(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】経口摂取用老化関連IL-1β血中濃度上昇抑制剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/19 20060101AFI20230307BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230307BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230307BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230307BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230307BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20230307BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230307BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230307BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20230307BHJP
【FI】
A61K36/19
A61P43/00 111
A61P11/00
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P19/06
A61P9/10 101
A23L33/105
A23K10/30
(21)【出願番号】P 2021134826
(22)【出願日】2021-08-20
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】593141078
【氏名又は名称】株式会社アルソア慧央グループ
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知也
(72)【発明者】
【氏名】▲温▼ 淑芳
(72)【発明者】
【氏名】林 士弘
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 佳佳
(72)【発明者】
【氏名】張 志萱
(72)【発明者】
【氏名】謝 岱儒
(72)【発明者】
【氏名】李 明翰
(72)【発明者】
【氏名】呂 亦晃
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-052145(JP,A)
【文献】特開2000-016945(JP,A)
【文献】特開2010-090088(JP,A)
【文献】特開2002-053481(JP,A)
【文献】特開2001-010964(JP,A)
【文献】特開平09-143091(JP,A)
【文献】特開平09-169662(JP,A)
【文献】国際公開第2018/029793(WO,A1)
【文献】WORLD NEUROSURGERY,2016年,Vol. 86,pp. 349-360
【文献】Biol. Pharm. Bull.,2004年,Vol. 27, No. 7,pp. 1070-1074
【文献】Oxidative Medicine and Cellular Longevity,2017年,Volume 2017, Article ID 5414297,pp. 1-18
【文献】J. Pharm. Pharmacol.,Vol. 53,2001年,pp. 1533-1539
【文献】Int. J. Mol. Sci.,2012年,Vol. 13,pp. 5074-5097
【文献】Rhinacanthus Nasutus Extract as a Neuroprotectant,Bioactive Nutraceuticals and Dietary Supplements in Neurological and Brain Disease,CHAPTER 9,2015年,pp. 77-84
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A61K 31/00-31/80
A23L 33/00-33/29
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
Mintel GNPD
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白鶴霊芝
から全質量のうちエタノールの質量が30%以上である溶媒により抽出された抽出物を得る工程を含む、前記抽出物を有効成分として含有し、経口摂取することで
老化によるIL-1βの血中濃度の上昇を抑制する経口摂取用
老化関連IL-1β血中濃度上昇抑制剤
の製造方法。
【請求項2】
前記抽出物が含水エタノールによる抽出物である請求項1に記載の経口摂取用
老化関連IL-1β血中濃度上昇抑制剤
の製造方法。
【請求項3】
前記経口摂取用老化関連IL-1β血中濃度上昇抑制剤が医薬品、飲食品、飼料又はこれらに配合する有効成分組成物の形態である請求項1又は2に記載の経口摂取用
老化関連IL-1β血中濃度上昇抑制剤
の製造方法。
【請求項4】
前記飲食品が健康増進用飲食品である請求項3に記載の経口摂取用
老化関連IL-1β血中濃度上昇抑制剤
の製造方法。
【請求項5】
前記経口摂取用老化関連IL-1β血中濃度上昇抑制剤が、経口摂取により
老化によるIL-1βの血中濃度の上昇を抑制することで、慢性閉塞性肺疾患、自己炎症性疾患、関節リウマチ、変形性関節症、痛風性関節炎及び動脈硬化のうち少なくとも1つを緩和、改善、抑制、予防又は治療するものである請求項1~4のいずれかに記載の経口摂取用
老化関連IL-1β血中濃度上昇抑制剤
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白鶴霊芝から全質量のうちエタノールの質量が30%以上である溶媒により抽出された抽出物を含有する経口摂取用老化関連IL-1β血中濃度上昇抑制剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白鶴霊芝(Rhinacanthus nasutus(L.)Kurz。白鶴霊芝草ともいう。)は、インド南部デカン高原の原産とされるリナカンサス属キツネノマゴ科に属する常緑小低木である。白鶴霊芝の全草は駆虫、消炎、皮膚真菌に対する抗菌作用があることが知られ(例えば、非特許文献1参照。)、主に中国、台湾等において、また、最近では日本国において漢方薬や食品として用いられている。その他、本出願人による以前の出願で、白鶴霊芝に活性酸素消去能があること(例えば、特許文献1参照。)、排泄促進作用があること(例えば、特許文献2参照。)、抗アレルギー作用があること(例えば、特許文献3参照。)及び抗腫瘍作用があること(例えば、特許文献4参照。)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-143091号公報
【文献】特開平9-169662号公報
【文献】特開2001-10964号公報
【文献】特開2002-53481号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】原色牧野和漢薬草大図鑑、492頁、北隆館、1988年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、白鶴霊芝の抽出物が経口摂取用IL-1β血中濃度上昇抑制剤、経口摂取用アミロイド-β脳内濃度上昇抑制剤、経口摂取用毛髪改善剤及び経口摂取用抗老化剤の有効成分となることは知られていない。
【0006】
本発明は、白鶴霊芝の抽出物の有する新規な性質を明らかにし、これに基づいて新たな用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者らは、白鶴霊芝の抽出物の新たな有用性について鋭意検討した結果、動物モデルを用いた実験系において、白鶴霊芝のエタノール抽出物を含む組成物が、経口摂取により血中のIL-1β濃度の上昇抑制作用、脳内のアミロイド-β濃度の上昇抑制作用、毛髪の改善作用及び抗老化作用を有することを見出して本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の実施形態を含む。
【0008】
(1)白鶴霊芝のエタノール抽出物を有効成分として含有し、経口摂取することでIL-1βの血中濃度の上昇を抑制する経口摂取用IL-1β血中濃度上昇抑制剤。
(2)前記エタノール抽出物が含水エタノールによる抽出物である(1)に記載の経口摂取用IL-1β血中濃度上昇抑制剤。
(3)医薬品、飲食品、飼料又はこれらに配合する有効成分組成物の形態である(1)又は(2)に記載の経口摂取用IL-1β血中濃度上昇抑制剤。
(4)前記飲食品が健康増進用飲食品である(3)に記載の経口摂取用IL-1β血中濃度上昇抑制剤。
(5)経口摂取によりIL-1βの血中濃度の上昇を抑制することで、慢性閉塞性肺疾患、自己炎症性疾患、関節リウマチ、変形性関節症、痛風性関節炎及び動脈硬化のうち少なくとも1つを緩和、改善、抑制、予防又は治療するものである(1)~(4)のいずれかに記載の経口摂取用IL-1β血中濃度上昇抑制剤。
(6)白鶴霊芝のエタノール抽出物を有効成分として含有し、経口摂取することでアミロイド-βの脳内濃度の上昇を抑制する経口摂取用アミロイド-β脳内濃度上昇抑制剤。
(7)前記エタノール抽出物が含水エタノールによる抽出物である(6)に記載の経口摂取用アミロイド-β脳内濃度上昇抑制剤。
(8)医薬品、飲食品、飼料又はこれらに配合する有効成分組成物の形態である(6)又は(7)に記載の経口摂取用アミロイド-β脳内濃度上昇抑制剤。
(9)前記飲食品が健康増進用飲食品である(8)に記載の経口摂取用アミロイド-β脳内濃度上昇抑制剤。
(10)経口摂取によりアミロイド-βの脳内濃度の上昇を抑制することで、脳アミロイドアンギオパチーを緩和、改善、抑制、予防又は治療するものである(6)~(9)のいずれかに記載の経口摂取用アミロイド-β脳内濃度上昇抑制剤。
(11)白鶴霊芝のエタノール抽出物を有効成分として含有し、経口摂取することで毛髪の光沢の低下を抑制する経口摂取用毛髪改善剤。
(12)前記エタノール抽出物が含水エタノールによる抽出物である(11)に記載の経口摂取用毛髪改善剤。
(13)医薬品、飲食品、飼料又はこれらに配合する有効成分組成物の形態である(11)又は(12)に記載の経口摂取用毛髪改善剤。
(14)前記飲食品が美容用飲食品又は健康増進用飲食品である(13)に記載の経口摂取用毛髪改善剤。
(15)白鶴霊芝のエタノール抽出物を有効成分として含有する、経口摂取用抗老化剤。
(16)前記エタノール抽出物が含水エタノールによる抽出物である(15)に記載の経口摂取用抗老化剤。
(17)医薬品、飲食品、飼料又はこれらに配合する有効成分組成物の形態である(15)又は(16)に記載の経口摂取用抗老化剤。
(18)前記飲食品が美容用飲食品又は健康増進用飲食品である(17)に記載の経口摂取用抗老化剤。
(19)ヒトまたは非ヒト哺乳動物におけるIL-1βの血中濃度上昇抑制、アミロイド-βの脳内濃度上昇抑制、毛髪の改善及び抗老化のために用いる、経口摂取用の医薬品、飲食品又はこれらに配合する有効成分組成物を製造するための、白鶴霊芝のエタノール抽出物の使用。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、白鶴霊芝のエタノール抽出物の有する新規な用途として、白鶴霊芝のエタノール抽出物を含む経口摂取用IL-1β血中濃度上昇抑制剤、経口摂取用アミロイド-β脳内濃度上昇抑制剤、経口摂取用毛髪改善剤、経口摂取用抗老化剤及び美容用飲食品・健康増進用飲食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の有効成分組成物の製造工程を示すフロー図である。
【
図2】
図2は、本発明の有効成分組成物等を投与した老化促進マウスの試験開始133日目における血清のIL-1βの濃度を示すグラフである。
【
図3】
図3は、本発明の有効成分組成物等を投与した老化促進マウスの試験開始133日目における脳ホモジネート上清のアミロイド-βの濃度を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明の有効成分組成物等を投与した老化促進マウスの22週齢における毛の光沢スコアを示すグラフである。
【
図5】
図5は、本発明の有効成分組成物等を投与した老化促進マウスの11項目の老化度評価スコアの平均値の経時変化を示すグラフである。
【
図6】
図6は、本発明の有効成分組成物等を投与した老化促進マウスの22週齢における11項目の老化度評価スコアの平均値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
(I)白鶴霊芝のエタノール抽出物
本発明の一実施形態における有効成分は、白鶴霊芝(Rhinacanthus nasutus(L.)Kurz)からエタノールにより抽出されたエタノール抽出物である。なお、本明細書において単に「エタノール」という場合には、「全質量のうちエタノールの質量が30%以上である溶媒」のことをいう。つまり、「エタノール」には、いわゆる無水エタノールだけではなく、エタノールと他の溶媒との混合溶媒も含む。
【0013】
(II)経口摂取用IL-1β血中濃度上昇抑制剤
本明細書における「経口摂取用IL-1β血中濃度上昇抑制剤」とは、IL-1βの血中濃度の上昇を抑制するもののことをいう。IL-1βは炎症性サイトカインの一種であり、IL-1βの持続的な産生は、骨、間接、血管、筋肉等における種々の慢性炎症性疾患を発生させる(小野嵜、インターロイキン1:細胞増殖制御から慢性炎症性疾患まで、YAKUGAKU ZASSHI、133(6)、645-660、2013)。具体的には、IL-1βは慢性閉塞性肺疾患(肺気腫)、自己炎症性疾患、関節リウマチ、変形性関節症、痛風性関節炎、動脈硬化といった疾患と関連があることが知られている。なお、本発明における「経口摂取用」とは、飲食(服用を含む)により摂取するためのものであることをいう。
【0014】
(III)経口摂取用アミロイド-β脳内濃度上昇抑制剤
本明細書における「経口摂取用アミロイド-β脳内濃度上昇抑制剤」とは、アミロイド-βの脳内濃度の上昇を抑制するもののことをいう。後述するようにアミロイド-βはアルツハイマー型認知症に深いかかわりがある他、髄膜及び脳内の血管壁に沈着することで脳アミロイドアンギオパチー及びこれに伴う脳出血の原因ともなる(古和ら、高齢者脳卒中の現状に寄せて 2.高齢者の脳出血の現状、日本老年医学会雑誌、54巻4号、514-518、2017)。
【0015】
(IV)経口摂取用毛髪改善剤
本明細書における「経口摂取用毛髪改善剤」とは、毛髪の改善に資するもの、特に毛髪の光沢の低下を予防又は改善するもののことをいう。後述する実施例2からも明らかなように、本発明の経口摂取用毛髪改善剤は、毛髪の光沢の低下に対して顕著な効果を有する。
【0016】
(V)経口摂取用抗老化剤
用語、「抗老化」とは、広く定義されるものであり、心筋梗塞、脳梗塞、骨粗鬆症、関節リウマチ、白内障などの老化(加齢)関連疾患やしみ、しわ、くすみなどの皮膚疾患を緩和、改善、抑制、予防又は治療することをいう。好ましくは、加齢に伴う慢性的な炎症や加齢に伴う有害物質の蓄積及び沈着に起因する疾患に対して緩和、改善、抑制、予防又は治療といった作用を有することをいう。また、外的因子(紫外線、空気の乾燥等)や加齢に起因する皮膚や毛髪の老化予防や改善作用を有することもいう。用語、「抗老化剤」とは、このような抗老化のために用いられる薬剤を含む。
【0017】
(VI)剤の形態
本実施形態の経口摂取用IL-1β血中濃度上昇抑制剤、経口摂取用アミロイド-β脳内濃度上昇抑制剤、経口摂取用毛髪改善剤及び経口摂取用抗老化剤は、医薬品、飲食品又はこれらに配合する有効成分組成物の形態で用いることができる。当該有効成分組成物として用いる場合、白鶴霊芝のエタノール抽出物をそのまま用いることのみならず、当該白鶴霊芝のエタノール抽出物の粗精製品あるいは精製品も用いることができる。
【0018】
本実施形態の有効成分組成物は、適当な可食性担体(食品素材)、製薬上許容される担体を適宜配合して、後述するような飲食品、医薬品等の形態に調製されるのが好ましい。以下に、当該有効成分組成物を含む医薬品及び飲食品の形態について具体的に説明する。
【0019】
(医薬品)
本実施形態の経口摂取用IL-1β血中濃度上昇抑制剤、経口摂取用アミロイド-β脳内濃度上昇抑制剤、経口摂取用毛髪改善剤及び経口摂取用抗老化剤を医薬品とする場合は、白鶴霊芝のエタノール抽出物と共に製剤学的に許容される適当な製剤担体を用いて、一般的な医薬組成物の形態に調製されて実用される。該製剤担体としては、通常、この分野で使用されることの知られている充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の希釈剤あるいは賦形剤を例示できる。これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択使用される。
【0020】
医薬組成物の投与単位形態としては、各種の形態が選択できるが、好適には経口投与用製剤が挙げられる。経口投与製剤の代表的なものとしては錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤等が挙げられる。
【0021】
錠剤の形態に成形するに際しては、上記製剤担体として例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、リン酸カリウム等の賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等の崩壊剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド等の界面活性剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン、デンプン等の保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコールなどの滑沢剤等を使用できる。更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
【0022】
丸剤の形態に成形するに際しては、製剤担体として例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤;アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤;ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。
【0023】
更に、医薬組成物中には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を含有させることもできる。
【0024】
上記医薬組成物の投与方法は特に制限がなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等に応じて決定される。また、その投与量は、用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等により適宜選択されるが、通常成人一日あたり0.1~1000mg、好ましくは1~300mg、さらに好ましくは10~150mg程度とするのがよく、該製剤は1日に1~4回に分けてヒトに投与することができる。
【0025】
(飲食品)
本実施形態の経口摂取用IL-1β血中濃度上昇抑制剤、経口摂取用アミロイド-β脳内濃度上昇抑制剤、経口摂取用毛髪改善剤及び経口摂取用抗老化剤を飲食品とする場合は、有効成分組成物を加えたお茶としての形態の食品や、有効成分組成物を配合した加工食品としての形態の食品を例示することができる。お茶としては、白鶴霊芝自体の葉・茎若しくは根の乾燥物と混合して、又は、他の茶原料と混合して用いることが好ましい。茶原料としては、緑茶、ウーロン茶、プーアル茶、紅茶、ほうじ茶、玄米茶、杜仲茶、柿の葉茶、桑の葉茶等、通常お茶として用いられるものであれば、どのようなものでも用いることができる。なお、白鶴霊芝の葉・茎または根の乾燥物は、他の茶原料と同様に焙煎して用いることもできる。
【0026】
他の飲食品形態の例としては、漬物、味噌、発酵茶、パン等の発酵食品、離乳食、粉ミルク、ベビーフード等の乳児用食品、発泡製剤、ガム、グミ、プディング等の菓子類、麺類、カプセル、顆粒、粉末、錠剤等の栄養補助食品等、発酵乳、乳酸菌飲料、発酵野菜飲料、発酵果実飲料、発酵豆乳飲料等を挙げることができる。「発酵乳」とは、乳又は乳製品を乳酸菌、ビフィズス菌又は酵母で発酵させた糊状又は液状にしたものをいう。従って該発酵乳には飲料形態と共にヨーグルト形態が包含される。また「乳酸菌飲料」とは、乳又は乳製品を乳酸菌、ビフィズス菌又は酵母で発酵させた糊状又は液状にしたものを主原料としてこれを水に薄めた飲料をいう。
【0027】
本明細書における「飲食品」とは、専ら飲食のために経口的に用いられる形態のものすべてを含み(例えば、飲料も含む)、錠剤などの形態のものであっても、専ら飲食のために用いられる限りにおいては、本明細書における飲食品に含まれる。例えば、IL-1βの血中濃度上昇抑制、アミロイド-βの脳内濃度上昇抑制、毛髪改善又は抗老化をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した、健康食品、健康補助食品、病者用食品、栄養補助食品、あるいは、厚生労働省の定める保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)も、本明細書における飲食品に含まれる。
【0028】
好ましい実施形態としては、健康増進用飲食品が挙げられる。健康増進用飲食品とは、加齢に伴う慢性的な炎症等を緩和等することにより対象者の体調を整え、体質を改善するもののことをいう。本明細書において、「健康増進」とは、単に病気でない、虚弱でないというのみならず、身体的、精神的そして社会的に完全に良好な状態である「健康」状態を増強することを意味する。
【0029】
また、好ましい実施形態として、美容用飲食品も挙げられる。用語、「美容用」とは、対象者の老化の進行等を抑制して美的外観を維持又は改善するための用途のことをいい、これには、肌や髪の美的外観の改善等も含まれる。特に、後述する実施例において、本実施形態の有効成分を経口摂取した老化マウスの毛並み、毛の艶及び眼周囲の皮膚状態等の老化指標が改善されることから、対象者の老化を抑制することによる美的外観の改善、すなわち美容用の飲食品としての用途が期待される。また、本実施形態の美容用飲食品は、さらに、経口摂取用の皮膚(肌)老化防止(予防)剤、皮膚(肌)の弾力性改善剤、抗皺剤、肌質改善剤、髪美容改善剤、便通改善剤、体調改善剤、体質改善剤として使用することもできる。
【0030】
また、この健康増進用飲食品及び美容用飲食品は、上記の有効成分以外にも、生理活性物質、(食品)原料、(食品)添加物などを適宜必要に応じて含有していてもよい。添加物・原料としては、例えば、食品等の製造・加工・保存に際して、添加・混和・浸潤その他の方法によって使用するものが挙げられ、例えば、賦形剤、増量剤、増粘剤、結合剤、滑沢剤、安定化剤、着色剤、乳化剤、可溶化剤、着色料、香味料、調味料、香辛料、甘味料、保存料、香料として通常用いられているようなものが挙げられる。
【0031】
本実施形態による飲食品における有効成分組成物の含有量としては特に限定されるものではなく、適宜決定できる。IL-1β血中濃度上昇抑制、アミロイド-β脳内濃度上昇抑制、毛髪改善又は抗老化の効果を奏する観点から、それぞれの飲食品の全質量に対して、例えば、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上がより好ましい。一方、飲食品中における有効成分組成物の含有量の上限は特に制限されず、例えば、有効成分組成物としての白鶴霊芝のエタノール抽出物をそのまま摂取してもよいが、通常は、飲食品の形態に合わせて適宜調整することができる。
【0032】
(VII)有効成分組成物の製造方法
本発明の他の側面では、IL-1βの血中濃度上昇抑制作用、アミロイド-βの脳内濃度上昇抑制作用、毛髪改善作用及び抗老化作用を有する有効成分組成物の製造方法を提供する。
図1は、当該有効成分組成物の製造工程を示すフロー図である。この方法は、白鶴霊芝を粉砕する粉砕工程(S01)と、白鶴霊芝からエタノールによる抽出を行う抽出工程(S02)と、抽出に用いた溶媒(エタノール)を除去する溶媒除去工程(S03)と、を含む。
【0033】
粉砕工程(S01)は、例えば、通常用いられる粉砕機等を用いて実施することができる。白鶴霊芝については、原料である白鶴霊芝の葉、茎、根、花等を、適当な時期に採取した後、そのままのもの、又は、通常通風乾燥等の乾燥工程に付し、原料としたものを用いることができる。抽出原料となる白鶴霊芝のどの部位を用いるか、どの程度細かく粉砕するか等については、白鶴霊芝の状態や製造すべき製品の形態等に応じて適宜決定することができる。なお、白鶴霊芝の粉砕は抽出を促進するために行うものであるため、白鶴霊芝を粉砕する代わりに細切しても同じような効果が得られる。また、白鶴霊芝を粉砕しなくても十分なエタノール抽出物が得られる場合には、粉砕工程を実施しなくてもよい。
【0034】
抽出工程(S02)は、白鶴霊芝及びエタノールを用いる限り、通常工業的・実験的に用いられる公知の抽出方法(例えば、「ファイトメディシン、第16巻、929~934ページ、2009年」を参照。)により行うことができる。白鶴霊芝から抽出を行うときには、溶媒として含水エタノール(エタノールと水との混合溶媒)を用いることが好ましく、90%(w/w)エタノールを用いることが一層好ましい。
【0035】
抽出温度は、通常0~100℃、好ましくは5~80℃である。溶媒が沸騰する条件で抽出を行う場合には、溶媒を還流させながら抽出を行うことが好ましい。抽出時間は、1時間~10日間程度であり、溶媒量は、乾燥原料あたり1回ごとに通常1~30倍重量、好ましくは5~10倍重量である。抽出操作は、攪拌であっても単なる浸漬であってもよい。抽出操作は、必要に応じて複数回繰り返してもよい。また、条件が異なる抽出操作を組み合わせてもよい。さらに、上記の操作で得られた粗抽出液から不溶性残渣を濾過若しくは遠心分離により取り除く操作を行うことが好ましい。
【0036】
溶媒除去工程(S03)では、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥などにより溶媒(エタノール)を除去し、白鶴霊芝のエタノール抽出物を固形乾燥物(乾固物)として回収することができる。かくして得られる白鶴霊芝のエタノール抽出物は、本発明の有効成分組成物として利用することができる。なお、最終的に医薬品又は飲食品とするにあたって、この段階で溶媒除去を行う必要が無い場合(例えば、医薬品又は飲食品の材料としてエタノールを含むことが好ましい場合)には、溶媒除去工程を省略してもよい。
【0037】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。なお、以下の実施例において、各種成分の添加量を示す数値の単位%は、質量%を意味する。
【実施例】
【0038】
(実施例1)白鶴霊芝のエタノール抽出物の製造
まず、原料として白鶴霊芝(Rhinacanthus nasutus(L.)Kurz)の根の乾燥物2kgを準備し、汎用の粉砕機で粉砕した。続いて、白鶴霊芝を10Lの90%(w/w)エタノールに浸し、溶媒を80℃で1時間還流させる還流抽出により抽出液を得た。抽出液と抽出残渣とはフィルター濾過により分離し、濾液を得た。濾過にはアドバンテック東洋株式会社製の定性濾紙No.2を用いた。当該抽出を同じ原料に対して計3回おこなった。3回分の濾液から減圧により溶媒を取り除き、白鶴霊芝のエタノール抽出物の固形乾燥物77.8gを得た。実験での取り扱いを容易にするため、白鶴霊芝のエタノール抽出物に9倍量(700.2g)のデキストリンを適量の90%(w/w)エタノールとともに添加してよく混ぜた後、再度の減圧により溶媒を取り除き、実験用有効成分組成物(白鶴霊芝のエタノール抽出物10%とデキストリン90%との混合物)を得た。デキストリンは、松谷化学工業株式会社製のパインデックス#2を用いた。
【0039】
(実施例2)老化動物モデルによるIL-1βの血中濃度上昇抑制作用、アミロイド-βの脳内濃度上昇抑制作用、毛髪改善作用及び抗老化作用の評価
AKR/J系統の選択的な近親交配により、老化促進マウス(SAM)が作製されている。このマウスは、老人性アミロイドーシス、老人性骨粗しょう症、白内障、免疫応答の低下、学習・記憶障害などの早期老化現象を示す。老化促進マウス・プローン8(SAMP8)は、脳の萎縮が早期に始まり、傾眠・記憶障害や情緒障害を伴うことから、特に認知症の研究に広く用いられているモデルである(T.Takeda,et al.,A new murine model of accelerated senescence,Mech. Ageing Dev.17(1981)183-194)。SAMP8の寿命は、対照株であるSAM/resistant1(SAMR1)のほぼ半分である。老化促進マウスSAMP8は、高脂肪食を与えることで、さらに老化が加速し、II型糖尿病を発症しながら、アルツハイマー型認知症の病理モデルとなることが知られている(Mehla et al.,Experimental Induction of Type2 Diabetes in Aging-Accelerated Mice Triggered Alzheimer-Like Pathology and Memory Deficits.Journal of Alzheimer’s Disease 39:145-162,2014)。
【0040】
3-1.マウス
雄のSAMP8/TaHsd(老化促進マウス)はEnvigo RMS B.V.(オランダ)から入手した。ベンダーのハウジングポリシーによると、SAMP8マウスは6週齢でシングルハウジングにすることになっている。到着時、マウスは4~7週齢であった。6~7週齢のSAMP8マウスは出荷前にシングルハウジングされており、バッチ1として割り当てられた。4~5週齢のSAMP8マウスは5~6週齢(検疫後)にシングルハウジングされ、バッチ2として割り当てられた。すべてのマウスは、365×207×140mmのケージ(キャップなし)に単身で収容し、温度は23±2℃、午前7時30分から12時間の明暗サイクルで飼育した。バッチ2のマウスはバッチ1のマウスよりも2週間遅く実験を開始し、年齢を合わせた。馴化のために、試験開始17日前からすべてのマウスにControl diet(LFD,D12450Ji,Research Diets)を与えた。SAMP8の一部のマウスは、試験開始時の10~11週齢時に高脂肪食(HFD,D12492i,Research Diets)に変更した。HFDとLFDは週に3回給餌した。動物の健康状態は毎日モニターした。水と餌は自由摂取とした。餌の一日あたりの消費量は、1週間ごとに測定した。水の消費量は2~3週間ごとに24時間の飲水量を測定した。体重は、試験期間中、週に2回測定した。マウスの体重の変化率を算出した。すべての動物実験および手順は、台湾工業技術研究院の施設内動物管理・使用委員会Institutional Animal Care and Use Committee(ITRI-IACUC-2019-069V1)により承認された。
【0041】
3-2.投与方法
10~11週齢の雄性SAMP8マウスを3群に分けた(各群n=9、バッチ1とバッチ2の両方で構成、バッチ2では4~5匹/群とした)。(1)LFD(低脂肪食)群、(2)ビークル(高脂肪食)群(3)RN30(高脂肪食)群の3群である。ビークル(高脂肪食)群とRN30(高脂肪食)群(実施例1で調製した実験用有効成分組成物を300mg/kg/日、つまり、白鶴霊芝のエタノール抽出物を30mg/kg/日で投与した群)には試験開始0日目から高脂肪食を摂食させ、LFD群には低脂肪食を摂食させた。また、LFD(低脂肪食)群とビークル(高脂肪食)群には、デキストリン1500mg/kg/日を投与し、RN30(高脂肪食)群には、実験用有効成分組成物300mg/kg/日(白鶴霊芝のエタノール抽出物30mg/kg/日)と共にデキストリン1200mg/kg/日を投与した。投与方法は、5mL/kg/日を122日間(試験開始0~121日目)、毎日ゾンデを用いて経口投与を行った。122日目から132日目の間は、検体の投与を行わないで試験を継続し、133日目でマウスを犠牲にした。
【0042】
統計解析は、解析ソフトEZR(R version4.0.3,Rコマンダー2.7-1)により、
図2は、反復測定の分散分析(Repeated measures ANOVA)、
図3~6は、一元配置のANOVAを用いて解析し、DunnettのPost-hoc解析を行った。**p<0.01、 ***p<0.001
【0043】
3-3.組織の回収
マウスを犠牲にした時、マウスの血清と脳組織を保存した。誘導ボックスとマスクを用いて2.5%イソフルランの吸入によりマウスを深部麻酔し、足指ピンチ反射で麻酔状態を確認した。開胸し、シリンジ(25G針)で右心室から0.35mLの全血を採取して血清とした。心腔内灌流は、ペリスタルティックポンプを用いて、右心房を切開した直後の左心室から氷冷した人工脳脊髄液(ACSF)を15~20mL(10mL/min)注入した。ACSFは124mM NaCl、2.5mM KCl、1.2mM NaH2PO4、24mM NaHCO3、5mM HEPES、12.5mMグルコース、2mM MgSO4・7H2O、2mM CaCl2・2H2Oで構成されていた。ACSFのpHは、室温でカルボゲン(95%O2/5%CO2)を用いて酸素を供給した後、7.4に調整した。ACSFは4℃または氷上で保存し、使用前にカルボゲンで20分間再酸素化した。心腔内灌流後,脳を速やかに回収し、2つの半球に分離した。左半球は液体窒素中で急速凍結し、-80℃で保存した。全血サンプルを室温で2時間かけて凝固させた後、1000×gで10分間遠心分離した。血清を回収し、-80℃で保存した。
【0044】
3-4.血清中の炎症因子インターロイキン1β(IL-1β)の測定
高齢者ではIL-1などの炎症性サイトカインの産生が高まることが知られている(磯部ら、老年医学の展望―老化と免疫―日本老年医学会雑誌、48:205-210、2011、及びLicastro et al.,Innate immunity and inflammation in ageing:a key for understanding age-related diseases.Immunity & Ageing2:8、2005)。白鶴霊芝のエタノール抽出物の投与によりSAMP8マウスのIL-1βのレベルが変化するかどうかを調べるため、ELISAを行った。各群の血清サンプルをプールし、Abcam社のHigh Sensitivity IL-1β ELISA Kit(abl97742)を用いてIL-1βを検出した結果を
図2に示す。
図2に示すように、IL-1βレベルは、LFD(低脂肪食)群に比べてビークル(高脂肪食)群で有意に上昇(Dunnett,p<0.001)したが、RN30(高脂肪食)群では、ビークル(高脂肪食)群に比べてIL-1βの上昇が有意に抑制された(Dunnett,p<0.001)。
【0045】
3-5.脳内アミロイド-βの測定
凍結(-80℃)した左半球の脳を、プロテアーゼインヒビターカクテル(K266-100,BioVison)を加えた800μLのT-PERTM Tissue Protein Extraction Reagent(78510,Thermo Fisher Scientific)でホモジナイズした。その後、ホモジネートを10000×gで5分間遠心分離した。上清を回収し、-80℃で保存した。半球中のアミロイド-β1-42の総濃度は、ELISAキット(Mouse amyloid beta peptide 1-42 ELISA Kit, CSB-E10787m, CUSABIO)を用いて、製造者の指示に従って測定した。
【0046】
老化促進モデルマウスSAMP8は、アミロイド-βの高発現による酸化ストレス増加を病因とするアルツハイマー型認知症のモデルになることが知られている(Morley et al.,The senescence accelerated mouse(SAMP8) as a model for oxidative stress and Alzheimer’s disease.Biochimica et Biophysica Acta 1822:650-656、2012)。RN30(高脂肪食)群のアミロイド-βに対する効果を、SAMP8マウスの脳で評価した結果を
図3に示す。
図3に示すように、脳ホモジネート上清中のアミロイド-βのレベルは、LFD群に比べてビークル(高脂肪食)群で有意(Dunnett,p<0.01)に上昇したが、RN30(高脂肪食)群では、ビークル(高脂肪食)群に比べてアミロイド-βの上昇が有意に抑えられた(Dunnett,p<0.01)。
【0047】
3-6.毛の光沢感
マウスが22週齢となったときに、毛の光沢感についての観察を行った。当該観察は目視にて行い、0~4の4段階のスコア(スコアが低いほど良い)で評価した。各投与群における22週齢の毛の光沢感(Glossiness of fur)のスコアを
図4に示す。
図4に示したように、LFD(低脂肪食)群にくらべてビークル(高脂肪食)群は有意に高いスコアを示した(Dunnett,P<0.001)。一方、RN30(高脂肪食)群は、ビークル(高脂肪食)群に比べてこの上昇を有意に抑えた(Dunnett,P<0.001)。
【0048】
3-7.老化指標の測定
SAMP8マウスの老化の程度を評価するために、上記の毛の光沢感を含む、行動や外見の変化を表す11項目のスコア(表1参照)を0~4で合計した老化度評価スコアを用いた。
図5は、本発明の有効成分組成物等を投与した老化促進マウスの11項目の老化度評価スコアの平均値(トータル老化指標)の経時変化を示す。
【0049】
【0050】
各投与群の平均評点は、9週齢から25週齢にかけて徐々に上昇した。15週齢までは有意な差はなかったが、22週齢以降は明らかに差がついた(
図5)(Repeated measures ANOVA;RN30 vs. ビークル:P<0.01、LFD vs. ビークル:P<0.001)。22週齢の各群の老化度評価スコア平均値の合計を
図6に示す。
図6に示したように、LFD(低脂肪食)群にくらべてビークル(高脂肪食)群は有意に高いスコアを示した(Dunnett,P<0.001)。一方、RN30(高脂肪食)群は、ビークル(低脂肪食)群に比べてこの上昇を有意に抑えた(Dunnett,P<0.001)。スコアの変化は、主に、毛の外観の指標である光沢感と密集度のカテゴリーが中心であった(表2参照)。
【0051】
【0052】
(処方例1 錠剤)
常法に従って、以下の成分を混合し、錠剤を製造した。なお、有効成分組成物は、実施例1で得た白鶴霊芝のエタノール抽出物の固形乾燥物を用いた。
組成
有効成分組成物(実施例1) 150mg
セルロース 80mg
デンプン 20mg
ショ糖脂肪酸エステル 2mg
上記成分を混合、打錠し、錠剤を得た。
【0053】
(処方例2 カプセル剤)
常法に従って、以下の成分を混合し、軟カプセルを得た。なお、有効成分組成物は、実施例1で得た白鶴霊芝のエタノール抽出物の固形乾燥物を用いた。
組成
有効成分組成物(実施例1) 100mg
ミツロウ 10mg
ぶどう種子オイル 110mg
上記成分を混合し、ゼラチンおよびグリセリンを混合したカプセル基剤中に充填し、軟カプセルを得た。
【0054】
(処方例3 美容用飲料水)
常法に従って、以下の成分を混合し、全量を100gとして美容用飲料水を調製した。なお、有効成分組成物は、実施例1で得た白鶴霊芝のエタノール抽出物の固形乾燥物を用いた。
組成
有効成分組成物(実施例1) 500mg
コエンザイムQ10 500mg
ビタミンB2 5mg
ビタミンB6 5mg
ニコチン酸アミド 10mg
ビタミンE 100mg
L-アスコルビン酸 100mg
黒糖ぶどう糖液糖 10g
クエン酸 1g
香料 100mg
色素 100mg
水 97.5g
【産業上の利用可能性】
【0055】
白鶴霊芝のエタノール抽出物を含む組成物の適用は、高脂肪食投与老化促進モデルマウスを用いた評価において、IL-1βの血中濃度上昇抑制作用、アミロイド-βの脳内濃度上昇抑制作用、毛髪改善作用及び抗老化作用を示すことが確認できた。したがって、本発明の経口摂取用IL-1β血中濃度上昇抑制剤、経口摂取用アミロイド-β脳内濃度上昇抑制剤、経口摂取用毛髪改善剤及び経口摂取用抗老化剤は、医薬品、飲食品、特に、健康増進用飲食品として利用できる可能性がある。