(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】刻印装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/37 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
B29C45/37
(21)【出願番号】P 2020188793
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390015624
【氏名又は名称】浦谷商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦谷 直斗
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-280259(JP,A)
【文献】米国特許第6129016(US,A)
【文献】特開2009-298133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/37
B29C 33/42
B29C 33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形金型の凹所に嵌入される刻印装置であって、
中空円筒体の上部端面の円周状に文字または記号が刻設された外殻体と、
該外殻体の中空部の上部に配された上部駆動/従動機構と、
外殻体の中空部の下部に配された下部駆動機構と、
からなり、
前記上部駆動/従動機構は、当該外殻体の内部に固定され、上端に係合部が設けられた外側円筒と、
該外側円筒内に遊嵌され、上端に係合部が形成された内側円筒と、
当該外殻体内に遊嵌された中実または中空の円柱体から構成された回転子と、
該回転子を下方に付勢する付勢手段と、から構成され、
当該内側円筒は、連接棒を介してピストンと連結され、
当該回転子と当該外側円筒とが第1の状態において係合し、第2の状態において離脱し、
当該回転子と当該内側円筒とが第1の状態において離脱し、第2の状態において係合されてなり、
当該下部駆動機構は、圧縮空気源に連結された通気路を経て圧縮空気が導入されるシリンダーと、
該シリンダー内に遊嵌され、当該圧縮空気により駆動する当該ピストンと、
からなり、当該シリンダーは、前記外殻体に嵌合されてなる、
ことを特徴とする刻印装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刻印装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機では、可動金型基盤(可動型)が固定金型基盤(固定型)に近接・隔離する方向に駆動されて、金型基盤の型締め(型閉)と型開き(型開)が行われる。型締めされた金型内のキャビティーに溶融状の合成樹脂が供給され、その溶融状の合成樹脂が硬化して成形品が形成される。
【0003】
製品を大量生産する際に、製品の表面に製造番号や製造年月日を刻印する必要から、刻印装置が用いられる。これらの表示は、成形金型のキャビティー側に刻印表示部を備えた刻印装置を挿入し、挿入した状態で金型成形を行うことにより、刻印内容がそのまま成形品の表面に刻印成形されるようになっている。
【従来技術】
【0004】
従来のこの種の刻印装置としては、例えば特許文献1、特許文献2に示すような刻印装置が存在している。
図17の刻印装置(A)は、金型内に嵌入される表示外殻体(B)と、大径部(c1)と小径部(c2)を有し表示外殻体(B)内の嵌入される指標体(C)と、指標体(C)に取付けられるOリング(D)から構成されており、表示外殻体(B)及び指標体(C)の成形品側に臨む面には、数字等からなる表示部が形成されている。指標体には矢印が刻印されている。矢印にマイナスドライバーなどを係合させこれを回転させることで、矢印の方向を変化させ、表示部に刻印された望みの数字に矢印の先端を向けることができる。
【0005】
しかしながら、上記のような装置構成においては、指標体は可動金型基盤のキャビティー側に取り付けられているため、指標体の表示を変化させるためには、可動金型基盤を型開きして作業者が型開きされた2つの金型基盤の空間に身を乗り出し、指標体の方向を変更する必要があった。刻印装置が金型基盤の周辺部に設けられている場合には、比較的簡単に作業者は指標体を操作することができるが、刻印装置が金型基盤の中心部近くに設けられている場合には、作業者は型開きされた2つの金型基盤の空間に身をこじ入れ無理な姿勢で指標体を操作する必要があった。金型基盤は高温に加熱されているため、金型基盤の型開き部に身を乗り出したときに金型基盤に身体の一部が接触し火傷を負う可能性があった。
【0006】
日付を刻印するのであれば、上記作業は日に一回で済むため作業量としては許容されるかもしれないが、製造番号を上記刻印装置によって刻印する場合には、射出成形のショットのたびに、上記作業を行わねばならず、作業者への負担は見過ごすことのできないのほど大きかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、射出成形機において成形品の表面に製造番号や製造年月日を刻印するための刻印装置において、指標体の表示を変えるとき、作業者が型開きされた2つの金型基盤の空間に身をこじ入れ無理な姿勢で作業を行うことが無く、金型基盤の型開き部に身を乗り出したときに金型基盤に身体の一部が接触し火傷を負うことなく、耐熱性、耐久性に優れ、構造がシンプル且つ安価な刻印装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1による発明は、成形金型の凹所に嵌入される刻印装置であって、中空円筒体の上部端面の円周状に文字または記号が刻設された外殻体と、該外殻体の中空部の上部に配された上部駆動/従動機構と、外殻体の中空部の下部に配された下部駆動機構からなることを特徴とする刻印装置に関する。
【0011】
請求項2による発明は、前記下部駆動機構は、圧縮空気源に連結された通気路を経て圧縮空気が導入されるシリンダーと、該シリンダー内に遊嵌され、前記圧縮空気により駆動するピストンからなり、前記シリンダーは、前記外殻体に嵌合されてなる請求項1に記載の刻印装置に関する。
【0012】
請求項3による発明は、前記上部駆動/従動機構は、前記外殻体の内部に固定され、上端に係合部が設けられた外側円筒と、該外側円筒内に遊嵌され、上端に係合部が形成された内側円筒と、前記外殻体内に遊嵌された中実または中空の円柱体から構成された回転子と、該回転子を下方に付勢する付勢手段とから構成され、前記内側円筒は、連接棒を介して前記ピストンと連結され、前記回転子と前記外側円筒とが第1の状態において係合し第2の状態において離脱し、前記回転子と前記内側円筒とが第1の状態において離脱し、第2の状態において係合する請求項1または2に記載の刻印装置に関する。
【0013】
請求項4による発明は、前記外側円筒の上端に複数の第1鋸歯部が設けられ、前記内側円筒の上端に複数の第2鋸歯部が設けられ、前記回転子の側面に複数の突起部が放射状に設けられ、前記第1の状態において前記複数の第1鋸歯部と前記複数の突起部とが係合し、前記第2の状態において前記複数の第1鋸歯部と前記複数の突起部とが離脱し、前記第1の状態において前記複数の第2鋸歯部と前記複数の突起部とが離脱し、前記第2の状態において前記複数の第1鋸歯部と前記複数の突起部とが係合することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の刻印装置に関する。
【0014】
請求項5による発明は、前記回転子の前記複数の突起部の前記回転子の半径方向長さは、前記内側円筒の前記複数の第2鋸歯部の半径方向の厚みと、前記外側円筒の前記複数の第1鋸歯部の半径方向の厚みとを足し合わせた長さに略等しく、前記複数の第2鋸歯部の各々は前記複数の第1鋸歯部の各々と同一の形状及び寸法を有し、前記複数の第2鋸歯部の各々と前記複数の第1鋸歯部の各々とが、同一半径上で一列に並ぶ基準位置から予め決定された角度で配設されてなる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の刻印装置に関する。
【0015】
請求項6による発明は、前記予め決定された角度は、前記外側円筒の前記複数の第1鋸歯部が、前記内側円筒の前記複数の第2鋸歯部と同位相にならないような関係を有する角度であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の刻印装置に関する。
【0016】
請求項7による発明は、前記連接棒を挿通する第1係合部及び第2係合部と、前記外殻体の内部に遊嵌されるとともに前記連接棒に固着される第1回転子と、前記第1回転子を下方に付勢する第1付勢手段と、前記外殻体の内部に遊嵌されるとともに前記連接棒に固着される第2回転子とを含み、前記第1回転子は前記第1係合部と第1の状態において係合し、第2の状態において離脱するようにされ、前記第2回転子は、第2係合部と前記第2の状態において係合し、前記第1の状態において離脱するようにされることを特徴とする請求項1または2に記載の刻印装置に関する。
【0017】
請求項8による発明は、前記第1係合部及び前記第2係合部には、それぞれ複数の第1鋸歯部と複数の第2鋸歯部が設けられ、前記第1回転子には前記第1鋸歯部と係合する第3鋸歯部が設けられ、前記第2回転子には前記第2鋸歯部と係合する第4鋸歯部が設けられる、ことを特徴とする請求項7に記載の刻印装置に関する。
【0018】
請求項9による発明は、前記第1係合部、前記第2係合部、前記第1回転子、前記第2回転子は、同軸状に配されてなり、前記第1係合部の軸線まわりの角度、および前記第2係合部の軸線まわりの角度は、前記外殻体に対しそれぞれ固定され、前記第1係合部は、前記第2係合部に対して、前記複数の第1鋸歯部の各々と前記複数の第2鋸歯部の各々とが同一半径上において同じ位相となるように固定され、前記第2回転子の軸線まわりの角度は、前記第1回転子の軸線まわりの角度に対し固定され、両者は予め決定された一定の角度を保ちながら前記同軸の周りを回転可能とされ、前記第1回転子の前記第3鋸歯部が、前記第2回転子の前記第4鋸歯部と同位相にならないような関係を有する、ことを特徴とする請求項7または8に記載の刻印装置に関する。
【0019】
請求項10による発明は、前記連接棒が、第2付勢手段を介して2つに分割されてなる、ことを特徴とする請求項7乃至9に記載の刻印装置に関する。
【0020】
請求項11による発明は、前記上部駆動/従動機構が、円筒体の外表面に波状溝が形成された原動節と該原動節の溝に移動自在に嵌入されたピンを含む従動節からなる円筒カムと、当該円筒カムの従動節を介して当該円筒カムの上部に配された指標体からなる、請求項1または2に記載の刻印装置に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1によれば、本発明に係る刻印装置は、中空円筒体の上部端面の円周状に文字または記号が刻設された外殻体と、該外殻体の中空部の上部に収納された上部駆動/従動機構と、外殻体の中空部の下部に収納された下部駆動機構からなるので、作業者が型開きされた2つの金型基盤の空間に身をこじ入れ無理な姿勢で作業を行うことが無く、金型基盤の型開き部に身を乗り出したときに金型基盤に身体の一部が接触し火傷を負うことなく、指標体の表示を変えることができる。
【0022】
本発明の請求項2によれば、下部駆動機構は、圧縮空気源に連結された通気路を経て圧縮空気が導入されるシリンダーと、該シリンダー内に遊嵌され、前記圧縮空気により駆動するピストンを含む。シリンダーに高圧空気を導入、排気することでピストンを上下動させ、上部駆動/従動機構を動かし、上部駆動/従動機構に設けられた指標体の表示を変えることができる。下部駆動機構は、耐熱性、耐久性に優れ、構造がシンプル且つ安価である。
【0023】
本発明の請求項3によれば、上部駆動/従動機構において、回転子と外側円筒とが第1の状態において係合し第2の状態において離脱し、また、回転子と内側円筒とが第1の状態において離脱し、第2の状態において係合する。内側円筒はピストンにより上下するため、上記第1の状態と第2の状態を交互に変化させることができ、これによって回転子を軸線まわりに回転させることができ、回転子に固定された指標体の軸線まわりの角度を変化させることができる。
【0024】
本発明の請求項4によれば、外側円筒の上部に複数の第1鋸歯部が設けられ、内側円筒の上部に複数の第2鋸歯部が設けられ、前記回転子の側面に複数の突起部が放射状に設けられ、第1の状態において前記複数の第1鋸歯部と前記複数の突起部とが係合し、前記第2の状態において前記複数の第1鋸歯部と前記複数の突起部とが離脱し、前記第1の状態において前記複数の第2鋸歯部と前記複数の突起部とが離脱し、前記第2の状態において前記複数の第1鋸歯部と前記複数の突起部とが係合する動作を繰り返すことにより、回転子を軸線まわりに回転させることができ、回転子に固定された指標体の軸線まわりの角度を変化させることができる。
【0025】
本発明の請求項5によれば、回転子の前記複数の突起部の前記回転子の半径方向長さは、前記内側円筒の前記複数の第2鋸歯部の半径方向の厚みと、前記外側円筒の前記複数の第1鋸歯部の半径方向の厚みとを足し合わせた長さに略等しく、前記複数の第2鋸歯部の各々は前記複数の第1鋸歯部の各々と同一の形状及び寸法を有し、前記複数の第2鋸歯部の各々と前記複数の第1鋸歯部の各々とが、同一半径上で一列に並ぶ基準位置から予め決定された角度で配設されているので、内側円筒を上下させることで、回転子の突起部は内側円筒の鋸歯部と係合した状態と外側円筒の鋸歯部と係合した状態の、2つ状態を遷移することに応じて回転子を軸線まわりに回転させることができる。回転子に固定された指標体の軸線まわりの角度を変化させることができる。
【0026】
本発明の請求項6によれば、前記予め決定された角度とは、前記外側円筒の前記複数の第1鋸歯部が、前記内側円筒の前記複数の第2鋸歯部と同位相にならないような関係を有する角度である。そのため、内側円筒の1回の上下運動で、回転子は外側円筒の鋸歯部の1山分に相当する角度だけ軸線まわりに回転することができる。
【0027】
本発明の請求項7によれば、前記連接棒を挿通する第1係合部及び第2係合部と、前記外殻体の内部に遊嵌されるとともに前記連接棒に固着される第1回転子と第2回転子とを有し、第1回転子は前記第1係合部と第1の状態において係合し、第2の状態において離脱するようにされ、第2回転子は、第2係合部は前記第2の状態において係合し、前記第1の状態において離脱するようにされる刻印装置が提供される。該刻印装置において、第1の状態と第2の状態を交互に繰り返すことによって第1回転子に固定された指標体の軸線まわりの角度を変化させることができる。
【0028】
本発明の請求項8によれば、前記第1係合部及び前記第2係合部には、それぞれ複数の第1鋸歯部と複数の第2鋸歯部が設けられ、前記第1回転子には前記第1鋸歯部と係合する第3鋸歯部が設けられ、前記第2回転子には前記第2鋸歯部と係合する第4鋸歯部が設けられている。回転子と係合部の係合は上記鋸歯部の噛み合いによってなされるので、係合を確実に行うことが出来る。
【0029】
本発明の請求項9によれば、前記第1係合部、前記第2係合部、前記第1回転子、前記第2回転子は、同軸状に配されてなり、前記第1係合部の軸線まわりの角度、および前記第2係合部の軸線まわりの角度は、外殻体に対しそれぞれ固定され、前記第1係合部は、前記第2係合部に対して、前記複数の第1鋸歯部の各々と複数の第2鋸歯部の各々とが同一半径上において同じ位相となるように固定され、前記第2回転子の軸線まわりの角度は、前記第1回転子の軸線まわりの角度に対し固定され、両者は予め決定された一定の角度を保ちながら前記同軸の周りを回転可能とされ、前記第1回転子の前記第3鋸歯部が、前記第2回転子の前記第4鋸歯部と同位相にならないような関係を有するので、第1の状態から第2の状態に移行し、さらに第1の状態に戻ることによって、第1回転子に固定された指標体の軸線まわりの角度を、第1鋸歯部、第2鋸歯部、第3鋸歯部および第4鋸歯部に設けられた山の1山分に対応する角度だけ変化させることが出来る。
【0030】
請求項10によれば、前記連接棒が、第2付勢手段を介して2つに分割されてなるため、動作の安定性が確保される。
【0031】
請求項11によれば、前記上部駆動/従動機構が、円筒体の外表面に波状溝が形成された原動節と該原動節の波状溝に移動自在に嵌入されたピンを含む従動節からなる円筒カムと、当該円筒カムの従動節を介して当該円筒カムの上部に配された指標体が変化されるので、鋸歯部の噛み合わせによらない、連続的且つスムーズな指標体の動作が可能な刻印装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明に係る刻印装置を金型基盤に取り付けた状態の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る刻印装置の第1実施形態において外殻体のみを上下方向に破断した破断図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る刻印装置の第1実施形態において、内側円筒と外側円筒と回転子の関係を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る刻印装置の内側円筒と外側円筒と回転子の関係を示す正面図である。(a)は第1の状態の第1ステージを示す。(b)は第2の状態の第1ステージを示す。(c)は第2の状態の第2ステージを示す。(d)は第1の状態の第2ステージを示す。(e)は第1の状態の第1ステージを示す。(f)は回転子突起部と鋸歯部が係合したときに回転子突起部にかかる力を図示した説明図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る刻印装置の第2実施形態において外殻体のみを上下方向に破断した破断図において、第1の状態の第1ステージを示す説明図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る刻印装置の第2実施形態において外殻体のみを上下方向に破断した破断図において、第1の状態の第2ステージを示す説明図である。
【
図7】
図7は、本発明に係る刻印装置の第2実施形態において外殻体のみを上下方向に破断した破断図において、第2の状態の第1ステージを示す説明図である。
【
図8】
図8は、本発明に係る刻印装置の第2実施形態において外殻体のみを上下方向に破断した破断図において、第2の状態の第2ステージを示す説明図である。
【
図9】
図9は、本発明に係る刻印装置の第2実施形態において外殻体のみを上下方向に破断した破断図において、第2の状態の第2ステージを示す説明図である。
【
図10】
図10は、本発明に係る刻印装置の第2実施形態において外殻体のみを上下方向に破断した破断図において、第1の状態の第1ステージを示す説明図である。
【
図11】
図11は、本発明に係る刻印装置の第2実施形態において外殻体のみを上下方向に破断した破断図において、第1の状態の第1ステージを示す説明図である。
【
図12】
図12は、本発明に係る刻印装置の第2実施形態において、第1回転子と第1係合部および第2回転子と第2係合部の関係を示す図であり、(a)は第1の状態の第1ステージを示し、(b)は第1の状態の第2ステージを示し、(c)は第2の状態の第1ステージを示し、(d)は第2の状態の第2ステージを示し、(e)は第2の状態の第2ステージを示し、(f)は第1の状態の第1ステージを示し、(g)は第1の状態の第1ステージを示す。
【
図13】
図13は、本発明に係る刻印装置の第2実施形態において第2付勢手段が含まれない変形例の説明図である。
【
図14】
図14は、本発明に係る刻印装置の第3実施形態を示す説明図である。
【
図15】
図15は、本発明に係る刻印装置において指標体と回転子が分離された例を示す説明図である。
【
図16】
図16は、本発明に係る刻印装置において、下部駆動機構を電気モーターとラックおよびピニオンで構成した例を説明する図である。外殻体と金型基盤のみを上下方向に破断した状態を示す。
【
図17】
図17は、従来の刻印装置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る刻印装置の実施形態について、添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明に係る刻印装置(2)を金型基盤(1)に取り付けた状態の断面図である。本発明に係る刻印装置(2)の上面は、キャビティー表面と同一面となるように金型基盤(1)の凹所に緊合される。本発明に係る刻印装置(2)の最下部には、通気路(6)が接続されている。該通気路(6)を介して、圧縮空気源(コンプレッサー)(5)で生成された高圧空気は、注入用バルブ(4)と通気路(6)を介して刻印装置(2)に導入される。また、通気路(6)にはT型分岐継ぎ手が挿入され、分岐先の1つはベント用バルブ(3)に接続されている。ベント用バルブ(3)を閉め、注入用バルブ(4)を開けることでピストン(12)が上昇し、注入用バルブ(4)を閉めベント用バルブ(3)を開けることでピストン(12)は下降する。
【0035】
[第1実施形態]
[構成]
図2は、本発明に係る第1実施形態の刻印装置(2)の外殻体のみを上下方向に破断した破断図である。
図2に示すように、本発明に係る刻印装置(2)は中空円筒体の上部端面の円周状に文字または記号が刻設された外殻体(10)と、外殻体(10)の中空部の上部に収納された上部駆動/従動機構(UD)と、外殻体(10)の中空部の下部に収納された下部駆動機構(LD)からなる。
【0036】
下部駆動機構(LD)は、圧縮空気源に連結された通気路を経て圧縮空気が導入されるシリンダー(11)と、該シリンダー(11)内に遊嵌され、前記圧縮空気により駆動するピストン(12)からなり、前記シリンダー(11)は、前記外殻体(10)に固定されている。ピストン(12)の外周面と、連接棒(14)がシリンダー(11)を挿通する箇所にはOリング(OR)が装着されている。このOリング(OR)によってシリンダー(11)内の高圧空気の漏洩を防止している。
【0037】
上部駆動/従動機構(UD)は、前記外殻体(10)の内部に固定され、上端において係合部(E1)が設けられた外側円筒(8)と、該外側円筒(8)内部に遊嵌され、上端に係合部(E2)が形成された内側円筒(7)と、前記外殻体(10)内に遊嵌された中実又は中空円柱体から構成された回転子(9)と、該回転子(9)を下方に付勢する付勢手段(13)とから構成されている。前記内側円筒(7)は、連接棒(14)を介して前記ピストン(12)と連結されている。
【0038】
回転子(9)は有蓋円筒状を呈し、その上面は外殻体(10)の上端と面一になるように配設され、文字または記号、典型的には
図2に示されるように矢印が刻設され、回転子(9)それ自体が指標体となる。
【0039】
なお、前記内側円筒(7)が、連接棒(14)を介して前記ピストン(12)と連結されていれば、下部駆動機構(LD)は外殻体(10)の外部にあってもよい。または、下部駆動機構(LD)の一部が外殻体(10)の外部にあってもよい。
【0040】
上部駆動/従動機構(UD)の主要部を
図3に示す。外側円筒(8)の上部に複数の第1鋸歯部(15)が設けられ、前記内側円筒(7)の上部に複数の第2鋸歯部(16)が設けられている。
【0041】
内側円筒(7)の第2鋸歯部(16)および外側円筒(8)の第1鋸歯部(15)の鋸歯の先端は
図3では鋭角状に尖っているが、必ずしもこれに限定されることは無く、R形状であってもよい。
【0042】
回転子(9)の側面には複数の突起部(17)が放射状に設けられている。回転子(9)の突起部(17)の半径方向長さは、内側円筒(7)の前記複数の第2鋸歯部(16)の半径方向の厚みと、外側円筒(8)の複数の第1鋸歯部(15)の半径方向の厚みとを足し合わせた長さに略等しい。回転子(9)の側面の複数の突起部(17)は、複数の第2鋸歯部(16)および複数の第1鋸歯部(15)の鋸歯と噛み合うように、複数の第2鋸歯部(16)および複数の第1鋸歯部(15)の鋸歯と同一の形状及び寸法を有しつつ、これを上下逆にした断面形状を有しているが、必ずしもこれに限定されることはなく、鋸歯の溝に遊嵌される大きさであれば、円形の断面を有していてもよい。
【0043】
外側円筒(8)の内側面に縦方向のスリット(36)が設けられている。該スリット(36)は、内側円筒(7)の外側面に縦方向に設けられたリブ(37)に係合しているので、内側円筒(7)は、外側円筒(8)に対して軸線まわりには回転せず、上下方向のみに摺動可能である。
【0044】
内側円筒(7)の複数の第2鋸歯部(16)の各々と、外側円筒(8)の複数の第1鋸歯部(15)の各々とが、同一半径上で一列に並ぶ基準位置から予め決定された角度で配設されている。予め決定された角度は、前記外側円筒(8)の前記複数の第1鋸歯部(15)が、前記内側円筒(7)の前記複数の第2鋸歯部(16)と同位相にならないような関係を有する角度である。
【0045】
[動作]
図2に示されるように、内側円筒(7)がピストン(12)に接続されており、外側円筒(8)は外殻体(10)に上下方向及び軸線まわりに固定されている。前述のように、内側円筒(7)は外側円筒(8)に対して上下方向に摺動可能であるが、軸線まわりには固定された角度で遊嵌されている。上記構成より、ピストン(12)の上下方向の動きに対応して、内側円筒(7)は、外側円筒(8)に対して上下方向に移動する。
【0046】
回転子(9)は下方向に付勢されているので、回転子(9)は外側円筒(8)、内側円筒(7)またはその両方と常時係合している。第1の状態において回転子(9)と外側円筒(8)とが係合し、第2の状態において離脱する。第1の状態において回転子(9)と内側円筒(7)とが離脱し、第2の状態において係合する。
【0047】
【0048】
図4の(a)に示すように、ピストン(12)が最下点にあるとき、回転子(9)の突起部は外側円筒(8)の第1鋸歯部(15)の谷部最下点に係合している。この状態は、第1の状態の第1ステージである。
【0049】
図4の(b)に示すように、ピストン(12)が上昇すると内側円筒(7)も上昇するので、回転子(9)の突起部の底面は内側円筒(7)の第2鋸歯部(16)に当接する。前述のように、内側円筒(7)の第2鋸歯部(16)の山と、外側円筒(8)の第1鋸歯部(15)の山のピッチは同位相にならないような関係を有する角度で配設され、回転子(9)の突起部の幅は突起部が第1鋸歯部(1)および第2鋸歯部(16)の鋸歯に遊嵌されるに充分なほど鋸歯のピッチに比べて狭いので、ピストン(12)の上昇により、内側円筒(7)の第2鋸歯部(16)の最上点と最下点の中間点が外側円筒(8)の最上点を超えるまでは、回転子(9)の突起部の底面は内側円筒(7)の第2鋸歯部(16)の左半分と係合しつつ、回転子(9)の突起部の右側面は外側円筒(8)の第1鋸歯部(15)左壁と係合している。この状態は、第2の状態の第1ステージである。
【0050】
図4の(c)に示すように、さらにピストン(12)が上昇すると、内側円筒(7)の第2鋸歯部(16)の最上点と最下点の中間点が外側円筒(8)の最上点を超える。回転子(9)の突起部の右側面と外側円筒(8)の第1鋸歯部(15)左壁と係合がなくなるので、回転子(9)の突起部は、内側円筒(7)の右端まで内側円筒(7)の第2鋸歯部(16)スロープを滑り落ち、内側円筒(7)の第2鋸歯部(16)と完全に係合する。この状態は、第2の状態の第2ステージである。
【0051】
図4の(d)に示すように、次にピストン(12)が下降すると内側円筒(7)も下降する。内側円筒(7)の最下点が外側円筒(8)の第1鋸歯部(15)の最上点と最下点の中間点より下に下がると、回転子(9)の突起部の底面は外側円筒(8)の第1鋸歯部(15)の左半分と係合しつつ回転子(9)の突起部の右側面は内側円筒(7)の第2鋸歯部(16)左壁と係合を続けている。この状態は、第1の状態の第2ステージである。
【0052】
図4の(e)に示すように、さらにピストン(12)が下降し内側円筒(7)の最下点が外側円筒(8)の第1鋸歯部(15)の最上点と最下点の中間点より下に下がると、回転子(9)の突起部の右側面と内側円筒(7)の第2鋸歯部(16)左壁と係合がなくなるので、回転子(9)の突起部は、外側円筒(8)の右端まで外側円筒(8)の第1鋸歯部(15)のスロープを滑り落ち、外側円筒(8)の第1鋸歯部(15)の谷部最下点に完全に係合する。すなわち第1の状態の第1ステージに戻る。ただし、
図4の(a)に示した初めの第1の状態の第1ステージに比べて、回転子(9)の突起部(E1、E2)は、1山だけ右に移動している。
【0053】
なおここで、回転子(9)の突起部(17)が鋸歯部(E1、E2)のスロープに沿って移動する理由を説明する。
図4の(f)に示すように、回転子(9)の突起部(17)は付勢手段によって下方向にWの力で付勢されている。Wは鋸歯部(E1、E2)のスロープによって、スロープに平行な成分とスロープに垂直な成分の2方向の力に分解される。スロープに平行な力の成分(即ち、W・cos(α))のために、回転子(9)の突起部はスロープに沿って斜め下方向に移動する。
【0054】
なお、上記は、回転子(9)の上部が指標体となっている例であったが、指標体(50)と第一回転子(28)は分離されてもよい。例えば
図15に示すように、回転子(28)の上部にシャフト(51)を接続し、シャフト(51)を介して指標体(50)を回転させる構成であってもよい。このような構成とすることにより、金型基盤(1)の表面部にスペースが少ない場合、指標体(50)と、上部駆動/従動機構(UD)および下部駆動機構(LD)を分離することができ、金型基盤(1)の表面部に必要なスペースを減らすことができる。
【0055】
下部駆動機構(LD)は、シリンダー(11)と、該シリンダー(11)内に遊嵌され、前記圧縮空気により駆動するピストン(12)から構成されていたが、必ずしもこれに限定されることは無い。
図16には、電気モーター(55)とラック(56)およびピニオン(57)で構成される下部駆動機構(LD)を示す。電気モーター(55)を正転させるとピニオン(57)のギアに駆動されたラック(56)が上方に移動し、ラック(56)に取り付けられた連接棒(14)が上部駆動/従動機構(UD)内部の内側円筒(7)を上昇させることができる。電気モーター(55)を逆転させるとピニオン(57)のギアに駆動されたラック(56)が下方に移動し、ラック(56)に取り付けられた連接棒(14)が内側円筒(7)を下降させる。電気モーター(55)を正転させ、その後逆転させることにより内側円筒(7)は上昇、下降するので、前述の動作により回転子(9)および指標体を回転させることができる。
【0056】
なお、下部駆動機構(LD)に電気モーター(55)を用いた場合、シリンダーを用いた場合に比べて、下部駆動機構(LD)は耐熱性が弱くなる。よって下部駆動機構(LD)は金型基盤の熱の影響を受けない金型基盤の外部に設けられてもよい。本構成により、圧縮空気源が無い環境であっても、本願発明の実施が可能になる。
【0057】
[第2実施形態]
[構成]
図5から
図11は、本発明に係る第2実施形態の刻印装置(2)の外殻体(10)のみを上下方向に破断した破断図である。本発明に係る刻印装置(2)は中空円筒体の上部端面の円周状に文字または記号が刻設された外殻体(10)と、該外殻体(10)の中空部の上部に収納された上部駆動/従動機構(UD)と、外殻体(10)の中空部の下部に収納された下部駆動機構から構成される。
【0058】
前記下部駆動機構は、圧縮空気源に連結された通気路を経て圧縮空気が導入されるシリンダー(11)と、該シリンダー(11)内に遊嵌され、前記圧縮空気により駆動するピストン(12)から構成され、前記シリンダー(11)は、外殻体(10)に固定されている。
【0059】
図5から
図11に示すように、上部駆動/従動機構(UD)は、外殻体(10)の内部に固定されている。
【0060】
上部駆動/従動機構(UD)は、連接棒(14)を挿通する第1係合部(26)及び第2係合部(27)と、前記外殻体(10)の内部に遊嵌され、連接棒(14)に固着され、かつ前記第1係合部(26)と第1の状態において係合し、第2の状態において離脱する第1回転子(28)と、前記第1回転子(28)を下方に付勢する第1付勢手段(38)とを含んでいる。
【0061】
さらに、上部駆動/従動機構(UD)は、外殻体(10)の内部に遊嵌され、かつ前記連接棒(14)に固着され、前記第2係合部(27)と前記第2の状態において係合し、前記第1の状態において離脱する第2回転子(29)を含んでいる。
【0062】
第1係合部(26)及び第2係合部(27)には、それぞれ複数の第1鋸歯部(15)と複数の第2鋸歯部(16)が設けられている。第1回転子(28)には第1鋸歯部(15)と係合する第3鋸歯部(32)が設けられ、第2回転子(29)には第2鋸歯部(16)と係合する第4鋸歯部(33)が設けられている。
【0063】
第1の状態においては、第1鋸歯部(15)と第3鋸歯部(32)が部分的または完全に常時係合しているが、第2の状態において第1鋸歯部(15)と第3鋸歯部(32)が完全に離脱するか部分的に係合する。
【0064】
第1の状態においては、第2鋸歯部(16)と第4鋸歯部(33)が完全に離脱するか部分的に係合するが、第2の状態において第2鋸歯部(16)と第4鋸歯部(33)が部分的または完全に常時係合している。
【0065】
【0066】
第1係合部(26)、第2係合部(27)、第1回転子(28)、第2回転子(29)は、同軸状に配されている。
【0067】
第1係合部(26)の軸線まわりの角度、および第2係合部(27)の軸線まわりの角度は、外殻体(10)に対しそれぞれ固定され、第1係合部(26)は、第2係合部(27)に対して、複数の第1鋸歯部(15)の各々と複数の第2鋸歯部(16)の各々とが同一半径上において同じ位相となるように固定されている。
【0068】
第1回転子(28)と第2回転子(29)は中心軸に関して同軸状に結合されている。第2回転子(29)の軸線まわりの角度は、第1回転子(28)の軸線まわりの角度に対し固定され、両者は予め決定された一定の角度を保ちながら同軸の周りを回転可能である。予め決定された角度は、第1回転子(28)の第3鋸歯部(32)が、第2回転子(29)の第4鋸歯部(33)と同位相にならないような関係を有する角度である。
【0069】
第1係合部(26)と第1回転子(28)とが噛み合わされたとき、第2係合部(27)と第2回転子(29)が捻れの関係にあり、第2係合部(27)と第2回転子(29)が噛み合わされたとき、第1係合部(26)と第1回転子(28)が捻れの関係にある。
【0070】
第2係合部(27)および第2回転子(29)は、第1係合部(26)および第1回転子(28)に内包されていても良い。
【0071】
第1係合部(26)は有底円筒状を呈し、外殻体(10)に対してストップピン(35)によって固定されている。底部中央にはピストン(12)との連結棒を貫通させる貫通穴(図示せず)が設けられている。第1係合部(26)は連接棒(14)とは結合されていない。
【0072】
第2係合部(27)は有底円筒状を呈し、第1係合部(26)の内部に遊嵌されている。該第2係合部(27)には外側面に縦方向に長いスリット(36)(長孔)が設けられている。該スリット(36)は、第1係合部(26)の内壁に縦方向に設けられたリブ(37)に係合しているので、第2係合部(27)は、第1係合部(26)に対して軸線まわりには回転せず、上下方向のみに摺動可能である。第2係合部(27)は連接棒(34)によってピストン(12)に接続されているので、ピストン(12)の上下運動に対応して上昇、下降する。
【0073】
第1回転子(28)は有蓋円筒状を呈し、その上面は外殻体(10)の上端と面一になるように配設され、文字または記号、典型的には
図5から
図11に示されるように矢印が刻設されており、第1回転子(28)自体は、指標体として機能する。第1回転子(28)の下端には、前述のように第3鋸歯部(32)が設けられ、第1係合部(26)の第1鋸歯部(15)と相対して配設されている。
【0074】
第2回転子(29)は有蓋円筒状を呈し、第1回転子(28)の内部に嵌合されている。下端には、前述のように第4鋸歯部(33)が設けられ、第2係合部(27)の第2鋸歯部(16)と相対して配設されている。
【0075】
第1付勢手段(38)は、第1回転子(28)と、外殻体(10)の間に介在している。第2付勢手段(39)は、第1回転子(28)および第2回転子(29)と、第2係合部(27)の間に介装されている。
【0076】
なお、本実施形態において、第2付勢手段(39)が含まれないものも本発明に含まれることは言うまでもない。(
図13参照)
【0077】
第1係合部(26)の第1鋸歯部(15)および第2係合部(27)の第2鋸歯部(16)の鋸歯の先端は
図5から
図12に示すように直線で形成され尖っているが、必ずしもこれに限定されることは無く、R形状であってもよい。
【0078】
第1回転子(28)の第3鋸歯部(32)および第2回転子(29)の第4鋸歯部(33)は、それぞれ第1鋸歯部(15)および第2鋸歯部(16)の鋸歯と噛み合うように、第1鋸歯部(15)および第2鋸歯部(16)の鋸歯と同一の形状及び寸法を有しつつ、これを上下逆にした形状を有しているが、必ずしもこれに限定されることはなく、鋸歯の溝に遊嵌される大きさであれば、円形の断面を有していてもよい。
【0079】
[動作]
第2係合部(27)は、ピストン(12)と連接棒(14)を介して結合しているので、ピストン(12)が最下点にあるとき、第2係合部(27)は最下点にある。第1係合部(26)の第1鋸歯部(15)と第1回転子(28)の第3鋸歯部(32)は完全に係合している。一方、第2係合部(27)の第2鋸歯部(16)と第2回転子(29)の第4鋸歯部(33)は完全に脱離している。この様子を
図5および
図12の(a)に示す。この状態が第1の状態の第1ステージである。
【0080】
ピストン(12)が上昇すると、第2係合部(27)が上昇する。前述のように、第1回転子(28)の第3鋸歯部(32)と第2回転子(29)の第4鋸歯部(33)は、位相の違いがある。いま、第1鋸歯部(15)と第3鋸歯部(32)は完全に係合しているので、第2係合部(27)の第2鋸歯部(16)と第2回転子(29)の第4鋸歯部(33)は、
図6および
図12の(b)に示すように異なった位相で係合する。この状態が第1の状態の第2ステージである。
【0081】
ピストン(12)が上昇すると、第2係合部(27)が上昇する。第2回転子(29)の第4鋸歯部(33)の右斜面は、第2係合部(27)の第2鋸歯部(16)の右斜面と係合し、該右斜面から上向きの力を受けて上昇する。第1回転子(28)は第2回転子(29)と連動して動くので、第1回転子(28)も第2回転子(29)と共に上昇する。第1回転子(28)の第3鋸歯部(32)における谷部の高さが第1係合部(26)の第1鋸歯部(15)における山部の高さを超すと、第1回転子(28)の第3鋸歯部(32)と第1係合部(26)の第1鋸歯部(15)との係合が解除される。この様子を
図7および
図12の(c)に示す。この状態が第2の状態の第1ステージである。
【0082】
第1回転子(28)の第3鋸歯部(32)と第1係合部(26)の第1鋸歯部(15)との係合が解除されると、第1回転子(28)および第2回転子(29)は、第1付勢手段(38)が与えるスロープに平行な分力によって一気に右回転する。この回転は、第2回転子(29)の第4鋸歯部(33)右斜面が第2係合部(27)の第2鋸歯部(16)左斜面に当接することで終了する。この様子を
図8および
図12の(d)に示す。この状態が第2の状態の第2ステージである。
【0083】
ピストン(12)が下降すると、第2係合部(27)が下降するので、第2係合部(27)の第2鋸歯部(16)と第2回転子(29)の第4鋸歯部(33)の係合部分は徐々に小さくなる。同時に第1回転子(28)は徐々に右方向に回転する。この様子を
図9および
図12の(e)に示す。
【0084】
第2係合部(27)がさらに下降して、ついには第2鋸歯部(16)と第4鋸歯部(33)の係合部分が無くなると、第2回転子(29)と第2係合部(27)の係合が解除される。この様子を
図10および
図12の(f)に示す。この状態が第1の状態の第1ステージである。
【0085】
第1回転子(28)は、第1付勢手段(38)の与えるスロープに平行な分力によって一気に右回転する。この回転は、第1回転子(28)の第3鋸歯部(32)右面が第1係合部(26)の第1鋸歯部(15)左面に当接することで終了する。この様子を
図11および
図12の(g)に示す。すなわち
図5および
図12の(a)に示した状態に戻る。ただし、
図5および
図12の(a)に示した第1の状態の第1ステージと比較して、第1回転子(28)の第3鋸歯部(32)は1山分右にずれている。
【0086】
第2付勢手段(39)は、前述のように第1回転子(28)および第2回転子(29)と、第2係合部(27)の間に介装され、弱い付勢力を両者の間に与えることによって、上記動作の安定化に寄与している。
【0087】
なお、上記は、第1回転子(28)の上部が指標体となっている例であったが、指標体(50)と第1回転子(28)は分離されてもよい。例えば
図15に示すように、第1回転子(28)の上部にシャフト(51)を接続し、シャフト(51)を介して指標体(50)を回転させる構成であってもよい。このような構成とすることにより、金型基盤(1)の表面部にスペースが少ない場合、指標体(50)と、上部駆動/従動機構(UD)および下部駆動機構(LD)を分離することができ、金型基盤(1)の表面部に必要なスペースを減らすことができる。
【0088】
下部駆動機構(LD)は、シリンダー(11)と、該シリンダー(11)内に遊嵌され、前記圧縮空気により駆動するピストン(12)から構成されていたが、必ずしもこれに限定されることは無い。
図16には、電気モーター(55)とラック(56)およびピニオン(57)で構成される下部駆動機構を示す。本図における上部駆動/従動機構(UD)の構成は第1実施形態のものであるが、これを上述の第2実施形態の上部駆動/従動機構(UD)の構成に置き換えることにより、電気モーターを用いた下部駆動機構(LD)は第2実施形態にも適用可能である。電気モーター(55)を正転させるとピニオン(57)のギアに駆動されたラック(56)が上方に移動し、ラック(56)に取り付けられた連接棒(14)が上部駆動/従動機構(UD)内部の第2係合部(27)を上昇させる。電気モーター(55)を逆転させるとピニオン(57)のギアに駆動されたラック(56)が下方に移動し、ラック(56)に取り付けられた連接棒(14)が第2係合部(27)を下降させる。電気モーター(55)を正転させ、その後逆転させることにより第2係合部(27)は上昇、下降するので、前述の動作により第1回転子(28)および指標体を回転させることができる。
【0089】
なお、下部駆動機構(LD)に電気モーター(55)を用いた場合、シリンダーを用いた場合に比べて、下部駆動機構(LD)は耐熱性が弱くなる。よって下部駆動機構(LD)は金型基盤の熱の影響を受けない金型基盤の外部に設けられてもよい。本構成により、圧縮空気源が無い環境であっても、本願発明の実施が可能になる。
【0090】
[第3実施形態]
[構成]
図14は第3実施形態に係る刻印装置において外殻体(10)を取り除いた斜視説明図である。
【0091】
第3実施形態は、上部駆動/従動機構(UD)が、円筒体(45)の外表面に波状溝(46)が形成された原動節(47)と該原動節(47)の波状溝(46)に移動自在に嵌入されたピンを含む従動節(48)からなる円筒カム(49)と、当該円筒カム(49)の従動節(48)を介して当該円筒カム(49)の上部に配された回転子(9)を含んでいる。回転子(9)の上面は、文字または記号、典型的には矢印が刻設されており、回転子(9)の上部は、指標体(50)として機能する。下部駆動機構(LD)は上述の第1及び第2実施形態のものと同じであるので説明を省略する。
【0092】
[動作]
円筒体(45)がピストン(12)に固着され、ピストン(12)と共に上下動することにより、円筒体(45)は上下に動く。円筒体(45)の外表面に波状溝(46)が形成されているので、波状溝(46)に移動自在に嵌入されたピンを含む従動節(48)からなる円筒カム(49)は、当該円筒カム(49)の上部に配された回転子(9)および指標体(50)を軸線まわりに回転させることができる。
【0093】
なお、上記は、回転子(9)の上部が指標体(50)となっている例であったが、指標体(50)と回転子(28)は分離されてもよい。例えば
図15に示すように、回転子(28)の上部にシャフト(51)を接続し、シャフト(51)を介して指標体(50)を回転させる構成であってもよい。このような構成とすることにより、金型基盤(1)の表面部にスペースが少ない場合、指標体(50)と、上部駆動/従動機構(UD)および下部駆動機構(LD)を分離することができ、金型基盤(1)の表面部に必要なスペースを減らすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、射出成形機において成形品の表面に製造番号や製造年月日を刻印するための刻印装置において、指標体の表示を変えるとき、作業者が型開きされた2つの金型基盤の空間に身をこじ入れ無理な姿勢で作業を行うことが無く、金型基盤の型開き部に身を乗り出したときに金型基盤に身体の一部が接触し火傷を負うことなく、表示を変えることができ、耐熱性、耐久性に優れ、構造がシンプル且つ安価である刻印装置を提供するために好適に利用される。
【符号の説明】
【0095】
1 金型基盤
2 刻印装置
5 圧縮空気源
6 通気路
7 内側円筒
8 外側円筒
9 回転子
10 外殻体
11 シリンダー
12 ピストン
13 付勢手段
14 連接棒
15 第1鋸歯部
16 第2鋸歯部
17 突起部
26 第1係合部
27 第2係合部
28 第1回転子
29 第2回転子
32 第3鋸歯部
33 第4鋸歯部
34 連接棒
38 第1付勢手段
39 第2付勢手段
45 円筒体
46 波状溝
47 原動節
48 従動節
49 円筒カム
50 指標体
LD 下部駆動機構
UD 上部駆動/従動機構