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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】診断システムおよび診断方法
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/53 20200101AFI20230307BHJP
   A24F 40/65 20200101ALI20230307BHJP
   A24F 40/50 20200101ALI20230307BHJP
【FI】
A24F40/53
A24F40/65
A24F40/50
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021525194
(86)(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 GB2019052787
(87)【国際公開番号】W WO2020099822
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】1818741.9
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン, シッダールタ
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0284192(US,A1)
【文献】国際公開第2018/020402(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/098410(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/135887(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/060798(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子蒸気供給システム(EVPS)用の診断システムであって、
複数の所定の誤用事象のうち1つ以上を検出するように構成された検出プロセッサと、
所定の誤用事象の検出に応答して、少なくとも1つの対応するシステム診断を実行するように構成された診断プロセッサと、
実行された前記システム診断の結果を使用者に示すように構成された出力プロセッサと、
を備え、以下の(a)~(d)のうち1つ以上を満たす診断システム。
(a)前記EVPSが電子温度計センサを備え、
前記検出プロセッサが、前記電子温度計センサからの信号が閾値を超えるか否かを検出するように構成され、前記信号が前記閾値を超える場合、
前記診断プロセッサが、セル完全性試験を実行するように構成される。
(b)前記EVPSが入力電圧センサおよび入力電流センサのうち少なくとも1つを備え、
前記検出プロセッサが、前記入力電圧センサおよび前記入力電流センサのうち少なくとも1つからの信号が所定の範囲外であるか否かを検出するように構成され、前記信号が前記所定の範囲外である場合、
前記診断プロセッサが、セル完全性試験を実行するように構成される。
(c)前記EVPSがペイロード閉鎖センサを備え、
前記検出プロセッサが、前記ペイロード閉鎖センサからの信号であって不適正なペイロード閉鎖を示す信号を検出するように構成され、該信号が検出された場合、
前記診断プロセッサが、
(i)湿り試験、
(ii)回路完全性試験、および
(iii)セル完全性試験
から選択された1つ以上の試験を実行するように構成される。
(d)前記EVPSが湿りセンサを備え、
前記検出プロセッサが、前記湿りセンサからの信号であって湿りを示す信号を検出するように構成され、該信号が検出された場合、
前記診断プロセッサが、
(i)回路完全性試験、および
(ii)セル完全性試験
から選択された1つ以上の試験を実行するように構成される。
【請求項2】
前記EVPSが加速度計センサを更に備え、
前記検出プロセッサが、前記加速度計センサからの信号が閾値を超えるか否かを検出するように構成され、前記信号が前記閾値を超える場合、
前記診断プロセッサが、回路完全性試験を実行するように構成される、請求項1に記載の診断システム。
【請求項3】
前記EVPSが、遠隔移動体通信装置と通信するための無線通信回路を備え、前記遠隔移動体通信装置が、少なくとも前記検出プロセッサを備え、
前記EVPSの1つ以上のセンサからの信号が前記遠隔移動体通信装置へ送信される、請求項1または2に記載の診断システム。
【請求項4】
前記EVPSが前記検出プロセッサを備え、
前記EVPSが、遠隔移動体通信装置と通信するための無線通信回路を備え、前記遠隔移動体通信装置が、少なくとも前記診断プロセッサを備え、
前記検出プロセッサによる検出が前記遠隔移動体通信装置へ送信される、請求項1または2に記載の診断システム。
【請求項5】
前記EVPSが前記診断プロセッサを備え、
前記EVPSが、遠隔移動体通信装置と通信するための無線通信回路を備え、前記遠隔移動体通信装置が、前記出力プロセッサを備え、
実行された前記システム診断の結果が前記遠隔移動体通信装置へ送信される、請求項1または2に記載の診断システム。
【請求項6】
請求項3に記載の診断システムに使用される移動体通信装置であって、
遠隔の前記電子蒸気供給システム(EVPS)と通信するための無線通信回路と、
ディスプレイと、
前記EVPSから受信したデータに基づいて、所定の誤用事象の検出に応答して前記EVPSに対して実行される前記システム診断の結果を前記ディスプレイに出力するように動作可能な出力プロセッサと、
を備える移動体通信装置。
【請求項7】
前記EVPSから受信したデータに基づいて、所定の誤用事象の検出に応答して前記EVPSに対して前記システム診断を実行するように動作可能な診断プロセッサを備える請求項に記載の移動体通信装置。
【請求項8】
前記EVPSから受信したデータに基づいて、所定の誤用事象を検出するように動作可能な検出プロセッサを備える請求項に記載の移動体通信装置。
【請求項9】
電子蒸気供給システム(EVPS)と、
移動体通信装置と、
を備える請求項1に記載の診断システムであって、
前記EVPSが、少なくとも第1のセンサと、無線送信機とを備え、
前記移動体通信装置が、無線受信機と、少なくとも前記出力プロセッサとを備える、請求項1に記載の診断システム。
【請求項10】
電子蒸気供給システム(EVPS)用の診断方法であって、
複数の所定の誤用事象のうち1つ以上を検出する検出ステップと、
所定の誤用事象の検出に応答して、少なくとも1つの対応するシステム診断を実行する診断ステップと、
実行された前記システム診断の結果を使用者に示す出力ステップと、
を備え、以下の(a)~(d)のうち1つ以上を満たす診断方法。
(a)前記EVPSが電子温度計センサを備え、
前記検出ステップが、前記電子温度計センサからの信号が閾値を超えるか否かを検出することを含み、前記信号が前記閾値を超える場合、
前記診断ステップが、セル完全性試験を実行することを含む。
(b)前記EVPSが入力電圧センサおよび入力電流センサのうち少なくとも1つを備え、
前記検出ステップが、前記入力電圧センサおよび前記入力電流センサのうち少なくとも1つからの信号が所定の範囲外であるか否かを検出することを含み、前記信号が前記所定の範囲外である場合、
前記診断ステップが、セル完全性試験を実行することを含む。
(c)前記EVPSがペイロード閉鎖センサを備え、
前記検出ステップが、前記ペイロード閉鎖センサからの信号であって不適正なペイロード閉鎖を示す信号を検出することを含み、該信号が検出された場合、
前記診断ステップが、
(i)湿り試験、
(ii)回路完全性試験、および
(iii)セル完全性試験
から選択された1つ以上の試験を実行することを含む。
(d)前記EVPSが湿りセンサを備え、
前記検出ステップが、前記湿りセンサからの信号であって湿りを示す信号を検出することを含み、該信号が検出された場合、
前記診断ステップが、
(i)回路完全性試験、および
(ii)セル完全性試験
から選択された1つ以上の試験を実行することを含む。
【請求項11】
前記EVPSが加速度計センサを備え、
前記検出ステップが、前記加速度計センサからの信号が閾値を超えるか否かを検出することを更に含み、前記信号が前記閾値を超える場合、
前記診断ステップが、回路完全性試験を実行することを含む、請求項10に記載の診断方法。
【請求項12】
前記EVPSの1つ以上のセンサからの信号を遠隔移動体通信装置へ送信するステップを備える請求項10または11に記載の診断方法。
【請求項13】
前記EVPSが前記検出ステップを実行し、
前記EVPSが、遠隔移動体通信装置と通信するための無線通信回路を備え、前記遠隔移動体通信装置が、少なくとも前記診断ステップを実行し、
前記検出ステップからの検出の出力を前記遠隔移動体通信装置へ送信する送信ステップを備える請求項10または11に記載の診断方法。
【請求項14】
前記EVPSが前記診断ステップを実行し、
前記EVPSが、遠隔移動体通信装置と通信するための無線通信回路を備え、前記遠隔移動体通信装置が前記出力ステップを実行し、
前記診断ステップで実行された前記システム診断の結果を前記遠隔移動体通信装置へ送信する送信ステップを備える請求項10または11に記載の診断方法。
【請求項15】
請求項12に記載の診断方法であって、
前記移動体通信装置が、遠隔の電子蒸気供給システム(EVPS)からデータを受信するステップと、
前記移動体通信装置が、前記EVPSから受信したデータに基づいて、所定の誤用事象の検出に応答して前記EVPSに対して実行される前記システム診断の結果をディスプレイに出力するステップと、
を備える請求項12に記載の診断方法。
【請求項16】
前記移動体通信装置が、前記EVPSから受信したデータに基づいて、所定の誤用事象の検出に応答して前記EVPSに対して前記システム診断を実行するステップを備える請求項15に記載の診断方法。
【請求項17】
前記移動体通信装置が、前記EVPSから受信したデータに基づいて、所定の誤用事象を検出するステップを備える請求項16に記載の診断方法。
【請求項18】
請求項1017のいずれか一項に記載の診断方法をコンピュータシステムに実行させるように構成されたコンピュータ実行可能命令を有するコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断システムおよび診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子蒸気供給システム(EVPS)、例えば電子タバコおよび他のエアロゾル送達システムは、揮発性材料を気化させるのに十分な電源を、制御回路、加熱要素、および典型的には液体ペイロードと共に含む複雑な装置である。いくつかのEVPSはまた、通信システムおよび/または計算能力を備える。
【0003】
この装置は、断続的であるが頻繁に、1日中かつ毎日、使用者のすぐ近くで使用される。
【0004】
このレベルの使用は、破損や動作不良を生じさせうる事故につながるかもしれない。同様に、ある程度の誤用が破損や動作不良を生じさせる可能性もある。
【0005】
そのような破損または動作不良を制限することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、この問題を軽減または緩和しようとするものである。
【0007】
第1の側面では、電子蒸気供給システム用の診断システムが請求項1に従って提供される。
【0008】
別の側面では、移動体通信装置が請求項10に従って提供される。
【0009】
別の側面では、電子蒸気供給システム用の診断方法が請求項14に従って提供される。
【0010】
別の側面では、移動体通信装置で使用される診断方法が請求項23に従って提供される。
【0011】
本発明の更なる側面および特徴は、添付の特許請求の範囲で規定される。
【0012】
以下では、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら、例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る電子タバコの概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る電子タバコの制御ユニットの概略図である。
図3】本発明の実施形態に係る電子タバコのプロセッサの概略図である。
図4】本発明の実施形態に係る、移動体端末と通信する電子タバコの概略図である。
図5】電子タバコのカトマイザの概略図である。
図6】電子タバコの気化器またはヒータの概略図である。
図7】本発明の実施形態に係る移動体端末の概略図である。
図8】本発明の実施形態に係る、電子蒸気供給システム用の診断方法のフローチャートである。
図9】本発明の実施形態に係る、移動体通信装置で使用される診断方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
診断システムおよび診断方法を開示する。以下の説明では、本発明の実施形態の完全な理解をもたらすために、いくつかの具体的な詳細が提示される。しかしながら、本発明を実施するためにこれらの特定の詳細を使用する必要がないことは当業者には明らかであろう。逆に、当業者に知られている特定の詳細は、明快さのために適宜省略される。
【0015】
背景を説明すると、電子蒸気供給システム、例えば電子タバコおよびその他のエアロゾル送達システムは、一般に、気化される液体、典型的にはニコチン(この液体は「e-リキッド」と呼ばれることがある)のリザーバを含む。使用者が装置を吸入すると、電気(例えば、抵抗)ヒータが作動して少量の液体を気化させて、使用者によって吸入されるエアロゾルを事実上、生成する。この液体は、エタノールや水などの溶媒中にニコチンを、エアロゾル形成を助けるためのグリセリンまたはプロピレングリコールと共に含んでもよく、また、1つ以上の追加の香料を含んでもよい。当業者は、電子タバコおよび他のそのような装置において使用することの可能な多くの様々な液体製剤を認識するであろう。
【0016】
このように気化した液体を吸入することは、「ベイピング」として広く知られている。
【0017】
電子タバコは、外部データ通信をサポートするためのインタフェースを有してもよい。このインタフェースは、例えば、制御パラメータおよび/または更新されたソフトウェアを外部ソースから電子タバコにロードするために使用することができる。代替的または追加的に、このインタフェースを、電子タバコから外部システムにデータをダウンロードするために利用してもよい。ダウンロードされたデータは、例えば、電子タバコの使用パラメータや故障状態などを表してもよい。当業者には分かるように、電子タバコと1つ以上の外部システム(これは別の電子タバコであってもよい)との間で、多くの他の形態のデータを交換することができる。
【0018】
いくつかの例では、電子タバコが外部システムと通信を行うためのインタフェースが、電子タバコへのマイクロ、ミニ、または通常のUSB接続を使用するUSBリンク等の有線接続に基づいている。電子タバコが外部システムと通信を行うためのインタフェースは、無線接続に基づいてもよい。そのような無線接続は、有線接続よりもいくつかの利点を有する。例えば、使用者は、そのような接続を形成するために追加のケーブル設置を必要としない。加えて、使用者は、移動、接続の設定、およびペアリングデバイスの範囲に関して、より高い柔軟性を有する。
【0019】
本書を通して「電子タバコ」という用語が使用されるが、この用語は、電子蒸気供給システム、エアロゾル送達装置、および他の同様の用語と交換して使用することができる。
【0020】
図1は、本開示のいくつかの実施形態に係る電子タバコ10の概略(分解)図である(縮尺は均一ではない)。この電子タバコは、本体または制御ユニット20と、カトマイザ30を備える。カトマイザ30は、典型的にはニコチンを含む液体のリザーバ38と、ヒータ36と、マウスピース35とを含む。電子タバコ10は、電子タバコの中心線に沿ってカトマイザ30の一端に位置するマウスピース35から制御ユニット20の反対側の端部(通常は先端部と呼ばれる)まで延びる縦軸または円柱軸を有する。この縦軸は、図1において、LAで示される破線によって表示される。
【0021】
カトマイザ内のリキッドリザーバ38は、(e-)リキッドを液体の形態で直接保持してもよいし、あるいは、リキッドの保持体として発泡体マトリックスや綿材料などの吸収構造を利用してもよい。リキッドは、この後、リザーバ38から送出され、ヒータ36を備える気化器に送達される。例えば、リキッドは、リザーバ38からヒータ36までウィック(図1には図示せず)を介して毛管作用により流れてもよい。
【0022】
他の装置では、リキッドが、植物材料または他の(表面上は固体の)植物誘導体材料の形態で提供されてもよい。この場合、リキッドは、この材料のうち、この材料が加熱されたときに気化する揮発性物質を表すと考えることができる。この種類の材料を含む装置は、一般に、リキッドをヒータに輸送するためのウィックを必要としないが、材料に対してヒータを適切に配置して適切な加熱を行うことに留意されたい。
【0023】
これも当然のことながら、固体材料(加工タバコ葉など)やゲルの加熱など、液体以外のペイロード送達の形態も同様に考えることができる。そのような例では、気化する揮発性物質が、吸入される蒸気/エアロゾルの活性成分を提供する。当然ながら、本書における「リキッド」、「e-リキッド」などへの言及は、ペイロード送達の他の態様を等しく包含し、同様に、「リザーバ」または同様のものへの言及は、固体材料のための容器など、他の貯蔵手段を等しく包含する。
【0024】
制御ユニット20は、電子タバコ10に電力を供給するための再充電可能なセルまたはバッテリー54(以下、バッテリーと呼ぶ)と、電子タバコを全体的に制御するためのプリント回路基板(PCB)28および/または他の電子機器を含む。
【0025】
制御ユニット20およびカトマイザ30は、図1に示されるように、互いに取外し可能であるが、装置10の使用時には、例えばねじまたはバヨネット継手によって、接合される。カトマイザ30および制御ユニット20上のコネクタは、図1にそれぞれ31Bおよび21Aとして概略的に示されている。制御ユニットとカトマイザとの間のこの接続は、2つの間の機械的および電気的な接続性をもたらす。
【0026】
制御ユニットがカトマイザから取り外されると、カトマイザに接続するために使用される制御ユニット上の電気接続部21Aは、充電装置(図示せず)を接続するためのソケットとしても機能してよい。この充電装置の他端は、電子タバコの制御ユニット内のバッテリー54を再充電するためにUSBソケットに差し込むことができる。他の実装例では、(例えば)電気接続部21AとUSBソケットとの間の直接接続のためのケーブルが電子タバコに備え付けられていてもよい。
【0027】
制御ユニットには、空気入口用の1つ以上の孔がPCB28に隣接して設けられている。これらの孔は、制御ユニットを通る空気通路に接続され、この空気通路は、コネクタ21Aを貫通して設けられた空気通路へと至る。この空気通路は次に、カトマイザ30を通ってマウスピース35に至る空気経路につながる。ヒータ36およびリキッドリザーバ38は、コネクタ31Bとマウスピース35との間に空気チャネルを設けるように構成されていることに注意されたい。この空気チャネルは、カトマイザ30の中心を通って延び、リキッドリザーバ38がこの中心経路の周りの環状領域に閉じ込められてもよい。代替的に(または追加的に)、空気流チャネルは、リキッドリザーバ38と、カトマイザ30の外側ハウジングとの間に位置してもよい。
【0028】
使用者がマウスピース35を介して吸い込むと、空気が1つ以上の空気入口孔を通って制御ユニット20内に引き込まれる。この空気流(または関連する圧力の変化)は、センサ、例えば圧力センサによって検出され、このセンサは、ヒータ36を作動させて、リザーバ38から供給されるニコチン液を気化させる。空気流は、制御ユニットから気化器に入り、そこで空気流がニコチン蒸気と混合する。この空気流とニコチン蒸気の混合物(事実上、エアロゾル)は、この後、カトマイザ30を通過してマウスピース35から出て、使用者によって吸入される。カトマイザ30は、ニコチン液の供給が尽きたときに、制御ユニットから取り外して廃棄してもよい(そして、その後、別のカトマイザと交換してもよい)。
【0029】
当然ながら、図1に示される電子タバコ10は、例示のためにのみ提示されたものであり、多くの他の実装例を採用することができる。例えば、いくつかの実施態様では、カトマイザ30は、リキッドリザーバ38を含むカートリッジと、ヒータ36を含む別個の気化器部分とに分割される。この構成では、カートリッジは、リザーバ38内のリキッドが使い尽くされた後に廃棄することができるが、ヒータ36を含む別個の気化器部分は保持される。代替的に、電子タバコは、図1に示すカトマイザ30を備えるか、あるいは一体型(単一)の装置として構成されてもよいが、リキッドリザーバ38は、(使用者によって)交換可能なカートリッジの形態である。更なる可能な変形例は、ヒータ36がカトマイザ30の図1に示す端部とは反対側の端部、すなわちリキッドリザーバ38とマウスピース35との間に配置されてもよく、あるいはヒータ36がカトマイザの中心軸LAに沿って配置され、リキッドリザーバがヒータ35の径方向外側に位置する環状構造の形態であるというものである。
【0030】
当業者はまた、制御ユニット20のための多くの可能な変形例を認識するであろう。例えば、空気流は、PCB28に隣接する空気流に加えて、またはその代わりに、先端部、すなわちコネクタ21Aとは反対側の端部で制御ユニットに入ってもよい。この場合、空気流は、典型的には、バッテリー54と、制御ユニットの外壁との間の通路に沿ってカトマイザに向かって引き込まれる。同様に、制御ユニットは、先端部またはその付近(例えば、バッテリーと先端部との間)に配置されたPCBを備えてもよい。このようなPCBは、PCB28に加えて、またはその代わりに設けられてもよい。
【0031】
更に、電子タバコは、カトマイザと制御ユニットとの間の接続点での充電に加えて、またはその代わりに、先端部での充電、または装置上の他の場所に位置するソケットを介した充電をサポートしてもよい(一部の電子タバコは本質的に一体化されたユニットとして提供され、この場合、使用者はカトマイザを制御ユニットから切り離すことができない)。他の電子タバコは、有線充電に加えて(またはその代わりに)、無線(誘導)充電をサポートしてもよい。
【0032】
図1に示される電子タバコの潜在的な変形例に関する上述の議論は例示である。当業者は、電子タバコ10の更なる潜在的な変形例(および変形例の組合せ)を認識するであろう。
【0033】
図2は、本開示のいくつかの実施形態に係る図1の電子タバコ10の主要な機能要素の概略図である。図2は、主に電気的な接続および機能に関するものであり、様々な要素の物理的サイズを示すことも、制御ユニット20またはカトマイザ30内におけるそれらの要素の物理的配置の詳細を示すことも意図していないことに注意されたい。加えて、図2に示される要素のうち制御ユニット20内に配置されるものの少なくとも一部を回路基板28上に実装できることが理解されるであろう。あるいは、そのような要素のうちの1つ以上が、代わりに、回路基板28と協力して動作するように制御ユニット内に収容されるが、回路基板自体には物理的に搭載されなくてもよい。例えば、これらの要素は、1つ以上の追加の回路基板上に配置されてもよいし、別々に配置されてもよい(例えばバッテリー54)。
【0034】
図2に示されるように、カトマイザは、コネクタ31Bを介して電力を受け取るヒータ310を含む。制御ユニット20は、カトマイザ30の対応するコネクタ31B(または場合によってはUSB充電装置)に接続するための電気ソケットまたはコネクタ21Aを含む。これにより、制御ユニット20とカトマイザ30との間に電気的接続性がもたらされる。
【0035】
制御ユニット20は、センサユニット61を更に含む。このセンサユニット61は、空気入口から空気出口まで(コネクタ21Aを通ってカトマイザ30まで)制御ユニット20を通る空気経路内に、またはその空気経路に隣接して配置される。このセンサユニットは、圧力センサ62および温度センサ63(これもまた、この空気経路内またはこの空気経路に隣接して配置される)を含む。制御ユニットは、コンデンサ220、プロセッサ50、電界効果トランジスタ(FET)スイッチ210、バッテリー54、ならびに入力装置59および出力装置58を更に含む。
【0036】
プロセッサ50および他の電子要素(例えば圧力センサ62)の動作は、一般に、プロセッサ(または他の構成要素)上で実行されるソフトウェアプログラムによって少なくとも部分的に制御される。そのようなソフトウェアプログラムは、ROMなどの不揮発性メモリに記憶されてもよく、このメモリは、プロセッサ50自体に統合することも、あるいは別個の構成要素として設けることも可能である。プロセッサ50は、ROMにアクセスして、必要に応じて個々のソフトウェアプログラムをロードし、実行することができる。プロセッサ50は、制御ユニット20内の他の装置(例えば圧力センサ62)と適宜通信するための適切な通信手段、例えばピンやパッド(および対応する制御ソフトウェア)も含む。
【0037】
出力装置58は、可視出力、音声出力、および/または触覚出力を提供してもよい。例えば、出力装置は、スピーカ58、バイブレータ、および/または1つ以上のライトを含んでもよい。ライトは、典型的には、1つ以上の発光ダイオード(LED)の形態で設けられ、これらは同一色でも異なる色(すなわち多色)でもよい。多色LEDの場合、異なる色、例えば赤色、緑色または青色のLEDを、色に相対的なバリエーションを与えるように任意で様々な相対輝度で、オンに切り替えることにより、異なる色が得られる。赤色、緑色および青色LEDが共に設けられる場合は、全範囲の色が可能であるが、赤、緑および青の3色のLEDのうち2色のみが提供される場合は、対応する部分範囲の色のみをうることができる。
【0038】
出力装置からの出力は、バッテリー低下警告など、電子タバコ内の様々な状況または状態を使用者に伝えるために使用することができる。異なる状態または状況を伝えるために、異なる出力信号を使用することができる。例えば、出力装置58が音声スピーカである場合、異なる状態または状況を、異なる音高および/または持続時間のトーンまたはビープ音によって、および/または複数のそのようなビープ音またはトーンを提供することによって表してもよい。あるいは、出力装置58が1つ以上のライトを含む場合、異なる色、光パルスまたは連続照明、異なるパルス持続時間などを使用することによって、異なる状態または状況を表すことができる。例えば、1つの表示灯を利用して、バッテリー低下警告を示す一方で、別の表示灯を使用して、リキッドリザーバ38がほぼ枯渇したことを示してもよい。当然ながら、所与の電子タバコが、複数の異なる出力モード(音声、視覚)等をサポートするために複数の出力装置を含んでもよい。
【0039】
入力装置59は、様々な形態で提供することができる。例えば、入力装置(複数であってもよい)は、電子タバコの外面上のボタンとして、例えば、機械センサ、電気センサ、または容量(タッチ)センサとして実装されてもよい。いくつかの装置は、入力機構として電子タバコへの吹き込みをサポートし(このような吹き込みは圧力センサ62によって検出することができ、圧力センサは入力装置59の一形態としても機能する)、および/または別の形態の入力機構として、カトマイザ30と制御ユニット20との接続/切断をサポートしてもよい。またも当然ながら、所与の電子タバコが、複数の異なる入力モードをサポートするために複数の入力装置59を含んでもよい。
【0040】
上述のように、電子タバコ10は、空気入口から電子タバコを通り、カトマイザ30内の圧力センサ62およびヒータ310を通過してマウスピース35に至る空気経路を提供する。したがって、使用者が電子タバコのマウスピースを吸い込むと、プロセッサ50が、圧力センサ62からの情報に基づいてそのような吸い込みを検出する。このような検出に応答して、CPUはバッテリー54からヒータに電力を供給し、それにより、使用者による吸入のためにリキッドリザーバ38からのニコチンを加熱して気化させる。
【0041】
図2に示す特定の実装では、FET210がバッテリー54とコネクタ21Aとの間に接続されている。このFET210はスイッチとして機能する。プロセッサ50は、このスイッチを動作させるためにFETのゲートに接続され、それによって、プロセッサが、検出された空気流の状態に従って、バッテリー54からヒータ310への電力の流れをオンおよびオフに切り替えることを可能にする。当然ながら、ヒータ電流は、比較的大きく、例えば、1~5アンペアの範囲とすることができ、したがって、FET210は、(FET210の代わりに使用しうる任意の他の形態のスイッチと同様に)そのような電流の制御をサポートするように実装されるべきである。
【0042】
バッテリー54からヒータ310に流れる電力量をよりきめ細かく制御するために、パルス幅変調(PWM)方式を採用してもよい。PWM方式は、例えば1msの繰り返し周期に基づいていてもよい。そのような周期の各々において、スイッチ210は、その周期の一部分にわたってオンにされ、周期の残りの部分にわたってオフにされる。これは、デューティサイクルによってパラメータ化される。ここで、0のデューティサイクルは、スイッチが各周期の全体にわたってオフである(すなわち、事実上、恒久的にオフである)ことを示し、0.33のデューティサイクルは、スイッチが各周期の3分の1にわたってオンであることを示し、0.66のデューティサイクルは、スイッチが各周期の3分の2にわたってオンであることを示し、1のデューティサイクルは、FETが各周期の全体にわたってオンである(すなわち、事実上、恒久的にオンである)ことを示す。当然ながら、これらはデューティサイクルの例示的な設定値として提示されているに過ぎず、任意の中間値を適宜使用することができる。
【0043】
PWMの使用は、(バッテリー出力電圧およびヒータ抵抗に基づく)公称有能電力にデューティサイクルを乗じたものによって与えられる有効電力をヒータに提供する。プロセッサ50は、例えば、吸い込みの開始時に1のデューティサイクル(すなわち、最大電力)を利用して、最初にヒータ310をその所望の動作温度まで可能な限り迅速に上昇させてもよい。この所望の動作温度が達成されたら、プロセッサ50は、所望の動作電力をヒータ310に供給するために、デューティサイクルを適切な値に低減してもよい。
【0044】
図2に示すように、プロセッサ50は、無線通信のための通信インタフェース55、特に、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)通信をサポートするものを含む。
【0045】
任意で、ヒータ310を、無線通信の送受信のために通信インタフェース55によって使用されるアンテナとして利用してもよい。このようにする動機の1つは、制御ユニット20が金属ハウジング202を有する一方で、カトマイザ部30がプラスチックハウジング302を有する場合があることである(これは、カトマイザ30が使い捨てなのに対し、制御ユニット20は保持されるため、より高い耐久性を活かしうる点を反映している)。金属ハウジングは、制御ユニット20自体の内部に配置されたアンテナの動作に影響を及ぼしうる遮蔽物または障壁として作用する。しかしながら、無線通信用のアンテナとしてヒータ310を利用すれば、カトマイザのプラスチックハウジングのために、この金属遮蔽を回避するのに役立てることができ、カトマイザに追加の構成要素や複雑さ(または費用)を加えることもない。これに代えて、別個のアンテナを設けてもよいし(図示せず)、金属ハウジングの一部を使用してもよい。
【0046】
図2に示されるようにヒータがアンテナとして使用される場合、プロセッサ50、より具体的には通信インタフェース55は、バッテリー54から(コネクタ31Bを介して)ヒータ310に至る電力線にコンデンサ220によって結合されてもよい。この容量結合はスイッチ210の下流で生じる。これは、無線通信は、ヒータが加熱のために給電されていないときに動作しうるからである(以下でより詳細に説明する)。当然ながら、コンデンサ220は、バッテリー54からヒータ310への電力供給がプロセッサ50にそれることを防止するのに役立つ。
【0047】
容量結合は、より複雑なLC(インダクタ-コンデンサ)ネットワークを使用して実装されてもよく、このLCネットワークも、通信インタフェース55の出力とのインピーダンス整合をもたらすことができることに留意されたい(当業者に知られているように、このインピーダンス整合は、通信インタフェース55と、アンテナとして作用するヒータ310との間で信号を、接続部に沿って反射させて戻すのではなく、適切に転送する支援を行うことに役立つことができる。)
【0048】
いくつかの実装例では、プロセッサ50および通信インタフェースは、英国のレディングに本拠を置くDialog Semiconductor PLC製のDialog DA14580チップを使用して実装される。このチップに関する更なる情報(およびデータシート)は、http://www.dialog-semiconductor.com/products/bluetooth-smart/smartbond-da14580から入手可能である。
【0049】
図3は、このチップ50の高レベルかつ簡略化された全体像を示しており、ここで、このチップ50は、Bluetooth(登録商標) Low Energyをサポートする通信インタフェース55を含む。このインタフェースは、特に、信号の変調および復調などを実行するための無線送受信機520、リンク層ハードウェア512、および高度暗号化設備(128ビット)511を含む。無線トランシーバ520からの出力は、アンテナに(例えば、アンテナとして機能するヒータ310に容量結合220ならびにコネクタ21Aおよび31Bを介して)接続される。
【0050】
プロセッサ50の残りの部分は、一般処理用コア530、RAM531、ROM532、ワンタイムプログラミング(OTP)ユニット533、汎用I/Oシステム560(PCB28上の他の構成要素と通信するためのもの)、電力管理ユニット540、および2つのバスを接続するためのブリッジ570を含む。ROM532および/またはOTPユニット533に記憶されたソフトウェア命令は、コア530内の1つ以上の処理ユニットによる実行のために、RAM531に(および/またはコア530の一部として設けられたメモリに)ロードすることができる。これらのソフトウェア命令は、プロセッサ50に、センサユニット61とのインタフェーシング、およびそれに応じたヒータの制御など、本書に記載の様々な機能を実施させる。図3に示すデバイスは、通信インタフェース55としても、電子蒸気供給システム10のための一般的な制御器としても機能するが、他の実施形態では、これら2つの機能が2以上の異なる装置(チップ)間で分けられてもよく、例えば、1つのチップが通信インタフェース55として機能し、別のチップが電子蒸気供給システム101のための一般的な制御器として機能してもよいことに留意されたい。
【0051】
いくつかの実装例において、プロセッサ50は、ヒータがリザーバ38からの液体を気化させるために使用されているときに無線通信を防止するように構成されてもよい。たとえば、スイッチ210がオンに切り替えられたときに、無線通信を中断し、終了し、または通信の開始を防止してもよい。逆に、無線通信が進行中である場合は、例えば、センサユニット61からの空気流の検出を無視することによって、および/または無線通信が進行している間、ヒータ310への電力をオンにするようにスイッチ210を動作させないことによって、ヒータの作動を防止してもよい。
【0052】
いくつかの実装例において加熱と無線通信の両方のためにヒータ310を同時に動作させることを防止する1つの理由は、それがヒータのPWM制御からの潜在的な干渉を回避するのに役立つからである。このPWM制御は、それ自体の周波数(パルスの繰り返し周波数に基づく)を有しており、この周波数は、通常、無線通信に使用される周波数よりもはるかに低いにもかかわらず、これら2つの周波数は互いに干渉する可能性がある。いくつかの状況では、そのような干渉は、実用上、いかなる問題も引き起こさず、(望むのであれば)加熱と無線通信の両方のためのヒータ310の同時動作が許容される。これは、例えば、信号強度および/またはPWM周波数の適切な選択、適切なフィルタリングの提供などの技術によって容易となりうる。
【0053】
図4は、電子タバコ10と、スマートフォン400または他の適切な移動体通信装置(タブレット、ラップトップ、スマートウォッチなど)上で実行されるアプリケーション(アプリ)との間のBluetooth(登録商標) Low Energy通信を示す概略図である。このような通信は、例えば、電子タバコ10のファームウェアをアップグレードするため、電子タバコ10から使用データおよび/または診断データを回収するため、電子タバコ10のリセットまたはロック解除のため、電子タバコの設定を制御するためなど、広範囲の目的に使用することができる。
【0054】
一般的にいえば、電子タバコ10は、例えば入力装置59を使用することによって、または場合によってはカトマイザ30を制御ユニット20に接合することによってスイッチを入れられると、Bluetooth(登録商標) Low Energy通信の告知を開始する。この発出通信がスマートフォン400によって受信されると、スマートフォン400は、電子タバコ10への接続を要求する。電子タバコは、出力装置58を介してこの要求を使用者に通知し、使用者が入力装置59を介して要求を受諾または拒否するのを待ってもよい。要求が受諾されるとすると、電子タバコ10は、スマートフォン400と更に通信することができる。電子タバコは、スマートフォン400の識別情報を記憶し、そのスマートフォンからの将来の接続要求を自動的に受諾することができることに留意されたい。接続が確立されると、スマートフォン400および電子タバコ10は、クライアント-サーバモードで動作し、スマートフォンは、電子タバコに要求を開始および送信するクライアントとして動作し、したがって、電子タバコはサーバとして動作する(そして、適宜、要求に応答する)。
【0055】
Bluetooth(登録商標)Low Energyリンク(Bluetooth Smart(登録商標)としても知られる)は、IEEE802.15.1規格を実施するものであり、約12cmの波長に対応する2.4~2.5GHzの周波数で動作し、最大で1Mビット/秒のデータレートを有する。接続のためのセットアップ時間は6ミリ秒未満であり、平均電力消費は非常に低く、1mW以下のオーダーとなりうる。Bluetooth(登録商標) Low Energyリンクは、約50mまで延在することができる。しかしながら、図4に示される状況では、電子タバコ10およびスマートフォン400は、典型的には同じ人物に属し、したがって、互いに極めて近接している(例えば、1m)。Bluetooth(登録商標) Low Energyに関する更なる情報は、http://www.bluetooth.com/Pages/Bluetooth-Smart.aspxで見つけることができる。
【0056】
当然ながら、電子タバコ10は、スマートフォン400(または任意の他の適切な装置)との通信のための他の通信プロトコルをサポートしてもよい。そのような他の通信プロトコルは、Bluetooth(登録商標) Low Energyの代わりであってもよいし、それに追加してもよい。そのような他の通信プロトコルの例には、Bluetooth(登録商標)(Low Energy版ではない。例えば、www.bluetooth.comを参照のこと)、ISO13157に従った近距離無線通信(NFC)、およびWiFi(登録商標)が含まれる。NFC通信は、Bluetooth(登録商標)(13.56MHz)よりもはるかに低い波長で動作し、一般にはるかに短い範囲、例えば0.2m未満、を有する。しかしながら、この短距離は、依然として、図4に示されるようなほとんどの使用シナリオに適合する。一方、IEEE802.11ah、IEEE802.11v、または同様のもの等の低電力WiFi(登録商標)通信を、電子タバコ10と遠隔装置との間で採用してもよい。いずれの場合も、適切な通信チップセットが、プロセッサ50の一部として、または別個の構成要素として、PCB28上に含まれうる。当業者は、電子タバコ10で使用することの可能な他の無線通信プロトコルを認識するであろう。
【0057】
図5は、いくつかの実施形態に係る例示的なカトマイザ30の概略分解図である。カトマイザは、外側プラスチックハウジング302、マウスピース35(ハウジングの一部として形成されてもよい)、気化器620、中空内管612、および制御ユニットへの取り付けのためのコネクタ31Bを有する。カトマイザ30を通る空気流経路は、コネクタ31Bを貫通する空気入口から始まり、次に気化器625および中空管612の内部を通り、最後にマウスピース35を通って外部に通じる。カトマイザ30は、(i)プラスチックハウジング302と、(ii)気化器620および内管612との間の環状領域に液体を保持する。コネクタ31Bには、この領域に液体を維持するのを助け、漏れを防止するために、シール635が設けられている。
【0058】
図6は、図5に示される例示のカトマイザ30からの気化器620の概略分解図である。気化器620は、それぞれが実質的に半円形の断面を有する2つの部品627A、627Bから形成された実質的に円筒形のハウジング(クレードル)を有する。組み立てられたとき、部品627A、627Bの縁部は、互いに完全には(少なくとも、それらの全長に沿っては)当接せず、むしろ、(図5に示されるように)わずかな間隙625が残る。この間隙は、気化器および管612の周りに位置する外部リザーバからの液体が気化器620の内部に入ることを可能にする。
【0059】
気化器の部品の1つである627Bは、ヒータ310を支持するように図6に示されている。ヒータ310に電力(および無線通信信号)を供給するための2つのコネクタ631A、631Bが示されている。より具体的には、これらのコネクタ631A、631Bは、ヒータをコネクタ31Bに連結し、そこから制御ユニット20に連結する。(コネクタ631Aは、ヒータ310の下を通る電気接続であって図6では見えない電気接続によって、コネクタ31Bから、気化器620の遠端に位置するパッド632Aに接合されることに留意されたい。)
【0060】
ヒータ310は、焼結金属繊維材料から形成された加熱要素を備え、一般的には、多孔質導電性材料(鋼など)のシートの形態をとる。しかし、当然ながら、他の多孔質導電性材料を使用してもよい。図6の例における加熱要素の全体抵抗は、約1オームである。しかし、当然ながら、利用可能なバッテリー電圧および加熱要素の所望の温度/電力消費特性を考慮するなどして、他の抵抗を選択してもよい。この点に関して、関連する特性は、対象となるソース液体に応じた装置の所望のエアロゾル(蒸気)生成特性に従って選択することができる。
【0061】
加熱要素の主要部分は、ほぼ長方形であり、約20mmの長さ(すなわち、コネクタ31Bと接点632Aとの間に延びる方向の長さ)と、約8mmの幅を有する。この例において加熱要素を備えるシートの厚さは、約0.15mmである。
【0062】
図6に見られるように、加熱要素のほぼ長方形の主要部分は、長辺の各々から内側に延びるスロット311を有する。これらのスロット311は、気化器ハウジング部品627Bによって提供されるペグ312と係合し、それにより、加熱要素の位置をハウジング部品627A、627Bに対して維持することを助ける。
【0063】
これらのスロットは、約4.8mmだけ内側に延び、約0.6mmの幅を有する。これらの内側に延びるスロット311は、加熱要素の各辺において約5.4mmだけ互いから離間し、対向する辺から内側に延びるスロットは、この間隔の約半分だけ互いにずれている。スロットのこの配置の結果、加熱要素に沿った電流の流れは、事実上、曲がりくねった経路を辿るように強制され、その結果、スロットの端部の周りに電流および電力の集中が生じる。加熱要素上の異なる位置における異なる電流/電力密度は、比較的低い電流密度の領域よりも熱くなる比較的高い電流密度の領域があることを意味する。これは、事実上、加熱要素に、ある範囲の異なる温度および温度勾配をもたらすが、これはエアロゾル供給システムとの関連で望ましいものとなりうる。これは、ソース液体の異なる成分が異なる温度でエアロゾル化/気化しうるからであり、したがって、ある範囲の温度を有する加熱要素を提供することは、ソース液体中のある範囲の異なる成分を同時にエアロゾル化することに役立ちうるからである。
【0064】
図6に示すヒータ310は、一方向に細長い実質的に平坦な形状を有し、アンテナとして作用するのによく適している。制御ユニットの金属ハウジング202と共に、ヒータ310は、近似的なダイポール構成を形成し、これは、典型的には、Bluetooth Low Energy通信の波長と同じオーダーの大きさの物理的サイズ、すなわち、約12cmの波長に対して数センチメートルのサイズ(これはヒータ310および金属ハウジング202の両方を可能にする)を有する。
【0065】
図6は、ヒータ310(加熱要素)の1つの形状および構成を示すが、当業者は、様々な他の可能性を認識するであろう。例えば、ヒータは、コイルまたは他の構成の抵抗線として設けられてもよい。別の可能性は、ヒータが、気化される液体(例えば、ある形態のタバコ製品)を収容するパイプとして構成されることである。この場合、パイプは、主に、(例えば、コイルまたは他の加熱要素によって)発生場所から気化される液体に熱を輸送するために使用してもよい。そのような場合、パイプは、加熱される液体に対して依然としてヒータとして動作する。ここでも任意で、そのような構成を、無線構成をサポートするためのアンテナとして使用することができる。
【0066】
本書で前述したように、適切な電子タバコ10は、移動体通信装置400と、例えばBluetooth(登録商標) Low Energyプロトコルを使用してこれらの装置をペアリングすることによって、通信することができる。
【0067】
この結果、スマートフォン上で実行するための適切なソフトウェア命令(例えばアプリの形態)を提供することによって、電子タバコ、ならびに/または電子タバコおよびスマートフォンを備えるシステムに追加の機能を提供することが可能である。
【0068】
ここで図7を参照すると、典型的なスマートフォン400は、中央処理装置(CPU)(410)を備える。CPUは、適宜、直接接続により、あるいはI/Oブリッジ414および/またはバス430を介して、スマートフォンの構成要素と通信することができる。
【0069】
図7に示す例では、CPUは、メモリ412と直接通信する。ここで、このメモリ412には、オペレーティングシステムおよびアプリケーション(アプリ)を記憶するためのFlash(登録商標)メモリなどの永続メモリと、CPUによって現在使用されているデータを保持するためのRAMなどの揮発性メモリとが含まれていてもよい。典型的には、永続メモリおよび揮発性メモリは、物理的に別個のユニット(図示せず)によって形成される。更に、メモリは、microSDカードなどのプラグインメモリと、加入者情報モジュール(SIM)(図示せず)上の加入者情報データとを別個に備えていてもよい。
【0070】
スマートフォンはまた、グラフィックス処理ユニット(GPU)416を備えうる。GPUは、CPUと直接、またはI/Oブリッジを介して通信してもよく、またはCPUの一部であってもよい。GPUは、CPUとRAMを共有してもよく、またはそれ自体の専用RAM(図示せず)を有してもよく、携帯電話のディスプレイ418に接続される。ディスプレイは、典型的には、液晶(LCD)または有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイであるが、電子インク等の任意の好適なディスプレイ技術であってもよい。任意で、GPUを、スマートフォンの1つ以上のラウドスピーカー420を駆動するためにも使用することができる。
【0071】
あるいは、スピーカは、I/Oブリッジおよびバスを介してCPUに接続されてもよい。スマートフォンの他の構成要素も同様にバスを介して接続してもよい。このような構成要素には、デバイスにタッチ入力を提供する目的でスクリーン上に重ねられた容量性タッチ面などのタッチ面432、使用者の発話を受信するためのマイクロフォン434、画像を取り込むための1つ以上のカメラ436、スマートフォンの地理的位置の推定値を取得するための全地球測位システム(GPS)ユニット438、および無線通信手段440が含まれる。
【0072】
無線通信手段440は、Bluetooth(登録商標)(標準または低エネルギー形態)、前述のような近距離無線通信およびWi-Fi(登録商標)、ならびに2G、3G、および/または4G等の電話ベースの通信等、異なる規格および/またはプロトコルに準拠するいくつかの別個の無線通信システムを備えてもよい。
【0073】
これらのシステムは、典型的には、バッテリー(図示せず)によって給電される。このバッテリーは、USB(図示せず)などのデータリンクの一部となりうる電力入力(図示せず)を介して充電可能であってもよい。
【0074】
当然ながら、異なるスマートフォンは、異なる特徴(例えば、コンパスやブザー)を含んでもよく、また、上記に列挙されたもののいくつか(例えば、タッチ面)を省略してもよい。
【0075】
したがって、より一般的には、本開示の一実施形態では、スマートフォン400などの適切な遠隔装置が、アプリを記憶および実行するためのCPUおよびメモリと、電子タバコ10との無線通信を開始および維持するように動作可能な無線通信手段とを備える。しかし、当然ながら、この遠隔装置は、タブレット、ラップトップ、スマートTVなど、これらの能力を有する装置であってよい。
【0076】
本発明の一実施形態では、電子蒸気供給システム(EVPS)用の診断システムが、複数の所定の誤用事象のうち1つ以上を検出するように(例えば、適切なソフトウェア命令によって)構成された検出プロセッサ(50、410)を備える。この診断システムはまた、1つの所定の誤用事象の検出に応答して、少なくとも1つの対応するシステム診断を実行するように(例えば、適切なソフトウェア命令によって)構成された診断プロセッサ(50、410)を備え、同様に、診断システムは、実行された各診断の結果を使用者に示すように構成された出力プロセッサ(50、410、416)を備える。
【0077】
検出プロセッサは、EVPS内(例えばセンサユニット61内であるが、任意で、適宜の他の場所)に組み込まれた1つ以上のセンサ(図示せず)から信号を受信する。これらのセンサには、加速度計、電子温度計、入力電圧センサ、入力電流センサ、ペイロード閉鎖センサ、および湿りセンサのうちの1つ以上が含まれていてもよい。
【0078】
本発明の一実施形態では、EVPSは、誤用検出用の加速度計センサを備える。このセンサは、加速度を示す信号(または加速度を導出することができる信号)を出力するように動作可能である。次いで、ある絶対加速度閾値が、例えばどの程度の加速がEVPSに損傷を生じうるかを定めるEVPSの試験に基づいて設定される。そのような加速は、典型的には、EVPSを硬質面上に落下させ、急速な減速(すなわち、負の加速)を引き起こすことによって生じる。
【0079】
任意で、例えば多軸加速度計を使用することによって、2つ以上の軸上の加速度を検出してもよい。例えば、EVPSは、その長さに沿って水平に着地する場合よりも、その一端で着地する場合の方が損傷を受けやすい(またはその逆の)可能性がある。したがって、異なる加速軸に対して、それぞれ異なる閾値を使用してもよい。
【0080】
次いで、検出プロセッサは、加速度計からの信号(典型的には、アナログ-デジタル変換後のもの)を閾値と比較し、信号が閾値を超えるか否かを検出してもよく、もし超える場合、この結果は、特定の形態の誤用、すなわちEVPSの落下を示すために、診断プロセッサに渡される。
【0081】
特定の形態の誤用に応答して、診断プロセッサは、対応するシステム診断を実行する。システム診断は、回路完全性試験、セル(バッテリー)完全性試験、および湿り試験のうちの1つ以上を含むことができる。EVPSの構成要素の封止の完全性を試験するなど、他の試験も考えることができる。
【0082】
本発明の一実施形態では、加速度計信号が、EVPSの落下による誤用を示す閾値を超える場合、診断プロセッサが、対応するシステム診断である回路完全性試験を実行する。
【0083】
回路完全性試験は、典型的には、診断プロセッサによって(または、回路ごとに、または所定の回路試験を行うために、等価的に、診断プロセッサから命令を受信するEVPSのプロセッサによって)制御可能および/または測定可能な各回路を系統的に試験することを含む。
【0084】
回路完全性試験、または該当する場合には各回路完全性試験は、回路が指示されたように閉じるおよび/もしくは開くこと、ならびに/または回路内の電圧、電流、および抵抗のうちの1つ以上が所定の動作範囲内にあることを試験してもよい。更に、通常の使用における電力負荷をシミュレートするために、複数の回路の試験を並列に実施してもよい。
【0085】
回路内の電圧、電流、または抵抗がEVPSのバッテリー/セル54の出力に依存しうる限り、初期セル完全性試験をも実行し、または部分的に実行してもよい。これは、所定の回路(専用の試験回路、ロバストである可能性が高い回路、例えばプロセッサに給電する回路、またはLEDのいずれか)上でセルからの電圧および/または電流を計測し、これらが所定の動作範囲内にあることを調べ、また、回路完全性試験のために、ベースライン値を提供することを含んでもよい。セル完全性試験はまた、セルの適切な着座(配置)、および/またはセルが動作温度範囲内にあることを検出するために使用される任意のセンサを検査することを含んでもよい。
【0086】
任意で、例えばペイロードリザーバの破損または緩みによる漏れの存在を検出するために、湿り試験を行ってもよい。1つ以上の湿り検出センサが、例えば、EVPSへのリザーバの取付箇所の付近、および/または液体によって損傷されうる任意の構成要素(例えば、プロセッサや電力セル)の付近において、EVPS内に組み込まれてもよい。湿りが検出されると、対応する信号が検出プロセッサによって受信される。
【0087】
診断プロセッサがEVPSから遠隔にある場合、最初の試験は、無線通信が動作可能であるというもの、およびEVPS内で診断プロセスの機能を実行する任意のプロセッサが動作可能であるというものであってもよい。
【0088】
本発明の一実施形態では、EVPSは、誤用検出用の少なくとも第1の電子温度計センサを備える。この温度計は、温度に比例する信号を出力するように動作可能である。1つの温度計は、ヒータ/蒸気の温度を測定するために使用される温度計63であってもよいが、これとは別個のものであってもよい。
【0089】
次いで、例えば、どのレベルの温度がEVPSに損傷を生じうるかを決定するためのEVPSの試験に基づいて、絶対温度閾値が設定される。当然のことながら、EVPSの特定の要素は、蒸気を生成するために、通常の使用中に熱くなるように意図されている。しかしながら、温度計は、電力セルおよび/またはEVPSのプロセッサの近傍など、異なる動作温度範囲が予想される場所に配置してもよい。EVPSの異なる温度計/ゾーンに対して、異なる閾値(または等価的に範囲限界)を設定してもよい。
【0090】
次いで、検出プロセッサは、温度計からの信号(典型的には、アナログ-デジタル変換後のもの)を閾値と比較して、信号が閾値を超えるか否かを検出してもよく、超える場合、この結果は、特定の形態の誤用、すなわちEVPSが過度に熱くなりうる誤用を示すために、診断プロセッサに渡される。これは、例えば、装置が日中に車の中に放置された場合や、台所コンロのような熱源の近くに置かれた場合に起こりうる。
【0091】
当然のことながら、適切に配置された温度センサは、交換バッテリーやその他の使用者によるEVPSの改変が、EVPSの任意の態様の動作温度を所定の範囲から逸脱させ、それによって、装置をその推奨動作範囲外で機能するよう改造することによる誤用を構成するか否かを同様に検出してもよい。これは、電力セルの温度、EVPSの任意のプロセッサの温度、またはヒータ自体もしくは発生する蒸気の温度を検出することを含んでもよい。
【0092】
これも当然のことながら、同様に、温度が低くなりすぎる可能性もあり、これにより、電力セルの動作に悪影響が出ると同時に、ヒータを気化温度まで上昇させるためにより多くの電力が必要になる可能性もある。
【0093】
本発明の一実施形態では、温度計信号が、EVPSを改変または過熱することによる誤用を示す閾値を超える(または等価的に所定の範囲外になる)場合、診断プロセッサが、対応するシステム診断であるセル完全性試験を実行する。
【0094】
上述のように、この試験は、電圧および/または電流試験、ならびに(誤用温度試験とは別に)セル温度試験を含んでもよい。当然ながら、この場合、同じ電子温度計を使用して、最初に潜在的な誤用を検出し、次に電力セルに関する任意の潜在的な問題を検出してもよい。この場合、潜在的な誤用とバッテリー動作不良とにそれぞれ対応付けられた異なる閾値または範囲が存在してもよい。
【0095】
本発明の一実施形態では、EVPSは、誤用検出用の入力電圧センサおよび入力電流センサのうち少なくとも1つを備える。これらの電圧センサおよび電流センサは、それぞれ電圧および電流に比例する信号を出力するように動作可能である。
【0096】
次いで、絶対電圧および/または電流閾値が、例えば、どのレベルの電圧および/または電流がセルの充電(または任意で放電)中にEVPSに損傷を起こしうるかの試験に基づいて、あるいはセルまたは承認済み充電ユニットの製造業者による格付けに基づいて、設定される。
【0097】
そのような損傷は、非標準の充電器が使用されるとき、または非標準の電力セルが使用されるとき、またはその両方で生じうる。
【0098】
上述のように、電圧センサおよび/または電流センサは、充電中に使用してもよい。任意で、それらは、放電中、例えばセル完全性試験または回路完全性試験中に使用することもでき、したがって二重の役割を有する。あるいは、充電試験および放電試験のために別個の電圧センサおよび/または電流センサを使用してもよい。充電および放電のために異なる閾値を使用してもよく、これらの値は、電流のためのそのような閾値または範囲が所与の電圧に対して設定され、および/またはその逆であるというように、相互に依存してもよい。
【0099】
次いで、検出プロセッサは、電圧センサおよび/または電流センサからの信号(典型的には、アナログ-デジタル変換後のもの)を閾値と比較して、信号が閾値を超えるか否かを検出してもよく、超える場合、この結果は、特定の形態の誤用、すなわち、無認証の電源および/またはバッテリーの使用を示すために、診断プロセッサに渡される。
【0100】
本発明の一実施形態では、電圧信号および/または電流信号がそのような誤用を示す閾値を超える場合、診断プロセッサは、対応するシステム診断として、本書で前述したセル完全性試験を実行する。
【0101】
本書で前述したように、セル完全性試験は、セル着座/位置の検出、例えば適切に配置されたボタンまたは電気接点の使用によるものを含んでもよい。同様に、セル完全性試験は、セルの真正性の検出、例えばセル内のIDチップとのセキュアなハンドシェイクの使用によるものを含んでもよい。これは、EVPSによって、または適切なアプリを実行する移動体通信装置を用いて(無線通信を介して)行ってもよい。任意で、セルは、適切なアプリを実行する適切な移動体通信装置との直接無線通信を可能にするRFIDまたはNFCチップを備えてもよい。これは、移動体通信装置をEVPS上に置くことによって認証を可能にする。それはまた、交換バッテリーがEVPSに挿入される前、例えば販売時に、または交換バッテリーが複数の装置間で借用もしくは交換されるときに、交換バッテリーを認証することを可能にしうる。
【0102】
本発明の一実施形態では、EVPSは、誤用検出用のペイロード閉鎖センサを備える。この閉鎖センサは、典型的には、ペイロード容器の一部が所定の位置に物理的に存在することを検出することによって、および/または任意で、ペイロード容器とEVPSとの間の封止の完全性を示すことによって、ペイロードがEVPS内に適切に設置されていることを示す信号を出力するように動作可能である。
【0103】
このセンサは、典型的には、ペイロード容器とEVPSとの適切な相互作用によって閉じられる1つ以上の電気接点および/または電気回路である。そのような接点の位置は、EVPSおよびペイロード容器の設計に応じて選択される。典型的には、ペイロード容器は、特定の配置を強制する非対称的な特徴部か、接続機構(ねじ山等)であって特定の終端位置(すなわち、完全にねじ込まれたときの位置)を有するもののいずれかを有してもよい。したがって、1つの接点を、非対称特徴部またはねじ山の終端に配置してもよい。当業者には他の方策が明らかであろう。
【0104】
封止に関しては、封止が破られ、または摩耗して薄くなると、封止の抵抗率、静電容量、または他の電気的特性が変化する可能性が高い。したがって、この特性が所定の範囲外にある場合、封止の完全性が損なわれているとみなすことができる。
【0105】
次いで、検出プロセッサは、ペイロード閉鎖センサ信号の有無を検出し、かつ/または封止完全性電気センサからの信号(典型的には、アナログ-デジタル変換後のもの)を所定の動作範囲と比較して、信号がその範囲外であるか否かを検出してもよく、信号が範囲外である場合、またはペイロード閉鎖センサ信号が存在しない場合、この結果は、特定の形態の誤用、すなわちペイロード容器の不適正な設置を示すために、診断プロセッサに渡される。
【0106】
本発明の一実施形態では、ペイロード閉鎖センサ信号または封止完全性信号がそのような誤用を示す場合であって、液体のペイロードの場合、診断プロセッサが、1つ以上の対応するシステム診断を行う。これらのシステム診断には、前述した湿り試験、回路完全性試験、およびセル完全性試験が含まれる。これは、前述したように、EVPS内の液体は装置の複数の部分に損傷を与える可能性があるからである。
【0107】
本発明の一実施形態では、EVPSは、誤用検出用の1つ以上の湿りセンサを備える。この湿りセンサは、湿りがEVPS内でセンサの近くに存在することを示す信号を出力するように動作可能である。当然ながら、EVPSの特定の部分は、通常の使用中に湿り(蒸気および場合によっては凝縮物)を含むことになる。しかしながら、EVPSの他の部分は乾燥したままであることが期待される。望ましくない湿り(すなわち、EVPSのうち湿りを含むべきでない部分における湿り)は、上述のように液体ペイロードが不適正に装着された場合にEVPS内で発見される可能性があるが、例えばEVPSが水中に落下したために生じる可能性や、EVPSの外殻(または内部区画)の完全性が例えば多湿気候において損なわれた場合に生じる可能性もある。
【0108】
次いで、検出プロセッサは、1つ以上の湿りセンサ信号の有無を検出して、望ましくない湿りがEVPS内に発見されるか否かを検出してもよく、発見された場合、この結果は、特定の形態の誤用、すなわち、EVPSの濡れ(リザーバの誤用、EVPSの水中への落下などによるもの)を示すために、診断プロセッサに渡される。
【0109】
本発明の一実施形態では、湿りセンサ信号がそのような誤用を示す場合、診断プロセッサが、1つ以上の対応するシステム診断を実行する。これらのシステム診断には、前述した回路完全性試験およびセル完全性試験が含まれる。これは、前述したように、EVPS内の液体が装置の複数の部分に損傷を与える可能性があるからである。
【0110】
当然ながら、EVPSは、上記のセンサのうち1つ以上を備えていてもよい。
【0111】
これに対応して、診断システムは、上記の検出のうち対応する1つ以上を実行し、特定の誤用を示す検出に応答して、少なくとも1つの対応するシステム診断を実行してもよい。
【0112】
EVPSの障害を示す上記の診断のいずれかに応答して(例えば、セル完全性試験または回路完全性試験が失敗した場合、またはEVPSの1つの構成要素の温度が所定の閾値を超えた場合、または所定の構成要素が湿りに近接していることが検出された場合)、出力プロセッサは、実行された診断の結果を使用者に示すように構成される。
【0113】
EVPSは、英数字情報を使用者に提供することのできるディスプレイの使用を可能にするフォームファクタを有してもよいし、より単純なユーザインタフェース、例えば、障害時に起動しうる、または障害時に色を変化させうるLED、を実装してもよい。
【0114】
代替的または追加的に、障害を示す診断の結果は、遠隔移動体通信装置に送信してもよい。ここで、この遠隔移動体通信装置は、例えばアプリ内で、ユーザインタフェースを介して使用者に情報を提供する。
【0115】
より一般的には、診断システムがEVPS内に完全に収容されてもよいが、任意で、診断システムの構成要素を、EVPSと遠隔移動体通信装置(スマートフォンなど)とに分けてもよい。
【0116】
したがって、本発明の一実施形態では、上述のようにEVPSが、遠隔移動体通信装置との通信のための無線通信回路を備え、遠隔移動体通信装置は、少なくとも検出プロセッサを備える。その後、EVPSの1つ以上のセンサからの信号が、遠隔移動体通信装置に送信される。
【0117】
この移動体通信装置は、検出を実行することができ、典型的には、診断および出力プロセスも実行する。ここで、移動体通信装置のCPUは、適切なソフトウェア命令の下で、検出プロセッサ、ならびに任意で診断プロセッサおよび出力プロセッサとして動作する。
【0118】
一方、本発明の一実施形態では、移動体通信装置ではなくEVPSが検出プロセッサを備える。
【0119】
前述のように、EVPSは、遠隔移動体通信装置と通信するための無線通信回路を備え、この遠隔移動体通信装置は、少なくとも診断プロセッサを備える。
【0120】
今回は、EVPS内の検出プロセッサによる個々の検出が、遠隔移動体通信装置に送信される。
【0121】
この移動体通信装置は、次いで、診断を実行することができ、また典型的には、出力プロセスも実行する。ここで、移動体通信装置のCPUは、適切なソフトウェア命令の下で、診断プロセッサおよび任意で出力プロセッサとして動作する。
【0122】
同様に、前述のように、本発明の別の実施形態では、EVPSは、診断プロセッサと、遠隔移動体通信装置と通信するための前述の無線通信回路とを備え、この遠隔移動体通信装置は、出力プロセッサを備える。
【0123】
次いで、前述したように、実行された診断の結果が遠隔移動体通信装置に送信される。
【0124】
次いで、前述のように、移動体通信装置は、例えばアプリ内で、ユーザインタフェースを介して使用者に情報を提供することができる。
【0125】
EVPS内の1つ以上のセンサに応答して、検出、診断、および出力の一部または全部をEVPSと移動体通信装置との間で分けることを容易にするためには、移動体通信装置に適切かつ対応する改修を加える必要がある。
【0126】
したがって、本発明の一実施形態では、移動体通信装置400は、遠隔のEVPS10と通信するための無線通信回路440と、ディスプレイ418と、EVPSから受信したデータに基づいて、対応する所定の誤用事象の検出に応答してEVPSに対して実行される少なくとも第1の診断試験の結果をディスプレイに出力するように動作可能な出力プロセッサ(例えば、適切なソフトウェア命令の下で動作するCPU410)とを備える。
【0127】
この例では、EVPSから受信されるデータは、診断出力データである可能性が高く、この診断出力データは、任意で、1つ以上のセンサからの関連値を伴う。
【0128】
一方、本発明の一実施形態において、移動体通信装置は、EVPSから受信したデータに基づいて、対応する所定の誤用事象の検出に応答してEVPSに対して少なくとも第1の診断試験を実行するように動作可能な診断プロセッサ(例えば、適切なソフトウェア命令の下で動作するCPU410)を更に備える。
【0129】
この例では、EVPSから受信されるデータは、特定の誤用を示す検出データである可能性が高く、この検出データは、任意で、1つ以上のセンサからの関連値を伴う。
【0130】
更に、本発明の一実施形態において、移動体通信装置は、EVPSから受信したデータに基づいて、所定の誤用事象を検出するように動作可能な検出プロセッサ(例えば、適切なソフトウェア命令の下で動作するCPU410)を更に備える。
【0131】
この例では、EVPSから受信されるデータは、1つ以上のセンサからのセンサデータである可能性が高い。
【0132】
したがって、より一般的には、本書に記載されるように、診断システムは、電子蒸気供給システム(EVPS)および移動体通信装置の両方を備えてもよく、ここで、EVPSは、少なくとも第1のセンサと無線送信機を備え、移動体通信装置は、無線受信機と少なくとも出力プロセッサを備える。EVPSおよび移動体通信装置に関する各例において、診断システムの構成要素の残りは、他方の装置内に配置される。
【0133】
ここで図8を参照すると、EVPS、またはEVPSと移動体通信装置との組み合わせが、以下のステップを含む、電子蒸気供給システム用の以下の診断方法を実施することがわかる。
【0134】
第1のステップs810では、複数の所定の誤用事象のうち1つ以上を検出する。本書で説明したように、いくつかの異なる誤用を想定することができ、それらの誤用は、EVPSの1つ以上のセンサの信号を所定の閾値/範囲と比較することによって、またはそれらの信号の存在または不存在を検出することによって検出される。
【0135】
第2のステップs820では、1つの所定の誤用事象の検出に応答して、少なくとも1つの対応するシステム診断を実行する。本書で説明されるように、特定の誤用は、1つ以上の対応する診断を有する。
【0136】
第3のステップs830では、実行された診断の結果を使用者に示す。本書で説明されるように、これは、EVPSの、または移動体通信装置の、または両方のユーザインタフェースを介して行うことができる。
【0137】
当業者には明らかなように、本書に記載され、特許を請求される装置の様々な実施形態の動作に対応する上記方法の変形例は、本発明の範囲内にあると考えられる。これらの変形例には以下のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0138】
・EVPSが加速度計センサを備え、検出ステップが、この加速度計からの信号が閾値を超えるか否かを検出することを含み、信号が閾値を超える場合、診断ステップが、回路完全性試験を実行することを含む。
【0139】
・EVPSが電子温度計センサを備え、検出ステップが、この電子温度計からの信号が閾値を超えるか否かを検出することを含み、信号が閾値を超える場合、診断ステップが、セル完全性試験を実行することを含む。
【0140】
・EVPSが入力電圧センサおよび入力電流センサのうち少なくとも1つを備え、検出ステップが、これらの入力電圧検出器および入力電流検出器のうち少なくとも1つからの信号が所定の範囲外であるか否かを検出することを含み、信号が所定の範囲外である場合、診断ステップが、セル完全性試験を実行することを含む。
【0141】
・EVPSがペイロード閉鎖センサを備え、検出ステップが、ペイロード閉鎖センサからの信号が不適正なペイロード閉鎖を示すことを検出することを含み、信号が不適正なペイロード閉鎖を示すことが検出された場合、診断ステップが、湿り試験、回路完全性試験、およびセル完全性試験からなるリストから選択される1つ以上の試験を実行することを含む。
【0142】
・EVPSが湿りセンサを備え、検出ステップが、湿りセンサからの信号が湿りを示すことを検出することを含み、信号が湿りを示すことが検出された場合、診断ステップが、回路完全性試験およびセル完全性試験からなるリストから選択される1つ以上の試験を実行する。
【0143】
・EVPSの1つ以上のセンサからの信号を遠隔移動体通信装置に送信する。
【0144】
・EVPSが検出ステップを実行し、EVPSが、遠隔移動体通信装置との通信のための無線通信回路を備え、遠隔移動体通信装置が、少なくとも診断ステップを実行し、当該方法が、検出ステップからの検出の出力を遠隔移動体通信装置に送信する送信ステップを備える。
【0145】
・EVPSが診断ステップを実行し、EVPSが、遠隔移動体通信装置との通信のための無線通信回路を備え、遠隔移動体通信装置が、出力ステップを実行し、当該方法が、診断ステップにおいて実行された診断試験の結果を遠隔移動体通信装置に送信する送信ステップを備える。
【0146】
同様に、図9を参照すると、移動体通信装置が、移動体通信装置で使用される以下の診断方法を実施しうることがわかる。ここで、この方法は、以下のステップを備える。
【0147】
第1のステップs910では、遠隔の電子蒸気供給システム(EVPS)からデータを受信する。
【0148】
第2のステップs920では、EVPSから受信したデータに基づいて、所定の誤用事象の検出に応答してEVPSに対して実行される少なくとも第1の診断試験の結果をディスプレイに出力する。
【0149】
またも当業者には明らかなように、本書に記載され、特許を請求される装置の様々な実施形態の動作に対応する上記方法の変形例は、本発明の範囲内にあると考えられる。これらの変形例には以下のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0150】
・EVPSから受信されたデータに基づいて、対応する所定の誤用事象の検出に応答して、EVPSに対して少なくとも第1の診断試験を実行する。
【0151】
・EVPSから受信されたデータに基づいて、所定の誤用事象を検出する。
【0152】
当然ながら、上述の方法は、場合に応じてソフトウェア命令によって、または専用ハードウェアの含有もしくは置換によって適切に改修された従来のハードウェア上で実行してもよい。
【0153】
したがって、従来の等価装置(電子タバコなどのEVPS、および任意でスマートフォンなどの移動体通信装置)の既存部品に対する必要な改修は、フロッピーディスク、光ディスク、ハードディスク、PROM、RAM、フラッシュメモリ、またはこれらもしくは他の記憶媒体の任意の組合せなどの非一時的機械可読媒体上に記憶されたプロセッサ実施可能命令を備えるコンピュータプログラム製品の形態で実装してもよいし、ASIC(特定用途向け集積回路)もしくはFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)または従来の等価装置の改修に使用するために適した他の構成可能な回路として、ハードウェアで実現してもよい。これとは別に、そのようなコンピュータプログラムは、イーサネット、無線ネットワーク、インターネット、またはこれらもしくは他のネットワークの任意の組み合わせなどのネットワーク上のデータ信号を介して送信されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9