(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】遊離可能な結合部位を2つ有する接合体を用いた可逆的な細胞標識
(51)【国際特許分類】
G01N 33/536 20060101AFI20230307BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
G01N33/536 A
C12Q1/04
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017237900
(22)【出願日】2017-12-12
【審査請求日】2020-12-09
(32)【優先日】2016-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520094891
【氏名又は名称】ミルテニー バイオテック ベー.フェー. ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Miltenyi Biotec B.V. & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Friedrich-Ebert-Strasse 68, 51429 Bergisch Gladbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー パンクラッツ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ドーゼ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ アッセンマッハー
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-136937(JP,A)
【文献】特開2014-073092(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02725359(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0167064(US,A1)
【文献】特表2008-542783(JP,A)
【文献】国際公開第2006/049289(WO,A1)
【文献】特表2016-519652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53
G01N 33/532
G01N 33/536
C12Q 1/02
C12Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)一般式(I)
A
n-P-B
m-C
q-X
o (I)
[式中、
Aは、抗原認識部であり、
Pは、酵素分解性スペーサーであり、
Bは、第1の結合部であり、
Cは、第2の結合部であり、
Xは、検出部であり、
n、m、q、oは、1から100までの整数である]
を有する少なくとも1つの接合体を準備すること、
ここで、BとCとは、互いに共有結合によらずに結合しており、AおよびBは、Pに共有結合しており、かつ、前記酵素分解性スペーサーPは多糖類である、
b)前記抗原認識部Aにより認識される標的部を、前記少なくとも1つの接合体で標識すること、
c)前記標識された標的部を、検出部Xを介して検出すること、
d)B
mとC
qとの間の共有結合によらない結合を破壊することにより、C
q-X
oを、前記標識された標的部から開裂させること、
e)スペーサーPを酵素で分解することにより、前記標識された標的部から前記
第1の結合部B
mを開裂させること
によって、生物学的検体のサンプル中の標的部を検出するための方法。
【請求項2】
スペーサーPを酵素で分解することにより、前記標識された標的部から前記抗原認識部A
nを開裂させることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の結合部Bに結合する遊離剤を添加し、それにより前記第2の結合部Cと置き換えることによって、および/または、前記第2の結合部Cに結合する遊離剤を添加し、それにより前記第1の結合部Bと置き換えることによって、ステップd)における前記B
mとC
qとの間の共有結合によらない結合の破壊を行うことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記接合体での前記標的部の標識を、ステップb)において、接合体A
n-P-B
m-C
q-X
o (I)での前記標的部の標識により行うことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ステップb)における前記接合体での前記標的部の標識を、第1に前記標的部を第1の接合体
断片A
n-P-B
mで標識
する第1の標識する工程と、第2に前記第1に標識された標的部を第2の接合体
断片C
q-X
oで標識する
第2の標識する工程によって行うことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記第1の標識する工程と前記第2の標識する工程との間に、洗浄ステップを行うことを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ステップd)およびe)を同時に行うことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ステップa)~e)を少なくとも2つの引き続く序列で行い、その際、それぞれの序列において、異なる検出部Xを有する複数の接合体A
n-P-B
m-C
q-X
o (I)を使用することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ステップa)において、異なる検出部Xを有する少なくとも2つの接合体A
n-P-B
m-C
q-X
oを準備し、少なくとも2つのステップc)において、前記標識された標的部を、前記異なる検出部Xを介して検出することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
ステップa)~e)を少なくとも2つの引き続く序列で行い、その際、第1の
序列におけるステップa)において、少なくとも1つの第1の接合体A
n-P-B
m-C
q-X1を準備し、第1の
序列におけるステップd)において、前記標識された標的部からC
q-X1を開裂させた後、なおもA
n-P-B
mで標識されている前記標的部を、少なくとも1つの第2の
序列におけるステップa)において、少なくとも1つの第2の接合体C
q-X2で標識し、その際、前記第1の接合体と第2の接合体とには、異なる検出部Xが付与されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
ステップa)において、異なる検出部Xおよび異なる抗原認識部Aを有する少なくとも2つの接合体A
n-P-B
m-C
q-X
oを準備し、少なくとも2つのステップc)において、前記標識された標的部を、前記異なる検出部Xを介して検出することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
ステップa)~e)を少なくとも2つの引き続く序列で行い、その際、それぞれの序列において、異なる抗原認識部Aを有する複数の接合体A
n-P-B
m-C
q-X
o (I)を使用することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
ステップa)において、異なる抗原認識部Aおよび異なる酵素分解性スペーサーPを有する少なくとも2つの接合体A
n-P-B
m-C
q-X
o (I)を準備し、その際、別個のステップe)において前記異なる
酵素分解性スペーサーPを酵素で分解することによって、前記
第1の結合部B
mを、前記
少なくとも2つの異なる接合体により標識されたそれぞれの標的部から開裂させることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
ステップa)において、異なる抗原認識部Aおよび異なる第1の結合部Bまたは異なる第2の結合部Cを有する少なくとも2つの接合体A
n-P-B
m-C
q-X
o (I)を準備し、その際、別個のステップd)において前記B
mとC
qとの間の共有結合によらない結合を破壊することによって、前記
少なくとも2つの異なる接合体により標識された標的部か
ら断片C
q-X
oを開裂させることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
ステップa)において、異なる抗原認識部A、異なる検出部Xおよび異なる第1の結合部Bまたは異なる第2の結合部Cを有する少なくとも2つの接合体A
n-P-B
m-C
q-X
o (I)を準備し、その際、別個のステップd)において前記B
mとC
qとの間の共有結合によらない結合を破壊することによって、前記
少なくとも2つの異なる接合体により標識された標的部か
ら断片C
q-X
oを開裂させることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
ステップa)において、異なる抗原認識部A、異なる酵素分解性スペーサーP、異なる第1の結合部Bまたは異なる第2の結合部Cおよび異なる検出部Xを有する少なくとも2つの接合体A
n-P-B
m-C
q-X
o (I)を準備することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
ステップa)において、異なる抗原認識部Aを有する、少なくとも1つの接合体A
n-P-B
m-C
q-X
o (I)および少なくとも1つの接合体A
n-X
o (V)を準備することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
ステップa)において、異なる抗原認識部Aおよび異なる検出部Xを有する、少なくとも1つの接合体A
n-P-B
m-C
q-X
o (I)および少なくとも1つの接合体A
n-X
o (V)を準備することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
ステップa)において、異なる抗原認識部Aを有する、少なくとも1つの接合体A
n-P-B
m-C
q-X
o (I)および少なくとも1つの接合体A
n-P-X
o (IV)を準備することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
ステップa)において、異なる抗原認識部Aおよび異なる酵素分解性スペーサーPを有する、少なくとも1つの接合体A
n-P-B
m-C
q-X
o (I)および少なくとも1つの接合体A
n-P-X
o (IV)を準備することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
ステップa)において、異なる抗原認識部Aおよび異なる検出部Xを有する、少なくとも1つの接合体A
n-P-B
m-C
q-X
o (I)および少なくとも1つの接合体A
n-B
m-C
q-X
o (III)を準備することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、抗原認識部と酵素分解性スペーサーを介して連結された検出部とを有する接合体と、共有結合によらない相互作用とを用いて標的部を標識することによって、生物学的検体のサンプル中の標的部を検出するための方法であって、前記標的部を検出または単離した後、前記共有結合によらない相互作用を破壊し、前記スペーサーを酵素で分解させ、それにより前記標的細胞を少なくとも前記検出部から遊離させる方法を対象とする。
【0002】
細胞の検出および分離技術、例えば磁気細胞分離、フローサイトメトリーまたはフローソーティングは、ここ数年でバイオメディカルの研究および細胞療法の進歩に貢献した極めて重要なツールである。こうした技術では、標的部の特異的な標識と、磁場に細胞を保持し、したがって単離するための磁性粒子のような、または、顕微鏡法もしくはサイトメトリーにより細胞の検出および特性決定をするための蛍光色素または遷移金属同位体マスタグのような、検出可能なユニットを有する接合体と、を組み合わせている。技術的課題の1つとしては、標的部を検出した後になおも標識を遊離させることが挙げられる。残留標識によって、逐次的なソーティングの戦略、分子診断または細胞分析のような下流の用途が妨げられたり影響を受けたりすることがある。
【0003】
ここ数年で、いくつかの可逆的な標識系が開発された。ある戦略は、共有結合によらない相互作用の特異的な競合を利用している。米国特許出願公開第20080255004号明細書(US 20080255004)には、標的部を認識する抗体を用いて固体担体、例えば磁性粒子に可逆的に結合させるための方法であって、該抗体を、デスチオビオチンのような修飾ビオチンおよび修飾ストレプトアビジンまたは該固体担体に結合したアビジンと接合させる方法が開示されている。修飾された結合パートナーの結合相互作用は、ビオチンとストレプトアビジンとの間の強い特異的結合と比較して弱いため、こうした結合相互作用によって、これらの競合物の存在下で解離が促進される。欧州特許第2725359号明細書(EP 2725359)には、標的部を認識するリガンド-PEO-ビオチン接合体と、競合分子ビオチン、ストレプトアビジンまたは補助試薬を添加することによって遊離されうる、磁性粒子に障害を生じさせる抗ビオチン抗体との共有結合によらない相互作用に基づく、可逆的な磁気細胞分離のための系が記載されている。
【0004】
こうした競合的な遊離機序に加えて、機械的撹拌、化学的に開裂可能なまたは酵素分解性のリンカーによる標識の除去について言及がなされている。国際公開第96/31776号(WO 96/31776)には、粒子の被覆部分かまたは該被覆と抗原認識部との間の連結基の中に存在する部分を酵素で開裂させることによって標的細胞から磁性粒子を分離した後に遊離を行う方法が記載されている。一例として、デキストランで被覆されたおよび/またはデキストランを介して抗原認識部に連結された磁性粒子を適用することが挙げられる。引き続いて行われる、単離された標的細胞の磁性粒子からの開裂は、デキストラン分解酵素であるデキストラナーゼの添加により開始される。欧州特許第3037821号明細書(EP 3037821)における関連する方法は、例えば蛍光シグナルによる、酵素分解性スペーサーを有する接合体を用いた標的部の検出および分離を開示している。
【0005】
近年、標的部への結合の親和定数が低いことによって特徴付けられる抗原認識部を利用した技術への関心が高まった。そうした低親和性の抗原認識部を有する特異的かつ安定な標識を確実なものとするため、標識接合体の構造は、高いアビディティーをもたらす抗原認識部の多量体化を含まねばならない。多量体化を破壊すると、低親和性の抗原認識部が標的部から解離することができ、それによって、最良の状態で検出部および抗原認識部を標的部から遊離させる可能性が生じる。
【0006】
この可逆的な多量体染色は、最初に米国特許第7776562号明細書(US 7776562)および米国特許第8298782号明細書(US 8298782)に記載され、その際、この多量体化は、共有結合によらない相互作用により生じる。StreptagIIを有する例示的な低親和性ペプチド/MHCモノマーが、ストレプタクチン(streptactin)を用いて多量体化され、この多量体化は、競合分子ビオチンの添加に際して可逆的である。
【0007】
この方法は、米国特許第9023604号明細書(US 9023604)において、抗原認識部と受容体結合試薬のそれぞれの特性に関して可逆的な標識が可能となるように改められた。結合パートナーCに伴う解離速度定数が約0.5×10-4秒-1以上であることを特徴とする受容体結合試薬は、少なくとも2つの結合部位Zを有する多量体化試薬により多量体化され、これらの結合部位Zが結合パートナーCと可逆的にかつ共有結合によらずに相互作用することで、標的抗原に対して高いアビディティーを有する複合体が得られる。検出可能な標識が、多価結合複合体に結合される。多量体化の可逆性は、結合パートナーCと多量体化試薬の結合部位Zとの間の結合が破壊された際に生じる。例えば、Fab-StreptagII/Streptactinの多量体において、多量体化は、競合物ビオチンによって逆方向に進みうる。
【0008】
こうした共有結合によらない相互作用に基づいて低親和性の抗原認識部を多量体化するという戦略は、共有結合によらない相互作用の動力学的および熱力学的な特性に依存するという欠点を抱えている。特異的に標識を行うためには試薬のプレインキュベーションが必要であるが、それによって、あまり規定通りでない再現性の低い接合体が生じてしまい、これには架橋および凝集体形成のリスクが伴う。あるいは、第1に抗原認識部を一時的なモノマー標識ステップにおいてインキュベートし、第2に多量体化化合物をインキュベートするというように、標識を逐次的に行うこともできる。しかし、非特異的な結合相互作用および高いバックグラウンドシグナルのリスクを減らすために洗浄ステップを行うと、モノマーが迅速に解離するという特性に基づき、標識効率が低下することになる。この望ましくない効果は、
図2b)および例3に示されている。さらに、こうした多量体は、単一のパラメーターにしか適用することができず、多重パラメーターの標識には適用することができない。
【0009】
共有結合によらない多量体化の戦略に加えて、欧州特許第3037821号明細書(EP 3037821)の一実施形態には、酵素分解性スペーサーを介して共有結合され、したがって共有結合により多量体化される低親和性の抗原認識部と検出部、例えば蛍光色素とを提供する接合体が記載されている。この共有結合によって、安定でかつ規定通りの多量体化が可能となり、また多重パラメーターの標識も可能になる。スペーサーが酵素で分解される際に検出部が遊離されて、低親和性の抗原認識部が単量体化される。この実施形態の一例がFab-デキストラン-蛍光色素接合体であり、これは、標的細胞のフローソーティングへの適用が可能である。
【0010】
概要
したがって本発明の一目的は、さらなる標識および検出の戦略を可能にするために、生物学的検体のサンプル中の標的部を特異的に標識し、検出しかつ標識を除去するための方法を提供することであった。
【0011】
2つの遊離機序を可能にする接合体、すなわち、酵素分解性スペーサーを介して連結された抗原結合部と、2つの結合部の間での共有結合によらない相互作用とを含む接合体を、標的細胞から容易に遊離させうることが判明した。
【0012】
したがって本発明の目的は、
a)一般式(I)
An-P-Bm-Cq-Xo (I)
[式中、
Aは、抗原認識部であり、
Pは、酵素分解性スペーサーであり、
Bは、第1の結合部であり、
Cは、第2の結合部であり、
Xは、検出部であり、
n、m、q、oは、1から100まで整数である]
を有する少なくとも1つの接合体を準備すること、
ここで、BとCとは、互いに共有結合によらずに結合しており、AおよびBは、Pに共有結合しているものとする、
b)前記抗原認識部Aにより認識される標的部を、少なくとも1つの接合体で標識すること、
c)前記標識された標的部を、検出部Xを介して検出すること、
d)BmとCqとの間の共有結合によらない結合を破壊することにより、Cq-Xoを、前記標識された標的部から開裂させること、
e)スペーサーPを酵素で分解することにより、前記標識された標的部から前記結合部Bmを開裂させること
によって、生物学的検体のサンプル中の標的部を検出するための方法である。
【0013】
従来技術と比較して、本方法によって、生物学的検体において標的部を標識および検出するための新たなフレキシビリティおよび制御が可能となる。
【0014】
2つの遊離機序を組み合わせることによって、遊離手法全体にわたる制御が可能となり、それによって、引き続くステップにおいて、検出部の遊離および多量体化の可逆性が可能となる。したがって本方法によって、新規でかつフレキシブルな検出および単離の戦略が可能となり、例えば、第1の検出部を除去した後に、異なる検出部で、類似の標的部のみではなく同一の標的部を再標識することも可能となる。それにもかかわらず、最良の状態で2つの遊離機序により逐次的にまたは同時に除去した後に、検出部および抗原認識部を伴う完全な接合体が、標的部から遊離される。
【0015】
本発明の方法を、標的部、すなわちそうした標的部を発現する標的細胞を検出するためだけでなく、そうした標的細胞を生物学的検体のサンプルから単離するためにも利用することができる。こうした単離手法では、標的部の検出が用いられる。例えば、蛍光による標的部の検出を用いることで、FACSまたはTYTO分離系で行われるような適切な分離プロセスを生じさせることができる。本発明の方法においては、検出および分離の方法として周知の磁気細胞分離法を用いることもでき、その際、磁性粒子は磁場により検出される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1に、高親和性(a)または低親和性(b)の抗原認識部A、酵素分解性スペーサーP、結合部BおよびCならびに検出部Xの接合体を用いた、生物学的検体としての標的細胞の特異的な標識および遊離による本発明の方法を図示する。
【
図2】
図2に、(本発明による)Fab-デキストラン-PEO-ビオチン/抗ビオチン-APC(a)と(比較のための)Fab-PEO-ビオチン/抗ビオチン-APC(b)とを対比して用いた細胞表面標識のフローサイトメトリー分析の例示的な結果を示す。
【
図3】
図3に、Fab-デキストラン-PEO-ビオチン/抗ビオチンマイクロビーズを用いた可逆的な細胞標識のフローサイトメトリー分析の結果の例示的なドットプロットを示す。
【0017】
詳細な説明
本発明の方法において、結合パートナーA、P、B、CおよびXの間の共有結合および共有結合によらない結合を、様々な方法によって破壊することができる。本発明では、共有結合とは、電子対を共有する原子の間の結合か、または10-9M未満の解離定数を有する共有結合によらない相互作用パートナーの間の準共有結合であると定義される。共有結合によらない結合とは、10-9Mを上回る解離定数を有する結合であると定義される。
【0018】
「BmとCqとの間の共有結合によらない結合を破壊することによって、Cq-Xoを開裂させる」という用語は、BとCとの間の共有結合によらない結合を終わらせ、結合部Cqおよび検出部Xoを、例えば洗浄によって断片Cq-Xoとして除去することを意味する。
【0019】
「スペーサーPを酵素で分解することにより、前記標識された標的部から前記結合部Bmを開裂させる」という用語は、少なくとも結合部Bmが例えば解離または洗浄によって標的部から除去されるように、スペーサーPの分解によって断片An-P-Bmの共有結合を開裂させることを意味する。さらに、抗原認識部Anが除去されうる。
【0020】
本発明の方法は、認識部Anを、接合体からのみならず標的部からも除去することを含みうる。この点で、本発明は、高親和性(a)または低親和性(b)の抗原認識部Aを有する接合体を使用することによる2つの実施形態を包含する。高親和性の抗原認識部Aは、標的部に1:1の比で結合することができ、すなわち式(I)においてn=1である。一方で、低親和性の抗原認識部は、標的部に1:1の比で結合することはできず、標的部に結合するには、1つの接合体において低親和性の抗原認識部が複数必要であり、すなわち式(I)においてnは1を上回る。
【0021】
図1に、高親和性(a)または低親和性(b)の抗原認識部A、酵素分解性スペーサーP、結合部BおよびCならびに検出部Xの接合体を用いた、生物学的検体としての標的細胞上の標的部の特異的標識による本発明のこうした実施形態を図示する。どちらの実施形態とも、検出部Xおよび結合部Cは、結合部BとCとの間の共有結合によらない相互作用が破壊された後に標的部から遊離される。スペーサーPが酵素で分解される際に、高親和性の抗原認識部A、例えば抗体は、なおも標的部への安定な結合をもたらすが、検出部X、結合部BおよびCならびにスペーサーP(a)は、接合体/標識された標的細胞から除去される。低親和性の抗原認識部Aは、スペーサーPが酵素で分解される際に単量体化されることとなる。単量体としては、低親和性の抗原認識部Aは、標的部への安定な結合をもたらすことができずに、標的部から解離することとなる。それに応じて、低親和性の抗原認識部は、標的部、検出部X、結合部BおよびCから除去され、スペーサーPおよび抗原認識部Aは、そのまま標的細胞を去る。
【0022】
本発明の方法を、ステップa)~e)までの1つまたは複数の序列で行うことができる。各序列の後に、検出部および場合により抗原認識部を標的部から遊離させる(除去する)。特に生物学的検体が生細胞であり、これをさらに処理すべきである場合には、本発明の方法は、無標識の細胞が得られるという利点を有する。
【0023】
各ステップa)~e)の後および/または前に、1つまたは複数の洗浄ステップを行うことにより、未結合の接合体(I)のような不要な材料、または結合部Cおよび検出部Xもしくは抗原認識部Aのような遊離された接合体部分、または破壊に使用された試薬を除去することができる。「洗浄」という用語は、生物学的検体のサンプルを、適切な手法、例えば沈降、遠心分離、排液またはろ過によって周囲の緩衝液から分離することを意味する。この分離の前に、洗浄緩衝液を加えて、任意にある時間にわたってインキュベートすることができる。この分離の後に、サンプルに再び緩衝液を充填することも、サンプルを緩衝液で再懸濁させることもできる。
【0024】
標的部
本発明の方法により検出すべき標的部は、組織切片、細胞集合体、懸濁細胞または付着性細胞のようないずれの生物学的検体上に存在していてもよい。これらの細胞は、生細胞であっても死細胞であってもよい。好ましい標的部は、生物学的検体、例えば無脊椎動物(例えば、カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)、ドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster))、脊椎動物(例えば、ダニオ・レリオ(Danio rerio)、キセノプス・レービス(Xenopus laevis))および哺乳類(例えば、ムス・ムスクラス(Mus musculus)、ホモ・サピエンス(Homo sapiens))の、動物全体、臓器、組織切片、細胞凝集体または単一の細胞において、細胞内または細胞外で発現された抗原である。
【0025】
検出部
接合体の検出部Xは、細胞を検出する目的で使用できる特性または機能を有するいずれの部分であってもよい。好ましい検出部Xは、発色団部、蛍光部、リン光部、発光部、吸光部、放射性部、遷移金属および同位体マスタグ部、粒子の形状を有する固体担体、例えばシート、プレート、膜、チューブ、カラム、ウェルまたはマイクロアレイ、磁性粒子からなる群から選択される。
【0026】
適切な蛍光部は、免疫蛍光技術、例えばフローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡法の技術から知られている蛍光部である。本発明のこうした実施形態においては、接合体で標識された標的部は、検出部Xを励起させ、得られた発光(光ルミネセンス)を検出することにより検出される。この実施形態においては、検出部Xは好ましくは、蛍光部である。
【0027】
有用な蛍光部は、タンパク質ベースの蛍光部、例えばフィコビリタンパク質、ポリマー型蛍光部、例えばポリフルオレン、有機小分子色素、例えばキサンテン、例えばフルオレセインもしくはローダミン、シアニン、オキサジン、クマリン、アクリジン、オキサジアゾール、ピレン、ピロメテンまたは有機金属錯体、例えばRu錯体、Eu錯体、Pt錯体であってよい。単分子実体の他に、蛍光性タンパク質または有機小分子色素のクラスターおよびナノ粒子、例えば量子ドット、アップコンバーティングナノ粒子、金ナノ粒子、色素付加ポリマーナノ粒子を、蛍光部として使用することもできる。
【0028】
光ルミネセンス検出部のもう1つの群には、励起後の時間遅延型発光を伴うリン光部がある。リン光部には、金属有機錯体、例えばPd錯体、Pt錯体、Tb錯体、Eu錯体またはリン光顔料が配合されたナノ粒子、例えばランタニドをドープしたSrAl2O4が含まれる。
【0029】
本発明のもう1つの実施形態において、接合体で標識された標的は、照射による事前の励起なしに検出される。この実施形態においては、検出部は、放射性標識であってよい。それらは、非放射性同位体を、その放射性対応物、例えばトリチウム、32P、35Sもしくは14Cと交換することにより、または共有結合した標識、例えばチロシンに結合した125I、フルオロデオキシグルコース内の18Fもしくは有機金属錯体、すなわち99Tc-DTPAを導入することにより、放射性同位体標識の形態で存在してよい。
【0030】
もう1つの実施形態において、検出部は化学発光を引き起こすことができ、すなわち、ルミノールの存在下でのホースラディッシュペルオキシダーゼ標識である。
【0031】
本発明のもう1つの実施形態において、接合体で標識された標的は、放射線放出によっては検出されずに、紫外線、可視光または近赤外線の吸収によって検出される。適切な吸光性検出部は、蛍光放出を伴わない吸光性色素、例えば有機小分子クエンチャー色素、例えばN-アリールローダミン、アゾ色素およびスチルベンである。
【0032】
もう1つの実施形態において、吸光性検出部Xにパルスレーザ光を照射して、光音響シグナルを発生させることができる。
【0033】
本発明のもう1つの実施形態において、接合体で標識された標的は、遷移金属同位体の質量分析的検出によって検出される。遷移金属同位体マスタグ標識を、共有結合した金属有機錯体またはナノ粒子成分として導入することができる。当技術分野では、ランタニドおよび隣接する後期遷移元素の同位体タグが知られている。
【0034】
さらに、検出部Xは、細胞を検出する目的で使用できる特性または機能を有する固体担体であることができる。適切な固体担体は、細胞の固定化に関する生物工学において知られており、粒子の形状を有することができ、例えば、シート、プレート、膜、チューブ、カラム、ウェルまたはマイクロアレイであってよく、これらは、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、ポリビニルトルエン(PVT)、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)のような様々な材料から製造される。適切な材料は、市販されている。
【0035】
固体担体はさらに、磁性粒子であってもよく、これは、当技術分野においてナノスケールないしマイクロスケールの磁性ビーズとしても知られている。こうしたビーズの平均直径は、10nm~10μmの範囲であってよい。生体適合性の磁性粒子は市販されており、例えばデキストラン分子またはシリカのシェルでコーティングされた磁性酸化鉄の形態から成る。固体担体は、磁性材料を含むポリマーであってもよい。適切な粒子は、ドイツ連邦共和国Miltenyi Biotec GmbHより「MicroBeads」および「MACSiBeads」の商品名で市販されており、これらはそれぞれ、50~100nmまたは3~4μmの流体力学的直径を有する。
【0036】
検出部Xを、結合部Cに、共有結合によって結合させることも、共有結合によらずに結合させることもできる。共有結合によりまたは共有結合によらずに接合させるための方法は、当業者に知られている。検出部Xと結合部Cとの間が共有結合である場合には、検出部Xにあるまたは結合部Cにある活性化基と、結合部Cにあるまたは検出部Xにある官能基とが直接反応することも可能であるし、ヘテロ2官能性リンカー分子を介して、この分子がまず一方の結合パートナーと反応し、次にもう一方の結合パートナーと反応することも可能である。
【0037】
例えば、実体への連結に、多数のヘテロ2官能性化合物を利用することができる。例示的な実体としては、次のものが挙げられる:アジドベンゾイルヒドラジド、N-[4-(p-アジドサリチルアミノ)ブチル]-3’-[2’-ピリジルジチオ]プロピオンアミド)、ビス-スルホスクシンイミジルスベラート、ジメチルアジピミダート、ジスクシンイミジルタルトラート、N-y-マレイミドブチリルオキシスクシンイミドエステル、N-ヒドロキシスルホスクシンイミジル-4-アジドベンゾアート、N-スクシンイミジル[4-アジドフェニル]-1,3’-ジチオプロピオナート、N-スクシンイミジル[4-ヨードアセチル]アミノベンゾアート、グルタルアルデヒド、スクシンイミジル-[(N-マレイミドプロピオンアミド)ポリエチレングリコール]エステル(NHS-PEG-MAL)およびスクシンイミジル-4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシラート。好ましい連結基は、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(SPDP)または4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(SMCC)である。
【0038】
10-9M以下の解離定数をもたらす結合系、例えばビオチン-アビジン結合相互作用によって、検出部Xと結合部Cとの準共有結合を達成することができる。
【0039】
本発明の方法において使用される接合体は、検出部Xを1~100、好ましくは1~20含むことができる。
【0040】
第1および第2の結合部BおよびC
結合部Bおよび結合部Cは、互いに共有結合によらずに可逆的に結合しうる結合パートナーである。本発明では、共有結合によらない可逆的な結合とは、10-9Mを上回る解離定数を有する結合であるものと定義する。
【0041】
結合部BおよびCはそれぞれ、ビオチン、その誘導体または類似体、例えばイミノビオチン、デスチオビオチン、ジアミノビオチン、HABA(2-(4’-ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸);ビオチンペプチド類似体、例えばstreptagI(AWRHPQFGG)もしくはstreptagII(WSHPQFEK)であってよい。こうしたビオチン、その誘導体または類似体を、例えばポリエチレングリコール(PEO)またはアミノカプロン酸(いわゆる「LC」)からなるスペーサー基によって、検出部Xまたは酵素分解性スペーサーPと引離すことができる。相応する結合パートナー、したがって結合部CおよびBはそれぞれ、ストレプトアビジンもしくはアビジンまたはそれらの類似体、例えばニトロストレプトアビジンまたは変異体、例えばストレプタクチンまたはモノマー型ストレプトアビジン;抗体、例えば抗ビオチン抗体または抗Strep-tagII抗体であってよい。
【0042】
さらに、結合部Bは、1~500の繰返し単位を有するポリエチレングリコールからなるスペーサー基を有するビオチン誘導体であってよい。
【0043】
その他の結合部は、文献から知られており、例えばオリゴヒスチジンタグおよび抗His抗体またはNi-NTA;FLAGペプチドおよび抗FLAG抗体;カルモジュリン結合ペプチドおよび2価カチオンの存在下でのカルモジュリン;ポリマーおよび抗ポリマー抗体、例えばポリエチレングリコールおよび抗ポリエチレングリコール抗体;ハイブリダイズするオリゴヌクレオチド;マルトース結合タンパク質タグおよびマルトース結合タンパク質である。
【0044】
結合部Bは、酵素分解性スペーサーPに共有結合することができる。接合のための方法は、当業者に知られており、検出部Xと結合分子Cとの接合に関して述べたことと同一である。結合部の構造および官能基に応じて、接合を直接行うことも可能であるし、非特異的な連結が可能となるように改変した後に接合を行うことも可能である。スペーサー基、例えばアルキル鎖またはポリエチレングリコールを挿入してもよく、そうすることで、結合部BまたはCと酵素分解性スペーサーPおよび検出部Xとの間に、ある程度の間隔が生じる。
【0045】
本発明の方法において使用される接合体は、結合部BおよびCを1~100、好ましくは1~20含むことができる。
【0046】
結合部BとCとの間の共有結合によらない結合の破壊
BとCとの間の共有結合によらない結合は、可逆的である。したがってこの結合を、遊離試薬としての競合分子を添加することにより破壊することができる。この遊離試薬としての競合分子は、結合部BおよびCのうちの一方に結合することによって、これらの各部分と置き換わることができる。「結合部としてのBおよびC」において例示的に挙げた結合部に関して、競合分子は、ビオチンまたはストレプトアビジン;ペプチド、例えばポリヒスチジン、FLAGペプチド、カルモジュリン結合ペプチド;小分子、例えばイミダゾールまたはマルトース;キレート剤、例えばEDTA;ポリマー、例えばポリエチレングリコール;相補的オリゴヌクレオチドであってよい。
【0047】
競合反応の効率は、結合部BおよびCと競合分子との間の相互作用の熱力学的および動力学的な特性、これらの成分の濃度、環境条件、例えば温度および反応時間に依存する。所望の効率により、特定の条件を評価しなければならない。
【0048】
本発明の一変形形態において、結合部Cと置き換わる競合分子が異なる検出部Xに接合することもでき、それによって、破壊の際に検出部を交換することが可能となる。
【0049】
さらに、結合部BとCとの間の結合相互作用の強さが弱まるように構造変化を開始させることによって破壊を達成することができ、例えば、構造変化を誘導する、カルモジュリンに結合するキレート作用を有する2価カチオンによって、破壊を達成することができる。
【0050】
この他に、せん断力を生じさせる機械的撹拌によって、または結合相互作用に影響を及ぼす環境条件、例えばpH、温度もしくは塩濃度を変化させることによって、BとCとの間の結合を開裂させることができる。
【0051】
破壊のために、2つ以上の方法を組み合わせることができる。
【0052】
通例的には、この開裂の有効性によって、C-Xでの標識が少なくとも約80%、より通例的には少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約99%減少する。遊離の条件を、温度、pHなどの点で実験により最適化することができる。破壊は通例的には、少なくとも約15分間で完了し、より通例的には少なくとも約10分間で完了し、通常は約2時間を超えることにはならない。
【0053】
酵素分解性スペーサーP
酵素分解性スペーサーPは、特定の酵素、例えばヒドロラーゼにより開裂可能ないずれの分子であってもよい。酵素分解性スペーサーPとして適しているのは例えば、多糖類、タンパク質、ペプチド、デプシペプチド、ポリエステル、核酸およびそれらの誘導体である。
【0054】
適切な多糖類は例えば、デキストラン、プルラン、イヌリン、アミロース、セルロース、ヘミセルロース、例えばキシランまたはグルコマンナン、ペクチン、キトサンまたはキチンであり、これらを誘導体化することによって、結合部Bと抗原認識部Aとを共有結合によりまたは共有結合によらずに結合するための官能基を生じさせることができる。こうした様々な改変は、当技術分野で知られており、例えば多糖類とN,N’-カルボニルジイミダゾールとを反応させることにより、イミダゾリルカルバマート基を導入することができる。次いで、このイミダゾリルカルバマート基をヘキサンジアミンと反応させることにより、アミノ基を導入することができる。過ヨウ素酸塩を用いて多糖類を酸化させてアルデヒド基を生じさせることも可能であるし、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミドおよびジメチルスルホキシドを用いて多糖類を酸化させてケトン基を生じさせることも可能である。アルデヒド官能基またはケトン官能基を、次いで好ましくは還元アミノ化の条件下でジアミンと反応させてアミノ基を生じさせることも可能であるし、アルデヒド官能基またはケトン官能基を、タンパク質様の結合部にあるアミノ置換基と直接的に反応させることも可能である。多糖類をクロロ酢酸で処理することにより、カルボキシメチル基を導入してもよい。当技術分野で知られている方法を用いてカルボキシ基を活性化させて、活性化エステル、例えばN-ヒドロキシスクシンイミドエステルまたはテトラフルオロフェニルエステルを得ることによって、ジアミンのアミノ基と反応させてアミノ基を得ることも可能であるし、タンパク質様の結合部のアミノ基と直接的に反応させることも可能である。アルカリ性条件下で多糖類をハロゲン化合物で処理することによってアルキル基を有する官能基を導入することは、一般に可能である。例えば、臭化アリルを用いることにより、アリル基を導入することができる。さらに、システアミンのようなチオールを有する化合物とのチオール-エン反応においてアリル基を使用することによりアミノ基を導入することも可能であるし、ジスルフィド結合の還元により遊離された、または例えば2-イミノチオランによるチオール化により導入されたチオール基を有するタンパク質様の結合部と直接的にチオール-エン反応においてアリル基を使用することも可能である。
【0055】
酵素分解性スペーサーPとして使用されるタンパク質、ペプチドおよびデプシペプチドを、アミノ酸の側鎖官能基を介して官能化させることによって、結合部Bと抗原認識部Aとを結合させることができる。改変に適した側鎖官能基は例えば、リシン基により得られるアミノ基であるか、またはジスルフィド架橋の還元後のシステインにより得られるチオール基である。
【0056】
酵素分解性スペーサーPとして使用されるポリエステルおよびポリエステルアミドを、側鎖官能基をもたらすコモノマーを用いて合成することも可能であるし、その後に官能化させることも可能である。分岐状ポリエステルの場合には、官能化を、カルボキシル末端基またはヒドロキシル末端基により行うことができる。ポリマー鎖の重合後官能化を、例えば不飽和結合への付加、すなわちチオレン反応またはアジド-アルキン反応により行うことも、ラジカル反応による官能基の導入により行うこともできる。
【0057】
酵素分解性スペーサーPとして使用される核酸は好ましくは、結合部Bと抗原認識部Aとの結合に適した3’末端および5’末端の官能基を用いて合成される。例えばアミノ官能性またはチオール官能性をもたらす核酸合成に適したホスホロアミダイト構成単位は、当技術分野で知られている。
【0058】
酵素分解性スペーサーPは、同一または異なる酵素によって分解可能な2つ以上の異なる酵素分解性単位から構成されていてよい。
【0059】
スペーサーPを分解させるための酵素
酵素分解性スペーサーPは、適切な酵素の添加によって分解される。遊離試薬としての酵素の選択は、酵素分解性スペーサーPの化学的性質によって決定され、1種の酵素であってもよいし、異なる複数の酵素の混合物であってもよい。
【0060】
酵素は、好ましくはヒドロラーゼであるが、リアーゼまたはレダクターゼも可能である。好ましい酵素を、グリコシダーゼ、デキストラナーゼ、プルラナーゼ、アミラーゼ、イヌリナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、キトサナーゼ、キチナーゼ、プロテイナーゼ、エステラーゼ、リパーゼおよびヌクレアーゼからなる群から選択することができる。
【0061】
例えば、スペーサーPが多糖類である場合には、グリコシダーゼ(EC 3.2.1)が遊離剤として最も適している。特定のグリコシド構造を認識するグリコシダーゼが好ましく、例えば、デキストランのα(1→6)結合を開裂させるデキストラナーゼ(EC 3.2.1.11)、プルランのα(1→6)結合を開裂させるプルラナーゼ(EC 3.2.1.142)またはプルランのα(1→6)結合およびα(1→4)結合を開裂させるプルラナーゼ(EC 3.2.1.41)、ネオプルラナーゼ(EC 3.2.1.135)ならびにプルラン中のα(1→4)結合を開裂させるイソプルラナーゼ(EC 3.2.1.57)が好ましい。アミロースにおけるα(1→4)結合を開裂させるα-アミラーゼ(EC 3.2.1.1)およびマルトジェニックアミラーゼ(EC 3.2.1.133)、イヌリン中のβ(2→1)フルクトシド結合を開裂させるイヌリナーゼ(EC 3.2.1.7)、セルロースのβ(1→4)結合で開裂させるセルラーゼ(EC 3.2.1.4)、キシランのβ(1→4)結合で開裂させるキシラナーゼ(EC 3.2.1.8)、ペクチナーゼ、例えばα(1→4)D-ガラクツロナンメチルエステル結合で排除的に開裂させるエンドペクチンリアーゼ(EC 4.2.2.10)、またはペクチンのα(1→4)D-ガラクトシドウロン結合で開裂させるポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.15)、キトサンのβ(1→4)結合で開裂させるキトサナーゼ(EC 3.2.1.132)およびキチンを開裂させるためのエンドキチナーゼ(EC 3.2.1.14)。
【0062】
タンパク質およびペプチドはプロテイナーゼによって開裂させることができるが、細胞上の標的構造の分解を避けるためには、プロテイナーゼが配列特異的である必要がある。配列特異的プロテアーゼは例えば、配列ENLYFQ\Sで開裂させるシステインプロテアーゼであるTEVプロテアーゼ(EC 3.4.22.44)、配列DDDDKの後で開裂させるセリンプロテアーゼであるエンテロペプチダーゼ(EC 3.4.21.9)、配列IEGRもしくはIDGRの後で開裂させるセリンエンドペプチダーゼである第Xa因子(EC 3.4.21.6)、または配列LEVLFQ\GPで開裂させるシステインプロテアーゼであるHRV3Cプロテアーゼ(EC 3.4.22.28)である。
【0063】
ペプチド骨格にエステル結合を含むペプチドであるデプシペプチドまたはポリエステルは、エステラーゼ、例えばブタ肝臓エステラーゼ(EC 3.1.1.1)またはブタ膵臓リパーゼ(EC 3.1.1.3)によって開裂されうる。核酸は、配列特異的でありうるエンドヌクレアーゼによって開裂されることができ、例えば制限酵素(EC 3.1.21.3、EC 3.1.21.4、EC 3.1.21.5)、例えばEcoRI、HindIIもしくはBamHIによって開裂されることができ、またはより一般的には例えば、ピリミジンに隣接するホスホジエステル結合を開裂させるDNAseI(EC 3.1.21.1)によって開裂されうる。
【0064】
添加される酵素の量は、所望の期間にスペーサーを大幅に分解するのに十分である必要がある。通例的には効率は、少なくとも約80%であり、より通例的には少なくとも約95%であり、好ましくは少なくとも約99%である。遊離の条件を、温度、pH、金属補因子の有無、還元剤などの点で実験により最適化することができる。分解は通例的には、少なくとも約15分間で完了し、より通例的には少なくとも約10分間で完了し、通常は約2時間を超えることにはならない。
【0065】
スペーサーPを完全に分解させる必要はない。本発明の方法では、標識された標的部から洗浄または解離によって結合部Bおよび/または抗原認識部Aを除去できる程度にスペーサーPを分解させることが必要とされる。
【0066】
抗原認識部A
「抗原認識部分A」という用語は、細胞上で細胞内または細胞外で発現された抗原のような、生物学的検体上で発現された標的部を標的とする抗体、断片化抗体または断片化抗体誘導体のいずれの種をも指す。この用語は、抗体、断片化抗体、断片化抗体誘導体、ペプチド/MHC複合体を標的とするTCR分子、細胞接着受容体分子、共刺激分子のための受容体または人工的に設計された結合分子を指す。断片化抗体誘導体は例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、sdAb、scFv、di-scFv、ナノボディである。こうした断片化抗体誘導体を、こうした種類の分子を含む共有結合によるおよび共有結合によらない接合体を含めた組換え手法によって合成することができる。抗原認識部のさらなる例は、ペプチド/MHC複合体を標的とするTCR分子、細胞接着受容体分子、共刺激分子のための受容体、人工的に設計された結合分子、例えば細胞表面分子を標的とするペプチドまたはアプタマーである。
【0067】
本発明の方法において使用される接合体は、抗原認識部Aを1~100、好ましくは1~20含むことができる。抗原認識部と標的部との相互作用は、高親和性であっても低親和性であってもよい。単独の低親和性の抗原認識部の結合相互作用は、抗原との安定な結合を生じさせるには低すぎる。低親和性の抗原認識部を酵素分解性スペーサーPとの接合によって多量体化することで、高アビディティーをもたらすことができる。
【0068】
好ましくは、「抗原認識部A」という用語は、生物学的検体(標的細胞)により細胞内で発現される抗原を標的とする抗体、例えばIL2、FoxP3、CD154、または生物学的検体(標的細胞)により細胞外で発現される抗原を標的とする抗体、例えばCD3、CD14、CD4、CD8、CD25、CD34、CD56およびCD133を指す。
【0069】
抗原認識部A、特に抗体を、側鎖のアミノ基またはスルフヒドリル基を通じてスペーサーPに結合させることができる。場合によっては、抗体のグリコシド側鎖を過ヨウ素酸塩により酸化させて、アルデヒド官能基を得ることができる。
【0070】
抗原認識部Aは、スペーサーPに、共有結合してもよいし、共有結合によらずに結合してもよい。共有結合によるまたは共有結合によらない接合のための方法は、当業者に知られており、検出部Xの接合に関して述べたことと同一である。
【0071】
本発明の方法は特に、複合体混合物から特定の細胞種を検出および/または単離するのに有用であり、本発明の方法は、ステップa)~e)のうちの2つ以上の逐次的なまたは並行する序列を含むことができる。本方法では、接合体の様々な組み合わせ物を用いることができる。例えば、1つの接合体が、異なる2つのエピトープに特異的な複数の抗体、例えば異なる2つの抗CD34抗体を含むことが可能である。異なる抗原には、異なる抗体を含む異なる接合体で対処することができ、例えば2つの別個のT細胞集団を区別するには、抗CD4抗体および抗CD8抗体を含む異なる接合体で対処することができ、調節性T細胞のような異なる細胞亜集団の測定には、抗CD4抗体および抗CD25抗体を含む異なる接合体で対処することができる。
【0072】
本方法の変形形態
本発明の方法は、接合体を用いた特異的な標識および接合体の遊離に関して高いフレキシビリティを提供し、それによって異なる複数の検出戦略が提供される。
【0073】
使用される検出部Xoに応じて、または当業者に知られている他の適用可能な定量的もしくは定性的な方法により、例えば視覚的な計数により、いずれのステップも、定性的または定量的なモニタリングが可能である。こうしたモニタリングは、本発明の方法により提供される個々のステップの効率を決定するのに有用でありうる。さらに、定性的または定量的にモニタリングを行うために、ステップa)~e)のいずれかにおいて、またはステップa)~e)のいずれかの後に、生物学的検体のサンプルを標識することが可能である。例えば以下に説明する一般式(II)~(V)による非分解性接合体を利用する標識方法は、当業者に知られている。
【0074】
ステップa)
本方法のステップa)において、一般式(I)An-P-Bm-Cq-Xo (I)を有する少なくとも1つの接合体を準備する。異なる標的部または同一の標的部を異なる検出部によって検出するためには、一般式(I)An-P-Bm-Cq-Xoを有する異なる接合体を準備することができ、その際、これらの複数の接合体およびその成分A、P、B、C、X、n、m、q、oは、同一の意味を有するが、同一もしくは異なる種類および/もしくは量の抗原認識部Aならびに/または酵素分解性スペーサーPならびに/または結合部Bならびに/または結合部Cならびに/または検出部Xであってもよい。
【0075】
さらに、一般式(I)An-P-Bm-Cq-Xoを有する接合体の他に、開裂ステップd)および/またはe)のうちの少なくとも1つに耐え、また、さらなる検出に使用することのできる追加の接合体を準備することが可能である。
【0076】
そのようなさらなる接合体は、一般式(II)An-P’-B’m-C’q-Xoを有することができ、ここで、A、X、n、m、q、oは、式(I)と同一の化学的な意味を有するが、AおよびB’は、P’に共有結合しており、および/またはC’は、Xに共有結合しており、および/またはP’は、非酵素分解性スペーサーであり、および/またはB’は、C’に共有結合している。
【0077】
もう1つの変形形態において、さらに、一般式(III)An-Bm-Cq-Xoを有する少なくとも1つの非酵素分解性接合体を準備することができ、ここで、A、B、C、X、n、m、q、oは、式(I)と同一の意味を有する。
【0078】
さらに、一般式(IV)An-P-Xoを有する少なくとも1つの接合体を準備することができ、ここで、A、P、X、n、oは、式(I)と同一の意味を有する。
【0079】
さらに、一般式(V)An-Xoを有する少なくとも1つの接合体を準備することができ、ここで、A、X、n、oは、式(I)と同一の意味を有する。
【0080】
一般式(II)~(V)を有する接合体は、開裂ステップd)および/またはe)のうちの少なくとも1つに耐え、これらの接合体を、さらなる検出に使用することができる。
【0081】
ステップb)
ステップb)において、この接合体で、生物学的検体のサンプルの標的部を標識する。
【0082】
ステップb)の第1の実施形態では、接合体での標的部の標識を、第1に標的部を第1の接合体A
n-P-B
mで標識し、第2にこの第1に標識された標的部を第2の接合体C
q-X
oで標識することによって行う。以下で、この実施形態を「i)」と呼ぶ。この実施形態の一変形形態では、第1の標識と第2の標識との間に洗浄ステップを行うことで、第2のインキュベーションを行う前の未結合のA
n-P-B
mの量を減少させる。この手法の一例を、
図2a)および例3に示す。さらに、標識された標的部からステップd)においてC
q-X
oを開裂させた後に、A
n-P-B
mで標識された標的部を、第2の接合体C
q-X
oで標識する。
【0083】
ステップb)の第2の実施形態では、標的部を接合体An-P-Bm-Cq-Xoで直接標識し、すなわち抗原認識部Aにより認識される標的部と接触する前に、接合体を集成させる。以下で、この実施形態を「ii)」と呼ぶ。
【0084】
ステップb)の実施形態i)およびii)を、複数の変形形態で行うことができる。
【0085】
本発明の一変形形態では、一般式(I)の2つ以上の接合体との接触を、i)とii)とをいかようにも組み合わせて進行させることができる。例えば、2つ以上の接合体を、i)またはii)において同時にインキュベートすることも、2つ以上のステップi)またはii)において逐次的にインキュベートすることも可能であり、また、一方の接合体をi)によりインキュベートし、他方の接合体をii)によりインキュベートすることも可能である。
【0086】
さらに、接合体で標識された標的部をステップc)において検出もしくは単離する前か、または次の接触ステップb)の前に、標的部により認識されない接合体を、例えば緩衝液での洗浄により除去することができる。
【0087】
本発明の一変形形態では、一般式(II)~(V)の少なくとも1つの接合体に加えて一般式(I)の少なくとも1つの接合体を用いて、複数のステップb)を行うことも単一のステップb)を行うこともできる。
【0088】
インキュベーションの際の条件は当業者に知られており、時間、温度、pHなどの点で実験により最適化することができる。通例的には、インキュベーション時間は、1時間までであり、より通例的には30分間までであり、好ましくは15分間までである。温度は通例的には、4~37℃であり、より通例的には37℃未満である。
【0089】
ステップc)
接合体An-P-Bm-Cq-Xoで標識された標的部をc)において検出するための方法および装置は、検出部Xによって決まる。
【0090】
本発明の方法は、標的部、すなわちそうした標的部を発現する標的細胞の検出するためにだけでなく、そうした標的細胞を生物学的検体のサンプルから検出部Xにより単離するためにも利用することができる。本発明の方法において、「検出」という用語は、「単離」を包含する。
【0091】
例えば、蛍光による標的部の検出を用いることで、FACSまたはTYTO分離系で行われるような適切な分離プロセスを生じさせることができる。本発明の方法において、周知の磁気細胞分離法を検出および単離の方法として用いることもでき、その際、磁性粒子が磁場により検出される。
【0092】
本発明の一変形形態において、検出部Xは蛍光部である。蛍光部Xを励起させ、得られた蛍光シグナルを分析することにより、蛍光色素を付与した接合体で標識された標的を検出する。励起の波長は通常は、蛍光部Xの吸収極大に応じて選択され、当技術分野で知られているレーザまたはLEDの光源によって与えられる。多色/多重パラメーターでの検出に異なる検出部Xを使用する場合には、吸収スペクトルが重複しておらず、少なくとも吸収極大が重複していない蛍光部を選択するよう留意すべきである。蛍光部が検出部として存在する場合には、例えば蛍光顕微鏡下で、フローサイトメーター、分光蛍光光度計または蛍光スキャナーで、標的を検出することができる。化学発光によって放出された光を、励起を行わずに同様の機器により検出することができる。
【0093】
本発明のもう1つの変形形態では、検出部は吸光部であり、これは、照射光強度と透過光強度または反射光強度との差によって検出される。吸光部を、光音響イメージングによって検出することもできる。この光音響イメージングでは、パルスレーザビームの吸収を用いることで、超音波シグナルのような音響が生成される。
【0094】
放射性検出部は、放射性同位体によって放出された放射線によって検出される。放射性放射線の検出に適した計器には、例えばシンチレーションカウンターが含まれる。ベータ放出の場合には、電子顕微鏡法も検出に使用できる。
【0095】
遷移金属同位体マスタグ部は、質量分析法により検出され、例えばマスサイトメトリー機器に組み込まれているICP-MSにより検出される。
【0096】
本発明のさらなる一変形形態において、検出部は固体担体である。これは、サイズおよび密度に応じて、目視検査によりまたは顕微鏡で検出することができよう。
【0097】
磁性粒子は、磁気により検出され、例えば、磁気リラクソメトリー、磁気共鳴イメージング(MRI)、磁気力顕微鏡法(MFM)、超伝導量子干渉計(SQUID)、磁力計により検出される。
【0098】
標的部を、光学手段、静電力、圧電力、機械的分離、音響的手段または磁力によるそれらの検出シグナルによって単離することができる。
【0099】
本発明の一変形形態において、蛍光シグナルによるこのような分離に適しているのは、特にフローソーターであり、例えばEP 14187215.0またはEP 14187214.3に開示されているような、例えばFACSまたはMEMSをベースとするセルソーターシステムである。
【0100】
検出部が固体担体であるもう1つの変形形態では、固体担体を例えばカラムもしくはシーブ中に機械的に捕捉することによって、またはそれらの密度に応じて例えば沈降もしくは遠心分離によって、単離を行うことができる。
【0101】
さらに、磁性粒子で標識された標的部を、磁場の付与により単離することができる。磁気によるセルソーティングは、当業者に知られており、強磁性材料を含む強磁性カラムの使用の有無にかかわらず永久磁場または電磁場で行うことができる。強磁性材料を含むカラムによって磁場の勾配が高まる。こうしたカラムは、ドイツ連邦共和国Miltenyi Biotec GmbHより入手可能である。
【0102】
本発明のさらなる変形形態では、少なくとも1つの検出および/または単離ステップc)を、同時にまたは引き続くステップにおいて組み合わせることが可能である。
【0103】
さらに、標的部の単離の間または後に、生物学的検体のサンプルに混入した未標識部分を、例えば緩衝液を用いた洗浄により除去することができる。
【0104】
ステップd)
検出ステップc)の後に、BmとCqとの間の共有結合によらない結合をステップd)において破壊し、それにより結合部Cqおよび検出部Xoを接合体(I)から開裂させる。
【0105】
第1の結合部Bに結合する遊離剤を添加し、それにより第2の結合部Cと置き換えることによって、および/または第2の結合部Cに結合する遊離剤を添加し、それにより第1の結合部Bと置き換えることによって、ステップd)におけるBmとCqとの間の共有結合によらない結合の破壊を行うことができる。
【0106】
本発明の一変形形態において、この破壊ステップを、検出系の外部で、例えば標的部の溶液中で行うことができる。例えば、蛍光部もしくは吸光部で標識された標的部を、チューブ内で破壊するためにインキュベートするか、または磁性粒子で標識された標的部を、分離カラムから洗浄し、磁場の外部に除去された磁気標識を得ることができる。
【0107】
もう1つの変形形態では、破壊ステップを、検出セットアップ内で行うことができる。例えば破壊は、シグナルの検出時に生じることができ、例えば蛍光顕微鏡法、サイトメトリー、測光法またはMRIの際に生じることができる。したがって、検出シグナルの減少を、リアルタイムで監視することができよう。もう1つの例では、磁場内でも破壊が起こりうる。例えば競合分子を磁場内に位置するカラムに加えることによって、磁気標識された標的部から標識を除去することができる。この変形形態では、標的部はカラム/磁場から溶出されるが、磁気標識はカラム上および磁場内に残る。
【0108】
必要に応じて、d)における破壊の後に、標的部の検出または単離を行う他のステップc)が存在してよい。
【0109】
結合部Cおよび検出部X、および/またはなおも接合体(I)で標識されている残りの標的部、または接合体(I)の非開裂部分、および/またはd)において破壊に使用した試薬を、サンプルから分離することができる。この種の単離ステップを、洗浄ステップにより行うことも可能であるし、ステップc)の検出および/または単離に記載された方法を利用することにより行うことも可能である。この分離を、例えばカラムまたはシーブ中での固体担体の機械的な捕捉によって達成することができる。さらに、標的部の単離に関してすでに記載したように磁場を付与することによって、固体担体としての磁性粒子を除去することができる。強磁性カラムを使用する場合、これが、強磁性材料を含む少なくとも1つの(同一の)または特に2つの異なるカラム内で行われることが好ましい。
【0110】
こうした1つもしくは複数の任意選択的な検出および/または単離ステップによって、遊離された標的部を分離することも、破壊ステップd)の効率を求めることもできる。
【0111】
ステップe)
BmとCqとの間の共有結合によらない結合をステップd)において破壊した後、ステップe)においてスペーサーPを酵素で分解することによって、標識された標的部から結合部Bmを開裂させ、すなわち、An-P-Bm内の共有結合を破壊する。
【0112】
この破壊を、検出系の外部で、例えばチューブ内の標的部の溶液中で行うことができる。
【0113】
抗原認識部Aに応じて、スペーサーPを酵素で開裂させると、低親和性の抗原認識部が単量体化されることとなり、かつ解離することができ、それによって、ステップd)+e)の後に、検出部X、スペーサーP、結合部BおよびCならびに抗原認識部Aが完全に除去される。高親和性の抗原認識部によって安定な結合が生じ、それによって、ステップd)+e)の後に、検出部X、スペーサーPならびに結合部BおよびCが除去される。
【0114】
必要に応じて、e)における破壊の後に、標的部の検出または単離を行う他のステップc)が存在してよい。
【0115】
結合部Bおよび/または酵素で分解されたスペーサーPおよび/または抗原認識部Aおよび/またはe)において破壊に使用した試薬を、サンプルから例えば洗浄により分離することができる。
【0116】
本発明の一変形形態において、破壊ステップd)およびe)とを、同時に行うことができる。したがって、破壊を、検出系の外部で行うことも、破壊ステップd)で記載したような検出セットアップ内で行うこともできる。
【0117】
結合部C、および検出部X、および/または酵素で分解されたスペーサーP、および/または結合部B、および/または抗原認識部A、および/または接合体(I)もしくは接合体(I)の非開裂部分でなおも標識されている残りの標的部、および/または、d)やe)において破壊に使用した試薬を、サンプルから分離することができる。この種の単離ステップを、洗浄ステップにより行うことも可能であるし、ステップc)の検出および/または単離に記載された方法を利用することにより行うことも可能である。この分離を、例えばカラムまたはシーブ中での固体担体の機械的な捕捉によって達成することができる。さらに、標的部の単離に関してすでに記載したように磁場を付与することによって、固体担体としての磁性粒子を除去することができる。強磁性カラムを使用する場合、これが、強磁性材料を含む少なくとも1つの(同一の)または特に2つの異なるカラム内で行われることが好ましい。
【0118】
こうした1つもしくは複数の任意選択的な検出および/または単離ステップによって、遊離された標的部を分離することも、破壊ステップe)またはd)+e)の効率を求めることもできる。
【0119】
ステップa)~e)の序列
本発明の方法を、ステップa)~e)の1つ以上の序列で行うことができる。各序列の後に、検出部および必要に応じて抗原認識部を、標的部から遊離させる(除去する)。さらに、ステップa)~e)のうちのいずれかを組み合わせた序列も可能である。
【0120】
本発明の方法を、以下の実施形態で行うことができる。
【0121】
本発明の実施形態Aは、ステップa)~e)を少なくとも2つの引き続く序列で行い、その際、それぞれの序列において、異なる検出部Xを有する複数の接合体An-P-Bm-Cq-Xo (I)を使用することを特徴とする。
【0122】
この実施形態では、生物学的検体のサンプルを、第1のステップb)において第1の接合体An-P-Bm-Cq-X1oと接触させ、ステップc)において検出を行い、引き続くまたは同時に行うステップd)およびe)においてこの接合体を開裂させる。(なおもAで標識されているAに応じて)この生物学的検体のサンプルを、次の序列で第2の接合体An-P-Bm-Cq-X2oと接触させ、検出を行い、引き続くまたは同時に行うステップd)およびe)においてこの接合体を開裂させる。A、P、B、Cは、同一の種類であり、n、m、q、oは、同一の量であっても異なる量であってもよい。この変形形態を、異なるXを提供するさらなる接合体により拡張することができる。この変形形態の一例は、生物学的検体のサンプルから標的細胞集団を磁気標識して単離し、次いで蛍光標識を行うことであり、これによって、フローサイトメトリーもしくは顕微鏡法分析またはさらなる精製に向けた蛍光ベースのフローソーティングが可能となる。この変形形態では、第1の序列の後にAを用いた残りの標識が行われるため、第2のステップにおける標識効率は低下する場合がある。
【0123】
本発明の実施形態Bは、ステップa)において、異なる検出部Xを有する少なくとも2つの接合体An-P-Bm-Cq-Xoを準備し、少なくとも2つのステップc)において、標識された標的部を、これらの異なる検出部Xを介して検出する。
【0124】
この実施形態では、生物学的検体のサンプルを、ステップb)において第1の接合体An-P-Bm-Cq-X1oおよび第2の接合体An-P-Bm-Cq-X2oと接触させ、引き続く2つのステップc)において検出を行い、これらの接合体を双方共に、引き続くまたは同時に行うステップd)およびe)において同時に開裂させる。A、P、B、Cは、同一の種類であり、n、m、q、oは、同一の量であっても異なる量であってもよい。この変形形態を、異なるXを提供するさらなる接合体により拡張することができる。この変形形態の一例は、生物学的検体のサンプルから標的細胞集団を磁気細胞分離により磁気および蛍光により標識して単離し、次いでフローサイトメトリーもしくは顕微鏡法分析を行うかまたはさらなる精製に向けた蛍光ベースのフローソーティングを行うことである。この変形形態では、同一の抗原認識部を用いて二重に標識されるため、X1およびX2を用いた標識効率が低下する。
【0125】
本発明の実施形態Cは、第1のステップa)において、少なくとも1つの第1の接合体An-P-Bm-Cq-X1を準備し、標識された標的部から第1のステップd)においてCq-X1を開裂させた後、なおもAn-P-Bmで標識されている標的部を、少なくとも1つの第2のステップa)において、少なくとも1つの第2の接合体Cq-X2で標識し、その際、この第1の接合体と第2の接合体とは、異なる検出部Xを有して提供されていることを特徴とする。
【0126】
この実施形態では、生物学的検体のサンプルを、ステップb)において第1の接合体An-P-Bm-Cq-X1oと接触させ、ステップc)において検出を行い、この接合体を、ステップd)において開裂させ、それによってCq-X1oを遊離させる。なおもAn-P-Bmで標識されている生物学的検体のサンプルを、次の序列でCq-X2oと接触させ、検出を行い、この接合体を、さらなる序列を許容するステップd)において開裂させるか、または引き続くもしくは同時に行うステップd)およびe)において開裂させる。A、P、B、Cは、同一の種類であり、n、m、q、oは、同一の量であっても異なる量であってもよい。この変形形態の一例は、生物学的検体のサンプルから標的細胞集団を磁気標識して単離し、次いで蛍光標識を行うことであり、これによって、フローサイトメトリーもしくは顕微鏡法分析またはさらなる精製に向けた蛍光ベースのフローソーティングが可能となる。実施形態AおよびBと比較して、この変形形態では、第1の序列の同一のAn-P-Bmを再度扱うため、第2のステップにおける標識効率は低下しない。
【0127】
本発明の実施形態Dは、ステップa)~e)を少なくとも2つの引き続く序列で行い、その際、それぞれの序列において、異なる抗原認識部Aおよび同一または異なる検出部Xを有する複数の接合体An-P-Bm-Cq-Xo (I)を使用することを特徴とする。
【0128】
この実施形態では、生物学的検体のサンプルを、ステップb)において第1の接合体A1n-P-Bm-Cq-X1oと接触させ、ステップc)において検出を行い、この接合体を、引き続くまたは同時に行うステップd)およびe)において開裂させる。この生物学的検体のサンプルまたは第1の序列の単離画分を、次の序列において第2の接合体A2n-P-Bm-Cq-X2oと接触させ、検出を行い、この接合体を、引き続くまたは同時に行うステップd)およびe)において開裂させる。P、B、Cは、同一の種類であり、n、m、q、oは、同一の量であっても異なる量であってもよい。X1とX2とは、同一であっても異なっていてもよい。この変形形態の第1の例は、A1のみまたはA2のみにより認識される細胞集団を含む生物学的検体のサンプルから2つの標的細胞集団を順次、磁気標識して単離することである。第2の例は、A1のみ、A2のみにより認識される細胞集団を含む生物学的検体のサンプルから第1の標的細胞集団を磁気標識して単離し、第2の標的細胞集団を蛍光標識して検出することである。この変形形態の第3の例は、A1のみ、A2のみおよびA1+A2により認識される細胞集団を含む生物学的検体のサンプルから、A1+A2により認識される標的細胞亜集団を磁気標識して単離することである。こうした単離戦略は、文献から知られている「An-Bm-Cq-Xo」型(ここで、Aは、高親和性の抗原認識部である)の可逆的な標識系を使用した場合には不可能である。こうした系を用いた第1の序列の後には、生物学的検体のサンプルは、なおもA1n-Bmで標識されており、これによって第2の序列において、A1n-Bm-Cq-XoおよびA2n-Bm-Cq-Xoにより二重の標識が行われるとともに、A1のみ、A2のみおよびA1/A2により認識されるすべての細胞集団が単離される。
【0129】
本発明の実施形態Eは、ステップa)において、異なる抗原認識部Aを有する少なくとも2つの接合体An-P-Bm-Cq-Xo (I)を準備し、ステップc)において、標識された標的部を、同一の検出部Xを介して検出することを特徴とする。
【0130】
この実施形態では、生物学的検体のサンプルを、ステップb)において第1の接合体A1n-P-Bm-Cq-X1oおよび第2の接合体A2n-P-Bm-Cq-X1oと接触させ、ステップc)において検出を行い、これらの接合体の双方を、引き続くまたは同時に行うステップd)およびe)において開裂させる。P、B、C、X1は、同一の種類であり、n、m、q、oは、同一の量であっても異なる量であってもよい。この変形形態の第1の例は、A1のみ、A2のみまたはA1+A2により認識される細胞集団を含む生物学的検体のサンプルから、2つの標的細胞集団を同時に磁気標識して単離することである。この変形形態を、異なるAを提供するさらなる接合体により拡張することができる。この変形形態を、ステップd)における接合体の開裂により変形形態Cと組み合わせることもでき、それによってCq-X1oが遊離される。なおもそれぞれA1n-P-BmおよびA2n-P-Bmで標識されている生物学的検体のサンプルを、次の序列においてCq-X2oなどと接触させる。P、B、Cは、同一の種類であり、n、m、q、oは、同一の量であっても異なる量であってもよい。
【0131】
本発明の実施形態Fは、ステップa)において、異なる抗原認識部Aおよび異なる酵素分解性スペーサーPを有する少なくとも2つの接合体An-P-Bm-Cq-Xo (I)を準備し、その際、別個のステップe)において異なるスペーサーPを酵素で分解することにより、結合部Bmを、異なる接合体により標識されたそれぞれの標的部から開裂させることを特徴とする。
【0132】
この実施形態では、生物学的検体のサンプルを、ステップb)において第1の接合体A1n-P1-Bm-Cq-X1oおよび第2の接合体A2n-P2-Bm-Cq-X1oと接触させ、ステップc)において検出を行い、これらの接合体を、引き続くまたは同時に行うステップd)およびe)において開裂させ、その際、ステップe)は、P1およびP2に関して異なる。したがって、実施形態Cによる第2の序列を行ってから、P2に関する開裂ステップe)を行うことができる。B、Cは、同一の種類であり、n、m、q、oは、同一の量であっても異なる量であってもよい。この変形形態を、さらなる接合体により拡張することができる。この変形形態の一例は、A1のみ、A2のみにより認識される細胞集団を含む生物学的検体のサンプルから、2つの標的細胞集団を同時に磁気標識して単離することである。こうしてP1およびP2を逐次的に遊離させることによって、まずP1のみを開裂させることができ、したがって、実施形態Cによる第2の序列において、なおもA2n-P2-Bmで標識された細胞集団のみをCq-X2oを用いて蛍光または磁気による標識で再度処理し、最後にこれら2つの細胞集団を分離することができる。第2の序列においてA2n-P2-Bmでの標識が存在していることから、実施形態Dと比較して、この実施形態のプロセス時間は短縮されることになる。
【0133】
本発明の実施形態Gは、ステップa)において、異なる抗原認識部Aおよび異なる第1の結合部Bまたは異なる第2の結合部Cを有する少なくとも2つの接合体An-P-Bm-Cq-Xo (I)を準備し、その際、別個のステップd)においてBmとCqとの間の共有結合によらない結合を破壊することによって、これらの異なる接合体により標識された標的部から断片Cq-Xoを開裂させることを特徴とする。
【0134】
この実施形態では、生物学的検体のサンプルを、ステップb)において第1の接合体A1n-P-B1m-C1q-X1oおよび第2の接合体A2n-P-B2m-C2q-X1oと接触させ、ステップc)において検出を行い、引き続くまたは同時に行うステップd)およびe)においてこれらの接合体を開裂させ、その際、ステップd)は、B1-C1およびB2-C2に関して異なる。P、Xは、同一の種類であり、n、m、q、oは、同一の量であっても異なる量であってもよい。この変形形態を、さらなる接合体により拡張することができる。この変形形態の一例は、A1のみ、A2のみにより認識される細胞集団を含む生物学的検体のサンプルから、2つの標的細胞集団を同時に磁気標識して単離することである。こうしてC1q-X1oおよびC2q-X1oを逐次的に遊離させることによって、C1q-X1oを遊離させた後に中間的にさらなる検出ステップを行って、これら2つの細胞集団を分離することができ、これらを、最後にステップe)において同一の機序により開裂させることができる。実施形態DおよびFと比較して、この実施形態のプロセス時間はさらにより短縮されることになる。この実施形態を、実施形態Cと組み合わせることができる。
【0135】
本発明の実施形態Hは、ステップa)において、異なる抗原認識部A、異なる検出部Xおよび異なる第1の結合部Bまたは異なる第2の結合部Cを有する少なくとも2つの接合体An-P-Bm-Cq-Xo (I)を準備し、その際、別個のステップd)においてBmとCqとの間の共有結合によらない結合を破壊することによって、これらの異なる接合体により標識された標的部から断片Cq-Xoを開裂させることを特徴とする。
【0136】
この実施形態では、生物学的検体のサンプルを、ステップb)において第1の接合体A1n-P-B1m-C1q-X1oおよび第2の接合体A2n-P-B2m-C2q-X2oと接触させ、同時にまたは2つの引き続くステップc)において検出を行い、引き続くまたは同時に行うステップd)およびe)においてこれらの接合体を開裂させ、その際、ステップd)は、B1-C1およびB2-C2に関して異なる。Pは、同一の種類であり、n、m、q、oは、同一の量であっても異なる量であってもよい。この変形形態の一例は、A1のみ、A2のみおよびA1+A2により認識される細胞集団を含む生物学的検体のサンプルから標的細胞亜集団を、2つのパラメーターおよび2つの蛍光色素を用いて蛍光標識して単離することである。C1q-X1oとC2q-X2oとが異なることによって特異的な標識が可能になり、また、遊離を、同時に行ってもよいし、逐次的に異なるステップd)およびe)において行ってもよい。例えば、細胞亜集団を多重パラメーターにより蛍光標識し、検出し、単離しそして遊離させるために、この変形形態を、異なるAおよびXを提供するさらなる接合体により拡張することができる。この変形形態を、変形形態Cと組み合わせることもできる。
【0137】
本発明の実施形態Iは、ステップa)において、異なる抗原認識部A、異なる酵素分解性スペーサーP、異なる第1の結合部Bまたは異なる第2の結合部Cおよび異なる検出部Xを有する少なくとも2つの接合体An-P-Bm-Cq-Xo (I)を準備することを特徴とする。
【0138】
この実施形態では、生物学的検体のサンプルを、ステップb)において第1の接合体A1n-P1-B1m-C1q-X1oおよび第2の接合体A2n-P2-B2m-C2q-X2oと接触させ、同時にまたは2つの引き続くステップc)において検出を行い、引き続くまたは同時に行うステップd)およびe)においてこれらの接合体を開裂させる。n、m、q、oは、同一の量であっても異なる量であってもよい。この変形形態を、さらなる接合体により拡張することができる。この変形形態を、変形形態Cと組み合わせることもできる。この実施形態によって、生物学的検体のサンプルから、少なくとも2つの標的細胞集団を逐次的にまたは同時に標識し、分離しそして遊離させるための複数の可能性が生じる。
【0139】
An-P-Bm-Cq-Xo (I)の少なくとも1つの接合体と、An-P’-B’m-C’q-Xo (II)および/またはAn-Bm-Cq-Xo (III)および/またはAn-P-Xo (IV)および/またはAn-Xo (V)のうちの少なくとも1つの付加的な接合体とを用いて、本発明の方法、特に上記の実施形態を行うことができる。こうした付加的な接合体(II)~(V)は、開裂ステップd)およびまたはe)のうちの少なくとも1つに耐える。したがって、本発明の方法を、以下の実施形態で行うことができる。
【0140】
本発明の実施形態Jは、ステップa)において、異なる抗原認識部Aを有する、少なくとも1つの接合体An-P-Bm-Cq-Xo (I)および少なくとも1つの接合体An-Xo (V)を準備することを特徴とする。
【0141】
この実施形態では、生物学的検体のサンプルを、ステップb)において第1の接合体A1n-P-Bm-Cq-X1oおよび第2の接合体A2n-X1oと接触させ、ステップc)において検出を行い、引き続くまたは同時に行うステップd)およびe)において接合体このA1n-P-Bm-Cq-X1oを開裂させる。A2n-X1oは、ステップd)およびe)に耐える。X1は、同一の種類であり、n、m、q、oは、同一の量であっても異なる量であってもよい。この変形形態を、さらなる接合体により拡張することができる。この変形形態の一例は、A1のみ、A2のみにより認識される細胞集団を含む生物学的検体のサンプルから2つの標的細胞集団を同時に磁気標識して単離することである。こうしてC1q-X1oを逐次的に遊離させることによって、C1q-X1oの遊離後にさらなる検出ステップを行って、これら2つの細胞集団を分離することが可能となる。A1が標的とする細胞集団のみを、最後にステップe)において開裂させることができる。A2が標的とする細胞集団を、A2n-X1oで非可逆的に標識する。この実施形態を、実施形態Cと組み合わせることができる。
【0142】
本発明の実施形態Kは、ステップa)において、異なる抗原認識部Aおよび異なる検出部Xを有する、少なくとも1つの接合体An-P-Bm-Cq-Xo (I)および少なくとも1つの接合体An-Xo (V)を準備することを特徴とする。
【0143】
この実施形態では、生物学的検体のサンプルを、ステップb)において第1の接合体A1n-P-Bm-Cq-X1oおよび第2の接合体A2n-X2oと接触させ、同時にまたは2つの引き続くステップc)において検出を行い、引き続くまたは同時に行うステップd)およびe)において接合体A1n-P-Bm-Cq-X1oを開裂させる。A2n-X2oは、ステップd)およびe)に耐える。n、m、q、oは、同一の量であっても異なる量であってもよい。この変形形態を、さらなる接合体により拡張することができる。この変形形態の一例は、2つのパラメーターおよび2つの蛍光色素を用いた蛍光標識であり、その際、一方の標識は非可逆的であり、第2の標識は可逆的である。例えば、細胞亜集団を多重パラメーターにより蛍光標識し、検出し、単離しそして遊離させるために、この変形形態を、異なるAおよびXを提供するさらなる接合体により拡張することができる。この変形形態を、変形形態Cと組み合わせることもできる。
【0144】
本発明の実施形態Lは、ステップa)において、異なる複合の抗原認識部Aを有する、少なくとも1つの接合体An-P-Bm-Cq-Xo (I)および少なくとも1つの接合体An-P-Xo (IV)を準備することを特徴とする。
【0145】
この実施形態では、生物学的検体のサンプルを、ステップb)において第1の接合体A1n-P-Bm-Cq-X1oおよび第2の接合体A2n-P-X2oと接触させ、同時にまたは2つの引き続くステップc)において検出を行い、ステップd)において接合体A1n-P-Bm-Cq-X1oを開裂させる。A2n-P-X2oは、ステップd)に耐えるが、ステップe)において同時にA1n-P-Bmへと遊離される。X1およびX2は、同一かまたは異なる種類であり、Pは、同一の種類であり、n、m、q、oは、同一の量であっても異なる量であってもよい。この変形形態を、さらなる接合体により拡張することができる。この変形形態の一例は、A1のみ、A2のみにより認識される細胞集団を含む生物学的検体のサンプルから、2つの標的細胞集団を同時に磁気標識して単離することである。こうしてC1q-X1oを逐次的に遊離させることによって、C1q-X1oの遊離後にさらなる検出ステップを行ってこれら2つの細胞集団を分離することができ、これらを、最後にステップe)において同一の機序により開裂させることができる。この変形形態を、変形形態Cと組み合わせることもできる。
【0146】
本発明の実施形態Mは、ステップa)において、異なる抗原認識部Aおよび異なる酵素分解性スペーサーPを有する、少なくとも1つの接合体An-P-Bm-Cq-Xo (I)および少なくとも1つの接合体An-P-Xo (IV)を準備することを特徴とする。
【0147】
この実施形態では、生物学的検体のサンプルを、ステップb)において第1の接合体A1n-P1-Bm-Cq-X1oおよび第2の接合体A2n-P2-X2oと接触させ、同時にまたは2つの引き続くステップc)において検出を行い、引き続くまたは同時に行うステップd)およびe)においてこれらの接合体を開裂させ、その際、ステップe)は、P1およびP2に関して異なる。A2n-P2-X2oは、P1のためのステップe)に耐える。X1およびX2は、同一かまたは異なる種類であり、n、m、q、oは、同一の量であっても異なる量であってもよい。この変形形態の一例は、A1のみ、A2のみにより認識される細胞集団を含む生物学的検体のサンプルから、2つの標的細胞集団を同時に磁気標識して単離することである。こうしてC1q-X1oを逐次的に遊離させることによって、C1q-X1oの遊離後にさらなる検出ステップを行ってこれら2つの細胞集団を分離することができ、これらを、最後にステップe)において異なる機序により開裂させることができる。この変形形態を、変形形態Cと組み合わせることもできる。
【0148】
本発明の実施形態Nは、ステップa)において、異なる抗原認識部Aおよび異なる検出部Xを有する、少なくとも1つの接合体An-P-Bm-Cq-Xo (I)および少なくとも1つの接合体An-Bm-Cq-Xo (III)を準備することを特徴とする。
【0149】
この実施形態では、生物学的検体のサンプルを、ステップb)において第1の接合体A1n-P-B1m-C1q-X1oおよび第2の接合体A2n-B2m-C2q-X2o (III)と接触させ、同時にまたは2つの引き続くステップc)において検出を行い、引き続くまたは同時に行うステップd)およびe)においてこれらの接合体を開裂させ、その際、ステップd)は、B1-C1およびB2-C2に関して異なり、最後にステップe)において、A1が標的とする細胞集団を開裂させることができる。X1およびX2は、同一かまたは異なる種類であり、n、m、q、oは、同一の量であっても異なる量であってもよい。こうしてC1q-X1oおよびC2q-X2oを逐次的に遊離させることによって、C1q-X1oの遊離後に中間的にさらなる検出ステップを行って、これら2つの細胞集団を分離することができる。この実施形態を、実施形態Cと組み合わせることができる。
【0150】
本方法の使用
本発明の方法を、研究、診断および細胞療法における様々な用途に使用することができる。
【0151】
本発明の第1の使用では、細胞のような生物学的検体を、計数目的で、すなわち接合体の抗原認識部により認識される特定の一連の抗原を有するサンプルからの細胞の量を確認するために、検出または単離する。
【0152】
第2の使用では、1つまたは複数の生物学的検体集団を分離して、標的細胞を精製する。こうして単離した精製細胞を、分子診断、細胞培養または免疫療法のような下流の複数の用途に使用することができる。
【0153】
本発明のもう1つの使用では、接合体の抗原認識部により認識される生物学的検体上の抗原のような標的部の位置を求める。高度なイメージング法は、「マルチエピトープリガンド地図作成(Multi Epitope Ligand Cartography)」、「チップベースサイトメトリー(Chip-based Cytometry)」または「Multioymx」として知られており、例えば欧州特許第0810428号明細書(EP 0810428)、欧州特許第1181525号明細書(EP 1181525)、欧州特許第1136822号明細書(EP 1136822)または欧州特許第1224472号明細書(EP 1224472)に記載されている。この技術では、生物学的検体のサンプルと、検出部に結合された抗原認識部とを連続サイクルで接触させ、この検出部によって抗原の位置を検出し、その後この検出部を除去する。したがって、標識-検出-除去の連続サイクルによって、タンパク質ネットワークをマッピングし、異なる細胞型を局在化させ、また疾患に関連するプロテオームの変化を分析することが可能となる。
【0154】
実施例
例1 抗体-またはFab-デキストラン-PEO-ビオチンの接合
PEO-ビオチンを用いて抗体-またはFab-デキストラン-PEO-ビオチン接合体を調製するために、アミノデキストランを、NHS活性化PEO-ビオチン(例えば、Thermo Scientific/Pierceより入手可能なNHS-PEG4-ビオチン)と共にインキュベートした。室温で60分間のインキュベーション時間が経過した後、PBS/EDTA緩衝液を用いたサイズ排除クロマトグラフィーにより、このデキストラン-PEO-ビオチン接合体を精製した。このデキストラン-PEO-ビオチン接合体を、室温での60分間にわたるSMCCとのインキュベーションによってさらに活性化させ、PBS/EDTA緩衝液を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。抗体またはFabを、MES緩衝液中の10mM DTTで還元させた。室温で60分間のインキュベーション時間が経過した後、PBS/EDTA緩衝液を用いたサイズ排除クロマトグラフィーにより、この抗体またはFabを精製した。抗体-またはFab-デキストラン-PEO-ビオチン接合体を接合するために、活性化デキストラン-PEO-ビオチンに、活性化Fabまたは活性化抗体を加えた。室温で60分間のインキュベーション時間が経過した後、β-メルカプトエタノール、続いてN-エチルマレイミドをモル過剰で加えて、未反応のマレイミドまたはチオール官能基をブロックした。この抗体-またはFab-デキストラン-PEO-ビオチン接合体を、PBS/EDTA緩衝液を用いたサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。抗体またはFabの濃度を、280nmでの吸光度および吸光度によって求めた。
【0155】
例2 抗体-またはFab-デキストラン-PEO-ビオチンと比較するための、抗体-またはFab-PEO-ビオチンの接合
抗体-またはFab-PEO-ビオチン接合体を調製するために、抗体またはFabを、MES緩衝液中の10mM DTTで還元した。室温で60分間のインキュベーション時間が経過した後、PBS/EDTA緩衝液を用いたサイズ排除クロマトグラフィーにより、この抗体またはFabを精製した。抗体-またはFab-デキストラン-PEO-ビオチン接合体を接合するために、活性化Fabまたは活性化抗体を、モル過剰のチオール反応性マレイミド-PEO-ビオチン(例えば、Thermo Scientific/Pierceより入手可能なマレイミド-PEG2-ビオチン)と共にインキュベートした。室温で15時間インキュベートした後、PBS/EDTA緩衝液を用いたサイズ排除クロマトグラフィーにより、この抗体-またはFab-PEO-ビオチン接合体を精製した。抗体またはFabの濃度を、280nmでの吸光度および吸光度によって求めた。
【0156】
例3 (本発明による)Fab-デキストラン-PEO-ビオチン/抗ビオチン-APCと、Fab-PEO-ビオチン/抗ビオチン-APCとを対比して用いた細胞表面標識
「洗浄ステップを行う」細胞表面染色手法1): PBS/EDTA/BSA緩衝液中のPBMCを第1に、2.0μg/mLの抗CD8-Fab-デキストラン-PEO-ビオチンまたは抗CD8-Fab-PEO-ビオチンで、4℃で5分間標識した。これらの細胞を、冷PBS/EDTA-BSA緩衝液で洗浄し、第2に、PBS/EDTA/BSA緩衝液中で、2倍モル過剰の抗ビオチン-APC(モル比Fab:抗ビオチン=1:2)(Miltenyi Biotec GmbHより入手可能)を用いて4℃で10分間標識した。これらの細胞を、冷PBS/EDTA-BSA緩衝液で洗浄し、フローサイトメトリーで分析した。
【0157】
「洗浄ステップを行わない」細胞表面染色手法2): PBS/EDTA/BSA緩衝液中のPBMCを第1に、2.0μg/mLの抗CD8-Fab-デキストラン-PEO-ビオチンまたは抗CD8-Fab-PEO-ビオチンで、4℃で5分間標識した。その後、これらの細胞を直ちに第2に、PBS/EDTA/BSA緩衝液中で、2倍モル過剰の抗ビオチン-APC(モル比Fab:抗ビオチン=1:2)(Miltenyi Biotec GmbHより入手可能)を用いて4℃で10分間標識した。これらの細胞を、冷PBS/EDTA-BSA緩衝液で洗浄し、フローサイトメトリーで分析した。
【0158】
図2に、(本発明による)Fab-デキストラン-PEO-ビオチン/抗ビオチン-APC(a)と、(比較のための)Fab-PEO-ビオチン/抗ビオチン-APC(b)とを対比して用いた細胞表面標識のフローサイトメトリー分析の例示的な結果を示す。
【0159】
第1に抗CD8-Fab-デキストラン-PEO-ビオチンおよび抗CD8-Fab-PEO-ビオチンのそれぞれをインキュベートし、第2に抗ビオチン-APCをインキュベートすることにより、PBMCを逐次的に標識した。洗浄ステップを行わない標識手法2)によって、蛍光強度はそれぞれ77.2および68.2であり、同等であることが判明した。この抗CD8-Fab-デキストラン-PEO-ビオチン接合体は、2つのFabからなり、これらは、デキストラン-PEO-ビオチンを介して共有結合により多量体化される。抗CD8-Fab-PEO-ビオチンは、モノマー型接合体であり、これを、抗ビオチン-APCへの結合により二量体化させることができる。したがって、第1のインキュベーションと第2のインキュベーションとの中間に洗浄ステップを行う標識手法1)によって、抗CD8-Fab-PEO-ビオチン/抗ビオチン-APCを用いた場合に、この低親和性のモノマー型抗CD8-Fab-PEO-ビオチンが迅速に解離するという特性ゆえに、蛍光強度が低下(24.7)してしまう(b)。対照的に、多量体化された抗CD8-Fab-デキストラン-PEO-ビオチンによる第1の標識は、洗浄ステップの間安定であり、得られる蛍光強度は、洗浄ステップを行わない標識手法(2)を用いて達成された値と同等である(a)。この洗浄ステップは、未結合のFab接合体を除去するのに有益であり、それによって非特異的結合のリスクが低くなる。
【0160】
例4 (本発明による)Fab-デキストラン-PEO-ビオチン/抗ビオチン-APCによる可逆的な細胞標識
PBS/EDTA/BSA緩衝液中のPBMCを第1に、0.25μg/mLの抗CD8-Fab-デキストラン-PEO-ビオチンで4℃で5分間標識した。その後、これらの細胞を直ちに第2に、PBS/EDTA/BSA緩衝液中で抗ビオチンマイクロビーズ(Miltenyi Biotec GmbHより入手可能)で4℃で15分間標識し、抗CD8-PEで4℃で5分間標識した。これらの細胞を、冷PBS/EDTA/BSA緩衝液で洗浄し、500μLの冷緩衝液中に再懸濁させた。この懸濁液を、MSカラム(Miltenyi Biotec GmbHより入手可能)に付与し、磁気細胞分離のために磁場に付与した。これらの濃縮細胞を、磁場内で洗浄し、このカラムを分離器から取り出してから、これらの細胞を、冷PBS/EDTA/BSA緩衝液1mLで溶出させた。この濃縮画分のアリコートを分離し、フローサイトメトリー分析のために抗デキストラン-APCで染色した。残りの濃縮画分を分割し、一方の部分を2mMのビオチンと共に21℃で10分間インキュベートした。もう一方の部分を、2mMのビオチンおよびデキストラナーゼと共に、21℃で10分間インキュベートした。この細胞懸濁液を、第2のカラムに付与し、流出液を溶出細胞として収集した。この溶出画分のアリコートを分離し、フローサイトメトリー分析のために抗デキストラン-APCで染色した。濃縮または溶出された画分のアリコートを、抗デキストラン-APC(Miltenyi Biotec GmbHより入手可能)と共に4℃で10分間インキュベートした。これらの細胞を、冷PBS/EDTA-BSA緩衝液で洗浄し、フローサイトメトリーで分析した。
【0161】
図3に、Fab-デキストラン-PEO-ビオチン/抗ビオチンマイクロビーズを用いた可逆的な細胞標識のフローサイトメトリー分析の結果の例示的なドットプロットを示す。
【0162】
第1に抗CD8-Fab-デキストラン-PEO-ビオチンをインキュベートし、第2に抗ビオチンマイクロビーズをインキュベートすることにより、PBMCを逐次的に標識した。磁気標識したCD8+標的細胞を、磁場で単離した。これらの濃縮細胞を、抗デキストラン-APCでの標識によって分析した。この抗体は、抗CD8-Fab-デキストラン-PEO-ビオチンのデキストランおよび抗ビオチンマイクロビーズのデキストランを認識する。したがって、これらの濃縮細胞から、APCに関して蛍光強度が高いことが判明した(a)。競合分子ビオチンを添加した後、この抗ビオチンマイクロビーズは標的細胞から遊離して、これらの細胞は、もはや磁場に保持されなかった。抗CD8-Fab-デキストラン-PEO-ビオチン接合体は、2つのFabからなり、これらは、デキストラン-PEO-ビオチンを介して共有結合により多量体化されるため、細胞表面上に残った。抗デキストラン-APC標識後のフローサイトメトリー分析によって、抗ビオチンマイクロビーズが存在せずに抗CD8-Fab-デキストラン-PEO-ビオチンが残ることから、濃縮画分と比較してAPCの蛍光強度が低下することが判明した(b)。競合分子ビオチンおよびデキストラン分解酵素デキストラナーゼを添加した後、抗ビオチンマイクロビーズが遊離し、抗CD8-Fab-デキストラン-PEO-ビオチンが分解し、それにより抗CD8-Fabの単量体化が生じた。抗デキストラン-APC標識後のフローサイトメトリー分析によって、抗ビオチンマイクロビーズおよび抗CD8-Fab-デキストラン-PEO-ビオチンが存在しないことから、APCの蛍光強度は検出限界の範囲内であることが判明した(c)。