IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 有限会社キーロの特許一覧

<>
  • 特許-鞄及び鞄製造方法 図1
  • 特許-鞄及び鞄製造方法 図2
  • 特許-鞄及び鞄製造方法 図3
  • 特許-鞄及び鞄製造方法 図4
  • 特許-鞄及び鞄製造方法 図5
  • 特許-鞄及び鞄製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】鞄及び鞄製造方法
(51)【国際特許分類】
   A45C 3/00 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
A45C3/00 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022135806
(22)【出願日】2022-08-29
【審査請求日】2022-10-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522091461
【氏名又は名称】有限会社キーロ
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】楫間 充
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第202007003028(DE,U1)
【文献】独国特許出願公開第10065448(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0157960(US,A1)
【文献】特開2002-293367(JP,A)
【文献】特開2020-81624(JP,A)
【文献】特開2005-153943(JP,A)
【文献】中国実用新案第2733972(CN,Y)
【文献】中国特許出願公開第113525860(CN,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2020-0002646(KR,U)
【文献】特開2010-162109(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0224563(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 1/00-15/08
A45F 3/00- 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞄であって、
前記鞄が、物体を入れるための本体を備え、
前記本体が、2枚のシート状部材を接合することにより形成されており、
前記本体が、下壁領域と前壁領域と後壁領域と左壁領域と右壁領域とを備え、
前記前壁領域と前記後壁領域と前記左壁領域と前記右壁領域とが、前記下壁領域から上方に向かって延びており、
前記前壁領域と前記後壁領域とが対向配置されており、
前記左壁領域と前記右壁領域とが対向配置されており、
前記前壁領域と前記右壁領域と前記後壁領域と前記左壁領域とが順に環状に並んでおり、
2枚の前記シート状部材の接合部が、前記左壁領域と前記右壁領域と前記下壁領域とをそれぞれ対角線状に横断するように位置している、
鞄。
【請求項2】
前記本体の上端において、前記シート状部材を外側に向けて凸になるように折り重ねて接合することにより、前記本体の前記上端の開口に角が形成されている、
請求項1に記載の鞄。
【請求項3】
前記右壁領域および前記左壁領域の各々が湾曲していることにより、前記右壁領域および前記左壁領域における各前記接合部の上部が前記前壁領域と前記後壁領域とのいずれか一方に向かって凸状に屈曲した曲線を描くように延びており、及び、前記右壁領域および前記左壁領域における各前記接合部の下部が前記上部とは逆方向に向かって凸状に屈曲した曲線を描くように延びている、
請求項1又は請求項2に記載の鞄。
【請求項4】
第1のシート状部材と第2のシート状部材とを材料として使用して鞄を製造するための鞄製造方法であって、
前記第1のシート状部材が、
四角形の前壁領域と、
三角形の第1の右領域と、
三角形の第1の左領域と、
三角形の第1の下領域と、
を含み、
前記前壁領域が、
第1の右辺と、
前記第1の右辺に対向した第1の左辺と、
前記第1の右辺の上端から前記第1の左辺の上端まで延びた第1の上辺と、
前記第1の右辺の下端から前記第1の左辺の下端まで延びた第1の下辺と、
を含み、
前記第1の右領域が、前記第1の右辺から連続的に広がっており、
前記第1の右領域が、
第1の右頂点と、
前記第1の右辺の前記上端から前記第1の右頂点まで延びた第1の右斜辺と、
前記第1の右辺の前記下端から前記第1の右頂点まで延びた第1の右底辺と、
を含み、
前記第1の右領域の幅が、前記第1の右辺の前記上端から前記第1の右辺の前記下端に向かって徐々に広くなっており、
前記第1の左領域が、前記第1の左辺から連続的に広がっており、
前記第1の左領域が、
第1の左頂点と、
前記第1の左辺の前記下端から前記第1の左頂点まで延びた第1の左斜辺と、
前記第1の左辺の前記上端から前記第1の左頂点まで延びた第1の左底辺と、
を含み、
前記第1の左領域の幅が、前記第1の左辺の前記下端から前記第1の左辺の前記上端に向かって徐々に広くなっており、
前記第1の下領域が、前記第1の下辺から連続的に広がっており、
前記第1の下領域が、
第1の下頂点と、
前記第1の下辺の左端から前記第1の下頂点まで延びた第1の下斜辺と、
前記第1の下辺の右端から前記第1の下頂点まで延びた第1の下底辺と、
を含み、
前記第1の下領域の幅が、前記第1の下辺の前記左端から前記第1の下辺の前記右端に向かって徐々に広くなっており、
前記第1の右斜辺と前記第1の右底辺と前記第1の左斜辺と前記第1の下斜辺と前記第1の下底辺とのそれぞれから余白部が広がっており、
前記第2のシート状部材が、
四角形の後壁領域と、
三角形の第2の右領域と、
三角形の第2の左領域と、
三角形の第2の下領域と、
を含み、
前記後壁領域が、
第2の右辺と、
前記第2の右辺に対向した第2の左辺と、
前記第2の右辺の前記上端から前記第2の左辺の前記上端まで延びた第2の上辺と、
前記第2の右辺の前記下端から前記第2の左辺の前記下端まで延びた第2の下辺と、
を含み、
前記第2の右領域が、前記第2の右辺から連続的に広がっており、
前記第2の右領域が、
第2の右頂点と、
前記第2の右辺の前記下端から前記第2の右頂点まで延びた第2の右斜辺と、
前記第2の右辺の前記上端から前記第2の右頂点まで延びた第2の右底辺と、
を含み、
前記第2の右領域の幅が、前記第2の右辺の前記下端から前記第2の右辺の前記上端に向かって徐々に広くなっており、
前記第2の左領域が、前記第2の左辺から連続的に広がっており、
前記第2の左領域が、
第2の左頂点と、
前記第2の左辺の前記上端から前記第2の左頂点まで延びた第2の左斜辺と、
前記第2の左辺の前記下端から前記第2の左頂点まで延びた第2の左底辺と、
を含み、
前記第2の左領域の幅が、前記第2の左辺の前記上端から前記第2の左辺の前記下端に向かって徐々に広くなっており、
前記第2の下領域が、前記第2の下辺から連続的に広がっており、
前記第2の下領域が、
第2の下頂点と、
前記第2の下辺の前記右端から前記第2の下頂点まで延びた第2の下斜辺と、
前記第2の下辺の前記左端から前記第2の下頂点まで延びた第2の下底辺と、
を含み、
前記第2の下領域の幅が、前記第2の下辺の前記右端から前記第2の下辺の前記左端に向かって徐々に広くなっており、
前記第2の右斜辺と前記第2の左斜辺と前記第2の左底辺と前記第2の下斜辺と前記第2の下底辺とのそれぞれから余白部が広がっており、
前記鞄製造方法が、
前記第2の下頂点を前記第1の下辺の前記左端に近づけた状態で、かつ、前記第1の下頂点を前記第2の下辺の前記右端に近づけた状態で、前記第1の下斜辺と前記第2の下斜辺とを接合する工程と、
前記第1の右頂点を前記第1の下頂点に近づけた状態で、前記第1の右底辺と前記第1の下底辺とを接合する工程と、
前記第2の左頂点を前記第2の下頂点に近づけた状態で、前記第2の左底辺と前記第2の下底辺とを接合する工程と、
前記第1の右頂点を前記第2の右辺の前記下端に近づけた状態で、かつ、前記第2の右頂点を前記第1の右辺の前記上端に近づけた状態で、前記第1の右斜辺と前記第2の右斜辺とを接合する工程と、
前記第1の左頂点を前記第2の左辺の前記上端に近づけた状態で、かつ、前記第2の左頂点を前記第1の左辺の前記下端に近づけた状態で、前記第1の左斜辺と前記第2の左斜辺とを接合する工程と、
を含む、
鞄製造方法。
【請求項5】
前記第1の左辺の前記上端から前記第1の左辺に沿った第1の距離にわたって、外側に凸になるように前記第1のシート状部材を折り重ねた状態で接合する工程と、
前記第2の右辺の前記上端から前記第1の右辺に沿った第2の距離にわたって、外側に凸になるように前記第2のシート状部材を折り重ねた状態で接合する工程と、
を含む、
請求項4に記載の鞄製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞄及び鞄製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物品を入れるための鞄の本体の縫い目といった接合部は下壁と側壁との間、及び、側壁同士の間といった屈曲部分において、垂直に又は水平に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-333715号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鞄の本体に入れた物体は屈曲部分の接合部に当たりやすく、従来のように接合部が屈曲部分にあると接合部が破壊されやすいという不利益がある。更に、接合部が屈曲部分に平行であると物体による負荷が集中しやすく、物体により接合部が破壊されやすいという不利益がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、本体の屈曲部分に物体が当たっても接合部が外れにくい鞄を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の鞄は、鞄であって、鞄が、物体を入れるための本体を備え、本体が、2枚のシート状部材を接合することにより形成されており、本体が、下壁領域と前壁領域と後壁領域と左壁領域と右壁領域とを備え、前壁領域と後壁領域と左壁領域と右壁領域とが、下壁領域から上方に向かって延びており、前壁領域と後壁領域とが対向配置されており、左壁領域と右壁領域とが対向配置されており、前壁領域と右壁領域と後壁領域と左壁領域とが順に環状に並んでおり、2枚のシート状部材の接合部が、左壁領域と右壁領域と下壁領域とをそれぞれ対角線状に横断するように位置している、鞄である。
【0007】
この構成によれば、2枚のシート状部材の接合部が、左壁領域と右壁領域と下壁領域とをそれぞれ対角線状に横断するように位置しているので、鞄の屈曲部分に負荷がかかっても接合部が外れにくい。すなわち、例えば、前壁領域と右壁領域との間の屈曲部分、右壁領域と後壁領域との間の屈曲部分、後壁領域と左壁領域との間の屈曲部分、左壁領域と前壁領域との間の屈曲部分、下壁領域と前壁領域、又は後壁領域との間の屈曲部分に力が加わっても、接合部が屈曲部分に存在しないので接合部が外れにくい。また接合部が屈曲部分に対して傾斜しているので負荷が集中しにくく、接合部が外れにくい。
【0008】
好適には、本体の上端において、シート状部材を外側に向けて凸になるように折り重ねて接合することにより、本体の上端の開口に角が形成されている。
【0009】
この構成によれば、本体の上端において、シート状部材を外側に向けて凸になるように折り重ねて接合することにより、本体の上端の開口に角が形成されているので、簡単な構造により開口に丈夫な角を形成することができる。
【0010】
好適には、右壁領域および左壁領域の各々が湾曲していることにより、右壁領域および左壁領域における各接合部の上部が前壁領域と後壁領域とのいずれか一方に向かって凸状に屈曲した曲線を描くように延びており、及び、右壁領域および左壁領域における各接合部の下部が上部とは逆方向に向かって凸状に屈曲した曲線を描くように延びている。
【0011】
この構成によれば、右壁領域および左壁領域における各接合部の上部と下部とが逆方向に屈曲しているので、接合部が完全に直線である場合に比べて、前壁領域側からの力及び後壁領域側からの力を柔軟に吸収して接合部が破壊されることを防ぎやすい。
【0012】
第2の発明の鞄製造方法は、第1のシート状部材と第2のシート状部材とを材料として使用して鞄を製造するための鞄製造方法であって、第1のシート状部材が、四角形の前壁領域と、三角形の第1の右領域と、三角形の第1の左領域と、三角形の第1の下領域と、を含み、前壁領域が、第1の右辺と、第1の右辺に対向した第1の左辺と、第1の右辺の上端から第1の左辺の上端まで延びた第1の上辺と、第1の右辺の下端から第1の左辺の下端まで延びた第1の下辺と、を含み、第1の右領域が、第1の右辺から連続的に広がっており、第1の右領域が、第1の右頂点と、第1の右辺の上端から第1の右頂点まで延びた第1の右斜辺と、第1の右辺の下端から第1の右頂点まで延びた第1の右底辺と、を含み、第1の右領域の幅が、第1の右辺の上端から第1の右辺の下端に向かって徐々に広くなっており、第1の左領域が、第1の左辺から連続的に広がっており、第1の左領域が、第1の左頂点と、第1の左辺の下端から第1の左頂点まで延びた第1の左斜辺と、第1の左辺の上端から第1の左頂点まで延びた第1の左底辺と、を含み、第1の左領域の幅が、第1の左辺の下端から第1の左辺の上端に向かって徐々に広くなっており、第1の下領域が、第1の下辺から連続的に広がっており、第1の下領域が、第1の下頂点と、第1の下辺の左端から第1の下頂点まで延びた第1の下斜辺と、第1の下辺の右端から第1の下頂点まで延びた第1の下底辺と、を含み、第1の下領域の幅が、第1の下辺の左端から第1の下辺の右端に向かって徐々に広くなっており、第1の右斜辺と第1の右底辺と第1の左斜辺と第1の下斜辺と第1の下底辺とのそれぞれから余白部が広がっており、第2のシート状部材が、四角形の後壁領域と、三角形の第2の右領域と、三角形の第2の左領域と、三角形の第2の下領域と、を含み、後壁領域が、第2の右辺と、第2の右辺に対向した第2の左辺と、第2の右辺の上端から第2の左辺の上端まで延びた第2の上辺と、第2の右辺の下端から第2の左辺の下端まで延びた第2の下辺と、を含み、第2の右領域が、第2の右辺から連続的に広がっており、第2の右領域が、第2の右頂点と、第2の右辺の下端から第2の右頂点まで延びた第2の右斜辺と、第2の右辺の上端から第2の右頂点まで延びた第2の右底辺と、を含み、第2の右領域の幅が、第2の右辺の下端から第2の右辺の上端に向かって徐々に広くなっており、第2の左領域が、第2の左辺から連続的に広がっており、第2の左領域が、第2の左頂点と、第2の左辺の上端から第2の左頂点まで延びた第2の左斜辺と、第2の左辺の下端から第2の左頂点まで延びた第2の左底辺と、を含み、第2の左領域の幅が、第2の左辺の上端から第2の左辺の下端に向かって徐々に広くなっており、第2の下領域が、第2の下辺から連続的に広がっており、第2の下領域が、第2の下頂点と、第2の下辺の右端から第2の下頂点まで延びた第2の下斜辺と、第2の下辺の左端から第2の下頂点まで延びた第2の下底辺と、を含み、第2の下領域の幅が、第2の下辺の右端から第2の下辺の左端に向かって徐々に広くなっており、第2の右斜辺と第2の左斜辺と第2の左底辺と第2の下斜辺と第2の下底辺とのそれぞれから余白部が広がっており、鞄製造方法が、第2の下頂点を第1の下辺の左端に近づけた状態で、かつ、第1の下頂点を第2の下辺の右端に近づけた状態で、第1の下斜辺と第2の下斜辺とを接合する工程と、第1の右頂点を第1の下頂点に近づけた状態で、第1の右底辺と第1の下底辺とを接合する工程と、第2の左頂点を第2の下頂点に近づけた状態で、第2の左底辺と第2の下底辺とを接合する工程と、第1の右頂点を第2の右辺の下端に近づけた状態で、かつ、第2の右頂点を第1の右辺の上端に近づけた状態で、第1の右斜辺と第2の右斜辺とを接合する工程と、第1の左頂点を第2の左辺の上端に近づけた状態で、かつ、第2の左頂点を第1の左辺の下端に近づけた状態で、第1の左斜辺と第2の左斜辺とを接合する工程とを含む、鞄製造方法である。
【0013】
この構成によれば、2枚のシート状部材の接合部が、鞄の2つの側壁領域及び下壁領域をそれぞれ対角線状に横断するように配置されるので、鞄の屈曲部分に負荷がかかっても接合部が外れにくい。すなわち、屈曲部分となる第1の右辺、第1の左辺、第1の下辺、第2の右辺、第2の左辺、及び第2の下辺に接合部が存在しないので、これらの屈曲部分に力が加わっても接合部が外れにくい。
【0014】
好適には、鞄製造方法は、第1の左辺の上端から第1の左辺に沿った第1の距離にわたって、外側に凸になるように第1のシート状部材を折り重ねた状態で接合する工程と、第2の右辺の上端から第1の右辺に沿った第2の距離にわたって、外側に凸になるように第2のシート状部材を折り重ねた状態で接合する工程と、を含む。
【0015】
この構成によれば、第1の左辺及び第2の右辺の上端において、シート状部材を外側に向けて凸になるように折り重ねて接合することにより、上端の開口に角が形成されるので、簡単な構造により開口に丈夫な角を形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、本体の屈曲部分に物体が当たっても接合部が外れにくい鞄を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態の鞄の斜視図である。
図2図2は、図1に示す鞄の左側面図である。
図3図3は、図1に示す鞄の右側面図である。
図4図4は、図1に示す鞄の底面図である。
図5図5は、製造前の第1のシート状部材と第2のシート状部材との分解平面図である。
図6図6は、図5の第1のシート状部材と第2のシート状部材との一部を接合した状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る鞄について説明する。図1は本実施形態の鞄1の斜視図である。図2は鞄1の左側面図である。図3は鞄1の右側面図である。図4は鞄1の底面図である。鞄1は、物体を入れるための本体2と、本体2に取り付けられた2つの取っ手3とを備える。本体2は概ね直方体であり、上部が開口となっている。
【0019】
本体2は、第1のシート状部材11と第2のシート状部材12とを折り曲げて接合することにより形成されている。本実施形態では接合は糸を使用して縫合することにより実現されるが、接着剤を使用して接合するといった、他の手段も可能である。第1のシート状部材11及び第2のシート状部材12は、例えば革、布であるが、これらに限定されない。
【0020】
本体2は、下壁領域13と前壁領域14と後壁領域15と左壁領域16と右壁領域17とを備える。下壁領域13は、鞄1の下部において水平に広がり、底を形成する領域である。前壁領域14と後壁領域15と左壁領域16と右壁領域17とが、下壁領域13から概ね直角に上方に向かって延びている。前側に位置する前壁領域14と後側に位置する後壁領域15とが対向配置されている。左側に位置する左壁領域16と右側に位置する右壁領域17とが対向配置されている。その結果、前壁領域14と右壁領域17と後壁領域15と左壁領域16とが順に環状に並んでいる。
【0021】
図2から図4に示すように、第1のシート状部材11と第2のシート状部材12との接合部10が、左壁領域16と右壁領域17と下壁領域13とをそれぞれ対角線状に横断するように位置している。すなわち、第1のシート状部材11は、図1の前壁領域14の全体と、図4の下壁領域13の半分と、図2の左壁領域16の半分と、図3の右壁領域17の半分とを形成している。第2のシート状部材12は、図1の後壁領域15の全体と、図4の下壁領域13の半分と、図2の左壁領域16の半分と、図3の右壁領域17の半分とを形成している。
【0022】
図1に示すように、本体2の上端において、シート状部材を外側に向けて凸になるように折り重ねて接合することにより、本体2の上端の開口に左側の角18と右側の角19とが形成されている。
【0023】
図2及び図3に示すように、右壁領域17および左壁領域16の各々が湾曲していることにより、右壁領域17および左壁領域16における各接合部10の上部が前壁領域14と後壁領域15とのいずれか一方に向かって凸状に屈曲した曲線を描くように延びており、及び、右壁領域17および左壁領域16における各接合部10の下部が上部とは逆方向に向かって凸状に屈曲した曲線を描くように延びている。
【0024】
より詳細に述べると、図2に示すように左壁領域16における接合部10の上半分が後壁領域15に向かって凸状に屈曲した曲線を描くように延びており、左壁領域16における接合部10の下半分が前壁領域14に向かって凸状に屈曲した曲線を描くように延びている。更に、図3に示すように右壁領域17における接合部10の上半分が前壁領域14に向かって凸状に屈曲した曲線を描くように延びており、右壁領域17における接合部10の下半分が後壁領域15に向かって凸状に屈曲した曲線を描くように延びている。
【0025】
次に、第1のシート状部材11と第2のシート状部材12とを材料として使用して鞄1を製造するための鞄製造方法について説明する。図5は製造前の第1のシート状部材11と第2のシート状部材12との分解平面図である。まず、第1のシート状部材11と第2のシート状部材12とを用意する。
【0026】
第1のシート状部材11は、四角形の前壁領域14と、直角三角形の第1の右領域21と、直角三角形の第1の左領域22と、直角三角形の第1の下領域23とを含む。前壁領域14は、第1の右辺24と、第1の右辺24に対向した第1の左辺25と、第1の右辺24の上端61から第1の左辺25の上端62まで延びた第1の上辺26と、第1の右辺24の下端63から第1の左辺25の下端64まで延びた第1の下辺27とを含む。
【0027】
第1の右領域21は、第1の右辺24から図5の右側に連続的に広がっている。第1の右領域21は、第1の右頂点28と、第1の右辺24の上端61から第1の右頂点28まで延びた第1の右斜辺29と、第1の右辺24の下端63から第1の右頂点28まで延びた第1の右底辺30とを含む。第1の右領域21の左右の幅(製造後の前後の幅)は、第1の右辺24の上端61から第1の右辺24の下端63に向かって徐々に広くなっている。
【0028】
第1の左領域22は、第1の左辺25から図5の左側に連続的に広がっており、第1の左領域22は、第1の左頂点31と、第1の左辺25の下端64から第1の左頂点31まで延びた第1の左斜辺32と、第1の左辺25の上端62から第1の左頂点31まで延びた第1の左底辺33とを含む。第1の左領域22の左右の幅(製造後の前後の幅)は、第1の左辺25の下端64から第1の左辺25の上端62に向かって徐々に広くなっている。
【0029】
第1の下領域23は、第1の下辺27から図5の下側に連続的に広がっている。第1の下領域23は、第1の下頂点34と、第1の下辺27の左端(すなわち第1の左辺25の下端64)から第1の下頂点34まで延びた第1の下斜辺35と、第1の下辺27の右端(すなわち第1の右辺24の下端63)から第1の下頂点34まで延びた第1の下底辺36とを含む。第1の下領域23の上下の幅(製造後の前後の幅)は、第1の下辺27の左端から第1の下辺27の右端に向かって徐々に広くなっている。
【0030】
第1の右斜辺29と第1の右底辺30と第1の左斜辺32と第1の下斜辺35と第1の下底辺36とのそれぞれからある幅で、縫い代又は接着領域となる余白部37が広がっている。
【0031】
第2のシート状部材12は、四角形の後壁領域15と、直角三角形の第2の右領域41と、直角三角形の第2の左領域42と、直角三角形の第2の下領域43とを含む。なお、第2のシート状部材12の説明で下領域、下頂点、上端、下端、上辺、及び下辺という名称は、製造後の位置関係に基づいて便宜上つけたものであるので、図5の位置関係では比較的上側に位置する。後壁領域15は、第2の右辺44と、第2の右辺44に対向した第2の左辺45と、第2の右辺44の上端71から第2の左辺45の上端72まで延びた第2の上辺46と、第2の右辺44の下端73から第2の左辺45の下端74まで延びた第2の下辺47とを含む。
【0032】
第2の右領域41は、第2の右辺44から図5の右側に連続的に広がっている。第2の右領域41は、第2の右頂点48と、第2の右辺44の下端73から第2の右頂点48まで延びた第2の右斜辺49と、第2の右辺44の上端71から第2の右頂点48まで延びた第2の右底辺50とを含む。第2の右領域41の左右の幅(製造後の前後の幅)は、第2の右辺44の下端73から第2の右辺44の上端71に向かって徐々に広くなっている。
【0033】
第2の左領域42は、第2の左辺45から図5の左側に連続的に広がっている。第2の左領域42は、第2の左頂点51と、第2の左辺45の上端72から第2の左頂点51まで延びた第2の左斜辺52と、第2の左辺45の下端74から第2の左頂点51まで延びた第2の左底辺53とを含む。第2の左領域42の左右の幅(製造後の前後の幅)は、第2の左辺45の上端72から第2の左辺45の下端74に向かって徐々に広くなっている。
【0034】
第2の下領域43は、第2の下辺47から図5の上側に連続的に広がっている。第2の下領域43は、第2の下頂点54と、第2の下辺47の右端(すなわち第2の右辺44の下端73)から第2の下頂点54まで延びた第2の下斜辺55と、第2の下辺47の左端(すなわち第2の左辺45の下端74)から第2の下頂点54まで延びた第2の下底辺56とを含む。第2の下領域43の上下の幅(製造後の前後の幅)は、第2の下辺47の右端から第2の下辺47の左端に向かって徐々に広くなっている。
【0035】
第2の右斜辺49と第2の左斜辺52と第2の左底辺53と第2の下斜辺55と第2の下底辺56とのそれぞれからある幅で、縫い代又は接着領域となる余白部37が広がっている。
【0036】
図6は、第1のシート状部材11と第2のシート状部材12との一部を接合した状態の平面図である。第1のシート状部材11と第2のシート状部材12とを用意した後、図6に示すように、第2の下頂点54を第1の下辺27の左端に近づけた状態で、かつ、第1の下頂点34を第2の下辺47の右端に近づけた状態で、第1の下斜辺35と第2の下斜辺55とを接合することにより、下壁領域13の接合部10(図4)が形成される。第1の下領域23と第2の下領域43とにより下壁領域13(図4)が形成される。第1の下斜辺35の余白部37(図5及び第2の下斜辺55の余白部37(図5)は、最終的に鞄1(図1)の内側に位置するよう折られる。
【0037】
次に、第1の右頂点28を第1の下頂点34に近づけた状態で、第1の右底辺30と第1の下底辺36とを接合する。第1の右底辺30の余白部37及び第1の下底辺36の余白部37は、最終的に鞄1(図1)の内側に位置するよう折られる。
【0038】
次に、第2の左頂点51を第2の下頂点54に近づけた状態で、第2の左底辺53と第2の下底辺56とを接合する。第2の左底辺53の余白部37及び第2の下底辺56の余白部37は、最終的に鞄1(図1)の内側に位置するよう折られる。
【0039】
次に、第1の右頂点28を第2の右辺44の下端73に近づけた状態で、かつ、第2の右頂点48を第1の右辺24の上端61に近づけた状態で、第1の右斜辺29と第2の右斜辺49とを接合することにより、右壁領域17の接合部10(図3)が形成される。第1の右領域21と第2の右領域41とにより、右壁領域17(図3)が形成される。第1の右斜辺29の余白部37及び第2の右斜辺49の余白部37は、最終的に鞄1の外側に位置するよう折られる。
【0040】
次に、第1の左頂点31を第2の左辺45の上端72に近づけた状態で、かつ、第2の左頂点51を第1の左辺25の下端64に近づけた状態で、第1の左斜辺32と第2の左斜辺52とを接合することにより、左壁領域16の接合部10(図2)が形成される。第1の左領域22と第2の左領域42とにより、左壁領域16(図2)が形成される。第1の左斜辺32の余白部37及び第2の左斜辺52の余白部37は、最終的に鞄1の外側に位置するよう折られる。
【0041】
次に、第1の左辺25の上端62から第1の左辺25に沿った第1の距離にわたって、外側に凸になるように第1のシート状部材11を折り重ねた状態で接合する。結果的に図1に示すように本体2の上端の開口に左側の角18が形成される。次に、第2の右辺44の上端71から第1の右辺24に沿った第2の距離にわたって、外側に凸になるように第2のシート状部材12を折り重ねた状態で接合する。結果的に図1に示すように本体2の上端の開口に右側の角19が形成される。
【0042】
次に、図1に示すように、本体2の上端の開口付近において前壁領域14に1つの取っ手3が取り付けられ、後壁領域15にもう1つの取っ手3が取り付けられる。
【0043】
(まとめ)
【0044】
本実施形態によれば、2枚のシート状部材(第1のシート状部材11及び第2のシート状部材12)の接合部10が、左壁領域16と右壁領域17と下壁領域13とをそれぞれ対角線状に横断するように位置しているので、鞄1の屈曲部分に負荷がかかっても接合部10が外れにくい。すなわち、例えば、前壁領域14と右壁領域17との間の屈曲部分、右壁領域17と後壁領域15との間の屈曲部分、後壁領域15と左壁領域16との間の屈曲部分、左壁領域16と前壁領域14との間の屈曲部分、下壁領域13と前壁領域14、又は後壁領域15との間の屈曲部分に力が加わっても、接合部10が屈曲部分に存在しないので接合部10が外れにくい。また接合部10が屈曲部分に対して平行ではなく対角線状に傾斜しているので屈曲部分に平行に物体を入れても屈曲部分に負荷が集中しにくく、接合部が外れにくい。
【0045】
本実施形態によれば、本体2の上端において、シート状部材(第1のシート状部材11及び第2のシート状部材12)を外側に向けて凸になるように折り重ねて接合することにより、本体2の上端の開口に角(角18及び角19)が形成されているので、簡単な構造により開口に丈夫な角を形成することができる。
【0046】
本実施形態によれば、右壁領域17および左壁領域16における各接合部10の上部と下部とが逆方向に屈曲しているので、接合部10が完全に直線である場合に比べて、前壁領域14側からの力及び後壁領域15側からの力を柔軟に吸収して接合部10が破壊されることを防ぎやすい。
【0047】
本実施形態によれば、2枚のシート状部材(第1のシート状部材11及び第2のシート状部材12)の接合部10が、鞄1の2つの側壁領域(左壁領域16及び右壁領域17)及び下壁領域13をそれぞれ対角線状に横断するように配置されるので、鞄1の屈曲部分に負荷がかかっても接合部10が外れにくい。すなわち、屈曲部分となる第1の右辺24、第1の左辺25、第1の下辺27、第2の右辺44、第2の左辺45、及び第2の下辺47に接合部10が存在しないので、これらの屈曲部分に力が加わっても接合部10が外れにくい。
【0048】
本実施形態によれば、第1の左辺25の上端62及び第2の右辺44の上端71において、シート状部材(第1のシート状部材11及び第2のシート状部材12)を外側に向けて凸になるように折り重ねて接合することにより、本体2の上端の開口に角が形成されるので、簡単な構造により開口に丈夫な角を形成することができる。
【0049】
本発明は上述した実施形態には限定されない。すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
なお、接合部10は図2及び図3に示す左右対称(右上から左下に延びる形状)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、種々の鞄に適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1… 鞄
2… 本体
3… 取っ手
10… 接合部
11… 第1のシート状部材
12… 第2のシート状部材
13… 下壁領域
14… 前壁領域
15… 後壁領域
16… 左壁領域
17… 右壁領域
18… 角
19… 角
21… 第1の右領域
22… 第1の左領域
23… 第1の下領域
24… 第1の右辺
25… 第1の左辺
26… 第1の上辺
27… 第1の下辺
28… 第1の右頂点
29… 第1の右斜辺
30… 第1の右底辺
31… 第1の左頂点
32… 第1の左斜辺
33… 第1の左底辺
34… 第1の下頂点
35… 第1の下斜辺
36… 第1の下底辺
37… 余白部
41… 第2の右領域
42… 第2の左領域
43… 第2の下領域
44… 第2の右辺
45… 第2の左辺
46… 第2の上辺
47… 第2の下辺
48… 第2の右頂点
49… 第2の右斜辺
50… 第2の右底辺
51… 第2の左頂点
52… 第2の左斜辺
53… 第2の左底辺
54… 第2の下頂点
55… 第2の下斜辺
56… 第2の下底辺
61… 上端
62… 上端
63… 下端
64… 下端
71… 上端
72… 上端
73… 下端
74… 下端
【要約】
【課題】本体の屈曲部分に物体が当たっても接合部が外れにくい鞄を提供する。
【解決手段】 鞄1の本体2が、2枚のシート状部材(11、12)を接合することにより形成されており、本体2が、下壁領域13と前壁領域14と後壁領域15と左壁領域16と右壁領域17とを備え、前壁領域14と後壁領域15と左壁領域16と右壁領域17とが、下壁領域13から上方に向かって延びており、前壁領域14と後壁領域15とが対向配置されており、左壁領域16と右壁領域17とが対向配置されており、前壁領域14と右壁領域17と後壁領域15と左壁領域16とが順に環状に並んでおり、2枚のシート状部材(11、12)の接合部10が、左壁領域16と右壁領域17と下壁領域13とをそれぞれ対角線状に横断するように位置している。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6