IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスアイアイ・セミコンダクタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-無線制御システム 図1
  • 特許-無線制御システム 図2
  • 特許-無線制御システム 図3
  • 特許-無線制御システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】無線制御システム
(51)【国際特許分類】
   G08C 15/00 20060101AFI20230307BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20230307BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20230307BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20230307BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
G08C15/00 D
H04Q9/00 311H
G08C17/00 Z
G08C19/00 G
H01M10/44 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018180194
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2019067384
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2017191134
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下田 貞之
(72)【発明者】
【氏名】武内 勇介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 太郎
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-504864(JP,A)
【文献】特開2010-213466(JP,A)
【文献】特開2012-190953(JP,A)
【文献】特開2000-232527(JP,A)
【文献】特開2004-280449(JP,A)
【文献】特開2012-174176(JP,A)
【文献】特開2005-191986(JP,A)
【文献】特開2008-097269(JP,A)
【文献】特表2012-516059(JP,A)
【文献】特開2011-013765(JP,A)
【文献】特開2017-172997(JP,A)
【文献】特開2015-210968(JP,A)
【文献】特開2013-167551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00-25/04
H04Q 9/00
H01M 10/44
H01L 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力発生装置と、
前記電力発生装置に接続されたコンデンサと電圧変換回路装置と、
前記電圧変換回路装置に接続されたトランスミッター機能を有する無線装置と、からなる少なくとも1個のノード装置を備え、
前記ノード装置から発信する第1の無線信号を送受信するトランシーバ機能を有するゲートウェイ装置と、
前記ゲートウェイ装置に接続されているサーバ装置を備え、
更に、前記トランシーバ機能を有するゲートウェイ装置から送信される第2の無線信号を受信する受信装置と、
前記受信装置から送出される信号で動作するアクチュエータを備え、
前記電力発生装置は漏水によって起こる酸化還元反応によって電力を発生する電力発生装置であり、
前記ノード装置が動作する電力は前記電力発生装置から供給され、
前記アクチュエータによって漏水を停止させることで前記電力発生装置で発生する電力を減少させることを特徴とする無線制御システム。
【請求項2】
電力発生装置と、
前記電力発生装置に接続されたコンデンサと電圧変換回路装置と、
前記電圧変換回路装置に接続されたトランスミッター機能を有する無線装置と、からなる少なくとも1個のノード装置を備え、
前記ノード装置から発信する第1の無線信号を送受信するトランシーバ機能を有するゲートウェイ装置と、
前記ゲートウェイ装置に接続されているサーバ装置を備え、
更に、前記トランシーバ機能を有するゲートウェイ装置から送信される第2の無線信号を受信する受信装置と、
前記受信装置から送出される信号で動作するアクチュエータを備え、
前記電力発生装置は電流発電菌によって電力を発生する電力発生装置であり、
前記ノード装置が動作する電力は前記電力発生装置から供給され、
前記アクチュエータによって前記電流発電菌の活性を制御し前記電力発生装置で発生する電力を増減させることを特徴とする無線制御システム。
【請求項3】
前記電力発生装置で発生する時間当たりの電力は、前記ノード装置が消費する時間当たりの電力よりも小さいことを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の無線制御システム。
【請求項4】
前記ノード装置から発信する第1の無線信号の発信周期は、前記電力発生装置で発生する電力の量によって制御されることを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の無線制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電により起動される無線制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
振動によって発生するエネルギーをエネルギー変換器で電力に変換して蓄え、蓄えた電気エネルギーによりワイヤレスで振動状態を外部へ伝える故障検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-222668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の故障検出装置では、異常が発生してもアラームを発生させるのみであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
電力発生装置と、電力発生装置に接続されたコンデンサと電圧変換回路装置と、電圧変換回路装置に接続されたトランスミッター機能を有する無線装置とからなる少なくとも1個のノード装置を備え、ノード装置から発信する第1の無線信号を送受信するトランシーバ機能を有するゲートウェイ装置と、ゲートウェイ装置に接続されているサーバ装置を備え、更に、トランシーバ機能を有するゲートウェイ装置から送信される第2の無線信号を受信する受信装置と、受信装置から送出される信号で動作するアクチュエータを備え、ノード装置が動作する電力は電力発生装置から供給され、アクチェエータによって電力発生装置で発生する電力を増減させることを特徴とする無線制御システムとした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アラーム発生のみでなく電力発生装置の状態に応じた制御を行う無線制御システムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明による無線制御システムの一例を示す機能ブロック図である。
図2】本発明による第1の実施形態を説明する概略図である。
図3】本発明による第2の実施形態を説明する概略図である。
図4】本発明による第3の実施形態を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の無線制御システムについて、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る無線制御システムの一例を示す機能ブロック図である。
【0009】
本発明の無線制御システムは、電力発生装置1とコンデンサ9と電圧変換回路装置2と送信装置3を備えるノード装置11と、ゲートウェイ装置4とサーバ装置5と受信装置6とアクチュエータ7から構成されている。
【0010】
電力発生装置1は、異種の金属から構成されている。たとえば、酸化還元反応により電力が発生することは広く知られている。具体的には異なる2種類の金属と電解液とを組み合わせると、電池ができる。このとき、イオン化傾向の大きい、すなわち標準電極電位がより負の値の金属が負極となり、イオン化傾向の小さい、すなわち標準電極電位がより正の値の金属が正極となる。また、2種類の金属の標準電極電位の差が大きいほど、電池の起電力(外部へ取り出せる電圧)は大きくなる。たとえば、銅と亜鉛を使うレモン電池では、亜鉛が負極になり、銅が正極になり、電解液はレモンの果汁である。また、ボルタ電池は、亜鉛が負極になり、銅が正極になり、電解液が希硫酸である。
【0011】
ここで、亜鉛の標準電極電位は-0.762Vであり、銅の標準電極電位は+0.342Vであるので、約1Vの電位差ができる。これがボルタ電池の理論的な起電圧である。しかし、電解質を水にすると、同じ原理で起電力が発生するが、電解液としての水の内部抵抗が大きく、内部抵抗による電圧降下で外部へ取り出せる電圧は1Vより低くなる。具体的には、0.3V程度の電圧まで降下してしまう。
【0012】
電力発生装置1で発生したこの低い電圧を、より高い電圧に変換する機能を有するのが、電圧変換回路装置2である。この変換は通常、昇圧動作と呼ばれるものであり、手法としてはチャージポンプ回路やDC/DC回路等で構成される。これにより2V程度の電圧に昇圧される。
【0013】
2V程度に昇圧された電圧は、送信装置3に印加され、送信装置3の電源になる。この送信装置3は広く利用されているBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)無線装置とかsub-GHz等の無線通信方式を採用した無線装置で構成される。これらの方式を採用した無線装置の最低動作電圧は2V程度である為に、電圧変換回路装置2が電力発生装置1の電圧を2V程度に昇圧できさえすれば、この電圧で送信装置3を動作させることができる。具体的には、電力発生装置1の異種金属の間に水が存在すれば、電圧が上記のように発生する。逆に異種金属の間に水等の電界液が存在しなければ、電圧は発生しない。
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態を図2に基づいて説明する。図2は、本実施形態の電力発生装置1とコンデンサ9と電圧変換回路装置2と送信装置3を備えるノード装置11と、アクチュエータ7とを示している。
電力発生装置1の異種金属の電極12を一定の距離を離して布や紙等の水分を吸収しやすい素材に埋め込み、かつ相対するようにしてテープ状に加工する。それを工場の配管の継ぎ目13に巻きつける等のやり方で設置しておけば、配管の継ぎ目13から漏水がなければ、電力発生装置1は電圧を発生しない。しかし、老朽化等で配管の継ぎ目13から漏水し、電力発生装置1の異種金属の電極12間に水が存在することになると、酸化還元反応により、前述のように0.3V程度の電圧が発生する。すなわち、漏水の発生の有無を電圧に変換することができる。理想的には、漏水がなければ、電力発生装置1の出力は0V、漏水があれば電力発生装置1の出力は0.3Vである。
【0015】
もし漏水があれば、何らかの手段で工場管理者に修理の必要性を伝えなければならない。電力発生装置1の出力電圧が0.3V以上あれば、電圧変換回路装置2で2V程度に昇圧することができるので、この電圧を利用して送信装置3を駆動することができ、これにより、もし、工場管理者が近くにいる場合には、工場管理者の携帯電話等に直接、無線信号によって漏水の事実を知らせることができる。更には、漏水量は電解液の量に等しいので、漏水が多ければ、発電量も大きい。発電量が大きいということは、送信装置3で送信する無線信号の送信間隔が短いことを意味している。すなわち、この無線信号の送信間隔は、漏水量に反比例しているので、この無線信号の送信間隔は、漏水量の程度を示していることになる。この時、送信装置3から送信する無線信号である信号データ8に、送信装置3の識別番号を入れておくことによって、電力発生装置1を工場内に複数設置した場合に、どの配管から、漏水しているかを識別することができる。
【0016】
また、電力発生装置1と電圧変換回路装置2と送信装置3は配管に設置するので、ノード装置11として一体化させたほうが良い。
【0017】
送信装置3から送信された無線信号である信号データ8は、ゲートウェイ装置4で受信する。ゲートウェイ装置4で受信されたデータは、更にサーバ装置5に転送される。サーバ装置5の役割は、転送されたデータを蓄積すると同時に、そのデータを分析し、何らかの動作をフィードバックすることである。一例として、配管の漏水であれば、漏水箇所の近くのアクチュエータ7を動作させて配管に設置されている補修材14を漏水部分に塗布することである。その他、信号データ8の受信間隔、ノード装置11の設置位置および設置開始時間等をサーバ装置5に蓄積し、それらのデータを解析することにより、漏水の程度、漏水の起こりやすい場所、配管のメンテナンスの必要な時期等を予測することができ、配管のメンテナンスに役立つ情報を得ることができる。
【0018】
この動作を可能にするために、サーバ装置5からアクチュエータ7に指令信号10を出すわけである。具体的には、その指令信号10は、ゲートウェイ装置4を介して受信装置6に送られ、アクチュエータ7を動作させる。すなわち、本無線制御システムによって電力発生装置1で感知した信号を、ゲートウェイ装置4を介してサーバ装置5に転送し、アクチュエータ7により適切な処理を行う一連の流れを作り出すことが出来る。
ここで、アクチュエータ7は、自動的に配管に設置されている補修材14を漏水部分に塗布する機能を有する。これにより、漏水を自動的に止めることが出来る。漏水が止まれば、電力発生装置1の2種の異金属電極12間の水分は次第に蒸発し、やがて電力発生装置1の出力電圧はゼロになる。この状態では、ノード装置11は無線信号を送信することができない。これにより、工場管理者は漏水が止まったことを認識できる。すなわち、アクチュエータ7は、漏水を止め、上記酸化還元反応を利用した電力発生装置が漏水の為に発生した電力を減少させるように動作する。
更に、本システムにおいて特徴的なことは、電力発生装置1と電圧変換回路装置2と送信装置3には、それらを動かすための電源は不要であるということである。この電源は、酸化還元反応により、異種金属電極12で構成された電力発生装置1により作られる。ここで作られた電源により、電圧変換回路装置2と送信装置3が駆動される。
【0019】
したがって、電圧変換回路装置2と送信装置3の消費電力は、電力発生装置1で作られる電力より低くなければならない。これは、非現実的である。なぜなら、電力発生装置1で作られる電力は電圧0.3V、電流3μA程度であり、電力は1μW程度である。一方、送信装置3の消費電力は30mW程度必要である。そこで、これを現実化する手段として、コンデンサ9を配置する。すなわち、1μWの発電で、30mWの電力を賄うための素子が、コンデンサ9である。
【0020】
30mWの電力を必要とする送信装置3を1msecの間動作させるためには、30mWx1msec=30μWsecのエネルギーが必要であるが、そのエネルギーを電力発生装置1で収集するためには30μWsec÷1μW=30secの間、コンデンサ9にエネルギーを蓄積すれば良い。
【0021】
以上のように、1μWという微小な電力でも、30秒という時間をかけてコンデンサ9に蓄積すれば、送信装置3を1msecという短時間、動作させることができるエネルギーに変換することができる。送信装置3にとって、1msecという時間は無線信号を送信するには十分な時間である。ただし、これらの議論は、話を単純化する為に、損失がないと仮定している。実際には電圧変換回路装置2等で電圧変換による損失があるので、上記時間は30秒を超えることになる。
【0022】
送信装置3で一度信号を送信すると、コンデンサ9の電荷は送信装置3の送信電力分、放電することになる。その結果、コンデンサ9の電圧は、送信装置3の最低動作を下回るので、送信は止まる。しかし、電力発生装置1の異種金属電極12間に依然として、漏水による水が存在すれば、電力発生装置1の出力には酸化還元反応による電池反応で起電力が発生しているので、コンデンサ9には電荷が蓄積され続ける。この動作を繰り返すことにより、送信装置3は理想的には、30秒毎にゲートウェイ装置4に向けて無線信号を送信することができる。
【0023】
[第2の実施形態]
第1の実施形態と同様に図3に基づいて説明する。電力発生装置1は、電流発生菌と酸化鉄等の2本の電極15から構成されている。ここで、電流発生菌とは、糖や酢酸などの有機物を分解して電子を放出する菌である。代表的な電流発生菌としては、シュワネラ菌が知られている。電流発生菌を使った「微生物燃料電池」の実用化が期待できる。シュワネラ菌は、そこら中の地中や水中など、どこにでもいる菌である。電流発生菌は有機物を分解し電子を捨てることで、自分自身の増殖に必要なエネルギーを得る。その際に発生する電子を電極で回収して電流として取り出す。
【0024】
たとえば、イネが光合成を行い、根から有機物を出し、それを使って菌が電流を発生させるシステムができる。電流発生菌は取り込んだ酸化鉄を利用して、有機物を分解し電子を捨てる。この捨てられた電子を電極で回収し、電流として取り出す。たとえば、電極15を底に敷いた容器に、有機物である酢酸入りの液体を容器に満たし、培養土壌16を入れて電流発生菌を培養する。しばらくすると電流は減り始めるが、エサの酢酸等の有機物を追加すれば、また電流が流れるようになる。
【0025】
電力発生装置1において、電流発生菌と酢酸を入れた培養土壌16の中に、酸化鉄の電極15を2本設置する。電力発生装置1の2本の酸化鉄電極15で発生したこの低い電圧を、より高い電圧に変換する機能を有するのが、電圧変換回路装置2である。この変換は通常、昇圧動作と呼ばれるものであり、手法としてはチャージポンプ回路等が公知である。これにより2V程度の電圧に昇圧される。
【0026】
2V程度に昇圧された電圧は、送信装置3に印加され、送信装置3の電源になる。この送信装置3は広く利用されているBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)無線装置とかsub-GHz等の無線通信方式を採用した無線装置で構成される。これらの方式を採用した無線装置の最低動作電圧は2V程度である為に、電圧変換回路装置2が電力発生装置1の電圧を2V程度に昇圧できさえすれば、この電圧で送信装置3を動作させることができる。具体的には、電力発生装置1の電流発生菌が活性であれば、電圧が発生する。逆に電流発生菌が活性でなければ、電圧はほとんど発生しない。
【0027】
すなわち、電流発生菌の活性さを電圧に変換することができる。活性でなければ、電力発生装置1の出力はおよそ0V、活性であれば電力発生装置1の出力は0.5V程度である。
【0028】
もし電流発生菌が活性でなければ、何らかの手段でシステム管理者に電流発生菌を活性化する必要性を伝えなければならない。電力発生装置1の出力電圧すなわち、培養土壌16中に含まれる電流発生菌の出力電圧が0.5Vあれば、電圧変換回路装置2で2V程度に昇圧することができるので、この電圧を利用して送信装置3を駆動することができる。これにより、もし、システム管理者が近くにいる場合には、システム管理者の携帯電話等により直接、定期的に信号が受信される。もし、電流発生菌が活性ならば、発電量が多いので、その信号の周期は短い。すなわち、周期の短さで培養土壌16が活性であることを知らせることができる。また逆に、その信号の周期が長い時は、土壌が活性でないことを知らせることができる。すなわち、信号の周期が、培養土壌16の活性度を表していることになる。更には、送信装置3から送信する信号データ8に、送信装置3のIDを入れておくことによって、電力発生装置1を培養土壌16内に複数設置した場合に、どの位置の培養土壌16が活性かを、識別することができる。
【0029】
また、培養土壌16中に設置することからして、電力発生装置1と電圧変換回路装置2と送信装置3は、ノード装置11として一体化させたほうが良い。
【0030】
送信装置3から発せられた信号データ8は、ゲートウェイ装置4で受信する。ゲートウェイ装置4にはタイムスタンプ機能があり、信号データ8には、受信した時刻が付加される。更にサーバ装置5に転送される。サーバ装置5の役割は、転送されたデータを蓄積すると同時に、そのデータを分析し、何らかの動作をフィードバックすることである。たとえば、土壌発電の場合であれば、管理者にアラームを与えるとか、または、自動的に培養土壌16に電流発生菌を活性化させる酢酸17等の溶液を散布することである。その他、信号データ8の受信間隔、設置位置、設置開始時間等をサーバ装置5に蓄積し、それらのデータを解析することにより、培養土壌16の活性度、活性度の良い場所または悪い場所、溶液散布の必要な時期等を予測することができ、土壌発電のメンテナンスに役立つ情報を得ることができる。
【0031】
この動作を可能にするために、サーバ装置5からアクチュエータ7に指令信号10を出すわけである。具体的には、その指令信号10は、ゲートウェイ装置4を介して受信装置6に送られ、アクチュエータ7を動作させる。すなわち、本無線制御システムによって電力発生装置1で感知した信号を、送信装置3とゲートウェイ装置4を介してサーバ装置5に転送さる。サーバ装置5で適切な処理が決められたら、再びゲートウェイ装置4を介して受信装置6に送られた指令12により、アクチュエータ7を動作させて、適切な処理を行う一連の流れを作り出すことが出来る。
ここで、アクチュエータ7は、自動的に培養土壌16に酢酸17を注入するポンプの機能を有する。これにより、前述したように注入された酢酸17が電流発生菌の活動を活発にし、培養土壌16を活性化することができる。しかし、時間が経てば、酢酸の効果は減少し、培養土壌16が不活性になる。すると、電力発生装置1で採取できる発電量は減少し、やがて電力発生装置1の出力電圧はゼロになる。この状態では、ノード装置11は無線信号を送信することができない。これにより、培養土壌16が不活性化したことをサーバ装置5が認識し、ゲートウェイ装置4、受信装置6を介して、アクチュエータ7を動作させる。アクチュエータ7は、酢酸17等の注入機能により、培養土壌16を活性化し、電流発生菌により電力発生装置1が発生した電力を増大させるように動作する。
更に、本システムにおいて特徴的なことは、電力発生装置1と電圧変換回路装置2と送信装置3には、それらを動かすための電源は不要であるということである。この電源は、電流発生菌により、酸化鉄等の2本以上の金属で構成された電力発生装置1において作られる。ここで作られた電源により、電圧変換回路装置2と送信装置3が駆動される。
【0032】
したがって、電圧変換回路装置2と送信装置3の消費電力は、電力発生装置1で作られる電力より低くなければならない。これは、非現実的である。なぜなら、電力発生装置1で作られる電力は電圧0.5V、電流60μA程度であり、電力は30μW程度である。一方、送信装置3の消費電力は30mW程度必要である。しかし、これを現実化する手段として、コンデンサ9を配置する。すなわち、30μWの電力で、30mWの電力を賄うための素子が、コンデンサ9である。
【0033】
30mWの電力を必要とする送信装置3を1msecの間、動作させるためには、30mWx1msec=30μWsecのエネルギーが必要であるが、そのエネルギーを電力発生装置1で収集するためには30μWsec÷30μW=1secの間、コンデンサ9にエネルギーを蓄積すれば良い。
【0034】
以上のように、1μWという微小な電力でも、1秒という時間をかけてコンデンサ9に蓄積すれば、送信装置3を1msecという短時間、動作させることができるエネルギーに変換することができる。送信装置3にとって、1msecという時間は信号を送信するには十分な時間である。ただし、これらの議論は、話を単純化する為に、損失がないと仮定している。実際には電圧変換回路装置2等で電圧変換による損失があるので、上記値は1秒を超えることになる。
【0035】
送信装置3で一度信号を送信すると、コンデンサ9の電荷は送信装置3の送信電力分、放電することになる。その結果、送信装置3の最低動作を下回るので、送信は止まる。しかし、電力発生装置1の異種金属電極15間に依然として、電流発生菌が活性ならば、電力発生装置1の出力には起電力が発生しているので、コンデンサ9には電荷が蓄積され続ける。この動作を繰り返すことにより、送信装置3は理想的には、1秒毎にゲートウェイ装置4に向けて無線信号を送信することができる。
【0036】
[第3の実施形態]
第1の実施形態と同様に図4に基づいて説明する。本無線制御システムの電力発生装置1は、具体的に酸化還元反応を利用した電力発生装置と電流発生菌を利用した電力発生装置により説明した。本無線制御システムの電力発生装置1は、さらに、動作原理として半導体のバンドギャップを利用した光電変換素子である太陽電池等からなる電力発生装置にも適用できる。ここでは、太陽電池18を用いて説明する。1セルで構成された太陽電池18は出力電圧が0.5V以下であり、そのままでは使用できないエネルギーである。このような低いエネルギーでも、本無線制御システムを利用すれば、電子機器を動作させることのできるエネルギーとして活用することが出来る。
【0037】
少なくとも1セルの太陽電池18で構成される電力発生装置1で発生したこの低い電圧を、より高い電圧に変換する機能を有するのが、電圧変換回路装置2である。この変換は通常、昇圧動作と呼ばれるものであり、手法としてはチャージポンプ回路等が公知である。これにより2V程度の電圧に昇圧される。
【0038】
2V程度に昇圧された電圧は、送信装置3に印加され、送信装置3の電源になる。この送信装置3は広く利用されているBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)とかsub-GHz等の無線通信方式を採用した無線装置で構成される。これらの方式を採用した無線装置の最低動作電圧は2V程度である為に、電圧変換回路装置2が電力発生装置1の電圧を2V程度に昇圧できさえすれば、この電圧で送信装置3を動作させることができる。具体的には、電力発生装置1の太陽電池18に光があたっていれば、電圧が発生する。逆にそうなければ、電圧はほとんど発生しない。
【0039】
すなわち、太陽電池18に当たっている光の有無を電圧に変換することができる。活性(以下、光が当たっている状態をこのように呼ぶ)でなければ、電力発生装置1の出力はおよそ0V、活性であれば電力発生装置1の出力は0.5V程度である。
【0040】
もし太陽電池18が活性でなければ、何らかの手段でシステム管理者に太陽電池18を活性化する必要性を伝えなければならない。電力発生装置1の出力電圧が0.5Vあれば、電圧変換回路装置2で2V程度に昇圧することができるので、この電圧を利用して送信装置3を駆動することができる。この時、送信装置3から送信する信号データ8に、送信装置3のIDを入れておくことによって、電力発生装置1を敷地内に複数設置した場合に、どの位置が活性かを、識別することができる。
【0041】
また、電力発生装置1と電圧変換回路装置2と送信装置3は、ノード装置11として一体化させたほうが扱いに良い。
【0042】
送信装置3から発せられた信号データ8は、ゲートウェイ装置4で受信する。ゲートウェイ装置4で受信されたデータは、更にサーバ装置5に転送される。サーバ装置5の役割は、転送されたデータを蓄積すると同時に、そのデータを分析し、何らかの動作をフィードバックすることである。たとえば、太陽光発電の場合であれば、近くにいる管理者にスマートホン経由でアラームをあげる、または、自動的に太陽電池18を活性化させる為に太陽の方角にパネルを向ける等のアクションをとることができる。その他、信号データ8の受信間隔、設置位置、設置開始時間等をサーバ装置5に蓄積し、それらのデータを解析することにより、太陽電池18の活性度、活性度の良い場所または悪い場所、クリーン化の必要な時期等を予測することができ、太陽電池発電のメンテナンスに役立つ情報を得ることができる。
【0043】
この動作を可能にするために、サーバ装置5からアクチュエータ7に指令信号10を出す。具体的には、その指令信号10は、ゲートウェイ装置4を介して受信装置6に送られ、アクチュエータ7を動作させる。すなわち、本無線制御システムによって電力発生装置1で感知した信号を、ゲートウェイ装置4を介してサーバ装置5に転送し、アクチュエータ7により適切な処理を行う一連の流れを作り出すことが出来る。ここで、アクチュエータ7は、例えば、太陽電池18の表面を清浄にする掃除機能19を持っている。太陽電池18の表面が大気中のゴミにより汚れてきた場合、当然、太陽電池18の出力電圧は低下する。その結果、コンデンサ9に蓄積される電荷は少なくなり、無線信号を送信できる電圧までの電荷蓄積時間が長くなる。その結果、無線信号の送信間隔が長くなる。逆に太陽電池18の表面が清浄で十分な発電状態にあれば、無線間隔は短くなる。すなわち、無線間隔が太陽電池18の表面状態を表していることになる。無線間隔が所定の時間より、長くなった場合には、アクチュエータ7を動作させて、表面を清浄にすることができる。アクチュエータ7は、太陽電池18の清浄化機能19により、太陽電池18の表面を清浄化し、半導体のバンドギャップを利用した電力発生装置が発生した電力を増大させるように動作する。
【0044】
このシステムにおいて特徴的なことは、電力発生装置1と電圧変換回路装置2と送信装置3には、それらを動かすための電源は不要であるということである。この電源は、1セルの太陽電池18で構成された電力発生装置1により作られる。ここで作られた電源により、電圧変換回路装置2と送信装置3が駆動される。
【0045】
したがって、電圧変換回路装置2と送信装置3の消費電力は、電力発生装置1で作られる電力より低くなければならない。これは、非現実的である。なぜなら、電力発生装置1で作られる電力は、500luxの光量下で3cm角のSi太陽電池で電圧0.5V、電流60μA程度であり、電力は30μW程度である。一方、送信装置3の消費電力は30mW程度必要である。そこで、これを現実化する手段として、コンデンサ9を配置する。すなわち、30μWの発電で、30mWの電力を賄うための素子が、コンデンサ9である。
【0046】
30mWの電力を必要とする送信装置3を1msecの間、動作させるためには、30mWx1msec=30μWsecのエネルギーが必要であるが、そのエネルギーを電力発生装置1で収集するためには30μWsec÷30μW=1secの間、コンデンサ9にエネルギーを蓄積すれば良い。
【0047】
以上のように、1μWという微小な電力でも、1秒という時間をかけてコンデンサ9に蓄積すれば、送信装置3を1msecという短時間、動作させることができるエネルギーに変換することができる。送信装置3にとって、1msecという時間は信号を送信するには十分な時間である。ただし、これらの議論は、話を単純化する為に、損失がないと仮定している。実際には電圧変換回路装置2等で電圧変換による損失があるので、上記値は1秒を超えることになる。
【0048】
送信装置3で一度信号を送信すると、コンデンサ9の電荷は送信装置3の送信電力分、放電することになる。その結果、送信装置3の最低動作を下回るので、送信は止まる。しかし、電力発生装置1の太陽電池18が依然として、活性ならば、電力発生装置1の出力には起電力が発生しているので、コンデンサ9には電荷が蓄積され続ける。この動作を繰り返すことにより、送信装置3は理想的には、1秒毎にゲートウェイ装置4に向けて無線を送信することができる。
【0049】
なおここでは光電変換素子の例で説明したが、熱電変換素子等の物理量を電力に変換する素子であれば、同様の無線制御システムとすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 電力発生装置
2 電圧変換回路装置
3 送信装置
4 ゲートウェイ装置
5 サーバ装置
6 受信装置
7 アクチュエータ
8 信号データ
9 コンデンサ
10 指令信号
11 ノード装置
図1
図2
図3
図4