(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】スクリーン機構、振動篩装置及び振動篩方法
(51)【国際特許分類】
B07B 1/28 20060101AFI20230307BHJP
B07B 1/34 20060101ALI20230307BHJP
B07B 1/46 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
B07B1/28 Z
B07B1/34
B07B1/46 C
B07B1/46 B
(21)【出願番号】P 2018198069
(22)【出願日】2018-10-22
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【氏名又は名称】河崎 眞一
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【氏名又は名称】津村 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100197549
【氏名又は名称】山下 昌三
(72)【発明者】
【氏名】辻 英一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 正治
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-097679(JP,A)
【文献】特開2002-045794(JP,A)
【文献】実開平02-108779(JP,U)
【文献】特開2002-300810(JP,A)
【文献】特開平11-309414(JP,A)
【文献】特開2008-136893(JP,A)
【文献】特開2002-186907(JP,A)
【文献】特開2018-043201(JP,A)
【文献】実開昭58-073357(JP,U)
【文献】特開2018-161646(JP,A)
【文献】特開2004-223364(JP,A)
【文献】中国実用新案第201524659(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07B 1/00-15/00
B03B 1/00-13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分級対象物の搬送方向と交差する方向に配された複数本の交差側ロープと、前記交差側ロープと平面視で交差するように配置され前記交差側ロープとの間で所定の目開きの篩面を構成する複数本の流れ側ロープとを備え、前記交差側ロープには、
前記流れ側ロープの頂部包絡面を基準として上下方向高さが分級対象物の分級平均径以上に設定されることで分級対象物を一時滞留させる堰として機能する交差側ロープと
、前記流れ側ロープの頂部包絡面を基準として上下方向高さが分級対象物の分級平均径未満に設定されることで分級対象物を一時滞留させる堰として機能しない交差側ロープがあり、前記堰として機能する交差側ロープは搬送方向に前記堰として機能しない交差側ロープを挟んで複数本前記流れ側ロープの上側に配され、前記堰として機能する交差側ロープは、前記流れ側ロープの頂部包絡面を基準として上下方向高さが分級対象物の分級平均径以上に設定されているスクリーン機構。
【請求項2】
分級対象物の搬送方向に沿って下流側ほど前記堰として機能する交差側ロープ間の間隔が狭くなるように設定されている請求項1記載のスクリーン機構。
【請求項3】
分級対象物の搬送方向に沿って下流側ほど前記流れ側ロープの頂部包絡面を基準とする上下方向高さが低くなるように設定されている請求項1または2記載のスクリーン機構。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載されたスクリーン機構と、前記スクリーン機構を振動させる加振機構とを備え、前記スクリーン機構に投入された分級対象物を前記搬送方向に搬送しながら分級する振動篩装置。
【請求項5】
所定の目開きの篩面が形成されたスクリーン機構を振動させて、投入された分級対象物を搬送しながら分級する振動篩方法であって、
前記スクリーン機構として、分級対象物の搬送方向と交差する方向に配された複数本の交差側ロープと、前記交差側ロープと平面視で交差するように配置され前記交差側ロープとの間で所定の目開きの篩面を構成する複数本の流れ側ロープとを備え、
前記交差側ロープには
、前記流れ側ロープの頂部包絡面を基準として上下方向高さが分級対象物の分級平均径以上に設定されることで分級対象物を一時滞留させる堰として機能する交差側ロープと
、前記流れ側ロープの頂部包絡面を基準として上下方向高さが分級対象物の分級平均径未満に設定されることで分級対象物を一時滞留させる堰として機能しない交差側ロープがあり、前記堰として機能する交差側ロープは搬送方向に前記堰として機能しない交差側ロープを挟んで複数本前記流れ側ロープの上側に配され、前記堰として機能する交差側ロープは、前記流れ側ロープの頂部包絡面を基準として上下方向高さが分級対象物の分級平均径以上に設定されたスクリーン機構を用いて、
前記篩面の上流側から分級対象物を投入し、前記堰として機能する交差側ロープで一時滞留させながら分級し、当該交差側ロープを飛び越えた分級対象物を次の堰として機能する交差側ロープで一時滞留させながら分級する処理を繰り返す振動篩方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の目開きの篩面が形成されたスクリーン機構、前記スクリーン機構を備えた振動篩装置及び振動篩方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴミ焼却炉から排出される焼却灰は、減容化、無害化のため、灰溶融炉に投入されて溶融処理され、水槽に落下した溶融スラグが水砕スラグとして排出される。このような水砕スラグはコンクリート骨材やアスファルト骨材として再利用されるが、用途に応じて粒度分布が規定されているため、目的に応じて分級処理する必要がある。例えば、アスファルト用骨材として再利用する場合には、JISA5032 FM2.5により4.75mmの篩を通るものの質量百分率を100%にする必要がある。
【0003】
しかし、分級対象物が水砕スラグのように親水性を示し、付着水の表面張力によって凝集性または付着性、若しくは、その双方の性質を併せ持つ性状を備えたものである場合に、篩面が形成されたスクリーン機構と、前記スクリーン機構を振動させる加振機構とを備え、前記スクリーン機構に投入された分級対象物を搬送しながら分級する振動篩装置を利用して分級するのは困難であった。
【0004】
図1に示すように、水砕スラグのような水分が付着している分級対象物Pが篩面14上で加振されると、細粒のスラグ同士が水を介して凝集して塊状に成長したり、粗粒スラグの周囲に付着して塊状になるような凝集現象が発生し、塊状に成長した粒子は分級される間も無く篩面上を滑るように走るため、十分に分級できないという問題があったためである。
【0005】
特許文献1には、そのような問題に対処可能な振動篩装置の一例として、篩面が形成されたスクリーン機構と、前記スクリーン機構を振動させる加振機構とを備え、前記スクリーン機構に投入された分級対象物を搬送しながら分級する振動篩装置であって、前記スクリーン機構に設けられた篩面を分級対象物の搬送方向に沿って複数の分級領域に区画するとともに分級対象物を一時滞留させる複数の堰を、前記篩面の上部に搬送方向に交差する姿勢で配置している振動篩装置が提案されている。
【0006】
当該振動篩装置によれば、加振により篩面上で搬送される湿潤の分級対象物が水を介して互いに付着して凝集しても、堰の上流側で一時的に滞留させて、滞留中に、凝集した対象物とロープ、及び/または、凝集物同士による接触または衝突頻度を上昇させることにより凝集前の状態に分散されて分級が進むようになる。複数の堰を設けることにより、このような滞留、分散、分級処理が繰り返され、篩面の長さを長くしなくとも効率的に分級されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のスクリーン機構では、所望の目開きの篩を構成するロープの径が細く、そのような篩面に加振耐力を備えた堰を一体化して設けると、堰の重量による慣性力が働くために、細いロープとの固定箇所に働く力が大きく破断してしまうため、耐久的に問題があり、堰を設けた部位と他の部位で加振機構による振動状態が変り、篩面から堰が離脱する虞があった。また、搬送方向への篩面の長さをさらに短くして一層の小型化を図りたいとの要望もあった。
【0009】
本発明の目的は、上述した従来の問題点に鑑みて、分級対象物が凝集性のある湿潤物であっても、乾燥させたり水を噴射したりすることなく、効率よく分級することが可能で小型且つ耐久性を備えたスクリーン機構、振動篩装置及び振動篩方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明によるスクリーン機構の特徴構成は、分級対象物の搬送方向と交差する方向に配された複数本の交差側ロープと、前記交差側ロープと平面視で交差するように配置され前記交差側ロープとの間で所定の目開きの篩面を構成する複数本の流れ側ロープとを備え、前記交差側ロープには、前記流れ側ロープの頂部包絡面を基準として上下方向高さが分級対象物の分級平均径以上に設定されることで分級対象物を一時滞留させる堰として機能する交差側ロープと、前記流れ側ロープの頂部包絡面を基準として上下方向高さが分級対象物の分級平均径未満に設定されることで分級対象物を一時滞留させる堰として機能しない交差側ロープがあり、前記堰として機能する交差側ロープは搬送方向に前記堰として機能しない交差側ロープを挟んで複数本前記流れ側ロープの上側に配され、前記堰として機能する交差側ロープは、前記流れ側ロープの頂部包絡面を基準として上下方向高さが分級対象物の分級平均径以上に設定されている点にある。
【0011】
分級対象物の搬送方向と交差する方向に配された複数本の交差側ロープと、交差側ロープと平面視で交差するように配置された複数本の流れ側ロープとで所定の目開きの篩面が形成される。そして、流れ側ロープの上側に突設させた状態で、分級対象物を一時滞留させる堰として機能する交差側ロープが複数本、堰として機能しない交差側ロープを挟むように設けられる。例えば、分級対象物が水砕スラグのような凝集物であっても、凝集した分級対象物と流れ側ロープの上側に配置された堰として機能する交差側ロープ、及び/または、凝集した分級対象物同士による接触または衝突により凝集前の状態に分散させて対応する篩面から効率的に分級落下させることができるようになる。
【0012】
また、流れ側ロープの頂部を基準とする篩面上で堰として機能する交差側ロープの上下方向高さを分級対象物の分級平均径以上に設定することにより、分級対象物をせき止めて分級作用を促す堰として良好に機能するようになる。
【0013】
同第二の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、分級対象物の搬送方向に沿って下流側ほど前記堰として機能する交差側ロープ間の間隔が狭くなるように設定されている点にある。
【0014】
上流側から下流側に搬送されるに連れて分級処理が進み、下流側ほど分級対象物の容積が少なくなる。そこで、分級対象物の搬送方向に沿って下流側ほど堰として機能する交差側ロープ間の間隔が短くなるように配置すれば、搬送方向長さが短い篩面であっても、篩面全体を有効に利用して効率的に分級することができ、装置の小型化が可能になる。
【0015】
同第三の特徴構成は、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、分級対象物の搬送方向に沿って下流側ほど前記流れ側ロープの頂部包絡面を基準とする上下方向高さが低くなるように設定されている点にある。
【0016】
分級が進んで分級対象物の塊状のサイズが小さくなる下流側で、堰として機能する交差側ロープの高さが上流側の堰として機能する交差側ロープの高さと同じであると、分級対象物が飛び跳ねて堰として機能する交差側ロープの下流側へ搬送される効率が低下する虞があるが、分級対象物の搬送方向に沿って下流側ほど堰として機能する交差側ロープの上下方向高さが低くなるように設定されていれば、上流側から下流側にかけて搬送面全域で効率的に分級できるようになる。
【0017】
本発明による振動篩装置の第一の特徴構成は、第一から第三の何れかの特徴構成を備えたスクリーン機構と、前記スクリーン機構を振動させる加振機構とを備え、前記スクリーン機構に投入された分級対象物を前記搬送方向に搬送しながら分級する点にある。
【0018】
流れ側ロープの上側に交差側ロープが配置されたスクリーン機構を用いると、流れ側ロープの上方に突設された交差側ロープが分級対象物の搬送方向に対向して分級対象物を一時滞留させる堰として機能する。例えば、分級対象物が水砕スラグのような凝集物であっても、凝集した分級対象物と交差側ロープ、及び/または、凝集した分級対象物同士による接触または衝突により凝集前の状態に分散させて対応する篩面から効率的に分級落下させることができるようになる。この様な交差側ロープと流れ側ロープにより篩面が形成されているので、加振機構により加振されても安定した振動状態が実現でき、小型で耐久性のある振動篩装置が実現できる。
【0019】
本発明による振動篩方法の特徴構成は、所定の目開きの篩面が形成されたスクリーン機構を振動させて、投入された分級対象物を搬送しながら分級する振動篩方法であって、前記スクリーン機構として、分級対象物の搬送方向と交差する方向に配された複数本の交差側ロープと、前記交差側ロープと平面視で交差するように配置され前記交差側ロープとの間で所定の目開きの篩面を構成する複数本の流れ側ロープとを備え、前記交差側ロープには、前記流れ側ロープの頂部包絡面を基準として上下方向高さが分級対象物の分級平均径以上に設定されることで分級対象物を一時滞留させる堰として機能する交差側ロープと、前記流れ側ロープの頂部包絡面を基準として上下方向高さが分級対象物の分級平均径未満に設定されることで分級対象物を一時滞留させる堰として機能しない交差側ロープがあり、前記堰として機能する交差側ロープは搬送方向に前記堰として機能しない交差側ロープを挟んで複数本前記流れ側ロープの上側に配され、前記堰として機能する交差側ロープは、前記流れ側ロープの頂部包絡面を基準として上下方向高さが分級対象物の分級平均径以上に設定されたスクリーン機構を用いて、前記篩面の上流側から分級対象物を投入し、前記堰として機能する交差側ロープで一時滞留させながら分級し、当該交差側ロープを飛び越えた分級対象物を次の堰として機能する交差側ロープで一時滞留させながら分級する処理を繰り返す点にある。
【発明の効果】
【0020】
以上説明した通り、本発明によれば、分級対象物が凝集性のある湿潤物であっても、乾燥させたり水を噴射したりすることなく、効率よく分級することが可能で小型且つ耐久性を備えたスクリーン機構、振動篩装置及び振動篩方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】湿潤の分級対象物が塊状に成長する過程の説明図
【
図2】(a)は本発明による振動篩装置を側面から見た説明図、(b)は振動篩装置を正面から見た説明図
【
図4】(a)は交差側ロープと流れ側ロープの配置関係の複数の態様を示す説明図、(b)は堰の高さ及び設置幅の一例を示す説明図
【
図5】(a)~(c)は交差側ロープと流れ側ロープの配置関係の複数の態様を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、分級対象物が焼却灰等の廃棄物を溶融処理して得られた水砕スラグである場合を例に、本発明によるスクリーン機構、振動篩装置及び振動篩方法を説明する。なお、本発明によるスクリーン機構、振動篩装置及び振動篩方法は水砕スラグのみならず、粒状の薬品、土砂、焼却灰など湿潤状態の分級対象物に水を噴射することなく搬送しながら分級する必要がある任意の分級対象物に適用できる。
【0023】
[振動篩装置の全体構成]
図2に示すように、振動篩装置10は、機台11にバネ機構12を介して支持されたスクリーン機構13と、スクリーン機構13を図中一点鎖線で示す矢印の方向に加振する加振機構18を備えて構成されている。
【0024】
スクリーン機構13は、6mmの分級孔(篩目)が形成された篩としてのウレタン樹脂製のメッシュでなるスクリーンSで構成される篩面14と、篩面14に水砕スラグPを投入する投入部15と、篩面14を通過した篩下産物(細粒スラグ)を回収する第一回収部16と、篩面14を通過しない大径の篩上産物(粗粒スラグ)を回収する第二回収部17を備えて構成され、篩面14の上部は粉塵の飛散を防止するカバー体19で覆われている。
【0025】
後に詳述するように、スクリーン機構13は、水砕スラグの搬送方向と交差する方向に配された複数本の交差側ロープと、水砕スラグの搬送方向に沿う方向に配された複数本の流れ側ロープとで篩面14が形成されている。
【0026】
なお、分級孔(篩目)のサイズは分級対象物に応じて適宜適切なサイズに設定されるものであり、篩面14は水平姿勢となるように設置してもよいし、本実施形態のように搬送方向下流側が上方に傾斜する姿勢で設置してもよいし、逆に搬送方向下流側が下方に傾斜する姿勢で設置してもよい。また、篩の振動方式はバランス式に限らず、強制振動式の振動篩でも同じ効果が得られるため、強制振動式であってもよい。
【0027】
含水量が2~20%で数mmから十数mmの範囲でその径が分布する水砕スラグPは、投入部15から投入され、振動モータやクランク式モータ等で構成される加振機構18による加振力で振動する篩面14上で加振方向に沿って振動しながら第二回収部17に向けて分級されながら搬送される。
【0028】
篩面14を、水砕スラグPの搬送方向に沿って複数の分級領域Rn(n=1,2,・・・)に区画するとともに、搬送方向に沿って配された複数本の交差側ロープの一部が、水砕スラグPをその上流側で一時滞留させる堰1として機能するように構成されている。当該交差側ロープの一部を第2交差側ロープと称する。第2交差側ロープは、スクリーンSと一体に形成されたウレタン樹脂で構成され、区画される分級領域の面積が搬送方向下流側ほど小さくなる間隔で、篩面14の上部に搬送方向に直交する姿勢で配置されている。
【0029】
第2交差側ロープにより区画された上流側の分級領域R1,R2の搬送方向中央部には、上方に設けられた支持アームに吊下げ支持されたゴム板でなるガイド部材2が配置され、篩面14上で下流側に搬送される水砕スラグPの量を調整可能に構成されている。第2交差側ロープに多量の水砕スラグPが一時に搬送されると、分散処理がされないまま第2交差側ロープを乗越えてしまうという不都合を回避すべく、篩面14からガイド部材2の下端縁までの高さが第2交差側ロープの高さを挟んで僅かに上方または下方に位置するように設定されている。
【0030】
各第2交差側ロープの上流側に形成される水砕スラグPの滞留領域Rは下流側ほど小さくなるように設定されている。上流側から下流側に搬送されるにつれて分級処理が進み、下流側ほど分級対象物の容積が少なくなるため、このように第2交差側ロープを配置すれば、搬送方向長さが短い篩面であっても、篩面を有効に利用して効率的に分級することができ、装置の小型化が可能になる。
【0031】
篩面14に投入された水砕スラグPは、振動により細粒のスラグ同士が水を介して凝集して塊状に成長し、或いは粗粒のスラグの周囲に付着して塊状に成長しながら最上流側の第2交差側ロープに到達し、そこで一時滞留される。このとき、滞留した凝集物と網または凝集物同士が接触または衝突して徐々に凝集前の状態に分散され、細粒のスラグが篩面14から下方に落下する。第2交差側ロープを飛び越えて下流側に搬送された水砕スラグPは下流側に設置された次の第2交差側ロープに到達して一時滞留され、上述と同様に分散されながら分級される。このような分散分級処理が繰り返されることにより効率的に分級される。
【0032】
本実施形態では、上流側から下流側に向けて間隔が次第に狭くなるように、篩の加振機構の振動幅16mmに対して篩面14からの高さがその半分よりやや低めの7mm程度の高さの複数の第2交差側ロープを配置してあり、ある程度の粒径の水砕スラグは振動により第2交差側ロープを飛び越えて下流側に搬送されるように構成されている。第2交差側ロープの間隔は上流側で100~250mm、下流側で数十mmに設定されている。
【0033】
第2交差側ロープの高さは、篩の目開きのサイズの粒径物が網との衝撃で飛び跳ねる高さに設定されていることが好ましく、高くすれば分散効果が高まり分級精度が上がるが篩目よりも大きなサイズの粒子が篩面上から篩面外部に排出され難くなり、低くすれば分級処理時間は短くなるが分級精度が低下するので、目標とする分級精度及び処理時間に応じて設定すればよい。
【0034】
つまり、第2交差側ロープは凝集した分級対象物と篩、及び/または、凝集した分級対象物同士による接触または衝突頻度の上昇により凝集前の状態に分散させる機能を備えている。
【0035】
[スクリーン機構の構成]
図3には、水砕スラグの搬送方向上流側から下流側を眺めたスクリーン機構13の中央部から左側の一部が示され、水砕スラグの搬送方向が破線矢印Dで示されている。スクリーン機構13は、水砕スラグの搬送方向と交差する方向に配された複数本の交差側ロープ14Aと、水砕スラグの搬送方向に沿う方向に配された複数本の流れ側ロープ14Bとで篩面14が形成されるように構成されている。
【0036】
なお、流れ側ロープ14Bは篩面上で水砕スラグの搬送方向に沿う方向に配されていればよく、厳密な意味で水砕スラグの搬送方向と平面視で平行姿勢を保つ必要はない。搬送方向に対して平面視で多少の角度を有していてもよい。また、交差側ロープ14Aは篩面上で水砕スラグの搬送方向と直交する姿勢で配されていることが好ましいが、直交していなくても、搬送方向と交差する姿勢で配されていればよい。つまり、対象物を分級可能な目開きが確保されていれば、どのような姿勢で配されていてもよい。
【0037】
交差側ロープ14Aは鋼材で構成された芯材Cにウレタン樹脂Rが被覆されて構成され(
図4(a)参照)、交差側ロープ14Aそれぞれの左右両端で芯材Cが左右のスクリーンフック21に固定されている。さらに左右のスクリーンフック21がクランピングバー22に係止され、クランピングバー22がクランピングボルト23を介して左右のサイドプレート20に固定されている。クランピングボルト23の締付加減により交差側ロープ14Aの張力が調整される。
図3中、符号24で示す部材は、クランピングボルト23の締付によるクランピングバー22の上方への移動を抑制するストッパー部材である。
【0038】
流れ側ロープ14Bは芯材を備えることなくウレタン樹脂Rのみで構成され、交差側ロープ14Aの下側に位置するように、流れ側ロープ14Bの頂部と交差側ロープ14Aの下部が交差部で溶着固定されている。なお、流れ側ロープ14Bと交差側ロープ14Aは少なくとも一部で溶着固定されていればよく、全ての交差部で溶着される必要はない。
【0039】
交差側ロープ14Aは、水砕スラグPの重量によって下方に撓むことがないように、中央部に備えた上下一対の中間押え板25により中間ゴム板26を介して上下から挟持されるとともに、中央部から左右側壁に到る間に備えた複数のサポートフレーム27及びサポートフレーム27に備えたクッション材28よって支持されている。
【0040】
交差側ロープ14Aは、流れ側ロープ14Bの頂部包絡面を基準とする交差側ロープ14Aの頂部までの高さ、つまり交差側ロープ14Aの上下方向高さが第1高さ(H1)の第1交差側ロープ14A1と、第1高さ(H1)より高い第2高さ(H2)の第2交差側ロープ14A2を備えて構成され、第2交差側ロープ14A2が上述した堰1として機能するように構成されている。第2交差側ロープ14A2が複数本設置される場合は、分級対象物の搬送方向に沿って第2交差側ロープ14A2が第1交差側ロープ14A1の間に分散配置される(
図4(a)参照)。
【0041】
少なくとも第2交差側ロープ14A2が上述した堰1として良好に機能するように、第2高さ(H2)が分級対象物の分級平均径以上に設定されている。第2交差側ロープ14A2は、第1交差側ロープ14A1と同様に鋼材で構成された芯材Cの左右端部がスクリーンフック21に固定され、篩面14に一体形成されている。そのため、スクリーン機構13の篩面14に別部材となる堰1を設置する必要が無く、スクリーンフック21によって強固に固定されるようになる。
【0042】
第2交差側ロープ14A2が第1交差側ロープ14A1より高さの高い堰1として機能するようになり、振動篩装置に大量の水砕スラグが投入され、第1交差側ロープ14A1と流れ側ロープ14Bで構成される篩面14を滑るように走るような場合でも、第2交差側ロープ14A2による堰効果で効率的に分級できるようになる。
【0043】
図4(b)に示すように、分級対象物である水砕スラグの搬送方向Dに沿って下流側ほど第2交差側ロープ14A2間の間隔Lが短くなるように設定されていることが好ましく、さらに、水砕スラグの搬送方向に沿って下流側ほど第2交差側ロープ14A2の第2高さ(H2)が低くなるように設定されていることが好ましい。
【0044】
上流側から下流側に搬送されるに連れて分級処理が進み、下流側ほど水砕スラグの容積が少なくなる。そこで、水砕スラグの搬送方向に沿って下流側ほど第2交差側ロープ間の間隔が短くなるように第2交差側ロープを配置すれば、搬送方向長さが短い篩面であっても、篩面全体を有効に利用して効率的に分級することができ、装置の小型化が可能になる。
【0045】
また、分級が進んで水砕スラグの塊状のサイズが小さくなる下流側で、第2交差側ロープ14A2の高さが上流側の第2交差側ロープ14A2の高さと同じであると、水砕スラグが飛び跳ねて第2交差側ロープ14A2の下流側へ搬送される効率が低下する虞があるが、水砕スラグの搬送方向に沿って下流側ほど第2高さ(H2)が低くなるように設定されていれば、上流側から下流側にかけて搬送面全域で効率的に分級できるようになる。
【0046】
さらに、第1交差側ロープ14A1の第1高さ(H1)が分級対象物の分級平均径以上に設定されていると、第1交差側ロープ14A1をも堰1として機能させることができ、より効率的に分級処理が進むようになる。
【0047】
つまり、流れ側ロープ14Bの上側に交差側ロープ14Aが配置されることにより、水砕スラグの搬送方向に対向するように配置された交差側ロープ14Aが水砕スラグを一時滞留させる堰1として機能し、凝集した水砕スラグと交差側ロープ14A、及び/または、凝集した水砕スラグP同士による接触または衝突により凝集前の状態に分散させて対応する篩面から効率的に分級落下させることができるようになる。
【0048】
要約すれば、第2交差側ロープ14A2の第2高さ(H2)が一定で水砕スラグの搬送方向Dに沿って下流側ほど第2交差側ロープ14A2間の間隔Lが短くなる態様、水砕スラグの搬送方向Dに沿って第2交差側ロープ14A2間の間隔Lが一定で水砕スラグの搬送方向に沿って下流側ほど第2交差側ロープ14A2の第2高さ(H2)が低くなる態様、水砕スラグの搬送方向Dに沿って下流側ほど第2交差側ロープ14A2間の間隔Lが短くなるとともに下流側ほど第2交差側ロープ14A2の第2高さ(H2)が低くなる態様の何れかを採用することができる。なお、分級対象物の搬送方向Dに沿って、第2交差側ロープ14A2の第2高さ(H2)が一定で、且つ、第2交差側ロープ14A2間の間隔Lが一定に設定される構成が基本構成となる。
【0049】
この様な交差側ロープ14Aと流れ側ロープ14Bにより篩面が形成されていると、加振機構18により加振されても安定した振動状態が実現でき、小型で耐久性のある振動篩装置が実現できる。
【0050】
交差側ロープ14A1と流れ側ロープ14Bの断面形状は円形であり、その径は約2.6mm~3.0mmに設定され、篩面の目開きは約6mmに設定されている。即ち、水砕スラグの搬送方向に沿って交差側ロープ14Aのピッチは8.6~9.0mmに設定され、100~250mm間隔で第2交差側ロープ14A2が配置されている。
【0051】
即ち、スクリーン機構13は、水砕スラグの搬送方向と交差する方向に配された複数本の交差側ロープ14Aと、水砕スラグの搬送方向に沿う方向に配された複数本の流れ側ロープ14Bとで篩面14が形成されるように構成され、交差側ロープ14Aの少なくとも一部が水砕スラグを一時滞留させる堰1として機能するように構成されている。
【0052】
なお、本実施形態では、第2交差側ロープ14A2は、流れ側ロープ14Bと交差する篩面の幅方向全域で流れ側ロープ14Bの上側に配される例を説明しているが、適切に分級処理が行なわれる場合には、幅方向に沿う一部で流れ側ロープ14Bの上側に配される態様であってもよい。例えば分級対象物の搬送方向に沿って上流側及び下流側に配置される2本の第2交差側ロープ14A2のうち、上流側の第2交差側ロープ14A2が幅方向中央部から何れか一方側でのみ流れ側ロープ14Bの上側に配され、下流側の第2交差側ロープ14A2が幅方向中央部から他方側でのみ流れ側ロープ14Bの上側に配されるような構成が、分級対象物の搬送方向に沿って繰り返されるような構成であってもよい。
【0053】
[スクリーン機構の具体的な構成]
以下に堰1として機能する交差側ロープが配されたスクリーン機構14の具体的な構成を説明する。
図4(a)には、流れ側ロープ14Bと第1交差側ロープ14A1及び第2交差側ロープ14A2で構成され、第2交差側ロープ14A2が堰1として機能するように、第2交差側ロープ14A2の第2高さ(H2)が分級対象物の分級平均径以上に設定されたスクリーン機構14が示されている。
【0054】
図4(a)に示す態様で、水砕スラグの荷重を受ける流れ側ロープ14Bが、交差部で溶着された交差側ロープ14A1,14A2から離脱して下方に垂れ下がり、分級不能な状態に到る虞がある場合に備えて、
図5(a)に示すように、流れ側ロープ14Bの上側に配した第1交差側ロープ14A1U及び第2交差側ロープ14A2Uの対応する位置で、流れ側ロープ14Bの下側に第1交差側ロープ14A1Dを設けてそれぞれ流れ側ロープ14Bに融着固定してもよい。
【0055】
このとき、流れ側ロープ14Bの下側に備えた第1交差側ロープ14A1Dを、鋼材で構成された芯材Cにウレタン樹脂Rが被覆されたロープで構成し、流れ側ロープ14Bの上方に備えた第2交差側ロープ14A2Uを、芯材Cを備えずにウレタン樹脂Rのみで構成してもよい。また、上方の第2交差側ロープ14A2Uと下方の第1交差側ロープ14A1Dを、芯材Cを備えたロープとウレタン樹脂Rのみのロープを交互に配し、芯材Cを備えた上下のロープが水砕スラグの搬送方向に沿って隣接するように設置してもよい。なお、本明細書では、流れ側ロープ14Bと交差する方向に配されたロープ14A1D,14A1Uの双方を第1交差側ロープと称する。
【0056】
図5(b)に示すように、流れ側ロープ14Bの下側に備えた第1交差側ロープ14A1Dと、流れ側ロープ14Bの上側に備えた第1交差側ロープ14A1Uの双方に、鋼材で構成された芯材Cにウレタン樹脂Rが被覆されたロープを採用し、水砕スラグの搬送方向に沿って交互に設置される千鳥配置としてもよい。流れ側ロープ14Bが第1交差側ロープ14A1U,14A1Dで挟まれるため、融着固定部に作用する応力が分散できるようになり、より強固に固定することができる。
【0057】
なお、流れ側ロープ14Bを挟んで上下に第1交差側ロープ14A1U,14A1Dが千鳥配置される場合に、第1交差側ロープ14A1U,14A1Dを同じ高さで一列にスクリーンフック21に固定すると、流れ側ロープ14Bに無用の力が掛かって上下に撓む虞があるため、スクリーンフック21への固定部も上下方向に千鳥配置とすることが好ましい。その結果、流れ側ロープ14Bが上下に撓むことがなくなり、堰として機能する第2交差側ロープ14A2Uの上下高さを安定的に維持することができる。
【0058】
さらに、
図5(c)に示すように、短冊状の流れ側ロープ14Bが梁1として機能する第2交差側ロープ14A2Uに融着されるように、構成されていてもよい。
【0059】
以上説明した
図4(a),(b)、
図5(a)~(c)では、鋼材で構成された芯材Cが黒丸で示され、流れ側ロープ14Bと交差側ロープ14Aとの融着部が黒太線で示されている。
【0060】
即ち、流れ側ロープの下方であって、交差側ロープの何れかに対応する位置に流れ側ロープの支持用交差側ロープが配置されていることが好ましく、交差側ロープの下部に固定された流れ側ロープが、分級対象物の重みなどで交差側ロープから離脱するような場合でも、支持用交差側ロープによって支持状態が維持できるので、耐久性能が向上する。
【0061】
また、流れ側ロープの下方であって、交差側ロープの何れかの間隙に対応する位置に流れ側ロープの支持用交差側ロープが配置されていることが好ましく、交差側ロープの下部に固定された流れ側ロープが、分級対象物の重みなどで交差側ロープから離脱するような場合でも、支持用交差側ロープによって支持状態が維持できるので、耐久性能が向上する。流れ側ロープと、流れ側ロープの上方に配置される交差側ロープと、下方に配置される支持用交差側ロープとによって篩面が構成されるので、堰として機能する交差側ロープの本数が調整可能となり、各交差側ロープの上流側に滞留する分級対象物の量を適切に調整することができるようになる。
【0062】
要するに、流れ側ロープ14Bの下方に支持用交差側ロープ14A1Dが配置されていることが好ましい。支持用交差側ロープ14A1Dは、鋼材で構成された芯材Cにウレタン樹脂Rが被覆されて構成され、支持用交差側ロープ14A1Dそれぞれの左右両端で芯材Cが左右のスクリーンフック21に固定されるように構成することができる。この場合には、交差側ロープ14A1に鋼材で構成された芯材Cを設ける必要はなく、芯材Cの両端を左右のスクリーンフック21に固定する必要はない。
【0063】
以上説明したように、本発明によるスクリーン機構13は、分級対象物の搬送方向と交差する方向に配された複数本の交差側ロープ14Aと、交差側ロープ14Aと平面視で交差するように配置され交差側ロープ14Aとの間で所定の目開きの篩面を構成する複数本の流れ側ロープ14Bとを備え、交差側ロープ14Aの少なくとも1本が分級対象物を一時滞留させる堰として機能するように流れ側ロープの上側に配されていればよい。
【0064】
図3に示す篩面14と底板29との間の空間に、ゴムなどの弾性部材で構成されるボール30を複数投入し、加振機構18により振動する底板29からの力を受けて上下に弾むボール30により篩面14を打撃して篩面14の目詰まりを除去するようにクリーニング機構を備えることが好ましい。
【0065】
分級対象物である水分を含む細粒が篩面の開口に付着し易いという傾向があっても、クリーニング機構により篩面の目詰まりが解消されるので、連続的に篩処理を行なうことができるようになる。
【0066】
上述した実施形態では、流れ側ロープ14B及び第1交差側ロープ14A1の断面形状が円形である例を説明したが、流れ側ロープ14B及び第1交差側ロープ14A1の形状は円形に限定されるものではなく平坦な矩形であってもよいし、楕円形状であってもよい。
【0067】
上述した実施形態では、第2交差側ロープ14A2の断面形状が先端が丸いコーン上である例を説明したが、第2交差側ロープ14A2の断面形状もこのような形状に限定されるものではなく三角形状、楕円形状、矩形形状など適宜設定可能であることはいうまでもない。
【0068】
以上、説明した通り、本発明による振動篩方法は、所定の目開きの篩面が形成されたスクリーン機構を振動させて、投入された分級対象物を搬送しながら分級する振動篩方法であって、分級対象物の搬送方向と交差する方向に配され、複数本の交差側ロープと、分級対象物の搬送方向に沿う方向に配され、前記交差側ロープの下側で前記交差側ロープに固定された複数本の流れ側ロープとを備えた篩面を構成し、前記篩面の上流側から分級対象物を投入し、前記交差側ロープで一時滞留させながら分級し、前記交差側ロープを飛び越えた分級対象物を次の交差側ロープで一時滞留させながら分級する処理を繰り返すことにより、付着水によって凝集性または付着性、若しくは、その双方の性質を併せ持つ性状の分級対象物を分級するように構成されている。
【0069】
上述の実施形態で説明した各部の具体的構成は例示に過ぎず、本発明による作用効果を奏する範囲において、その形状、寸法、材料等は適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0070】
1:堰
2:ガイド部材
10:振動篩装置
13:スクリーン機構
14:篩面
14A:交差側ロープ
14A1:第1交差側ロープ
14A2:第2交差側ロープ
14B:流れ側ロープ
16:第一回収部
17:第二回収部
18:加振機構
C:芯材
P:分級対象物
R:ウレタン樹脂
S:スクリーン