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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】癌治療のための生物製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/19 20060101AFI20230307BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20230307BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
A61K38/19 ZNA
A61K45/06
A61P35/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019554812
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 US2018026087
(87)【国際公開番号】W WO2018187471
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】62/481,559
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519222933
【氏名又は名称】ロマ リンダ ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100111501
【弁理士】
【氏名又は名称】滝澤 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】ペイン キンバリー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】フランシス-ボイル オリビア エル
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-534623(JP,A)
【文献】医学のあゆみ、2010、Vol. 234, No. 5, pp.602-607
【文献】The Japanese Journal of Pediatric Hematology/Oncology, 2015, Vol. 52, No. 3, pp.300-303
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/19
A61K 45/06
A61P 35/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトカイン受容体様因子2(CRLF2)を過剰発現する白血病の治療のための医薬組成物であって、白血病細胞で1つ以上のサイトカインシグナリング抑制因子(SOCS遺伝子の発現を増加させるために十分な量のヒト胸腺間質リンホポエチン(TSLP)を含む、前記医薬組成物。
【請求項2】
白血病が急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B細胞型ALL、Ph様B細胞型ALL、急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ性白血病(ALL)、T細胞型ALLである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
さらに第二の作用因子を含み、前記第二の因子が化学療法剤である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
さらに第二の作用因子を含み、前記第二の因子が脱メチル化剤である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互引用)本出願は、米国仮特許出願No 62/481,559(2017年4月4日出願)(前記出願の内容は参照によってその全体が全ての目的のために本明細書に含まれる)に対して優先権を主張する。
(連邦政府支援研究開発下に達成された発明に対する権利に関する記述)本発明は、国立衛生研究所付与グラントNo. R21 CA162259およびNo. 1R01CA209829により政府の支援を受けて達成された。当該政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
急性リンパ芽球性白血病(ALL)は小児及び青年でもっとも一般的な癌であり、毎年、他のいずれのタイプの悪性疾患よりも多くの小児科患者が死亡する(DeSantis et al., CA: A Cancer Journal for Clinicians, 2014, 64:252-271)。ALL罹患小児が再発するとき、生存率は50%未満であり、この生存率は30年以上の間改善されていない(Nguyen et al., Leukemia, 2008, 22:2142-2150)。ALLは成人ではそれほど一般的ではないが、より致死性であり、毒性の強い治療法に対する耐性が低い65歳過ぎの人々では5年生存率は12%未満である(DeSantis et al)。
小児及び成人のALL症例の大半がB細胞型(B-ALL)である(Pui et al., N Engl J Med, 2004, 350:1535-1548)。小児では、もっとも予後不良のB-ALLは、サイトカイン受容体様因子2(CRLF2)遺伝子の遺伝的変化によって引き起こされる(CRLF2 B-ALL)(Harvey et al., Blood, 2010, 116:4874-4884)。CRLF2 B-ALLは、サイトカイン受容体成分、CRLF2の過剰発現を引き起こす遺伝的変化と定義される。サイトカイン、TSLPによるCRLF2受容体の活性化は、白血病細胞の生存および分裂増殖(proliferation)を促進することが知られている下流のシグナリングを開始させる(Malin et al., Curr Opin Immunol, 2010:22-168-176;Brown et al., Cancer Res, 2007, 67:9963-9970)。CRLF2 B-ALLはラテンアメリカ系小児で特に激烈で、他の小児より5倍の頻度で発生する。成人では、CRLF2 B-ALLは全B-ALL症例の1/3を構成し、同様に予後不良である(Chiaretti et al., Leukemia Research, 2016, 41:36-42)。
したがって、癌、例えば白血病および固形腫瘍を治療する組成物および方法が依然として希求される。
【発明の概要】
【0003】
ある特徴では、サイトカイン受容体を発現する癌を有する対象を治療する方法が提供される。いくつかの実施態様では、前記方法は、対象で癌細胞のサイトカイン受容体シグナリングの消失を誘発するために十分な量の生物学的作用因子を投与する工程を含む。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体シグナリングの消失は、サイトカインシグナリング遺伝子の抑制因子の1つ以上の発現および/または細胞表面の1つ以上のサイトカイン受容体成分の消失から生じ得る。
ある特徴では、サイトカイン受容体を発現する癌を有する対象を治療する方法が提供される。いくつかの実施態様では、前記方法は、対象で癌細胞のサイトカインシグナリング遺伝子の抑制因子の1つ以上の発現を増加させるために十分な量で生物学的作用因子を対象に投与する工程を含む。
いくつかの実施態様では、癌は白血病である。いくつかの実施態様では、白血病は急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。いくつかの実施態様では、白血病はB細胞型ALLである。いくつかの実施態様では、B細胞型ALLはPh様B細胞型ALLである。いくつかの実施態様では、白血病は急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ芽球性白血病(ALL)、T細胞型ALLである。いくつかの実施態様では、癌は固形腫瘍である。いくつかの実施態様では、固形腫瘍は、子宮頸癌、肺癌または卵巣癌である。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体は、サイトカイン受容体様因子2(CRLF2)、インターロイキン7受容体α(IL-7R-α)または上皮増殖因子受容体(EGFR)またはサイトカインシグナル伝達におけるそれらの共同受容体である。いくつかの実施態様では、癌はCRLF2を過剰発現する。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子はサイトカインまたはサイトカイン模倣物である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子はヒト胸腺間質リンホポエチン(TSLP)、上皮増殖因子(EGF)、インターロイキン7(IL-7)、またはそれらの模倣物である。いくつかの実施態様では、サイトカインまたはサイトカイン模倣物は組換え生成される。いくつかの実施態様では、対象は成人または年少者である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は静脈内にまたは全身性に投与される。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は第二の作用因子と併用して投与される。いくつかの実施態様では、第二の作用因子は化学療法剤または脱メチル化剤である。
【0004】
いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体様因子2(CRLF2)の過剰発現を特徴とする癌を有する対象を治療する方法が提供される。いくつかの実施態様では、前記方法は、対象の癌細胞で、CRLF2シグナリングを阻害し、さらに1つ以上のSOCS遺伝子の発現を増加させるか、またはCRLF2および/またはその共同受容体、IL-7R-αの細胞表面発現を減少させるために十分な量の生物学的作用因子を当該対象に投与する工程を含み、それによって癌を治療する。
いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体様因子2(CRLF2)の過剰発現を特徴とする癌を有する対象を治療する方法が提供される。いくつかの実施態様では、前記方法は、対象の癌細胞で、1つ以上のSOCS遺伝子の発現を増加させ、さらにCRLF2シグナリングを阻害するために十分な量の生物学的作用因子を当該対象に投与する工程を含み、それによって癌を治療する。
いくつかの実施態様では、癌は白血病である。いくつかの実施態様では、白血病は急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。いくつかの実施態様では、白血病は急性骨髄芽球性白血病(AML)である。いくつかの実施態様では、白血病はB細胞型ALLである。いくつかの実施態様では、B細胞型ALLはPh様B細胞型ALLである。いくつかの実施態様では、白血病は急性リンパ芽球性白血病T細胞型(T細胞ALL)である。いくつかの実施態様では、癌は固形腫瘍である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、ヒト胸腺間質リンホポエチン(TSLP)、EGF、インターロイキン7(IL-7)、またはそれらの模倣物である。いくつかの実施態様では、サイトカインまたはサイトカイン模倣物は組換え生成される。いくつかの実施態様では、対象は成人または年少者である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は静脈内にまたは全身性に投与される。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は第二の作用因子と併用して投与される。いくつかの実施態様では、第二の作用因子は化学療法剤または脱メチル化剤である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、対象で少なくとも30pg/mLの血清レベルをもたらす用量で投与される。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、当該生物学的作用因子についてコントロールの生理学レベルと少なくとも同じ高さの血清レベルを当該対象でもたらす用量で投与される。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、IL-7R-αの内在化の増加またはIL-7R-α若しくはCRLF2下流シグナリングの低下(例えばSTAT5リン酸化低下および/またはリボソームタンパク質S6リン酸化低下)をもたらす用量で投与される。
【0005】
ある特徴では、サイトカイン受容体を発現する癌の治療のための医薬組成物が提供される。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌の治療のための医薬組成物は以下を含む:癌細胞における1つ以上のSOCS遺伝子の発現の増加および/または表面サイトカイン受容体の消失によって、サイトカイン受容体のシグナリングの消失を誘発するために十分な量の生物学的作用因子、および医薬的に許容できる担体。
ある特徴では、サイトカイン受容体を発現する癌の治療のための医薬組成物が提供される。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌の治療のための医薬組成物は、癌細胞で1つ以上のSOCS遺伝子の発現を増加させるために十分な量の生物学的作用因子、および医薬的に許容できる担体を含む。
いくつかの実施態様では、癌はCRLF2またはEGFRの過剰発現を特徴とする。いくつかの実施態様では、癌は固形腫瘍である。いくつかの実施態様では、固形腫瘍は子宮頸癌、肺癌若しくは卵巣癌、またはEGFが腫瘍形成駆動因子である他の固形腫瘍である。いくつかの実施態様では、癌は白血病である。いくつかの実施態様では、白血病は急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B細胞型ALL、Ph様B細胞型ALL、急性骨髄性白血病、またはT細胞急性リンパ芽球性白血病(T細胞ALL)である。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体は、CRLF2、EFGRまたはIL-7R-アルファである。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子はサイトカインまたはサイトカイン模倣物である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子はヒトTSLP、EGF、IL-7またはそれらの模倣物である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子はTSLPである。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子はEGFである。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子はIL-7である。いくつかの実施態様では、医薬組成物は、第二の作用因子として化学療法剤または脱メチル化剤を含む。
【0006】
別の特徴では、サイトカイン受容体を発現する癌の治療のためのキットが提供される。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌の治療のためのキットは以下を含む:対象で癌細胞のサイトカインシグナリングの消失を誘発するために十分な量の生物学的作用因子(この受容体シグナリングの消失は、サイトカインシグナリング遺伝子の抑制因子の1つ以上の発現および/またはサイトカイン受容体成分の細胞表面からの消失により生じ得る)、および追加の1つの作用因子または複数の作用因子。
別の特徴では、サイトカイン受容体を発現する癌の治療のためのキットが提供される。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌の治療のためのキットは、癌細胞で1つ以上のSOCS遺伝子の発現を増加させるために十分な量の生物学的作用因子、および追加の1つの作用因子または複数の作用因子を含む。
いくつかの実施態様では、キットはサイトカインまたはサイトカイン模倣物である生物学的作用因子を含む。いくつかの実施態様では、キットは、ヒトTSLP、EGF、IL-7またはそれらの模倣物を含む。いくつかの実施態様では、キットは第二の作用因子として化学療法剤を含む。いくつかの実施態様では、キットは第二の作用因子として脱メチル化剤を含む。いくつかの実施態様では、癌治療のためのキットは白血病または固形腫瘍の治療用である。いくつかの実施態様では、固形腫瘍は子宮頸癌である。いくつかの実施態様では、固形腫瘍は肺癌である。いくつかの実施態様では、固形腫瘍は卵巣癌である。いくつかの実施態様では、癌は、EGFR、CRLF2またはIL-7Rαの変異型を過剰発現または発現する。いくつかの実施態様では、1つ以上のSOCS遺伝子はSOCS1、SOCS2、SOCS3および/またはCISHである。
【0007】
別の特徴では、癌細胞でCRLF2シグナリングを阻害する方法が提供される。いくつかの実施態様では、癌細胞でCRLF2シグナリングを阻害する方法は、有効な量のTSLPを癌細胞に投与する工程を含む。いくつかの実施態様では、癌細胞は白血病に由来する。いくつかの実施態様では、TSLPはヒトTSLPまたはヒトTSLPの模倣物である。
別の特徴では、癌細胞でIL-7Rαシグナリングを阻害する方法が提供される。いくつかの実施態様では、IL-7Rαシグナリングを阻害する方法は、有効量のIL-7を癌細胞に投与する工程を含む。いくつかの実施態様では、癌細胞は白血病由来である。いくつかの実施態様では、IL-7はヒトIL-7またはヒトIL-7の模倣物である。
別の特徴では、癌細胞でEGFRシグナリングを阻害する方法が提供される。いくつかの実施態様では、EGFRシグナリングを阻害する方法は、有効量のEGFRを癌細胞に投与する工程を含む。いくつかの実施態様では、癌細胞は固形腫瘍由来である。いくつかの実施態様では、固形腫瘍は子宮頸癌、肺癌または卵巣癌である。いくつかの実施態様では、EGFはヒトEGFまたはヒトEGFの模倣物である。
別の特徴では、TSLP治療に対する癌患者の応答を予測する方法が提供される。いくつかの実施態様では、TSLP治療に対する癌患者の応答を予測する方法は、癌患者の癌細胞表面におけるIL-7Rαの発現レベルを検出する工程、癌患者の癌細胞表面におけるCRLF2の発現レベルを検出する工程、および検出された発現レベルに基づいてCRLF2対IL-7Rαの比を計算する工程を含み、ここで、CRLF2のレベルがIL-7Rαのレベルより高い場合、当該癌患者はTSLP治療に応答すると予測される。いくつかの実施態様では、CRLF2対IL-7Rαの比は2:1である。いくつかの実施態様では、CRLF2対IL-7Rαの比は少なくとも2:1である。いくつかの実施態様では、CRLF2対IL-7Rαの比は2:1、3:1、5:1、10:1、20:1、50:1または100:1である。いくつかの実施態様では、CRLF2対IL-7Rαの比は2:1、3:1、5:1、10:1、20:1、50:1、100:1または100:1を超える。
【0008】
いくつかの実施態様では、癌細胞は白血病由来である。いくつかの実施態様では、白血病は急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。いくつかの実施態様では、白血病はB細胞型ALLである。いくつかの実施態様では、B細胞型ALLはPh様B細胞型ALLである。いくつかの実施態様では、白血病は急性骨髄芽球性白血病(AML)である。いくつかの実施態様では、白血病は急性リンパ芽球性白血病T細胞型(T細胞ALL)である。いくつかの実施態様では、癌細胞は固形腫瘍由来である。いくつかの実施態様では、当該方法はさらにまた、癌患者の癌細胞におけるSTAT5についてのリン酸化レベルおよび/またはリボソームS6についてのリン酸化レベルを検出する工程を含む。いくつかの実施態様では、検出工程はフローサイトメトリーを含む。
別の特徴では、癌のサブタイプを診断する方法が提供される。いくつかの実施態様では、癌を診断する方法は、細胞サンプルの細胞表面で発現されるCRLF2に結合する標識抗体と当該細胞サンプルを接触させる工程、および当該細胞サンプルのCRLF2を検出する工程を含み、それによって癌のサブタイプを診断する。
いくつかの実施態様では、癌のサブタイプはCRLF2過剰発現サブタイプである。いくつかの実施態様では、当該方法は、細胞サンプルにおいてCRLF2レベルを検出する工程を含み、それによってCRLF2過剰発現サブタイプを診断し、前記CRLF2のレベルは、コントロール値と比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または90%を超えて増加する。いくつかの実施態様では、当該方法は、細胞サンプルにおいてCRLF2レベルを検出する工程を含み、それによってCRLF2過剰発現サブタイプを診断し、前記CRLF2レベルは、コントロール値と比較して少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、または10倍より多く増加する。
【0009】
いくつかの実施態様では、当該方法は、細胞サンプルの細胞表面で発現されるCRLF2に結合する標識抗体と当該細胞サンプルを接触させる工程、および評価される癌細胞の指標となる1つ以上の追加のマーカーと当該細胞サンプルを接触させる工程を含む。例えば、細胞サンプル中のB細胞型ALL細胞の検出に有用なマーカーにはCD10、CD2およびCD34が含まれるが、ただし前記に限定されない。加えて、細胞サンプル中のT細胞の検出に有用なマーカーにはCD5およびCD7が含まれるが、ただし前記に限定されない。
いくつかの実施態様では、細胞サンプルは白血病に由来する。いくつかの実施態様では、白血病はB細胞型ALLである。いくつかの実施態様では、B細胞型ALLはPh様B細胞型ALLである。いくつかの実施態様では、白血病は急性骨髄性白血病である。いくつかの実施態様では、白血病はT細胞型ALLである。いくつかの実施態様では、細胞サンプルの細胞は固形細胞に由来する。いくつかの実施態様では、当該方法はさらにまた、細胞サンプルの細胞表面で発現されるIL-7Rαに結合する標識抗体と細胞サンプルを接触させる工程、および当該細胞サンプルにおけるIL-7Rα発現を検出する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1AヒトTSLPを発現する異種移植マウスを作製するための戦術 ヒトTSLPを発現するように形質導入した間質細胞を免疫不全マウスに注射した(+T PDX)。コントロールベクター(GFP)を形質導入した間質を注射することによって、コントロールマウスを作製した。+T PDXおよび-T PDXの両マウスに正常な造血幹細胞またはCRLF2 B-ALLを移植した。
図1BヒトTSLPを発現する異種移植マウスを作製するための戦術 患者由来異種移植片を調製するための戦術の模式図。
図2A-2C】 異種移植マウスで生成されたTSLPは正常B細胞の始原細胞の数を増加させる(A)ヒトB細胞サブセットで変化を誘発するための戦術の模式図。(B)-T PDXマウスおよび+T PDXマウス(低い生理学レベル(4-10pg/mL)でTSLPを発現する)におけるhCD19発現細胞数の定量、同様な効果は30pg/mL(例えば高い生理学レベル)を超えても観察された。(C)正常ヒトB細胞の前駆細胞の定量、データは-Tマウスと比較して+Tで正常ヒトB細胞前駆細胞の3-6倍の拡張を示す。
図3TSLPの抗白血病作用 本質的に実施例1に示すように、PDXを原発性ラテンアメリカ系小児科患者から樹立した。2週間後、PDXマウスにコントロール間質およびhTSLP発現間質を注射し、~32-93pg/mLのhTSLP血清レベルを有する+Tマウス(下列)およびコントロール-T PDXマウス(上列)を作製した。10週間後、骨髄(BM)を採集してフローサイトメトリーのために染色し、ヒトCRLF2 B-ALL細胞(赤枠で囲まれている)を検出した。ヒトB-ALL細胞は、-T PDXマウス(上列)から採集した骨髄(BM)でフローサイトメトリーによって容易に検出できた。白血病細胞は、+T PDX(下列)では本質的に存在しなかった。右の端の上パネルは、マウスBMにおけるヒト白血病細胞のパーセンテージ定量を示す。データは、2人の異なる患者サンプルから作製した、合計N=20の-T PDXおよび合計N=20の+T PDXで実施した5つの実験の代表例である。
図4A-4C】 低い生理学レベルのTSLPは白血病細胞で効果を示さない (A)2人の小児科患者の白血病サンプル(患者1および患者2)を用いるPDXモデル系でTSLP発現を誘発するための戦術の模式図。(B、C)本質的に実施例1に示すようにPDXを樹立した。PDXマウスにコントロール間質およびhTSLP発現間質を注射し、~4-10pg/mLのhTSLP血清レベルを有する+Tマウス(上列)を作製した。患者1由来の白血病細胞を有するマウスのために、直ちに注射を開始し9週間維持した。患者2に由来する白血病細胞を有するマウスのために、注射を10週間で開始し2週間続けた。白血病細胞は、-T PDXおよび+T PDXマウスから採集した骨髄でフローサイトメトリーによって容易に検出された(中段パネル)。下段パネルは、-T PDXおよび+T PDXマウスにおけるhCRLF2発現の定量を示し、白血病細胞はCRLF2 B-ALLであることを立証する。
図5A高い生理学レベルのTSLPは抗白血病作用を有する 本質的に実施例1に示すように、2人の小児科患者(患者#1および患者#2)からPDXを樹立した。2週間後に、PDXマウスにコントロール間質またはhTSLP発現間質を注射して、~32-93pg/mLのhTSLP血清レベルを有する+Tマウスおよびコントロール-T PDXマウスを作製した。10週間後に、骨髄(BM)を採集してフローサイトメトリーのために染色し、ヒトCRLF2 B-ALL細胞を検出した(赤枠で囲まれている)。ヒトB-ALL細胞は-T PDXマウスから採集した骨髄(BM)でフローサイトメトリーによって容易に検出できた(上列)。白血病細胞は+T PDXでは本質的に存在しなかった(下列)。
図5B高い生理学レベルのTSLPは抗白血病作用を有する 本質的に実施例1に示すように、2人の小児科患者(患者#1および患者#2)からPDXを樹立した。2週間後に、PDXマウスにコントロール間質またはhTSLP発現間質を注射して、~32-93pg/mLのhTSLP血清レベルを有する+Tマウスおよびコントロール-T PDXマウスを作製した。10週間後に、骨髄(BM)を採集してフローサイトメトリーのために染色し、ヒトCRLF2 B-ALL細胞を検出した(赤枠で囲まれている)。ヒトB-ALL細胞は-T PDXマウスから採集した骨髄(BM)でフローサイトメトリーによって容易に検出できた(上列)。白血病細胞は+T PDXでは本質的に存在しなかった(下列)。
図6A-6D】 TSLPは2つの異なる患者サンプルから作製されたPDXでCRLF2 B-ALLの疾患進行を停止させる (A、B、CおよびD)図6Aおよび6Bから入手したマウスBMにおけるヒト白血病細胞のパーセンテージ定量。データは、合計N=12の-T PDXおよび合計N=17の+T PDXで実施した4つの実験を示す。2つの異なる患者サンプルから作製した合計N=20の-T PDXおよび合計N=20の+T PDXを提供する、追加の実験も同様な結果を示す(データは提示されていない)。データは、上昇生理学レベルの循環hTSLPによってCRLF2 B-ALLが本質的に治癒されたことを裏付ける。
図7SOCSタンパク質は負のフィードバックによりJAK-STATシグナリングを調節する SOCSタンパク質が負のフィードバックによりJAK-STATシグナリング経路を調節することを示す模式図である。SOCS遺伝子の発現はJAK-STATシグナルによってアップレギュレートされる。SOCSタンパク質は、JAKSまたはJAKサイトカイン受容体と直接相互作用してJAKリン酸化を妨げることによって、JAK-STATシグナリングを阻害する。SOCSタンパク質はまた、ユビキチンリガーゼによるプロテアソーム分解のためにJAKタンパク質を標的とする。いくつかの事例では、SOCSタンパク質はまた、分解のためにサイトカイン受容体を標的とする。
図8高用量のTSLPはラテンアメリカ系小児科患者のCRLF2 B-ALL細胞で複数のSOCSファミリー遺伝子の発現を増加させる ラテンアメリカ系小児科患者のCRLF2 B-ALL細胞をPDXマウスで拡張させ続いて採集し、15ng/mLの組換えヒトTSLP(TSLP)の存在下または非存在下で48時間培養した。続いて、細胞を全ゲノムマイクロアレイによってアッセイしてRNA発現を判定した。全てのSOCSファミリーmRNAの相対的発現レベルを3テクニカルレプリケートで図表に表す。全てのTSLPは大腸菌(E. coli)生成組換えヒトTSLPであった。
図9ATSLPはMUTZ5細胞株でSOCS発現を増加させる ヒトCRLF2 B-ALL細胞株(MUTZ5)をTSLP存在下または非存在下でSOCS遺伝子(SOCS1およびSOCS3)の発現について評価した。ヒトCRLF2 B-ALL細胞株MUTZ5を高用量のTSLP(15ng/mL)の存在下および非存在下で3日間培養し、続いてフローサイトメトリーのために染色してSOCS1およびSOCS3を検出した。(A)はSOCSタンパク質発現染色の中央値蛍光強度(MFI)を示し、hTSLPはCRLF2 B-ALL細胞株でSOCS1およびSOCS3の両方のアップレギュレーションを誘発することを示す。
図9B高用量のTSLPは患者のCRLF2 B-ALL細胞でSOCS-1発現を増加させる マウスで患者由来異種移植片として拡張させた患者細胞を高用量の組換えヒトTSLP(hTSLP)の存在下および非存在下で培養し、フローサイトメトリーのために採集してSOCS1およびSOCS3タンパク質発現について評価した。提示データはSOCS1およびSOCS3タンパク質染色の中央値蛍光強度(MFI)である。全てのTSLPは大腸菌生成組換えヒトTSLPであった。
図10ACRLF2を介するシグナリングの消失はSOCS-1およびSOCS-3のアップレギュレーションに対応する MUTZ5を組換えヒトTSLP(15ng/mL)の存在下または非存在下で3日間培養し、SOCSタンパク質をアップレギュレートさせてから洗浄し、数時間休ませてリン酸化を消失させた。続いて細胞を刺激しないで放置するかまたはTSLPで簡単に(30分間)刺激した。ホスホフローサイトメトリーを実施して、リン酸化STAT5およびリン酸化リボソームタンパク質S6のレベルを決定した。STAT5のリン酸化はJAK-STAT経路活性化の指標であり、S6のリン酸化はPI3/AKT/mTOR経路活性化の指標である。データは2つのヒト細胞株で三重反復で実施した1つの実験を表す。全てのTSLPは大腸菌生成組換えヒトTSLPであった。
図10BCRLF2を介するシグナリングの消失はSOCS-1およびSOCS-3のアップレギュレーションに対応する CALL-4を組換えヒトTSLP(15ng/mL)の存在下または非存在下で3日間培養し、SOCSタンパク質をアップレギュレートさせてから洗浄し、数時間休ませてリン酸化を消失させた。続いて細胞を刺激しないで放置するかまたはTSLPで簡単に(30分間)刺激した。ホスホフローサイトメトリーを実施して、リン酸化STAT5およびリン酸化リボソームタンパク質S6のレベルを決定した。STAT5のリン酸化はJAK-STAT経路活性化の指標であり、S6のリン酸化はPI3/AKT/mTOR経路活性化の指標である。データは2つのヒト細胞株で三重反復で実施した1つの実験を表す。全てのTSLPは大腸菌生成組換えヒトTSLPであった。
図11ATSLPはCRLF2シグナリングの用量依存消失を誘発する MUTZ5 CRLF2 B-ALL細胞を表示のとおり漸増用量の組換えヒトTSLPの非存在下また存在下で24時間培養し、続いて採集した。採集細胞を洗浄し2時間休ませ、続いてアリコットに分けてTSLPで刺激するかまたは刺激しないで放置し、続いてフローサイトメトリーのために染色してリン酸化STAT5を評価した。黒色のグラフは非刺激細胞のSTATリン酸化で、対する刺激細胞におけるレベルは灰色で示される。増加STAT5リン酸化によって示されるCRLF2シグナリング誘発能力は、CRLF2 B-ALL細胞が高用量TSLPとともに培養されるときに消失することに留意されたい。
図11BTSLPはCRLF2シグナリングの用量依存消失を誘発する MUTZ5 CRLF2 B-ALL細胞を表示のとおり漸増用量の組換えヒトTSLPの非存在下また存在下で24時間培養し、続いて採集した。採集細胞を洗浄し2時間休ませ、続いてアリコットに分けてTSLPで刺激するかまたは刺激しないで放置し、続いてフローサイトメトリーのために染色してリン酸化リボソームタンパク質S6を評価した。黒色のグラフは非刺激細胞のリボソームタンパク質S6リン酸化で、対する刺激細胞におけるレベルは灰色で示される。増加S6リン酸化によって示されるCRLF2シグナリング誘発能力は、CRLF2 B-ALL細胞が高用量TSLPとともに培養されるときに消失することに留意されたい。TSLPは大腸菌生成組換えヒトTSLPであった。
図12高用量TSLPは受容体成分の消失を誘発する MUTZ5およびCALL4 CRLF2 B-ALL細胞を組換えヒトTSLP(15ng/mL)の存在下(+T)また非存在下(-T)で培養し、1日目、2日目および3日目に採集し、フローサイトメトリーのために染色してTSLP受容体シグナリング複合体の成分を検出した(IL-7RaおよびCRLF2)。1日目に採集した細胞のドットプロットは青色染色受容体成分を示し、アイソタイプコントロールは赤色である。CRLF2レベルが極端に低い細胞はそのIL-7R(そのIL-7Rの全てというわけではないが)を失わなかった細胞だけである。同様な結果は2日目および3日目でも観察された。全てのTSLPは大腸菌生成組換えヒトTSLPであった。
図13A-C】 TSLP1時間パルスのTSLPに暴露されたCRLF2 B-ALLはCRLF2シグナリングの消失に一致する表面IL-7Raの持続的消失を示す MUTZ5 CRLF2 B-ALL細胞を大腸菌生成組換えヒトTSLPの1時間パルスで500pg/mLまたは15,000のTSLPに暴露し続いて洗浄し、生理学的状態を模倣するために低レベルのTSLP(20pg/mL)で24時間培養に戻した。コントロールとして、細胞をまた、TSLP非存在下または生理学用量(20pg/mL)若しくは高用量(15,000pg/mL)TSLPの存在下でインキュベートした。培養後、細胞を採集しフローサイトメトリーのために染色して、表面IL-7R(A)またはCRLF2(B)を検出した。加えて、細胞のアリコットを採集し2時間休ませてから、STAT5のリン酸化によって示されるCRLF2シグナリングを評価するためにTSLPの存在下または非存在下で刺激した。全てのTSLPは大腸菌生成組換えヒトTSLPであった。
図14CRLF2 B-ALL細胞は正常なB細胞前駆細胞よりも4-200倍高いCRLF2発現を特徴とする 正常B細胞前駆細胞(左)およびCRLF2 B-ALL(右)におけるCRLF2、IL-7RアルファおよびTSLPの相互作用並びに発現を示す模式図である。下段パネルは、正常B細胞前駆細胞(左パネル)及び患者のCRLF2 B-ALL細胞(右パネル)におけるIL-7RアルファおよびCRLF2の発現のフローサイトメトリー図を示す。
図15小児科白血病患者のTSLPの血清レベルは白血病の進展を可能にする低い生理学レベルである (A)0日目および29日目に収集した9人の小児科白血病患者のhTSLPの中央値レベルの定量。(B)0日目および29日目に収集した9人の小児科白血病患者(P1-P9)のhTSLPの個々のレベルの定量。これらのデータは、患者におけるTSLPの正常な生理学用量は図4で予測される治療用量を下回る用量と一致することを示している。
図16高用量EGFは固形腫瘍の子宮頸癌細胞でEGFR下流シグナリングを停止させる 子宮頸癌細胞株、UMSCC47およびSCC19を高用量EGFR(200ng/mL)の存在下または非存在下で24または48時間培養してから採集し、洗浄して2時間休ませた。休ませた細胞をアリコットに分けてEGFで簡単に刺激し、続いてフローサイトメトリーのために染色してSTAT5リン酸化を検出した。グラフはリン酸化STAT5染色の中央値蛍光強度である。
図17高用量EGFは固形腫瘍の卵巣癌細胞でEGFR下流シグナリングを停止させる 卵巣癌細胞株、OVCAR8を高用量EGFR(200ng/mL)の存在下または非存在下で24または48時間培養してから採集し、洗浄して2時間休ませた。休ませた細胞をアリコットに分けてEGFで簡単に刺激し、続いてフローサイトメトリーのために染色してSTAT5リン酸化を検出した。グラフはリン酸化STAT5染色の中央値蛍光強度である。
図18高用量EGFは固形腫瘍の肺癌細胞でEGFR下流シグナリングを停止させる 肺癌細胞株、H1299を高用量EGFR(200ng/mL)の存在下または非存在下で24または48時間培養してから採集し、洗浄して2時間休ませた。休ませた細胞をアリコットに分け、EGFで簡単に刺激し、続いてフローサイトメトリーのために染色してリボソームタンパク質S6リン酸化を検出した。グラフはリン酸化S6染色の中央値蛍光強度である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
I.序
本開示は、癌細胞で、ヒト胸腺間質リンホポエチン(TSLP)、EGFまたはIL-7のいずれかのレベルを増加させることは、シグナリングの消失をもたらすメカニズムを誘発するという驚くべき発見に関連する。患者由来異種移植片モデル(ヒト患者由来の白血病細胞を免疫不全マウスに注射することによって作製される)が開発され、前記モデルでは、ヒトTSLP(hTSLP)が生理学レベルで発現された(Francis et al., Haematologica, 2016, 101:417-426)。これらのモデルはまた、TSLPを生成する間質をより多くまたはより少なく注射することによってTSLPの量を変動させることができた。本明細書に記載するように、高い生理学レベルのhTSLPは、驚くべきことに劇的な抗白血病作用を有することが見出され、CRLF2 B-ALLを罹患する2人の異なるラテンアメリカ系小児科患者から作製されたPDXの初期段階の疾患を治癒させた。さらにまた、hTSLPは、低および高生理学レベルの両レベルで正常なヒトB細胞の生産を拡張し他の免疫細胞の減少はもたらさなかった。総合すれば、これらのデータは、生物学的療法としてhTSLPサイトカインを使用してCRLF2 B-ALL細胞を標的とし、一方で化学療法に従って正常なヒトB細胞の回復を支援することを提案する。本明細書に記載するように、異種移植マウスモデルにおける高生理学レベルのhTSLP(>30pg/mL)の生成はSOCS遺伝子発現のアップレギュレーションおよびIL-7Rαの消失を引き起こし、それは、白血病細胞の減少および正常B細胞の始原細胞(免疫系の回復を助ける)の拡張に至るCRLF2シグナリングの停止をもたらした。TSLPはTSLP誘発シグナリングを増大させる結腸癌の治療法としてこれまで提唱され(Yue et al., (2016) Oncotarget, 13:16840-54)さらに活性なTSLPシグナリング経路を要求するが、一方、本明細書で提唱するTSLPの使用はCRLF2シグナリングの停止または阻害である。
【0012】
特定の理論に拘束されないが、CRLF2を過剰に発現する癌(例えば白血病)では、低い生理学レベルのTSLPが存在し、それは癌細胞を正常に増殖させる。しかしながら、癌細胞におけるTSLPレベルの増加は、サイトカインシグナリング抑制因子(SOCS)遺伝子の発現をアップレギュレートし、図7に示すように多様なメカニズムを介してサイトカイン受容体シグナリングの消失をもたらす(図12のように高用量TSLPで処理された白血病で示されるように内在化に続く表面受容体の分解が含まれる)。CRLF2を過剰発現する癌細胞はヒトTSLPと結合してプライミングされた受容体複合体になると考えられる。いったんプライミングされると、これらの受容体複合体は、当該細胞が生成する新たなIL-7Rα分子と直ちに結合することができ、それによって当該細胞表面のIL-7Rαの存在を低下させるがただし一度に1つの分子をそのようにするのであり、したがって高レベルのプライミングされたCRLF2を有する癌細胞が決定的シグナリング閾値に到達することを妨げる。したがって、TSLPレベルを増加させることは、プライミングされたCRLF2のレベル増加および最終的には癌細胞生存に必要なCRLF2シグナリングの消失をもたらして癌細胞を減少させ、一方、免疫系の回復を助ける正常B細胞の始原細胞の拡張をもたらす。これらのデータは、正常B細胞の始原細胞は初期発達段階ではTSLPに応答するが、続いて異なるシグナルに応答するより成熟したB系列細胞に分化するというシナリオに一致する。対照的に、CRLF2 B-ALL細胞はB細胞始原細胞段階の発達に固定され、当該段階ではそれらはCRLF2媒介シグナルに依存したままである。したがって、ある特徴では、本開示は、サイトカイン(例えばTSLP)またはサイトカイン模倣物を、サイトカインシグナリングを停止させるために十分な量で投与することによって、癌細胞を殺滅して癌(例えば白血病またはCRLF2を過剰発現する固形腫瘍)を治療する方法を提供する。
【0013】
さらにまた、特定の理論に拘束されないが、癌細胞、例えばEGFRを過剰に発現する固形腫瘍または白血病細胞では、低い生理学レベルのEGFが存在するとき、癌細胞は正常に増殖した。しかしながら、EGFレベルの増加は、SOCSタンパク質をアップレギュレートしてシグナリングを妨害し、さらにシグナリング成分(EGFRシグナリング成分を含む)の分解を引き起こすことによって、潜在的にサイトカインシグナルを停止させる。したがって、EGFレベルの増加は、癌細胞生存に必要なEGFRシグナルの消失をもたらし、癌細胞を減少させる。したがって、ある特徴では、本開示は、サイトカイン(例えばEGF)またはサイトカイン模倣物を、SOCS遺伝子の発現またはEGF受容体の内在化を増加させるために十分な量で投与することによって、癌細胞を殺滅して癌(例えばEGFRを発現または過剰発現する白血病または固形腫瘍)を治療する方法を提供する。
加えて、特定の理論に拘束されないが、癌細胞、例えば細胞表面に存在するIL-7Rαのシグナルを必要とする白血病またはリンパ腫細胞では、IL-7レベルの増加は、サイトカインシグナリング抑制因子(SOCS)遺伝子の発現をアップレギュレートするであろう。SOCSタンパク質は、シグナリングを妨害し、さらにシグナリング成分(IL-7Rαシグナリング成分を含む)を分解することによってサイトカインシグナルを停止させる。したがって、IL-7レベルの増加は、癌細胞生存に必要なIL-7Rαシグナルの消失をもたらし、癌細胞を減少させる。したがって、ある特徴では、本開示は、サイトカイン(例えばIL-7)またはサイトカイン模倣物を、SOCS遺伝子の発現を増加させおよび/またはIL-7Rαを内在化させるために十分な量で投与することによって、癌細胞を殺滅して癌(例えば白血病またはCRLF2を過剰発現する固形腫瘍)を治療する方法を提供する。
【0014】
II.定義
本明細書で用いられる用語は具体的な実施態様を述べることのみを目的とし、限定を意図するものではない。なぜならば、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって制限されるからである。特段の規定がなければ、本明細書で用いられる全ての技術用語および学術用語は、本発明が属する分野の業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書および後続の特許請求の範囲では、多数の用語について言及され、前記用語は逆の意図が明白でないかぎり下記の意味を有すると定義される。いくつかの事例では、一般的に理解されている意味を有する用語が、本明細書では明確性および/または容易な言及を目的として定義されてあり、そのような定義を取り入れたことは、当業界で大まかに理解されている当該用語の定義に対し実質的な相違を表明したものと解されるべきではない。
全ての数字による指定、例えばpH、温度、時間、濃度および分子量(範囲を含む)は概数であり、前記は適宜0.1または1.0単位で(+)または(-)に変動する。全ての数字による指定には“約”という用語が先行すると理解されるべきである(ただし常に明記されているとは限らない)。
単数形の“a”、“an”および“the”には、文脈が明らかにそうではないことを示していないかぎり対応する複数形が含まれる。したがって、例えば、“1つの化合物(a compound)”との言及には複数の化合物が含まれる。
“含む(comprising)”という用語は、化合物、組成物および方法は列挙されてある成分を含むが、他のものも排除しないことを意味することが意図される。“本質的に~から成る(consisting essentially of)”は、化合物、組成物および方法を定義するために用いられるときには、特許請求された発明の基礎的かつ新規な特徴に実質的に影響を与えるであろうような他の成分を排除することを意味する。“~から成る(consisting of)”は、特許請求の範囲で指定されない任意の成分、工程または成分を排除することを意味する。これらのトランジションタームの各々によって規定される実施態様は本発明の範囲内である。
【0015】
本明細書で用いられるように、“生物学的作用因子”という用語は、ペプチド、タンパク質、アプタマー、オリゴペプチド、ペプチド模倣物、オリゴヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドのような作用因子または化合物を指す。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は癌を有する細胞または対象を治療するために用いられる。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子はサイトカインまたは本明細書で定義されるサイトカイン模倣物である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、サイトカイン、例えばTSLP(例えばヒトTSLP)、IL-7(例えばヒトIL-7)、および上皮増殖因子(EGF)(例えばヒトEGF)であるが、ただし前記に限定されない。別の実施態様では、生物学的作用因子は、ヒトTSLP、EGFまたはIL-7のサイトカイン模倣物である。ある実施態様では、生物学的作用因子はヒトTSLPである。別の実施態様では、生物学的作用因子はヒトIL-7である。別の実施態様では、生物学的作用因子はヒトEGFである。
本明細書で用いられるように、“サイトカイン”という用語は、細胞シグナリングで重要な免疫系の細胞(例えばマクロファージ、BおよびTリンパ球)によって生成されるあるクラスの内因性免疫調節タンパク質(例えばインターロイキンまたはインターフェロン)を指す。サイトカインは、受容体を介して免疫応答、炎症および造血を媒介および調節することができる。後続する細胞内シグナリングカスケードは続いて細胞機能を変更することができ、これには遺伝子および遺伝子の転写因子のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションが含まれ、それらは他のサイトカインの産生、他の分子の表面受容体の数の増加、受容体成分の分解、またはフィードバック阻害によるそれら自身の効果の抑制をもたらすことができる。与えられた細胞における特定のサイトカインの効果は、概してサイトカイン、その細胞外における豊富さ、受容体結合によって活性化される細胞表面シグナルおよび下流シグナルにおける補完性受容体の有無に左右される。
【0016】
造血増殖因子は、造血始原細胞の分裂増殖(proliferation)、分化および生存に関与する特殊なクラスの天然に存在するサイトカインである。これらのサイトカイン増殖因子のいくつかは、組換えDNA技術を用いて治療薬として開発された。それらには以下が含まれる:骨関連症状を治療する骨形成タンパク質(BMP)、貧血を治療するエリスロポイエチン(EPO)、いくつかの形態の癌を治療するIL-2、急性骨髄性白血病を治療する顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、癌患者の真菌感染を治療する顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、および血小板生成を増加させるIL-11(以下で概説:Tekewe, Pharmacophore, 2012, Vol. 3 (2), 81-108)。したがって、本明細書で用いられるサイトカインという用語は、天然に存在する“造血増殖因子”、例えばEGF、BMP、EPO、G-CSF、GM-CSF、TSLP、IL-2、IL-3、IL-7およびIL-11を含むが、ただし前記に限定されない。
【0017】
本明細書で用いられるように、“サイトカイン模倣物”という用語は、典型的には天然に存在するサイトカインに起因する機能的および/または構造的特徴を有する、化合物若しくは分子または化合物若しくは分子クラスを指す。ある特徴では、サイトカイン模倣物は組換えサイトカインである。ある実施態様では、サイトカイン模倣物は、天然に存在するサイトカインを改変し、切詰め、または変化させた形態である。別の実施態様では、サイトカイン模倣物は、天然に存在するサイトカインを改変し、切詰め、または変化させた形態であって、対応する天然に存在するサイトカインの測定される機能(例えば1つ以上の遺伝子のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーション)の少なくとも60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%を維持する。いくつかの実施態様では、サイトカイン模倣物は、自然のままの生物学的供給源(例えばTまたはB細胞)から直接抽出以外の手段によって生成される化合物または分子であって、対応する天然に存在するサイトカインの測定される活性(例えばSOCS遺伝子発現の調節)の少なくとも60%、65%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%を維持する。ある実施態様では、サイトカイン模倣物はタンパク質を含むことができ、当該タンパク質の配列は、天然に存在するサイトカインの配列に対して少なくとも50%等価であるか、または天然に存在するサイトカインの配列に対して少なくとも60%等価であるか、または天然に存在するサイトカインの配列に対して少なくとも70%等価であるか、または天然に存在するサイトカインの配列に対して少なくとも80%等価であるか、または天然に存在するサイトカインの配列に対して少なくとも90%等価であるか、または天然に存在するサイトカインの配列に対して少なくとも95%等価であるか、または天然に存在するサイトカインの配列に対して少なくとも97%等価であるか、または天然に存在するサイトカインの配列に対して少なくとも98%等価であるか、または天然に存在するサイトカインの配列に対して少なくとも99%等価である。ある実施態様では、天然に存在するサイトカインはTSLPである。別の実施態様では、天然に存在するサイトカインヒトTSLPである。別の実施態様では、天然に存在するサイトカインはIL-7である。さらに別の実施態様では、天然に存在するサイトカインはEGFである。したがって、サイトカイン模倣物にはIL-7、EGFまたはTSLPの組換え型が含まれ得る。
【0018】
したがって、天然に存在するサイトカイン(例えばTSLP、EGFまたはIL-7であるがただしこれらに限定されない)と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性を維持する組換え化合物または分子(例えばタンパク質、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをコードする核酸)はサイトカイン模倣物として機能できると考えられる。いくつかの実施態様では、サイトカイン模倣物には、天然に存在するサイトカインと少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性を維持する、合成によって製造されたペプチドが含まれ得る。別の実施態様では、サイトカイン模倣物には、天然に存在するサイトカインと少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性を保持し、さらに適切なin vitroまたはin vivoアッセイ(例えば1つ以上のSOCS遺伝子の調節、STAT5のリン酸化)で測定したとき、天然に存在するサイトカインと比較して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の活性を維持する合成によって製造されたペプチドが含まれ得る。いくつかの実施態様では、サイトカイン模倣物は、天然に存在するサイトカインと比較して1つ以上の構造的改変(例えばアミノ酸配列、タンパク質折り畳み、結合または受容体部位(ただし前記に限定されない))を含むことができる。別の実施態様では、サイトカイン模倣物は、天然に存在するサイトカインと比較して1つ以上の特性(例えば有効性、安定性、特異性、免疫原性または薬理学カイネティクスであるがただしこれらに限定されない)の調節を含むことができる。ある実施態様では、サイトカイン模倣物は、天然に存在するサイトカインと比較して、有効性、安定性、特異性、免疫原性または薬理学カイネティクスから成る群から選択される1つ以上の特性の調節を含むことができ、この場合、サイトカイン模倣物は、類似する条件下で対応する天然に存在するサイトカインに対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%等価のまたはそれより優れた機能性を保持する。ある実施態様では、サイトカイン模倣物は、天然に存在するサイトカイン、例えばIL-7またはTSLPの誘導体を含むことができる。別の実施態様では、サイトカイン模倣物は人工的に操作される天然に存在するサイトカインであって、前記は、その一次構造が改変され、複合物化され、および/または組換えサイトカインが形成されるように融合パートナーに取り込まれる。いくつかの実施態様では、サイトカイン模倣物は、完全長のグリコシル化サイトカイン分子(例えばグリコシル化TSLP)を含むことができる。別の実施態様では、サイトカイン模倣物は天然に存在するサイトカインの切詰め型を含むことができ、前記はポリエチレングリコールに結合され切詰めペグ化サイトカイン模倣物(例えばペグ化TSLP)を形成する。いくつかの実施態様では、サイトカイン模倣物はヒトTSLPに由来する。別の実施態様では、サイトカイン模倣物はIL-7に由来する。
【0019】
本明細書で用いられるように、“胸腺間質リンホポエチン”または“TSLP”という用語は、抗原提示細胞の活性化を通してT細胞集団の成熟で役割を果たすことが知られているサイトカインファミリーに属するタンパク質を指す。TSLPは、主に非造血細胞、例えば線維芽細胞、間質細胞および上皮細胞により生成される。サイトカインTSLPは、TSLPおよびIL-7Rαで構成されるヘテロダイマー受容体複合体を介してシグナルを発する。ヒトでは、TSLPはTSLP遺伝子(NCBI遺伝子ID:85480)によってコードされる。ヒトTSLPのタンパク質配列は表1で配列番号:1(UniProt:Q969D9)として提供される。TSLPは少なくとも2つのアイソフォームで存在することが知られている(NCBI参照配列:NP_149024.1およびNP_612561.2)。ヒトTSLPの完全なコード配列はBC040592.1およびCCCDS4101.1として提供される。他の転写変種はNM_033035.4およびNM_138551.4として提供される。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の方法にしたがって検出できるCRLF2遺伝子またはタンパク質は、NCBI GenBankアクセッション番号NP_149024.1、NP_612561.2、BC040592.1、CCCDS4101.1、NM_033035.4、NM_138551.4またはUniProt Q969D9のいずれかに示される天然に存在するTSLP遺伝子またはタンパク質と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する変種である。
【0020】
本明細書で用いられるように、“上皮増殖因子”または“EGF”は、タンパク質のうちEGFファミリーに属するものを指し(ヘパリン結合EGF様増殖因子、形質転換増殖因子、エピゲン、ベタセルリンおよびニューレグリンを含む)、前記はその受容体(上皮増殖因子受容体(EGFR))と結合することによって細胞の増殖および分化で役割を果たすことが知られている。ヒトでは、EGFはEGF遺伝子(NCBI Gene ID:1950)によってコードされる。ヒトEGFのタンパク質配列は配列番号:2(UniProt:P01133)として表1で提供される。EGFは少なくとも3つのアイソフォームとして存在することが知られている(NCBI参照配列:NP_001954.2 NP_001343950.1 NP_001171601.1およびNP_001171602.1)。ヒトEGFの完全なコード配列はCCCDS3689.1として提供される。他の転写物変種は、NM_001963.5、NM_001357021.1、NM_001178131.2およびNM_001178130.2として提供される。いくつかの実施態様では、本明細書に記載する方法にしたがって検出できるEGF遺伝子またはタンパク質は、以下のNCBI GenBankアクセッション番号(NCBI参照配列:NP_001954.2 NP_001343950.1 NP_001171601.1、NP_001171602.1、CCCDS3689.1、NM_001963.5、NM_001357021.1、NM_001178131.2、NM_001178130.2またはUniProt P01133)のいずれかに示される天然に存在するEGF遺伝子またはタンパク質と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する変種である。
【0021】
本明細書で用いられるように、“インターロイキン7”または“IL-7”という用語は、骨髄および胸腺の間質細胞によって分泌される造血増殖因子であるタンパク質を指す。ヒトでは、IL-7はIL-7遺伝子(NCBI Gene ID:3574)によってコードされる。ヒトIL-7のタンパク質配列は配列番号:3(UniProt:P13232)として表1で提供される。IL-7は少なくとも4つのアイソフォーム(NCBI参照配列:NP_000871.1、NP_01186815.1、NP_01186816,1およびNP_001186817.1)として存在することが知られている。ヒトIL-7の完全なコード配列はCCDS6224.1として提供される。他の転写物変種は、NM_0008890.3、NM_001199886.1、NM_001199887.1およびNM_001199888.1として提供される。いくつかの実施態様では、本明細書に記載する方法にしたがって検出できるIL-7遺伝子またはタンパク質は、以下のNCBI GenBankアクセッション番号(NP_000871.1、NP_01186815.1、NP_01186816,1、NP_001186817.1、CCCDS4101.1、CCDS6224.1、NM_0008890.3、NM_001199886.1、NM_001199887.1、NM_001199888.1またはUniProt P13232)のいずれかに示される天然に存在するIL-7遺伝子またはタンパク質と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する変種である。
【0022】
本明細書で用いられるように、“サイトカイン受容体様因子2”または“CRLF2”は、ヒトでは遺伝子CRLF2(NCBI Gene ID:64109)によってコードされ、TSLPの受容体であるタンパク質を指す。CRLF2はTSLPおよびIL-7Rアルファとともに機能的複合体を形成し、前記複合体はSTAT3およびSTAT5の活性化を介して細胞の分裂増殖を刺激することができる。CRLF2はまたJAK2を活性化する。CRLF2のタンパク質配列は配列番号:4(UniProt:Q9HC73)として表1に提供される。CRLF2は少なくとも2つのアイソフォーム(NCBI参照配列:NP_001012288.2およびNP_071431.2)として存在することが知られている。CRLF2の完全なコード配列はCCCDS75945.1として提供される。他の転写物変種はNM_001012288.2およびNM_022148.3として提供される。いくつかの実施態様では、本明細書に記載する方法にしたがって検出できるCRLF2遺伝子またはタンパク質は、以下のNCBI GenBankアクセッション番号(NP_001012288.2、NP_071431.2、CCCDS75945.1、NM_001012288.2、NM_022148.3、NCBI Gene ID:64109またはUniProt:Q9HC73)のいずれかに示される天然に存在するCRLF2遺伝子またはタンパク質と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する変種である。
【0023】
本明細書で用いられるように、“インターロイキン7受容体アルファ”または“IL-7Rα”という用語は、ヒトではIL-7Rα遺伝子(NCBI Gene ID:3575)によってコードされ、IL-7の受容体であるタンパク質を指す。IL-7Rαは、TSLPおよびCRLF2とともに機能的複合体を形成し、前記複合体はSTAT3およびSTAT5の活性化を介して細胞の分裂増殖を刺激することができる。CRLF2はまたJAK1を活性化する。IL-7Rαのタンパク質配列は配列番号:5(UniProt:P16871)として表1に提供される。IL-7Rαは少なくとも1つのアイソフォーム(NCBI参照配列:NP_002176.2)として存在することが知られている。IL-7Rαの完全なコード配列はCCCDS3911.1として提供される。他の転写物変種はNM_002185.4として提供される。いくつかの実施態様では、本明細書に記載する方法にしたがって検出できるIL-7Rα遺伝子またはタンパク質は、以下のNCBI GenBankアクセッション番号(NCBI NP_002176.2、CCCDS3911.1、NM_002185.4、NCBI Gene ID:3575またはUniProt:P16871)のいずれかに示される天然に存在するIL-7Rα遺伝子またはタンパク質と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する変種である。
【0024】
本明細書で用いられるように、“上皮増殖因子受容体”または“EGFR”という用語は、ヒトではEGFR遺伝子(NCBI Gene ID:1956)によってコードされ、EGFの受容体であるタンパク質を指す。EGFRの遺伝子配列は配列番号:6(UniProt:P00533)として表1に提供される。EGFRは少なくとも8つのアイソフォームとして存在することが知られている(NCBI参照配列:NCBI NP_001333826.1、NP_00133827.1、NP_00133828.1、NP_00133829.1、NP_00133870.1、NP_ 005219.2、NP_958439.1、NP_958440.1およびNP_958441.1)。EGFRの完全なコード配列はCCCDS5514.1として提供される。他の転写物変種は、NM_005228.4、NM_001346897.1、NM_001346898.1、NM_001346899.1、NM_001346900.1、NM_001346941.1、NM_201282.1、NM_201283.1およびNM_201284.1として提供される。いくつかの実施態様では、本明細書に記載する方法にしたがって検出できるEGFR遺伝子またはタンパク質は、以下のNCBI GenBankアクセッション番号(NP_001333826.1、NP_00133827.1、NP_00133828.1、NP_00133829.1、NP_00133870.1、NP_005219.2、NP_958439.1、NP_958440.1、NP_958441.1、CCCDS5514.1.、NM_005228.4、NM_001346897.1、NM_001346898.1、NM_001346899.1、NM_001346900.1、NM_001346941.1、NM_201282.1、NM_201283.1、NM_201284.1、NCBI Gene ID:1956またはUniProt:P00533)のいずれかに示される天然に存在するEGFR遺伝子またはタンパク質と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する変種である。
【0025】
本明細書で用いられるように、“サイトカインシグナリング抑制因子”または“SOCS”という用語は、JAK-STATシグナリング経路の阻害に関与する8つの遺伝子の1つのファミリーを指す。JAK-STATの機能性の破壊または調節異常は免疫不全症候群および癌をもたらす(Aaronson and Horvath, Science, 296, 5573:1653-5, 2002)。SOCS遺伝子は以下である:サイトカインシグナリング1抑制因子(SOCS1)、サイトカインシグナリング2抑制因子(SOCS2)、サイトカインシグナリング3抑制因子(SOCS3)、サイトカインシグナリング4抑制因子(SOCS4)、サイトカインシグナリング5抑制因子(SOCS5)、サイトカインシグナリング6抑制因子(SOCS6)、サイトカインシグナリング7抑制因子(SOCS7)およびサイトカイン誘発性SH2含有タンパク質(CISH、CIS、G18およびCIS-1としてもまた知られている)。本明細書で示すように、SOCS遺伝子は、シグナリングの妨害(例えばCRLF2またはEGFR経路)およびシグナリング成分の分解によって、サイトカインシグナリングを停止させることができる(例えばTSLP)。
SOCS1(NCBI Gene ID:8651)の発現はサイトカインIL-2、IL-3およびTSLPによって誘発されることが知られている(以下を参照されたい:Trengove and Ward, Am.J.Clin.Exp.Immunol, 2013, Feb 27;2(1):1-29;およびQiu et al, Neoplasia, 2012, Jun;14(6):547-58)。ヒトSOCS1のタンパク質配列は配列番号:7(Uniprot:015524)として表1に提供される。
SOCS2(NCBI Gene ID:9021)の発現はサイトカインGM-CSFおよびIL-10によって誘発されることが知られている。SOCS2タンパク質はインスリン様増殖因子1受容体の細胞質ドメインと相互作用し、IGF1R媒介細胞シグナリングの調節に関与すると考えらる。ヒトSOCS2の遺伝子配列は配列番号:8(Uniprot:014508)として表1に提供される。
SOCS3(NCBI Gene ID:9021)の発現はサイトカインIL-6およびIL-10によって誘発されることが知られている。SOCS3タンパク質はJAK2キナーゼと結合することができ、その活性を阻害する。ヒトSOCS3の遺伝子配列は配列番号:9(Uniprot:014543)として表1に提供される。
CISH(NCBI Gene ID:1154)の発現はサイトカインIL-2、IL-3、GM-CSFおよびEPOによって造血細胞で誘発されることが知られている。CISHタンパク質はサイトカインシグナリングの負のサイトカイン誘発性調節因子である。ヒトCISHの遺伝子配列は配列番号:10(Uniprot:014543)として表1に提供される。
【0026】
本明細書で用いられるように、“癌”という用語は、異常な細胞の無制御な増殖を特徴とする疾患を指す。当該用語は、悪性、良性にかかわらず全ての既知の癌および新形成症状を含み、転移前および転移後を含む癌の全ての病期および悪性度を含む。種々のタイプの癌の例には以下が含まれる:消化系および胃腸管の癌、例えば胃に関する癌(gastric cancer)(例えば胃癌(stomach cancer))、結腸直腸癌、胃腸管間質腫瘍、胃腸管カルチノイド腫瘍、結腸癌、直腸癌、胆管癌、小腸癌、および食道癌;乳癌;肺癌;胆嚢癌;肝臓癌;膵臓癌;虫垂癌;前立腺癌;卵巣癌;腎癌;中枢神経系の癌;皮膚癌(例えばメラノーマ);リンパ腫;神経膠腫;絨毛癌;頭頸部の癌;骨原性肉腫;および血液癌(ただし前記に限定されない)。本明細書で用いられるように、“腫瘍”は1つ以上の癌性細胞を含む。
本明細書で用いられるように、“サイトカイン受容体を発現する癌”という用語は、サイトカイン受容体(またはその変異型)を生成、放出、発現するか、またはサイトカイン受容体の(例えば癌細胞表面での)発現、生成若しくは放出を引き起こす癌細胞を指す。ある実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌は、癌細胞の表面からサイトカイン受容体(または変異型)を生成、放出または発現する癌細胞である。別の実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌は、非癌性細胞からサイトカイン受容体(または変異型)の生成、放出または発現を引き起こす癌細胞を指す。ある実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌は、癌細胞からサイトカイン受容体(または変異型)を偶発的に放出、生成または発現する癌細胞を指す。別の実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌は、転移、細胞分裂または細胞修復中にサイトカイン受容体(または変異型)を生成、放出または発現する癌細胞を指す。別の実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌は、刺激、感染または炎症の結果としてサイトカイン受容体(または変異型)を生成、放出または発現する癌細胞を指す。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌は以下の癌から選択される:癌腫、白血病、リンパ腫、骨髄腫、肉腫、または中皮腫。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌は、膀胱癌、乳癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、食道癌、胃腸管の癌、膵臓癌、結腸直腸癌、結腸癌、腎癌、頭頸部の癌、肺癌、胃癌、生殖細胞癌、骨癌、肝臓癌、甲状腺癌、皮膚癌(例えばメラノーマ)、中枢神経系の新形成、リンパ腫、白血病、骨髄腫、または肉腫である。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌は固形腫瘍である(例えば肺、子宮頸または卵巣の固形腫瘍)。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌は血液癌(例えば白血病、リンパ腫、または骨髄腫)である。ある実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌は白血病である。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌には急性リンパ芽球性白血病(ALL)が含まれる。ある実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌は、B細胞型ALL、フィラデルフィア染色体様急性リンパ芽球性白血病(Ph様B細胞型ALL)、T細胞型ALL、または急性骨髄性白血病である。ある実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌は、ヒト成人または年少者の骨髄若しくはリンパ系に存在する白血病細胞である。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌は、ラテンアメリカ系ヒト成人または年少者の骨髄若しくはリンパ系に存在する白血病細胞である。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌は、JAK-STAT経路と密接に関係する。ある実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌は、サイトカイン受容体IL-7Rアルファ(IL-7Rα)またはその変異型を発現する。別の実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌は、サイトカイン受容体CRLF2またはその変異型を発現する。別の実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌は、サイトカイン受容体EGFRまたはその変異型を発現する。
【0027】
いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体を発現する癌は、1つ以上の癌細胞から放出されるサイトカイン受容体のレベルを測定することによって決定できる。いくつかの実施態様では、癌細胞によって発現されるサイトカイン受容体の量は、血漿または血清サンプルを用いてin vitroで測定できる(例えば以下を参照されたい:Ho et al., Cancer Epidermiol.Biomarkers Prev.2014 Jan:23(1):179-188)。ある実施態様では、癌細胞によって発現されるサイトカイン受容体の量は、フローサイトメトリーを用いてin vitroで測定できる。さらに他の実施態様では、癌細胞によって発現されるサイトカイン受容体の量は、サイトカイン検出アッセイ、ELISAアッセイ(例えばヒトインターロイキン用)、ELISpotアッセイ(例えばラットインターフェロン用)、抗体アレー、ビーズによるアレー、またはマウスのためのサイトカインアレー(例えば細胞培養または血清サンプルを用いる)を用いて検出できる。
本明細書で用いられるように、“CRLF2を発現する癌”という用語は、サイトカイン受容体、サイトカイン受容体様因子2(CRLF2)(野生型または変異型のどちらか)の発現の検出可能なレベルを有する癌を指す。いくつかの実施態様では、癌組織サンプルの細胞の少なくとも0.1%がCRLF2発現について陽性であるとき、癌はCRLF2の発現の検出可能レベルを有する。いくつかの実施態様では、CRLF2を発現する癌は、コントロールのCRLF2発現レベルよりも少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、または200%高いCRLF2発現レベルを有する(コントロールは、例えばCRLF2を発現しない無病性細胞若しくは組織またはCRLF2を発現しないことが判明している癌タイプである)。
【0028】
本明細書で用いられるように、“CRLF2の過剰発現を特徴とする癌”という用語は、コントロールサンプルまたは細胞(例えば1つ以上の非癌性細胞)のCRLF2発現と比較して、CRLF2を少なくとも4倍過剰発現する癌(例えば1つ以上の癌細胞)を指す(以下を参照されたい:Harvey et al., Blood, 2010 Jul 1:115(26):5312-21;およびGe et al., Oncotarget, 2016 Aug 2;7(31):49722-49732)。いくつかの実施態様では、CRLF2の過剰発現は、コントロールサンプルまたは細胞(例えば1つ以上の非癌性細胞)のCRLF2発現と比較して少なくとも4、5、10、15、20、25、50、75、100倍または100倍より高い。ある実施態様では、CRLF2の過剰発現を特徴とする癌は、癌細胞の表面でCRLF2またはCRLF2の変異型を発現する癌である。CRLF2の過剰発現(例えば、正常組織または同じタイプのコントロールサンプルのCRLF2の平均mRNA発現と比較して4倍以上のCRLF2のmRNA発現の増加(Harvey et al., Blood, 2010 Jul 1:115(26):5312-21;およびGe et al., Oncotarget, 2016 Aug 2;7(31):49722-49732))は、明瞭な臨床生物学的特徴および予後不良と密接に関係する。CRLF2はしたがって、特に急性リンパ芽球性白血病で適切な予後判定マーカーである(以下を参照されたい:Chiaretti et al., Leukemia Research, 41, Feb.2016: 36-42)。CRLF2 mRNAまたはタンパク質の発現の定量は、定量RT-PCRおよびフローサイトメトリーを含む(ただし前記に限定されない)当業界で公知の多様な方法によって検出できる(以下を参照されたい:Russell et al., Blood.2009;114(13):2693)。
【0029】
ある実施態様では、CRLF2を発現する癌は、癌細胞表面からCRLF2またはCRLF2の変異型を発現する癌細胞である。いくつかの実施態様では、CRLF2またはCRLF2の変異型を発現する癌は、癌腫、白血病、リンパ腫、骨髄腫、肉腫または中皮腫から選択される。いくつかの実施態様では、CRLF2を発現する癌は、膀胱癌、乳癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、食道癌、胃腸管の癌、膵臓癌、結腸直腸癌、結腸癌、腎癌、頭頸部の癌、肺癌、胃癌、生殖細胞癌、骨癌、肝臓癌、甲状腺癌、皮膚癌(例えばメラノーマ)、中枢神経系の新形成、リンパ腫、白血病、骨髄腫、または肉腫である。いくつかの実施態様では、CRLF2を発現する癌は固形腫瘍である(例えば肺、子宮頸または卵巣の固形腫瘍)。いくつかの実施態様では、CRLF2を発現する癌は血液癌(例えば白血病、リンパ腫、または骨髄腫)である。ある実施態様では、CRLF2を発現する癌は白血病である。いくつかの実施態様では、CRLF2を発現する癌は急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。ある実施態様では、CRLF2を発現する癌は、B細胞型ALL、フィラデルフィア染色体様急性リンパ芽球性白血病(Ph様B細胞型ALL)、T細胞型ALL、または急性骨髄性白血病である。高レベルCRLF2(例えばmRNAまたはタンパク質の発現で数倍の増加)は、明瞭な臨床生物学的特徴および予後不良と密接に関係する。CRLF2は、B-ALLではそのサブタイプにしたがって異なる頻度で過剰発現するようである(Russell et al., Blood.2009;114(13):2688-98)。加えて、CRLF2の過剰発現はトリソミー21を有する患者で特に発癌と関係している(Mulligan et al., Nat.Genet.2009;41(11):1243-6)。CRLF2はしたがって特に急性リンパ芽球性白血病で適切な予後判定マーカーである(以下を参照されたい:Chiaretti et al., Leukemia Research, 41, Feb.2016: 36-42)。CRLF2の定量は、定量RT-PCRまたはフローサイトメトリーによるCRLF2 mRNA発現の測定を含む(ただし前記に限定されない)多様な方法によって検出できる(以下を参照されたい:Russell et al., Blood.2009;114(13):2693)。
【0030】
本明細書で用いられるように、“EGFRを発現する癌”という用語は、サイトカイン受容体、上皮増殖因子受容体(EGFR)(野生型または変異型のどちらか)の発現の検出可能なレベルを有する癌を指す。いくつかの実施態様では、癌組織サンプルの細胞の少なくとも0.1%がEGFR発現について陽性であるとき、癌はEGFRの発現の検出可能レベルを有する。いくつかの実施態様では、EGFRを発現する癌は、コントロールのEGFR発現レベルよりも少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、または200%高いEGFR発現レベルを有する(コントロールは、例えばEGFRを発現しない無病性細胞若しくは組織またはEGFRを発現しないことが判明している癌タイプである)。
本明細書で用いられるように、“EGFRの過剰発現を特徴とする癌”という用語は、コントロールサンプルまたは細胞(例えば1つ以上の非癌性細胞)のEGFR発現と比較してEGFRを過剰発現する癌(例えば1つ以上の癌細胞)を指す。いくつかの実施態様では、EGFRの過剰発現は、コントロールサンプルまたは細胞(例えば1つ以上の非癌性細胞)のEGFR発現と比較して少なくとも4、5、10、15、20、25、50、75、100倍または100倍より高い。ある実施態様では、EGFRの過剰発現を特徴とする癌は、癌細胞の表面でEGFRまたはEGFRの変異型を正常な(非癌性)組織よりも高い(例えば統計的に有意な)レベルで発現する癌である。EGFR mRNAまたはタンパク質の発現の定量は、定量RT-PCR、免疫組織化学およびフローサイトメトリーを含む(ただし前記に限定されない)当業界で公知の多様な方法によって検出できる(以下を参照されたい:Mitsuhashi et al., Gynecologic Oncology, 2003, 89:480-485;およびDennis et al., Cancer Research, 2004, 64:2047-53)。
ある実施態様では、EGFRを発現する癌は、癌細胞表面からEGFRまたはEGFRの変異型を発現する癌細胞である。いくつかの実施態様では、EGFRまたはEGFRの変異型を発現する癌は、癌腫、白血病、リンパ腫、骨髄腫、肉腫または中皮腫から選択される。いくつかの実施態様では、EGFRを発現する癌は、膀胱癌、乳癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、食道癌、胃腸管の癌、膵臓癌、結腸直腸癌、結腸癌、腎癌、頭頸部の癌、肺癌、胃癌、生殖細胞癌、骨癌、肝臓癌、甲状腺癌、皮膚癌(例えばメラノーマ)、中枢神経系の新形成、リンパ腫、白血病、骨髄腫、または肉腫である。いくつかの実施態様では、EGFRを発現する癌は固形腫瘍である(例えば肺、子宮頸または卵巣の固形腫瘍)。いくつかの実施態様では、EGFRを発現する癌は血液癌(例えば白血病、リンパ腫、または骨髄腫)である。ある実施態様では、EGFRを発現する癌は白血病である。
【0031】
本明細書で用いられるように、“IL-7Rαを発現する癌”という用語は、サイトカイン受容体、インターロイキン7受容体アルファ(IL-7R-α)(野生型または変異型のどちらか)の発現の検出可能なレベルを有する癌を指す。いくつかの実施態様では、癌組織サンプルの細胞の少なくとも0.1%がIL-7Rα発現について陽性であるとき、癌はIL-7Rαの発現の検出可能レベルを有する。いくつかの実施態様では、IL-7Rαを発現する癌は、コントロールのIL-7Rα発現レベルよりも少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、または200%高いIL-7Rα発現レベルを有する(コントロールは、例えばIL-7Rαを発現しない無病性細胞若しくは組織またはIL-7Rαを発現しないことが判明している癌タイプである)。
本明細書で用いられるように、“IL-7Rαの過剰発現を特徴とする癌”という用語は、コントロールサンプルまたは細胞(例えば1つ以上の非癌性細胞)のIL-7Rα発現と比較してより高い(例えば統計的に有意な)レベルでIL-7Rαまたは変異型IL-7Rαを過剰発現する癌(例えば1つ以上の癌細胞)を指す。いくつかの実施態様では、IL-7Rαの過剰発現は、コントロールサンプルまたは細胞(例えば1つ以上の非癌性細胞)のIL-7Rα発現と比較して少なくとも4、5、10、15、20、25、50、75、100倍または100倍より高い。ある実施態様では、IL-7Rαの過剰発現を特徴とする癌は、癌細胞の表面でIL-7RαまたはIL-7Rαの変異型を発現する癌である。IL-7Rα mRNAまたはタンパク質の発現の定量は、フローサイトメトリーを含む(ただし前記に限定されない)当業界で公知の多様な方法によって検出できる(以下を参照されたい:Ryan et al., Blood.1997;89:929-940)。
【0032】
ある実施態様では、IL-7Rαを発現する癌は、癌細胞表面からIL-7RαまたはIL-7Rαの変異型を発現する癌細胞である。いくつかの実施態様では、IL-7RαまたはIL-7Rαの変異型を発現する癌は、癌腫、白血病、リンパ腫、骨髄腫、肉腫または中皮腫から選択される。いくつかの実施態様では、IL-7Rαを発現する癌は、膀胱癌、乳癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、食道癌、胃腸管の癌、膵臓癌、結腸直腸癌、結腸癌、腎癌、頭頸部の癌、肺癌、胃癌、生殖細胞癌、骨癌、肝臓癌、甲状腺癌、皮膚癌(例えばメラノーマ)、中枢神経系の新形成、リンパ腫、白血病、骨髄腫、または肉腫である。いくつかの実施態様では、IL-7Rαを発現する癌は固形腫瘍である(例えば肺、子宮頸または卵巣の固形腫瘍)。いくつかの実施態様では、IL-7Rαを発現する癌は血液癌(例えば白血病、リンパ腫、または骨髄腫)である。ある実施態様では、IL-7Rαを発現する癌は白血病である。いくつかの実施態様では、IL-7Rαを発現する癌は急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。ある実施態様では、IL-7Rαを発現する癌は、B細胞型ALL、フィラデルフィア染色体様急性リンパ芽球性白血病(Ph様B細胞型ALL)、T細胞型ALL、または急性骨髄性白血病である。
【0033】
2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の関係で、“同一”または“パーセント同一性”という用語は、指定された領域にわたって同じであるか、または同じであるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドの指定されたパーセンテージ(例えば約60%同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99%より高い同一性)を有する2つ以上の配列を指す。ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列を比較しパーセント同一性を決定する方法は当業界で記載されている。例えば以下を参照されたい:Roberts et al., BMC Bioinformatics, 7:382, 2006(前記は参照によって本明細書に含まれる)。
“タンパク質”および“ポリペプチド”という用語は本明細書では互換的に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。本明細書で用いられるように、前記用語は任意の長さのアミノ酸鎖(完全長タンパク質および切詰めタンパク質を含む)を包含する。
本明細書で用いられるように、“化合物”という用語は、任意の分子(天然に存在するかまたは合成である)、例えばペプチド、タンパク質、オリゴペプチド(例えば、長さが約5から約300アミノ酸、好ましくは長さが約10から200または20から100アミノ酸、好ましくは長さが12、15または18アミノ酸)、小さな有機分子、多糖類、ペプチド、環状ペプチド、ペプチド模倣物、脂質、脂肪酸、siRNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドなどである。
本明細書で用いられるように、“アナログ”は親化合物の構造的誘導体である化合物を指し、アナログは1つ以上の原子または官能基が親化合物と異なる。いくつかの実施態様では、アナログは、親化合物と比較して匹敵するかまたは優れた安定性、可溶性、有効性、半減期などを有する。
【0034】
本明細書で用いられるように、“対象”は哺乳動物であり、いくつかの実施態様では人間である。哺乳動物にはまた農場動物(例えば乳牛、ブタ、ウマ、ニワトリなど)、スポーツ動物、ペット、霊長動物、ウマ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットが含まれ得るが、ただし前記に限定されない。
本明細書で用いられるように、“サンプル”は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物から入手される身体組織または体液を指す。いくつかの実施態様では、サンプルは、血液、血液分画、または血液生成物(例えば血清、血漿、血小板、赤血球、循環血単核細胞など)、喀痰または唾液、糞便、尿、他の生物学的液体(例えばリンパ液、唾液、前立腺液、胃液、腸液、腎臓液、肺臓液、脳脊髄液など)、組織(例えば腎臓、肺臓、肝臓、心臓、脳、神経組織、甲状腺、眼、骨格筋、軟骨、または骨組織)、または培養細胞(例えば初代培養、外植片、形質転換細胞または幹細胞)を含む。いくつかの実施態様では、サンプルは血液を含む。
本明細書で用いられるように、“治療”、“治療の”および“治療する”という用語は、損傷、疾患または症状の治療若しくは改善における成功を証する任意の表示を指し、例えば以下を含む任意の客観的または主観的パラメーターが含まれる:徴候の軽減、緩解、減少、または損傷、疾患若しくは症状に対する対象の更なる耐性化;悪化または衰弱の減速;悪化最終点の衰弱度の改善;および/または対象の身体的または精神的満足度の改善。
本明細書で用いられるように、“医薬組成物”という用語は、対象への投与に適切な組成物を指す。一般的には、医薬組成物は無菌的であり、好ましくは対象との望ましくない応答を引き出し得る夾雑物を含まない。医薬組成物は、その必要がある対象へ多数の異なる投与ルートを介して投与するために設計することができ、前記投与ルートには経口、静脈内、頬部、直腸、非経口、腹腔内、皮内、気管内、筋肉内、皮下、吸入などが含まれる。
【0035】
III.診断および検出方法
ある特徴では、対象が癌を有すると診断する方法または対象で癌を検出する方法が提供される。いくつかの実施態様では、本明細書に記載する方法は、癌(例えば白血病および固形腫瘍)の診断または検出に関する。いくつかの実施態様では、本明細書に記載する方法は、サイトカイン受容体(例えばEGFR、CRLF2および/またはIL-7Rα)を発現する癌の診断または検出に関する。別の特徴では、対象からのサンプルで癌を診断または検出する方法は、サンプルのCRLF2、EGFRおよび/またはIL-7Rαの過剰発現と密接に関係することが見出された。
本明細書に記載するように、CRLF2、EGFRおよび/またはIL-7Rαの発現は、癌細胞(例えば白血病および固形腫瘍)で調節異常となることが見出された。したがって、ある特徴では、本開示は以下の工程によって対象で癌を診断する方法を提供する:対象からのサンプルを、サンプルの細胞の表面で発現されるCRLF2と結合する抗体と接触させる工程、およびサンプルのCRLF2を検出してそれによって対象で癌を診断する工程。いくつかの実施態様では、当該方法はさらにまた、サンプルのCRLF2の結合をコントロールサンプル(例えば、癌を持たないことが判明している健康な対象からのサンプル)と比較する工程を含み、ここで、コントロールサンプルと比較してサンプルのCRLF2の結合が増加すれば、当該サンプルが得られた対象は癌を有すると認定する。
別の特徴では、本開示は以下の工程によって対象で癌を診断する方法を提供する:対象からのサンプルを、サンプルの細胞の表面で発現されるIL-7Rαと結合する抗体と接触させる工程、およびサンプルのIL-7Rαを検出してそれによって対象で癌を診断する工程。いくつかの実施態様では、当該方法はさらにまた、サンプルのIL-7Rαの結合をコントロールサンプル(例えば、癌を持たないことが判明している健康な対象からのサンプル)と比較する工程を含み、ここで、コントロールサンプルと比較してサンプルのIL-7Rαの結合が増加すれば、当該サンプルが得られた対象は癌を有すると認定する。
【0036】
本明細書に記載するように、CRLF2およびIL-7Rαの発現はある種の形態の癌(白血病および固形腫瘍を含む)で調節異常となることが見出されている。したがって、ある特徴では、本開示は、CRLF2およびIL-7Rαとそれぞれ抗CRLF2および抗IL-7Rαとの結合により測定される、CRLF2およびIL-7Rαタンパク質の一方若しくは両方の発現レベルにおける変化を対象からのサンプルで検出することによって、これらのサイトカイン受容体の1つ以上を発現する癌サブタイプを診断する方法を提供する。いくつかの実施態様では、前記方法は、対象からのサンプルを抗CRLF2および/または抗IL-7Rα抗体と接触させる工程、およびサンプルのCRLF2およびIL-7Rαタンパク質を検出する工程を含み、それによって対象で癌を診断する。
いくつかの実施態様では、検出工程は、サンプル中の細胞の表面のCRLF2および/またはIL-7Rαタンパク質と抗CRLF2および/または抗IL-7Rα抗体との結合のレベルを対象からのサンプルにおいて測定する工程;および対象からのサンプルのCRLF2および/またはIL-7Rαタンパク質と抗CRLF2および/または抗IL-7Rα抗体との結合のレベルをコントロールサンプル(例えば癌を持たないことが判明している健康な対象)と比較する工程を含み(ただし前記に限定されない)、ここで、コントロールサンプルと比較して対象でサンプルのCRLF2および/またはIL-7Rαタンパク質と抗CRLF2および/または抗IL-7Rα抗体との結合が増加すれば、対象は癌を有すると認定する。
いくつかの実施態様では、いったん対象が、CRLF2および/またはIL-7Rαタンパク質と抗CRLF2および/または抗IL-7Rα抗体との結合で結合増加を有すると認定され癌を有すると認定されたら、当該方法はさらにまた、1つ以上の治療介入を対象に施す工程を含む。いくつかの実施態様では、治療介入は下記のセクションVに記載する介入である。
【0037】
別の特徴では、対象からのサンプルおけるCRLF2および/またはIL-7Rαの発現レベル、およびCRLF2および/またはIL-7Rαの活性レベルを検出する方法が提供される。いくつかの実施態様では、CRLF2および/またはIL-7Rαの発現レベルを検出する方法が提供される。いくつかの実施態様では、当該方法は、対象からサンプルを入手する工程、および(i)CRLF2ポリヌクレオチド(例えばmRNA)またはタンパク質の発現レベルおよび(ii)IL-7Rαポリヌクレオチド(例えばmRNA)またはタンパク質の発現レベルの一方または両方を対象からのサンプルで測定する工程を含む。いくつかの実施態様では、測定工程は、CRLF2および/またはIL-7Rαの細胞表面の発現レベルを検出する工程を含む。
いくつかの実施態様では、CRLF2および/またはIL-7Rαの活性レベルを検出する方法が提供される。いくつかの実施態様では、当該方法は、対象からサンプルを入手する工程、および(i)STAT5のリン酸化のレベルおよび(ii)リボソームタンパク質S6のリン酸化のレベルの1つ以上を対象からのサンプルで測定する工程を含む。
いくつかの実施態様では、当該方法は、CRLF2ポリヌクレオチド(例えばmRNA)のレベルを測定する工程を含む。いくつかの実施態様では、当該方法は、CRLF2タンパク質のレベルを測定する工程を含む。いくつかの実施態様では、対象(本明細書では“試験対象”とも称される)は、当該対象が参照値を超えるCRLF2 mRNAまたはタンパク質の発現レベルを有するならば、癌を有すると診断される。参照値は、例えば、試験対象と齢が適合する健康な対象の集団のCRLF2 mRNAまたはタンパク質の発現レベルから決定される。いくつかの実施態様では、対象からのサンプルのCRLF2 mRNAまたはタンパク質のレベルが、参照値と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または90%より多く増加するならば、当該対象は癌を有すると診断される。いくつかの実施態様では、対象からのサンプルのCRLF2 mRNAまたはタンパク質のレベルが、参照値と比較して少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、または10倍より多く増加するならば、当該対象は癌を有すると診断される。
【0038】
いくつかの実施態様では、当該方法は、IL-7Rαポリヌクレオチド(例えばmRNA)のレベルを測定する工程を含む。いくつかの実施態様では、当該方法は、IL-7Rαタンパク質のレベルを測定する工程を含む。いくつかの実施態様では、対象(本明細書では“試験対象”とも称される)は、当該対象が参照値を超えるIL-7Rα mRNAまたはタンパク質の発現レベルを有するならば、癌(例えば白血病または固形腫瘍)を有すると診断される。参照値は、例えば、試験対象と齢が適合する健康な対象の集団のIL-7Rα mRNAまたはタンパク質の発現レベルから決定される。いくつかの実施態様では、対象からのサンプルのIL-7Rα mRNAまたはタンパク質のレベルが、参照値と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または90%より多く増加するならば、当該対象は癌を有すると診断される。いくつかの実施態様では、対象からのサンプルのIL-7Rα mRNAまたはタンパク質のレベルが、参照値と比較して少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、または10倍より多く増加するならば、当該対象は癌を有すると診断される。
【0039】
ポリヌクレオチド発現の測定
いくつかの実施態様では、ポリヌクレオチド(例えばmRNA)の発現レベルはCRLF2およびIL-7Rαの一方または両方について決定される。ポリヌクレオチド(例えばmRNA)発現は日常的な技術を用いて分析することができる。前記技術は例えば以下である:逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムRT-PCR)、半定量RT-PCR、定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、多重化分枝DNA(bDNA)アッセイ、マイクロアレーハイブリダイゼーション、または配列分析(例えばRNAシーケンシング(“RNA-Seq”))。ポリヌクレオチド発現の定量の方法は例えば以下に記載されている:Fassbinder-Orth, Integrative and Comparative Biology, 2014, 54:396-406;Thellin et al., Biotechnology Advances, 2009, 27:323-333;およびZheng et al., Clinical Chemistry, 2006, 52:7(doi: 10/1373/clinchem.2005.065078)。
いくつかの実施態様では、リアルタイム若しくは定量PCRまたはRT-PCRを用い、生物学的サンプルにおいてポリヌクレオチド(例えばmRNA)のレベルを測定する。例えば以下を参照されたい:Nolan et al., Nat.Protoc, 2006, 1:1559-1582;Wong et al., BioTechniques, 2005, 39:75-75。遺伝子発現測定のための定量PCRおよびRT-PCRアッセイはまた市場で入手できる(例えばTaqMan(商標)遺伝子発現アッセイ(ThermoFisher Scientific))。
【0040】
いくつかの実施態様では、ポリヌクレオチド(例えばmRNA)発現はシーケンシングによって測定される。配列分析の非限定的な例には以下が含まれる:サンガーシーケンシング、キャピラリーアレーシーケンシング、サーマルサイクルシーケンシング(Sears et al., Biotechniques, 13:626-633, 1992)、固相シーケンシング(Zimmerman et al., Methods Mol.Cell Biol., 3:39-42, 1992)、質量分析法利用シーケンシング、例えばマトリックス支援レーザー脱離イオン化タイムオブフライト質量分析法(MALDI-TOF/MS;Fu et al., Nature Biotech., 16:381-384, 1998)、ハイブリダイゼーションによるシーケンシング(Drmanac et al., Nature Biotech., 16:54-58, 1998)、および“次世代シーケンシング”。次世代シーケンシングには以下が含まれる:合成によるシーケンシング(例えばHiSeqTM、MiSeqTM、またはGenome Analyzer(前記は各々Illuminaから入手できる))、ライゲーションによるシーケンシング(例えばSOLiDTM(Life Technologies))、イオン半導体シーケンシング(例えばIon TorrentTM(Life Technologies))、およびピロシーケンシング(例えば454TMシーケンシング(Roche Diagnostics))(ただし前記に限定されない)。例えば以下を参照されたい:Liu et al., J.Biomed Biotechnol, 2012, 2012:251364(前記は参照によって本明細書に含まれる)。いくつかの実施態様では、ポリヌクレオチド発現はRNA-Seq技術によって測定される。例えば以下を参照されたい:Finotello et al., Briefings in Functional Genomics, 2014, doi:10.1093/bfgp/elu035;およびMortazavi et al., Nat Methods, 2008, 5:621-628。
本明細書に記載するアッセイ(直接または間接検出)では検出可能部分を用いることができる。多様な検出可能部分を用いることができ、要求される感度、プローブとの複合物化の容易さ、安定性要件、および利用可能な機器類および廃棄条件にしたがって標識が選択される。適切な検出可能部分には以下が含まれる:放射性核種、蛍光色素(例えばフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、オレゴングリーンTM、ローダミン、テキサスレッド、テトラローダミンイソチオシアネート(TRITC)、Cy3、Cy5など)、蛍光マーカー(例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、フィコエリトリンなど)、腫瘍関連プロテアーゼによって活性化される自己消光蛍光化合物、酵素(例えばルシフェラーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、ナノ粒子、ビオチン、ジゴキシゲニン、金属など(ただし前記に限定されない)。
【0041】
タンパク質発現の測定
いくつかの実施態様では、タンパク質発現のレベルはCRLF2、IL-7Rα、リン酸化STAT5およびリン酸化リボソームタンパク質S6の1つ以上について決定される。タンパク質発現は日常的な技術を用いてサンプル中で検出することができる。前記技術は、例えば免疫アッセイ、二次元ゲル電気泳動、および定量的質量分析であり、それらは当業者には公知である。タンパク質定量技術は以下に概説されている:“Strategies for Protein Quantitation,” Principles of Proteomics, 2nd Edition, R.Twyman, ed., Garland Science, 2013。いくつかの実施態様では、タンパク質発現は免疫アッセイによって検出される。免疫アッセイは例えば以下である:酵素免疫アッセイ(EIA)、例えば酵素増幅免疫アッセイ(EMIT)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、IgM抗体捕捉ELISA(MAC ELISA)および微粒子酵素免疫アッセイ(MEIA);キャピラリー電気泳動免疫アッセイ(CEIA);放射性免疫アッセイ(RIA);放射能測定免疫アッセイ(IRMA);免疫蛍光(IF);蛍光極性化免疫アッセイ(FPIA);および化学発光アッセイ(CL)(ただしこれらに限定されない)。所望の場合は、そのような免疫アッセイは自動化することができる。免疫アッセイはまたレーザー誘発蛍光と結合させて用いることができる(例えば以下を参照されたい:Schmalzing et al., Electrophoresis, 18:2184-93 (1997); Bao, J.Chromatogr.B.Biomed.Sci., 699:463-80, 1997)。
【0042】
抗体とタンパク質との特異的な免疫学的結合は直接的にまたは間接的に検出することができる。直接標識には、蛍光若しくは発光タグ、金属、色素、放射性核種などが含まれ、これらは抗体に結合される。ヨウ素-125(125I)で標識した抗体を用いることができる。タンパク質マーカーに特異的な化学発光抗体を用いる化学発光アッセイは、タンパク質レベルの鋭敏で非放射性検出に適切である。蛍光色素で標識された抗体もまた適切である。蛍光色素の例には、DAPI、フルオレセイン、ヘキスト33258、R-フィコシアニン、B-フィコエリトリン、R-フィコエリトリン、ローダミン、テキサスレッド、およびリサミンが含まれるが、ただし前記に限定されない。間接標識には当業界で周知の多様な酵素、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼなどが含まれる。セイヨウワサビペルオキシダーゼ検出系は、例えば、発色基質テトラメチルベンジジン(TMB)とともに用いることができる(TMBは、過酸化水素の存在下で450nmで検出できる可溶性生成物を産する)。アルカリホスファターゼ検出系は、例えば、発色基質リン酸p-ニトロフェニルとともに用いることができる(405nmで容易に検出できる可溶性生成物を産する)。同様に、β-ガラクトシダーゼ検出系は発色基質o-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド(ONPG)とともに用いることができる(410nmで検出できる可溶性生成物を産することができる)。ウレアーゼ検出系は、例えばウレア-ブロモクレゾール(Sigma Immunochemicals; St.Louis, MO)のような基質とともに用いることができる。
【0043】
直接または間接標識のシグナルは、例えば、発色基質の色を検出する分光光度計、放射線計測機(例えば125Iを検出するガンマ計測機)、または一定の波長の光の存在下で蛍光を検出する蛍光光度計を用いて分析することができる。酵素結合抗体の検出のためには、分光光度計、例えばEMAXマイクロプレートリーダー(Molecular Devices; Menlo Park, CA)を製造業者の指示にしたがって用い定量的分析を実施することができる。所望の場合には、アッセイを自動化するかまたはロボット制御で実施して、多数のサンプルのシグナルを同時に検出できる。いくつかの実施態様では、自動化ハイコンテント画像化系を用いてシグナルの量を定量することができる。ハイコンテント画像化系は市場で入手することができる(例えば、ImageXpress, Molecular Devices Inc., Sunnyvale, CA)。
【0044】
抗体は多様な固体支持体に固定することができる。固体支持体は、例えば、磁性若しくはクロマトグラフィーマトリックス粒子、アッセイプレート(例えばマイクロタイタープレート)の表面、固体基礎材若しくは膜の断片(例えばプラスチック、ナイロン、紙)などである。有用な物理様式は、別々に区別された行先指定可能な複数の場所を有する表面、例えばタンパク質マイクロアレーまたは“タンパク質チップ”(例えば以下を参照されたい:Ng et al., J.Cell Mol.Med., 6:329-340, 2002)およびある種のキャピラリー装置(例えば米国特許6,019,944号を参照されたい)を含む。これらの実施態様では、別々に区別される表面の各場所は、各場所で1つ以上の検出用タンパク質マーカーを固定するために抗体を含むことができる。表面はまた別に1つ以上の別個の粒子(例えば微粒子またはナノ粒子)を含み、前記粒子は表面の別々に区別された場所に固定され、当該微粒子は1つ以上の検出用タンパク質マーカーを固定するために抗体を含む。
分析は多様な物理様式で実施することができる。例えば、マイクロタイタープレートの使用および自動化を用いれば、多数の試験サンプルの処理を促進できよう。
【0045】
いくつかの実施態様では、タンパク質発現は定量的質量分析によって検出される。前記分析は例えば、スペクトル計測MS、イオン強度MS、代謝標識(例えば、細胞培養でのアミノ酸による安定同位元素標識(SILAC)、酵素標識、同位元素標識(例えば同位元素コードタンパク質標識(ICPL)または同位元素コード親和性タグ(ICAT))および同重体標識(例えばタンデム質量タグ(TMT)または絶対および相対定量のための同重体タグ(iTRAQ))であるが、ただし前記に限定されない。例えば以下を参照されたい:Bantscheff et al., Anal Bioanal Chem, 2012, 404:949(doi:10.1007/s00216-012-6203-4);およびNikolov et al., Methods in Molecular Biology, 2012, 893:85-100。
いくつかの実施態様では、本明細書に開示する診断および検出方法は、対象の細胞サンプル中のCRLF2および/またはIL-7Rαの増量について検出する工程を含む。いくつかの実施態様では、当該方法は、サンプル(例えば血液サンプル(例えば末梢血単核球を含むサンプル))でフローサイトメトリーを実施し、CRLF2および/またはIL-7Rαのレベルを定量する工程を含む。いくつかの実施態様では、対象からのサンプルにおいてCRLF2および/またはIL-7Rαの蛍光を示す細胞が、参照値(例えば健康な対象の集団について決定された値)と比較して、またはコントロール(例えば癌を持たないと判明している健康な対象)のサンプルと比較して増加すれば、患者は癌を有すると診断される。いくつかの実施態様では、対象からのサンプルにおいて少なくとも約25%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、または70%より多い細胞がCRLF2および/またはIL-7Rαの蛍光を示すならば、患者は癌を有すると診断される。
【0046】
いくつかの実施態様では、対象が癌を有すると診断する方法はさらにまた、対象からのサンプル中の抗CRLF2抗体と結合するCRLF2のレベルを検出する工程を含む。CRLF2タンパク質結合は、免疫アッセイ、例えばウェスタンブロッティング、免疫沈澱、免疫蛍光顕微鏡法、ELISA、フローサイトメトリーなどによって測定でき、CRLF2に特異的な抗体が用いられる。いくつかの実施態様では、CRLF2結合は、フローサイトメトリーによって測定される(例えば図13C参照)。CRLF2に対する抗体は当業界では公知であり、例えば以下の業者から市場で入手できる:BioLegend(San Diego, CA)(例えばカタログ番号660203、660202および651101)およびNovus Biologicals(Littleton, CO)(例えばカタログ番号AF981、MAB981、NBP2-29613およびNBP1-76794)。いくつかの実施態様では、CRLF2のレベルが、参照値(例えば健康な対象の集団について決定された値)と比較して、またはコントロールサンプル(例えば癌を持たないと判明している健康な対象)のCRLF2結合のレベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または90%より多く増加するならば、患者は癌を有すると診断される。
【0047】
いくつかの実施態様では、対象が癌を有すると診断する方法はさらにまた、対象からのサンプル中の抗IL-7Rα抗体と結合するIL-7Rαのレベルを検出する工程を含む。IL-7Rαタンパク質結合は、免疫アッセイ、例えばウェスタンブロッティング、免疫沈澱、免疫蛍光顕微鏡法、ELISA、フローサイトメトリーなどによって測定でき、IL-7Rαに特異的な抗体が用いられる。いくつかの実施態様では、IL-7Rα結合は、フローサイトメトリーによって測定される(例えば図14参照)。IL-7Rαに対する抗体は当業界では公知であり、例えば以下の業者から市場で入手できる:BioLegend(San Diego, CA)(例えばカタログ番号351315、351347、351311、351346、351323)およびNovus Biologicals(Littleton, CO)(例えばカタログ番号DDX0700P-100、NBP2-22376、AF5607およびMAB4774)。いくつかの実施態様では、IL-7Rαのレベルが、参照値(例えば健康な対象の集団について決定された値)と比較して、またはコントロールサンプル(例えば癌を持たないと判明している健康な対象)のIL-7Rα結合のレベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または90%より多く増加するならば、患者は癌を有すると診断される。
【0048】
いくつかの実施態様では、対象が癌を有すると診断する方法はさらにまた、対象からのサンプル中のSTAT5のリン酸化のレベルについて測定する工程を含む。STAT5のリン酸化は、免疫アッセイ、例えばウェスタンブロッティング、免疫沈澱、免疫蛍光顕微鏡法、ELISAなどによって測定でき、STAT5の1つ以上のリン酸化残基に特異的なリン酸特異的抗体が用いられる。いくつかの実施態様では、STAT5リン酸化は、フローサイトメトリーを用いてリンタンパク質分析によって測定される(例えば図13C参照)。STST5に対するリン特異的抗体は当業界では公知であり、例えば以下の業者から市場で入手できる:BioLegend(San Diego, CA)(例えばカタログ番号660203、660202および651101)。いくつかの実施態様では、STAT5リン酸化のレベルが、参照値(例えば健康な対象の集団について決定された値)と比較して、またはコントロールサンプル(例えば癌を持たないと判明している健康な対象)のSTAT5リン酸化のレベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または90%より多く増加するならば、患者は癌を有すると診断される。
【0049】
いくつかの実施態様では、対象が癌を有すると診断する方法はさらにまた、対象からのサンプル中のリボソームS6のリン酸化のレベルについて測定する工程を含む。リボソームS6のリン酸化は、免疫アッセイ、例えばウェスタンブロッティング、ELISAなどによって測定でき、リボソームS6の1つ以上のリン酸化残基に特異的なリン酸特異的抗体が用いられる。いくつかの実施態様では、リボソームS6のリン酸化は、フローサイトメトリーを用いてリンタンパク質分析によって測定される(例えば図11B参照)。リボソームS6に対するリン酸特異的抗体は当業界では公知であり、例えば以下の業者から市場で入手できる:BioLegend(San Diego, CA)(例えばカタログ番号691802)。いくつかの実施態様では、リボソームS6のリン酸化のレベルが、参照値(例えば健康な対象の集団について決定された値)と比較して、またはコントロールサンプル(例えば癌を持たないと判明している健康な対象)のリボソームS6リン酸化のレベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または90%より多く増加するならば、患者は癌を有すると診断される。
【0050】
患者集団および癌
いくつかの実施態様では、癌を有する対象を治療する方法が提供される。いくつかの実施態様では、癌を有する対象は人間である。いくつかの実施態様では、対象は少なくとも18歳、少なくとも30歳、少なくとも50歳、または少なくとも65歳の成人である。いくつかの実施態様では、対象は18歳より若い年少者である。いくつかの実施態様では、対象は0-17歳、例えば1ヶ月から24ヶ月、0-6歳、または2-12歳、または12-17歳の年少者である。いくつかの実施態様では、対象はラテンアメリカ系の0-17歳の年少者である。
いくつかの実施態様では、癌は、膀胱癌、乳癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、食道癌、胃腸管の癌、膵臓癌、結腸直腸癌、結腸癌、腎癌、頭頸部の癌、肺癌、胃癌、生殖細胞癌、骨癌、肝臓癌、甲状腺癌、皮膚癌(例えばメラノーマ)、中枢神経系の新形成、リンパ腫、白血病、骨髄腫、または肉腫である。いくつかの実施態様では、癌は固形腫瘍である。いくつかの実施態様では、固形腫瘍は、卵巣癌、肺癌および子宮頸癌から選択される固形腫瘍である。いくつかの実施態様では、固形腫瘍は子宮頸癌である。いくつかの実施態様では、固形腫瘍は肺癌である。いくつかの実施態様では、固形腫瘍は卵巣癌である。いくつかの実施態様では、癌は、血液癌(例えば白血病、リンパ腫または骨髄腫)である。いくつかの実施態様では、癌は白血病である。いくつかの実施態様では、白血病は急性型である。いくつかの実施態様では、白血病は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、例えばB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALLまたはB細胞型ALL)またはフィラデルフィア染色体様(Ph様)B細胞型ALLである。いくつかの実施態様では、白血病は急性骨髄原性白血病(AML)である。いくつかの実施態様では、白血病は慢性型である。いくつかの実施態様では、白血病は慢性リンパ芽球性白血病(CLL)である。いくつかの実施態様では、白血病は慢性骨髄原性白血病(CML)である。
【0051】
いくつかの実施態様では、癌は、サイトカイン受容体を例えば癌細胞の表面に発現する癌である。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体は、サイトカイン受容体様因子2(CRLF2)、上皮増殖因子受容体(EGFR)またはインターロイキン7受容体α(IL-7R-α)である。いくつかの実施態様では、癌は、サイトカイン受容体の変異型(例えば1つ以上の遺伝的変化(例えば点変異、欠失、付加または再整理)を有する)、例えばCRLF2、EGFRまたはIL-7Rαの変異型を発現する。
いくつかの実施態様では、癌は、サイトカイン受容体、例えばCRLF2、EGFR若しくはIL-7Rα、またはCRLF2若しくはIL-7Rαの変異型、EGF、Fltリガンド受容体、CD117、幹細胞因子に対する受容体、または癌細胞の生存に必要なシグナルを提供する別の受容体を過剰発現する癌である。
いくつかの実施態様では、癌は、CRLF2を過剰発現する癌であり、当該癌を有する患者は、有効な量のTSLPまたはTSLP模倣物で治療される。いくつかの実施態様では、TSLPはヒトTSLPまたはヒトTSLP模倣物である。いくつかの実施態様では、癌は、EGFRを過剰発現する癌であり、当該癌を有する患者は有効量のEGFまたはEGF模倣物で治療される。いくつかの実施態様では、EGFはヒトEGFまたはヒトEGF模倣物である。いくつかの実施態様では、癌はIL-7Rαを過剰発現する癌であり、当該癌を有する患者は有効量のIL-7またはIL-7模倣物で治療される。いくつかの実施態様では、IL-7はヒトIL-7またはヒトIL-7模倣物である。
いくつかの実施態様では、癌は、CRLF2(例えば野生型または変異型)を発現または過剰発現する白血病である。いくつかの実施態様では、癌は急性リンパ芽球性白血病または急性骨髄原性白血病であり、これらでは野生型または変異型CRLF2が発現または過剰発現される。例えば、いくつかの実施態様では、癌はB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALLまたはB細胞型ALL)であり、これらでは野生型または変異型CRLF2が発現または過剰発現される。いくつかの実施態様では、白血病はフィラデルフィア染色体様(Ph様)B細胞型ALLであり、これらでは野生型または変異型CRLF2が発現または過剰発現される。
いくつかの実施態様では、癌細胞を殺滅する方法が提供される。いくつかの実施態様では、癌細胞は本明細書に記載する癌(例えば白血病(例えばALLまたはAML))に由来する。いくつかの実施態様では、癌細胞は、サイトカイン受容体(例えばCRLF2、EGFRまたはIL-7Rα)を細胞の表面に発現または過剰発現する。いくつかの実施態様では、細胞は初代細胞である。いくつかの実施態様では、細胞は形質転換細胞株に由来する。
【0052】
参照値
ある実施態様では、CRLF2またはIL-7Rαポリヌクレオチド(例えばmRNA)またはタンパク質の発現のレベル、CRLF2タンパク質またはIL-7Rαタンパク質の活性のレベル(例えば、試験対象からのサンプルにおけるCRLF2と抗CRLF2抗体との結合のレベルまたはIL-7Rαと抗IL-7Rα抗体との結合のレベル、STAT5タンパク質のリン酸化のレベル、および/またはリボソームタンパク質S6のリン酸化のレベルによって評価される)が、試験対象が癌を有するか否かを決定するために参照値と比較される。多様な方法を用いて、参照値を決定することができる。ある実施態様では、特定のバイオマーカー(例えばCRLF2、STAT5、リボソームS6、およびIL-7Rα)に対する参照値は、癌を持たないことが判明している対象集団由来サンプルにおいて当該特定のバイオマーカーのレベルを評価することによって決定される。非限定的な例として、ある実施態様では、集団の対象(例えば10、20、50、100、200、500または500より多い対象)は全て癌を持たないことが知られ、全てが特定のバイオマーカーのレベル(例えばCRLF2の発現のレベル)について分析される。別の実施態様では、特定のバイオマーカー(例えばCRLF2の発現のレベル)についての参照値は、固形腫瘍または白血病の特定の型(例えばB細胞型ALL)を有する対象の集団のサンプルにおいて当該特定のバイオマーカーのレベルを評価することによって決定される。非限定的な例として、ある実施態様では、集団の対象(例えば10、20、50、100、200、500または500より多い対象)は全て子宮頸または卵巣の固形腫瘍を有し、全てが特定のバイオマーカーのレベル(例えばCRLF2の発現のレベル)について分析される。いくつかの実施態様では、集団の対象は、1つ以上の患者の特徴(例えば年齢、性別、民族性または他の基準)にしたがい試験対象と一致する。いくつかの実施態様では、参照値は、対象集団に由来する同じタイプのサンプル(例えば血液または組織学用組織を含むサンプル)(前記サンプルは試験対象のバイオマーカーのレベルを評価するために用いられる)を用いて立証される。
【0053】
参照値は日常的な方法を用いて決定できる(例えば対象からサンプルを収集しバイオマーカー値を決定する)。試験対象が癌を有すると認定される具体的な閾値の決定、白血病の適切な範囲、カテゴリー、タイプの選別などは本開示の指示にしたがい当業者の技量の範囲内にある。標準的統計方法を医師がそのような決定において利用できることは理解されるであろう。例えば以下を参照されたい:Principles of Biostatistics by Marcello Pagano et al.(Brook Cole; 2000);およびFundamentals of Biostatistics by Bernard Rosner(Duxbury Press, 5th Ed, 1999)。
別の実施態様では、試験対象からのサンプル中のCRLF2若しくはIL-7Rαポリヌクレオチド(例えばmRNA)またはタンパク質の発現のレベル、CRLF2タンパク質またはIL-7Rαタンパク質の活性のレベル(CRLF2と抗CRLF2抗体との結合のレベルまたはIL-7Rαと抗IL-7Rα抗体との結合のレベルによって評価される)、STAT5タンパク質のリン酸化のレベル、および/またはリボソームS6のリン酸化のレベルは、試験対象が癌を有するか否かを決定するためにコントロールサンプルと比較される。いくつかの実施態様では、コントロールサンプルは、癌の臨床徴候を一切示さない対象からのサンプルである。いくつかの実施態様では、コントロールサンプルは、癌(例えば特定の病期の癌)を有すると臨床的に診断された対象からのサンプルである。いくつかの実施態様では、コントロールサンプルは、試験のためのサンプルを入手した対象と同じ癌の病期および/または型を有すると臨床的に診断された対象からのサンプルである。いくつかの実施態様では、コントロールサンプルが入手される対象は試験対象と同じまたはほぼ同じ年齢である。
【0054】
予後判定方法
別の特徴では、対象がTSLP治療に適切であるかを認定するかまたは癌患者のTSLP治療に対する応答を予測する方法が提供される。いくつかの実施態様では、対象は癌(例えば白血病または固形腫瘍)を有する。いくつかの実施態様では、当該方法は、対象からのサンプルにおいてCRLF2タンパク質の発現のレベルを検出する工程およびIL-7Rα発現のレベルを検出する工程を含む。
いくつかの実施態様では、対象がTSLP治療に適切であるかを認定する方法は、
(a)対象からの細胞の表面のCRLF2タンパク質発現のレベルを検出する工程、(b)対象からの細胞の表面のIL-7Rαタンパク質発現のレベルを検出する工程、および(c)検出されたタンパク質発現レベルに基づいてCRLF2対IL-7Rαの比を計算する工程を含み、それにより、CRLF2タンパク質発現のレベルがIL-7Rαタンパク質発現のレベルより高い場合に対象はTSLP治療に応答すると予測される。いくつかの実施態様では、CRLF2対IL-7Rαの比が2:1を超える(例えば3:1、4:1、5:1、10:1、20:1、50:1、100:1または100:1を超える)場合に、対象はTSLP治療に応答すると予測される。いくつかの実施態様では、対象は癌(例えば白血病または固形腫瘍)を有する。いくつかの実施態様では、対象は急性リンパ芽球性白血病を有する。いくつかの実施態様では、対象はB細胞型ALLを有する。いくつかの実施態様では、対象はPh様B細胞型ALLを有する。いくつかの実施態様では、対象はT細胞型ALLを有する。いくつかの実施態様では、対象は急性骨髄性白血病を有する。いくつかの実施態様では、対象は固形腫瘍を有する。いくつかの実施態様では、対象は肺、子宮頸または卵巣の固形腫瘍を有する。
【0055】
別の特徴では、TSLP治療に対する癌患者の応答を予測する方法は、(a)癌患者の癌細胞の表面のCRLF2タンパク質発現のレベルを検出する工程、(b)癌患者の癌細胞の表面のIL-7Rαタンパク質発現のレベルを検出する工程、および(c)検出されたタンパク質発現レベルに基づいてCRLF2対IL-7Rαの比を計算する工程を含み、それにより、CRLF2タンパク質発現のレベルがIL-7Rαタンパク質発現のレベルより高い場合に癌患者はTSLP治療に応答すると予測される。いくつかの実施態様では、CRLF2対IL-7Rαの比が2:1を超える(例えば3:1、4:1、5:1、10:1、20:1、50:1、100:1または100:1を超える)場合に、癌患者はTSLP治療に応答すると予測される。いくつかの実施態様では、癌患者は白血病または固形腫瘍を有する。いくつかの実施態様では、癌患者は急性リンパ芽球性白血病を有する。いくつかの実施態様では、癌患者はB細胞型ALLを有する。いくつかの実施態様では、癌患者はPh様B細胞型ALLを有する。いくつかの実施態様では、癌患者はT細胞型ALLを有する。いくつかの実施態様では、癌患者は急性骨髄性白血病を有する。いくつかの実施態様では、癌患者は固形腫瘍を有する。いくつかの実施態様では、癌患者は肺、子宮頸または卵巣の固形腫瘍を有する。
いくつかの実施態様では、対象または癌患者から得られるCRLF2対IL-7Rαの比は参照値(例えば、癌を持たないことが判明している対象から得られたCRLF2対IL-7Rαの比)と比較される。いくつかの実施態様では、CRLF2対IL-7Rαの比が、参照値と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または90%より多く増加するならば、対象はTSLP治療に応答すると予測されると認定される。いくつかの実施態様では、、CRLF2対IL-7Rαの比が、参照値と比較して少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、または20倍より多く増加するならば、対象はTSLP治療に応答すると予測されると認定される。
【0056】
いくつかの実施態様では、当該方法はさらにまた、(a)対象からのサンプルにおいてSTAT5リン酸化のレベルを検出する工程、および/または(b)対象からのサンプルにおいてリボソームS6リン酸化のレベルを検出する工程を含む。
いくつかの実施態様では、当該方法はさらにまた、(a)癌患者のサンプルにおいてSTAT5リン酸化のレベルを検出する工程、および/または(b)癌患者のサンプルにおいてリボソームS6リン酸化のレベルを検出する工程を含む。
いくつかの実施態様では、サンプルは、全血、血清、血漿、唾液、尿、脳脊髄液、または組織サンプル(例えば子宮頸または肺組織)を含む。いくつかの実施態様では、サンプルは血液または血漿サンプルである。
いくつかの実施態様では、TSLP治療に応答性であると認定される対象(例えば白血病を有する対象)のために、治療的介入が提供される。いくつかの実施態様では、治療的介入は、下記のセクションVに記載される治療的介入である。いくつかの実施態様では、治療的介入は、対象でSOCS1、SOCS2、SOCS3、および/またはCISH発現を増加させる生物学的作用因子を投与する工程を含む。
【0057】
V.治療方法
ある特徴では、癌を有する対象を治療する方法が提供される。いくつかの実施態様では、癌はサイトカイン受容体を(例えば癌細胞の表面に)発現する。いくつかの実施態様では、当該方法は、サイトカイン受容体を発現する癌を有する対象に生物学的作用因子を、サイトカインシグナリング抑制因子(SOCS)遺伝子の1つ以上の発現を対象の癌細胞で増加させるために十分な量で投与する工程を含む。いくつかの実施態様では、SOCS遺伝子は、サイトカインシグナリング-1抑制因子(SOCS-1)、サイトカインシグナリング-2抑制因子(SOCS-2)、サイトカインシグナリング-3抑制因子(SOCS-3)、および/またはサイトカイン誘発性SH2含有タンパク質(CISH)である。いくつかの実施態様では、SOCS遺伝子は、サイトカインシグナリング-1抑制因子(SOCS-1)およびサイトカインシグナリング-3抑制因子(SOCS-3)の一方または両方である。
別の特徴では、癌細胞を殺滅する方法が提供される。いくつかの実施態様では、癌細胞はサイトカイン受容体を(例えば癌細胞の表面に)発現する。いくつかの実施態様では、当該方法は、癌細胞を生物学的作用因子と、サイトカインシグナリング抑制因子(SOCS)遺伝子の1つ以上の発現を癌細胞で増加させるために十分な量で接触させる工程を含む。いくつかの実施態様では、SOCS遺伝子は、サイトカインシグナリング-1抑制因子(SOCS-1)、サイトカインシグナリング-2抑制因子(SOCS-2)、サイトカインシグナリング-3抑制因子(SOCS-3)、および/またはサイトカイン誘発性SH2含有タンパク質(CISH)である。いくつかの実施態様では、SOCS遺伝子は、サイトカインシグナリング-1抑制因子(SOCS-1)およびサイトカインシグナリング-3抑制因子(SOCS-3)の一方または両方である。いくつかの実施態様では、当該方法はin vitroで実施される。いくつかの実施態様では、当該方法はex vivoで実施される。いくつかの実施態様では、当該方法はin vivoで実施される。
【0058】
いくつかの実施態様では、生物学的作用因子(例えば本明細書に記載するもの)は、1つ以上のSOCS遺伝子の発現を、参照値と比較して少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または90%を超えて増加させるために十分な量で投与される(参照値は、例えば生物学的作用因子で治療されていない癌細胞の発現レベルから決定される)。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、1つ以上のSOCS遺伝子の発現を、参照値と比較して少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、または10倍を超えて増加させるために十分な量で投与される。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、1つ以上のSOCS遺伝子の発現を、治療開始前の細胞のSOCS遺伝子の発現のレベルと比較して少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または90%を超えて増加させるために十分な量で投与される。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、1つ以上のSOCS遺伝子の発現を、治療開始前の細胞のSOCS遺伝子の発現のレベルと比較して少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、または10倍を超えて増加させるために十分な量で投与される。いくつかの実施態様では、SOCS遺伝子の発現のレベルは、定量的PCR(例えばRT-PCR)によって測定される。
【0059】
ある特徴では、1つ以上のサイトカイン受容体を発現または過剰発現する癌でサイトカイン受容体の細胞シグナリングを阻害する方法が提供される。いくつかの実施態様では、癌は、当該癌の1つ以上の癌細胞の表面でサイトカイン受容体を発現する。いくつかの実施態様では、癌は、当該癌の1つ以上の癌細胞の表面でサイトカイン受容体を過剰発現する。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体はEGFR、IL-7RαおよびCRLF2から選択される。いくつかの実施態様では、当該方法は、治療的に有効な量の生物学的作用因子を癌に投与する工程を含む。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子はTSLPまたはその模倣物である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子はEGFまたはその模倣物である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子はIL-7またはその模倣物である。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体を発現または過剰発現する癌のサイトカイン受容体細胞シグナリングの阻害は、当該癌の1つ以上の癌細胞の細胞シグナリング経路成分の減少を検出することによって測定される。いくつかの実施態様では、細胞シグナリング経路成分の減少は、生物学的作用因子の有効量に暴露された癌細胞のリン酸化STAT6および/またはリン酸化リボソームS6のレベルの測定を含む。いくつかの実施態様では、細胞シグナリング経路成分の減少は、参照値(例えば非癌性細胞のリン酸化STAT6および/またはリン酸化リボソームS6のレベル)と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または90%を超えるリン酸化STAT6および/またはリン酸化リボソームS6のレベルの減少を含む。
【0060】
ある実施態様では、CRLF2を発現または過剰発現する癌細胞でCRLF2の細胞シグナリングを阻害する方法が提供される。いくつかの実施態様では、癌細胞は当該癌細胞の表面でCRLF2を発現する。いくつかの実施態様では、当該方法は、TSLPまたはTSLP模倣物の治療的に有効な量を癌細胞に投与する工程を含む。
別の実施態様では、EGFRを発現または過剰発現する癌細胞でEGFRの細胞シグナリングを阻害する方法が提供される。いくつかの実施態様では、癌細胞は当該癌細胞の表面でEGFRを発現する。いくつかの実施態様では、当該方法は、EGFまたはEGF模倣物の治療的に有効な量を癌細胞に投与する工程を含む。
別の実施態様では、IL-7Rαを発現または過剰発現する癌細胞でIL-7Rαの細胞シグナリングを阻害する方法が提供される。いくつかの実施態様では、癌細胞は当該癌細胞の表面でIL-7Rαを発現する。いくつかの実施態様では、当該方法は、IL-7またはIL-7模倣物の治療的に有効な量を癌細胞に投与する工程を含む。
いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体(例えば野生型または変異型)を発現または過剰発現する癌は白血病または固形腫瘍である。いくつかの実施態様では、癌は、CRLF2の野生型または変異型を発現または過剰発現する急性リンパ芽球性白血病または急性骨髄原性白血病である。例えば、いくつかの実施態様では、癌は、CRLF2の野生型または変異型を発現または過剰発現するB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALLまたはB細胞型ALL)である。いくつかの実施態様では、白血病は、CRLF2の野生型または変異型を発現または過剰発現するフィラデルフィア染色体様(Ph様)B細胞型ALLである。いくつかの実施態様では、癌は、CRLF2の野生型または変異型を発現または過剰発現する固形腫瘍である。
【0061】
いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体(例えば野生型または変異型)を発現または過剰発現する癌は白血病または固形腫瘍である。いくつかの実施態様では、癌は、EGFRの野生型または変異型を発現または過剰発現する急性リンパ芽球性白血病または急性骨髄原性白血病である。例えば、いくつかの実施態様では、癌は、EGFRの野生型または変異型を発現または過剰発現するB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALLまたはB細胞型ALL)である。いくつかの実施態様では、白血病は、EGFRの野生型または変異型を発現または過剰発現するフィラデルフィア染色体様(Ph様)B細胞型ALLである。いくつかの実施態様では、癌は、EGFRの野生型または変異型を発現または過剰発現する固形腫瘍である。
いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体(例えば野生型または変異型)を発現または過剰発現する癌は白血病または固形腫瘍である。いくつかの実施態様では、癌は、IL-7Rαの野生型または変異型を発現または過剰発現する急性リンパ芽球性白血病または急性骨髄原性白血病である。例えば、いくつかの実施態様では、癌は、IL-7Rαの野生型または変異型を発現または過剰発現するB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALLまたはB細胞型ALL)である。いくつかの実施態様では、白血病は、IL-7Rαの野生型または変異型を発現または過剰発現するフィラデルフィア染色体様(Ph様)B細胞型ALLである。いくつかの実施態様では、癌は、IL-7Rαの野生型または変異型を発現または過剰発現する固形腫瘍である。
【0062】
生物学的作用因子
いくつかの実施態様では、生物学的作用因子はサイトカインまたはサイトカイン模倣物である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、胸腺間質リンホポエチン(TSLP)、上皮増殖因子(EGF)、インターロイキン7(IL-7)若しくはそれらの模倣物、幹細胞因子(SCF)、Fltリガンド、または癌細胞生存に必要なシグナルを誘発する任意の他のサイトカインである。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、ヒトTSLP、ヒトEGF、ヒトIL-7、またはそれらの模倣物である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子はヒトTSLPである。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子はTSLPの模倣物である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子はEGFまたはその模倣物である。
ある実施態様では、生物学的作用因子はヒトTSLP(hTSLP)(配列番号:1)である。ヒトTSLPのアミノ酸配列はNCBI Gene ID:85480によって表される。ヒトTSLPの完全なコード配列はGenBank BC040592.1として提供される(前記は両方とも参照によってその全体が全ての目的のために本明細書に含まれる)。
【0063】
ある実施態様では、生物学的作用因子はTSLP模倣物である。ある実施態様では、TSLP模倣物はヒトTSLPの改変、切詰め、または変化型を含むことができ、前記は、配列番号:1に対し少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のパーセント同一性を保持する。ある実施態様では、TSLP模倣物はヒトTSLPの改変、切詰め、または変化型を含むことができ、前記は、対応するhTSLPの測定機能(例えば1つ以上のSOCS遺伝子のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーション)の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%を保持する。別の特徴では、TSLP模倣物はあるタンパク質を含むことができ、当該タンパク質の配列は、天然に存在するhTSLP(配列番号:1)のものと少なくとも50%等価であるか、または天然に存在するhTSLPのものと少なくとも60%等価であるか、または天然に存在するhTSLPのものと少なくとも70%等価であるか、または天然に存在するhTSLPのものと少なくとも80%等価であるか、または天然に存在するhTSLPのものと少なくとも90%等価であるか、または天然に存在するhTSLPのものと少なくとも95%等価であるか、または天然に存在するhTSLPのものと少なくとも97%等価であるか、または天然に存在するhTSLPのものと少なくとも99%等価である。さらに別の実施態様では、生物学的作用因子はTSLP模倣物であり、当該模倣物は、配列番号:1と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相同性(すなわちパーセント同一性)を有し、かつ対応するhTSLPの測定機能(例えば1つ以上のSOCS遺伝子の調節、IL-7Rαの内在化、またはIL-7Rαシグナリングの阻害)の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%を保持する。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子はTSLP模倣物であり、当該模倣物は、天然に存在するTSLP(例えば配列番号:1の配列を有するhTSLP)と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相同性(すなわちパーセント同一性)を有し、かつ天然に存在するTSLPの測定機能(例えば1つ以上のSOCS遺伝子の調節、IL-7Rαの内在化、またはIL-7Rαシグナリングの阻害)に少なくとも匹敵し得る活性を提示する。
【0064】
ある実施態様では、生物学的作用因子はヒトEGF(hEGF)(配列番号:2)である。ヒトEGFのアミノ酸配列はNCBI Gene ID:1950によって表される。ヒトEGFの完全なコード配列はGenBank BC093731.1として提供される(前記は両方とも参照によってその全体が全ての目的のために本明細書に含まれる)。
ある実施態様では、生物学的作用因子はEGF模倣物である。ある実施態様では、EGF模倣物はヒトEGFの改変、切詰め、または変化型を含むことができ、前記は、配列番号:2に対し少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のパーセント同一性を保持する。ある実施態様では、TSLP模倣物はヒトTSLPの改変、切詰め、または変化型を含むことができ、前記は、対応するhEGFの測定機能(例えば1つ以上のSOCS遺伝子のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーション)の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%を保持する。別の特徴では、EGF模倣物はあるタンパク質を含むことができ、当該タンパク質の配列は、天然に存在するhEGF(配列番号:2)のものと少なくとも50%等価であるか、または天然に存在するhEGFのものと少なくとも60%等価であるか、または天然に存在するhEGFのものと少なくとも70%等価であるか、または天然に存在するhEGFのものと少なくとも80%等価であるか、または天然に存在するhEGFのものと少なくとも90%等価であるか、または天然に存在するhEGFのものと少なくとも95%等価であるか、または天然に存在するhEGFのものと少なくとも97%等価であるか、または天然に存在するhEGFのものと少なくとも99%等価である。さらに別の実施態様では、生物学的作用因子はEGF模倣物であり、当該模倣物は、配列番号:2(hEGF)と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相同性を有し、かつ対応するhTSLPの測定機能(例えば1つ以上のSOCS遺伝子の調節、IL-7Rαの内在化、またはIL-7Rαシグナリングの阻害)の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%を保持する。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子はEGF模倣物であり、当該模倣物は、天然に存在するEGF(例えば配列番号:2の配列を有するhEGF)と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相同性(すなわちパーセント同一性)を有し、かつ天然に存在するEGFの測定機能(例えば1つ以上のSOCS遺伝子の調節、IL-7Rαの内在化、またはIL-7Rαシグナリングの阻害)に少なくとも匹敵し得る活性を提示する。
【0065】
ある実施態様では、生物学的作用因子はヒトIL-7(hIL-7)(配列番号:3)である。ヒトIL-7のアミノ酸配列はNCBI Gene ID:3574によって表される。ヒトIL-7の完全なコード配列はGenBank BC047698.1として提供される(前記は両方とも参照によってその全体が全ての目的のために本明細書に含まれる)。
ある実施態様では、生物学的作用因子はIL-7模倣物である。ある実施態様では、IL-7模倣物はヒトIL-7の改変、切詰め、または変化型を含むことができ、前記は、配列番号:3に対し少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のパーセント同一性を保持する。ある実施態様では、IL-7模倣物はヒトIL-7の改変、切詰め、または変化型を含むことができ、前記は、対応するhIL-7の測定機能(例えば1つ以上のSOCS遺伝子のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーション)の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%を保持する。別の特徴では、IL-7模倣物はあるタンパク質を含むことができ、当該タンパク質の配列は、天然に存在するhIL-7(配列番号:3)のものと少なくとも50%等価であるか、または天然に存在するhIL-7のものと少なくとも60%等価であるか、または天然に存在するhIL-7のものと少なくとも70%等価であるか、または天然に存在するhIL-7のものと少なくとも80%等価であるか、または天然に存在するhIL-7のものと少なくとも90%等価であるか、または天然に存在するhIL-7のものと少なくとも95%等価であるか、または天然に存在するhIL-7のものと少なくとも97%等価であるか、または天然に存在するhIL-7のものと少なくとも99%等価である。さらに別の実施態様では、生物学的作用因子はIL-7模倣物であり、当該模倣物は、配列番号:3(hIL-7)と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相同性を有し、かつ対応するhIL-7の測定機能(例えば1つ以上のSOCS遺伝子の調節、IL-7Rαの内在化、またはIL-7Rαシグナリングの阻害)の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%を保持する。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子はTSLP模倣物であり、当該模倣物は、天然に存在するIL-7(例えば配列番号:3の配列を有するhIL-7)と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相同性(すなわちパーセント同一性)を有し、かつ天然に存在するIL-7の測定機能(例えば1つ以上のSOCS遺伝子の調節、IL-7Rαの内在化、またはIL-7Rαシグナリングの阻害)に少なくとも匹敵し得る活性を提示する。
いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は組換えタンパク質またはペプチド(例えば、TSLP、EGFまたはIL-7タンパク質若しくはペプチドの組換え型、またはそれらの模倣物)である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は合成タンパク質またはペプチド(例えば、TSLP、EGFまたはIL-7タンパク質若しくはペプチドの合成型、またはそれらの模倣物)である。
【0066】
生物学的作用因子の投与
いくつかの実施態様では、生物学的作用因子(例えばTSLP、EGF、IL-7またはそれらの模倣物)は、静脈内、髄腔内、脊椎内、腹腔内、筋肉内、鼻内、皮下、経口的、局所的に、または吸入によって投与され得る。
生物学的作用因子は、投薬処方に適合する態様および治療的に有効な量で投与される。“治療的に有効な量”という用語は、疾患、異常または症状をある程度治療する(例えば治療される疾患の徴候の1つ以上を緩和する)投与作用因子の量、および/または治療される対象が現在有するかまたは進行リスクがある疾患の1つ以上の徴候をある程度予防する量を指す。いくつかの実施態様では、約0.01mg/kgから約500mg/kg、または約0.1mg/kgから約200mg/kg、または約1mg/kgから約100mg/kg、または約10mg/kgから約50mg/kgの1日の用量範囲を用いることができる。しかしながら、投薬量は、患者の要件、治療される疾患の重篤度、および用いられる化合物に応じて変動し得る。用量サイズはまた、具体的な患者における具体的な化合物の投与に随伴する有害な副作用の存在、その性質および程度によって決定されるであろう。具体的な状況について適切な投薬量の決定は医師の技量の範囲内である。しばしば、治療は化合物の最適用量に達しない低い投薬量から開始される。その後で、投薬量は、周囲状況下で最適な効果が達成されるまで少量ずつ増加させることによって増加される。便利には、所望であれば1日の合計投薬量を分割し1日の間で小分けして投与することができる。
【0067】
いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は“高い”生理学的用量で投与される。本明細書で用いられる“高い”生理学的用量は、コントロールサンプル中で見出される生物学的作用因子の生理学的範囲(例えば癌を持たない対象で存在する生物学的作用因子の生理学的範囲)よりも高い血清レベルを達成するために必要な生物学的作用因子の量を指す。ある実施態様では、生物学的作用因子の高い生理学的用量は、対象で少なくとも30pg/mLのTSLP血清レベルを達成するために必要な生物学的作用因子の量を指す。別の実施態様では、生物学的作用因子の高い生理学的用量は、対象で少なくとも30pg/mL、好ましくは少なくとも35pg/mL、少なくとも40mg/mL、少なくとも45pg/mL、少なくとも50pg/mL、または50pg/mLを超えるTSLP血清レベルを達成するために必要な生物学的作用因子の量を指す。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は一回分用量で投与され、少なくとも30pg/mLのTSLP血清レベルを対象で達成する。別の実施態様では、生物学的作用因子は、マルチ用量で例えば数日または数週間にわたって投与され、少なくとも30pg/mLのTSLP血清レベルを対象で達成する。さらに別の実施態様では、生物学的作用因子は継続的に投与され、少なくとも30pg/mLのTSLP血清レベルを対象で維持する。別の実施態様では、生物学的作用因子は、対象のTSLP血清レベルが少なくとも30pg/mLより降下したときに投与できる。いくつかの実施態様では、投与される生物学的作用因子の量は、対象の得られたTSLP血清レベルを参考にして測定される。ある実施態様では、投与される生物学的作用因子の量は、対象の得られたTSLP血清レベルをELISAで測定したものを参考にして測定される。
【0068】
別の実施態様では、生物学的作用因子の高い生理学的用量は、対象で少なくとも30pg/mLのEGF血清レベルを達成するために必要な生物学的作用因子の量を指す。別の実施態様では、生物学的作用因子の高い生理学的用量は、対象で少なくとも39pg/mL、好ましくは少なくとも40mg/mL、少なくとも45pg/mL、少なくとも50pg/mL、または50pg/mLを超えるEGF血清レベルを達成するために必要な生物学的作用因子の量を指す。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は一回分用量で投与され、少なくとも39pg/mLのEGF血清レベルを対象で達成する。別の実施態様では、生物学的作用因子は、マルチ用量で例えば数日または数週間にわたって投与され、少なくとも39pg/mLのEGF血清レベルを対象で達成する。さらに別の実施態様では、生物学的作用因子は継続的に投与され、少なくとも39pg/mLのEGF血清レベルを対象で維持する。別の実施態様では、生物学的作用因子は、対象のEGF血清レベルが少なくとも39pg/mLより降下したときに投与できる。いくつかの実施態様では、投与される生物学的作用因子の量は、対象の得られたEGF血清レベルを参考にして測定される。ある実施態様では、投与される生物学的作用因子の量は、対象の得られたEGF血清レベルをELISAで測定したものを参考にして測定される。
【0069】
ある実施態様では、生物学的作用因子の高い生理学的用量は、対象で少なくとも20pg/mLのIL-7血清レベルを達成するために必要な生物学的作用因子の量を指す。別の実施態様では、生物学的作用因子の高い生理学的用量は、対象で少なくとも20pg/mL、好ましくは少なくとも50pg/mL、少なくとも100pg/mL、少なくとも200pg/mL、少なくとも500pg/mL、または500pg/mLを超えるIL-7血清レベルを達成するために必要な生物学的作用因子の量を指す。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は一回分用量で投与され、少なくとも20pg/mLのIL-7血清レベルを対象で達成する。別の実施態様では、生物学的作用因子は、マルチ用量で例えば数日または数週間にわたって投与され、少なくとも20pg/mLのIL-7血清レベルを対象で達成する。さらに別の実施態様では、生物学的作用因子は継続的に投与され、少なくとも20pg/mLのIL-7血清レベルを対象で維持する。別の実施態様では、生物学的作用因子は、対象のIL-7血清レベルが少なくとも20pg/mLより降下したときに投与できる。いくつかの実施態様では、投与される生物学的作用因子の量は、対象の得られたIL-7血清レベルを参考にして測定される。ある実施態様では、投与される生物学的作用因子の量は、対象の得られたIL-7血清レベルをELISAで測定したものを参考にして測定される。
いくつかの実施態様では、生物学的作用因子の高い生理学的用量は、生物学的作用因子(例えばTSLP、EGFまたはIL-7)のある血清レベルを達成するために必要な量であり、前記血清レベルは、正常で健康な対象(例えば癌を持たないことが判明している対象)の集団の当該生物学的作用因子の生理学的レベルと少なくとも同じ高さである。
【0070】
いくつかの実施態様では、生物学的作用因子の高い生理学的レベルは生物学的作用因子に応じて変動するであろう。例えば、上記で考察したように、ヒト血清のTSLPの正常な生理学的レベルは少なくとも20pg/mLであり、一方、ヒト血清のEGFの正常な生理学的レベルは少なくとも39pg/mLである。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子の血清レベルを達成するためにヒト対象または癌患者に投与される生物学的作用因子は、好ましくは正常なヒトの生理学的レベルを超える。いくつかの実施態様では、対象または癌患者に投与される生物学的作用因子は、真核生物で見出される正常な生理学的レベルを超える。ある実施態様では、生物学的作用因子がヒトの生物学的作用因子(例えばhTSLPまたはhEGF)であるとき、対象に投与される生物学的作用因子の量は、本明細書で考察される正常な生理学的レベル(例えばそれぞれ20pg/mLおよび39pg/mL)を有意に超えることができる(例えば、正常な生理学的レベルよりも少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、または100%より高い)。別の実施態様では、生物学的作用因子が組換え生物学的作用因子(例えば組換えEGFまたは組換えIL-7)であるとき、または生物学的作用因子が非ヒト供給源から生成(例えば、E. coliによって生成)される場合、対象に投与される生物学的作用因子の量は、コントロールサンプル(例えば癌を持たないことが判明している対象からのサンプル)の生物学的作用因子の生理学的レベルの少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも150倍、少なくとも200倍、少なくとも250倍、または300倍を超えることができる。
【0071】
いくつかの実施態様では、対象に投与される生物学的作用因子の量は、適切なアッセイによって決定することができる。例えば、適切なアッセイは、生物学的作用因子の有効量を投与し、それによってEGFR細胞シグナリングおよび/またはCRLF2細胞シグナリング経路を阻害する工程を含むことができる。いくつかの実施態様では、細胞シグナリング経路(例えばEGFRまたはCRLF2細胞シグナリング)は、生物学的作用因子の非存在下のコントロールサンプルにおける細胞シグナリングと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、150%、少なくとも200%、または200%を超えて阻害される。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、IL-7Rαの内在化および/またはIL-7Rα細胞シグナリング阻害をもたらす量で投与される。CRLF2およびIL-7Rα細胞シグナリングをモニターする適切なアッセイは、癌患者の癌細胞表面でCRLF2の発現レベルを検出する工程、対象の癌細胞表面でIL-7Rαの発現レベルを検出する工程、および検出された発現レベルに基づいてCRLF2対IL-7Rαの比を計算する工程を含み、ここで、CRLF2のレベルがIL-7Rαのレベルより高いか、および/またはCRLF2対IL-7Rαの比が2:1を超える場合、癌患者は当該生物学的作用因子に応答すると予測される。
いくつかの実施態様では、CRLF2細胞シグナリングの消失は、STAT5のリン酸化のレベルおよび/またはリボソームタンパク質S6のリン酸化レベルをサンプル(例えば癌細胞)で検出し、さらに非処理または非癌性サンプルにおいてSTAT5のリン酸化のレベルおよび/またはリボソームタンパク質S6のリン酸化レベルを検出することによって決定することができる。
【0072】
いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は病態または疾患の進行を基準にして投与される。本明細書で用いられる疾患の進行は、最初の治療の時から以後の時点(例えば疾患が悪化または改善する時点)までの時間(一般的には週、月で測定される)を指す。本明細書で用いられる病態は患者の臨床診断(例えば緩解、再発または治癒)を指す。ある実施態様では、生物学的作用因子は、その必要がある対象に、当該対象が緩解または治癒したと決定されるまで投与される。ある特徴では、疾患の進行は、対象から得られたサンプルで癌性細胞の数またはその存在を決定することによって測定できる。例えば、白血病患者の血液サンプルを分析してCRLF2の過剰発現を決定することができる。別の実施態様では、1つ以上のサイトカイン受容体(例えばIL-7RαまたはCRLF2)の発現をフローサイトメトリーを用いて検出することによって、白血病患者の血液サンプルを評価することができる。
【0073】
併用療法
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の生物学的作用因子(例えばサイトカインまたはサイトカイン模倣物)は、1つ以上の追加の治療方法と併用して投与される。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、1つ以上の化学療法剤とともに併用療法で投与される。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、1つ以上の脱メチル化剤とともに併用療法で投与される。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、1つ以上の化学療法剤および1つ以上の脱メチル化剤とともに、1つ以上の放射線療法または免疫療法とともに併用療法で投与される。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の生物学的作用因子は放射線療法と併用して投与される。
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の生物学的作用因子(例えばサイトカインまたはサイトカイン模倣物)は、化学療法剤と併用して投与される。いくつかの実施態様では、化学療法剤は、アルキル化剤(例えばシクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、メクロレタミン、ウラムスチン、チオテパ、ニトロソウレアまたはテモゾロミド)、アントラサイクリン(例えばドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシンまたはミトキサントロン)、細胞骨格破壊剤(例えばパクリタキセルまたはドセタキセル)、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばボリノスタットまたはロミデプシン)、トポイソメラーゼの阻害剤(例えばイリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシドまたはテニポシド)、キナーゼ阻害剤(例えばボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブまたはビスモデギブ)、ヌクレオシドアナログまたは前駆体アナログ(例えばアザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メルカプトプリン、メトトレキセートまたはチオグアニン)、ペプチド抗生物質(例えばアクチノマイシンまたはブレオマイシン)、白金系作用因子(シスプラチン、オキサロプラチンまたはカルボプラチン)、または植物アルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセルまたはドセタキセル)である。
【0074】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の生物学的作用因子(例えばサイトカインまたはサイトカイン模倣物)は、脱メチル化剤と併用して投与される。特定の理論に拘束されないが、ある種の癌では、SOCS遺伝子のメチル化はそれらの発現を妨げる。したがって、脱メチル化剤の生物学的作用因子との併用投与はSOCS遺伝子発現の停止を逆転させることができ、本明細書に記載の生物学的作用因子によるSOCS遺伝子発現の誘発を可能にする。いくつかの実施態様では、脱メチル化剤は、シチジンアナログ(例えばアザシチジンまたはデシタビン)である。
いくつかの実施態様では、生物学的作用因子(例えばサイトカインまたはサイトカイン模倣物)および第二の治療方法または治療作用因子(例えば放射線療法または化学療法剤および/または脱メチル化剤)は同時に投与される。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、最初に、例えば第二の治療方法または治療作用因子(例えば化学療法剤または脱メチル化剤)の投与の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100日前または100日より前に投与される。いくつかの実施態様では、第二の治療方法または治療作用因子(例えば放射線療法または化学療法剤若しくは脱メチル化剤)は、最初に、例えば生物学的作用因子の投与の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100日前または100日より前に投与される。
いくつかの実施態様では、生物学的作用因子(例えばサイトカインまたはサイトカイン模倣物)および第二の治療方法または治療作用因子(例えば放射線療法または化学療法剤および/または脱メチル化剤)は、長期間にわたって、例えば少なくとも30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350日の間または350日より長く対象に投与される。
【0075】
VI.医薬組成物およびキット
別の特徴では、癌細胞の殺滅または癌(例えばサイトカイン受容体を発現する癌)の治療で使用される組成物およびキットが提供される。いくつかの実施態様では、本明細書で提供される組成物およびキットは、癌細胞の殺滅または癌の治療で使用され、当該癌は、サイトカイン受容体様因子2(CRLF2)、上皮増殖因子受容体(EGFR)またはインターロイキン7受容体α(IL-7R-α)から選択されるサイトカイン受容体を発現または過剰発現する。いくつかの実施態様では、本明細書で提供される組成物およびキットは、癌細胞の殺滅または上記セクションVに記載される癌の治療で使用される。いくつかの実施態様では、癌は、白血病、例えばリンパ芽球性白血病(ALL)(例えばB細胞急性リンパ芽球性白血病またはPh様B細胞型ALL)または急性骨髄原性白血病(例えばCRLF2、IL-7RαまたはEGFRを発現または過剰発現する白血病)である。
【0076】
医薬組成物
いくつかの実施態様では、生物学的作用因子および医薬的に許容できる担体を含む医薬組成物が提供され、前記作用因子は、癌細胞で1つ以上のSOCS遺伝子(例えばSOCS-1遺伝子および/またはSOCS-3遺伝子)の発現を増加させるために十分な量で含まれる。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、サイトカインまたはサイトカイン模倣物(例えば上記セクションVに記載されたもの)である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、胸腺間質リンホポエチン(TSLP)またはその模倣物(例えばヒトTSLPまたはその模倣物)である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、インターロイキン7(IL-7)またはその模倣物(例えばヒトIL-7またはその模倣物)である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、上皮増殖因子(EGF)またはその模倣物(例えばヒトEGFまたはその模倣物)である。
いくつかの実施態様では、医薬組成物はさらにまた、1つ以上の追加の作用因子、例えば上記セクションVに記載の1つ以上の治療作用因子を含む。いくつかの実施態様では、医薬組成物は、本明細書に記載の生物学的作用因子を含み、さらにまた化学療法剤および/または脱メチル化剤を含む。
いくつかの実施態様では、医薬組成物は、ヒト胸腺間質リンホポエチン(TSLP)またはその模倣物を含み、さらにまた例えば以下の化学療法剤を含む:アルキル化剤(例えばシクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、メクロレタミン、ウラムスチン、チオテパ、ニトロソウレアまたはテモゾロミド)、アントラサイクリン(例えばドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシンまたはミトキサントロン)、細胞骨格破壊剤(例えばパクリタキセルまたはドセタキセル)、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばボリノスタットまたはロミデプシン)、トポイソメラーゼの阻害剤(例えばイリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシドまたはテニポシド)、キナーゼ阻害剤(例えばボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブまたはビスモデギブ)、ヌクレオシドアナログまたは前駆体アナログ(例えばアザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メルカプトプリン、メトトレキセートまたはチオグアニン)、ペプチド抗生物質(例えばアクチノマイシンまたはブレオマイシン)、白金系作用因子(シスプラチン、オキサロプラチンまたはカルボプラチン)、または植物アルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセルまたはドセタキセル)。
いくつかの実施態様では、医薬組成物はヒト胸腺間質リンホポエチン(TSLP)またはその模倣物を含み、さらにまた脱メチル化剤、例えばシチジンアナログ(例えばアザシチジンまたはデシタビン)を含む。
【0077】
いくつかの実施態様では、医薬組成物はヒトIL-7またはその模倣物を含み、さらにまた例えば以下の化学療法剤を含む:アルキル化剤(例えばシクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、メクロレタミン、ウラムスチン、チオテパ、ニトロソウレアまたはテモゾロミド)、アントラサイクリン(例えばドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシンまたはミトキサントロン)、細胞骨格破壊剤(例えばパクリタキセルまたはドセタキセル)、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばボリノスタットまたはロミデプシン)、トポイソメラーゼの阻害剤(例えばイリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシドまたはテニポシド)、キナーゼ阻害剤(例えばボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブまたはビスモデギブ)、ヌクレオシドアナログまたは前駆体アナログ(例えばアザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メルカプトプリン、メトトレキセートまたはチオグアニン)、ペプチド抗生物質(例えばアクチノマイシンまたはブレオマイシン)、白金系作用因子(シスプラチン、オキサロプラチンまたはカルボプラチン)、または植物アルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセルまたはドセタキセル)。
いくつかの実施態様では、医薬組成物はヒトIL-7またはその模倣物を含み、さらにまた脱メチル化剤、例えばシチジンアナログ(例えばアザシチジンまたはデシタビン)を含む。
【0078】
いくつかの実施態様では、医薬組成物は上皮増殖因子(EGF)またはその模倣物を含み、さらにまた例えば以下の化学療法剤を含む:アルキル化剤(例えばシクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、メクロレタミン、ウラムスチン、チオテパ、ニトロソウレアまたはテモゾロミド)、アントラサイクリン(例えばドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシンまたはミトキサントロン)、細胞骨格破壊剤(例えばパクリタキセルまたはドセタキセル)、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばボリノスタットまたはロミデプシン)、トポイソメラーゼの阻害剤(例えばイリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシドまたはテニポシド)、キナーゼ阻害剤(例えばボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブまたはビスモデギブ)、ヌクレオシドアナログまたは前駆体アナログ(例えばアザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メルカプトプリン、メトトレキセートまたはチオグアニン)、ペプチド抗生物質(例えばアクチノマイシンまたはブレオマイシン)、白金系作用因子(シスプラチン、オキサロプラチンまたはカルボプラチン)、または植物アルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセルまたはドセタキセル)。
いくつかの実施態様では、医薬組成物は上皮増殖因子(EGF)またはその模倣物を含み、さらにまた脱メチル化剤、例えばシチジンアナログ(例えばアザシチジンまたはデシタビン)を含む。
【0079】
いくつかの実施態様では、医薬組成物は本明細書に記載の生物学的作用因子(例えばTSLP、EGF、IL-7、またはそれらの模倣物)をある量で含み、前記ある量は、(例えば対象または細胞サンプルにおいて)1つ以上のSOCS遺伝子の発現を、参照値と比較して少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または90%を超えて、或いは少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、または10倍を超えて増加させるために十分である。
いくつかの実施態様では、医薬組成物は本明細書に記載の生物学的作用因子(例えばTSLP、EGF、IL-7、またはそれらの模倣物)をある量で含み、前記ある量は、(例えば対象または細胞サンプルにおいて)IL-7Rαの内在化を、参照値と比較して少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または90%を超えて、或いは少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、または10倍を超えて増加させるために十分である。
いくつかの実施態様では、医薬組成物は本明細書に記載の生物学的作用因子(例えばTSLP、EGF、IL-7、またはそれらの模倣物)をある量で含み、前記ある量は、(例えば対象または細胞サンプルにおいて)下流のIL-7Rαシグナリングを、参照値と比較して少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または90%を超えて、或いは少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、または10倍を超えて減少させるために十分である。いくつかの実施態様では、下流のIL-7RαシグナリングはSTAT5リン酸化である。いくつかの実施態様では、下流のIL-7RαシグナリングはS6リン酸化である。
【0080】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の生物学的作用因子および場合によって1つ以上の追加の治療作用因子(例えば化学療法剤および/または脱メチル化剤)は、適切な医薬的に許容できる担体または希釈剤とともに調剤することによって医薬組成物に処方され、固体、半固体、液体または気体形の調製物、例えば錠剤、カプセル、ピル、散剤、顆粒、糖衣錠、ゲル、スラリー、軟膏、溶液、座薬、注射物、吸入物、およびエーロゾルに処方することができる。
本開示で使用される処方物を調製する手引きは例えば以下で見出される:Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., 2006(上掲書);Martindale: The Complete Drug Reference, Sweetman, 2005, London: Pharmaceutical Press;Niazi, Handbook of Pharmaceutical Manufacturing Formulations, 2004, CRC Press;およびGibson, Pharmaceutical Preformulation and Formulation: A Practical Guide from Candidate Drug Selection to Commercial Dosage Form, 2001, Interpharm Press(前記文献は参照によって本明細書に含まれる)。本明細書に記載する医薬組成物は、当業者に公知の態様で、すなわち通常的な混合、溶解、顆粒化、糖衣錠化、微粒子化、乳化、カプセル化、被包化、または凍結乾燥化プロセスの手段によって製造することができる。以下の方法および賦形剤は単なる例示であり、全く制限するものではない。
【0081】
いくつかの実施態様では、医薬組成物は許容できる担体および/または賦形剤を含む。医薬的に許容できる担体には任意の溶媒、分散媒体またはコーティングが含まれ、前記は生理学的に適合性であり、好ましくは治療作用因子の活性に干渉せず或いは阻害しない。いくつかの実施態様では、担体は、静脈内、筋肉内、蛍光、腹腔内、経皮、局所、または皮下投与に適切である。医薬的に許容できる担体は1つ以上の生理学的に許容できる化合物を含むことができ、前記化合物は、例えば、当該組成物を安定化するために、または活性薬剤の吸収を増加若しくは低下させるために機能する。生理学的に許容できる化合物には、例えば炭水化物(例えばグルコース、シュクロース、またはデキストラン)、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸またはグルタチオン)、キレート剤、低分子量タンパク質、活性薬剤の除去または加水分解を低下させる組成物、または賦形剤若しくは他の安定化剤および/または緩衝剤が含まれ得る。他の医薬的に許容できる担体およびそれらの処方は周知であり、さらに例えば以下に概論されている:Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, Philadelphia, PA.Lippincott Williams & Wilkins, 2005。多様な医薬的に許容できる賦形剤は周知であり、例えば以下で見出すことができる:Handbook of Pharmaceutical Excipients(5th ed., Ed.Rowe et al., Pharmaceutical Press, Washington, D.C.)。
【0082】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の生物学的作用因子(および1つ以上の追加の治療薬剤(例えば化学療法剤および/または脱メチル化剤))は、当業界で周知の医薬的に許容できる担体と一緒にすることによって経口投与用に処方される。そのような担体は、治療される患者による経口摂取のために、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、乳濁物、親油性および親水性懸濁物、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁物などとして薬剤を処方することを可能にする。経口使用のための医薬調製物は、薬剤を固体賦形剤と混合し、場合によって得られた混合物をすり潰し、(所望の場合は適切な補助剤を添加した後で)顆粒混合物を加工して錠剤または糖衣錠コアを得ることによって入手できる。適切な賦形剤には例えば以下が含まれる:充填剤、例えば糖類(ラクトース、シュクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む);セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはプロピルビニルピロリドン(PVP)。所望の場合は、崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸若しくはその塩(例えばアルギン酸塩)を添加することができる。
【0083】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の生物学的作用因子(および1つ以上の追加の治療薬剤(例えば化学療法剤および/または脱メチル化剤))は、注射による(例えばボラス注射または持続輸液による)非経口投与用に処方される。注射のためには、1つの薬剤または複数の薬剤は、それらを水性または非水性溶媒(例えば植物油若しくは他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステルまたはプロプレングリコール)中に、かつ所望の場合には、通常的添加物、例えば可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定化剤および保存料とともに、溶解、懸濁または乳化させることによって調製物に処方することができる。いくつかの実施態様では、薬剤は、水溶液、好ましくは生理学的に適合し得る緩衝液(例えばハンクス液、リンゲル液、または生理学的緩衝食塩水)中で処方できる。注射用処方物は、ユニット投薬形、例えばアンプルまたはマルチ用量容器で添付の保存料とともに提供できる。組成物は、懸濁物、油性若しくは水性ベヒクル中の溶液または乳液の形状を採ることができ、例えば懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような薬剤を含むことができる。
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の生物学的作用因子(および1つ以上の追加の治療薬剤(例えば化学療法剤および/または脱メチル化剤))は、持続放出、制御放出、長期放出、時間指定放出または遅延放出処方物によるデリバリーのために、例えば治療薬剤を含む固体疎水性ポリマーの半浸透性マトリックスで調製される。多様なタイプの持続放出素材が確立され、それらは当業者には周知である。持続放出デリバリー系は、それらの設計に応じて薬剤を数時間または数日間にわたって、例えば4、6、8、10、12、16、20、24時間または24時間より長く薬剤を放出することができる。通常、持続放出処方物は、天然に存在するポリマーまたは合成ポリマー、例えばポリマー性ビニルピロリドン、例えばポリビニルピロリドン(PVP);カルボキシビニル親水性ポリマー;疎水性および/または親水性ヒドロコロイド、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース;並びにカルボキポリメチレンを用いて調製できる。
【0084】
治療キット
いくつかの実施態様では、癌細胞の殺滅または癌(例えばサイトカイン受容体を発現する癌)の治療で使用されるキットが提供される。いくつかの実施態様では、キットは、癌細胞で1つ以上のSOCS遺伝子(例えばSOCS-1遺伝子および/またはSOCS-3遺伝子)の発現を増加させるために十分な量の生物学的作用因子および1つ以上の追加の薬剤を含む。
いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、サイトカインまたはサイトカイン模倣物(例えば上記セクションIIIに記載したもの)である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、胸腺間質リンホポエチン(TSLP)またはその模倣物(例えばヒトTSLPまたはその模倣物)である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、インターロイキン7(IL-7)またはその模倣物(例えばヒトIL-7またはその模倣物)である。いくつかの実施態様では、生物学的作用因子は、上皮増殖因子(EGF)またはその模倣物(例えばヒトEGFまたはその模倣物)である。
いくつかの実施態様では、1つ以上の追加の薬剤は、1つ以上の治療薬剤(例えば上記IIIに記載したもの)である。いくつかの実施態様では、キットは、本明細書に記載の生物学的作用因子を含み、さらにまた化学療法剤および/または脱メチル化剤を含む。
いくつかの実施態様では、キットは、ヒト胸腺間質リンホポエチン(TSLP)またはその模倣物を含み、さらにまた例えば以下の化学療法剤を含む:アルキル化剤(例えばシクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、メクロレタミン、ウラムスチン、チオテパ、ニトロソウレアまたはテモゾロミド)、アントラサイクリン(例えばドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシンまたはミトキサントロン)、細胞骨格破壊剤(例えばパクリタキセルまたはドセタキセル)、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばボリノスタットまたはロミデプシン)、トポイソメラーゼの阻害剤(例えばイリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシドまたはテニポシド)、キナーゼ阻害剤(例えばボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブまたはビスモデギブ)、ヌクレオシドアナログまたは前駆体アナログ(例えばアザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メルカプトプリン、メトトレキセートまたはチオグアニン)、ペプチド抗生物質(例えばアクチノマイシンまたはブレオマイシン)、白金系薬剤(シスプラチン、オキサロプラチンまたはカルボプラチン)、または植物アルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセルまたはドセタキセル)。
いくつかの実施態様では、キットはヒト胸腺間質リンホポエチン(TSLP)またはその模倣物を含み、さらにまた脱メチル化剤、例えばシチジンアナログ(例えばアザシチジンまたはデシタビン)を含む。
【0085】
いくつかの実施態様では、キットはヒトIL-7またはその模倣物を含み、さらにまた例えば以下の化学療法剤を含む:アルキル化剤(例えばシクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、メクロレタミン、ウラムスチン、チオテパ、ニトロソウレアまたはテモゾロミド)、アントラサイクリン(例えばドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシンまたはミトキサントロン)、細胞骨格破壊剤(例えばパクリタキセルまたはドセタキセル)、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばボリノスタットまたはロミデプシン)、トポイソメラーゼの阻害剤(例えばイリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシドまたはテニポシド)、キナーゼ阻害剤(例えばボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブまたはビスモデギブ)、ヌクレオシドアナログまたは前駆体アナログ(例えばアザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メルカプトプリン、メトトレキセートまたはチオグアニン)、ペプチド抗生物質(例えばアクチノマイシンまたはブレオマイシン)、白金系薬剤(シスプラチン、オキサロプラチンまたはカルボプラチン)、または植物アルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセルまたはドセタキセル)。
いくつかの実施態様では、キットはヒトIL-7またはその模倣物を含み、さらにまた脱メチル化剤、例えばシチジンアナログ(例えばアザシチジンまたはデシタビン)を含む。
【0086】
いくつかの実施態様では、キットは上皮増殖因子またはその模倣物を含み、さらにまた例えば以下の化学療法剤を含む:アルキル化剤(例えばシクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、メクロレタミン、ウラムスチン、チオテパ、ニトロソウレアまたはテモゾロミド)、アントラサイクリン(例えばドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシンまたはミトキサントロン)、細胞骨格破壊剤(例えばパクリタキセルまたはドセタキセル)、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばボリノスタットまたはロミデプシン)、トポイソメラーゼの阻害剤(例えばイリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシドまたはテニポシド)、キナーゼ阻害剤(例えばボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブまたはビスモデギブ)、ヌクレオシドアナログまたは前駆体アナログ(例えばアザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メルカプトプリン、メトトレキセートまたはチオグアニン)、ペプチド抗生物質(例えばアクチノマイシンまたはブレオマイシン)、白金系薬剤(シスプラチン、オキサロプラチンまたはカルボプラチン)、または植物アルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセルまたはドセタキセル)。
いくつかの実施態様では、キットはヒトEGFまたはその模倣物を含み、さらにまた脱メチル化剤、例えばシチジンアナログ(例えばアザシチジンまたはデシタビン)を含む。
【0087】
診断キット
別の特徴では、サイトカイン受容体を発現または過剰発現する癌の診断に使用されるキットが提供される。いくつかの実施態様では、キットは、癌によって発現または過剰発現されるサイトカイン受容体に対し免疫学的に特異的な抗体(例えば抗CRLF2抗体、抗IL-7Rα抗体または抗EGFR抗体)および1つ以上の追加の試薬を含む。
いくつかの実施態様では、キットは、CRLF2の過剰発現に対し免疫学的に特異的な抗体(例えば抗CRLF2抗体)を含む。いくつかの実施態様では、キットは、EGFRの過剰発現に対し免疫学的に特異的な抗体(例えば抗EGFR抗体)を含む。いくつかの実施態様では、キットは、IL-7Rαの過剰発現に対し免疫学的に特異的な抗体(例えば抗IL-7Rα抗体)を含む。
抗体とサイトカイン受容体との特異的な免疫学的結合は、直接的または間接的に(例えば抗体に標識を結合させる)検出できる。直接標識には、蛍光若しくは冷光タグ、金属、色素、放射性核種などが含まれ、前記は抗体に結合される。例えばヨウ素-125(125I)標識抗体を用いることができる。サイトカイン受容体に特異的な化学発光抗体を用いる化学発光アッセイは、サイトカイン受容体レベルの鋭敏で非放射性検出に適切である。蛍光色素で標識された抗体もまた適切である。蛍光色素の例には、DAPI、フルオレセイン、ヘキスト33258、R-フィコシアニン、B-フィコシアニン、R-フィコシアニン、ローダミン、テキサスレッドおよびリサミンが含まれるが、ただしこれらに限定されない。間接標識には、当業界で周知の多様な酵素、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼなどが含まれる。セイヨウワサビペルオキシダーゼ検出系は、例えば発色原基質テトラメチルベンジジン(TMB)とともに用いることができ、TMBは450nmで検出できる可溶性生成物を過酸化水素の存在下で生じる。アルカリホスファターゼ検出系は、例えば発色原基質リン酸p-ニトロフェニルとともに用いることができ、前記は405nmで容易に検出できる可溶性生成物を生じる。同様に、β-ガラクトシダーゼ検出系は、発色原基質o-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシドとともに用いることができ、前記は410nmで検出できる可溶性生成物を生じる。ウレアーゼ検出系は、例えばウレア-ブロモクレゾール紫(Sigma Immunochemicals; St.Louis, MO)のような基質とともに用いることができる。
【0088】
いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体の過剰発現の検出に免疫学的に特異的な抗体は蛍光的に標識される。いくつかの実施態様では、蛍光標識抗体は癌細胞上のサイトカイン受容体と結合するかまたは複合物を形成し、フローサイトメトリーで検出され得る。サイトカイン受容体と免疫学的に特異的なビオチン化抗体、蛍光標識抗体、または他の標識抗体は市場で入手できる(例えば以下を照会されたい:BioLegend, San Diego, CA)。いくつかの実施態様では、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施態様では、抗体はポリクローナル抗体である。
いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体を発現または過剰発現する癌細胞を検出する方法は、サイトカイン受容体に対し免疫学的特異性を有する抗体と癌細胞を接触させる工程および抗体とサイトカイン受容体との結合を検出する工程を含む。いくつかの実施態様では、結合はフローサイトメトリーで検出される。
いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体を発現する細胞を検出する方法は、サイトカイン受容体に対し免疫学的特異性を有する抗体と細胞サンプルの細胞を接触させる工程および抗体とサイトカイン受容体との結合を検出する工程を含む。いくつかの実施態様では、当該方法はさらにまた、サイトカイン受容体に対し免疫学的特異性を有する抗体と細胞を接触させる前に、細胞サンプルを1つ以上のマーカーと接触させる工程を含む。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体に対し免疫学的特異性を有する抗体は抗CRLF2抗体である。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体に対し免疫学的特異性を有する抗体は抗EGFR抗体である。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体に対し免疫学的特異性を有する抗体は抗IL-7Rα抗体である。いくつかの実施態様では、1つ以上のマーカーは、CD2、CD3、CD5、CD7、CD10、CD34およびTDTから成る群から選択される。いくつかの実施態様では、細胞がB細胞型ALLに由来する場合、1つ以上のマーカーはCD10、CD2、CD34およびTDTから選択される。いくつかの実施態様では、細胞がT細胞である場合、1つ以上のマーカーはCD3、CD5およびCD7から選択される。いくつかの実施態様では、細胞と1つ以上のマーカーとを接触させる工程は、細胞と1つ以上のマーカーとの結合を含む。いくつかの実施態様では、結合はフローサイトメトリーで検出される。いくつかの実施態様では、1つ以上のマーカーと結合した細胞は、サイトカイン受容体に対して免疫学的特異性を有する抗体と接触させる前に当該細胞サンプルの残余の細胞から分離される。いくつかの実施態様では、1つ以上のマーカーと結合し分離された細胞を、サイトカイン受容体に対して免疫学的特異性を有する抗体と接触させる。いくつかの実施態様では、サイトカイン受容体に対して免疫学的特異性を有する抗体の結合は、細胞サンプルから分離した1つ以上の細胞で検出される。
【0089】
いくつかの実施態様では、1つ以上のマーカーをサイトカイン受容体に対して免疫学的特異性を有する抗体と一緒に用いて、細胞サンプルで癌細胞を検出するキット(例えばパネル)を作成することができる。いくつかの実施態様では、当該パネルを用いて、癌サンプルの癌細胞を識別することができる。前記識別は、細胞サンプルを1つ以上のマーカー、サイトカイン受容体に対して免疫学的特異性を有する抗体と接触させ、1つ以上のマーカーと細胞サンプルの細胞との結合を検出し、さらに1つ以上の結合マーカーを有する細胞で抗体とサイトカイン受容体との結合を検出することによって実施される。いくつかの実施態様では、1つ以上のマーカーを細胞サンプルと接触させ、さらに、サイトカイン受容体に対して免疫学的特異性を有する抗体との接触の前に1つ以上のマーカーと細胞サンプルの細胞との結合が検出される。
いくつかの実施態様では、1つ以上の追加の試薬は、酵素、基質、補助因子、安定化剤、緩衝剤、洗浄溶液、染色溶液など、例えば上記セクションIIIに記載されたものである。キットの感度を実質的に最適化する溶液中の試薬濃度を提供するために、多様な試薬の相対量は大きく変動し得る。
いくつかの実施態様では、キットはさらにまた、本発明の方法の実施のための指示(すなわちプロトコル)を含む説明物(例えば癌治療用キットの使用の説明)を含むことができる。説明物は典型的には記載または印刷物を含むが、ただし前記はそのようなものに限定されない。そのような説明を保存し、それらを最終使用者に伝達することができる任意の媒体が本発明で意図される。そのような媒体には、電子保存媒体(例えば磁性ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えばCD ROM)などが含まれるが、ただしそれらに限定されない。そのような媒体は、そのような説明物を提供するインターネットサイトへのアドレスを含むことができる。
【0090】
VII.治療組成物を同定する方法
別の特徴では、本明細書に記載の癌を治療する治療作用因子を同定する方法が提供される。いくつかの実施態様では、同定した治療作用因子を用いて、サイトカイン受容体(例えばCRLF2、EGFRまたはIL-7Rα)を発現または過剰発現する癌を治療することができる。
本明細書に記載するアッセイを用いて、リード化合物を同定することができる。前記先導化合物は、本明細書に記載の癌の治療で治療的に有効な化合物の同定のために更なる試験を行うために適切である。対象となる化合物は合成でも天然に存在するものでもよい。
本明細書に記載するスクリーニングアッセイは、in vitroで例えば細胞系アッセイを用いて、またはin vivoで例えば動物モデルを用いて実施することができる。当該スクリーニング方法は、アッセイ工程を自動化して任意の便利な供給源から当該アッセイに化合物を提供することによって、化学物質またはポリマーの大きなライブラリー(小有機分子、ペプチド、ペプチド模倣物、ペプトイド、タンパク質、ポリペプチド、糖タンパク質、オリゴ糖、またはポリヌクレオチド(例えば阻害性RNA(例えばsiRNA、アンチセンスRNA))を含む)をスクリーニングするために設計され、前記作業は典型的には並行して(例えばロボット操作アッセイによるマイクロタイタープレートでのマイクロタイター様式で)実施される。いくつかの実施態様では、当該スクリーニングアッセイは高処理様式を利用する。
【0091】
いくつかの実施態様では、癌治療のための作用因子を同定する方法は以下の工程を含む:
(a)1つ以上の化合物を細胞または細胞集団と接触させる工程;
(b)当該1つ以上の化合物が、参照値または当該1つ以上の化合物と接触させなかったコントロールサンプルと比較して、当該細胞または細胞集団において1つ以上のSOCS遺伝子の発現レベルを増加させるか否かを決定する工程;および
(c)当該細胞または細胞集団において1つ以上のSOCS遺伝子の発現レベルを増加させる1つ以上の化合物を選別する工程。
いくつかの実施態様では、1つ以上のSOCS遺伝子は、サイトカインシグナリング-1の抑制因子(SOCS-1)、サイトカインシグナリング-2の抑制因子(SOCS-2)、サイトカインシグナリング-3の抑制因子(SOCS-3)、および/またはサイトカイン誘発性SH2含有タンパク質(CISH)である。いくつかの実施態様では、当該方法は、当該1つ以上の化合物が、SOCS-1、SOCS-2、SOCS-3およびCISHの1つ、2つ、3つまたは4つ全ての発現レベルを増加させるか否かを決定する工程を含む。
いくつかの実施態様では、選別工程は、1つ以上の化合物を選別する工程を含み、前記化合物は、細胞または細胞集団において1つ以上のSOCS遺伝子(例えばSOCS-1、SOCS-2、SOCS-3および/またはCISH)の発現レベルを、参照値またはコントロールサンプルと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または90%より多く増加させる。いくつかの実施態様では、選別工程は、1つ以上の化合物を選別する工程を含み、前記化合物は、細胞または細胞集団で1つ以上のSOCS遺伝子(例えばSOCS-1、SOCS-2、SOCS-3および/またはCISH)の発現レベルを、参照値またはコントロールサンプルと比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、または10倍より多く増加させる。
【0092】
本明細書に記載するスクリーニングアッセイは、多くの細胞タイプまたは細胞集団のいずれにおいても実施できる。いくつかの実施態様では、細胞または細胞の集団は哺乳動物細胞である。いくつかの実施態様では、細胞または細胞の集団はヒト細胞である。いくつかの実施態様では、細胞または細胞の集団は、癌細胞(例えば白血病細胞または固形腫瘍)である。いくつかの実施態様では、細胞は初代細胞である。いくつかの実施態様では、細胞は形質転換細胞株に由来する。
本明細書に記載のアッセイにしたがって、本質的に任意の化学化合物をスクリーニングすることができる。いくつかの実施態様では、化合物は、水性または有機性溶液に溶解され得るものである。化学化合物に関して多くの供給業者(以下を含む:Sigma, St.Louis, MO;Aldrich, St.Louis, MO;Sigma-Aldrich, St.Louis, MO;Fluka Chemika-Biochemica Analytika, Buchs Switzerland)が存在し、同様にすぐにスクリーニングできる小有機分子およびペプチドライブラリーのプロバイダー(以下を含む:Chembridge Corp., San Diego, CA;Discovery Partners International, San Diego, CA;Triad Therapeutics, San Diego, CA;Nanosyn, Menlo Park, CA;Affymax, Palo Alto, CA;ComGenex, South San Francisco, CA;Tripos, Inc., St.Louis, MO;およびSelleckchem, Houston, TX)が存在することは理解されるであろう。
【0093】
代表的なアミノ酸化合物ライブラリーには以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):ペプチドライブラリー(例えば以下を参照されたい:米国特許5,010,175、6,828,422および6,844,161;Furka, Int.J.Pept.Prot.Res., 37:487-493, 1991;Houghton et al., Nature, 354:84-88, 1991;およびEichler, Comb Chem High Throughput Screen., 8:135, 2005)、ペプトイド(PCT公開WO 91/19735)、コードされたペプチド(PCT公開WO 93/20242)、ランダムバイオオリゴマー(PCT公開WO 92/00091)、ビニル性ポリペプチド(Hagihara et al., J.Amer.Chem.Soc., 114:6568, 1992)、β-D-グルコースの足場を有する非ペプチド性ペプチド模倣物(Hirschmann et al., J.Amer.Chem.Soc., 114:9217-9218, 1992)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば米国特許5,539,083参照)、抗体ライブラリー(以下を参照されたい:米国特許6,635,424および6,555,310;PCT公開PCT/US96/10287;およびVaughn et al., Nature Biotechnology, 14:309-314, 1996)およびペプチジルホスホネート(Campbell et al., J.Org.Chem., 59:658, 1994)。
いくつかの実施態様では、本明細書に記載のスクリーニングアッセイによる候補化合物の識別後に、化合物の最適化が実施される。典型的には、最適化は、in vitroおよびin vivoスクリーニングの(例えば適切な動物(例えばマウス、ラットまたはサル)モデルにおける)使用を必要とし、化合物の生物学的、薬理動態学的および薬力学的特性(例えば生物学的利用能、半減期、代謝、毒性、薬物動態プロフィール、および薬力学的活性)を評価する。例えば以下を参照されたい:Guido et al., Combinatorial Chemistry & High Throughput Screening, 2011, 14:830-839; and Ghose et al., ACS Chem Neurosci, 2012, 3:50-68。いくつかの実施態様では、候補化合物の構造的同族体が設計されスクリーニングされる。構造的同族体の設計およびスクリーニング方法は当業界では記載されている。例えば以下を参照されたい:Dimova et al., Med.Chem.Commun., 2016, 7:859-863;およびAnalogue-Based Drug Discovery II, J.Fischer and C.R.Ganellin, eds., Wiley-VCH Verlag GmbH & Co., KGaA, Weinheim, Germany, 2010。
本発明の具体的な実施態様をいくつか以下に例示する。
〔1〕サイトカイン受容体を発現する癌を有する対象を治療する方法であって、生物学的作用因子を対象の癌細胞でサイトカインシグナリング抑制因子遺伝子の1つ以上の発現を増加させるために十分な量で当該対象に投与する工程を含む、前記方法。
〔2〕SOCS遺伝子が、サイトカインシグナリング-1の抑制因子(SOCS-1)、サイトカインシグナリング-2の抑制因子(SOCS-2)、サイトカインシグナリング-3の抑制因子(SOCS-3)、および/またはサイトカイン誘発性SH2含有タンパク質(CISH)である、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕癌が白血病である、前記〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕白血病が急性リンパ芽球性白血病(ALL)である、前記〔3〕に記載の方法。
〔5〕白血病がB細胞型ALLまたはT細胞型ALLである、前記〔4〕に記載の方法。
〔6〕B細胞型ALLがPh様B細胞型ALLである、前記〔5〕に記載の方法。
〔7〕白血病が急性骨髄性白血病(AML)である、前記〔3〕に記載の方法。
〔8〕癌が固形腫瘍である、前記〔1〕に記載の方法。
〔9〕固形腫瘍が肺癌、子宮頸癌または卵巣癌に由来する、前記〔8〕に記載の方法。
〔10〕サイトカイン受容体が、上皮増殖因子受容体(EGFR)、サイトカイン受容体様因子2(CRLF2)またはインターロイキン7受容体α(IL-7R-α)である、前記〔1〕から〔9〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕癌がEGFR、CRLF2またはインターロイキン7受容体α(IL-7R-α)を過剰発現する、前記〔10〕に記載の方法。
〔12〕生物学的作用因子がサイトカインまたはサイトカイン模倣物である、前記〔1〕から〔11〕のいずれかに記載の方法。
〔13〕生物学的作用因子が、ヒト胸腺間質リンホポエチン(TSLP)、上皮増殖因子(EGF)、インターロイキン7(IL-7)、またはそれらの模倣物である、前記〔12〕に記載の方法。
〔14〕生物学的作用因子がヒトTSLPである、前記〔13〕に記載の方法。
〔15〕生物学的作用因子がヒトEGFである、前記〔13〕に記載の方法。
〔16〕生物学的作用因子がヒトIL-7である、前記〔13〕に記載の方法。
〔17〕ヒトTSLPまたはヒトTSLPの模倣物が、少なくとも30pg/mLの血清TSLPレベルを対象で生じる用量で投与される、前記〔13〕または〔14〕に記載の方法。
〔18〕サイトカインまたはサイトカインの模倣物が組換え生成される、前記〔12〕から〔16〕のいずれかに記載の方法。
〔19〕対象が成人である、前記〔1〕から〔18〕のいずれかに記載の方法。
〔20〕対象が年少者である、前記〔1〕から〔18〕のいずれかに記載の方法。
〔21〕生物学的作用因子が全身性に投与される、前記〔1〕から〔20〕のいずれかに記載の方法。
〔22〕生物学的作用因子が静脈内に投与される、前記〔1〕から〔21〕のいずれかに記載の方法。
〔23〕生物学的作用因子が第二の作用因子と併用して投与される、前記〔1〕から〔22〕のいずれかに記載の方法。
〔24〕第二の作用因子が化学療法剤である、前記〔23〕に記載の方法。
〔25〕第二の作用因子が脱メチル化剤である、前記〔23〕に記載の方法。
〔26〕第二の作用因子が放射線療法または免疫療法である、前記〔23〕に記載の方法。
〔27〕生物学的作用因子および第二の作用因子が連続的に投与される、前記〔23〕から〔26〕のいずれかに記載の方法。
〔28〕生物学的作用因子および第二の作用因子が同時に投与される、前記〔23〕から〔26〕のいずれかに記載の方法。
〔29〕サイトカイン受容体様因子2(CRLF2)、上皮増殖因子受容体(EGFR)またはインターロイキン7受容体α(IL-7R-α)を過剰発現する癌を有する対象を治療する方法であって、前記方法が、対象の癌細胞で1つ以上のSOCS遺伝子の発現を増加させるためにおよびCRLF2、(EGFR)またはIL-7R-αシグナリングを阻害するために、十分な量で生物学的作用因子を当該対象に投与する工程を含み、それによって癌を治療する、前記方法。
〔30〕当該癌がCRLF2、EGFRまたはIL-7Rαを過剰発現する、前記〔29〕に記載の方法。
〔31〕SOCS遺伝子が、サイトカインシグナリング-1抑制因子(SOCS-1)、サイトカインシグナリング-2抑制因子(SOCS-2)、サイトカインシグナリング-3抑制因子(SOCS-3)、および/またはサイトカイン誘発性SH2含有タンパク質(CISH)である、前記〔29〕に記載の方法。
〔32〕癌が白血病である、前記〔29〕から〔31〕に記載の方法。
〔33〕白血病が急性リンパ芽球性白血病(ALL)である、前記〔32〕に記載の方法。
〔34〕白血病がB細胞型ALLまたはT細胞型ALLである、前記〔33〕に記載の方法。
〔35〕B細胞型ALLがPh様B細胞型ALLである、前記〔34〕に記載の方法。
〔36〕白血病が急性骨髄性白血病(AML)である前記〔32〕に記載の方法。
〔37〕癌が固形腫瘍である、前記〔29〕に記載の方法。
〔38〕固形腫瘍が肺癌、子宮頸癌または卵巣癌に由来する、前記〔37〕に記載の方法。
〔39〕生物学的作用因子が、ヒトTSLP、EGF、若しくはIL-7またはそれらの模倣物である、前記〔29〕から〔38〕のいずれかに記載の方法。
〔40〕生物学的作用因子がヒトTSLPまたはヒトTSLPの模倣物である、前記〔29〕から〔38〕のいずれかに記載の方法。
〔41〕生物学的作用因子がヒトEGFまたはヒトEGFの模倣物である、前記〔29〕から〔38〕のいずれかに記載の方法。
〔42〕生物学的作用因子がヒトIL-7またはヒトIL-7の模倣物である、前記〔29〕から〔38〕のいずれかに記載の方法。
〔43〕癌がCRLF2を発現し、さらに当該方法が、ヒトTSPLまたはヒトTSLPの模倣物を対象に投与する工程を含む、前記〔29〕に記載の方法。
〔44〕癌がEGFRを発現し、さらに当該方法が、ヒトEGFまたはヒトEGFの模倣物を対象に投与する工程を含む、前記〔29〕に記載の方法。
〔45〕ヒトTSLPまたはヒトTSLPの模倣物が、少なくとも30pg/mLの血清TSLPレベルを対象で生じる用量で投与される、前記〔29〕から〔40〕のいずれかに記載の方法。
〔46〕生物学的作用因子が組換え生成される、前記〔29〕から〔45〕のいずれかに記載の方法。
〔47〕対象が成人である、前記〔29〕から〔46〕のいずれかに記載の方法。
〔48〕対象が年少者である、前記〔29〕から〔46〕のいずれかに記載の方法。
〔49〕生物学的作用因子が全身性に投与される、前記〔29〕から〔48〕のいずれかに記載の方法。
〔50〕生物学的作用因子が静脈内に投与される、前記〔29〕から〔49〕のいずれかに記載の方法。
〔51〕生物学的作用因子が第二の作用因子と併用して投与される、前記〔29〕から〔50〕のいずれかに記載の方法。
〔52〕当該第二の作用因子が化学療法剤である、前記〔51〕に記載の方法。
〔53〕当該第二の作用因子が脱メチル化剤である、前記〔51〕に記載の方法。
〔54〕当該第二の作用因子が放射線療法または免疫療法である、前記〔51〕に記載の方法。
〔55〕生物学的作用因子および第二の作用因子が連続的に投与される、前記〔51〕から〔54〕のいずれかに記載の方法。
〔56〕生物学的作用因子および第二の作用因子が同時に投与される、前記〔51〕から〔54〕のいずれかに記載の方法。
〔57〕サイトカイン受容体を発現する癌の治療のための医薬組成物であって、癌細胞で1つ以上のSOCS遺伝子の発現を増加させるために十分な量の生物学的作用因子、および医薬的に許容できる担体を含む、前記医薬組成物。
〔58〕癌がCRLF2、上皮増殖因子受容体(EGFR)またはインターロイキン7受容体α(IL-7R-α)の過剰発現を特徴とする、前記〔57〕に記載の医薬組成物。
〔59〕癌が白血病である、前記〔57〕または〔58〕に記載の医薬組成物。
〔60〕白血病が急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B細胞型ALL、Ph様B細胞型ALL、急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ性白血病(ALL)、T細胞型ALLである前記〔59〕に記載の医薬組成物。
〔61〕癌が固形腫瘍である、前記〔57〕または〔58〕に記載の医薬組成物。
〔62〕固形腫瘍が卵巣癌、肺癌または子宮頸癌に由来する、前記〔61〕に記載の医薬組成物。
〔63〕サイトカイン受容体がCRLF2、EGFRまたはIL-7R-αである、前記〔57〕から〔62〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔64〕生物学的作用因子がサイトカインまたはサイトカイン模倣物である、前記〔57〕から〔63〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔65〕生物学的作用因子が、ヒト胸腺間質リンホポエチン(TSLP)、上皮増殖因子(EGF)、インターロイキン7(IL-7)、またはそれらの模倣物である、前記〔64〕に記載の医薬組成物。
〔66〕生物学的作用因子がヒトTSLPである、前記〔64〕に記載の医薬組成物。
〔67〕生物学的作用因子がヒトEGFである、前記〔64〕に記載の医薬組成物。
〔68〕生物学的作用因子がヒトIL-7である、前記〔64〕に記載の医薬組成物。
〔69〕サイトカインまたはサイトカイン模倣物が組換え生成される、前記〔64〕から〔68〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔70〕組成物が静脈内投与のために処方される、前記〔57〕から〔69〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔71〕さらにまた第二の作用因子を含む、前記〔57〕から〔70〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔72〕第二の作用因子が化学療法剤である、前記〔71〕に記載の医薬組成物。
〔73〕第二の作用因子が脱メチル化剤である、前記〔71〕に記載の医薬組成物。
〔74〕サイトカイン受容体を発現する癌の治療のためのキットであって、癌細胞で1つ以上のSOCS遺伝子の発現を増加させるために十分な量の生物学的作用因子および第二の作用因子を含む、前記キット。
〔75〕生物学的作用因子がサイトカインまたはサイトカイン模倣物である、前記〔74〕に記載のキット。
〔76〕生物学的作用因子が、ヒト胸腺間質リンホポエチン(TSLP)、上皮増殖因子(EGF)、インターロイキン7(IL-7)、またはそれらの模倣物である、前記〔75〕に記載のキット。
〔77〕第二の作用因子が化学療法剤である、前記〔74〕から〔76〕のいずれかに記載のキット。
〔78〕第二の作用因子が脱メチル化剤である、前記〔74〕から〔76〕のいずれかに記載のキット。
〔79〕第二の作用因子が放射線療法または免疫療法である、前記〔74〕から〔76〕のいずれに記載のキット。
〔80〕癌が白血病である、前記〔74〕から〔76〕のいずれかに記載のキット。
〔81〕白血病が急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B細胞型ALL、Ph様B細胞型ALL、急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ性白血病(ALL)、T細胞型ALLである前記〔80〕に記載のキット。
〔82〕癌が固形腫瘍である、前記〔74〕から〔76〕のいずれかに記載のキット。
〔83〕固形腫瘍が子宮頸癌、肺癌または卵巣癌に由来する、前記〔82〕に記載のキット。
〔84〕癌がEGFR、IL-7RαまたはCRLF2を過剰発現する、前記〔74〕から〔83〕のいずれかに記載のキット。
〔85〕SOCS遺伝子が、サイトカインシグナリング-1抑制因子(SOCS-1)、サイトカインシグナリング-2抑制因子(SOCS-2)、サイトカインシグナリング-3抑制因子(SOCS-3)、および/またはサイトカイン誘発性SH2含有タンパク質(CISH)である、前記〔74〕に記載のキット。
〔86〕CRLF2を過剰発現する癌でCRLF2細胞シグナリングを阻害する方法であって、前記方法が有効量のTSLPおよび/またはIL-7を当該癌に投与する工程を含む、前記方法。
〔87〕癌が白血病である、前記〔86〕に記載の方法。
〔88〕白血病が急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B細胞型ALL、Ph様B細胞型ALL、急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ芽球性白血病(ALL)、T細胞型ALLである、前記〔87〕に記載の方法。
〔89〕癌が固形腫瘍である、前記〔86〕に記載の方法。
〔90〕固形腫瘍が子宮頸癌、肺癌または卵巣癌に由来する、前記〔89〕に記載の方法。
〔91〕TSLPがヒトTSLPまたはヒトTSLPの模倣物である、前記〔86〕から〔90〕のいずれかに記載の方法。
〔92〕IL-7がヒトIL-7またはヒトIL-7の模倣物である、前記〔86〕から〔91〕のいずれかに記載の方法。
〔93〕EGFRを過剰発現する癌でEGFR細胞シグナリングを阻害する方法であって、前記方法が有効量のEGFを当該癌に投与する工程を含む、前記方法。
〔94〕癌が白血病である、前記〔93〕に記載の方法。
〔95〕白血病が急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B細胞型ALL、Ph様B細胞型ALL、急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ芽球性白血病(ALL)、T細胞型ALLである、前記〔94〕に記載の方法。
〔96〕癌が固形腫瘍である、前記〔93〕に記載の方法。
〔97〕固形腫瘍が子宮頸癌、肺癌または卵巣癌に由来する、前記〔96〕に記載の方法。
〔98〕EGFがヒトEGFまたはヒトEGFの模倣物である、前記〔93〕から〔97〕のいずれかに記載の方法。
〔99〕TSLP治療に対する癌患者の応答を予測する方法であって、前記方法が、
(a)癌患者由来サンプルの癌細胞表面におけるIL-7Rαタンパク質の発現レベルを検出する工程、
(b)癌患者由来サンプルの癌細胞表面におけるCRLF2タンパク質の発現レベルを検出する工程、
および
(c)検出されたタンパク質発現レベルに基づいてCRLF2対IL-7Rαの比を計算する工程を含み、ここで、CRLF2のレベルがIL-7Rαのレベルより高い場合、当該癌患者はTSLP治療に応答すると予測される、前記方法。
〔100〕さらにまた、癌患者由来サンプルにおいてSTAT5についてタンパク質リン酸化レベルおよび/またはリボソームS6についてタンパク質リン酸化レベルを検出する工程を含む、前記〔99〕に記載の方法。
〔101〕癌細胞が白血病である、前記〔99〕または〔100〕に記載の方法。
〔102〕白血病が急性リンパ芽球性白血病(ALL)である、前記〔101〕に記載の方法。
〔103〕白血病がB細胞型ALLまたはT細胞型ALLである、前記〔101〕に記載の方法。
〔104〕B細胞型ALLがPh様B細胞型ALLである、前記〔103〕に記載の方法。
〔105〕白血病が急性骨髄性白血病(AML)である、前記〔101〕に記載の方法。
〔106〕癌細胞が固形腫瘍由来である、前記〔99〕または〔100〕のいずれかに記載の方法。
〔107〕固形腫瘍が子宮頸癌、肺癌または卵巣癌に由来する、前記〔99〕に記載の方法。
〔108〕検出工程がフローサイトメトリーによる、前記〔99〕から〔107〕のいずれかに記載の方法。
〔109〕対象でサイトカイン受容体を発現する癌サブタイプを診断する方法であって、前記方法が、(a)当該対象由来のサンプルを、サンプル中の細胞の表面で発現されるCRLF2に結合する抗体と接触させる工程、および(b)当該サンプルにおいてCRLF2を検出する工程を含み、それによって当該対象の癌サブタイプを診断する、前記方法。
〔110〕サンプルが白血病細胞である、前記〔109〕に記載の方法。
〔111〕白血病細胞が急性リンパ芽球性白血病(ALL)に由来する、前記〔110〕に記載の方法。
〔112〕白血病細胞がB細胞型ALLまたはT細胞型ALLに由来する、前記〔110〕に記載の方法。
〔113〕B細胞型ALLがPh様B細胞型ALLである、前記〔112〕に記載の方法。
〔114〕白血病細胞が急性骨髄性白血病(AML)細胞である、前記〔110〕に記載の方法。
〔115〕サンプルが固形腫瘍由来である、前記〔109〕に記載の方法。
〔116〕固形腫瘍が子宮頸癌、肺癌または卵巣癌に由来する、前記〔115〕に記載の方法。
〔117〕サンプルを標識抗体と接触させる工程を含む、前記〔109〕から〔116〕のいずれかに記載の方法。
〔118〕標識抗体が蛍光標識される、前記〔117〕に記載の方法。
〔119〕検出工程がフローサイトメトリーによる、前記〔109〕から〔118〕のいずれかに記載の方法。
〔120〕サイトカイン受容体を発現する癌サブタイプを診断する方法であって、前記方法が、(a)当該対象由来のサンプルを、サンプル中の細胞の表面で発現されるIL-7Rαに結合する抗体と接触させる工程、および(b)当該サンプルにおいてIL-7Rαを検出する工程を含み、それによって当該対象の癌サブタイプを診断する、前記方法。
〔121〕サンプルが白血病細胞である、前記〔120〕に記載の方法。
〔122〕白血病細胞が急性リンパ芽球性白血病(ALL)に由来する、前記〔121〕に記載の方法。
〔123〕白血病細胞がB細胞型ALLまたはT細胞型ALLに由来する、前記〔121〕に記載の方法。
〔124〕B細胞型ALLがPh様B細胞型ALLである、前記〔123〕に記載の方法。
〔125〕白血病細胞が急性骨髄性白血病(AML)細胞である、前記〔121〕に記載の方法。
〔126〕サンプルが固形腫瘍由来である、前記〔120〕に記載の方法。
〔127〕固形腫瘍が子宮頸癌、肺癌または卵巣癌に由来する、前記〔126〕に記載の方法。
〔128〕サンプルを標識抗体と接触させる工程を含む、前記〔120〕から〔127〕のいずれかに記載の方法。
〔129〕標識抗体が蛍光標識される、前記〔128〕に記載の方法。
〔130〕検出工程がフローサイトメトリーによる、前記〔120〕から〔129〕のいずれかに記載の方法。
〔131〕サイトカイン受容体と結合する抗体および1つ以上の追加の試薬を含む、サイトカイン受容体を発現する癌サブタイプを診断するキット。
〔132〕抗体が抗EGFR抗体である、前記〔131〕に記載のキット。
〔133〕抗体が抗CRLF2抗体である、前記〔131〕に記載のキット。
〔134〕抗体が抗IL-7Rα抗体である、前記〔131〕に記載のキット。
〔135〕抗体が標識される、前記〔131〕から〔134〕のいずれかに記載のキット。
〔136〕抗体が蛍光標識される、前記〔135〕に記載のキット。
〔137〕癌が白血病である、前記〔131〕から〔136〕のいずれかに記載のキット。
〔138〕白血病が急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B細胞型ALL、Ph様B細胞型ALL、急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ性白血病(ALL)、T細胞型ALLである、前記〔137〕に記載のキット。
〔139〕癌が固形腫瘍である、前記〔131〕から〔136〕のいずれかに記載のキット。
〔140〕固形腫瘍が子宮頸癌、肺癌または卵巣癌に由来する、前記〔139〕に記載のキット。
〔141〕癌サブタイプがEGFR、IL-7RαまたはCRLF2を過剰発現する、前記〔131〕から〔140〕のいずれかに記載のキット。

VIII.実施例
以下の実施例は例証のために提供され、本発明を制限しようとするものではない。
【実施例1】
【0094】
CRLF2-B-ALLにおけるhTSLP誘発シグナルの研究用モデル系としての患者由来異種移植の開発
ハイリスク白血病を効果的に治療する治療方法を明らかにするための最良の前臨床モデルは、患者からの白血病細胞を免疫不全マウスに注射することによって作製される患者由来異種移植(PDX)モデルである(Francis OL, Milford TA, Beldiman C, Payne KJ.Fine-tuning patient-derived xenograft models for precision medicine approaches in leukemia.J Investig Med.2016;64(3):740-4)。マウスhTSLPはヒトCRLF2受容体を活性化しないので標準的PDXモデルはCRLF2-B-ALLの研究には最適とはいえない。
CRLF2-B-ALLにおけるhTSLP誘発CRLF2シグナルを研究するために、PDXモデル系を開発した(図1A)。ヒトhTSLPを発現するように形質導入した間質細胞をマウスに注射することによって、我々はPDXマウスを操作しヒトhTSLPを生成させた(+T PDX)。コントロールマウス(-T PDX)は、コントロールベクターを形質導入した間質を注射することによって作製した(図1A)。最初に、実験は低いhTSLP循環レベルを+T PDXマウスで達成した。前記レベルは検出可能(5-10pg/mL)であったが、これは正常小児で報告された一番低いhTSLPレベルであった(Lee et al., Pediatr.Allergy Immunol., 2010; 21 (2 Pt2): e457-60)。30人の白血病患者に関するその後の調査は、前記レベルはそれら患者で正常な生理学的レベルであることを示した。
正常な造血幹細胞またはCRLF2-B-ALL細胞を移植したとき(図1B)、これらの低い生理学的レベルのTSLPを有する+Tおよび-T PDXは、ヒト細胞の良好な移植および以下を含むin vivo hTSLP機能効果を示した:(1)正常なヒトB細胞前駆細胞の産出は、+Tマウスにおいて-Tマウスと比較して3-6倍拡張した(図2)、および(2)+TマウスのCRLF2-B-ALL細胞は、-Tマウスの当該細胞と比較して本来の患者に顕著により類似する遺伝子発現プロフィールを示した(データは示していない)。
【実施例2】
【0095】
白血病治療用生物製剤としてのhTSLP
我々は、~32-93pg/mLのhTSLP血清レベルを有する+Tマウスを作製した。これらのマウスを用いて、ラテンアメリカ系原発性小児科患者から+Tおよび-T PDXを作製し、+TマウスでCRLF2-B-ALL細胞の拡張を期待した。ヒトB-ALL細胞は、-T PDXから採集した骨髄(BM)でフローサイトメトリーによって容易に検出できた(図3、上列)。驚いたことに、白血病細胞は+T PDXには本質的に存在しなかった。hTSLPが治療効果を示しているのではなく白血病細胞の移植を妨げているという可能性を排除するために、次の実験では、+Tまたは-T PDXの作製のための間質細胞の注射は、白血病細胞の移植後2週間まで開始させなかった。最初の実験の結果が確認され、CRLF2 B-ALLは、上昇生理学的レベルの循環hTSLPによって本質的に治癒した(図3)。
【実施例3】
【0096】
TLSPの低い生理学的レベルは白血病細胞で治療効果を示さない
この実験では、4-10pg/mLのhTSLP血清レベル(低い生理学的血清レベル)を有する+Tマウスを作製した。これらのマウスを用いて、我々は2人の白血病患者から+Tおよび-T PDXを作製した。ヒトB-ALL細胞は、-T PDXから採集した骨髄(BM)でフローサイトメトリーによって容易に検出できた(図4、中央パネル)。この実験の結果は、患者のTSLPの低い生理学的レベル(およびCRLF2シグナリングの過剰発現)は白血病細胞を正常に増殖させることを提示した(図4)。
【実施例4】
【0097】
複数の患者サンプルに対するTSLPの高い生理学的レベル
この実験では、30-40pg/mLのhTSLP血清レベルを有する+Tマウスを作製した。これらのマウスを用いて、我々は2人の白血病患者から+Tおよび-T PDXを作製した。ヒトB-ALL細胞は、-T PDXから採集した骨髄(BM)でフローサイトメトリーによって容易に検出できた(図5Aおよび5B)。実施例2の結果と一致して、白血病細胞は+T PDXでは本質的に存在せず、CRLF2-B-ALLは上昇生理学的レベルの循環hTSLPによって本質的に治癒したことが確認された(図6)。
【実施例5】
【0098】
TSLPはSOCSタンパク質のアップレギュレーションを誘発する
正常なサイトカインシグナリングの一過性性質に必要な1つのメカニズムは、サイトカインシグナルはサイトカインシグナリング抑制因子(SOCS)遺伝子をアップレギュレートできるということである。SOCSタンパク質は、シグナリングをブロックし負のフィードバックによりシグナリング成分を分解することによってサイトカインシグナルを停止させる(図7で例示される)。SOCSタンパク質は、JAKまたはJAKサイトカイン受容体と直接相互作用してJAKのリン酸化を妨げることによってJAK-STATシグナリングを阻害する。SOCSタンパク質はまた、JAKタンパク質をユビキチンリガーゼを介するプロテアソーム分解の標的にする(以下で概説される:Croker BA, Kiu H, Nicholson SE.SOCS regulation of the JAK/STAT signalling pathway.Semin Cell Dev Biol.2008;19(4):414-22;およびTrengove MC, Ward AC.SOCS proteins in development and disease.Am J Clin Exp Immunol.2013;2(1):1-29)。いくつかの事例では、SOCSタンパク質はまた、サイトカイン受容体を分解の標的にする(Kershaw NJ, Laktyushin A, Nicola NA, Babon JJ.Reconstruction of an active SOCS3-based E3 ubiquitin ligase complex in vitro: identification of the active components and JAK2 and gp130 as substrates.Growth Factors.2014;32(1):1-10)。
CRLF2およびIL-7受容体α鎖は、TSLPによって特有に活性化されるサイトカイン受容体シグナリング複合体を形成する(図7)(Russell et al., Blood, (2009) 114(13):2688-98 and Palmi et al., Leukemia, (2012) 26(10):2245-53)。TSLPサイトカインの結合は、下流のJAK-STAT5経路を活性化し(図7)、前記は、フローサイトメトリーによって評価してリン酸化STAT5を検出することができる(例えば図10A参照)。TSLPはまた下流のPI3K/AKT/mTOR経路を活性化し(Wohlmann et al., Biol Chem.2010;391(2-3):181-6;Nyga et al., Biochem J.2005;390(Pt 1):359-66;およびTasian et al, Blood.2012;120(4):833-42)、前記は、リン酸化リボソームタンパク質S6によって検出できる(例えば図10B参照)。
CRLF2シグナリング経路のSOCS媒介停止がTSLPの抗治療作用のメカニズムであるか否かを決定するために、我々は、高用量の組換えヒトTSLPの存在下および非存在下で48時間培養した初代CRLF2-B-ALL細胞で実施した全ゲノムマイクロアレーの結果を比較した(図8)。SOCS1、SOCS2、SOCS3およびCISHのmRNAの有意な増加が高用量TSLPによって誘発された。SOCS1およびSOCS3タンパク質を検出するフローサイトメトリーを用いて、我々は、これらのタンパク質が、CRLF2-B-ALL細胞株(図9A)およびCRLF2 B-ALLを有する2人の異なる小児科患者由来のCRLF2 B-ALL細胞(図9B)で高用量TSLPによってアップレギュレートされることを示した。これらのデータにより、SOCS1およびSOCS3タンパク質の両方が高用量TSLPによって上昇させられることが確認された。我々の実験は、TSLPは、CRLF2-B-ALL細胞株および患者由来のCRLF2 B-ALL細胞でSOCS1およびSOCS3タンパク質をアップレギュレートすることを示す。
hTSLP誘発抗白血病作用がSOCSタンパク質発現のアップレギュレーションによるものか否かを決定するために、我々は、hTSLPの存在下または非存在下でヒトCRLF2-B-ALL細胞株を培養し、続いてSOCSタンパク質の発現を評価した(図9A)。我々はSOCS1およびSOCS3のアップレギュレーションを評価した。なぜならば、これらはサイトカインシグナリングの強力な阻害因子であり、これら遺伝子の不活化はいくつかの白血病の発症の要件だからである。ヒトCRLF2-B-ALL細胞株、MUTZ5をTSLPの存在下および非存在下で3日間培養し、フローサイトメトリーのために染色してSOCS1およびSOCS3を検出した。図9Aは、SOCSタンパク質発現の染色における中央値蛍光強度(MFI)を示す。これらのデータは、hTSLPが、CRLF2-B-ALL細胞株、MUTZ5(図9A)およびCALL-4並びに原発性患者のサンプル(データは示されていない)でSOCS1およびSOCS3の両方のアップレギュレーションを誘発することを示す。両方の細胞株で実施したその後の同様な実験(データは示されていない)は、TSLPが、SOCS遺伝子、CISHをアップレギュレートすることを確認した。2人の白血病患者由来のCRLF2 B-ALL細胞もまた高用量TSLPに続いてSOCS1およびSOCS3のアップレギュレーションについて評価され、高用量TSLPの存在下での培養後にこれら2つのタンパク質のアップレギュレーションが誘発されることを示した(図9B)。
【実施例6】
【0099】
SOCSタンパク質のアップレギュレーションはCRLF2シグナリングの消失に対応する
SOCS遺伝子のアップレギュレーションはhTSLP誘発シグナリングの脱活性化を伴うか否かを決定した(図10A及び10B)。CRLF2 B-ALL細胞株をhTSLPの存在下または非存在下で3日間培養してSOCSをアップレギュレートさせ、続いて採集し、hTSLP刺激後にJAK/STAT5およびPI3/AKT/mTOR経路を活性化するそれらの能力について評価した。STAT5およびリボソームタンパク質S6のリン酸化について、細胞をフローサイトメトリーで評価した。図10Aおよび10Bは、STAT5およびリボソームタンパク質S6リン酸化染色の中央値蛍光強度(MFI)を示す。図10Aおよび10Bに示すように、hTSLPの非存在下で3日間培養したMUTZ5細胞及びCALL-4細胞は、STAT5およびリボソームタンパク質S6のリン酸化を誘発する(PI3/AKT/mTORの下流)それらの能力を維持した。対照的に、hTSLPの存在下で培養された白血病細胞は、hTSLP刺激後STAT5またはS6のリン酸化を示さなかった。
我々は、CRLF2下流シグナリングの消失は用量依存応答か否かを評価した。図11Aおよび11Bに示されるように、CRLF2下流シグナリングの消失(STAT5およびリボソームタンパク質S6のリン酸化を誘発する能力の消失によって示される)は用量依存応答であった。
我々はまた、受容体成分のTSLP誘発消失(前記メカニズムによってSOCSタンパク質は機能しサイトカインシグナルを停止させる)が、CRLF2下流シグナリングのTSLP誘発消失の要件であり得るか否かを評価した。図12に示されるように、高用量TSLPはIL-7Rα受容体成分の消失を誘発し、CRLF2に対する作用ははるかに小さかった。この作用は、我々が細胞培養でIL-7の消失を1日(図12)、2日および3日間(データは示されていない)を検出したように維持された。
次に、我々は、この作用が用量依存性であるか否か、さらに、CRLF2 B-ALL細胞をサイトカインで1時間パルスしてから生理学的(20pg/mL)レベルに戻した場合に前記作用が誘発されるか否かを決定する実験を実施した。IL-7Rαの消失はTSLPの用量に依存し、前記消失は、サイトカインの1時間パルスの後24時間(図13A)または24時間より長く(データは示されていない)持続した。図13Bに示されるように、TSLPは表面CRLF2レベルにはほとんど影響を与えなかった。IL-7Rの消失はCRLF2下流シグナリングの消失に相関するか否かを決定するために、我々は、STAT5リン酸化(図13C)およびリボソームタンパク質S6リン酸化(データは示されていない)を評価した。我々は、表面IL-7Rαの消失は、CRLF2下流シグナリングの消失と本実験および多様なTSLP濃度を用いた複数の他の実験(データは示されていない)の両方で相関することを見出した。これらのデータはCRLF2シグナリングのTSLP誘発停止は用量依存性であり、IL-7Rαの消失と対応し、さらにサイトカインのパルスに続いて達成され得ることを立証する。
【0100】
正常なB細胞前駆細胞を拡張させながらTSLPがCRLF2に対し抗白血病治療効果をもつことにおける我々の理論的根拠は以下のとおりである:CRLF2はTSLPに高い親和性を有し、正常では非常に低いレベルで正常なB細胞前駆細胞で発現される(フローサイトメトリーでは検出できないが(図14参照)、ただし細胞は機能的には応答性である)。CRLF2はTSLPと結合し、続いてIL-7Rαを動員して受容体複合物は内在化され、したがって、TSLPの濃度が高いときにはCRLF2はTSLPでプライミングされる。正常な細胞では、CRLF2はIL-7Rαより濃度が低いが、CRLF2 B-ALLではCRLF2はIL-7Rαよりもはるかに高い濃度である。したがって、正常細胞では、濃度が低いCRLF2はIL-7Rαの全てを内在化できるわけではないが、白血病細胞ではCRLF2はIL-7Rαを迅速に内在化させることができ、細胞がIL-7Rαの生成を持続し得るとしても、細胞表面に達する一切のIL-7Rαを一度に一分子、高用量のTSLPで(1時間のサイトカインパルスによるものでも)すでにプライミングされたCRLF2によって内在化される。個々の分子のシグナリングは、細胞効果を示すために必要とされる閾値に達するには不十分であろう。これはまた、なぜ正常なB細胞前駆細胞の数が高用量のTSLPで増加し、正常細胞が、シグナルを停止させることなくTSLPへの持続的応答のために十分なIL-7Rαを維持し得るかを説明するであろう。患者で通常存在する低レベル(<20pg/mL、本明細書の図15、実施例7参照)のTSLPの下では、結合TSLPを有するCRLF2受容体の数は、新規に生成されるIL-7Rαの細胞表面への復帰と歩調を合わせるには不十分である。
上記のデータは、CRLF2シグナリング停止を測定する迅速なアッセイは、(例えば細胞表面で測定される)IL-7Rαの消失を基準にし得ることを示唆する。場合によって、リン酸化STAT5および/またはリン酸化リボソームタンパク質S6のアッセイもまた検証アッセイとして含むことができよう。CRLF2シグナリングを測定するIL-7Rαアッセイは、フローサイトメトリーを用いて(例えば日常的に白血病を診断しているフローサイトメトリー検査室で)容易に実施でき、リンアッセイで達成し得るよりも迅速なデータの提供を期待できよう(例えばリンアッセイの約1日と比較してIL-7Rαアッセイは約2時間以内)。
TSLP治療はCRLF2発現にほとんど影響を与えなかったが、一方、IL-7Rαの消失を示さなかった図12に示される少数の細胞(上段右パネル(7.38%))が最低のCRLF2を有する細胞であったことは留意に値する(我々の上記の理論的根拠および我々が正常B細胞PDXモデルの開発で観察したことと一致する)。したがって、我々は、TSLP治療(例えばTSLP療法)に対しておそらく応答する患者を予測するために、IL-7RαおよびCRLF2発現の相対的レベルを用いて、新たに診断された白血病でCRLF2対IL-7Rαの比を決定することができることを提唱する。
【実施例7】
【0101】
白血病患者と一致するhTSLP血清レベルを有する異種移植マウスを作製するために用量および注射スケジュールを最適化する
上記の研究では、hTSLPは、モデル系(操作された間質が1週間の間隔でPDXマウスの腹腔に注射される)から持続的に生成された。これらの研究を敷衍するために、我々は、9人の小児科白血病患者のTSLP血清レベルを測定して、TSLPのレベルは、本明細書に示す低い生理学的レベルと一致すること、および時間が経過する中で枯渇が持続することを発見した(図15)。これらの患者の低いTSLPレベルは白血病の進行を可能にすると考えられる。
異種移植マウスにおける組換えhTSLPのin vivo安全性および機能活性を確立することによって、このモデルを用いて例えば以下について評価することができる:治療戦術(高い生理学的用量のhTSLPの単独または併用投与(1つ以上の他の薬剤(例えば標準的な看護薬剤(例えば複数の化学療法剤)による)の有効性および/または毒性;用量決定;投与頻度、および/または再発治療(例えば緩解白血病患者に少なくとも30pg/mLのhTSLP血清レベルを達成または維持するために十分な量でhTSLPを投与する(例えば成人または小児科の白血病患者で、彼らのhTSLP血清レベルが30pg/mLより降下する場合には、適切な量の組換えhTSLPが当該白血病患者に投与される))。
ある特徴では、+T PDXモデルで示されるhTSLP暴露を達成する組換えhTSLPの用量が決定される。ある実施態様では、大腸菌で生成された非グリコシル化hTSLP(業者(ProSpec, East Brunswick, NJ)から市場で入手できる)が適切な基質として用いられる。hTSLPはIL-7様サイトカインであり、免疫機能を発揮する生物製剤としてIL-7を使用するフェース1臨床試験が、大腸菌生成非グリコシル化IL-7を用いて実施されている(Sportes et al., Phase I study of recombinant human interleukin-7 administration in subjects with refractory malignancy.Clinical Cancer Research: 2010;16(2):727-35)。したがって、hTSLP半減期を決定し、多様な用量戦術を評価することができる。
別の特徴では、Balb/cマウスを用いて、以下を達成するためにマウスで要求されるhTSLP用量が確立される:
(1)小児科患者に存在する正常な血清hTSLPレベル(低い生理学的用量、例えば5-20pg/mL)、および
(2)本明細書で考察した、CRLF2 B-ALLのPDXモデルで治療効果を示したhTSLPのレベル(高い生理学的用量、すなわち少なくとも30pg/mLのTSLP血清レベル)。
そのような研究は異種移植された動物における組換えhTSLPの半減期に関する情報を提供する。異種移植におけるhTSLPの半減期を用いて、Balb/cマウスで(1)正常および(2)治療的hTSLP血漿レベルと等価の血漿hTSLPレベルをもたらすhTSLP用量が決定される。
本明細書で示すように、操作した間質を介してデリバリーされるhTSLPは、正常および悪性B細胞前駆細胞の両方で細胞性効果を誘発した(図2)。hTSLPは、低および高生理学的用量の両方で正常B細胞前駆細胞の拡張を誘発した(データは示されていない)。hTSLPは、高い生理学的用量でCRLF2 B-ALL細胞の消失を誘発したが(図5Aおよび5B)、低い生理学的用量では誘発しなかった(図4)。細胞レベルの組換えヒトhTSLPのin vivoにおける機能的作用を検証するために、低および高生理学的レベルを達成する用量で正常および悪性B細胞前駆細胞産生におけるhTSLPの作用が決定される。分子レベルにおけるhTSLP誘発シグナリングの組換えヒトhTSLPのin vivo機能的作用を検証するために、コントロールおよびhTSLP処理マウス(低および高生理学的用量を投与)から採集したCRLF2 B-ALL細胞のSOCS遺伝子発現も同様に評価される。
【実施例8】
【0102】
高用量EGFは子宮頸癌、肺癌および卵巣癌細胞でEGFR下流シグナリングを停止させる
他の癌に対する生物学的療法としての高用量サイトカインの潜在能力を決定するために、我々は、シグナリング経路を停止させる高用量FltリガンドおよびEGFの能力を評価する(前記受容体がこれら経路で主要な役割を果たすことは公知である)。我々は急性骨髄性白血病細胞株MOLM14でfltリガンドを試験した。MOLM14はflt3受容体細胞内シグナリングドメイン(白血病を亢進させる)の内部二重化を有する。我々は、高用量のfltリガンドの存在下または非存在下でSTAT5のリン酸化に相違を検出しなかった(データは示されていない)。
我々はまた、EGFRシグナリングが役割を果たすことが知られている固形腫瘍タイプ由来の細胞株を試験した。我々は、2つの子宮頸癌細胞株(UMSCC47およびSCC19、それぞれHPV+およびHPV-)を高用量EGF(200ng/mL;EGFの血漿レベルは平均して約39pg/mLと報告されている(Balcan et al., Int.J.Gynecol Cancer (2012) 7:1138-42))とともに培養した。細胞を24時間および48時間後に採集し、洗浄し、休養させてから簡単にEGFで刺激し、高用量EGFとの培養がEGFRシグナリングの消失をもたらすか否かを決定した(STAT5をリン酸化する能力の消失によって示される)。図16に示されるように、高用量EGFとの培養は、STST5のリン酸化によって測定されるEGFRシグナリングを停止させた。同様な結果が卵巣癌細胞株OVCAR8で観察された(図17)。肺癌については、我々はEGFRシグナリングの下流のリボソームタンパク質S6リン酸化を評価した。子宮頸癌および卵巣癌についての我々の観察と同様に、高用量EGFとの肺癌細胞株H1299の培養はEGFRシグナリングを停止させた。前記は、EGFによる簡単な刺激に応答するS6リン酸化能力の消失によって示された(図18)。これらのデータは、高用量EGFは(高用量TSLPと同様に)、対応する下流シグナリング経路を停止させる能力を有するという証拠を提供する。
本明細書に引用する全ての刊行物および特許は、参照によって含まれるために、各刊行物または特許があたかも具体的かつ個々に提示されたかのように参照によって本明細書に含まれ、さらに当該引用刊行物に関する方法および材料を開示し記述するために参照によって本明細書に含まれる。
本発明は本明細書で広くかつ一般的に記載される。当該一般的な開示内に入るより狭い範囲の種および亜属のグループの各々もまた本発明の部分を形成する。加えて、本発明の特色または特徴がマルクーシュグループの観点で記載されている場合、当業者は、それによって本発明もまたマルクーシュグループのメンバーの任意の個々のメンバーまたはサブグループに関して記載されていることを理解するであろう。
本発明は、ある種の特徴、実施態様および任意に選択した特色によって具体的に開示されているが、当業者はそのような特徴、実施態様および任意選択の特色の改変、改善および変型を求めることができること、およびそのような改変、改善および変型は本開示の範囲内と考えられることは理解されよう。
【0103】
表1:非正式配列表

図1A
図1B
図2A-2C】
図3
図4A-4C】
図5A
図5B
図6A-6D】
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13A-C】
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
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