶(XM)NK細胞および抗PDL1抗体を含み、
前記NK細胞は、ex vivoでナイーブNK細胞集団をIL-12、IL-15およびIL-18と接触させ、その後FC21フィーダー細胞と呼ばれる膜結合IL-21を発現するフィーダー細胞、またはそれぞれPM21粒子およびEX21エキソソームと呼ばれる、FC21フィーダー細胞から調製される細胞膜粒子(PM)もしくはエキソソーム(EX)と拡大することによって、活性化または拡大され、
前記方法が、前記対象に前記XM NK細胞および前記抗PDL1抗体を投与することを含む、組合せ物。
【請求項2】
前記対象に前記NK細胞を投与する1~21日前にPM21粒子、EX21エキソソームまたはFC21細胞によるNK細胞の活性化または拡大を実施する、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項3】
前記NK細胞が、末梢血、臍帯血または幹細胞に由来するものであり得る、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項4】
前記NK細胞が、PM21粒子と拡大され、前記PM21粒子が、41BBLをさらに含む、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項5】
前記抗PDL1抗体を投与する1~14日前に前記NK細胞を投与する、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項6】
前記NK細胞および抗PDL1抗体を同時に投与する、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項7】
前記NK細胞が、自家NK細胞、ハプロタイプ一致NK細胞または同種NK細胞である、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項8】
前記対象にIL-12、IL-15およびIL-18のうちの1つまたは複数のものを投与することをさらに含む、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項9】
前記IL-12、IL-15およびIL-18を前記NK細胞と同時に投与する、請求項8に記載の組合せ物。
【請求項10】
前記NK細胞を投与する前に前記IL-12、IL-15およびIL-18を投与する、請求項8に記載の組合せ物。
【請求項11】
前記NK細胞を投与した後に前記IL-12、IL-15およびIL-18を投与する、請求項8に記載の組合せ物。
【請求項12】
前記対象にPM21粒子またはEX21エキソソームを投与することをさらに含む、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項13】
前記PM21粒子またはEX21エキソソームを前記NK細胞と同時に投与する、請求項12に記載の組合せ物。
【請求項14】
前記NK細胞を投与した後、前記PM21粒子またはEX21エキソソームを少なくとも1週間に1回、2回、3回投与する、請求項12に記載の組合せ物。
【請求項15】
対象の癌を治療する方法に使用するための組合せ物であって、
前記組合せ物は、(i)IL-12、IL-15およびIL-18、(ii)それぞれPM21粒子およびEX21エキソソームと呼ばれる、膜結合IL-21を発現するフィーダー細胞から調製される細胞膜粒子(PM)またはエキソソーム(EX)、および(iii)抗PDL1抗体を含み、
前記方法は、前記対象に(i)IL-12、IL-15およびIL-18、(ii)前記PM21粒子または前記EX21エキソソーム、および(iii)前記抗PDL1抗体を投与することを含む、組合せ物。
【請求項16】
前記抗PDL1抗体を投与する1~14日前に前記PM21粒子またはEX21エキソソームを投与する、請求項15に記載の組合せ物。
【請求項17】
前記PM21粒子またはEX21エキソソームおよび前記抗PDL1抗体を同時に投与する、請求項15に記載の組合せ物。
【請求項18】
前記IL-12、IL-15およびIL-18を前記PM21粒子またはEX21エキソソームと同時に投与する、請求項15に記載の組合せ物。
【請求項19】
前記PM21粒子またはEX21エキソソームを投与する前に前記IL-12、IL-15およびIL-18を投与する、請求項15に記載の組合せ物。
【請求項20】
前記PM21粒子またはEX21エキソソームを投与した後に前記IL-12、IL-15およびIL-18を投与する、請求項15に記載の組合せ物。
【請求項21】
PM21粒子またはEX21エキソソームの初回投与後、前記PM21粒子またはEX21エキソソームを少なくとも1週間に1回、2回、3回投与する、請求項15に記載の組合せ物。
【請求項22】
(i)FC21フィーダー細胞と呼ばれる膜結合IL-21を発現するフィーダー細胞、またはそれぞれPM21粒子およびEX21エキソソームと呼ばれる、FC21フィーダー細胞から調製される細胞膜粒子(PM)もしくはエキソソーム(EX)、(ii)IL-12、IL-15およびIL-18、および(iii)抗PDL1抗体を含む、抗癌療法に使用するための組合せ物。
【請求項23】
(i)それぞれPM21粒子およびEX21エキソソームと呼ばれる、膜結合IL-21を発現するフィーダー細胞から調製される細胞膜粒子(PM)またはエキソソーム(EX)、(ii)IL-12、IL-15およびIL-18、および(iii)抗PDL1抗体を含む、抗癌療法に使用するための組合せ物。
【請求項24】
前記癌が、低PD-L1発現を有するかまたはPD-L1発現がなく、前記活性化NK細胞の投与が、前記癌においてPD-L1発現を誘導する、請求項1または15に記載の組合せ物。
【請求項25】
前記抗PDL1抗体が、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fabフラグメント、Fvフラグメント、またはsFvフラグメントである、請求項1、15、22、または23に記載の組合せ物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2016年10月5日に出願された米国仮特許出願第62/404,520号の利益を主張するものであり、上記出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
現在、大部分の腫瘍では腫瘍部位に動員されるCD8 T細胞が分泌するIFNγに応答してPD-L1の発現が誘導されることが十分に確立されている。腫瘍にPD-L1発現が誘導されると、調節T細胞の増殖、免疫抑制環境を作り出すインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)のアップレギュレーションなどの事象のカスケードが惹起される。PD-L1はまた、PD-1受容体との相互作用により細胞傷害性T細胞の機能を直接阻止し、そのアナジーおよびアポトーシスを引き起こす。次いで、これらの変化が腫瘍の進行および転移を促進する。
【0003】
抗体を用いてPD-1/PD-L1相互作用を妨げる癌治療法はこれまで、最も刺激的な開発の1つとして、様々な悪性腫瘍さらには極めて進行した疾患を有する患者に長期間持続する寛解をもたらしてきた。PD-L1の誘導およびそれに続く免疫抑制カスケードによって腫瘍に対する初期免疫応答が停止した癌では、新たな抗PD-L1/抗PD-1療法により、機能が停止した免疫系を解放することが可能になった。しかし、リンパ球が浸潤したPD-L1陽性腫瘍を有する患者にのみ応答が認められ、腫瘍タイプ全体では患者の10~20%に限られる。このため、PD-L1/PD-1遮断療法が効果を示すのは、免疫系による強力な初期応答時にPD-L1が誘導される場合に限られる。必要とされるのは、PD-L1免疫抑制カスケード、特に限定されないが、PD-L1が誘導された癌を回避することができる新たな癌治療法である。
【発明の概要】
【0004】
対象の癌を治療する方法であって、対象にNK細胞(例えば、拡大記憶(XM)NK細胞および/または養子NK細胞など)および抗PDL1抗体を投与することを含む、方法が開示される。
【0005】
一態様では、ナイーブNK細胞集団をPM21粒子、EX21エキソソームまたはFC21フィーダー細胞と接触させることにより拡大(expanded)記憶NK細胞を活性化または拡大する(are activated or expanded)
【0006】
一態様では、NK細胞は、CMV血清陽性ドナーの末梢血、臍帯血、胎盤血に由来するもの、またはその他の供給源、例えば人工多能性幹細胞、胚性幹細胞もしくはNK92などの不死化NK細胞様細胞系などに由来するものであり得る。
【0007】
また、対象に拡大記憶NK細胞を投与する前にNK細胞をIL-12、IL-15およびIL-18のうちの1つまたは複数のものと接触させ、次いで、PM21粒子、EX21エキソソームまたはFC21フィーダー細胞により拡大すること、ならびに/あるいは対象にIL-12、IL-15およびIL-18のうちの1つまたは複数のものを投与することをさらに含む、任意の上記態様の方法も開示される。
【0008】
また、対象に拡大記憶NK細胞を投与する前にNK細胞(拡大記憶(XM)NK細胞など)をIL-12、IL-15およびIL-18のうちの1つまたは複数のものと接触させること、ならびに/あるいは対象にIL-12、IL-15およびIL-18のうちの1つまたは複数のものを投与することをさらに含む、任意の上記態様の方法も開示される。
【0009】
また、対象にPM21粒子またはEX21エキソソームを投与することをさらに含む、任意の上記態様の方法も開示される。
【0010】
一態様では、対象の癌を治療する方法であって、対象にPM21粒子またはEX21エキソソームと抗PDL1抗体とを投与することを含む、方法が本明細書に開示される。
【0011】
また、IL-12、IL-15およびIL-18のうちの1つまたは複数のものを投与することをさらに含む、任意の上記態様の方法も開示される。
【0012】
一態様では、PM21、EX21またはFC21拡大記憶NK細胞および抗PDL1抗体を含む、抗癌療法が本明細書に開示される。
【0013】
また、PM21粒子またはEX21エキソソームならびに/あるいはIL-12、IL-15およびIL-18のうちの1つまたは複数のものをさらに含む、任意の上記態様の抗癌療法も開示される。
【0014】
一態様では、PM21粒子またはEX21エキソソームおよび抗PDL1抗体を含む、抗癌療法が本明細書に開示される。
【0015】
また、IL-12、IL-15およびIL-18のうちの1つまたは複数のものをさらに含む、任意の上記態様の抗癌療法も開示される。
【0016】
一態様では、対象の癌を治療する方法であって、対象のNK細胞を内因性に拡大または活性化した後、抗PDL1抗体を投与することを含み、対象のNK細胞が、対象にPM21粒子またはEX21エキソソームを投与することによって拡大または活性化される、方法が本明細書に開示される。
【0017】
また、対象にIL-12、IL-15およびIL-18のうちの1つまたは複数のものを投与することをさらに含む、任意の上記態様の癌治療の方法も開示される。
【0018】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、いくつかの実施形態を図示し、説明とともに本開示の組成物および方法を図示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】PM21粒子で拡大したNK細胞がIL-2で活性化したNK細胞よりも高いレベルでIFNγを産生することを示す図である。NK細胞をPM21粒子で12日間拡大するか、または予め100UのIL-2で一晩活性化し、次いで、未刺激NK細胞(左)またはK562細胞単独に曝露した細胞(中央)もしくはサイトカイン(IL-12、IL-15およびIL-18)とともにK562細胞に曝露した細胞(右)のIFNγ産生を解析した。未刺激NK細胞および刺激NK細胞を透過処理し、抗IFNγ Abで染色し、フローサイトメトリーにより解析した。
図2図2Aおよび図2BはPM21 NK細胞がSKOV-3細胞に対して細胞傷害性を示し、刺激時にIFNγおよびTNFαを分泌することを示す図である。図2Aは、NK細胞をPM21粒子で14日間拡大するか、またはIL2(100U、O/N)で活性化し、次いで、比を漸増させながらSKOV-3細胞に加えたことを示している。細胞を30分間インキュベートし、アネキシンV-v450染色を用いてGFP+SKOV-3細胞の生存能を求め、SKOV-3のみの細胞を入れた基準ウェルに基づき細胞傷害性を求めた。図2Bは、拡大PM21-NK細胞を4時間、刺激せずにおくか、SKOV-3細胞単独に曝露するか、またはサイトカインIL12/18の存在下でSKOV-3細胞に曝露したことを示している。細胞の表面マーカーを染色し、透過処理し、IFNγおよびTNFαを染色した後、フローサイトメトリーにより解析した。
図3図3A図3Bおよび図3Cは養子移植したPM21 NK細胞がin vivoでSKOV-3細胞にPD-L1を誘導しTreg拡大を促進することを示す図である。NSGマウスの腹腔内にSKOV-3細胞1×10個を移植した。第8日および第13日に、マウスを10×10個のPM21 NK細胞または溶媒対照で処置した後、IL2を注射した(25000U、3回/週)。1回目のNK細胞注射後第12日に、マウスを屠殺し、腫瘍および腹膜洗浄液を解析用に収集した。図3Aは、腫瘍を灌流して単細胞懸濁液を採取し、抗PD-L1で染色したことを示している。図3Bは、腹膜洗浄液中の細胞についてNK細胞およびT細胞でのPD-1発現の存在ならびに調節T細胞(CD3+CD4+CD25BrightFoxP)(図3C)の存在を解析した。
図4】IFNγ分泌NK細胞によるPD-L1発現の誘導および抗PDL1 mAbとの併用治療の略図である。PD-L1陰性(または低PD-L1)の腫瘍を養子移植NK細胞に曝露する。NK細胞が高レベルのIFN-γ分泌によって腫瘍に応答し、次いで、それが腫瘍細胞に高レベルのPD-L1を誘導する(免疫抑制を引き起こす防御機序)。このように、抗PD-L1抗体とCD16NK細胞などの抗体依存性細胞傷害(ADCC)が可能な細胞の養子移植の併用によりPD-L1を極めて効率的に標的化することができる。腫瘍でのPD-L1誘導は、この分子に対して標的化したADCCまたはCAR-T細胞によりNK細胞で腫瘍を治療する、癌治療の汎用プラットフォームのための汎用性の標的化可能なリガンドももたらす。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の化合物、組成物、物品、装置および/または方法を開示し説明する前に、それらが、特に明記されない限り特定の合成方法にも特定の組換えバイオテクノロジー法にも、また特に明記されない限り特定の試薬にも限定されるものではなく、したがって、当然のことながら様々なものであり得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語が、単に特定の実施形態を説明することを目的とするものであって、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0021】
A.定義
本明細書および添付の請求項で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別の意味を表す場合を除き、複数形の指示対象を包含する。したがって、例えば「a pharmaceutical carrier」(医薬担体)と言う場合、それには2つ以上のこのような担体の混合物などが包含される。
【0022】
本明細書では、「約」の付いたある特定の数値から、および/または「約」の付いた別の特定の数値までの形で範囲を示すことがある。このような範囲を示す場合、別の実施形態には、ある特定の数値から、および/または他の特定の数値までが包含される。これと同様に、数値を概数で示す場合、先行詞「約」を使用することにより、特定の数値が別の実施形態を形成することが理解されよう。さらに、各範囲の終点は、他の終点と関係がある場合および他の終点と無関係な場合ともに意味があることが理解されよう。また、本明細書に開示される数値は多数あり、それぞれの数値についても、その数値自体に加えて「約」の付いたその特定の数値として開示されることも理解される。例えば、数値「10」が開示される場合、「約10」も開示される。また、ある数値が開示される場合、当業者により適切に理解されるように、「以下」の付いたその数値、「以上の付いたその数値」および数値の間で可能な範囲も開示されることも理解される。例えば、数値「10」が開示される場合、「10以下」および「10以上」も開示される。また、本願全体を通してデータが多数の異なる形式で記載され、このデータは、そのデータポイントの任意の組合せの終点および始点ならびに範囲を表すことも理解される。例えば、ある特定のデータポイント「10」と、ある特定のデータポイント「15」が開示される場合、10と15の間の数値のほかにも10および15より大きい数値、それ以上の数値、それ未満の数値、それ以下の数値およびそれと等しい数値が開示されるものと見なされることが理解される。また、2つの特定の単位の間にある各単位もそれぞれ開示されることも理解される。例えば、10と15が開示される場合、11、12、13および14も開示される。
【0023】
本明細書およびそれに続く請求項では多数の用語に言及し、それらは以下の意味を有するものと定める。
【0024】
「任意選択の」または「任意選択で」は、それに続いて記載される事象または状況が生じても生じなくてもよく、記載には前記事象または状況が生じる場合およびそれが生じない場合が含まれることを意味する。
【0025】
本願を通して様々な刊行物を参照する。これらの刊行物の開示は、本願と関連する最新技術をさらに十全に記載するため、その全体が参照により本願に組み込まれる。また、開示される参考文献は、参照に利用する文に記載される形でそれらに含まれている資料として個別に、かつ具体的に参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
B.癌の治療法
既に説明した通り、大部分の腫瘍では腫瘍部位に動員されるCD8 T細胞が分泌するIFNγに応答してPD-L1の発現が誘導される。このように腫瘍にPD-L1発現が誘導されると、諸事象のカスケードが惹起され、それが最終的には免疫抑制環境を作り出すとともに、PD-1受容体との相互作用により細胞傷害性T細胞の機能を直接阻止し、細胞傷害性T細胞のアナジーおよびアポトーシスを引き起こす。次いで、これらの変化が腫瘍の進行および転移を促進する。PD-L1の誘導およびそれに続く免疫抑制カスケードによって腫瘍に対する初期免疫応答が停止した癌では、新たな抗PD-L1/抗PD-1療法により、機能が停止した免疫系を解放することが可能になった。しかし、上述の通り、抗PDL1/PD1療法は、既にPDL1が誘導された癌に限定されている。
【0027】
本開示は、癌に意図的に免疫抑制性PDL1を誘導した後、抗PDL1療法を用いることにより、癌を治療し抗PDL1療法を改善しようとするものである。具体的には、癌組織に意図的にPDL1発現を誘導し、次いでPDL1を発現する細胞を抗PDL1抗体で除去する反直観的な治療が本明細書に開示される。この意図的な誘導は、特に限定されないが、PM21粒子、EX21エキソソーム、FC21フィーダー細胞および拡大記憶(XM)NK細胞を含めたNK細胞の使用により実施する。したがって、一態様では、対象の癌を治療する方法であって、対象にPM21粒子、EX21エキソソーム、FC21フィーダー細胞および/または養子NK細胞ならびに抗PDL1抗体を投与することを含む、方法が本明細書に開示される。養子NK細胞は、様々な供給源のもの(例えば、CMV血清陽性ドナーの末梢血、臍帯血、胎盤血に由来する、または人工多能性幹細胞、胚性幹細胞などの他の供給源に由来するNK細胞、もしくはNK92などの不死化NK細胞様細胞系)であり、特に限定されないが、PM21粒子、EX21エキソソーム、FC21フィーダー細胞を含めた様々な活性化方法または拡大方法により処理したものであり得る。例えば、PM21粒子、EX21エキソソーム、FC21フィーダー細胞により活性化および/または拡大した養子NK細胞はXM NK細胞であり得る。一態様では、養子NK細胞は、非拡大IL2活性化細胞またはGSK3阻害剤で活性化したNK細胞であり得る。
【0028】
ヒトNK細胞は、CD56またはCD16の発現およびT細胞受容体(CD3)の不在によって定められる末梢血リンパ球の亜集団である。NK細胞は主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子を欠く標的細胞を感知し死滅させる。NK細胞活性化受容体としては、特に天然の細胞傷害性受容体(NKp30、NKp44およびNKp46)ならびにレクチン様受容体であるNKG2DおよびDNAM-1が挙げられる。そのリガンドは、ストレスを受けた細胞、形質転換細胞または感染細胞に発現するが、正常な細胞には発現しないため、正常な細胞はNK細胞の殺作用に対して耐性を示す。NK細胞の活性化は、キラーイムノグロビン(immunoglobin)(Ig)様受容体(KIR)、NKG2A/CD94および白血球Ig様受容体1(LIR-1)などの抑制性受容体を介して負に調節される。標的溶解を防ぐには抑制性受容体が1つ結合すれば十分であると思われる。したがって、NK細胞は、多数のストレス誘導性リガンドを多数発現し、MHCクラスIリガンドをほとんど発現しない細胞を効率的に標的化する。
【0029】
NK細胞は、様々な異なる方法により腫瘍細胞、ストレスを受けた細胞およびウイルス感染細胞を効率的に破壊する。1つ目は、標的細胞に直接結合し、その膜を通過し、次いで数種類のアポトーシスタンパク質を切断し活性化するタンパク質を注入し、それにより標的細胞のプログラムされた細胞死(アポトーシス)を開始させることによるものである。NK細胞の表面には、標的細胞上にありアポトーシス性のプログラムされた細胞死の内部シグナルを作動させる受容体、例えば腫瘍壊死因子(TNF)関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)に対する受容体などに結合して活性化させることができるタンパク質リガンドも含まれている。
【0030】
NK細胞はまた、悪性細胞またはウイルスに易感染性の細胞により活性化されるとIFN-γを分泌する。IFN-γは、マクロファージの重要な活性化因子であるとともに、クラスII主要組織適合複合体(MHC)分子発現の誘導因子である。しかし、既に記載した通り、IFN-γには、腫瘍細胞に免疫抑制特性を有するPDL1の発現を誘導するという負の作用もある。それでも、NK細胞を用いて腫瘍を標的化し、毒性を示す可能性のある全身のIFN-γではなく腫瘍環境中のIFN-γを発現させることにより、癌細胞にPDL1を誘導させ、次いで、抗PDL1抗体を用いて腫瘍を除去し、PDL1の免疫抑制作用を阻止することができる。NK細胞を用いれば、単独での抗PDL1抗体療法をめぐる制約が効率的に克服される。
【0031】
それでも、NK細胞免疫療法の効果は、患者に投与する、または注入後のin vivo拡大により到達するNK細胞の量に左右される。現在用いることができる技術には、患者に治療効果をもたらすのに必要なNK細胞の拡大レベルが達成できないことによる限界がある。臨床での活性化および拡大のプロトコルがないことが、NK細胞ベースの免疫療法の進歩の大きな障害となっている。現在用いられているex vivoの活性化および拡大のプロトコルは、高用量サイトカインと白血病由来のフィーダー/刺激細胞系に発現する活性化リガンドとの組合せを用いるものであり、大部分の施設で臨床現場に導入するのに重大なマイナス面をもたらし、直接in vivoで拡大するのにも活性化するのにも適さない。
【0032】
癌の治療法が有効であるためには、有効治療量に達する程度のNK細胞の活性化および/または拡大が得られるのが望ましい。NK細胞は、in vitro培養では、サイトカイン(IL-15またはIL-21など)および刺激細胞の表面に発現する受容体を活性化するリガンド(4-1BBLなど)で刺激すると、末梢血単核球(PBMC)の混合物内で指数関数的かつ優先的に増殖する。サイトカインIL-15およびIL-21は、正常な樹状細胞のように膜結合性インターロイキンが交差提示されることにより、可溶型の上記サイトカインよりも強力にNK細胞の拡大を誘導する。さらに、このような刺激条件下では、NK細胞の生存には低濃度の可溶型IL-2しか必要とせず、このため、PBMC混合物内で観察可能な程度にT細胞を増殖させずにNK細胞を選択的に拡大することが可能になる。可溶型のIL-15およびIL-21サイトカインまたは高用量のIL-2は、NK細胞の増殖よりもT細胞の増殖を強力に刺激する。
【0033】
これとは対照的に、例えばPM21粒子、EX21エキソソームまたはFC21フィーダー細胞の表面にある膜結合性IL-21で刺激すると、定期的に培養物に新鮮な刺激細胞を補充する限り、無数の世代にわたってNK細胞の連続的増殖が刺激され、NK細胞の連続的拡大が可能になることがわかっている。この方法は効率的なin vitroでのNK細胞拡大を可能にするものであるが、生存フィーダー細胞が必要になるため、この方法論を大きなGMP施設および能力のない臨床現場に導入することは困難である。また、患者に注入されるNK細胞は、フィーダーによる持続的な刺激がないため分裂が止まる可能性がある。さらに、in vitroで培養したNK細胞を患者に再注入して、それが目的通りに機能することが可能であるかどうかに関する情報はまだない。NK細胞と接触し、これを活性化させ、かつ/または拡大する1つまたは複数の活性化剤、刺激ペプチド、サイトカインおよび/または接着分子を含む細胞膜(PM)粒子、エキソソーム(EX)またはフィーダー細胞(FC)を用いることにより、これらの障害が克服される。NK細胞を活性化する薬剤および刺激ペプチドの例としては、特に限定されないが、41BBL、IL-2、IL-12、IL-21、IL-18、MICA、LFA-1、2B4、BCM/SLAMF2、CCR7および/またはその他のホーミング受容体が挙げられる。サイトカインの例としては、特に限定されないが、IL-2、IL-12、IL-21およびIL-18が挙げられる。接着分子の例としては、特に限定されないが、LFA-1、MICA、BCM/SLAMF2が挙げられる。例えば、膜結合性IL-21を発現するフィーダー細胞から調製した細胞膜粒子フィーダー細胞(FC)もしくは(PM粒子)またはエキソソーム(EX)(それぞれ、FC21細胞、PM21粒子およびEX21エキソソーム)。膜結合性IL-21を発現するFC21細胞、PM21粒子およびEX21エキソソームは、特に限定されないが、41BBL、IL-2、IL-12、IL-18、MICA、LFA-1、2B4、BCM/SLAMF2、CCR7を含めた追加の1つまたは複数の活性化剤、刺激ペプチド、サイトカインおよび/または接着分子をさらに含み得る(例えば、41BBLおよび膜結合性インターロイキン21を発現するPM21粒子、EX21エキソソームまたはFC細胞)。したがって、一態様では、癌を治療する方法であって、対象にNK細胞(例えば、XM NK細胞、IL-21により刺激したNK細胞および/またはNK細胞由来の粒子もしくはエキソソームなど)および抗PDL1抗体を投与することを含み、ナイーブNK細胞集団をPM21粒子、EX21エキソソームまたはFC21フィーダー細胞と接触させることによりNK細胞(例えば、XM NK細胞、NK92細胞またはIL-21により刺激した任意のNK細胞など)を活性化および/または拡大することを含む、方法が本明細書に開示される。
【0034】
PM21粒子、EX21エキソソームおよび/またはFC21フィーダー細胞は、外来性のNK細胞集団(例えば、XM NK細胞、NK92細胞または膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞など)を活性化および/または拡大するのに本開示の治療法に使用し得るのみならず、内在性のNK細胞集団(例えば、XM NK細胞、NK92細胞または膜結合性IL-21表面発現NK細胞により刺激した任意のNK細胞など)を活性化および/または拡大するのに使用し得ることが理解されるとともに、本明細書で企図される。さらに、PM21粒子、EX21エキソソームおよび/またはPC21フィーダー細胞は、活性化および/または拡大したNK細胞と同様の機能的特性を有し得る。したがって、一態様では、本明細書に開示されるのは、対象にPM21粒子、EX21エキソソームおよび抗PDL1抗体を投与することを含む、癌治療に関するものである。
【0035】
一態様では、本開示の方法に使用する細胞膜粒子またはエキソソームをNK細胞刺激フィーダー細胞から精製し得る。特許請求される方法に使用するNK細胞刺激フィーダー細胞ならびに本明細書に開示される細胞膜粒子(例えば、PM21粒子)およびエキソソーム(例えば、FC21エキソソーム)の作製に使用するNK細胞刺激フィーダー細胞は、放射線照射した自家末梢血単核球(PBMC)もしくは同種PBMCまたは放射線照射していない自家細胞もしくはPBMC、RPMI8866細胞、NK-92細胞、NK-92MI細胞、NK-YTS細胞、NK細胞、NKL細胞、KIL細胞、KIL C.2細胞、NK3.3細胞、NK-YS細胞、HFWT細胞、K562細胞、膜結合性IL-15と41BBLをトランスフェクトしたNK細胞(例えば、膜結合性IL-21をトランスフェクトしたNK-92細胞、NK-92MI細胞、NK-YTS細胞、NK細胞、NKL細胞、KIL細胞、KIL C.2細胞、NK3.3細胞、NK-YS細胞、HFWT細胞および/またはK562細胞など)、膜結合性IL-21をトランスフェクトしたNK細胞(例えば、膜結合性IL-15と41BBLをトランスフェクトしたNK-92細胞、NK-92MI細胞、NK-YTS細胞、NK細胞、NKL細胞、KIL細胞、KIL C.2細胞、NK3.3細胞、NK-YS細胞、HFWT細胞および/またはK562細胞など)、膜結合性IL-21と41BBLをトランスフェクトしたNK細胞(例えば、膜結合性IL-21と41BBLをトランスフェクトしたNK-92細胞、NK-92MI細胞、NK-YTS細胞、NK細胞、NKL細胞、KIL細胞、KIL C.2細胞、NK3.3細胞、NK-YS細胞、HFWT細胞および/またはK562細胞など)またはEBV-LCLであり得る。いくつかの態様では、NK細胞フィーダー細胞は、膜結合性IL-21と41BBLをトランスフェクトしたNK-92細胞、NK-92MI細胞、NK-YTS細胞、NK細胞、NKL細胞、KIL細胞、KIL C.2細胞、NK3.3細胞、NK-YS細胞、HFWT細胞および/またはK562細胞あるいは膜結合性IL-15と41BBLをトランスフェクトしたNK-92細胞、NK-92MI細胞、NK-YTS細胞、NK細胞、NKL細胞、KIL細胞、KIL C.2細胞、NK3.3細胞、NK-YS細胞、HFWT細胞および/またはK562細胞であり得る。
【0036】
NK細胞の活性化および/または拡大は、NK細胞(例えば、XM NK細胞、NK92細胞もしくは膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞、または様々な供給源もしくは活性化法から得た任意のタイプのNK細胞など)の投与前にex vivoで、あるいはNK細胞(例えば、XM NK細胞、NK92細胞または膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞)の投与と同時に、または投与後にin vitroで実施し得ることが理解されるとともに、本明細書で企図される。例えば、NK細胞(例えば、XM NK細胞、NK92細胞または膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞など)を投与する前に、NK細胞(例えば、XM NK細胞、NK92細胞または膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞など)をPM21粒子、EX21エキソソームまたはFC細胞と、XM NK細胞の投与前の1~28日間、より好ましくは1~21日間接触させることによりex vivoで拡大および/または活性化し得る。例えば、NK細胞(例えば、XM NK細胞、NK92細胞または膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞など)の投与前に、NK細胞(例えば、XM NK細胞、NK92細胞または膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞など)をPM21粒子、EX21エキソソームまたはFC細胞と少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間または28日間接触させ得る。
【0037】
NK細胞(例えば、XM NK細胞、NK92細胞または膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞など)を活性化および/または拡大することの有益性は、対象にNK細胞(例えば、XM NK細胞、NK92細胞または膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞など)を投与することによって阻止されることがない。対象にPM21粒子および/またはEX21エキソソームを直接投与することにより、in vivoでNK細胞(例えば、XM NK細胞、NK92細胞または膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞など)の継続的なさらなる拡大および/または活性化が起こり得る。したがって、一態様では、対象の癌を治療する方法であって、対象にNK細胞(例えば、XM NK細胞、NK92細胞または膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞など)および抗PDL1抗体を投与することを含み、対象にPM21粒子および/またはEX21エキソソームを直接投与することをさらに含む、方法が本明細書に開示される。PM21粒子および/またはEX21エキソソームの投与は、対象へのNK細胞(例えば、XM NK細胞、NK92細胞もしくは膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞または様々な供給源もしくは活性化法から得た任意のタイプのNK細胞など)の投与と同時に、および/または投与後に実施し得る。例えば、NK細胞(例えば、XM NK細胞または任意のIL-21表面発現NK細胞など)の投与後、PM21粒子および/またはEX21エキソソームを少なくとも1週間に1回、2回、3回、4回、5回、6回または7回投与し得る。
【0038】
さらに、NK細胞(例えば、XM NK細胞、NK92細胞もしくは膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞または様々な供給源もしくは活性化法から得た任意のタイプのNK細胞など)をIL-12、IL-15および/またはIL-18のうちの1つまたは複数のものに曝露することにより、NK細胞(例えば、XM NK細胞または任意のIL-21表面発現NK細胞など)にさらなる利益性がもたらされ得ることが認識される。この曝露は、対象にNK細胞(例えば、XM NK細胞、NK92細胞もしくは膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞または様々な供給源もしくは活性化法から得た任意のタイプのNK細胞など)を投与する前に、対象へのNK細胞の投与と同時に、および/または投与後に実施し得る。一態様では、NK細胞のex vivo培養時に、NK細胞(例えば、XM NK細胞、NK92細胞もしくは膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞または様々な供給源もしくは活性化法から得た任意のタイプのNK細胞など)にIL-12、IL-15および/またはIL-18のうちの1つまたは複数のものを投与し得る。対象へのNK細胞の投与前に、投与と同時に、さらには投与後継続的にIL-15、IL-12およびIL-18を対象に直接投与することにより、IL-12、IL-15およびIL-18のさらなる有益性を得ることもできる。一態様では、対象の癌を治療する方法であって、対象にNK細胞(例えば、XM NK細胞、膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞、または様々な供給源もしくは活性化法から得た任意のタイプのNK細胞など)および抗PDL1抗体を投与することを含み、対象にIL-12、IL-15および/またはIL-18のうちの1つまたは複数のものを投与することをさらに含み、対象へのNK細胞(例えば、XM NK細胞、膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞、または様々な供給源もしくは活性化法から得た任意のタイプのNK細胞など)の投与前に、投与と同時に、および/または投与後にIL-12、IL-15および/またはIL-18のうちの1つまたは複数のものを投与する、方法が本明細書に開示される。
【0039】
既に記載した通り、PDL1はあらゆる癌に必ず存在するというわけではなく、抗PDL1療法が効果的であるためにはPDL1が存在する必要がある。したがって、抗PDL1抗体を癌治療に効果的なものにするにはPDL1を誘導する必要があり、これは、本発明の方法で、腫瘍の感知に応答して大量のIFN-γを発現し、それにより腫瘍にPDL1発現を誘導する記憶様NK細胞、PM21、FC21 NK細胞または様々な供給源もしくは活性化法により得た任意のタイプのNK細胞を投与することにより達成される。一態様では、NK細胞(例えば、XM NK細胞、膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞、または様々な供給源もしくは活性化法から得た任意のタイプのNK細胞など)を抗PDL1抗体と同時に投与し得る。ただし、抗体の半減期が短いことがあるため、腫瘍に応答してIFNγを分泌し得るNK細胞を抗PDL1抗体の投与前にも投与し得ることが企図される。例えば、抗PDL1抗体を投与する1~21日前、より好ましくは1~14日前にNK細胞を投与し得ることが本明細書で企図される。例えば、癌を治療する方法であって、対象にNK細胞および抗PDL1抗体を投与することを含み、抗PDL1抗体を投与する1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、7日前、8日前、9日前、10日前、11日前、12日前、13日前、14日前、15日前、16日前、17日前、18日前、19日前、20日前または21日前にNK細胞を投与する、方法が本明細書に開示される。
【0040】
NK細胞の供給源は、移植したNK細胞が拒絶されれば治療過程が妨害されることから、治療法の効果に極めて重要なものであり得る。したがって、NK細胞(例えば、XM NK細胞、膜結合性IL-21により刺激した任意のNK細胞、または様々な供給源もしくは活性化法から得た任意のタイプのNK細胞など)は、NK細胞の自家ドナー、ハプロタイプ一致ドナーまたは同種ドナー供給源から得たものであることが本明細書で企図される。NK細胞は、臍帯血、胎盤血に由来するもの、様々なタイプの幹細胞に由来するもの、またはNK92などのNK細胞様細胞系に由来するものであってもよい。
【0041】
いくつかの態様では、対象にPM21粒子および/またはEX21エキソソームを直接投与して内在性のNK細胞を活性化および/または拡大することにより、移植したNK細胞の拒絶の可能性を完全に回避することもできる。したがって、一態様では、対象の癌を治療する方法であって、対象にPM21粒子またはEX21エキソソームおよび抗PDL1抗体を投与することを含む、方法が本明細書に開示される。投与は、対象内で所望の量のXM NK細胞を得るのに必要な頻度で実施し得る。例えば、PM21粒子および/またはEX21エキソソームの初回投与を実施した後、PM21粒子および/またはEX21エキソソームを少なくとも1週間に1回、2回、3回、4回、5回、6回または7回投与し得る。
【0042】
上記の通り、PDL1はあらゆる癌に必ず存在するというわけではなく、抗PDL1抗体療法が効果的ものであるためにはPDL1が存在する必要があり、PDL1を誘導する必要がある。したがって、PM21粒子およびEX21エキソソームの投与によりin vivoで内在性のNK細胞を拡大および/または活性化してXM NK細胞に形質転換させ、PDL1発現を誘導する腫瘍へのIFN-γ分泌を増大させて、抗PDL1抗体の効果的な使用を可能にし得る。一態様では、PM21粒子および/またはEX21エキソソームを抗PDL1抗体と同時に投与し得る。ただし、抗体の半減期が短いことがあるため、抗PDL1抗体を投与する前にXM NK細胞を拡大および/または活性化するのが有利であり得ることが企図される。例えば、抗PDL1抗体を投与する1~21日前、より好ましくは1~14日前にPM21粒子および/またはEX21エキソソームを投与し得ることが本明細書で企図される。例えば、癌を治療する方法であって、対象にPM21粒子および/またはEX21エキソソームならびに抗PDL1抗体を投与することを含み、抗PDL1抗体を投与する1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、7日前、8日前、9日前、10日前、11日前、12日前、13日前、14日前、15日前、16日前、17日前、18日前、19日前、20日前、21日前、22日前、23日前、24日前、25日前、26日前、27日前、28日前、29日前、30日前、31日前、32日前、33日前、34日前、35日前、36日前、37日前、38日前、39日前、40日前、41日前、42日前、43日前、44日前、45日前、46日前、47日前、48日前、49日前、50日前、51日前、52日前、53日前、54日前、55日前、56日前、57日前、58日前、59日前または60日前にPM21粒子および/またはEX21エキソソームを投与する、方法が本明細書に開示される。
【0043】
上記の通り、追加でIL-12、IL-15およびIL-18に曝露することにより、XM NK細胞に対するさらなる有益性を得ることができる。この有益性は、対象へのPM21粒子および/またはEX21エキソソームの投与の前に、投与と同時に、さらには投与後継続的にIL-15、IL-12およびIL-18を対象に直接投与することによっても得られる。一態様では、対象の癌を治療する方法であって、対象にPM21粒子および/またはEX21エキソソームならびに抗PDL1抗体を投与することを含み、対象にIL-12、IL-15および/またはIL-18のうちの1つまたは複数のものを投与することをさらに含み、対象へのPM21粒子および/またはEX21エキソソームの投与の前に、投与と同時に、および/または投与後にIL-12、IL-15および/またはIL-18のうちの1つまたは複数のものを投与する、方法が本明細書に開示される。PM21粒子、EX21エキソソームまたはFC21フィーダー細胞によって拡大および/または活性化するXM NK細胞をさらにサイトカインに曝露する場合、得られたXM NK細胞をそれぞれCaPM21 NK細胞(サイトカインとPM21粒子で刺激したXM NK細胞)、CEX21 NK細胞(サイトカインとEX21エキソソームで刺激したXM NK細胞)およびCFC21 NK細胞(サイトカインとFC21フィーダー細胞で刺激したXM NK細胞)と呼ぶことができる。
【0044】
本開示の組成物および方法を用いて、制御不能な細胞増殖が起こる任意の疾患、例えば癌などを治療することができる。本開示の組成物を用いて治療することができる癌の代表的であるが限定的ではないリストは以下の通りである:リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、菌状息肉症、ホジキン病、骨髄性白血病、膀胱癌、脳腫瘍、神経系癌、頭頸部癌、頭頸部の扁平上皮癌、腎臓癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌などの肺癌、神経芽腫/膠芽腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、肝臓癌、メラノーマ、口腔、咽頭、喉頭および肺の扁平上皮癌、結腸癌、子宮頸癌、子宮頸癌腫、乳癌、ならびに上皮癌、腎臓癌、尿生殖器癌、肺癌、食道癌腫、頭頸部癌腫、大腸癌、造血系癌;精巣癌;結腸直腸癌、前立腺癌または膵臓癌。
【0045】
本明細書に開示される化合物および方法は、前癌病態、例えば子宮頸部および肛門の異形成、その他の異形成、重度の異形成、過形成、非定型的過形成ならびに新生物などの治療にも使用し得る。
【0046】
癌以外で本開示の方法によって治療することができる疾患および病態がほかにも多数存在することが理解され、本明細書で企図される。したがって、対象の外来性病原体による疾患を治療する方法であって、対象にXM NK細胞またはその他のタイプのNK細胞(例えば、膜結合性IL-21により刺激したNK細胞、または様々な供給源もしくは活性化法から得た任意のタイプのNK細胞など)および抗PDL1抗体を投与することを含み、疾患が、ウイルス、細菌、真菌または寄生虫の感染によるものである、方法も本明細書に開示される。
【0047】
したがって、一態様では、対象のウイルス感染症を治療する方法であって、対象にXM NK細胞またはその他のタイプのNK細胞(例えば、膜結合性IL-21により刺激したNK細胞、または様々な供給源もしくは活性化法から得た任意のタイプのNK細胞など)および抗PDL1抗体を投与することを含み、ウイルスが、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型、痘瘡ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、麻疹ウイルス、ポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、呼吸器多核体ウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、デングウイルス、ムンプスウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、レオウイルス、黄熱病ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサ熱ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー渓谷熱ウイルス、ウエストナイルウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、シンドビスウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス1型、ハンタウイルス、風疹ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1型およびヒト免疫不全ウイルス2型からなるウイルス群より選択される、方法が本明細書に開示される。
【0048】
また、対象の細菌感染症を治療する方法であって、対象にXM NK細胞またはその他のタイプのNK細胞および抗PDL1抗体を投与することを含み、細菌が、結核菌(M.tuberculosis)、M.ボビス(M.bovis)、M.ボビス(M.bovis)株BCG、BCG亜株、鳥型結核菌(M.avium)、M.intracellular、M.アフリカヌム(M.africanum)、M.カンサシ(M.kansasii)、M.マリヌム(M.marinum)、M.ウルセランス(M.ulcerans)、鳥型結核菌(M.avium)亜種パラチュバキュローシス、ノカルジア・アステロイデス(Nocardia asteroides)、その他のノカルジア(Nocardia)菌種、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、その他のレジオネラ(Legionella)菌種、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、その他のサルモネラ(Salmonella)菌種、シゲラ(Shigella)菌種、ペスト菌(Yersinia pestis)、ヘモリチカ菌(Pasteurella haemolytica)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、その他のパスツレラ(Pasteurella)菌種、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、リステリア・イバノビイ(Listeria ivanovii)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、その他のブルセラ(Brucella)菌種、コウドリア・ルミナンチウム(Cowdria ruminantium)、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)、コクシエラ菌(Coxiella burnetii)、その他のリケッチア菌種、エーリキア(Ehrlichia)菌種、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、大腸菌(Escherichia coli)、ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)、カンピロバクター(Campylobacter)菌種、ナイセリア・メニンギティディス(Neiserria meningitidis)、ナイセリア・ゴノレー(Neiserria gonorrhea)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、その他のシュードモナス(Pseudomonas)菌種、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、その他のヘモフィルス(Hemophilus)菌種、破傷風菌(Clostridium tetani)、その他のクロストリジウム(Clostridium)菌種、エルシニア・エンテロリチカ(Yersinia enterolitica)およびその他のエルシニア(Yersinia)菌種からなる細菌群より選択される、方法も開示される。
【0049】
また、対象の真菌感染症を治療する方法であって、対象にXM NK細胞またはその他のタイプのNK細胞(例えば、膜結合性IL-21により刺激したNK細胞、または様々な供給源もしくは活性化法から得た任意のタイプのNK細胞など)および抗PDL1抗体を投与することを含み、真菌が、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラマ・カプスラーツム(Histoplama capsulatum)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、コクシジオデス・イミチス(Coccidiodes immitis)、パラコクシジオデス・ブラジリエンシス(Paracoccidiodes brasiliensis)、ブラストミセス・デルマチジス(Blastomyces dermitidis)、ニューモシスチス・カルニィ(Pneumocystis carnii)、ペニシリウム・マルネッフィ(Penicillium marneffi)およびアルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)からなる真菌群から選択される、方法も開示される。
【0050】
また、対象の寄生虫感染症を治療する方法であって、対象にXM NK細胞またはその他のタイプのNK細胞(例えば、膜結合性IL-21により刺激したNK細胞、または様々な供給源もしくは活性化法から得た任意のタイプのNK細胞など)および抗PDL1抗体を投与することを含み、寄生虫が、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、その他のプラスモジウム(Plasmodium)種、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、森林型熱帯リーシュマニア(Leishmania major)、その他のリーシュマニア(Leishmania)種、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、その他のシストソーマ(Schistosoma)種および赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)からなる寄生生物群から選択される、方法も開示される。
【0051】
C.組成物
本開示の組成物を調製するのに使用する成分および本明細書に開示される方法で使用する組成物自体が開示される。これらのおよびその他の材料が本明細書に開示され、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、グループなどが開示されるとき、これらの化合物の様々な組合せおよび順列が個別に、および総体として明確に開示されずにそれぞれ具体的に言及されない場合があるが、それぞれが本明細書で具体的に企図され記載されることが理解される。例えば、特定の抗PDL1抗体、PM21粒子、EX21エキソソームまたはFC21フィーダー細胞を開示して記述し、抗PDL1抗体、PM21粒子、EX21エキソソームまたはFC21フィーダー細胞を含めた多数の分子に対して施し得る多数の修正を記述する場合、そうでないことが具体的に記載されない限り、抗PDL1抗体、PM21粒子、EX21エキソソームまたはFC21フィーダー細胞および可能な修正のあらゆる組合せおよび順列が具体的に企図される。したがって、A、BおよびCという分子のクラスのほかにも、D、EおよびFという分子のクラスならびに分子A~Dの組合せの例が開示される場合、それぞれが記載されていなくてもそれぞれが個別に、および総体として企図され、A~E、A~F、B~D、B~E、B~F、C~D、C~EおよびC~Fという組合せが開示されるとみなされることを意味する。同様に、これらの任意の部分集合または組合せも開示される。したがって、例えば、A~E、B~FおよびC~Eというサブグループが開示されるとみなされ得る。この考えは、特に限定されないが、本開示の組成物の作製法および使用法の段階を含めた本願のあらゆる態様に適用される。したがって、実施し得る様々な追加の段階が存在する場合、これらの追加の各段階を本開示の方法の任意の特定の実施形態または実施形態の組合せとともに実施し得ることが理解される。
【0052】
本開示の癌治療法は、抗PDL1抗体をPM21、EX21もしくはFC21 XM NK細胞および/またはPM21粒子および/またはEX21エキソソームと組み合わせて使用するものである。したがって、一態様では、PM21、EX21またはFC21 XM NK細胞と抗PDL1抗体とを含む抗癌療法が本明細書に開示される。本開示の抗癌療法は、XM NK細胞に加えて、またはこれに代えて、PM21粒子および/またはEX21エキソソームを含むことが理解され、本明細書で企図される。したがって、PM21、EX21またはFC21 XM NK細胞と抗PDL1抗体とを含み、PM21粒子および/またはEX21エキソソームをさらに含む、抗癌療法が1つの態様である。一態様では、PM21粒子および/またはEX21エキソソームと抗PDL1抗体とを含む抗癌療法も開示される。さらに、上に開示されるいずれかの抗癌療法は、IL-12、IL-15およびIL-18のうちの1つまたは複数のものを含み得る。
【0053】
本開示の治療法は、1つまたは複数の抗PDL1抗体;1つまたは複数のPM21粒子、EX21エキソソームおよび/またはFC21フィーダー細胞;ならびに/あるいはIL-12、IL-15およびIL-18のうちの1つまたは複数のものを含む、キットの形で提供され得ることが理解され、本明細書で企図される。いくつかの態様では、治療法を含むキットは、NK細胞またはXM NK細胞も含み得る。
【0054】
1.抗体
本明細書に開示される抗癌療法および癌を治療する方法は、抗PDL1抗体の使用を含む。本開示の方法および治療法は、特に、治療効果を有することが既に示されている、特に限定されないがGenentech社のアテゾリズマブを含めた、任意の既知の抗PDL1抗体を含み、かつ/またはこれを用いるものであり得ることが理解され、本明細書で企図される。
【0055】
(1)抗体全般
「抗体」という用語は、本明細書では広義に使用され、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体をともに包含する。インタクトの免疫グロブリン分子に加え、それらの免疫グロブリン分子のフラグメントまたはポリマーおよびヒト型またはヒト化型の免疫グロブリン分子またはそのフラグメントも、PDL1がPD1と相互作用するのを阻害するようPDL1と相互作用することが可能であるものとして選択される限り、「抗体」という用語に包含される。抗体は、既知の臨床試験法に従ってそのin vivoの治療活性および/または予防活性を試験した後、本明細書に記載されるin vitroアッセイを用いて、またはこれに類似した方法により、その所望の活性を試験することができる。ヒト免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの5つの主要なクラスがあり、このうちのいくつかはさらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG-1、IgG-2、IgG-3およびIgG-4;IgA-1およびIgA-2に分けることができる。当業者には、マウスについてもこれと同等のクラスが認識されよう。免疫グロブリンの様々なクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。
【0056】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体を指す、すなわち、その集団内の個々の抗体は、その抗体分子の小さい亜集団に起こり得る天然の変異を除いて同一のものである。本明細書のモノクローナル抗体には特に、所望の拮抗活性を示す限り「キメラ」抗体が包含され、「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であり、鎖(1つまたは複数)の残りの部分が、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体およびこのような抗体のフラグメントの対応する配列と同一または相同である。
【0057】
本開示のモノクローナル抗体は、モノクローナル抗体が得られる任意の手順を用いて作製することができる。例えば、ハイブリドーマ法、例えばKohlerおよびMilstein,Nature,256:495(1975)に記載されている方法などを用いて、開示のモノクローナル抗体を調製することができる。ハイブリドーマ法では通常、マウスまたはその他の適切な宿主動物を免疫剤で免疫感作させて、その免疫剤と特異的に結合する抗体を産生する、または産生することが可能なリンパ球を生じさせる。あるいは、in vitroでリンパ球を免疫感作させてもよい。
【0058】
組換えDNA法によりモノクローナル抗体を作製してもよい。従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)、本開示のモノクローナル抗体をコードするDNAを容易に単離し配列を決定することができる。ファージディスプレイ技術、例えば、Burtonらに対する米国特許第5,804,440号およびBarbasらに対する米国特許第6,096,441号に記載されている技術を用いて、抗体または活性な抗体フラグメントのライブラリーを作製しスクリーニングすることもできる。
【0059】
一価抗体の調製にはin vitroの方法も適している。当該技術分野で公知の常用技術を用いて、抗体のフラグメント、特にFabフラグメントを作製するための抗体の消化を実施することができる。例えば、パパインを用いて消化を実施することができる。1994年12月22日に公開された国際公開第94/29348号および米国特許第4,342,566号にパパイン消化の例が記載されている。抗体をパパインで消化すると通常、それぞれが単一の抗原結合部位を有しFabフラグメントと呼ばれる同一の抗原結合フラグメントが2つと、残りのFcフラグメントが生じる。ペプシンで処理すると、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原の架橋が可能なフラグメントが生じる。
【0060】
本明細書で使用される「抗体またはそのフラグメント」という用語は、二重または多重の抗原特異性またはエピトープ特異性を有するキメラ抗体およびハイブリッド抗体ならびにハイブリッドフラグメントを含めたフラグメント、例えばF(ab’)2,Fab’,Fab,Fv,sFvなどを包含する。したがって、特異的抗原との結合能を保持している抗体フラグメントが提供される。例えば、PDL1結合活性を維持している抗体フラグメントが「抗体またはそのフラグメント」という用語の意味の範囲内に含まれる。このような抗体およびフラグメントは、当該技術分野で公知の技術により作製することが可能であり、実施例ならびに抗体を作製し抗体の特異性および活性をスクリーニングする一般的方法(HarlowおよびLane.Antibodies,A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Publications,New York,(1988)を参照されたい)に記載されている方法に従って、特異性および活性をスクリーニングすることが可能である。
【0061】
「抗体またはそのフラグメント」の意味には、抗体フラグメントと抗原結合タンパク質(一本鎖抗体)のコンジュゲートも含まれる。
【0062】
フラグメントは、他の配列に結合しているかどうかを問わず、非改変抗体または抗体フラグメントと比較して抗体または抗体フラグメントの活性が大幅に変化することも損なわれることもない限り、特定の領域または特定のアミノ酸残基に挿入、欠失、置換またはその他の選択した改変を含んでもよい。これらの改変は、いくつかの追加の特性、例えばジスルフィド結合が可能なアミノ酸を除去/付加する、その生体内での寿命を長くする、その分泌特性を変化させるなどの特性をもたらすものであり得る。いずれの場合も、抗体または抗体フラグメントは、そのコグネイト抗原と特異的に結合するなどの生物活性特性を有するものでなければならない。抗体または抗体フラグメントの機能的な、または活性のある領域は、タンパク質の特定の領域に変異を誘発した後、発現させ、その発現したポリペプチドを試験することにより特定され得る。このような方法は、当業者に容易に明らかにあるものであり、抗体または抗体フラグメントをコードする核酸の部位特異的変異誘発が含まれ得る。(Zoller,M.J.Curr.Opin.Biotechnol.3:348-354,1992)。
【0063】
本明細書で使用される「抗体(1つまたは複数)」という用語は、ヒト抗体および/またはヒト化抗体も指し得る。非ヒト抗体(例えば、マウス、ラットまたはウサギに由来する抗体)の多くが天然の状態でヒトに対して免疫原性を示し、このため、ヒトに投与すると、望ましくない免疫応答を引き起こすことがある。したがって、諸方法にヒトまたはヒト化抗体を使用することが、ヒトに投与する抗体が望ましくない免疫応答を引き起こす可能性を減少させるのに役立つ。
【0064】
(2)ヒト抗体
本開示のヒト抗体は、任意の技術を用いることにより調製することができる。本開示のヒト抗体は、トランスジェニック動物から得ることもできる。例えば、免疫感作に応答してヒト抗体の完全なレパートリーを産生することが可能なトランスジェニック変異マウスが記載されている(例えば、Jakobovitsら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551 255(1993);Jakobovitsら,Nature,362:255 258(1993);Bruggermannら,Year in Immunol.,7:33(1993)を参照されたい)。具体的には、これらのキメラ生殖系列変異マウスの抗体重鎖連結領域(J(H))にあるホモ接合性欠失によって内因性の抗体産生が完全に阻害され、このような生殖系列変異マウスへのヒト生殖系列抗体遺伝子アレイの導入に成功することによって、抗原曝露時にヒト抗体が産生される。本明細書に記載されるEnv-CD4-共受容体複合体を用いて、所望の活性を有する抗体を選択する。
【0065】
(3)ヒト化抗体
抗体ヒト化技術では一般に、組換えDNA技術を用いて、抗体分子の1つまたは複数のポリペプチドをコードするDNA配列を操作する。その結果、ヒト化型の非ヒト抗体(またはそのフラグメント)は、ヒト(レシピエント)抗体のフレームワーク内に組み込まれた非ヒト(ドナー)抗体由来の抗原結合部位の一部分を含む、キメラ抗体またはキメラ抗体鎖(またはそのsFv、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2などのフラグメント、もしくは抗体のその他の抗原結合部分)となる。
【0066】
ヒト化抗体を作製するには、レシピエント(ヒト)抗体分子の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)の残基を所望の抗原結合特性(例えば、標的抗原に対する特定レベルの特異性および親和性)を有することがわかっているドナー(非ヒト)抗体分子の1つまたは複数のCDRの残基に置き換える。場合によっては、ヒト抗体のFvフレームワーク(FR)残基を対応する非ヒト残基に置き換える。ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも移入するCDR配列およびフレームワーク配列にもみられない残基も含み得る。ヒト化抗体は一般に、非ヒトである供給源から導入した1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。実際、ヒト化抗体とは通常、一部のCDR残基および可能性としては一部のFR残基がげっ歯類抗体の類似した部位の残基で置換されたヒト抗体のことである。ヒト化抗体には一般に、抗体定常領域(Fc)、通常はヒト抗体のFcの少なくとも一部分が含まれている(Jonesら,Nature,321:522-525(1986),Reichmannら,Nature,332:323-327(1988)およびPresta,Curr.Opin.Struct.Biol.,2:593-596(1992))。
【0067】
非ヒト抗体をヒト化する方法は当該技術分野で周知である。例えば、Winterらの方法(Jonesら,Nature,321:522-525(1986),Riechmannら,Nature,332:323-327(1988),Verhoeyenら,Science,239:1534-1536(1988))に従い、げっ歯類CDR(1つまたは複数)またはCDR配列によってヒト抗体の対応する配列を置換することによりヒト化抗体を作製することができる。ヒト化抗体を作製するのに用い得る方法については、米国特許第4,816,567号(Cabillyら)、米国特許第5,565,332号(Hoogenboomら)、米国特許第5,721,367号(Kayら)、米国特許第5,837,243号(Deoら)、米国特許第5、939,598号(Kucherlapatiら)、米国特許第6,130,364号(Jakobovitsら)および米国特許第6,180,377号(Morganら)にも記載されている。
【0068】
(4)抗体の投与
抗体の投与は、本明細書に開示される通りに実施することができる。抗体送達を送達する核酸法も存在する。広範囲に中和する抗PDL1抗体および抗体フラグメントを、その抗体または抗体フラグメントをコードする核酸調製物(例えば、DNAまたはRNA)として患者または対象に投与して、患者または対象自身の細胞にその核酸を取り込ませ、コードされる抗体または抗体フラグメントを産生および分泌させることもできる。核酸の送達は、例えば本明細書に開示されるような任意の手段によるものであり得る。
【0069】
2.医薬担体/医薬製品の送達
上記の通り、組成物を薬学的に許容される担体でin vivoで投与することもできる。「薬学的に許容される」は、生物学的に、またはその他の面で望ましくないものではない材料を意味する、すなわち、望ましくない生物学的作用を引き起こすことも、それが含まれる医薬組成物のいずれの他の成分と有害な方法で相互作用することもなく、材料を核酸またはベクターとともに対象に投与し得ることを意味する。当然のことながら、担体は、当業者には周知のように、対象内での有効成分の分解を最小限に抑え有害な副作用を最小限に抑えるよう選択する。
【0070】
組成物は、経口的に、非経口的に(例えば、静脈内に)、筋肉内注射により、腹腔内注射により、経皮的に、体外に、局所的に、または局所鼻腔内投与もしくは吸入による投与を含めた同様の方法により投与し得る。本明細書で使用される「局所鼻腔内投与」は、一方または両方の鼻孔から鼻内および鼻道内への組成物の送達を意味し、スプレー機序もしくは液滴機序による、または核酸もしくはベクターのエアロゾル化による送達を含み得る。吸入による組成物の投与は、スプレー機序または液滴機序による送達により鼻または口から実施するものであり得る。送達は、挿管により呼吸器系(例えば、肺)の任意の領域に直接実施するものであってもよい。必要とされる組成物の正確な量は、対象の種、年齢、体重および全般的状態、治療するアレルギー障害の重症度、使用する具体的な核酸またはベクター、その投与様式などに応じて、対象により異なるものとなる。したがって、あらゆる組成物の正確な量を明記することは不可能である。しかし、当業者が本明細書の教示を考慮に入れて常用的な実験のみを用いることによって適切な量を決定することができる。
【0071】
組成物の非経口投与を用いる場合、それは一般に、注射を特徴とするものである。注射剤は、液体の溶液もしくは懸濁液、注射前に液体の懸濁液に溶解させるのに適した固体形態として、またはエマルションとして従来の形態で調製することができる。ごく最近に修正された非経口投与法は、一定の用量が維持されるよう徐放または持続放出システムの使用を含む。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,610,795号を参照されたい。
【0072】
材料は、(例えば、微粒子、リポソームまたは細胞に組み込んだ)溶液、懸濁液の形であり得る。これらは、抗体、受容体または受容体リガンドにより特定の細胞型に対して標的化され得る。以下の参考文献は、この技術を用いて特定のタンパク質を腫瘍組織に標的化する例である(Senterら,Bioconjugate Chem.,2:447-451,(1991);Bagshawe,K.D.,Br.J.Cancer,60:275-281,(1989);Bagshaweら,Br.J.Cancer,58:700-703,(1988);Senterら,Bioconjugate Chem.,4:3-9,(1993);Battelliら,Cancer Immunol.Immunother.,35:421-425,(1992);PieterszおよびMcKenzie,Immunolog.Reviews,129:57-80,(1992);およびRofflerら,Biochem.Pharmacol,42:2062-2065,(1991))。「ステルス」およびその他の抗体コンジュゲートリポソーム(脂質を介する結腸癌への薬物標的化を含む)などの媒体、細胞特異的リガンドによるDNAの受容体介在型標的化、リンパ球の誘導による腫瘍標的化ならびに高特異的治療用レトロウイルスによるin vivoでのマウス神経膠腫細胞の標的化。以下の参考文献は、この技術を用いて特定のタンパク質を腫瘍組織に標的化する例である(Hughesら,Cancer Research,49:6214-6220,(1989);ならびにLitzingerおよびHuang,Biochimica et Biophysica Acta,1104:179-187,(1992))。受容体は一般に、恒常的なエンドサイトーシスまたはリガンドによって誘導されるエンドサイトーシスの経路に関与する。これらの受容体は、クラスリン被覆ピットでクラスターを形成し、クラスリン被覆小胞を介して細胞内に入り、酸性エンドソームの中を通って選別された後、細胞表面に再循環するか、細胞内に貯蔵されるか、リソソーム内で分解される。内部移行経路は、様々な機能、例えば栄養素の取込み、活性化タンパク質、高分子のクリアランス、日和見的に侵入するウイルスおよび毒素の除去、リガンドの解離および分解ならびに受容体レベルの調節などの機能を果たす。多くの受容体は、細胞型、受容体濃度、リガンドのタイプ、リガンドの結合価数およびリガンド濃度に応じて2つ以上の細胞内経路をたどる。受容体介在性エンドサイトーシスの分子機序および細胞機序については概説されている(BrownおよびGreene,DNA and Cell Biology 10:6,399-409(1991))。
【0073】
a)薬学的に許容される担体
抗体を含めた組成物を薬学的に許容される担体と組み合わせて治療に使用することができる。
【0074】
適切な担体およびその製剤化については、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第19版),A.R.Gennaro編,Mack Publishing Company,Easton,PA 1995に記載されている。製剤化には通常、製剤を等張にするため適切な量の薬学的に許容される塩を使用する。薬学的に許容される担体の例としては、特に限定されないが、生理食塩水、リンガー溶液およびブドウ糖溶液が挙げられる。溶液のpHは、好ましくは約5~約8、より好ましくは約7~約7.5である。さらなる担体としては、抗体を含んだ固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの徐放性製剤が挙げられ、このようなマトリックスは、成形品、例えばフィルム、リポソームまたは微粒子の形態である。当業者には、例えば投与する組成物の投与経路および濃度に応じて、特定の担体の方が好ましいこともあることが明らかであろう。
【0075】
医薬担体は当業者に公知である。これらは、滅菌水、生理食塩水および生理的pHの緩衝溶液などの溶液を含めたヒトに薬物を投与するための標準的な担体とするのが最も通常である。組成物は筋肉内または皮下に投与することができる。その他の化合物については、当業者が用いる標準的手順に従って投与する。
【0076】
医薬組成物は、選択した分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存剤、界面活性剤などを含み得る。医薬組成物は、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔剤などの1つまたは複数の有効成分も含み得る。
【0077】
医薬組成物は、局所治療または全身治療のどちらを選択するのかに応じて、また治療する領域に応じて、多数の方法で投与し得る。投与は、局所的なもの(眼科的、経膣的、直腸内、鼻腔内を含む)、経口的なもの、吸入によるもの、または非経口的なもの、例えば、静脈内点滴、皮下、腹腔内もしくは筋肉内への注射によるものであり得る。本開示の抗体は、静脈内に、腹腔内に、筋肉内に、皮下に、腔内に、または経皮的に投与することができる。
【0078】
非経口投与用の製剤は、無菌の水性液剤または非水性液剤、懸濁剤およびエマルション剤を含む。非水性溶媒の例には、プロピレングリコール,ポリエチレングリコール,オリーブ油などの植物油およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルがある。水性担体としては、生理食塩水および緩衝媒体を含めた水、アルコール/水溶液、エマルションまたは懸濁液が挙げられる。非経口媒体としては、塩化ナトリウム溶液、ブドウ糖リンゲル液、ブドウ糖/塩化ナトリウム液、乳酸リンゲル液または不揮発性油が挙げられる。静脈内媒体としては、体液/栄養補充液、電解質補充液(ブドウ糖リンゲル液をベースとするものなど)などが挙げられる。保存剤およびその他の添加剤、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスなどが存在していてもよい。
【0079】
局所投与用の製剤は、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、滴剤、坐剤、スプレー剤、液剤および散剤を含み得る。従来の医薬担体、水性基剤、粉末基剤または油性基剤、増粘剤などが必要であるか望ましい場合もある。
【0080】
経口投与用の組成物は、散剤もしくは顆粒剤、水もしくは非水性媒体を用いた懸濁剤もしくは液剤、カプセル剤、サシェ剤または錠剤を含む。増粘剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散補助剤または結合剤が望ましい場合もある。
【0081】
一部の組成物は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸およびリン酸など、ならびに有機酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸およびフマル酸などとの反応によって、あるいは無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなど、ならびに有機塩基、例えばモノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アリールアミンおよび置換エタノールアミンなどとの反応によって形成された薬学的に許容される酸付加塩あるいは塩基付加塩として投与することも可能である。
【0082】
b)治療的使用
組成物を投与するのに効果的な用量およびスケジュールは実験によって決定し得るものであり、このような決定は当該分野の技術の範囲内にある。組成物を投与するための用量範囲は、障害の症状がもたらされる所望の効果を得るのに十分な量のものである。用量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などの有害な副作用を引き起こす程度の量にするべきではない。用量は一般に、患者の年齢、状態、性別および疾患の程度、投与経路、またはレジメンに他の薬物が含まれているかどうかによって異なり、当業者によって決定され得るものである。用量は、何らかの禁忌症がある場合、個々の医師が調節することができる。用量は変化し得るものであり、1日1用量または複数用量を1日または数日間投与することができる。所与のクラスの医薬品に適した用量に関する指針を文献にみることができる。例えば、抗体に適した用量を選択する際の指針については、抗体の治療的使用に関する文献、例えば、Handbook of Monoclonal Antibodies,Ferroneら編,Noges Publications,Park Ridge,N.J.,(1985)ch.22 and pp.303-357;Smithら,Antibodies in Human Diagnosis and Therapy,Haberら編,Raven Press,New York(1977)pp.365-389にみることができる。単独で使用する抗体の典型的な1日量は、上に挙げた要因に応じて1日当たり約1μg/kg体重から最大100mg/kg体重またはそれ以上までの範囲になるものと思われる。
【0083】
癌を治療、抑制または予防するために抗体などの開示の組成物を投与した後、当業者に周知の様々な方法で治療用抗体の有効性を評価することができる。例えば、当業者には、本明細書に開示される抗体などの組成物が腫瘍サイズまたは転移率を抑えるのを観察することにより、その組成物が対象の癌の治療または抑制に有効であることがわかるであろう。
【0084】
3.併用治療
癌を治療する方法であって、対象に本開示の組成物の1つを、治療する疾患または障害に対する既知の治療法と併用して投与することを含む、方法が開示される。例えば、癌を治療する方法であって、抗PDL1抗体および/またはPM21粒子および/またはEX21エキソソームを含む有効量の組成物を、特に限定されないが、化学療法、免疫療法、放射線療法または疼痛療法などの既知の癌治療法と併用して投与することを含む、方法が開示される。
【0085】
免疫療法には2種類の異なるタイプがあり、このうち、受動免疫療法は、免疫系の構成要素を用いて、必ずしも患者に免疫応答を惹起することなく、癌細胞に対し標的化した細胞傷害活性を誘導するものであり、能動免疫療法は、能動的に内因性の免疫応答を誘発するものである。受動的戦略は、B細胞が特異的抗原に応答して産生するモノクローナル抗体(mAb)の使用を含む。1970年代にハイブリドーマ技術が開発され、腫瘍特異的抗原が特定されたことにより、腫瘍細胞を特異的に標的とし、免疫系によって破壊することが可能なmAbの医薬開発が可能になった。これまで、mAbが免疫療法に関する最も大きな成功話であり、2012年に最もよく売れた抗癌剤の上位3種類がmAbであった。これに含まれるものとして、非ホジキンリンパ腫(NHL)などのB細胞悪性腫瘍の表面に高度に発現するCD20タンパク質に結合するリツキシマブ(Rituxan、Genentech社)がある。リツキシマブは、NHLおよび慢性リンパ球性白血病(CLL)の化学療法との併用治療にFDAによる承認を受けている。もう1つの重要なmAbにトラスツズマブ(Herceptin;Genentech社)があり、HER2の発現を標的とすることによりHER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)陽性乳癌の治療に革命をもたらした。
【0086】
最適な「キラー」CD8 T細胞応答を生じさせるにはT細胞受容体の活性化と共刺激も必要であり、これは、OX40(CD134)および4-1BB(CD137)を含めた腫瘍壊死因子受容体ファミリーのメンバーのライゲーションによってもたらされ得る。活性化(アゴニスト)抗OX40 mAbで処理することによりT細胞の分化および細胞溶解機能が増強され、様々な腫瘍に対する抗腫瘍免疫が増強されることから、OX40に特に関心が集まっている。
【0087】
いくつかの実施形態では、本開示のワクチンをキメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)などの養子細胞療法(ACT)と併用する。
【0088】
「腫瘍浸潤リンパ球」または「TIL」という用語は、血流を離れて腫瘍内に移動した白血球を指す。腫瘍浸潤リンパ球を含めたT細胞などのリンパ球の拡大は、多数ある当該技術分野で公知のいずれかの方法により実施することができる。例えば、フィーダーリンパ球およびインターロイキン2(IL-2)、IL-7、IL-15、IL-21またはその組合せの存在下での非特異的T細胞受容体刺激を用いてT細胞を急速に拡大することができる。非特異的T細胞受容体刺激は、例えば、マウスモノクローナル抗CD3抗体(ニュージャージー州ラリタンのOrtho-McNeil(登録商標)社またはドイツ、ベルギッシュ・グラートバッハのMiltenyi Biotec社から入手可能)であるOKT3を約30ng/ml含み得る。あるいは、末梢血単核球(PBMC)をin vitroで、約200~400Ill/mlなどのT細胞増殖因子、例えば300lU/mlのIL-2またはIL-15(IL-2が好ましい)の存在下、1つまたは複数の抗原(抗原のエピトープ(1つまたは複数)などの抗原性部分または任意選択でベクターから発現させ得る癌の細胞、例えばヒト白血球抗原A2(HLA-A2)結合ペプチドなど、例えば約0.3μΜのMART-1:26-35(27L)もしくはgp100:209-217(210M)などを含む)で刺激することにより、T細胞を急速に拡大することができる。in vitroで誘導したT細胞を、HLA-A2発現抗原提示細胞にパルスした同じ癌抗原(1つまたは複数)で再び刺激することにより急速に拡大する。あるいは、例えば放射線照射した自家リンパ球または放射線照射したHLA-A2+同種リンパ球およびIL-2でT細胞を再び刺激することができる。拡大したTILの特異的腫瘍反応性は、当該技術分野で公知の任意の方法により、例えば、腫瘍細胞と共培養した後、サイトカイン放出(例えば、インターフェロンガンマ)を測定することにより試験することができる。一実施形態では、自家ACT法は、細胞を急速に拡大する前に培養TILのCD8+細胞を富化させることを含む。TILをIL-2で培養した後、例えばCD8マイクロビーズ分離を用いて(例えばCliniMACS<plus>CD8マイクロビーズシステム(Miltenyi Biotec社)を用いて)、T細胞のCD4+細胞を枯渇させCD8+細胞を富化させる。いくつかの実施形態では、自家T細胞の増殖および活性化を促進するT細胞増殖因子を哺乳動物に自家T細胞とともに、または自家T細胞の後に投与する。T細胞増殖因子は、自家T細胞の増殖および活性化を促進する任意の適切な増殖因子であり得る。
【0089】
適切なT細胞増殖因子の例としては、インターロイキン(IL)-2、IL-7、IL-15、IL-12およびIL-21が挙げられ、これらは単独で、またはIL-2とIL-7、IL-2とIL-15、IL-7とIL-15、IL-2とIL-7とIL-15、IL-12とIL-7、IL-12とIL-15もしくはIL-12とIL2のように様々に組み合わせて使用することができる。
【0090】
抗癌剤にも本発明の方法および組成物との併用に用いることができるものが多数ある。以下に挙げるのは、放射線照射とともに用いることができる抗癌(抗腫瘍)剤の非網羅的リストである:アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;AcrQnine;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビサントレン;メシル酸ビスナフィドジ;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジクオン;ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン;エダトレキサート;塩酸エフロミチン(Eflomithine);エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸ナトリウム;エタニダゾール;ヨード化ケシ油エチルエステルI131;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロシタビン;ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;金Au198;ヒドロキシウレア;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモホシン;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸リュープロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;マイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフムゴール(Safmgol);塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルホサートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;塩化ストロンチウムSr89;スロフェヌル;タリソマイシン;タキサン;タキソイド;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;塩酸トポテカン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシナート;硫酸ビンロイロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシン。
【0091】
いくつかの態様では、癌治療剤、抗PDL1抗体、PM21粒子および/またはEX21エキソソームを同じ組成物に製剤化し得る。いくつかの態様では、癌治療剤、抗PDL1抗体、PM21粒子および/またはEX21エキソソームを異なる組成物に製剤化し得る。
【0092】
結合を変化させ得る化合物の設計および作製に関して上に記載したが、基質結合または酵素活性を変化させる化合物に関して天然の産物または合成化学物質を含めた既知の化合物およびタンパク質を含めた生物学的に活性な物質のライブラリーをスクリーニングすることも可能である。
【0093】
D.実施例
以下の実施例は、本願で特許請求される化合物、組成物、物品、装置および/または方法を作製および評価する方法を当業者に完全に開示および説明するために記載されるものであり、単に例示することを意図するものであって、本開示を限定することを意図するものではない。数値(例えば、量、温度など)に関しては正確さを確保するようにしたが、多少の誤差および偏差を考慮に入れるべきである。特に明示されない限り、部分は重量部であり、温度は℃で表されるものであるか、周囲温度であり、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【0094】
新規な抗PD-L1/抗PD-1療法は、PD-L1の誘導およびそれに続く免疫抑制カスケードによって腫瘍に対する初期免疫応答が停止した癌において機能が停止した免疫系を開放することができる。細胞傷害性の高いNK細胞、例えばPM21粒子で拡大したNK細胞(PM21-NK)などを用いて養子細胞療法を実施すると、腫瘍がその細胞表面にPD-L1を発現する同様の応答が観察される。このPM21-NK細胞は、腫瘍標的および腫瘍床に通常存在するサイトカイン(IL-12、IL-18)に応答して、拡大していないNK細胞またはIL-2で活性化したNK細胞よりはるかに大量にIFN-γを分泌する(図1)。NK細胞は、悪性細胞のみを標的とし健常細胞は標的としないという点で選択性も示す。このため、養子移植したPM21-NK細胞は、IFN-γの全身投与を実施しなくても腫瘍細胞に特異的にIFNγを送達してPD-L1を誘導し、健常な正常細胞が温存される。図2に示されるように、PM21粒子で拡大したNK細胞はSKOV-3細胞に対して細胞傷害性を示した。この細胞傷害性は少なくとも部分的には、サイトカインであるIFN-γおよびTNF-αが発現した結果であり、SKOV-3細胞に曝露し、さらにIL-12および/またはIL-18の投与による追加の刺激を加えると、これらのサイトカインの産生が増大した。PD-L1発現の誘導はIFNγに曝露した様々な腫瘍細胞系に観察された。ヒト化NSG-卵巣癌担持マウスを用いた前臨床試験から、養子移植したPM21 NK細胞および大量のIFN-γを分泌するPM21-NK細胞とともに拡大したNK細胞がヒト卵巣腫瘍にPD-L1を誘導することを示す証拠が得られる(図3A)。PM21-NK細胞またはFC-NK細胞が腫瘍に対する特異的PD-L1誘導因子であることをさらに示すため、養子移植したNK細胞は純度が高く(NK細胞99.99%)、実質的にT細胞は含まれていないことを明らかにした。腹膜にみられた細胞のうち、T細胞にはPD-1が発現したが、NK細胞にはPD-1が発現しなかった(図3B)。また、養子移植後にマウスから採取した血液中のhCD45ヒトリンパ球のうち99%超がNK細胞であった。腫瘍がPM21-NK細胞またはFC21-NK細胞に攻撃されている際にPD-L1を発現していることを裏付けるため、腹水が蓄積したマウスにはさらに大量の調節T細胞(Treg)がみられることを明らかにした(図3C)。TregはPD-L1によって誘導されることが知られており、NK細胞のIFNγにより刺激された腫瘍でのPD-L1発現に応答して急速に増殖する。腫瘍でのPM21-NK細胞によるこの免疫抑制性のPD-L1誘導は腫瘍に免疫系を回避させるものであるが、この機序は、多種多様な腫瘍タイプを標識し得る汎用性の標的化可能な抗原の発現を誘導するのに有利に利用することが可能である(図4)。PM21-NK細胞とともにヒト化PD-L1抗体を用いて治療すれば、抗PD-L1 AbとCD16(IgG受容体FcγRIII)との結合によって惹起する抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)により、NK細胞から極めて強力な標的化抗腫瘍応答を引き出すことができる(図4)。
本発明は以下の態様を含みうる。
[1]
対象の癌を治療する方法であって、前記対象にNK細胞および抗PDL1抗体を投与することを含む、方法。
[2]
前記NK細胞がXM NK細胞である、上記[1]に記載の方法。
[3]
ナイーブNK細胞集団をPM21粒子、EX21エキソソームまたはFC21フィーダー細胞と接触させることにより前記NK細胞を活性化または拡大する、上記[1]に記載の方法。
[4]
PM21粒子、EX21エキソソームまたはFC21細胞によるNK細胞の活性化または拡大をex vivoで実施する、上記[3]に記載の方法。
[5]
前記対象に前記NK細胞を投与する1~21日前にPM21粒子、EX21エキソソームまたはFC21細胞によるNK細胞の拡大の活性化を実施する、上記[4]に記載の方法。
[6]
前記NK細胞が、末梢血、臍帯血または幹細胞に由来するものであり得る、上記[1]に記載の方法。
[7]
前記NK細胞が、NK92などのNK細胞様細胞系に由来するものである、上記[1]に記載の方法。
[8]
前記抗PDL1抗体を投与する1~14日前に前記NK細胞を投与する、上記[1]に記載の癌を治療する方法。
[9]
前記NK細胞および抗PDL1抗体を同時に投与する、上記[1]に記載の癌を治療する方法。
[10]
前記NK細胞が、自家NK細胞、ハプロタイプ一致NK細胞または同種NK細胞である、上記[1]に記載の癌を治療する方法。
[11]
前記対象に前記NK細胞を投与する前に、前記NK細胞をIL-12、IL-15およびIL-18のうちの1つまたは複数のものと接触させることをさらに含む、上記[1]に記載の癌を治療する方法。
[12]
前記対象にIL-12、IL-15およびIL-18のうちの1つまたは複数のものを投与することをさらに含む、上記[1]に記載の癌を治療する方法。
[13]
前記IL-12、IL-15およびIL-18を前記NK細胞と同時に投与する、上記[12]に記載の癌を治療する方法。
[14]
前記NK細胞を投与する前に前記IL-12、IL-15およびIL-18を投与する、上記[12]に記載の癌を治療する方法。
[15]
前記NK細胞を投与した後に前記IL-12、IL-15およびIL-18を投与する、上記[12]に記載の癌を治療する方法。
[16]
前記対象にPM21粒子またはEX21エキソソームを投与することをさらに含む、上記[1]に記載の癌を治療する方法。
[17]
前記PM21粒子またはEX21エキソソームを前記NK細胞と同時に投与する、上記[16]に記載の癌を治療する方法。
[18]
前記NK細胞を投与した後、前記PM21粒子またはEX21エキソソームを少なくとも1週間に1回、2回、3回投与する、上記[16]に記載の癌を治療する方法。
[19]
対象の癌を治療する方法であって、対象にPM21粒子またはEX21エキソソームおよび抗PDL1抗体を投与することを含む、方法。
[20]
前記抗PDL1抗体を投与する1~14日前に前記PM21粒子またはEX21エキソソームを投与する、上記[19]に記載の癌を治療する方法。
[21]
前記PM21粒子またはEX21エキソソームおよび前記抗PDL1抗体を同時に投与する、上記[19]に記載の癌を治療する方法。
[22]
IL-12、IL-15およびIL-18のうちの1つまたは複数のものを投与することをさらに含む、上記[19]に記載の癌を治療する方法。
[23]
前記IL-12、IL-15およびIL-18を前記PM21粒子またはEX21エキソソームと同時に投与する、上記[22]に記載の癌を治療する方法。
[24]
前記PM21粒子またはEX21エキソソームを投与する前に前記IL-12、IL-15およびIL-18を投与する、上記[22]に記載の癌を治療する方法。
[25]
前記PM21粒子またはEX21エキソソームを投与した後に前記IL-12、IL-15およびIL-18を投与する、上記[22]に記載の癌を治療する方法。
[26]
PM21粒子またはEX21エキソソームの初回投与後、前記PM21粒子またはEX21エキソソームを少なくとも1週間に1回、2回、3回投与する、上記[19]に記載の癌を治療する方法。
[27]
PM21、EX21またはFC21 NK細胞と、抗PDL1抗体とを含む、抗癌療法。
[28]
PM21粒子またはEX21エキソソームをさらに含む、上記[27]に記載の抗癌療法。
[29]
IL-12、IL-15およびIL-18のうちの1つまたは複数のものをさらに含む、上記[27]に記載の抗癌療法。
[30]
PM21粒子またはEX21エキソソームと、抗PDL1抗体とを含む、抗癌療法。
[31]
IL-12、IL-15およびIL-18のうちの1つまたは複数のものをさらに含む、上記[30]に記載の抗癌療法。
図1
図2
図3
図4